CWE Top 25 2025年版(後編)– メモリ安全性が上位に増えた理由と対策の要点

Share
CWE Top 25 2025年版– メモリ安全性が上位に増えた理由と対策の要点アイキャッチ画像

CWE Top 25:2025」では、もう一つ見逃せない特徴があります。それが、メモリ領域の安全性に関わる弱点が複数上位に含まれている点です。本記事では、CWE Top 25 2025年版で目立つメモリ系弱点を整理したうえで、なぜ上位に増えているのか、Webサービス運用の観点でどのように備えるべきかを解説します。

はじめに:前編の振り返り(Web/API 12項目)

前編では、CWE Top 25 2025年版のうち、WebアプリケーションやAPIで特に問題になりやすい弱点をピックアップし、リスクと診断観点を整理しました。具体的には、XSSやCSRFといった入力・リクエスト起点の脆弱性に加え、「認可の欠如不備」のようにログインしていても不正操作が成立するタイプの脆弱性が、実被害につながりやすいポイントとして挙げられます。Web/APIは機能追加や仕様変更が多いため、対策しているつもりでも抜けが生まれやすく、定期的な点検が重要です。

前編の記事はこちらからご覧いただけます。
CWE Top 25 2025年版(前編)– Web/APIで狙われやすい弱点12項目と診断ポイント」(https://www.sqat.jp/kawaraban/41257/

前編で取り上げたWeb/APIの脆弱性は、日々の開発や運用の中で発生しやすく、脆弱性診断でも頻出する領域です。一方で、CWE Top 25 2025年版を俯瞰すると、もう一つ見逃せない特徴があります。それが、メモリ領域の安全性に関わる脆弱性が複数上位に含まれている点です。

メモリ系の脆弱性は、C/C++など低レベル言語で起きやすい印象が強く、「Webアプリ中心の開発では関係が薄い」と思われることもあります。しかし実際には、Webサービスを支える基盤やOSS、ミドルウェア、各種ライブラリにはネイティブ実装が含まれることも多く、アプリケーションの外側でリスクが顕在化するケースも少なくありません。また、メモリ破壊系の脆弱性は、単なるサービス停止(DoS)に留まらず、条件次第では任意コード実行など深刻な侵害につながる可能性があります。攻撃の影響が大きく、対応にも専門性が求められることから、近年あらためて注目されている領域といえます。

そこで後編では、CWE Top 25 2025年版で目立つメモリ系弱点を整理したうえで、なぜ上位に増えているのか、Webサービス運用の観点でどのように備えるべきかを解説します。

メモリ領域の安全に関する脆弱性が上位に増えている理由

CWE Top 25 2025年版ではメモリ安全性に関わる脆弱性が複数ランクインしている傾向もみてとれます。一見すると「これはC言語など低レベル言語の話で、Webアプリ開発とは関係が薄いのでは?」と思われるかもしれません。しかし実際には、Webサービスを提供する側にとっても無視できないテーマになっています。ここでは、2025年版で目立つメモリ系の脆弱性と、上位に増えている背景を整理します。

2025年に目立つメモリ系6項目

CWE Top 25 2025年版の中で、特にメモリ領域の安全性に関連する項目としては以下が挙げられます。

  1. CWE-787:範囲外の書き込み
  2. CWE-416:解放したメモリの使用
  3. CWE-125:範囲外の読み取り
  4. CWE-476:NULLポインター逆参照
  5. CWE-121:スタックベースバッファオーバーフロー
  6. CWE-122:ヒープベースバッファオーバーフロー

これらは主にC/C++言語などで発生しやすい脆弱性で、メモリ破壊を起点としてアプリケーションの異常動作やクラッシュ、条件次第では任意コード実行にまでつながる可能性があります。

メモリ系が“ランク上昇”した背景

OSS・ミドルウェア・実行環境の影響が大きい

近年のシステム開発では、自社でゼロからすべてを実装することはほとんどありません。
Webアプリケーション自体は高水準言語(Java、PHP、Python、Ruby、JavaScriptなど)で書かれていたとしても、実際には裏側で多くのソフトウェア資産に依存しています。 例えば、以下のような領域はネイティブ実装(C/C++など)が含まれることが多く、メモリ安全性の影響を受けやすい代表例です。

  • 画像・動画の変換や解析
  • 圧縮・解凍処理
  • 暗号処理
  • OSやコンテナの周辺コンポーネント
  • Webサーバやロードバランサなどの基盤ソフトウェア

つまり「アプリはWebだからメモリ破壊は関係ない」と切り分けるのではなく、サービス全体を構成する要素としてメモリ安全性の弱点が影響し得る、という視点が必要になります。

「攻撃が成立した時のインパクト」が大きい

メモリ破壊系の脆弱性は、単にアプリがダウンする(DoS攻撃等の影響による)だけでなく、条件がそろうと攻撃者にとって非常に強力な結果につながることがあります。たとえば、任意コード実行や権限奪取の足がかりになるケースもあり、被害の深刻度が高くなりやすい点が特徴です。

Webアプリケーションの脆弱性は「データが漏れる」「不正操作される」といった被害が中心になりやすい一方で、メモリ系は侵害の方向性が変わり、“システムそのものの制御”に影響する可能性がある点で性質が異なります。このインパクトの大きさが、ランキング上でも目立ちやすい要因の一つです。

“開発者の気付き”だけでは防ぎにくい

XSSやSQLインジェクションは、実装者の意識と共通部品の整備で減らしていける領域です。一方でメモリ安全性の弱点は、そもそも自社コードではなく、依存しているライブラリやミドルウェアの脆弱性として露出することも少なくありません。この場合、開発者が気を付けて実装していても防ぎきれず、必要になるのは次のような対策です。

  • 利用コンポーネントの把握(棚卸し)
  • 脆弱性情報の継続的な収集
  • バージョンアップ・パッチ適用の判断と運用
  • 影響範囲の評価(どの機能が影響を受けるか)

つまり、メモリ系の脆弱性は「作り込みで防ぐ」だけではなく、運用で守る力も問われる領域だと言えます。

脆弱性対応は「作り込み」+「運用」の両輪

Webアプリケーションのセキュリティ対策というと、入力チェックや認可実装など“作り込み”に注目が集まりがちです。もちろんこれは重要ですが、メモリ系の弱点が示すように、脆弱性対応には運用面の強さも求められます。

運用面で意識したいポイントは、以下のように整理できます。

  • 利用しているライブラリ/ミドルウェアの把握(棚卸し)
  • 脆弱性情報の継続的な収集と影響評価
  • パッチ適用・アップデートの判断と実施
  • 監視・ログによる異常兆候の検知
  • 必要に応じた防御策(WAFなど)による被害軽減

特に「アップデートできる体制があるか」「影響範囲を素早く見積もれるか」は、脆弱性が公開された際の対応スピードに直結します。メモリ系の脆弱性は影響が大きくなりやすい分、発覚後の初動が被害を左右するため、日頃から“運用で守る仕組み”を整えておくことが重要です。

脆弱性診断でどう確認するか(診断観点の例)

メモリ領域の安全性の脆弱性は、Web/APIの脆弱性とは性質が異なり、「画面やAPIを触るだけでは見えにくい」ケースもあります。そのため、脆弱性診断ではアプリケーションの挙動確認に加えて、実装・構成・依存関係といった複数の観点からリスクを洗い出すことが有効です。

Webアプリケーション診断/API診断

実際の画面・APIに対して攻撃パターンを当て、脆弱性が成立するかどうかを確認します。
メモリ系の弱点そのものを直接検出するのは難しい場合もありますが、前編で整理した認可不備・IDOR・SSRF・ファイル関連など、実被害につながりやすい脆弱性を網羅的に確認できる点が強みです。

ソースコード診断(SAST)

危険な実装パターンや、入力値の扱い方、権限判定の実装の偏りなどを、コードレベルで洗い出せる手法です。メモリ領域の安全性の観点でも、ネイティブコードを含む箇所や危険APIの利用状況、例外処理の不足などを確認することで、潜在的なリスクを把握しやすくなります。特に、開発を継続しながら対策を積み上げる場合、設計や共通部品の見直しにも活用できます。

プラットフォーム診断/OSS観点(依存関係・構成)

メモリ系の脆弱性を含む“依存資産のリスク”に対応するには、構成・依存関係の観点が欠かせません。アプリケーションの外側に原因がある場合、どれだけアプリの実装を直してもリスクが残るためです。「脆弱性が出たときに、すぐ把握できる・すぐ対応できる」状態を作ることが、結果的にリスクを下げる近道になります。

まとめ

CWE Top 25 2025年版から読み取れるのは、Webアプリ・APIで頻出する脆弱性が依然として事故につながりやすい一方で、メモリ安全性のように“アプリの外側”に潜むリスクも無視できない存在になっているという点です。この2つを両立できるかどうかが、2025年のセキュリティ対策の分かれ道になると言えます。

“定期的な診断+改善”でリスクを下げる

脆弱性対策は、一度対応して終わりではなく、仕様変更・機能追加・依存資産の更新によって状況が変化します。だからこそ、CWE Top 25のような指標を参考にしながら、第三者視点の脆弱性診断で現状を確認し、優先度を付けて改善していくことが有効です。Webアプリケーション診断・API診断・ソースコード診断を組み合わせることで、「攻撃が成立するポイント」と「根本原因」を整理しやすくなり、修正の手戻りを減らしながら安全性を高められます。継続的な診断と改善を通じて、インシデントの予防と品質向上につなげていきましょう。

BBSecでは

「どこが危ないのか」を把握しないまま対策を進めると、重要な弱点が残ったり、修正の手戻りが増えたりすることがあります。Webアプリケーション/APIの脆弱性診断により、実際に攻撃が成立するポイントを洗い出し、優先度を付けて改善につなげることが可能です。まずは現状の課題や診断範囲について、お気軽にご相談ください。

限定キャンペーン実施中!

ソースコード診断 アップチャージプランのご案内

Web診断に加えて、アプリケーション内部の脆弱性を確認できるソースコード診断(アップチャージプラン)もご用意しています。

詳細・お申し込みボタン

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

見えない部分のセキュリティは忘れられがち
―メモリ領域の安全を考える―

Share

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

いまメモリの安全に関して、その重要性がますます注視されています。OSやアプリケーションを動作させるために必要なデータやプログラムは、そのほとんどが一度メモリ領域に展開されているため、メモリ領域が侵害された場合、実行中のソフトウェアから生きた情報が抜き出されてしまいます。にもかかわらず、メモリ領域のセキュリティは忘れられがちです。本記事では、メモリ領域に存在する脆弱性の脅威と、それを保護するためにどのようなセキュリティ対策を講じればよいのかについてご紹介します。


「メモリ」はコンピュータ用語では「記憶装置」や「記憶媒体」のことを指し、「メモリ領域」とは、その記憶媒体に保存されたプログラムを実行するときに、当該プログラムをロードするメモリの記憶領域を指します。つまり、OSやアプリケーションを動作させるために必要なデータやプログラム、プログラムの実行ロジックそのものまで、すべてがメモリ領域に存在しているといえるため、セキュリティ対策を行う上ではメモリ領域の安全を考えることが非常に重要となります。メモリ領域が侵害されると、実行中のソフトウェアから生きたデータを抜き出すことが可能となり、機微情報が悪意ある第三者に漏洩したり、プログラムの処理が改竄されることで不正に実行されたりする危険性があります。

2020年5月、Googleは2015年以降にChromeのコードベースで存在が確認された重要度の高い脆弱性のうち、約70%がメモリの安全性に関する問題であることを明らかにしました。メモリの安全に関する問題については、過去にMicrosoft社も同様に警鐘を鳴らしており、世界全体で毎年登録・公開される脆弱性において、常に20%程度をメモリ関連の脆弱性が占めています。

図1:Chromiumプロジェクトにおけるhigh以上の脆弱性

解放済みメモリに関連する脆弱性
他のメモリ関連の脆弱性
その他
セキュリティ関連のアサート

出典:
https://www.chromium.org/Home/chromium-security/memory-safety
より当社翻訳

普段OSやアプリケーションを使用する際、動作過程においてメモリ領域でどのような処理が実行されているかを深く意識する人は少ないでしょう。プログラムは、メモリ領域にすべてを展開して処理します。プログラムそのものもメモリ領域に存在しており、接続する各種デバイスも連携時にメモリ領域にて処理や制御が行われています。そんなシステムの根幹だからこそ、メモリ領域のセキュリティは万全であるべきですが、残念ながら脆弱性は存在し、攻撃者にとって格好のターゲットとなりえます。

図2:「メモリ領域への展開」の概要

メモリ関連の脆弱性、特にメモリ領域に関連する脆弱性の原因は、主にC/C++のポインタ周りのコーディングミスによるもので、代表的な脆弱性として、バッファオーバーフロー、領域外読み取り、Use-after-free(解放済メモリの再利用)といったものがあげられます。C/C++のメリットの一つにメモリ領域管理での柔軟性があり、それが処理の高速性をもたらす一方で、脆弱性を生み出すという皮肉な結果に結びついているのです。

図3:主要プログラミング言語と現在利用されている代表的分野

メモリ領域を狙った攻撃にはステルス性が高く、一般的な攻撃検知策では検知が困難なケースもあり、また、被害も甚大となる可能性があります。近年ではニュース等で「Spectre」、「Meltdown」といった単語をよく耳にしたことでしょう。これらはCPUの脆弱性を突くものですが、メモリ領域へのアクセスにおいて、CPUを介さずに各種デバイスとメモリ間でデータ転送を直接行うDMA(Direct Memory Access)にもセキュリティ脅威は存在します。DMA攻撃については、Thunderbolt経由でデータへの完全なアクセスを得ることが可能となる「Thunderspy攻撃」が記憶に新しいかもしれません。DMAはメモリへの直接アクセスによりデータ転送の高速化を実現する一方で、その有効性が攻撃者に逆手に取られ、悪用される事態が後を絶ちません。

プログラムの実行順序や構造が、まるでスパゲティが絡まったように複雑に入り組んでおり整然としないプログラムを「スパゲティプログラム」などといいますが、昨今はメモリ領域内でも複数のアプリケーションや制御処理が複雑に連鎖・連携・連動し、似たような状態に陥っていることも珍しくありません。こうしたすべてを把握することは困難であり、将来においてはさらに複雑化していくでしょう。

メモリ領域は「美味み」と「鮮度」を兼ね備えており、攻撃者にとっては非常に魅力的なターゲットといえます。また以前に比べて、現在は標準的なシステムでもメモリ領域は潤沢で、迅速な処理が実行可能となったことや、リソースの利便性が向上したことにより、今後もメモリ領域への依存性が高まることは容易に想定されます。

潤沢となったメモリ利用例
・クラウド環境などの仮想化
・外部媒体とのデータ通信
・AI化およびビックデータの統計処理

以上の点から、メモリ領域を保護するためにセキュリティ対策として、システム自体、あるいは周辺機器に対する物理的な対策を除いた場合、一例として次の3つの観点と対策が考えられます。


実行プログラムに対する脆弱性対策
メモリ関連処理のロジックを正しく制御させ、ソースコード内に脆弱性を作りこまないようにする。

アプリケーションを実行させる環境に対する脆弱性対策
パッチの適用やアップデートなどを徹底し、プラットフォーム環境や関連するデバイス制御などに既知の脆弱性がないことを確認する。

メモリ領域を防御するセキュリティソリューションの導入
アプリケーションメモリファイアウォール等、メモリ領域の保護に特化したソリューションを導入、運用する。


メモリ領域には多種多様なプログラムが存在し、連携・連動しています。そのため、小さなセキュリティホールでも悪用されれば大きな被害を生む恐れがあります。プログラムも所詮、最終的には人間が作るものであり、「人間はもともとミスを起こしやすい動物である」とは人間工学でもいわれていることです。どんなに完璧なコーディングをしたと思っても、複雑化された構造の中にミスやエラーが埋もれてしまっているかもしれません。開発において当然テストはするでしょう。しかし、セキュリティを考慮しないテストでは正常動作の確認が主であり、『アクセス違反』(Access Violation)を見つけることに集中しがちです。

そのため、メモリ領域の脆弱性に関連するセキュリティ向上策の一つとして、セキュリティの観点からテストを行う「ソースコード診断」の実施も有効と言えるでしょう。

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像