セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐ役割分担と外部活用の考え方

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セキュリティ運用を継続していく中で、多くの組織が直面するのが「体制」の問題です。個別の対策や日常的な運用が回り始めたとしても、それが特定の担当者に依存している限り、長期的な安定は期待できません。本記事では、その発展段階として、属人化を防ぎながら継続的に回るセキュリティ運用体制の考え方を解説します。

セキュリティ運用の全体像や考え方については、以下の記事で整理しています。
セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

セキュリティ運用体制とは、人員を増やすことではなく、判断・実行・記録の役割を分離し、担当者が変わっても運用が継続できる状態を設計することを意味します。「セキュリティ運用 体制」「情シス セキュリティ 体制」「セキュリティ 外部委託」といった検索が増えている背景には、技術的な課題ではなく、組織としてどう運用を維持するかという悩みがあります。セキュリティは専門技術の問題として語られがちですが、実際には役割設計と意思決定の構造に大きく左右されます。担当者の異動や退職、業務負荷の増加といった現実的な変化によって、運用そのものが停止してしまうケースは決して珍しくありません。

なぜ「人」だけに頼る運用は破綻するのか

多くの企業では、セキュリティ業務が情報システム担当者、いわゆる情シスに集中しています。特に中小規模組織では「ひとり情シス」と呼ばれる状況も珍しくなく、インフラ管理、ヘルプデスク、クラウド設定、セキュリティ対応を一人が担うケースも見られます。

短期的には、この形は合理的に見えます。意思決定が速く、状況把握も一元化されるためです。しかし長期的に見ると、担当者の知識と経験に依存した状態が固定化し、組織としての再現性が失われます。担当者依存の最大の問題は、運用が見えなくなることです。判断理由や対応経緯が共有されなければ、他のメンバーは状況を理解できません。その結果、担当者が不在になった瞬間に対応速度が落ち、インシデント時の判断が遅れる可能性があります。提供された文脈に基づくと、セキュリティ体制とは人を増やすことではなく、「人が変わっても回る状態」を設計することだと整理できます。

最低限決めておくべき役割分担

セキュリティ運用体制を考える際、最初に必要なのは大規模な組織図ではありません。最低限の役割が整理されているかどうかが重要になります。運用の中には、リスクを評価して方向性を決める判断の役割、実際に設定変更や対応を行う実行の役割、そして履歴を残し管理する役割が存在します。これらが同一人物に集中していても構いませんが、「どの役割を担っているのか」が明確でなければ運用は属人化します。役割が定義されることで、対応の引き継ぎや支援が可能になります。誰が最終判断者なのかが曖昧な組織では、インシデント時に意思決定が停滞しやすくなります。

体制が機能するかどうかは、インシデント発生時に明確になります。初動対応から復旧までの流れについては、以下の記事で整理されています。
セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第2回:セキュリティインシデント発生時の対応 ─初動から復旧まで

内製・外部委託の切り分け方

セキュリティ運用体制を検討すると、多くの組織が「内製か外部委託か」という選択に直面します。しかし実務では、この問いは二択ではありません。すべてを内製化することは理想的に見える一方で、専門知識の維持や24時間対応の負担を考えると現実的でない場合があります。一方、すべてを外部へ委託すると、組織内部に判断能力が残らず、状況理解が困難になる可能性があります。提供された構成意図に基づくと、重要なのは作業ではなく判断をどこに残すかです。監視や分析の一部を外部に任せることは可能ですが、事業影響を踏まえた最終判断は組織側が保持する必要があります。

外部を活用する場合、委託先管理やサプライチェーンリスクも考慮が必要です。
サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

外部を使っても属人化するケース

外部委託を導入しても、必ずしも属人化が解消されるわけではありません。むしろ新しい形の属人化が生まれることがあります。典型的なのは、委託先に任せきりになり、内部で内容を理解しなくなるケースです。報告書は受け取っていても、判断基準や対応背景が共有されなければ、組織側の知識は蓄積されません。さらに、外部サービスの仕組みがブラックボックス化すると、異常時に何が起きているのか説明できなくなります。この状態では、運用主体が組織ではなくベンダーへ移ってしまいます。外部活用の目的は責任移転ではなく、能力補完であると理解することが重要です。

継続的に回る体制を作るための考え方

セキュリティ運用体制は、一度設計して終わるものではありません。継続的に回る体制には、定期的な見直しと情報共有の仕組みが必要になります。定期レビューは、問題を探すためではなく現状を確認するために行われます。運用が想定通り機能しているかを確認することで、小さなズレを早期に修正できます。また、判断基準を共有することで、担当者が変わっても意思決定の方向性が維持されます。更新の仕組みが存在しない体制は、時間とともに現実と乖離します。環境変化を前提として設計された体制だけが、長期的に機能し続けます。提供された文脈に基づくと、体制の成熟とは組織図の完成ではなく、改善が自然に行われる状態を指すと考えられます。

まとめ:運用は「仕組み」で支えるもの

セキュリティ運用体制とは、人員配置の問題ではなく、意思決定を継続させる仕組みの設計です。担当者の能力に依存した運用は短期的には成立しても、組織としての持続性を持ちません。役割を明確にし、内製と外部活用を適切に組み合わせ、知識が組織に残る状態を作ることで、セキュリティは個人作業から組織活動へと変化します。セキュリティ運用体制の整備は組織ごとに最適解が異なるため、自社の状況整理が難しい場合は、第三者視点での現状診断から始める方法もおすすめします。

本記事は、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理したものです。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。


セキュリティ運用は、個別対策ではなく全体の仕組みとして考えることが重要です。
セキュリティ運用とは何か 属人化を防ぎ、継続的に回すための基本的な考え方

BBSecでは

委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

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セキュリティ運用とは、セキュリティ対策を導入することではなく、脆弱性情報の確認、設定管理、インシデント対応、見直しといった活動を継続的に回し続ける組織的な取り組みを指します。単発の対策ではなく、変化する環境に合わせて安全性を維持する仕組みである点が特徴です。本記事では、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理します。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。

セキュリティ運用が重要になる背景には、インシデント発生時の初動対応や判断の難しさがあります。インシデント対応の全体像については以下の記事で整理されています。
セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第1回:セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例

セキュリティ運用とは、セキュリティ対策を導入した状態を維持し続ける活動ではなく、「変化し続ける環境に合わせて安全性を更新し続ける仕組み」を指します。多くの企業がセキュリティ製品やルールを導入しているにもかかわらず事故を防ぎきれない背景には、この“運用”という視点の不足があります。

近年、「セキュリティ運用とは」「セキュリティ運用 体制」「セキュリティ 属人化」といった検索が増加しているのは、セキュリティが技術課題ではなく組織運営の問題として認識され始めているためだと考えられます。導入した対策は時間とともに環境とのズレが生じるため、継続的な判断と見直しが不可欠になります。

なぜ今「セキュリティ運用」が課題になるのか

セキュリティ事故の多くは、対策が存在しなかったことよりも、存在していた対策が適切に機能していなかったことによって発生します。これは珍しい現象ではなく、環境変化に対して運用が追いつかなくなることで起きます。システム構成は更新され、利用者は増減し、クラウド設定や権限は日常的に変化します。その一方で、セキュリティ対策は導入時点の前提を基準に設計されていることが多く、継続的に見直されなければ現実との乖離が生まれます。

提供された文脈に基づくと、現在は「何を導入するか」を議論する段階から、「導入したものをどう回し続けるか」を考える段階へ移行していると整理できます。つまりセキュリティはプロジェクトではなく、継続業務として扱われる必要があります。

セキュリティ運用が属人化する典型パターン

セキュリティ運用の失敗要因として頻繁に挙げられるのが属人化です。特定の担当者のみが状況を理解し、判断基準が共有されていない状態では、運用は組織の能力ではなく個人の努力に依存します。現場では「経験がある人が対応した方が早い」という合理的判断から属人化が進みます。しかし手順や判断理由が記録されないまま時間が経過すると、異動や退職が発生した際に運用が再現できなくなります。

セキュリティ属人化の本質は、知識不足ではなく再現性不足です。誰が担当しても同じ方向の判断ができる状態を作ることが、セキュリティ運用体制の出発点になります。

セキュリティ運用とは「何を回すこと」なのか

セキュリティ運用とは単一の業務ではなく、複数の活動が循環する状態を意味します。代表的なのは、脆弱性情報の収集と評価、インシデント対応、設定および権限管理、そして教育や見直しです。脆弱性情報は継続的に公開されるため、影響評価と対応判断を繰り返す必要があります。インシデント対応では、検知から初動判断、復旧、再発防止までが一連の流れとして維持されます。設定管理では変更がリスクにならないよう追跡可能性が求められます。さらに教育やルール更新がなければ、人の行動が新しい脅威に適応できません。これらは独立した作業ではなく、相互に影響し合う循環構造として理解する必要があります。運用の全体像を地図として把握することが、部分最適によるリスク増大を防ぐ第一歩になります。

セキュリティ運用の中でも、脆弱性をどう管理し続けるかは重要な要素です。単発で終わらせない考え方については、次の記事も参考になります。
脆弱性対応の優先順位と判断基準―限られたリソースでリスクを下げる考え方

属人化しないセキュリティ運用の基本原則

属人化を防ぐために必要なのは、複雑な仕組みよりも基本原則の明確化です。まず重要なのは判断基準を定義することです。どのリスクを優先するかが共有されていなければ、対応品質は担当者によって変わります。次に記録の存在が運用を支えます。対応履歴は単なる報告ではなく、将来の判断を支える知識資産になります。そして運用は固定されたものではなく、定期的な見直しによって初めて現実に適応し続けます。提供された構成意図に基づくと、セキュリティ運用とは高度化よりも継続性を優先する活動だと整理できます。

運用体制は完璧でなくてよい

セキュリティ運用体制という言葉から大規模な専門組織を想像することがありますが、必ずしもそれが出発点になるわけではありません。重要なのは組織規模に適合した運用です。理想的な体制設計を目指して準備だけが進み、実際の運用が開始されない状態は現場では珍しくありません。むしろ小さく始め、実際に回る形を作ることが現実的なアプローチになります。運用が継続されることで課題が可視化され、体制は後から改善できます。逆に、回らない設計はどれほど理想的でも機能しません。

セキュリティ運用とは「判断を継続する仕組み」である

セキュリティ運用とは、新しい対策を増やし続けることではなく、判断と改善を繰り返す仕組みを維持することです。属人化を防ぐとは担当者を排除することではなく、判断基準と知識を組織へ移すことを意味します。提供された文脈に基づくと、セキュリティの成熟度はツール数ではなく、運用が継続しているかどうかによって左右されます。仕組みとして回り始めたとき、セキュリティは個人の努力から組織の能力へと変化します。

セキュリティ運用とは何かという問いは、技術の話であると同時に、組織がどのように意思決定を継続するかという問いでもあると言えるでしょう。

FAQ

▼セキュリティ運用とは具体的に何をすることですか?
▼セキュリティ運用は小規模企業でも必要ですか?
▼外部委託すればセキュリティ運用は不要になりますか?

ここまで整理してきた内容から見えてくるのは、セキュリティ運用とは特別なプロジェクトではなく、日常業務の中に組み込まれる意思決定プロセスであるという点です。しかし現場では、「具体的に何から始めるべきか」という問いが必ず生まれます。守る対象の整理、優先順位の設定、最小単位の運用設計など、実務的な整理が必要になります。

では、具体的にセキュリティ運用は何から始めればよいのでしょうか。実務レベルでの進め方については、次の記事で詳しく解説します。
セキュリティ運用は何から始めるべきか 担当者が最初に整理すべきポイント

BBSecでは

委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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サプライチェーン攻撃で委託先が原因の情報漏えい時に企業が取るべき初動対応とFAQ

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委託先や外注先が原因で情報漏えいが起きた場合、「自社は何をすべきか」「どこまで責任を負うのか」といった判断に迷う企業は多くあります。本記事では、サプライチェーン攻撃が疑われる際の初動対応の考え方や、公表判断、委託先との連携のポイントを整理します。あわせて、企業担当者が抱きやすい疑問をFAQ形式でまとめ、実務で迷わないための視点を提供します。

委託先や外注先を起点としたサプライチェーン攻撃の全体像や、なぜこのような事故が起きるのかについては、以下の記事で整理しています。
サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

「原因は委託先です」で終わらない現実

情報漏えいが発覚したとき調査の結果として、「原因は委託先・外注先でした」と判明するケースは、近年珍しくありません。しかし実務の現場では、その事実が分かった瞬間に新たな問題が生じます。それは、「では自社は何をすべきなのか」「どこまで責任を負うのか」という判断です。委託先が原因であっても、情報の管理主体が自社である以上、初動対応を誤れば被害は拡大し、企業の信用は大きく損なわれます。サプライチェーン攻撃が増えている今、外部起因の情報漏えいを前提とした初動対応を理解しておくことは、企業にとって不可欠になっています。

初動対応で最も重要なのは「切り分けを急がない」こと

情報漏えいの疑いが出た直後、多くの現場で起きがちなのが、原因の切り分けを急ぎすぎることです。「本当に漏えいしているのか」「どこから漏れたのか」「委託先の責任なのか」といった点を早く確定させたくなるのは自然な反応です。しかしこの段階で重要なのは、責任の所在を断定することではありません。まず優先すべきなのは、被害が現在も拡大している可能性があるかどうかを見極め、必要に応じて影響範囲を止める判断をすることです。委託先が関係している場合でも、自社システムとの接点や連携は一時的に見直す必要があります。この判断が遅れると、被害が広がり続けるリスクがあります。

サプライチェーン攻撃は経営リスクでもあります。経営視点で整理した記事はこちら。
サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―

またそもそも、なぜ取引先や委託先を経由した攻撃は発見が遅れやすいのか、その背景を理解しておくことも重要です。
なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―

委託先との連携は「確認」ではなく「事実の共有」から始める

初動対応において、委託先への連絡は避けて通れません。ただしここで重要なのは、相手を問い詰めることではなく、事実を正確に共有することです。どの情報に異常が見られたのか、いつ頃から兆候があったのか、現時点で分かっていることと分かっていないことを整理し、共通認識を作ることが先決です。感情的なやり取りや責任追及は、この段階では状況を悪化させるだけになりがちです。委託先が保有しているログや調査状況を早期に把握できるかどうかは、その後の対応スピードを大きく左右します。

社内では「技術対応」と「説明責任」を同時に考える

外部起因の情報漏えいが疑われる場合、社内では複数の視点で同時に動く必要があります。システム部門やセキュリティ担当は技術的な影響範囲の確認を進める一方で、法務や広報、経営層は対外的な説明の準備を始めなければなりません。このとき、「原因が委託先だから自社は関係ない」という認識で対応が遅れると、結果的に説明責任を果たせなくなります。実際には、顧客や取引先から見れば、委託先かどうかは本質的な問題ではなく、「自分の情報がどうなったのか」が最も重要だからです。

公表判断は“事実が揃うまで待つ”ほど危険になる

情報漏えいの公表タイミングは非常に難しい判断です。しかし、すべての事実が揃うまで何も発信しない、という判断はリスクを高めることがあります。特に外部起因の場合、委託先側の調査に時間がかかり、自社で状況を完全に把握できない期間が発生しがちです。その間に情報が外部に漏れたり、第三者から指摘されたりすると、「隠していた」という印象を与えてしまいます。現時点で分かっている事実と、調査中であることを切り分けて伝える姿勢が、結果的に企業の信頼を守ることにつながります。

契約内容は「事後」ではなく「初動」で効いてくる

委託先が原因の情報漏えいでは、契約内容が初動対応に大きく影響します。インシデント発生時の報告義務や対応範囲が明確であれば、調査や情報共有をスムーズに進めることができます。一方で、契約にそうした取り決めがなく、対応が委託先任せになってしまうと、自社として判断すべき情報が集まらず、対応が後手に回ります。このとき初めて「契約を見直しておけばよかった」と気づく企業も少なくありません。

初動対応をスムーズに行うためには、平時から委託先・外注先のセキュリティをどこまで確認しておくべきかを整理しておく必要があります。
委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか ―サプライチェーン攻撃を防ぐ実務判断―

まとめ:初動対応で問われるのは“原因”より“姿勢”

委託先が原因で情報漏えいが起きた場合、企業が最初に問われるのは、誰が悪いかではありません。どれだけ早く状況を把握し、被害拡大を防ぎ、関係者に誠実に向き合ったかという姿勢です。外部起因のインシデントは、今後さらに増えていくと考えられます。だからこそ、「委託先が原因だったらどうするか」を平時から想定しておくことが、最大の初動対策になります。

サプライチェーン攻撃は、予防・管理・初動対応のいずれか一つだけでは防ぎきれません。全体像を理解し、実態を知り、現実的な確認と備えを重ねていくことが重要です。
サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

FAQ

▼サプライチェーン攻撃とは何ですか?
▼サプライチェーン攻撃は大企業だけの問題ですか?
▼委託先が原因で情報漏えいが起きた場合、自社に責任はありますか?
▼委託先のセキュリティはどこまで確認すべきですか?
▼セキュリティチェックシートを回収すれば十分ですか?
▼委託先が多すぎて管理しきれない場合はどうすればいいですか?
▼情報漏えいが疑われたとき、最初にやるべきことは何ですか?
▼委託先への連絡はどのタイミングですべきですか?
▼事実がすべて分かるまで公表しない方が良いですか?
▼契約書でセキュリティ対策はどこまで決めるべきですか?
▼サプライチェーン攻撃は完全に防げますか?
▼サプライチェーンリスク対策で最も重要な考え方は何ですか?
▼サプライチェーン全体を考えた対策を進めるには

BBSecでは

委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

【参考情報】

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武蔵小杉病院へのランサムウェア攻撃 ―第2報から読み解くランサムウェア侵入経路と影響範囲―

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2026年2月、日本医科大学武蔵小杉病院は「院内の医療情報システムの一部がランサムウェア攻撃を受け、障害が発生した」こと、そしてそれに伴い患者の個人情報漏洩が確認されたことを公表しました*1。病院の発表は「第2報」という位置づけで、被害範囲、時系列、侵入経路、当面の診療体制、相談窓口までが具体的に示されています。まず強調したいのは、憶測で語られがちな“病院のサイバー攻撃”を、ここでは病院自身が明言した事実ベースで解説する点です。本記事では今回の公表内容(第2報)を中心に、医療機関サイバーセキュリティの観点で「何が起きたのか」「なぜ起きやすいのか」「利用者は何に気を付けるべきか」をわかりやすくまとめます。

侵入経路は“医療機器保守用VPN装置”

病院の第2報で明記された「攻撃を受けたシステム」は、ナースコールシステムのサーバー3台です。ナースコールは入院患者が看護師を呼ぶための仕組みとして広く知られていますが、その裏側では端末やサーバーが稼働し、運用上の都合から患者情報と結び付いているケースも珍しくありません。今回、病院は当該サーバーがランサムウェア攻撃を受けたことを認め、さらに調査の結果として「侵入経路は医療機器保守用VPN装置であった」ことが確認されたとしています。

ここでいうVPN装置は、医療機器メーカーなどが遠隔で保守作業を行う目的で用いられることが多い仕組みです。便利な一方で、通常のIT統制の枠外に置かれやすいのが現実です。たとえば、病院の標準的なIT統制から外れた管理になっていたり、資産管理やパッチ適用、アクセス制御、多要素認証などの基本対策が後回しになっていたりします。厚生労働省も注意喚起の中で、VPN装置を含むゲートウェイ機器の脆弱性対策、管理インターフェースのアクセス制限、認証強化などを重要ポイントとして挙げています。今回の発表内容は、まさにその“急所”が突かれ得ることを示す事例として受け止めるべきでしょう。

漏洩した個人情報

病院は、漏洩が確認された個人情報の項目として、氏名、性別、住所、電話番号、生年月日、患者IDを挙げています。また、漏洩が確認された人数は「約1万人」で、これは2026年2月14日11時時点の確認値だとされています。一方で、患者が特に気にすると考えられる医療内容そのものについて、病院は「カルテ情報」の漏洩は現時点で確認されていないと明記しています。さらに、クレジットカード情報、マイナンバーカード情報についても、現時点では漏洩確認がないとしています。ここは不安を抱く利用者にとって重要なポイントです。ただし、ここでの注意点は「現時点では確認されていない」という表現が示す通り、調査が進む過程で情報が更新される可能性がゼロではないことです。病院も、仮に漏洩拡大が判明した場合はホームページで速やかに報告するとしています。

いつ気づき、どう動いたのか

第2報には、攻撃を認識した日時と経緯が日付単位で整理されています。最初の兆候は2026年2月9日午前1時50分頃、病棟のナースコール端末が動作不良となり障害を把握したことでした。その後、ナースコールシステムのベンダー調査により、サーバーがランサムウェア攻撃を受けたことが判明したとされています。病院は当該システムと関連ネットワークを遮断し、同日に文部科学省、厚生労働省、所轄警察へ報告したと公表しています。

続く2月10日には、厚生労働省の初動対応チームの派遣要請を行い、外部接続ネットワークを遮断してサーバー保全を開始。2月11日には初動対応チームの調査により、当該サーバーが院外と不正通信を行い、患者の個人情報を窃取していたことを確認したとされています。さらに、電子カルテを含む他の医療情報システムへの影響調査、外部接続ネットワーク機器の脆弱性や設定の調査も開始した、と時系列で説明されています。2月12日に個人情報保護委員会へ報告し、2月13日には漏洩した患者へ郵送でのお詫び連絡を開始した、と続きます。

この流れを見ると、ポイントは二つあります。ひとつは「障害として最初に見えた」こと、もうひとつは「通信ログ等の調査で情報窃取の事実確認に至った」ことです。ランサムウェアは“暗号化して身代金要求”のイメージが強い一方で、近年は暗号化だけでなく情報窃取を組み合わせ、二重三重の脅迫に発展するケースが問題視されてきました。今回の発表でも「不正通信」と「窃取」が明確に言及されており、病院がそこを重要事実として公表している点は見落とせません。

病院業務は止まったのか

医療機関へのサイバー攻撃で最も懸念されるのは、診療の停止や救急の受け入れ停止など、医療提供体制への影響です。今回、病院は2026年2月14日時点で、外来、入院、救急受け入れはいずれも通常通り実施していると説明しています。また「他の医療情報システムへの影響は現時点では確認されていない」とし、病院業務は通常通りと明記しています。

ここで大事なのは、“通常通り”という言葉の解釈を膨らませすぎないことです。病院が示したのは、その時点で確認できている範囲の診療体制であり、現場では臨時対応や負荷増が起きている可能性はあります。ただ、少なくとも公表文の事実としては、全面停止や救急停止を示す記述はなく、「止めずに継続している」という説明が中心です。

病院がとった封じ込めと復旧対応

第2報の中で、病院は「当該システム及び外部との通信を一切遮断し、専門家や電子カルテベンダーと共に、他のシステムへの影響について詳細な現況調査を継続して実施しております。」とし、原因となったランサムウェアの特定を完了し、「ウイルス対策ソフト会社より提供された最新のパターンファイルを用いて、現在、院内全域でのウイルス駆除作業を実施しております。」と説明しています。

サイバーインシデント対応として見ると、ここには典型的な優先順位が現れています。まず“広げない”ための遮断、次に“証拠を残す”ための保全、その上で“横展開の確認”として他システム影響調査、そして“回復”のための駆除作業です。特に医療機関では、電子カルテだけ守っても安全とは言い切れません。ナースコールのような周辺系、委託業者や医療機器ベンダーの保守経路、ネットワーク機器設定など、境界にある仕組みが狙われると、想定外の入口になります。私たちが特に注目すべきと考えるのは、医療機器保守用VPN装置が侵入経路として公表された点です。これは医療機関のセキュリティ対策が“例外管理”に弱いことを改めて突き付けています。

詐欺・なりすましへの警戒

今回漏洩が確認された情報には、氏名、住所、電話番号、生年月日が含まれます。これは、金融情報そのものではない一方で、なりすまし、勧誘、フィッシング、特殊詐欺の“材料”として悪用されやすい属性情報です。病院は、漏洩した患者に対して「直接連絡する」とし、実際に2月13日から郵送によるお詫び連絡を開始したと公表しています。したがって利用者側の現実的な対策は、まず「病院から届く郵送物や案内」を冷静に確認し、連絡先や手続きが公表内容と整合するかを見極めることです。そして電話やSMS、メールで“病院を名乗る連絡”が来た場合、いきなり個人情報を追加で伝えたり、リンクを開いて入力したりせず、病院が設置した問い合わせ窓口など、公式に案内された経路へ折り返し確認するのが安全です。病院は本件の相談・問い合わせ専用窓口(専用ダイヤルの複数回線やフリーダイヤル運用開始予定)を案内していますので、確認の際はそうした公式窓口を使うのが基本になります。

よくある疑問:電子カルテは大丈夫なのか、身代金は払ったのか

「電子カルテは大丈夫なのか」という疑問に対しては、病院の公表では、「他の医療情報システムへの影響は現時点では確認されていない」とされています。つまり、“影響なし”と断定しているというより、調査継続の前提で“少なくとも現時点の確認では影響が見つかっていない”という説明です。ここは言葉通りに受け止め、今後の更新を注視するのが適切です。

「身代金を払ったのか」という点については、第2報の本文からは読み取れません。少なくとも病院は、侵入経路、漏洩項目、診療状況、当局報告、遮断・調査・駆除といった事実を中心に説明しており、金銭要求や支払いに関する記載は確認できません。ここで外部の憶測を混ぜると正確性が落ちるため、本記事では触れません。

なぜ医療機関は狙われるのか:つながる医療機器

医療機関のサイバー攻撃を考えるとき、電子カルテだけを守ればよいという発想は危険です。病院には、医療機器、保守用回線、委託業者のネットワーク接続、建物設備、ナースコールのような周辺システムまで、多様な“つながる仕組み”があります。しかも医療の現場は24時間止められず、更新・停止・入れ替えが難しい機器も少なくありません。結果として、VPN装置のような境界機器が古い設定のまま残りやすかったり、管理者が限定されて全体の統制が効きにくかったりします。

厚生労働省の注意喚起でも、VPN装置を含むゲートウェイ機器の脆弱性対策を迅速に行うこと、管理インターフェースのアクセス制限を行うこと、多要素認証などで認証を強化すること、資産(IoT機器を含む)の把握を行うことが示されています。武蔵小杉病院の件で侵入経路が医療機器保守用VPN装置である、と公表されたことは、これらが“机上の理想”ではなく、現実の被害と直結する論点であることを、改めて裏付ける材料になっています。

企業・組織側が学ぶべき教訓:VPNと保守経路の統制はセキュリティの“盲点”

今回の公表内容から読み取れる最大の教訓は、保守のための例外的な経路を放置しないことです。医療機関に限らず、製造業、ビル管理、自治体、教育機関などでも、ベンダー保守用VPNは現場の利便性を理由に残りやすく、監査や更新の網から漏れがちです。だからこそ、ネットワーク図に載っていない接続点、ベンダーしか触れない装置、管理台帳にない機器といった“影の資産”を可視化し、アクセス制御、ログ監視、脆弱性対応、認証強化、契約と運用ルールの整備まで含めて統制する必要があります。また、今回病院が行ったように、初動で外部接続を遮断し、当局に報告し、初動対応チームや専門家と連携しながら調査と封じ込めを進めることは、医療機関のインシデントレスポンスとして重要です。平時から、遮断判断の基準、連絡系統、証拠保全の手順、ベンダー連携の契約条項、代替運用を準備しておかなければ、同じ判断を迅速に実行するのは難しくなります。

まとめ

日本医科大学武蔵小杉病院の公表によれば、今回のサイバー攻撃はナースコールシステムがランサムウェア攻撃を受けたことに端を発し、医療機器保守用VPN装置が侵入経路として確認され、患者の個人情報が窃取されたとされています。漏洩は約1万人、項目は氏名や住所、電話番号、生年月日、患者IDであり、カルテ情報やクレジットカード情報、マイナンバーカード情報の漏洩は現時点で確認されていない、というのが病院の説明です。

“病院のサイバー攻撃”という言葉は刺激的ですが、重要なのは、どのシステムが攻撃され、どの経路が弱点になり、どんな情報が漏洩し、利用者と組織が何に備えるべきかを、事実に即して理解することです。今回の事例は、電子カルテ以外の周辺システムも含めた医療機関サイバーセキュリティの必要性、そしてVPN装置や保守経路を例外扱いしない統制の重要性を、強く示しています。今後も病院の続報で情報が更新される可能性があるため、一次情報の確認を前提に、過度な憶測ではなく、現実的な警戒と備えにつなげることが肝要です。

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    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか ―サプライチェーン攻撃を防ぐ実務判断―

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    「委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか:サプライチェーン攻撃を防ぐ実務判断」アイキャッチ画像

    サプライチェーン攻撃のリスクを前に、「委託先のセキュリティはどこまで確認すべきなのか」と悩む担当者は少なくありません。すべてを完璧に把握することは現実的ではない一方、感覚的な判断だけではリスクを見逃します。本記事では、扱う情報や業務内容に応じて、委託先・外注先のセキュリティをどのような視点で確認すべきかを整理します。無理のない管理と判断の考え方を解説します。

    どれだけ事前に確認していても、サプライチェーン攻撃のリスクを完全にゼロにすることはできません。実際に情報漏えいが疑われた場合の初動対応については、次の記事で解説しています。
    委託先が原因の情報漏えい時に企業が取るべき初動対応とFAQ

    「委託しているだけ」で安心してはいけない時代

    業務の効率化や専門性の確保のために、システム開発や運用、データ処理を外部に委託することは、今や多くの企業にとって当たり前になっています。しかし近年、こうした委託先や外注先を起点とした情報漏えい・不正アクセス、いわゆるサプライチェーン攻撃が国内でも相次いでいます。自社のシステムが直接攻撃されていなくても、委託先のセキュリティ対策が不十分であれば、自社の情報や顧客データが流出してしまう可能性があります。この現実を前に、「委託先のセキュリティはどこまで確認すべきなのか」という疑問を持つ担当者は少なくありません。

    委託先のセキュリティ確認が難しい理由

    委託先のセキュリティ対策を確認しようとしても、多くの企業が途中で手が止まります。その理由は、単純に「何を基準に見ればよいか分からない」からです。専門的なセキュリティ対策をすべて理解し、技術的な実装レベルまで確認するのは現実的ではありません。一方で、「大手だから大丈夫」「実績があるから安心」といった感覚的な判断だけでは、リスクを見逃してしまいます。重要なのは、完璧を求めることではなく、リスクを把握できる状態にすることです。

    委託先や外注先を狙ったサプライチェーン攻撃の全体像については、以下の記事で整理しています。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    まず確認すべきは「どんな情報を預けているか」

    委託先のセキュリティを考えるうえで、最初に整理すべきなのは「委託先がどの情報に触れられるのか」という点です。個人情報や顧客データ、認証情報、社内システムへのアクセス権限など、委託内容によってリスクの大きさは大きく変わります。扱う情報の重要度が高いにもかかわらず、委託先の管理体制を十分に把握していない場合、その委託はサプライチェーン攻撃の入口になりかねません。逆に言えば、情報の性質と範囲を明確にするだけでも、確認すべきポイントは自然と絞られてきます。

    セキュリティ対策は「実施しているか」より「管理しているか」

    委託先に対してセキュリティ対策の実施の有無を尋ねると、多くの場合「対策しています」という回答が返ってきます。しかし本当に重要なのは、個々の対策の有無ではなく、それらが継続的に管理・運用されているかどうかです。たとえば、アクセス権限が適切に管理されているか、退職者や不要になったアカウントが放置されていないか、インシデントが発生した際の対応ルールが決まっているか。こうした運用面の確認は、技術的な専門知識がなくても行うことができます。

    契約書に書かれていないリスクが最も危険

    多くの情報漏えい事故では、インシデント発生後に「契約上どうなっているのか」が問題になります。ところが実際には、委託契約の中でセキュリティに関する取り決めが曖昧なケースは少なくありません。事故が起きた際の報告義務や対応範囲、再委託の可否、責任分界点などが明確になっていなければ、被害対応が遅れ、結果として自社の信用を大きく損なうことになります。委託先のセキュリティ確認は、技術的な話だけでなく、契約と運用の問題でもあるという点を見落としてはいけません。

    すべてを監査するより「リスクを前提に備える」

    委託先すべてを同じレベルで詳細に監査するのは、現実的ではありません。だからこそ重要なのは、委託内容や扱う情報に応じてリスクを整理し、必要な確認と対応を段階的に行うことです。また、どれだけ確認をしていても、インシデントが起きる可能性をゼロにすることはできません。そのため、「起きない前提」ではなく、「起きたときにどう対応するか」を含めて考えることが、サプライチェーンリスク対策の本質と言えます。

    まとめ:委託先のセキュリティ確認は経営リスク管理の一部

    委託先や外注先のセキュリティ確認は、単なるチェック作業ではありません。それは、自社の情報資産や顧客からの信頼を守るための、重要なリスク管理の一環です。技術的な専門知識がなくても、「どんな情報を預けているのか」「誰が、どこまでアクセスできるのか」「問題が起きたとき、どう連絡が来るのか」といった視点を持つだけで、サプライチェーンリスクは大きく下げることができます。

    サプライチェーン攻撃は経営リスクでもあります。経営視点で整理した記事はこちら。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―


    委託先の確認だけでは、サプライチェーン攻撃を完全に防ぐことはできません。どのような経路で攻撃が起き、なぜ発見が遅れるのかを理解しておくことも重要です。
    なぜ“取引先経由”で情報漏えいが起きるのか 国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態

    BBSecでは

    サプライチェーン攻撃への対策では、「何となく不安だが、どこから手を付ければいいか分からない」という声を多く聞きます。外部接点が増えた現代では、勘や経験だけでリスクを把握するのは難しくなっています。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、外部委託先や連携サービスを含めたセキュリティリスクの可視化や、運用・体制面まで踏み込んだ支援を行っています。サプライチェーン全体を前提とした評価や改善を進めることで、「自社は大丈夫」という思い込みによるリスクを減らすことが可能です。もし、自社のサプライチェーンリスクに少しでも不安を感じているのであれば、一度立ち止まって全体を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】

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    2025年4Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

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    2025年4Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析アイキャッチ画像

    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)から公開されている「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」は、実際に攻撃に悪用された脆弱性の権威あるリストとして、組織のセキュリティ対策の優先順位付けに不可欠なツールとなっています。本記事では、KEVカタログに2025年10月1日~12月29日に登録・公開された脆弱性の傾向を整理・分析します。

    本記事は2025年1Q:第1四半期~3Q:第3四半期の分析レポートに続く記事となります。過去記事もぜひあわせてご覧ください。
    2025年1Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
    2025年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
    2025年3Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

    はじめに

    2025年第四四半期(10月~12月)における既知の悪用された脆弱性の統計分析レポートです。本記事は最新のデータから見える傾向を解説します。前回までの分析ではMicrosoftやCisco製品への攻撃の多さや古い脆弱性が依然悪用されている実態が明らかとなりました。今回は第四四半期のデータを掘り下げ、攻撃トレンドの変化やリスクの深刻度を検証します。経営層に有用な全体像の把握と、技術担当者向けの詳細な分析を両立させ、組織が取るべき対策についても提言します。

    2025年4Qの統計データ概要

    2025年第四四半期に新たにKEVに追加・公開された脆弱性は62件でした。第三四半期(51件)から増加に転じ、2025年1月~12月29日時点で245件(2024年累計186件から約30%増)となっています。まずは月別推移や脆弱性の種類・深刻度について、データの全体像を俯瞰し、特にランサムウェア関連の脆弱性や影響度の大きい脆弱性、自動化攻撃が可能な脆弱性に着目します。

    登録件数の月別推移

    10月に追加件数が31件と突出し、11月は11件、12月は20件となりました(図1参照)。月ごとのばらつきが大きく、10月に集中して脆弱性が公表・追加されたことが分かります。これは各メーカーの定例アップデート直後に既知悪用事例が判明したケースが多いためと考えられ、特定の月に攻撃が急増する傾向が引き続き見られます。4Q全体では3Qからの増加により、年末にかけて脅威が再び活発化したことを示唆します。

    2025年4Q 月別KEV登録件数の推移グラフ
    図1:2025年4Q 月別KEV登録件数の推移グラフ

    主要ベンダー別の内訳

    4Qに新規追加された脆弱性のベンダーを見ると、Microsoftが10件と突出して最多でした。次いでOracle、Fortinet、Gladinetが各3件、Google、Samsung、Kentico、Android、OpenPLC、Dassault Systèmes、WatchGuardなどが各2件で続きます。3Qで多かったCiscoは1件に留まり、Microsoft製品への攻撃集中が際立つ結果です。一方、新たにGladinet(クラウドストレージ)やOpenPLC(産業制御システム)といったベンダーの脆弱性が複数追加されており、攻撃対象の幅が広がっていることが分かります。これは企業向けソフトウェアから家庭用/産業用機器まで攻撃者の関心が及んでいることを示し、ITインフラ全体で対策が必要です。

    脆弱性タイプ(CWE)の分布

    CWE脆弱性タイ
    CWE-7875範囲外の書き込み
    CWE-784OSコマンドインジェクション
    CWE-8623認可の欠如
    CWE-2843不適切なアクセス制御
    CWE-202不適切な入力検証
    CWE-4162解放済みメモリの使用
    CWE-4342危険なタイプのファイルのアップロード許可
    CWE-222パストラバーサル
    CWE-792クロスサイトスクリプティング (XSS)
    CWE-3062重要な機能の使用に対する認証の欠如
    2025年4Q CWE分布表

    悪用された脆弱性の種類としては、範囲外の書き込み(CWE-787)が5件で最多となりました。次いでOSコマンドインジェクション(CWE-78)が4件で続きます。認証・認可に関わる欠陥(CWE-862, CWE-284, CWE-306)も合計8件と多く、アクセス制御の不備が依然として攻撃者に悪用されやすいことが分かります。また、メモリ管理上の欠陥である解放済みメモリの使用(CWE-416)や範囲外の書き込み(CWE-787)など、低レベルのプログラムバグも上位を占めており、メモリ安全性の欠陥が攻撃に利用されるケースが増えています。

    過去頻出したパストラバーサル(CWE-22)も複数含まれており、データから見ると、入力検証検証の不備を突いた攻撃(インジェクション系)、認証・認可の不備、そしてメモリ安全性の欠如という3つの古典的な脆弱性カテゴリーが依然悪用の中心であることが読み取れます。

    攻撃の自動化容易性(Automatable)

    4Qに登録された脆弱性のうち、約48%(30件)は自動化攻撃が容易である「Yes」と分類されました。これは自動スキャンやマルウェアボットによる大規模攻撃に適した脆弱性が増えたことを意味します。残る52%(32件)は「No」(手動操作や特定条件が必要)ですが、スクリプトキディでも悪用できる脆弱性が半数近くを占める状況は深刻です。(2025年年間累計は図3参照)攻撃者は脆弱性を迅速にスキャン・悪用する自動化ツールを駆使するため、組織側も早期パッチ適用と防御網の自動化で対抗する必要があります。

    攻撃の自動化容易性“Yes/No”割合の円グラフ
    図2:攻撃の自動化容易性“Yes/No”割合の円グラフ(2025年累計)

    技術的影響範囲(Technical Impact)

    62件中55件(約89%)は「Total」(=脆弱性を突かれるとシステムを完全制御されてしまう深刻な影響を持つもの)でした。(図3参照)。攻撃者がシステム全面乗っ取り可能な脆弱性を優先的に悪用していることがわかります。特に単独で完全権限を奪える脆弱性は魅力的な標的であり、一方部分的な影響に留まる脆弱性も他のTotalな脆弱性と組み合わせて攻撃チェーンに利用される恐れがあります。

    Total/Partial割合の比較チャート
    図3:Total/Partial割合の比較チャート

    ※注)KEVカタログ掲載時点で実害確認済みである以上、CVSSスコアの大小や影響範囲の違いに関わらず優先度高く対処すべきである点に留意が必要です。

    CVSSスコア分布

    4Qに追加された脆弱性のCVSS基本値は、最大が10.0(3件)、9.8が数件含まれ、9.0以上の「Critical(緊急)」帯が約39%(24件)、7.0~8.9の「High(高)」帯が約52%(32件)を占めました。残り約10%がMedium以下です。平均値は8.48で、前四半期同様に高スコアの欠陥が大半を占めています。3QではCVSS10.0が5件含まれていましたが、4QではCritical帯比率は維持しつつ極端に満点の脆弱性は減少しました。それでもなおHigh以上が全体の9割を超えており、KEVカタログに登録される脆弱性がいかに深刻度の高いものに偏っているかを裏付けています。Criticalでなくとも攻撃に利用され得る(実際に悪用された)ことを示すデータでもあり、スコアに油断せず注意が必要です。

    攻撃手法・影響の深掘り分析

    前述の統計情報を踏まえ、4Qに観測された攻撃の特徴や脅威動向をさらに分析します。ランサムウェアなどサイバー犯罪による悪用事例や、国家支援型グループ(APT)の関与、古い脆弱性の再悪用など、データから読み取れるポイントを考察します。

    実際にランサムウェア攻撃に悪用された脆弱性

    3Qと同様、ランサムウェア攻撃での悪用が確認された事例はごく少数に留まります。4Qに追加された62件中、実際にランサムウェアに悪用されたと判明しているのは3件(約5%)でした。具体的にはオラクルの Oracle Concurrent Processing における認証に関する脆弱性/Oracle E-Business Suite(EBS)のSSRF(サーバサイドリクエストフォージェリ)の脆弱性(CVE-2025-61882および61884)やReact Server Componentsにおける認証不要のリモートコード実行の脆弱性(CVE-2025-55182)がランサムウェア攻撃で利用された例です。これらはいずれも企業の基幹システムや広く使われるフレームワークに関わる欠陥で、金銭目的の攻撃者に狙われたと考えられます。ただしKEVカタログ全体で見ると、依然として国家主体・高度なAPT攻撃での悪用例が多く、ランサムウェアによる事例は氷山の一角です。これは、KEVカタログが単なる理論上の危険性ではなく、「現在進行形で利用されている攻撃手法」を反映したリストであることを示しています。高度な攻撃者はゼロデイ脆弱性を含む様々な欠陥を悪用しており、ランサムウェア以外の脅威にも引き続き注意が必要です。

    古い脆弱性の再注目

    4Qに新規登録された脆弱性の中には、2024年以前に発見されたものが17件(約27%)含まれていました。最も古いものは2010年公表のMicrosoft製品の脆弱性(CVE-2010-3962)で、15年以上前の欠陥が今になって攻撃に利用されたことになります。前四半期にも2020年公表のD-Link製品脆弱性が複数追加されており、サポート切れの古い機器・ソフトが依然として攻撃対象になる実態が浮き彫りです。こうした古い脆弱性はパッチ未適用のまま放置されている資産が狙われており、攻撃者は年代を問わず利用可能な欠陥を有効活用しています。組織内に残存するレガシーシステムの脆弱性管理を怠ると、想定外に古いバグで侵入を許すリスクがあることに注意が必要です。

    脆弱性悪用の手口

    攻撃者の手口としては、引き続きリモートコード実行(RCE)や権限昇格といった直接的にシステム乗っ取りに繋がる攻撃が顕著です。例えば前述のCWE分布にあるCWE-787, CWE-416などのメモリ破壊型脆弱性は、悪用された場合、ターゲットプロセス内で任意コード実行やサービス停止を引き起こします。またCWE-78等のコマンドインジェクションは、サーバー上で攻撃者のコマンドを実行させる手段として多用されています。4Qにはこれらテクニカルな攻撃に加え、認証・認可の不備(CWE-306/862等)を突いて管理者権限を不正取得するケースも見られ、攻撃パターンは多岐に及びます。総じて攻撃者は最も効率よく高い権限を得られる脆弱性の組み合わせを模索しており、一つでも未対策の弱点があれば連鎖的に侵入を許す恐れがあります。

    影響とリスクの評価

    攻撃者は完全なシステム制御が可能な脆弱性(=「Total」)を好んで悪用します。CVSSスコアが「High」や「Critical」の深刻度であればなおさらですが、たとえ中程度でも「KEVカタログに掲載=実害発生済み」である以上、油断は禁物です。特にランサムウェア攻撃では、初期侵入に使った脆弱性自体はさほど目立たない中~高程度の欠陥であっても、内側で別のCritical脆弱性と組み合わせて横展開・権限昇格することが知られています。部分的な影響の脆弱性であっても他の欠陥と組み合わされば致命傷となり得るため、既知の悪用脆弱性は大小問わず優先的に潰す姿勢が重要です。経営層にとっても、これらの統計が示すリスクの高さを踏まえれば、脆弱性対応に十分なリソース投資と適切な意思決定を行う必要性が理解できるでしょう。

    組織が取るべき対策

    4Qの分析レポートの結果を受け、組織として優先的に講じるべき脆弱性管理策を整理します。経営層は戦略的視点から、現場のセキュリティ担当者は実践的観点から、以下のセキュリティ対策の実施をおすすめします。

    KEV掲載脆弱性の最優先パッチ適用

    CISAは継続的にKEVカタログ掲載項目を優先的に修正するよう勧告しています。自社で利用する製品・システムに該当する脆弱性が公開された場合、定例パッチを待たず緊急で対応する体制を整えましょう。自動アラートによる通知や情報資産との照合などによって見落としを防ぐ運用が有効です。特に公表から日が浅い脆弱性は攻撃者も素早く狙ってくるため、初動対応のスピードが重要になります。

    主要ベンダー製品の迅速なアップデート

    MicrosoftやOracle、Cisco、Googleなど主要ベンダーのソフトウェアや機器は引き続き攻撃者の主要標的です。毎月発表されるセキュリティ更新プログラム(例: Microsoftの月例パッチ)や緊急アップデート情報を速やかに収集し、適用テストを経て迅速に全社展開する習慣をつけましょう。4QではMicrosoft製品の脆弱性が突出しましたが、他ベンダーでもゼロデイが報告されればすぐ悪用される可能性があります。例えば「重要なアップデートは可能な限り2週間以内に適用」などといった内部目標を設定し、経営陣もその重要性を認識すべきでしょう。

    ネットワーク機器・IoT/産業機器の点検

    企業ネットワークや工場内に設置されたルーター、NAS、監視カメラ、制御システム等も忘れてはいけません。4QにもD-LinkルーターやOpenPLCなどIoT/OT機器の脆弱性が含まれており、これらは往々にしてファームウェア更新が滞留しがちです。サポート切れやアップデート未適用の機器がないか棚卸しし、可能な限り最新ファームウェアへの更新や機器リプレースを実施しましょう。どうしても更新できない場合は、ネットワーク分離やアクセス制限など緩和策を講じ、インターネットから直接アクセスできる状態を放置しないことが重要です。

    脅威検知とインシデント対応の強化

    脆弱性への対策だけでなく、悪用された際に速やかに検知・対応する能力も不可欠です。IPS/IDSやエンドポイント検知(EDR)のシグネチャを最新化し、KEVに掲載された脆弱性の既知の攻撃パターンやIoC(Indicators of Compromise)を監視します。CISAやセキュリティベンダーから提供される検知ルールやYARAルールを活用し、ログ分析やトラフィック監視に組み込みましょう。また万一侵入を許した場合でも、早期にそれを発見し被害を最小化できるようインシデント対応訓練を積んでおくことも有効です。

    資産管理と内部教育の徹底

    攻撃者に狙われる脆弱性は多岐にわたるため、まずは自社システムの全容を把握することが出発点です。ハードウェア・ソフトウェア資産の最新インベントリを整備し、使用中の全ての製品についてサポート状況や最新パッチ適用状況をチェックします。使われていないシステムや旧式OSは計画的に撤去し、やむを得ず残す場合もネットワークを分離するなどリスク低減策を講じます。またIT部門や開発部門に対し、「古い脆弱性を放置しない」「定期的なアップデート適用は必須」といった意識付けを行います。定期的なセキュリティ研修や訓練で、脆弱性管理の重要性を全社員と共有することも大切です。

    脆弱性管理プロセスの強化と自動化

    増加する脆弱性に対処するには、属人的な対応から脱却しプロセスとツールの整備を進める必要があります。脆弱性情報収集から評価、パッチ適用状況のトラッキングまで一元管理できる仕組みを整えましょう。例えばKEVカタログのデータを自社資産データベースと照合する自動ツールを導入すれば、新たな緊急欠陥の検知と対応指示を迅速化できます。また定期的に脆弱性対応状況をレビューし、未対応件数や所要日数といったKPIを計測・改善することも効果的です。経営層は必要な人員・予算を投じ、継続的に脆弱性管理体制を進化させることが求められます。

    脆弱性管理プロセスの概要とポイントについては以下の記事でも解説しています。あわせてぜひご覧ください。
    脆弱性管理とIT資産管理-サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

    まとめ

    2025年4QKEVカタログ分析レポートからは、攻撃者の手口がより広範かつ巧妙になっている実態が浮き彫りになりました。特に今年はKEVカタログへのCVE追加件数が前年より増加し記録更新となったことから、従来以上のハイペースで緊急脆弱性が発生・悪用される可能性が高まっています。侵入前提での備えを強化すべきでしょう。

    2025年を通じて言えることは、脆弱性対応のスピードと徹底度を組織文化として根付かせることです。経営層はリスクと投資対効果を理解し、現場は技術的施策を愚直に実行する。そして最新の脅威情報をキャッチアップし続けることで、組織全体のサイバー耐性を高められるでしょう。来たる2026年も同様のレポートを継続し、変化する攻撃者の戦術に対抗すべく知見をアップデートしていきます。

    BBSecでは

    脆弱性の悪用リスクに迅速に対応するには、専門家の支援を仰ぐことも有効です。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、発覚した脆弱性への対応支援や緊急インシデント対応サービスをご提供しています。自社だけでは対応が難しいゼロデイ攻撃の発生や、大規模サイバー攻撃の兆候を検知した際はぜひご相談ください。経験豊富なセキュリティ専門チームが、お客様のシステム状況の迅速な把握、攻撃の封じ込め、再発防止策の導入まで包括的にサポートいたします。また、平時からの脆弱性診断サービスやセキュリティ研修なども取り揃えており、脆弱性管理体制の構築から有事の対応までワンストップで支援可能です。BBSecのサービスを活用し、貴社のセキュリティレベル向上にぜひお役立てください。

    サイバーインシデント緊急対応

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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―

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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―アイキャッチ画像

    近年、「自社に不正アクセスはなかったのに情報が漏えいした」という状況が増えています。その多くは、取引先や委託先、外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃が原因です。本記事では、なぜこうした“取引先経由”の情報漏えいが起きやすいのか、国内で実際に起きている事例や背景をもとに整理します。攻撃の構造を理解することで、見えにくいリスクに気づく視点を持つことができます。

    こうしたリスクを前提に、委託先や外注先のセキュリティをどこまで確認すべきか悩む企業も少なくありません。実務の判断ポイントについては、以下の記事で整理しています。
    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか

    自社が原因でなくても、情報漏えいは起きてしまう時代

    近年、「自社システムに不正アクセスはなかった」と説明される情報漏えい事故が国内で相次いでいます。調査を進めると原因は自社ではなく、取引先や外部サービスを経由した不正アクセスだった、というケースが少なくありません。こうした攻撃はサプライチェーン攻撃と呼ばれ、いま日本企業にとって最も現実的なセキュリティリスクの一つになっています。特にSaaSや外部委託、API連携が当たり前になった現在、このリスクは業種や企業規模を問わず存在します。

    サプライチェーン攻撃とは何か

    サプライチェーン攻撃とは、標的となる企業そのものではなく、取引先・委託先・連携している外部サービスを踏み台に侵入する攻撃手法です。サプライチェーン攻撃の全体像や基本的な考え方については、以下の記事で整理しています。あわせてぜひご覧ください。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    なぜ今、国内でサプライチェーン攻撃が増えているのか

    背景にあるのは、企業活動のデジタル化と外部依存の加速です。業務効率化のためにSaaSを導入し、外部ツールとAPIで連携し、専門業務を外注することは、今や珍しいことではありません。一方で、こうした外部接点が増えるほど、攻撃者にとっての「侵入口」も増えていきます。特に、委託先や小規模ベンダーでは十分なセキュリティ対策が取られていないケースもあり、結果としてそこが狙われやすくなります。さらに最近では、認証情報の使い回しや権限設定のミスを自動的に探し出す攻撃手法も増えており、従来型の対策だけでは気づかないうちに侵入されるリスクが高まっています。

    国内で実際に起きているサプライチェーン攻撃の特徴

    国内で報告されているサプライチェーン攻撃の多くには共通点があります。それは、自社システムが直接破られたわけではなく、正規の連携機能や委託先のアクセス権限が悪用されている点です。そのため、ログを見ても不正アクセスだと気づきにくく、発覚までに時間がかかることがあります。結果として、数万件から数十万件規模の個人情報や顧客データが流出して初めて問題が表面化する、という事態につながります。サプライチェーン攻撃が怖いのは、まさにこの「想定外の経路」から被害が発生する点にあります。

    サプライチェーン攻撃の国内事例や攻撃手口については、以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    事例から学ぶサプライチェーン攻撃 -サプライチェーン攻撃の脅威と対策2-

    サプライチェーン攻撃が企業にもたらす影響

    この種の攻撃によって発生するのは、単なるシステムトラブルではありません。個人情報漏えいによる顧客からの信頼低下、取引先との関係悪化、場合によっては契約違反や損害賠償の問題に発展することもあります。近年では、「原因が委託先にあった」と説明しても、情報管理責任そのものは発注元企業にあると判断されるケースが増えています。サプライチェーン攻撃は、企業の信用そのものを揺るがすリスクだと言えるでしょう。

    企業が今すぐ考えるべきサプライチェーン対策

    まず重要なのは、自社がどのような外部サービスや委託先とつながっているのかを正確に把握することです。意外と、過去に導入したまま使われていないSaaSや、誰が管理しているのか分からない連携設定が残っていることも少なくありません。そのうえで、外部サービスや委託先に付与している権限が本当に必要最小限になっているかを見直す必要があります。「業務上便利だから」という理由で広い権限を与えたままにしていると、それがそのまま攻撃経路になってしまいます。また、技術的な対策だけでなく、委託契約や運用ルールの見直しも欠かせません。インシデント発生時の報告義務や再委託の条件、セキュリティ対策状況の確認方法などを明確にしておくことで、リスクを大きく下げることができます。

    まとめ:サプライチェーン全体を見る視点が不可欠に

    サプライチェーン攻撃は、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。外部サービスを利用し、業務を委託し、クラウド連携を行っている企業であれば、規模に関係なく直面する可能性があります。重要なのは、自社のシステムだけを見るのではなく、自社を取り巻くサプライチェーン全体をどう管理するかという視点です。そこに目を向けない限り、同様の事故は今後も繰り返されるでしょう。

    また、これらの事故は経営判断とも直結します。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―


    こうした実態を踏まえると、サプライチェーン攻撃は個別対策だけでは防ぎきれません。委託先や外部サービスを含めた全体像を把握し、どこにリスクが集中しているのかを整理する視点が不可欠です。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    BBSecでは

    サプライチェーン攻撃への対策では、「何となく不安だが、どこから手を付ければいいか分からない」という声を多く聞きます。外部接点が増えた現代では、勘や経験だけでリスクを把握するのは難しくなっています。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、外部委託先や連携サービスを含めたセキュリティリスクの可視化や、運用・体制面まで踏み込んだ支援を行っています。サプライチェーン全体を前提とした評価や改善を進めることで、「自社は大丈夫」という思い込みによるリスクを減らすことが可能です。もし、自社のサプライチェーンリスクに少しでも不安を感じているのであれば、一度立ち止まって全体を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】


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    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

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    近年、企業の情報漏えい事故の原因として増えているのが、委託先や取引先、外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃です。自社のシステムが直接攻撃されていなくても、外部との連携を足がかりに被害が発生するケースは珍しくありません。本記事では、サプライチェーン攻撃とは何かという基本的な考え方から、なぜ企業規模を問わずリスクが高まっているのか、全体像を整理します。まず全体を理解することで、断片的な対策に終わらない判断の土台をつくります。

    サプライチェーン攻撃がどのように起きているのか、攻撃の特徴や背景を知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で増えるサプライチェーン攻撃の実態―

    情報漏えいは「自社の外」から起きる時代へ

    近年、企業の情報漏えい事故を調査すると、必ずしも自社システムが直接攻撃されているわけではないケースが増えています。原因として多く挙げられるのが、委託先や外注先、外部サービスを経由した不正アクセスです。こうした攻撃はサプライチェーン攻撃と呼ばれ、いまや企業規模や業種を問わず直面する可能性のある現実的なリスクになっています。クラウドサービスSaaSの利用、業務委託の拡大によって、企業のセキュリティ境界は大きく広がりました。その結果、自社だけを守っていれば安全、という考え方は通用しなくなっています。

    サプライチェーン攻撃とは何か

    サプライチェーン攻撃とは、標的企業そのものではなく、その周囲に存在する取引先や委託先、連携サービスを足がかりに侵入する攻撃手法です。攻撃者は、比較的対策が弱い外部事業者を狙い、正規の権限や接続経路を利用して本来の標的へと近づきます。この攻撃の特徴は、正規の仕組みが悪用される点にあります。そのため、不正侵入として検知されにくく、被害が表面化したときにはすでに多くの情報が流出しているケースも少なくありません。

    なぜサプライチェーンリスクの管理は難しいのか

    サプライチェーンリスクの管理が難しい最大の理由は、管理対象が自社のコントロール外にある点です。委託先や外注先ごとにセキュリティ対策の成熟度は異なり、すべてを同じ基準で把握することは簡単ではありません。また、契約内容や運用ルールが曖昧なまま業務が進んでいることも多く、インシデントが起きて初めて問題に気づくケースもあります。こうした背景から、「何をどこまで確認すべきか分からない」という声が現場で多く聞かれます。

    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか

    サプライチェーンリスクを考えるうえで重要なのは、すべてを完璧に監査しようとしないことです。まずは、委託先がどの情報にアクセスできるのか、どの業務を担っているのかを整理することが出発点になります。扱う情報の重要度が高いほど、確認すべき範囲も広がります。技術的な対策の有無だけでなく、運用体制やインシデント時の対応ルールが整っているかどうかを見ることが、現実的なセキュリティ確認につながります。

    委託先が原因で情報漏えいが起きた場合の初動対応

    どれだけ対策を講じていても、サプライチェーン攻撃のリスクを完全にゼロにすることはできません。そのため重要なのは起きない前提ではなく、起きたときにどう対応するかを想定しておくことです。委託先が原因で情報漏えいが疑われる場合でも、企業としての説明責任は免れません。初動対応では、原因の切り分けよりも被害拡大の防止と事実整理を優先し、社内外への対応を並行して進める必要があります。

    サプライチェーンリスク対策で本当に重要な視点

    サプライチェーン攻撃への対策は、単なるセキュリティ技術の問題ではありません。委託先との関係性、契約内容、社内体制、インシデント対応の準備といった、組織全体のリスク管理の問題です。「自社の中は守ることができている」という安心感が、かえってリスクを見えにくくしてしまうこともあります。だからこそ、自社を取り巻く外部環境も含めて全体を把握し、どこにリスクが集中しているのかを整理する視点が欠かせません。

    サプライチェーン攻撃は経営リスクでもあります。経営視点で整理した記事はこちら。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―

    まとめ:まず“全体像”を理解することが最大の対策

    サプライチェーン攻撃は、今後も増えていくと考えられます。委託先や外注先を活用する限り、すべての企業が無関係ではいられません。重要なのは、断片的な対策に終始するのではなく、サプライチェーン全体を一つのシステムとして捉えることです。全体像を理解したうえで、確認・対応・改善を積み重ねていくことが、結果的に最も効果的なリスク対策になります。

    BBSecでは

    サプライチェーンリスクは、属人的な判断や部分的な対応では管理しきれなくなっています。委託先の数が増えるほど、リスクの把握と対応は複雑になります。株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を視野に入れたセキュリティリスクの整理や、委託先管理、インシデント対応体制の支援を行っています。「どこにリスクがあるのか分からない」という段階からでも、現状に合わせた整理と改善を進めることが可能です。サプライチェーンを含めた情報管理に不安を感じている場合は、まず全体を俯瞰するところから始めてみてはいかがでしょうか。

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    DoS攻撃のリスクと対策:アクセス急増の原因と見分け方、サービス停止を防ぐ初動対応

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    「DoS攻撃のリスクと対策:アクセス急増の原因と見分け方、サービス停止を防ぐ初動対応」アイキャッチ画像

    Webサイトやオンラインサービスでアクセスが急増した場合、その原因が通常の利用増加なのか、DoS攻撃などによる異常な負荷なのかを早期に見極めることが重要です。判断を誤ると、サービス停止や業務影響につながるおそれがあります。

    本記事では、アクセス急増時に確認すべきポイントを整理し、DoS攻撃による停止リスクが高まる状況の見分け方や、企業が優先して実施すべきDoS攻撃対策の考え方を解説します。用語解説にとどまらず、脆弱性管理や初動対応など実務で役立つ判断軸を中心にまとめています。

    アクセス急増が起きたときに最初に考えるべきこと

    アクセス数や通信量が増えること自体は、必ずしも問題ではありません。キャンペーンやメディア露出など、正当な理由でトラフィックが増加するケースも多くあります。

    一方で、原因を確認しないまま放置すると、サーバやネットワークに過剰な負荷がかかり、応答遅延やエラーの多発、最悪の場合はサービス停止に発展します。重要なのは「増えている」という事実そのものではなく、なぜ増えているのかを切り分けることです。

    最初の15分で確認すべき初動対応のポイント

    アクセス急増を検知した直後は、次の観点を優先的に確認します。

    • いつから増え始め、どの程度の時間継続しているか
    • 影響が出ているのはどこか(ネットワーク、ロードバランサ、アプリケーション、DBなど)
    • 帯域・リクエスト数・エラー率のどれが増えているか
    • 直近で行ったリリースや設定変更の有無

    この初動判断が、DoS攻撃か通常のアクセス増加かを見極める第一歩になります。

    サービス停止につながる代表的な原因

    アクセス急増や負荷増大の原因には、いくつかのパターンがあります。

    一時的な正規アクセス集中

    特定の時間帯やイベントをきっかけに利用が集中するケースです。多くの場合、時間の経過とともに自然に収束します。

    設定不備・設計上の問題

    アクセス制限やリソース管理が適切でないと、通常利用でも過剰な負荷がかかり、サービス停止を招くことがあります。

    悪意ある大量リクエスト(DoS攻撃・DDoS攻撃)

    意図的に大量の通信や処理を発生させ、サービスを利用不能にするケースです。一般にDoS攻撃やDDoS攻撃と呼ばれるものは、この原因の一つとして位置づけられます。

    重要なのは、最初から攻撃と決めつけず、原因を整理して順序立てて切り分けることです。

    DoS攻撃とは何か・DDos攻撃との違い

    「DoS(Denial of Service)攻撃」とは、サーバやネットワークに過剰な負荷をかけることで、サービスを正常に利用できなくする攻撃手法です。単一の攻撃元から行われる場合もあれば、複数の端末を利用して分散的に行われるケースもあります。複数の分散した(Distributed)拠点から同時に行われるものは、「DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃」と呼ばれます。

    DDos攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    記録破りのDDoS攻撃!サイバー脅威の拡大と企業が取るべき対策とは?
    【徹底解説】 日本航空のDDoS攻撃被害の実態と復旧プロセス

    企業のWebサービスは外部公開されている性質上、DoS攻撃の影響を受けやすく、特に処理能力に余裕がない構成や設定不備がある環境では、比較的少ない負荷でもサービス停止に至ることがあります。DoS攻撃は「特別な脅威」ではなく、サービス停止リスクの一因として日常的に考慮すべきものです。

    DoS攻撃 / DDoS攻撃の特徴

    攻撃難易度の低さ

    DoS攻撃/DDoS攻撃の特徴のひとつが攻撃の難易度の低さです。

    多くの場合、コンピュータプログラムを書いてマルウェアを開発するような技術力は不要で、APTのような組織・資金・技術力もいりません。

    インターネット上には、多数のDoS攻撃ツールが存在します。また、ストレステスト等の正規ツールを悪用してDoS攻撃を行う場合もあります。そればかりか、クレジットカードさえあればすぐに利用できる「DDoS攻撃を請け負う違法サービス」すら存在しています。

    DoS攻撃/DDoS攻撃によるサービス停止は機会損失を生み、ブランド毀損は通常のサイバー攻撃より大きい場合もあります。また、直接攻撃対象とならなくても、攻撃の踏み台にされることで間接的な加害者となる危険性もあります。

    社会・政治的動機

    DoS攻撃、特にDDoS攻撃の特徴を示すキーワードが「社会・政治」です。

    2010年、米大手決済サービスが、国際的な内部告発サイトが運営のために支援者から寄付を集める際に利用していた口座を、規約にしたがって凍結したことに対し、ハッカー集団がDDoS攻撃を実施、米大手決済サービスのサービスが一部停止する事態に陥りました。

    このように、実施のハードルが低いDoS攻撃/DDoS攻撃は、人々が自身のさまざまな意思を表明するために、あたかもデモ行進のように実施されることがあります。かつては、DDoS攻撃をデモ活動同様の市民の権利として認めるべきであるという議論がまじめに行われていたこともありました。しかし、実際には「気に食わない」だけでもDDoS攻撃は行われ得るのです。社会課題の解決、ナショナリズム、倫理などを標榜していたとしても、端から見るとヘイトや嫌がらせと変わらないことがあります。

    このような背景があるため、単に技術的な負荷として片付けられない場合もある点に留意が必要です。

    ブランド毀損など、DoS攻撃/DDoS攻撃を受けた場合の被害が大きい

    政治的、社会的、あるいは倫理的文脈から批判が集中した企業やサービスなどに対して、一度DoS攻撃/DDoS攻撃がはじまると、その趣旨に共感した人々が次々と参加し、ときに雪だるま式に拡大することがあるのもこの攻撃の特徴です。

    また、DoS攻撃/DDoS攻撃は、攻撃が起こっていることが外部からもわかるという点で、外部に公表するまでは事故の発生がわからない情報漏えいのようなタイプのサイバー攻撃とは異なります。「広く一般に知られる」ことが容易に起こりうるため、ブランドへの負のインパクトが発生する可能性も大きいといえます。

    DoS攻撃/DDoS攻撃の発生に気づくのが難しい

    そもそもWebサービスは、その性質上外部に公開されるものです。そのためDoS攻撃やDDoS攻撃を完全に防ぐことは容易ではありません。特に多数の機器を踏み台として巻き込むDDoS攻撃の標的となった場合には、気づく間もなくあっという間にサービス拒否状態に陥る可能性が高いでしょう。

    DoS攻撃による企業への影響とリスク

    DoS攻撃による影響は、単なる一時的な停止にとどまりません。

    • Webサイトやサービスが利用できなくなることによる機会損失
    • 業務システム停止による業務遅延
    • 顧客満足度の低下や信用・ブランドへの影響

    特にBtoBサービスの場合、短時間の停止であっても取引先への影響が大きく、事後対応に多くの工数を要するケースがあります。

    関連記事:「DoS攻撃/DDoS攻撃の脅威と対策

    DoS攻撃かどうかを見分けるための確認ポイント

    アクセス急増時には、いくつかの観点から状況を確認することで、異常かどうかを判断しやすくなります。

    タイミングと継続時間

    増加のタイミングと継続時間です。特定の時間帯だけ集中しているのか、長時間にわたって負荷が続いているのかによって、想定される原因は異なります。

    アクセス元・リクエスト内容

    同じ操作やURLへのリクエストが繰り返されていないか、特定のIP帯や地域に偏っていないかを見ることで、通常利用との違いが見えてきます。

    ログ・監視データから見る攻撃兆候

    エラー発生状況やレスポンス時間の変化を確認することで、単なるアクセス増加なのか、処理を圧迫する挙動なのかを把握できます。

    これらを総合的に確認することで、「様子見でよいケース」か「早急な対応が必要なケース」かを判断できます。

    企業が優先して実施すべきDoS攻撃対策

    DoS攻撃対策は、すべてを一度に実施する必要はありません。優先順位を付けて、自社環境に合った対策を選択することが重要です。

    DoS攻撃/DDoS攻撃にも有効な3つの基本的対策

    DoS攻撃、特にDDoS攻撃の対策としては、CDN(Content Delivery Networks)の利用、DDoS攻撃対策専用アプライアンス、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)などが威力を発揮します。

    そして、これらの対策を適用する際には、同時に、セキュリティ対策の基本ともいえる以下の3点に対応できているかどうかも確認しましょう。

    1.必要のないサービス・プロセス・ポートは停止する
    2.DoS攻撃/DDoS攻撃の端緒になりうる各種の不備を見つけて直す
    3.脆弱性対策が施されたパッチを適用する

    いずれもセキュリティ対策の「基本中の基本」といえるものばかりですが、防御可能なタイプのDoS攻撃を回避し、システムがDDoS攻撃の踏み台にされることを防ぐためにきわめて有効です。

    DoS攻撃対策でよくある誤解と見落とし

    DoS攻撃対策というと、高価な専用製品を導入しなければ防げないと考えられがちですが、それだけで十分とは限りません。「対策しているつもり」になっている状態や、運用面の確認が不十分なケースも多く見られます。日常的な設定確認や運用の見直しが、結果としてリスク低減につながります。

    自社だけでの対応が難しい場合の考え方

    アクセス急増の原因が複雑で判断が難しい場合や、継続的な運用に不安がある場合は、第三者の視点を取り入れることも有効です。定期的なセキュリティ診断や評価を通じて、自社では気づきにくいリスクを把握することができます。

    脆弱性や設定不備を狙ったDoS攻撃は防ぐことができる

    DoS攻撃/DDoS攻撃は攻撃の発生に気づくのが難しいという話を前段で述べましたが、一方で、防ぐことができるタイプの攻撃も存在します。

    一部のWebサイトでは、「長大な文字列を受け入れてしまう」「ファイルの容量を制限しない」など、DoS攻撃につけ込まれてしまう問題が存在することがあります。また、ネットワーク関連の設定の不備によってDoS攻撃を受ける可能性も存在します。しかし、こうした脆弱性は、修正による回避が可能です。

    また、あなたの企業が直接DoS攻撃の攻撃対象とならなくても、上述のような脆弱性を放置しておくとDDoS攻撃の踏み台にされることもあります。その対策としては、各種機器・OS・ソフトウェアの脆弱性管理を適切に行うことや、脆弱性診断等のセキュリティ診断を定期的に実施して未知のリスクを把握し、対処することが重要です。

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    診断会社あるある「すわ、DoS攻撃?」

    ここで余談ではありますが、診断実施に伴う「あるある」エピソードを。

    セキュリティ診断を行う際には、必ず、実施の年月日や時間帯を関連する部署に周知しなくてはなりません。

    実は、診断実施に伴って事業部門等が「DoS攻撃が発生した!」と勘違いすることが、しばしばあるのです。もちろん、一般にインターネット上に公開しているシステムの場合には業務に差し支えるような検査の仕方をしないというのが大前提ですが、それでも、大量の問合せ等が発生すると何も知らされていない担当部署はサイバー攻撃と勘違いすることがあります。ついでにこの際に抜き打ちで社内のサイバー訓練を・・・と目論みたい気持ちが出たとしても、それを実行に移すのは大変危険です。訓練は訓練させる側にきちんとした検証シナリオがあってこそ効果を発揮します。まずは関係各所との連携を徹底するところから始めましょう。

    まとめ

    DoS攻撃は、特別なケースではなく、サービス停止リスクの一因として日常的に考慮すべきものです。

    • アクセス急増時はまず原因を切り分ける
    • DoS攻撃の影響と兆候を理解する
    • 見分け方を把握し、初動対応を誤らない
    • 優先順位を付けて対策・運用を進める
    • 必要のないサービス・プロセス・ポートの停止、などの基本的対策が有効
    • 脆弱性を突いて行われるDoS攻撃は、脆弱性診断などで発見し対策できる

    これまで述べたように、DoS攻撃/DDoS攻撃は、機会損失やブランド毀損など事業継続性を損なうダメージをもたらし得るサイバー攻撃です。DDoS攻撃の踏み台となれば社会的責任が問われることもあるでしょう。経営課題のひとつとして認識し、対処することが大切です。

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    サイバーレジリエンスとは何か―ランサムウェア時代の企業が取るべき対策と実践ガイド
    第3回:企業のサイバーレジリエンス強化策の実践ガイド

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    サイバーレジリエンスとは何か―第3回:企業のサイバーレジリエンス強化策の実践ガイドアイキャッチ画像

    攻撃されても事業を継続できる力「サイバーレジリエンス」を解説。シリーズ最終回では、企業が実務で取り組むべきサイバーレジリエンス強化策を整理。実践的な対策を通じて攻撃を受けても事業を継続できる体制づくりのポイントを解説します。

    企業に求められるサイバーレジリエンスの実践とは

    サイバー攻撃が高度化し、「Qilin」のようなランサムウェア集団による被害が日々報道され続ける現代において、「情報セキュリティ」と「サイバーレジリエンス」の強化は全ての企業が無視できない経営課題となっています。技術・人・組織の三位一体で高めるべき実践策について、国内外の情報を基に解説します。

    情報資産の可視化とリスク評価の重要性

    まずは、情報資産の洗い出しとリスク評価を徹底することが不可欠です。守るべき顧客情報・機密文書・基幹システムを特定し、サイバー攻撃や内部不正といった脅威、それに対する脆弱性を明確化しましょう。何が狙われやすいのかを組織全体で可視化し、優先順位を定めて防御層を構築することが「情報セキュリティ」の基本です。

    多層防御とインシデント対応の統合的アプローチ

    次に、多層防御の考え方を導入する必要があります。ゼロトラストモデルの推進を軸に、ネットワーク分離・EDR/XDRの活用・多要素認証(MFA)・適切なパッチ運用・権限管理の最小化・継続的なログ監視…など現代的な技術群は、それぞれ単独で機能するものではなく、総合的なセキュリティ対策のクッションとなります。QilinによるアサヒGHD攻撃のように、日常的なパッチ未適用や不十分なアクセス管理が被害の拡大要因となるため、運用面まで踏み込んだ点検・改善が求められています。

    インシデント対応計画の策定

    備えとして最も重要視したいのはインシデント対応計画の策定と日常的な訓練です。攻撃を受けた際に何を優先し、誰がどのように動くか、社内外への情報発信のタイミングや判断軸をあらかじめ決めておくことで、初動の混乱や判断遅延を最小限にできます。アサヒGHDの復旧例や国のBCPガイドラインでも、緊急時の透明な情報公開や顧客・関係先への真摯な対応が信頼維持の基盤として重視されています。

    バックアップ戦略と復旧体制の確立

    バックアップ戦略もサイバーレジリエンスにおいて必須の柱です。オフラインバックアップやイミュータブルバックアップは、ランサムウェアによる暗号化やデータ消去、さらにはバックアップ自体への攻撃を見越した対策となっています。バックアップのリストア手順まで普段から検証を重ね、実際の危機局面で「使えるバックアップ」を運用できる体制づくりが現場の情報セキュリティ課題として浮き彫りになっています。

    サプライチェーン攻撃への備え

    サプライチェーン攻撃にも注意が必要です。自社だけでなく、取引先や委託先ネットワーク経由で侵入・拡大するケースが増えているため、サイバーセキュリティ要件の明文化や、委託先を含めたインシデント報告ルール整備、サプライヤー監査などもレジリエンス強化の一角をなします。

    従業員教育と組織文化の醸成

    従業員のセキュリティ教育と、組織文化としての危機意識の醸成も長期的な強さにつながります。フィッシング訓練や定期的なアップデート研修、違反事例の共有など、形式だけでなく“自分ごと”として取り組める日常の習慣化が狙いです。経営層の率先垂範と現場への権限委譲を通じ「脅威に正直で、復元力のある組織こそが選ばれる時代」であることを社内外に示すことが、競争力確保にも直結します。

    まとめ:サイバーレジリエンス強化は企業価値創出につながる

    このような総合的なサイバーレジリエンス強化策の実践は、単なるコストではなく”持続的な企業価値創出”そのものであり、Qilin事件を始めとした最新インシデントが繰り返し教えている最重要原則です。企業規模や業種を問わず、一人ひとり・一社ごとに最適な情報セキュリティ対策とレジリエンス文化の醸成が社会的責任であること―これこそが、本連載を通じて読者の皆様にお伝えしたいメッセージとなります。


    【連載一覧】
    第1回:サイバーレジリエンスの重要性:攻撃を前提とした“事業を守る防御”とは
    第2回:Qilinサイバー攻撃に学ぶサイバーレジリエンス

    【参考情報】

    【関連ウェビナー開催情報】
    弊社では12月3日(水)14:00より、「【最新事例解説】Qilin攻撃に学ぶ!組織を守る“サイバーレジリエンス強化のポイント”喫緊のランサムウェア被害事例からひも解く ― 被害を最小化するための“備えと対応力”とは?」と題したウェビナーを開催予定です。最新のランサムウェア被害事例をもとに、攻撃の実態と被害を最小化するための具体的な備えについて解説します。ぜひご参加ください。詳細・お申し込みはこちら

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    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年11月26日(水)13:00~14:00
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  • 2025年12月3日(水)14:00~15:00
    【最新事例解説】Qilin攻撃に学ぶ!組織を守る“サイバーレジリエンス強化のポイント”喫緊のランサムウェア被害事例からひも解く ― 被害を最小化するための“備えと対応力”とは?
  • 2025年12月10日(水)14:00~15:00
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