ゼロデイ脆弱性とは?最新事例と企業が取るべき対策を解説

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ゼロデイ脆弱性は、修正パッチが提供される前に悪用される極めて危険な脆弱性です。ChromeやFirefox、VPN機器など、企業で日常的に利用される製品でも継続的に確認されており、情報漏えいや業務停止につながるケースもあります。本記事では、ゼロデイ脆弱性の基本的な仕組みや実際の被害事例、従来対策が通用しにくい理由を整理しながら、企業に求められる現実的な対策について解説します。

ゼロデイ脆弱性が実際にどのように悪用されるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策

本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。記載している脆弱性情報やCVE詳細は、公開後に内容が更新される場合があります。最新情報は各ベンダーおよびNVD・CISAの公式情報をご確認ください。

はじめに

ChromeやFirefoxなど、日常業務で広く使われている主要ブラウザでも、ゼロデイ脆弱性は繰り返し確認されています。ゼロデイ脆弱性とは、製品ベンダーや利用企業が十分な修正猶予を持てないまま悪用される、極めて危険度の高い脆弱性です。企業にとってゼロデイ脆弱性が厄介なのは、単に危険な脆弱性であるという点だけではありません。多くの場合、攻撃が確認された時点では、すでに悪用が始まっているか、修正パッチの適用が間に合っていない状態です。つまり、通常のパッチ管理や既知のマルウェア検知だけでは、防御が後手に回る可能性があります。 Webブラウザ、VPN機器、セキュリティ製品、業務アプリケーション、開発支援ツールなど、企業活動を支えるソフトウェアの多くは、常に外部との接点を持っています。そのため、ゼロデイ脆弱性は情報漏えい、業務停止、信用毀損、取引先への影響といったビジネスリスクに直結します。まず押さえたいのは、ゼロデイ脆弱性を悪用した攻撃に対し、完全に避けるのではなく、発生を前提に、侵入されにくく、侵入されても早期に検知し、被害を抑え込める体制を整えることです。

ゼロデイ脆弱性とは何か

ゼロデイ脆弱性とは、製品ベンダーや利用者がまだ十分に把握していない、または修正パッチが提供されていない脆弱性を指します。「ゼロデイ」という言葉は、攻撃者に悪用される可能性があるにもかかわらず、防御側に残された対応猶予が実質的にゼロ日であることに由来します。ここで整理しておきたいのが、「脆弱性」と「攻撃」は同じものではないという点です。脆弱性は、ソフトウェアやシステムに存在するセキュリティ上の欠陥です。一方で、ゼロデイ攻撃は、その未知または未修正の欠陥を悪用して、情報の窃取、権限昇格、不正コード実行、システム侵入などを行う攻撃行為を指します。NIST(米国立標準技術研究所)では、ゼロデイ攻撃を「これまで知られていなかったハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアの脆弱性を悪用する攻撃」と定義しています。

たとえば、あるブラウザに不正なHTMLページを処理した際に任意のコード実行につながる欠陥があったとします。その欠陥自体がゼロデイ脆弱性であり、攻撃者が細工したWebページへ利用者を誘導して実際に悪用すれば、それがゼロデイ攻撃になります。CVEはこうした脆弱性を識別するための共通番号であり、NVD(米国国立脆弱性データベース)ではCVEプログラムについて、「特定のコードベースで確認された脆弱性を参照するための辞書、または用語集のような仕組みだ」と説明しています。

なぜゼロデイ脆弱性は危険なのか

ゼロデイ脆弱性が危険視される最大の理由は、修正パッチが存在しない、または広く適用される前に攻撃が始まることです。一般的な脆弱性対応では、ベンダーが脆弱性情報を公開し、修正パッチを提供し、企業が影響範囲を確認して適用するという流れになります。しかしゼロデイの場合、この順番が崩れます。攻撃者が先に脆弱性を把握し、攻撃に利用してから、ベンダーや利用者が気づくことがあるためです。もう一つの問題は、従来型のシグネチャ検知が効きにくいことです。シグネチャ型のセキュリティ対策は、既知のマルウェアや既知の攻撃パターンを検出するうえでは有効です。しかし、まだ十分に解析されていない攻撃コードや、新しい悪用手法に対しては、検知が遅れる可能性があります。NISTの関連文献でも、「ゼロデイ攻撃は未知の脆弱性を悪用するため従来のシグネチャ型検知では事前に攻撃シグネチャを用意できず有効性に限界がある*1」とされています。

ゼロデイ攻撃は、標的型攻撃にも使われやすい傾向があります。攻撃者にとって、未修正の脆弱性は価値の高い侵入口です。特に、ブラウザ、VPN、ファイアウォール、メールサーバ、リモートアクセス製品、エンドポイント管理製品などは、企業ネットワークの入口や重要な業務環境とつながっているため、攻撃が成功した場合の影響が大きくなります。 ビジネス面では、ゼロデイ脆弱性の悪用は情報漏えい、業務停止、顧客対応コストの増加、監督官庁や取引先への報告、ブランド信用の低下などに発展します。攻撃の起点が一台の端末や一つのWebアクセスであっても、その後に認証情報の窃取、横展開、機密情報の持ち出しが行われれば、被害は組織全体へ拡大します。

実際の被害事例

Google Chromeで相次いだゼロデイ脆弱性

ゼロデイ脆弱性の代表的な事例として、Google Chromeの脆弱性が挙げられます。Chromeは多くの企業で標準ブラウザとして利用されており、Webメール、SaaS、業務システム、クラウド管理画面などへのアクセスにも使われています。そのため、Chromeのゼロデイ脆弱性は、単なる個人利用者向けブラウザの問題ではなく、企業の業務端末リスクとして捉える必要があります。

2025年には、Chromeで悪用が確認されたゼロデイ脆弱性が複数回修正されました。BleepingComputerでは、2025年から2026年にかけてChromeは複数のゼロデイ脆弱性を修正したと報じています*2。2026年2月には、CVE-2026-2441が修正されました。NVDによれば、この脆弱性はChromeのCSSにおけるUse After Free(解放済メモリの再利用)の問題であり、 Google Chrome 145.0.7632.75より前のバージョンでは、細工されたHTMLページを介してリモート攻撃者がサンドボックス内で任意のコードを実行できる可能性がありました。GoogleのChrome Releasesでも、この脆弱性について「実際に悪用が確認されている」旨が記載されています。2026年3月には、CVE-2026-3909CVE-2026-3910が修正されました。CVE-2026-3909は「Skia(Chromeが使用するグラフィック処理ライブラリ)における境界外の書き込み」で、細工されたHTMLページを介して境界外メモリアクセスにつながる可能性があります。CVE-2026-3910は「V8(ChromeのJavaScript実行エンジン)における不適切な実装」で、細工されたHTMLページを介してサンドボックス内で任意のコード実行が可能となるおそれがありました。GoogleはCVE-2026-3910について、「実際に悪用が確認されている」と公表しています。また、2026年3月末にはCVE-2026-5281も修正されています。NVDによれば、これはChromeのDawnにおける解放済メモリの再利用の脆弱性で、レンダラープロセスが侵害された状態で、細工されたHTMLページを通じて任意のコード実行につながる可能性があるものです。Googleはこの脆弱性についても、「実際に悪用が確認されている」と公表しています。

これらの事例が示しているのは、Webブラウザが単なる閲覧ツールではなく、企業ネットワークへの入口になり得るということです。利用者が業務中にWebサイトを閲覧する、SaaSへアクセスする、メール内のリンクを開くといった日常的な操作が、ゼロデイ攻撃のきっかけになる可能性があります。

OpenAI Codexに関するサンドボックス迂回の事例

近年は、開発支援ツールやAI関連ツールもゼロデイリスクの対象になっています。Zero Day Initiativeは2026年4月、OpenAI Codexに関するZDI-26-305を公開しました*3。この脆弱性は、影響を受けるOpenAI Codex環境においてサンドボックスを迂回できる可能性があるものとされ、攻撃には、「標的ユーザーが悪意あるJavaScriptを含むリポジトリをCodexで処理する必要がある」と説明されています。OpenAI Codex CLIでは2025年にも、サンドボックス設定ロジックの問題により、意図したワークスペース境界を迂回し、Codexプロセスが権限を持つ範囲で任意のファイル書き込みやコマンド実行につながる可能性がある脆弱性が、GitHub Security Advisoryで公開されています*4。この問題はCodex CLI 0.39.0で修正され、利用者には更新が推奨されています。

この事例から分かるのは、ゼロデイ脆弱性がOSやブラウザだけの問題ではないということです。開発者が利用するCLIツール、AIエージェント、コード生成支援ツール、CI/CD環境も、企業の重要な攻撃面になりつつあります。特に、ソースコード、認証情報、クラウド設定、APIキーにアクセスする可能性があるツールでは、サンドボックスや権限管理を過信しない運用が必要です。

ゼロデイ攻撃の仕組み

ゼロデイ攻撃の流れ概要図

※ゼロデイ攻撃では、脆弱性公開前や修正前に攻撃が始まるため、従来型のシグネチャ検知だけでは防御が難しい場合があります。

ゼロデイ攻撃は、脆弱性の発見から攻撃実行までが非常に速い場合があります。攻撃者は、ソフトウェアの不具合を独自に発見することもあれば、脆弱性情報が闇市場や限定的なコミュニティで売買されることもあります。その後、攻撃者はその脆弱性を悪用するエクスプロイトコードを作成し、標的組織に対して攻撃を実行します。まず、未公開または未修正の脆弱性が発見されるところから始まります。次に、その脆弱性を悪用するための攻撃コードが作成されます。ブラウザの脆弱性であれば、細工されたHTMLページやJavaScriptが使われることがあります。VPNや外部公開サーバの脆弱性であれば、インターネット越しに直接攻撃が行われることもあります。攻撃が成功すると、攻撃者は端末やサーバへ侵入し、認証情報の取得、権限昇格、内部ネットワークへの横展開を試みます。その後、機密情報の収集、データの持ち出し、ランサムウェアの展開、バックドア設置などへ進む可能性があります。

ゼロデイ攻撃の基本的な仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策

従来対策が通用しない理由

ゼロデイ脆弱性への対応で難しいのは、従来のセキュリティ対策が必ずしも十分に機能しないことです。もちろん、ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、パッチ管理、メールセキュリティ、URLフィルタリングといった対策は今でも重要です。しかし、ゼロデイ攻撃では、これらをすり抜ける可能性があります。シグネチャ型対策は、既知の攻撃には強い一方で、未知の攻撃には限界があります。攻撃コードが新しく、まだ検体や攻撃パターンが共有されていない場合、検知ルールが存在しないことがあります。さらに、攻撃者は正規のWeb通信、正規のプロセス、正規の認証情報を利用して侵入後の活動を行うため、外形上は通常の業務通信に見えることもあります。また、境界防御だけに依存した対策では対応が難しいケースも増えています。クラウドサービスやリモートワークの拡大により、従来の「社内は安全」という前提だけでは、ゼロデイ攻撃のような未知の脅威への対応が難しくなっています。ゼロデイ攻撃では、社内端末、クラウドアカウント、開発端末、外部公開資産のどこからでも侵入口が生まれる可能性があります。

ゼロトラストの考え方を含め、従来型セキュリティ対策の課題については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ゼロトラストセキュリティ -今、必須のセキュリティモデルとそのポイント-

ゼロデイ脆弱性への対策

ゼロデイ脆弱性への対策では、未知の攻撃を完全に防ぐことだけでなく、侵入後の被害を最小限に抑えるアプローチが重要です。ゼロトラストに基づく権限管理や多要素認証に加え、EDRやXDRによる侵入後の検知、ASMによる攻撃面の把握、SOCによる継続監視などを組み合わせた多層的な対策が求められます。

ゼロデイ攻撃対策を支援するBBSecのアプローチ

ゼロデイ攻撃へ備えるには「脆弱性情報を知ること」だけでなく、「自社がどの製品を利用しているのか」「どこが外部公開されているのか」を知ることで自社環境への影響を迅速に把握し、継続的に監視・対応できる体制を持つことが重要になります。

ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、EDR-MSSによる侵入後の検知・対応、G-MDRによる高度な脅威分析、ASMによる攻撃面の可視化を通じて、企業のゼロデイ対策を支援しています。ゼロデイ脆弱性への備えを強化したい方は、以下のサービスページもあわせてご覧ください。

ASM(アタックサーフェス管理)の考え方や、攻撃面を継続的に把握する重要性については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
脆弱性管理とIT資産管理 -サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

まとめ

ゼロデイ脆弱性は、主要ブラウザやVPN機器、業務ソフトウェアなど、企業が利用するさまざまな環境で発生する可能性があります。ゼロデイ攻撃による被害を抑えるためには、パッチ管理だけでなく、ゼロトラストに基づく権限管理、EDRやXDRによる侵入後の検知、ASMによる攻撃面の把握、SOCによる継続監視などを組み合わせた多層的な対策が求められます。

【参考情報】


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    情報漏洩対策とは何か ―企業が知るべき原因・リスク・防止策の全体像―

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    情報漏洩対策は、単にウイルス対策ソフトを入れたり、アクセス制限を強めたりするだけでは不十分で、「何が漏れるのか」「なぜ起きるのか」「起きたときに何が起きるのか」「どう防ぐのか」を分けて整理することが重要です。なぜならば、実際の情報漏洩は不正アクセスのような外部からの攻撃だけでなく、誤送信や設定不備、委託先での事故など、日常業務の延長線上で発生することが少なくないためです。

    個人情報保護委員会は、漏えい等事案への対応体制の整備や定期的な点検、見直しの必要性を示しており、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)でも企業の情報セキュリティ対策を経営課題として継続的に進める必要があるとしています。本記事では、情報漏洩対策の全体像や基本的な考え方について整理します。

    情報漏洩がなぜ起きるのか、実際の原因や事例については以下の記事で詳しく解説しています。
    情報漏洩はなぜ起きるのか ―企業で多い原因と最新事例から見るリスクの実態―

    情報漏洩とは何か

    情報漏洩とは、本来アクセス権限を持たない第三者に、企業が保有する情報が意図せず、あるいは不正に渡ってしまうことを指します。ここでいう情報には、顧客情報や従業員情報のような個人情報だけでなく、営業秘密、契約情報、設計情報、認証情報、メール本文、取引先とのやり取り、さらにはクラウド上で扱う業務データまで含まれます。

    個人情報保護委員会が公表している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」でも、個人データの漏えい等を防ぐために安全かつ適切な管理措置を講じるための内容が示されており、企業にとって情報漏洩は法務、経営、現場運用のすべてに関わる問題です。

    近年、情報漏洩がより起こりやすくなっている背景には、業務のデジタル化が急速に進んだことがあります。クラウドサービスやSaaSの利用拡大により、データは社内サーバだけでなく外部環境にも分散して保存・共有されるようになりました。その結果、設定不備や共有範囲の誤りが事故の起点になる場面が増えています。

    さらに、委託先や外部サービスを含めたサプライチェーン全体で情報を扱うことが当たり前になり、自社だけを守っていればよい時代ではなくなっています。経済産業省でも国内外のサプライチェーンでつながる関係者への目配りの必要性を明記しており、IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」でもサプライチェーンや委託先を狙った攻撃が上位に挙げられています。

    情報漏洩が企業に与える影響

    情報漏洩が起きた企業に生じる大きな影響は以下のとおりです。

    信用低下

    まず生じるのは、信用の低下です。漏洩した情報の件数や内容だけでなく、「管理が甘い企業ではないか」「再発防止ができるのか」といった不信感が、顧客や取引先、株主、採用候補者にまで広がります。情報セキュリティ事故は単発のITトラブルではなく、企業の信頼基盤そのものを揺るがす経営リスクとして扱う必要があります。経済産業省およびIPAが公開している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」でもサイバーリスクを経営者が主導して把握し、組織的に対処すべき課題として位置付けています。

    損害賠償・対応コストの増大

    漏洩の可能性が判明した後には、事実関係の調査、影響範囲の特定、本人通知、関係機関への報告、公表、問い合わせ対応、再発防止策の策定など、多くの業務が短期間に発生します。個人情報保護委員会のガイドラインでも、漏えい等事案の発生時には、調査、本人通知、報告、再発防止策の決定、公表などを行う体制をあらかじめ整備しておくことが求められています。つまり、情報漏洩対策は事故後のためにも必要であり、平時の備えが不十分だと、事故後の負担はさらに重くなります。

    事業停止の可能性

    さらに、情報漏洩は事業停止リスクにも直結します。不正アクセスやランサムウェア攻撃を伴うケースでは、単なる情報流出にとどまらず、システム停止や業務遅延、取引停止が同時に発生することがあります。

    JPCERT/CCが2021年11月に公開した資料「経営リスクと情報セキュリティ  ~ CSIRT:緊急対応体制が必要な理由 ~」の中で、インシデント発生時には対処方針の決定、問題解決、収束、再発防止の分析、教育啓発までを含めた緊急対応体制が必要であると整理しています。情報漏洩は「漏れたら終わり」ではなく、「漏れた瞬間から事業継続の問題になる」という視点が重要です。

    情報漏洩による影響や損失の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
    サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

    情報漏洩が起きる主な原因

    情報漏洩の原因として最も見落とされやすいのが、人的ミスです。宛先の誤送信、ファイルの添付ミス、書類の紛失、権限設定の誤り、持ち出しルール違反などは、特別な攻撃を受けなくても起こります。個人情報保護委員会の年次報告でも、書類の誤交付や紛失、誤送付といった事案が多く見られるとされています。情報漏洩という言葉から外部攻撃を想像しがちですが、実務では人の確認不足やルール運用の甘さが起点になる事故が依然として多いのが実態です。

    一方で、近年無視できないのが不正アクセスによる情報漏洩です。個人情報保護法サイバーセキュリティ連絡会が公表した資料「不正アクセス発生時のフォレンジック調査の有効活用に向けた着眼点」(令和8年1月16日)でも、不正アクセス被害は近年多発しており、同委員会が受け付ける不正アクセスによる漏えい等報告件数も増加していると明記しています。また、「令和6年度個人情報保護委員会 年次報告」では、SaaS事業者への不正アクセスが多数の利用企業に影響した事案の影響も含まれるものの、不正アクセス由来の報告件数が大きく増えたことが示されています。この点は、企業が自社環境だけでなく、利用中のサービスや委託先のセキュリティ状況も確認しなければならないことを意味します。

    さらに、委託先やサプライチェーン経由の漏洩リスクも大きくなっています。自社では適切に管理していても、外部ベンダー、運用委託先、クラウドサービス事業者、グループ会社のいずれかに弱点があれば、そこが侵入口になります。

    情報漏洩がなぜ起きるのか、実際の原因や事例については以下の記事で詳しく解説しています。
    情報漏洩はなぜ起きるのか ―企業で多い原因と最新事例から見るリスクの実態―

    委託先や外部サービスを経由したリスクについては、サプライチェーン攻撃の記事も参考になります。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    企業が取るべき情報漏洩対策

    企業の情報漏洩対策は、技術対策、運用対策、組織・体制整備の三層で考えると整理しやすくなります。

    技術対策

    アクセス制御、認証強化、ログ取得、暗号化、端末管理、バックアップ、脆弱性対応などが含まれます。ただし、技術対策だけでは事故を防ぎきれません。たとえばアクセス制御の仕組みがあっても、権限付与の運用が曖昧であれば過剰権限が残り、ログを取っていても見直されなければ不審な操作に気付けません。

    運用対策

    運用対策として重要なのは、ルールを定めることではなく、現場で守られる状態をつくることです。個人情報保護委員会は、安全管理措置として、組織的、人的、物理的、技術的な観点での対応を示しています。これは裏を返せば、教育や承認手続、持ち出し管理、点検、監査、見直しまで含めて初めて情報漏洩対策になるということです。従業員教育を年一回実施しただけで対策済みとは言えず、権限棚卸しやルールの実効性確認が継続して回っているかが問われます。

    組織・体制整備

    事故が起きたときに誰が判断し、誰が調査し、誰が報告し、誰が公表を担うのかを曖昧にしないことも重要です。個人情報保護委員会のガイドラインは、漏えい等事案の発生時に備えた報告連絡体制や対応体制の整備を求めています。また、JPCERT/CCは、緊急対応、分析、普及啓発、注意喚起、演習を含めた機能の必要性を示しています。情報漏洩対策は、製品導入の話ではなく、事故前提で回る組織づくりの話でもあります。

    具体的な情報漏洩対策や運用のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    企業の情報漏洩対策 ―すぐに実践できる防止策と運用のポイント―

    まず何から始めるべきか

    情報漏洩対策を強化したい企業が最初にやるべきことは、新しいツールを入れることではなく、「現状把握」です。どの情報を、どこで、誰が、何の目的で扱っているのかが見えていなければ、守るべき対象も優先順位も定まりません。

    IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、情報資産を洗い出し、台帳化し、重要度に応じて管理することが実践の出発点として示されています。情報漏洩対策は、漠然とした不安に対して製品を足していくのではなく、自社の重要情報と業務フローを見える化するところから始めるべきです。さらにそのうえで、優先順位付けも必要になります。すべてを同じ強さで守るのではなく、情報漏洩時の影響が大きい情報、外部共有が多い情報、委託先を含めて扱われる情報、インターネット経由でアクセスされる情報から順に見直すほうが実務的です。また、「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」でも、リスクの識別と変化に応じた見直しの重要性が示されています。情報漏洩対策は一度整えたら終わりではなく、事業環境や利用サービスの変化に応じて見直し続ける運用そのものが重要です。

    どの対策を優先すべきかについては、脆弱性管理の考え方が重要になります。以下の記事もあわせてぜひご覧ください。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

    まとめ

    情報漏洩対策とは、個人情報や機密情報が外部に漏れるのを防ぐための技術、運用、組織的な取り組み全体を指します。実際の情報漏洩は、人的ミス、不正アクセス、設定不備、委託先事故など複数の原因で発生し、企業には信用低下、対応コスト増大、事業停止といった深刻な影響をもたらします。だからこそ、企業は「攻撃を防ぐ」だけでなく、「漏れてしまう前提で備える」視点を持たなければなりません。重要なのは、守るべき情報を把握し、優先順位を付け、技術対策と運用対策と体制整備を一体で進めることです。公的ガイドラインでも、体制整備、点検、監査、教育、報告連絡体制の重要性が繰り返し示されています。情報漏洩対策は、担当者任せの部分最適ではなく、企業全体で継続的に回すべき経営課題です。

    具体的な情報漏洩対策や運用のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    企業の情報漏洩対策 ―すぐに実践できる防止策と運用のポイント―

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    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

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    企業のIT環境は、もはや社内サーバーやネットワーク機器だけで完結しません。業務システムはクラウドへ移行し、開発現場ではOSSの利用が当たり前になり、SaaSやコンテナ、API連携を含めた複雑な構成が一般化しています。こうした環境では、ひとつの脆弱性が単独の問題にとどまらず、情報漏えい、業務停止、サプライチェーン全体への影響へとつながることがあります。だからこそ今、多くの企業にとって重要になっているのが「脆弱性管理」です。

    脆弱性管理とは、脆弱性を見つけることそのものではありません。自社にどの資産があり、どこに弱点があり、それがどの程度危険で、いつまでに何を直すべきかを継続的に判断し、実際に改善し続ける運用を指します。本記事では、脆弱性管理の基本から、企業が実務で押さえるべき流れ、ツールの考え方、クラウドやOSS時代に欠かせないSBOMの活用まで、2026年時点の実務に沿って整理します。

    脆弱性管理とは

    脆弱性管理とは、システムやソフトウェア、クラウド環境、ネットワーク機器などに存在するセキュリティ上の弱点を継続的に把握し、評価し、修正し、再確認する一連の運用です。単発の診断や一度きりの点検ではなく、変化し続けるIT環境に合わせて回し続けることに意味があります。CISAも、脆弱性管理を「脆弱性や悪用可能な状態の発生頻度と影響を減らす取り組み」と位置づけています。

    脆弱性管理では、日々公開される脆弱性情報を継続的に確認することが重要です。多くの脆弱性は CVE(Common Vulnerabilities and Exposures) という識別番号で管理されています。CVEの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    CVEとは?脆弱性情報の共通識別番号を解説

    CVEは、公開されたサイバーセキュリティ上の脆弱性を識別し、共通の参照先として扱うための仕組みです。一方、NVDはそのCVE情報に対してCVSSなどの評価情報や関連データを付与し、脆弱性管理の自動化や優先順位付けに役立つデータベースとして機能しています。つまり実務では、「CVEで対象を識別し、NVDやベンダー情報で内容と深刻度を確認する」という流れが基本になります。

    現在の企業システムは、オンプレミス環境だけでなく、AWS・Azure・Google Cloud などのクラウド環境やSaaSサービスを組み合わせて構築されるケースが増えています。そのため、脆弱性管理はサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境やソフトウェアコンポーネントも含めて実施する必要があります。クラウドでは、基盤の一部は事業者が管理していても、設定、アクセス権、ゲストOS、コンテナイメージ、アプリケーションなどは利用企業側の責任範囲に残るためです。AWS、Microsoft、Google Cloudはいずれも共有責任モデルを明示しており、利用者側の継続的な管理を前提にしています。

    なぜ企業に脆弱性管理が必要なのか

    企業に脆弱性管理が必要な最大の理由は、脆弱性が「見つかっただけの情報」ではなく、「実際に悪用される入口」になっているからです。公開された脆弱性のすべてが直ちに攻撃に使われるわけではありませんが、CISAは実際に悪用が確認された脆弱性を Known Exploited Vulnerabilities(KEV) Catalog として公開し、組織に優先対応を促しています。つまり現代の脆弱性管理では、公開情報を眺めるだけでなく、「いま悪用されているか」「自社に影響するか」を見極めることが重要です。

    脆弱性を放置するリスクも明確です。攻撃者は、修正が遅れたVPN機器、公開サーバー、業務アプリケーション、ミドルウェア、コンテナ環境などを足がかりに侵入し、そこから権限昇格や横展開を進めます。問題は、重大な脆弱性があっても、自社資産を把握できていなければ「影響を受けているのに気づけない」ことです。脆弱性管理は、修正作業の前段として、自社に何が存在しているかを見える化する意味でも不可欠です。

    さらに、近年はOSS利用の拡大によって、ソフトウェアサプライチェーン全体のリスク管理が重要になっています。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとそのサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と説明しています。OSSライブラリや依存パッケージに脆弱性が含まれていた場合、アプリケーション本体に問題がなくても、企業システム全体に影響が及ぶ可能性があります。これが、いわゆるソフトウェアサプライチェーンリスクです。

    クラウド利用の拡大も、脆弱性管理の必要性をさらに高めています。クラウド環境では、サーバーを一度構築して終わりではなく、構成変更、イメージ更新、コンテナ再配備、アクセス制御変更などが高頻度で発生します。そのため、脆弱性管理を継続的に実施しなければ、未更新のソフトウェアや脆弱なイメージ、設定不備がそのまま攻撃対象になる可能性があります。共有責任モデルのもとでは、クラウド事業者がすべてを守ってくれるわけではありません。自社が責任を持つ範囲を理解し、そこを継続的に点検する必要があります。

    脆弱性管理の基本プロセス

    脆弱性管理の基本プロセスは、一般に以下のような流れです。

    • 脆弱性の発見
    • 脆弱性評価
    • 修正
    • 検証

    ただし実務では、前提としてソフトウェア資産の把握が欠かせません。なぜなら、何を保有しているか分からない状態では、脆弱性情報を受け取っても影響判断ができないからです。NVDのような脆弱性データベースは、脆弱性管理の自動化や評価に使える標準化データを提供していますが、それを生かすには自社資産との突合が必要です。

    脆弱性の発見は、公開情報の確認だけでなく、スキャンツール、構成管理情報、ベンダーアドバイザリ、クラウドのセキュリティ機能など、複数の情報源を組み合わせて行います。次に必要になるのが評価です。ここではCVSSのような一般的な深刻度だけでなく、インターネット公開の有無、業務影響、悪用実績、代替策の有無、修正難易度などを踏まえて、自社にとっての優先度を決める必要があります。NVDも、CVSSは深刻度の定性的な指標であり、リスクそのものではないと明示しています。

    その後、実際に修正を行います。修正方法は、パッチ適用、設定変更、バージョンアップ、アクセス制御の見直し、機能停止、ネットワーク遮断などさまざまです。最後に、修正後の検証を実施し、本当に脆弱性が解消されたか、別の不具合を生んでいないかを確認します。この「修正して終わりにしない」ことが、脆弱性管理を単なる作業ではなく運用として成立させるポイントです。脆弱性管理では、まず自社のIT資産を正確に把握することが重要です。対象にはサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境、利用しているOSSライブラリなども含まれます。

    IT資産管理と脆弱性管理の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とIT資産管理とは?サイバー攻撃から組織を守る取り組み

    近年では SBOM(Software Bill of Materials) を利用してソフトウェア構成を可視化する企業も増えています。SBOMは、ソフトウェアに何の部品が含まれているかを一覧化する考え方で、影響範囲の特定や依存関係の把握に有効です。
    SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由

    脆弱性管理のフロー(実務)

    実務に落とし込むと、脆弱性管理の流れは以下のような順番で整理することができます。

    1. 脆弱性情報の収集
    2. クラウド・OSSへの影響確認
    3. 優先度判断
    4. 修正
    5. 再確認

    まず行うべきは、CVE、ベンダーアドバイザリ、クラウドベンダー通知、各種セキュリティ情報の収集です。ここで漏れがあると、そもそも対応のスタート地点に立てません。CISAは、実際に悪用が確認された脆弱性についてKEV Catalogの確認と優先的な是正を強く推奨しています。

    次に必要なのが、収集した情報が自社環境に関係するかどうかの確認です。オンプレミス機器だけなら比較的見通しが立ちますが、現在はクラウド上のワークロード、コンテナ、OSSライブラリ、CI/CDで取り込んだ部品まで視野に入れなければ、実態を取り逃がします。とくにOSS脆弱性は、アプリケーション本体よりも深い依存関係に潜んでいる場合があり、SBOMやSCAの仕組みがないと把握が難しくなります。

    優先度判断では、CVSSの高さだけで対応順を決めないことが重要です。CVSSは比較の基準になりますが、公開サーバーにあるのか、認証が必要なのか、すでに悪用実績があるのか、業務停止時の影響はどれほどかによって、実際の対応順は変わります。NVDもCVSSをリスクそのものではないと説明しており、KEVのような実悪用情報と組み合わせて判断するのが現実的です。

    修正段階では、パッチ適用だけに視野を限定しないことが大切です。クラウド環境では、OSやミドルウェアの更新に加え、コンテナイメージの差し替え、設定変更、公開範囲の見直し、権限調整なども重要な対策になります。修正後は再スキャンや設定確認を行い、実際に解消されたことを確認します。ここで検証が不十分だと、「対応したつもり」で終わってしまい、後になって再発見されることがあります。

    脆弱性管理では、脆弱性を発見するだけでなく、発見された脆弱性に対して迅速に対応することが重要です。適切な脆弱性対応を行わなければ、攻撃者に悪用され、情報漏えいやシステム停止などの重大なインシデントにつながる可能性があります。脆弱性対応の基本的な流れや実務での対応方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性対応とは?CVE対応とパッチ管理の実務フロ

    近年ではクラウド環境やOSSライブラリに含まれる脆弱性の影響調査も重要になっています。SBOMを利用すると、影響範囲を迅速に把握できます。

    脆弱性管理ツールの種類

    脆弱性管理を実務で回すには、ツールの力を借りることが現実的です。ただし、ひとつの製品で全領域を完全にカバーできるとは限りません。一般的な脆弱性スキャナーは、ネットワーク機器、サーバー、OS、ミドルウェア、Webアプリケーションの既知脆弱性を見つけるのに有効ですが、OSSライブラリの依存関係やソフトウェア部品表までは十分に扱えないことがあります。そこで、管理ツール、クラウドセキュリティツール、SBOM管理ツール、SCAツールなどを役割ごとに組み合わせる設計が必要になります。

    たとえば、CSPMやCNAPPのようなクラウド向けツールは、クラウド設定やワークロードの状態を継続的に可視化するのに向いています。一方、SCAはアプリケーションが依存しているOSSコンポーネントを洗い出し、既知脆弱性との突合を支援します。SBOM管理ツールは、その構成情報を継続管理し、影響調査を効率化する役割を持ちます。2026年の脆弱性管理では、ネットワークやサーバーだけを見ていても不十分で、クラウドとソフトウェアサプライチェーンまで含めた多層的な可視化が必要です。

    OSSの脆弱性を管理するために、SCA(Software Composition Analysis)ツールやSBOM管理ツールを導入する企業も増えています。これは、ソフトウェアの構成部品とその依存関係を可視化しなければ、OSS由来の脆弱性が自社に影響するかどうかを迅速に判断しにくいためです。NTIAも、SBOMをソフトウェア構成要素の透明性向上に役立つ仕組みとして整理しています。

    SCA(Software Composition Analysis)ツールとは
    ソフトウェアに含まれるオープンソースや外部ライブラリの構成要素を解析し、既知の脆弱性やライセンスリスクを可視化するセキュリティツールです。依存関係を自動的に検出し、CVEなどの脆弱性データベースと照合することで、潜在的なリスクを早期に特定できます。また、ライセンス違反の有無も確認でき、コンプライアンス対応にも有効です。開発プロセスに組み込むことで、セキュアで安全なソフトウェア開発を支援します。

    脆弱性スキャンについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
    脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント

    企業の脆弱性管理の課題

    多くの企業が脆弱性管理に苦労する理由は、脆弱性そのものより、管理対象の広がりにあります。

    IT資産の把握

    まず大きいのが、IT資産の把握が難しいことです。クラウド移行、テレワーク、SaaS利用、部門独自導入のツール、コンテナ活用が進むと、情報システム部門が把握していない資産が生まれやすくなります。この状態では、脆弱性情報を受け取っても、自社への影響有無を正確に判断できません。

    OSS依存関係の管理

    現代のソフトウェアは、直接導入しているライブラリだけでなく、その下位の依存関係にも数多くの部品を抱えています。表面的には安全に見えても、深い階層に脆弱なコンポーネントが含まれていることは珍しくありません。

    SBOMの未整備

    SBOMが未整備だと、こうした影響範囲調査に時間がかかり、対応の遅れにつながります。

    クラウド環境の可視化不足

    クラウドでは、責任分界が従来のオンプレミスとは異なり、サービス形態によって利用者側の責任範囲が変わります。そのため、「クラウド事業者が面倒を見ているはず」と誤解してしまうと、更新漏れや設定不備を放置しやすくなります。共有責任モデルを前提に、自社の管理範囲を明確にしなければ、脆弱性管理は形骸化します。

    OSS利用時に重要な脆弱性管理(SBOMの活用)

    OSSの活用は、開発効率や品質向上の面で大きなメリットがありますが、その一方で脆弱性管理を複雑にします。理由は明快で、企業が自分で一から書いていないコードであっても、最終的に自社サービスや製品の一部として責任を負うからです。OSS由来の脆弱性は、アプリケーション本体ではなく依存パッケージに潜んでいることも多く、目視や台帳だけで追いきるのは現実的ではありません。

    ここで重要になるのがSBOMです。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と定義しています。これを整備しておけば、新たな脆弱性が公表された際に、「自社のどのシステムに、その部品が含まれているか」を調べやすくなります。結果として、影響調査の初動が速くなり、不要な全件調査や属人的な確認作業を減らせます。

    SBOMは、単に監査対応のために作る資料ではありません。脆弱性管理の実務で使えてこそ意味があります。たとえば、SCAツールで依存関係を検出し、その情報をSBOMとして管理し、脆弱性公表時に突合するという流れが定着すれば、OSS脆弱性への対応速度と精度を高めやすくなります。今後の企業システムでは、OSS利用時の脆弱性管理をSBOM抜きで考えることは難しくなっていくでしょう。

    脆弱性管理を効率化する方法

    脆弱性管理を効率化する方法はいくつかあります。

    資産管理の自動化

    資産台帳を手作業で維持する運用では、クラウドやコンテナ、SaaSの増減に追いつけません。CMDB、クラウド資産可視化、ID管理、EDRやMDMの情報などを組み合わせて、現時点の資産情報を継続的に更新できる状態を目指す必要があります。資産情報が整えば、脆弱性情報との突合精度も上がります。

    OSS脆弱性監視

    OSS脆弱性監視の仕組みを作ることも重要です。開発時点だけでなく、運用中のアプリケーションについても、依存ライブラリの脆弱性を継続監視しなければなりません。脆弱性管理をインフラ部門だけの仕事にせず、開発部門やDevOps運用の中に組み込むことが、今の実務では不可欠です。

    SBOMによるソフトウェア構成管理

    SBOMによるソフトウェア構成管理を取り入れることで、影響調査の速度と精度をさらに高められます。SBOMが整っていれば、新たなCVEが公表された際にも、対象ソフトウェアの所在確認を短時間で進めやすくなります。加えて、KEVのような実悪用情報を監視し、CVSSだけでなく悪用実績も含めて優先順位を決める運用にすれば、限られた人員でも効果的に対応しやすくなります。脆弱性管理を効率化するとは、単にツールを増やすことではなく、「見つける」「判断する」「直す」を早く回せる仕組みへ変えることです。

    まとめ

    脆弱性管理とは、脆弱性を発見する作業ではなく、自社のIT資産、クラウド環境、OSSコンポーネントを継続的に把握し、影響を判断し、優先順位をつけて修正し、再確認する運用そのものです。2026年の企業環境では、オンプレミスだけを見ていては不十分で、クラウド、SaaS、コンテナ、OSSまで含めた視点が欠かせません。とくに、実際に悪用される脆弱性への対応と、SBOMを活用したソフトウェア構成の可視化は、これからの脆弱性管理の重要な柱になります。

    まず取り組むべきなのは、完璧な仕組みを一気に作ることではなく、自社の資産を洗い出し、脆弱性情報を収集し、優先度を判断し、修正後に確認するという基本サイクルを止めずに回すことです。そのうえで、クラウド可視化、SCA、SBOM管理などを段階的に取り入れていけば、脆弱性管理は現場で機能する実践的な仕組みに育っていきます。


    【関連ウェビナーのご案内】
    本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理しました。次回、5月20日(水)14時からの開催のウェビナーでは、AssetViewFutureVulsのメーカーが登壇し、各領域の役割をどのように整理し、どのように連携させれば実効性ある脆弱性管理が実現できるのか、解説します。脆弱性管理の考え方について深くを理解されたい方は、ぜひご参加ください。

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    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    編集責任:木下

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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―

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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―アイキャッチ画像

    近年、「自社に不正アクセスはなかったのに情報が漏えいした」という状況が増えています。その多くは、取引先や委託先、外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃が原因です。本記事では、なぜこうした“取引先経由”の情報漏えいが起きやすいのか、国内で実際に起きている事例や背景をもとに整理します。攻撃の構造を理解することで、見えにくいリスクに気づく視点を持つことができます。

    こうしたリスクを前提に、委託先や外注先のセキュリティをどこまで確認すべきか悩む企業も少なくありません。実務の判断ポイントについては、以下の記事で整理しています。
    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか

    自社が原因でなくても、情報漏えいは起きてしまう時代

    近年、「自社システムに不正アクセスはなかった」と説明される情報漏えい事故が国内で相次いでいます。調査を進めると原因は自社ではなく、取引先や外部サービスを経由した不正アクセスだった、というケースが少なくありません。こうした攻撃はサプライチェーン攻撃と呼ばれ、いま日本企業にとって最も現実的なセキュリティリスクの一つになっています。特にSaaSや外部委託、API連携が当たり前になった現在、このリスクは業種や企業規模を問わず存在します。

    サプライチェーン攻撃とは何か

    サプライチェーン攻撃とは、標的となる企業そのものではなく、取引先・委託先・連携している外部サービスを踏み台に侵入する攻撃手法です。サプライチェーン攻撃の全体像や基本的な考え方については、以下の記事で整理しています。あわせてぜひご覧ください。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    なぜ今、国内でサプライチェーン攻撃が増えているのか

    背景にあるのは、企業活動のデジタル化と外部依存の加速です。業務効率化のためにSaaSを導入し、外部ツールとAPIで連携し、専門業務を外注することは、今や珍しいことではありません。一方で、こうした外部接点が増えるほど、攻撃者にとっての「侵入口」も増えていきます。特に、委託先や小規模ベンダーでは十分なセキュリティ対策が取られていないケースもあり、結果としてそこが狙われやすくなります。さらに最近では、認証情報の使い回しや権限設定のミスを自動的に探し出す攻撃手法も増えており、従来型の対策だけでは気づかないうちに侵入されるリスクが高まっています。

    国内で実際に起きているサプライチェーン攻撃の特徴

    国内で報告されているサプライチェーン攻撃の多くには共通点があります。それは、自社システムが直接破られたわけではなく、正規の連携機能や委託先のアクセス権限が悪用されている点です。そのため、ログを見ても不正アクセスだと気づきにくく、発覚までに時間がかかることがあります。結果として、数万件から数十万件規模の個人情報や顧客データが流出して初めて問題が表面化する、という事態につながります。サプライチェーン攻撃が怖いのは、まさにこの「想定外の経路」から被害が発生する点にあります。

    サプライチェーン攻撃の国内事例や攻撃手口については、以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    事例から学ぶサプライチェーン攻撃 -サプライチェーン攻撃の脅威と対策2-

    サプライチェーン攻撃が企業にもたらす影響

    この種の攻撃によって発生するのは、単なるシステムトラブルではありません。個人情報漏えいによる顧客からの信頼低下、取引先との関係悪化、場合によっては契約違反や損害賠償の問題に発展することもあります。近年では、「原因が委託先にあった」と説明しても、情報管理責任そのものは発注元企業にあると判断されるケースが増えています。サプライチェーン攻撃は、企業の信用そのものを揺るがすリスクだと言えるでしょう。

    企業が今すぐ考えるべきサプライチェーン対策

    まず重要なのは、自社がどのような外部サービスや委託先とつながっているのかを正確に把握することです。意外と、過去に導入したまま使われていないSaaSや、誰が管理しているのか分からない連携設定が残っていることも少なくありません。そのうえで、外部サービスや委託先に付与している権限が本当に必要最小限になっているかを見直す必要があります。「業務上便利だから」という理由で広い権限を与えたままにしていると、それがそのまま攻撃経路になってしまいます。また、技術的な対策だけでなく、委託契約や運用ルールの見直しも欠かせません。インシデント発生時の報告義務や再委託の条件、セキュリティ対策状況の確認方法などを明確にしておくことで、リスクを大きく下げることができます。

    まとめ:サプライチェーン全体を見る視点が不可欠に

    サプライチェーン攻撃は、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。外部サービスを利用し、業務を委託し、クラウド連携を行っている企業であれば、規模に関係なく直面する可能性があります。重要なのは、自社のシステムだけを見るのではなく、自社を取り巻くサプライチェーン全体をどう管理するかという視点です。そこに目を向けない限り、同様の事故は今後も繰り返されるでしょう。

    また、これらの事故は経営判断とも直結します。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―


    こうした実態を踏まえると、サプライチェーン攻撃は個別対策だけでは防ぎきれません。委託先や外部サービスを含めた全体像を把握し、どこにリスクが集中しているのかを整理する視点が不可欠です。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    BBSecでは

    サプライチェーン攻撃への対策では、「何となく不安だが、どこから手を付ければいいか分からない」という声を多く聞きます。外部接点が増えた現代では、勘や経験だけでリスクを把握するのは難しくなっています。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、外部委託先や連携サービスを含めたセキュリティリスクの可視化や、運用・体制面まで踏み込んだ支援を行っています。サプライチェーン全体を前提とした評価や改善を進めることで、「自社は大丈夫」という思い込みによるリスクを減らすことが可能です。もし、自社のサプライチェーンリスクに少しでも不安を感じているのであれば、一度立ち止まって全体を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】


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    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

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    近年、企業の情報漏えい事故の原因として増えているのが、委託先や取引先、外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃です。自社のシステムが直接攻撃されていなくても、外部との連携を足がかりに被害が発生するケースは珍しくありません。本記事では、サプライチェーン攻撃とは何かという基本的な考え方から、なぜ企業規模を問わずリスクが高まっているのか、全体像を整理します。まず全体を理解することで、断片的な対策に終わらない判断の土台をつくります。

    サプライチェーン攻撃がどのように起きているのか、攻撃の特徴や背景を知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で増えるサプライチェーン攻撃の実態―

    情報漏えいは「自社の外」から起きる時代へ

    近年、企業の情報漏えい事故を調査すると、必ずしも自社システムが直接攻撃されているわけではないケースが増えています。原因として多く挙げられるのが、委託先や外注先、外部サービスを経由した不正アクセスです。こうした攻撃はサプライチェーン攻撃と呼ばれ、いまや企業規模や業種を問わず直面する可能性のある現実的なリスクになっています。クラウドサービスSaaSの利用、業務委託の拡大によって、企業のセキュリティ境界は大きく広がりました。その結果、自社だけを守っていれば安全、という考え方は通用しなくなっています。

    サプライチェーン攻撃とは何か

    サプライチェーン攻撃とは、標的企業そのものではなく、その周囲に存在する取引先や委託先、連携サービスを足がかりに侵入する攻撃手法です。攻撃者は、比較的対策が弱い外部事業者を狙い、正規の権限や接続経路を利用して本来の標的へと近づきます。この攻撃の特徴は、正規の仕組みが悪用される点にあります。そのため、不正侵入として検知されにくく、被害が表面化したときにはすでに多くの情報が流出しているケースも少なくありません。

    なぜサプライチェーンリスクの管理は難しいのか

    サプライチェーンリスクの管理が難しい最大の理由は、管理対象が自社のコントロール外にある点です。委託先や外注先ごとにセキュリティ対策の成熟度は異なり、すべてを同じ基準で把握することは簡単ではありません。また、契約内容や運用ルールが曖昧なまま業務が進んでいることも多く、インシデントが起きて初めて問題に気づくケースもあります。こうした背景から、「何をどこまで確認すべきか分からない」という声が現場で多く聞かれます。

    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか

    サプライチェーンリスクを考えるうえで重要なのは、すべてを完璧に監査しようとしないことです。まずは、委託先がどの情報にアクセスできるのか、どの業務を担っているのかを整理することが出発点になります。扱う情報の重要度が高いほど、確認すべき範囲も広がります。技術的な対策の有無だけでなく、運用体制やインシデント時の対応ルールが整っているかどうかを見ることが、現実的なセキュリティ確認につながります。

    委託先が原因で情報漏えいが起きた場合の初動対応

    どれだけ対策を講じていても、サプライチェーン攻撃のリスクを完全にゼロにすることはできません。そのため重要なのは起きない前提ではなく、起きたときにどう対応するかを想定しておくことです。委託先が原因で情報漏えいが疑われる場合でも、企業としての説明責任は免れません。初動対応では、原因の切り分けよりも被害拡大の防止と事実整理を優先し、社内外への対応を並行して進める必要があります。

    サプライチェーンリスク対策で本当に重要な視点

    サプライチェーン攻撃への対策は、単なるセキュリティ技術の問題ではありません。委託先との関係性、契約内容、社内体制、インシデント対応の準備といった、組織全体のリスク管理の問題です。「自社の中は守ることができている」という安心感が、かえってリスクを見えにくくしてしまうこともあります。だからこそ、自社を取り巻く外部環境も含めて全体を把握し、どこにリスクが集中しているのかを整理する視点が欠かせません。

    サプライチェーン攻撃は経営リスクでもあります。経営視点で整理した記事はこちら。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―

    まとめ:まず“全体像”を理解することが最大の対策

    サプライチェーン攻撃は、今後も増えていくと考えられます。委託先や外注先を活用する限り、すべての企業が無関係ではいられません。重要なのは、断片的な対策に終始するのではなく、サプライチェーン全体を一つのシステムとして捉えることです。全体像を理解したうえで、確認・対応・改善を積み重ねていくことが、結果的に最も効果的なリスク対策になります。

    BBSecでは

    サプライチェーンリスクは、属人的な判断や部分的な対応では管理しきれなくなっています。委託先の数が増えるほど、リスクの把握と対応は複雑になります。株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を視野に入れたセキュリティリスクの整理や、委託先管理、インシデント対応体制の支援を行っています。「どこにリスクがあるのか分からない」という段階からでも、現状に合わせた整理と改善を進めることが可能です。サプライチェーンを含めた情報管理に不安を感じている場合は、まず全体を俯瞰するところから始めてみてはいかがでしょうか。

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    クラウドセキュリティ対策の方法とは?
    クラウドサービスの不安とメリットを解説

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    クラウドセキュリティ対策の方法とは?クラウドサービスの不安とメリットを解説のサムネ

    クラウドサービスを利用する企業は約7割を超え、いまやITビジネス環境に欠かせない存在です。AWS、Azure、GCPなどのクラウドサービスの代表例と、クラウド導入のメリットと不安、クラウドセキュリティを担保する方法を解説します

    日本の各企業でも、クラウドサービス(クラウド)の利用はさらに進み、オンラインによるコミュニケーションやデータ共有、迅速なシステム構築などに活用されています。 しかし、ハードウェアを自社内やデータセンター等の設備内に設置する「オンプレミス」と比べ、セキュリティに対する漠然とした不安の声もあります。導入担当者やセキュリティ担当者は、クラウドセキュリティを確保していく必要があります。

    この記事では、企業で活用されているクラウドサービスを例示しながら、「クラウド」「SaaS」「PaaS」「IaaS」「オンプレミス」などクラウド関連の用語を解説します。またクラウドサービスのメリットや不安点を挙げた上で、最後にクラウドセキュリティについて論じます。

    クラウドサービスとは

    クラウドサービスとは、ソフトウェアやサーバ、インフラなどを製品としてではなくサービスとしてクラウド事業者が提供するものです。これまでのソフトウェアやサーバの調達と異なり、利用者はサブスクリプション形式で利用料を支払い、クラウド上にあるリソースをサービスとして利用します。

    クラウド(cloud)という名称は、ネットワークの模式図上で雲のような形状で示されるところからきました。ひとつの雲で表されますが、実際には複数のサーバ機器やネットワーク機器で構成され、サーバにはサービスに必要なソフトウェアが導入されています。

    サーバを事業所内に設置するような利用形態「オンプレミス」という用語は、「クラウド」の対義語のように使われていますが、英語のon-premiseの本来の意味合いは「敷地内の」というものです。

    なおクラウドサービスを分類すると、3つの主要サービスがあります。具体的なイメージを掴めるよう、法人で幅広く使われているクラウドサービスを挙げながら紹介します。

    SaaS(Software as a Service、サース、サーズ)

    Gmail(Webメール)、Microsoft Office 365(オフィスソフト)、Dropbox(ストレージ)、Slack(チャット)などのサービスがあります。一般ユーザが使用するアプリケーションをサービスとして提供します。

    IaaS(Infrastructure as a Service、アイアース、イアース)

    利用者が選択したスペックやOSに合わせた、仮想的なマシン(インフラ)を提供します。利用者側で必要なアプリケーションをさらにインストールするなどして、用途に合わせてカスタマイズできます。

    たとえばWebサービスを顧客に展開するときに、Webサーバとして活用するケースがあります。Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)、Azure Virtual Machines、Google Compute Engine(GCP)といったサービスがあります。

    PaaS(Platform as a Service、パース)

    IaaSが提供する仮想マシンに加え、上位のミドルウェアを含め提供するプラットフォームがPaaSです。さまざまなサービスがありますが、たとえばAWSのAmazon Relational Database Service(Amazon RDS)では、主要なリレーショナルデータベース(RDB)をサポートします。また、GCPのGoogle App Engine(GAE)は、JavaやPythonなどで開発したアプリケーションをGCPのインフラ上で簡単にデプロイ、管理できるようになっています。

    CaaS(Container as a Service、カース)

    コンテナ技術を用いると、例えば開発用、本番用といった異なるサーバやOS間で同一の環境を持ち運べるなど、効率的なアプリケーション開発が実現できますが、複数のコンテナを組み合わせた大規模な環境では、それらを運用、管理するのに手間がかかります。CaaSは、複数のコンテナ利用に必要なオーケストレーション機能(管理/サポートする機能)を多数提供し、開発業務のさらなる効率向上を可能にします。代表的な例には、Docker、GKE(Google Kubernetes Engine)、Amazon ECS(Elastic Container Service)、VMware PKSなどのサービスがあります。

    なお企業向けのクラウドセキュリティの議論はIaaSやPaaSを対象にしたものが中心です。これは、SaaSのセキュリティ管理は、クラウド事業者とサービサーが担うため、企業側で対応する余地があまりないためです。この記事でも、特に断りのない限りIaaSやPaaSを念頭に説明を進めていきます。

    日本政府もAWSを導入!クラウドを利用する日本企業は7割に

    2020年2月、政府が「政府共通プラットフォーム」にAWSを利用する 方針であることを発表しました。政府が採用を決める前から、企業でもクラウド利用が広がっています。以下は、総務省の通信利用動向調査の結果です。クラウドを全社的または一部の部門で活用する日本企業は毎年増え続け、2021年では70.2%に上っています。

    国内におけるクラウドサービス利用状況

    国内におけるクラウドサービス利用状況のサムネ
    出典:
    総務省「令和3年通信利用動向調査」企業編
    総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」(令和元年5月31日公表)

    クラウドサービス導入のメリット

    ピーク性能に合わせて購入するのが一般的なオンプレミスと比べ、クラウドでは必要な時に必要なスペックで サーバやソフトウェアの契約を行うことが可能です。

    1.どこからでもアクセスできる

    WebメールやオンラインストレージといったSaaSを利用している場合、どこにいてもインターネットがあればアクセスできます。

    2.負荷に応じて動的にシステム変更可能

    アクセスの増減に合わせて、Webの管理ツールを操作するだけで、サーバを追加したり削減したりできます。オンプレミスと比べ、変更にかかる時間を大幅に短縮できます。 TVで取り上げられた場合などに発生する、突発的なアクセス増にも柔軟に対応可能です。

    3.開発者が多くどんどん便利になっている

    利用が急拡大しているグローバル規模のクラウド事業者は、世界中から優秀な開発者を集めており、次々と機能追加が行われています。

    クラウドサービスに対する4つの不安

    クラウドサービスに対する4つの不安のサムネ

    1.情報漏えいリスク

    どこからでもアクセスできて便利な反面、オンプレミス環境のように手元に情報を保持していない分、漠然とした不安や、攻撃対象になりやすいのではないかといった懸念があります。こうした懸念に応えるセキュリティ対策については後述します。

    2.システム稼働率や法規制対応

    クリティカルなサービスを提供する企業では、稼働率などを保証するSLA(Service Level Agreement)や、冗長構成を必要とする場合があります。また、クラウドサービスの利用にあたり、社内の基準やコンプライアンス、業界基準、国内法に準拠している必要があります。

    これらの不安に対応して、AWSなど大手のクラウドサービスではSLAや第三者機関から取得した認証など、各種基準への対応状況を公表しています。

    3.従量課金による費用変動

    クラウドサービスの課金体系には、月額・日額の固定料金制もあれば、従量課金制もあります。利用形態によっては、オンプレミス環境を用意したほうが安価な場合もあります。システム利用計画を建ててから契約しましょう。

    4.カスタマイズやベンダーのサポート体制

    クラウド事業者は複数の顧客に共通のサービスを提供することで。オンプレミス環境と同様のカスタマイズやサポートは望めない場合もあります。

    クラウドセキュリティ要件のガイドライン

    クラウドセキュリティ要件のガイドラインのサムネ

    クラウドサービス提供者側のセキュリティ要件として、たとえば総務省では「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン」を提供しています。

    クラウド事業者は施設の物理セキュリティや、ネットワークなどのインフラのセキュリティに責任を持ちますが、利用者側にもネットワーク周りの設定や管理アカウントの管理などの対策が求められます。

    クラウドの設定ミスに起因する事故

    AWSに置かれていた、米ウォールストリートジャーナル紙の購読者名簿220万人分が、第三者による閲覧が可能な状態になっているという事故がありました。これは、利用者側の設定ミスに起因するものです。

    オンプレミス環境ではサーバを直接操作する人は限られており、サーバルームの入退室記録簿等々、事故が起こらないようにさまざまなルールや、それを守る体制がありました。しかしクラウドでは、前述したようにどこからでもアクセスして、Web管理ツールで簡単にシステムを変更できるという利点が、逆に事故につながる場合があります。

    クラウドセキュリティ対策の方法は?

    ひとつは、クラウドサービスの設定に関わるベストプラクティス集を利用する方法です。各クラウドベンダーから公開されており、日本語版も用意されています。CISベンチマークという第三者機関が開発したセキュリティに関するガイドラインもあります。ただし、網羅性が高く項目も多いため、必要な項目を探すには時間がかかる場合もあります。

    もうひとつは、クラウドの設定にセキュリティ上の問題がないか診断するツールを利用する方法です。実用するには一定の習熟が必要で、たとえば出力された多数の脆弱なポイントについて、どこを優先して対処していくかの判断が求められます。セキュリティ企業が提供する診断サービスを利用する方法もあります。パブリッククラウドの設定にリスクがないか専門家が診断します。

    クラウドセキュリティ設定診断サービスのサムネ

    まとめ

    ・クラウドのセキュリティは、クラウドサービスの提供側と利用者側双方で担保する
    ・提供側はインフラ等のセキュリティに責任を負う
    ・利用者側はセキュリティ、ネットワーク、アカウントなどの設定・管理を適切に行う
    ・利用者側の対策として、ベストプラクティスの活用、自動診断ツール、セキュリティベンダーの提供するサービスを利用するといった方法がある

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