AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方

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生成AIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを使うかどうかだけでなく、どのAIを、どの業務で、どのような条件で利用するかを組織として管理することが求められています。情報漏洩や誤情報、著作権などのリスクに加え、従業員が会社の承認を得ずにAIサービスを利用する「シャドーAI」への対応も必要です。本記事では、AIガバナンスとは何か、国内外のルールやガイドラインの動向を踏まえながら、企業に必要な体制やAI利用ガイドラインの作り方について紹介します。

AIを取り巻くリスクや、企業に求められるセキュリティ対策の全体像については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスとは

AIガバナンスとは、企業や組織がAIを適切に利用するために、方針や責任体制、ルールを定め、AIに伴うリスクを継続的に管理していく仕組みです。生成AIの利用では、入力した機密情報や個人情報の取り扱い、生成された情報の正確性、著作権・知的財産権、利用するAIサービスの安全性など、さまざまな点を考慮する必要があります。そのため、生成AIに個人情報を入力しない、といった利用上の注意事項を定めるだけでは十分とはいえません。

誰がAIの利用を管理するのか、どのようなAIサービスを利用できるのか、問題が発生した場合に誰へ報告するのか、利用するAIやリスクの変化に応じてルールをどのように見直すのか、といった運用まで含めて考える必要があります。AI利用ガイドラインは、こうしたAIガバナンスを実際の業務へ落とし込むための手段の一つといえます。

なぜ企業にAIガバナンスが必要なのか

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミング支援など、さまざまな業務で利用できるようになりました。一方、利用が容易であるからこそ、企業が把握しないまま従業員がAIサービスを業務に利用することも考えられます。例えば、従業員が個人で登録した生成AIサービスに顧客から届いたメールを入力して返信文を作成したり、社内資料やソースコードを入力して要約や分析を行ったりするケースです。企業が利用実態を把握できていなければ、どのサービスに、どのような情報が入力されているのかを管理できません。

国内でも、個人情報保護委員会やデジタル庁などが、生成AIの業務利用における個人情報や機密情報の取り扱いについて注意を促してきました。また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公開した「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」では、全社AIガバナンスとして、AIガバナンス体制の整備、利活用ガイドラインの策定、シャドーAIへの対応方針などが整理されています。生成AIを一律に禁止するだけではなく、生成AIの利用実態を把握し、リスクに応じて適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。

生成AIの情報漏洩や誤情報、著作権、サイバー攻撃への悪用などのリスクについては、「生成AIのリスクとは?企業が注意すべき情報漏洩・誤情報とサイバー攻撃への悪用」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスを取り巻く国内外のルールとガイドライン

AIの急速な普及を受け、国内外ではAIを安全かつ適切に利用するためのルールやガイドラインの整備が進められています。日本では、経済産業省と総務省が2024年に「AI事業者ガイドライン」を策定しました。その後もAIを取り巻く環境の変化に応じて改定が続けられ、2026年3月には第1.2版が取りまとめられています。AI事業者ガイドラインでは、AIに関係する事業者をAI開発者、AI提供者、AI利用者に整理し、それぞれが取り組むべき事項などが示されています。

政府においてもAI利用のルール整備が進んでいます。デジタル庁は2026年6月、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を第2.0版へ改定しました。同ガイドラインでは、政府における生成AIのガバナンスや、各府省庁が生成AIを調達・利用する際のルールなどが示されています。

個人情報の取り扱いについても注意が必要です。個人情報保護委員会からは2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で一部事業者に対する要配慮個人情報の取得及び利用目的の通知などについての注意喚起が行われています。全般の注意喚起では個人情報取扱事業者、行政機関、一般利用者それぞれに向けた注意点が記載されています。

生成AIサービスを利用する場合には、利用規約やプライバシーポリシーを確認し、入力する情報がどのように取り扱われるのかを把握したうえで利用を判断することが重要です。

AIサービスの契約条件も確認する

AIサービスを導入する際には、社内ルールだけでなく、利用するサービスの契約条件やセキュリティについて確認することも重要です。経済産業省が公開している「生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト」では、AIサービスの利用や開発にあたり、インプット・アウトプットの取り扱いや権利関係、責任分担などを確認するための観点が整理されています。

生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト(チェッリストの対象となる条項)
チェックリストの対象となる条項
出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」p.11より抜粋

セキュリティに関してはチェックリスト内に、以下の観点でのチェック項目が設けられています。

  • 対象システム(AIサービス)のセキュリティ水準
  • 監査条項等
  • ログの保存
  • 規約改定に関する留意点

AIサービスを選定する際には、機能や価格だけでなく、入力した情報がどのように扱われるのか、ログが保存されるのか、契約条件が変更された場合にどのような影響があるのか、といった点も確認する必要があります。

海外でもAIに関する制度整備が進む

海外でもAIの安全性や信頼性を確保するための制度整備が進められています。代表的なものが2024年に施行されたEUのAI全般をリスクベースで管理するためのAI法(『EU AI Act: first regulation on artificial intelligence』)です。AI法では、AIシステムをリスクに応じて分類し、許容できないリスクを持つAIを禁止するとともに、高リスクAIにはリスク管理や記録、人による監督などの要件を設けています。

また、汎用目的AI(General-purpose AI(GPAI))についても、そのリスクや役割に応じた義務が設けられています。

日本企業であっても、EU域内でAIシステムを提供したり利用したりする場合などには適用対象となる可能性があります。海外で事業を展開する企業では、自社のAI利用に関係する国や地域の制度についても確認する必要があります。

さらにEU以外でも、韓国をはじめ各国でAIの安全性や信頼性を確保するための制度・体制整備(韓国:AI基本法等)が進んでいます。

こうした動きを踏まえると、AIガバナンスは一度ルールを作れば完了するものではありません。AI技術やサービス、国内外のルールの変化に応じて、自社の管理体制も継続的に見直していく必要があります。

AIガバナンスで企業が整えるべき体制

AIガバナンスを実際に機能させるためには、AI利用に関する役割と責任を明確にする必要があります。例えば、経営層がAI活用に関する基本方針や許容するリスクを示し、情報システム・セキュリティ部門が利用するAIサービスの安全性や情報管理を確認します。法務・コンプライアンス部門は、個人情報や著作権、契約などの観点から利用条件を確認し、各事業部門は定められたルールに基づいてAIを利用します。

重要なのは、必ずしも「AIガバナンス委員会」のような新しい組織を設置することではありません。企業の規模やAIの利用状況によっては、既存の情報セキュリティ委員会やリスク管理、ITガバナンスなどの体制にAIの管理を組み込む方法も考えられます。一方で、AIに関する判断を情報システム部門だけに任せることも適切とは限りません。AIの利用にはセキュリティだけでなく、法務、知的財産、業務品質、倫理など複数の論点が関係するためです。「誰がAIを管理するのか」だけではなく、「どのような問題を、どの部門が判断するのか」まで整理しておくことが重要です。

AI利用ガイドラインには何を書くべきか

AIガバナンスの方針を従業員の具体的な行動へ落とし込むためには、AI利用ガイドラインを整備することが有効です。ガイドラインには、単に「機密情報を入力しない」と記載するだけではなく、実際の業務で従業員が判断できる内容を盛り込む必要があります。

項目定める内容の例
利用できるAI承認済みサービス、利用条件
利用目的認める業務・禁止する用途
入力情報個人情報、機密情報、顧客情報等の取り扱い
生成物ファクトチェック、著作権、外部公開時の確認
アカウント法人・個人アカウントの使い分け
外部サービスデータ保存、学習利用、ログ、契約条件
問題発生時報告先、対応フロー
見直し定期レビュー、サービス変更時の再評価

特に注意したいのが、利用禁止、とだけ定めて終わらせないことです。

例えば「機密情報を入力してはいけない」と規定していても、従業員が何を機密情報として扱うべきか判断できなければ、実際の業務では迷いが生じます。顧客から届いたメール、会議の議事録、契約書、ソースコード、未公開の製品情報など、具体的な利用場面を想定しながら、入力できる情報とできない情報を示すことが重要です。

また、生成物を業務で利用する際の確認方法も必要です。生成AIの出力には不正確な情報が含まれる可能性があるため、重要な判断や社外へ公開する情報については、人による確認や一次情報との照合を行うなどのルールを定めておくことが考えられます。

利用するAIサービス自体の確認も必要

AI利用ガイドラインを整備しても、利用するAIサービス自体の安全性やデータの取り扱いを確認していなければ、十分なリスク管理とはいえません。生成AIサービスによって、入力したデータの保存場所や保存期間、モデルの学習への利用、ログの管理、適用される法令などは異なります。そのため、AIサービスを導入する際には、少なくとも次のような点を確認することが重要です。

  • 入力したデータがどこに保存されるか
  • 入力データが学習やサービス改善に利用されるか
  • データやログの保存期間
  • 管理者が利用状況を確認できるか
  • セキュリティ対策や監査に関する条件
  • 利用規約やプライバシーポリシーの変更条件
  • どの国・地域の法令が適用されるか

AIサービスによってデータの保存場所や適用される法令などが異なるため、「有名なサービスだから」「便利だから」という理由だけで業務利用を判断するのではなく、企業としてサービスの特性を確認する必要があります。AIサービスの機能だけでなく、「企業の情報をどのように扱うサービスなのか」という観点から評価することが、AIガバナンスでは重要です。

AI利用ガイドラインを「作って終わり」にしないために

AI利用ガイドラインを策定しても、従業員に知られていなかったり、実際の業務とかけ離れたルールになっていたりすれば、十分に機能しません。会社がAI利用を全面的に禁止している一方で、現場では業務効率化のために個人アカウントの生成AIが利用されている、といった状況も考えられます。このようなシャドーAIが広がると、企業は誰がどのAIサービスを利用し、どのような情報を入力しているのか把握しにくくなります。そのため、ガイドラインの策定とあわせて、実際のAI利用状況を把握することが重要です。

また、会社が利用を認めるAIサービスを明確にし、従業員が安全に利用できる環境を提供することも有効です。ガイドライン策定後は、従業員への教育、利用状況の確認、例外的な利用が必要になった場合の申請方法、問題発生時の報告ルートなどを整備します。AIサービスは短期間で機能や利用条件が変化することがあります。また、AIエージェントのように、外部サービスやデータへアクセスし、一定の操作を実行できるAIの利用が広がれば、従来の生成AI利用とは異なるリスクも考慮する必要があります。AIガバナンスでは、ルールを作ること以上に、実際の利用状況を把握しながら継続的に見直すことが重要です。

AIやLLMを組み込んだシステムでは、プロンプトインジェクションをはじめ、生成AIの利用管理とは異なるセキュリティリスクにも注意が必要です。詳しくは、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で紹介しています。

AIガバナンスはどこから始める?

AIガバナンスという言葉から、大規模な管理体制や複雑なルールを想像するかもしれません。しかし、最初からすべてを整備する必要はありません。まずは、自社でAIがどのように利用されているのかを把握することから始めます。

STEP1 自社のAI利用状況を把握する
どの部門が、どのAIサービスを、どのような業務に利用しているのか確認します。会社が正式に導入したAIだけでなく、従業員が個別に利用しているサービスについても把握することが重要です。

STEP2 利用するAIとリスクを整理する
入力する情報、生成物の用途、外部サービスへのデータ送信、AIに与える権限などを確認し、利用方法に応じたリスクを整理します。

STEP3 責任者・管理体制を決める
AI利用に関する方針を誰が決定し、セキュリティ、法務、業務上の問題をそれぞれ誰が判断するのかを明確にします。

STEP4 AI利用ガイドラインを策定する
利用できるAI、入力できる情報、生成物の確認方法、禁止する用途、問題発生時の報告方法などを具体化します。

STEP5 教育・確認・見直しを続ける
従業員へルールを周知するとともに、実際の利用状況を確認します。AIサービスや業務、脅威、法制度などの変化に応じてガイドラインを更新します。

AIガバナンスは完成させるものではなく、AIの利用とともに継続的に改善していく取り組みと考えることが重要です。

AIガバナンスに関するよくある質問

▼ AIガバナンスとAI利用ガイドラインの違いは?
▼ AI利用ガイドラインはどの部署が作るべきですか?
▼ 生成AIの利用を禁止すればAIガバナンスは不要ですか?

まとめ

生成AIをはじめとするAIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを安全かつ適切に利用するためのガバナンスが求められています。AIガバナンスは、AI利用ガイドラインを作成することだけを意味するものではありません。AI利用に関する方針を定め、責任体制を明確にし、リスクを評価しながら、実際の利用状況に応じてルールや対策を継続的に見直していくことが重要です。

また、自社の利用ルールだけでなく、利用するAIサービスのデータの取り扱いや契約条件、セキュリティ、国内外の制度動向について確認することも必要です。まずは自社でどのようなAIが利用されているのかを把握し、利用目的や取り扱う情報、想定されるリスクを整理することが第一歩となります。そのうえで、自社の事業やAIの利用状況に合った体制とガイドラインを整備し、安全なAI活用につなげていくことが求められます。

【参考情報】

公開日:2025年4月9日
更新日:2026年9月16日

編集責任:木下


AIサービスの安全な活用に向けたセキュリティ対策を支援

ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、AIサービスを提供する企業・利用する企業に向けて、「AI事業者ガイドライン」に基づくサイバーセキュリティ対策支援サービスを提供しています。AIサービス提供者・利用者向けのセキュリティガイドライン整備支援や、AI利用に伴うセキュリティリスクを学ぶ情報セキュリティ教育など、お客様の立場や課題に応じた支援をご用意しています。


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RIZAPの生成AIへの顧客情報誤アップロードから考える ―企業が見直すべきシャドーAI対策

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生成AIの業務利用が広がる一方、会社が把握・承認していないAIサービスを従業員が利用する「シャドーAI」は、情報漏洩につながるリスクの一つです。本記事では、RIZAPが公表した事案をもとに、生成AIへ情報を送信する際の注意点と、企業が見直すべきシャドーAI対策について解説します。

※本記事は2026年9月14日時点で公表されている情報に基づき作成しています。

RIZAPの生成AIへの誤送信で何が起きたのか

2026年9月3日、RIZAPは、社員が私用の外部生成AIサービスに顧客情報を誤ってアップロードしたと公表しました。[1]今回の事案は、RIZAPの社員が特定保健指導管理システムのデータを集計する際、顧客情報を外部の生成AIサービスに誤ってアップロードしたものです。対象は、同システムに2026年1月1日から8月19日までに登録された対象者データの一部で、氏名や保険証記号番号のほか、疾患情報などの要配慮個人情報も含まれます。同社の発表では、対象者数および利用された生成AIサービスの名称は公表されていません。またAI事業者以外の第三者による閲覧と学習利用の可能性はないと説明する一方、事業者の役職員等が閲覧可能だったかは確認中としています。外部生成AIへの情報送信では、閲覧の可能性と学習への利用は別の論点です。

図1:RIZAPの公表内容
※「学習されない」という説明だけで、外部送信の適否は判断できません。

出典:RIZAP株式会社「当社における外部生成AIサービスへのお客様情報の誤ったアップロードに関するお詫びとお知らせ」(2026年9月3日)(https://business.rizap.jp/news/2492)を基に作成

「学習されない」だけで生成AIへの入力を判断しない

外部の生成AIサービスにファイルをアップロードすると、まず、そのサービスへ情報を送信することになります。その後にどのように保存・処理され、誰がアクセスでき、学習に利用されるかは、契約や設定、サービスの仕様によって確認する論点です。一つの設定を見ただけで、情報の取り扱い全体を判断することはできません。

個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を含むプロンプトを入力する際、特定した利用目的の達成に必要な範囲かを確認するよう注意喚起しています。また、本人の同意なく入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合には、法に違反する可能性があるとして、機械学習に利用しないこと等の十分な確認を求めています。[2]企業が確認すべきなのは、「学習をオフにしたか」に加えて、「この業務に、この情報を外部へ送る必要があるか」です。たとえば、集計式を知りたいだけなら実在する顧客のデータを渡さず、架空のサンプルで処理方法を相談できる場合があります。また、実データの処理が必要な場合は事前に承認された環境と手順で取り扱う業務プロセスを設計します。

シャドーAIとは? 私用アカウントと業務利用の境界

本記事で述べている「シャドーAI」とは、会社が把握・承認していないAIサービスを、従業員が業務に利用することです。たとえば、会社が承認していない個人アカウントで、会社の資料を要約したり、業務ファイルを分析したりする利用が該当します。同じサービス名でも、会社が契約・管理する環境と、従業員の私用アカウントでは、管理できる範囲や適用される条件が同じとは限りません。そのため、社内ガイドラインに「生成AIの利用可」とだけ記載しても、判断基準としては不足します。対象のサービスと契約プラン、使用するアカウント、許可する業務、入力できる情報を一緒に示す必要があります。「会社で使えるAI」と「自分が普段使っているAI」を現場が取り違えないよう、利用ルールや利用環境を整えることが大切です。

RIZAPでは再発防止策として、社内で許諾されていない生成AIの業務利用禁止の再周知、教育、アクセス権限や利用環境の点検・見直しを挙げています。企業が生成AIの利用を見直す際は利用ルールだけでなく、アクセス制限などの利用環境もあわせて確認する必要があります。

生成AIの情報漏洩を防ぐために企業が見直すべきこと

社内ルールは、現場の作業に沿った形で示すと使いやすくなります。以下は、企業が自社の契約や情報分類に合わせて具体化するための判断例です。

図2:生成AIへファイルを送る前の判断例

参考:個人情報保護委員会【別添1】「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_kouhou_houdou.pdf)等を参考に弊社作成。
※図は企業向けの一般的な判断例であり、法令上の適否を判定するものではありません。また、RIZAP社内の実際の運用を示すものではありません。

ファイル単位ではなく、中に含まれる情報まで確認する

表計算ファイルには、集計対象の列だけでなく、別のシートや自由記述欄に情報が残っている場合があります。そこで、アップロード用のデータを別に作成し、必要な項目だけを含める手順を設けます。氏名を削除しただけで安全と判断せず、番号や属性の組合せなど、個人を識別できる情報が残っていないかも確認します。

禁止事項と、迷ったときの相談先をセットにする

教育では「個人情報を入力しない」という説明に加え、集計表、議事録、顧客から届いた資料など、実際の業務を題材に判断を練習します。許可された使い方と相談窓口も示し、判断できないファイルは送信を止めて確認する運用にします。アクセス制限やデータ送信の制御を導入する場合も、対象のサービスや通信経路でどこまで制御できるかを確認したうえで、ルールを補完する仕組みとして位置付けます。

生成AIへ誤って情報を送信した場合の対応

生成AIへの誤送信に気付いたら、追加の送信を止め、社内の情報セキュリティ・個人情報管理の担当窓口へ速やかに報告します。サービス名、アカウント、送信日時、ファイルの内容、実施した操作を整理し、削除依頼や事業者への照会を進めます。必要な記録の保全と拡散防止は担当者の指揮で行い、記録用に機微な情報を別の外部サービスへコピーしないようにします。 確認したいのは、保存先と保持期間、閲覧の可能性、学習等への利用、削除の対象と完了状況です。画面上の履歴削除と、事業者側にあるデータの削除がどのような関係にあるかも確認します。行政機関への報告や本人への通知については、把握した事実に基づき、個人情報保護委員会の案内に沿って要否を判断します。[3]

生成AIの安全な業務利用に向けたBBSecの支援

生成AIの利用を始めていても、承認手順や教育が追い付いていない企業は、まずルールと実際の使い方の差を整理することが出発点になります。BBSecの「AIサービス提供者・利用者向けサイバーセキュリティ対策支援」では、AI利用者向けのセキュリティガイドライン雛形の提供と、事業に合わせたカスタマイズによる整備支援を用意しています。さらに、AI利用時の脅威・リスク・適切な利用方法・対策を扱う教育コンテンツの提供や、講師によるオンライン研修にも対応しています。既存の社内規程との整合性を見直したい場合は、「情報セキュリティ文書整備支援」により、文書体系の提案や既存文書の統廃合・改訂について支援を受けることもできます。生成AIを安全に業務利用するためには、ルールを定めるだけでなく、従業員が実際の業務で判断できるよう、教育とあわせて運用していくことが重要です。自社のAI利用ルールや教育体制を見直したい場合は、BBSecにご相談ください。

よくある疑問

▼ 個人情報を削除すれば、自由に使えますか?

【参考情報】

編集責任:木下


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生成AIの安全な業務利用や、AI利用ルール・教育体制の整備についてお悩みの方は、ブロードバンドセキュリティ(BBSec)までお気軽にご相談ください。


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生成AIのリスクとは?企業利用で注意すべき情報漏洩・著作権・誤情報と対策

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生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミング支援など、さまざまな業務で利用されるようになりました。業務を効率化できる一方で、機密情報の漏洩や誤情報、著作権など、新たなリスクへの対応も必要です。

さらに、生成AIを利用するのは企業や一般のユーザーだけではありません。攻撃者がフィッシングメールの作成や攻撃に必要な情報収集などに生成AIを悪用することも考えられます。生成AIにはどのようなリスクがあり、企業はどう向き合えばよいのでしょうか。本記事では、企業による利用とサイバー攻撃への悪用という両面から、生成AIのリスクと対策を考えます。

生成AIの利用リスクだけでなく、AI・LLMを取り巻く脅威や企業に求められる対策の全体像については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」で詳しく紹介しています。

生成AIの普及で広がる企業のリスク

生成AIは、一部の技術者や専門家だけが利用するものではなくなりました。メールや資料の作成、文章の要約、翻訳、アイデア出し、プログラムコードの作成・確認など、日常的な業務のさまざまな場面で活用されています。利用できる場面が広がるほど、生成AIが扱う情報も重要になります。

例えば、「文章を考えてもらう」だけであれば、入力するのは簡単な指示だけかもしれません。しかし、実際の業務では、顧客から届いたメールを貼り付けて返信を作成したり、会議録や契約書をアップロードして要約したり、ソースコードを入力して問題点を確認したりすることも考えられます。こうした使い方は便利ですが、生成AIに渡す情報の中に機密情報や個人情報などが含まれていれば、新たな情報管理の問題が生じます。

また、注意が必要なのは入力する情報だけではありません。生成AIが出力した内容が正しいとは限らず、その情報をどのように利用するかについても利用者側の判断が必要です。生成AIが業務に深く入り込むほど、「何を入力するのか」「何が出力されたのか」「その結果を何に使うのか」を考える必要性も高まっているのです。

企業が生成AIを利用する際のリスクは、大きく「入力」と「出力」に分けて考えると整理しやすくなります。

場面主なリスク
AIへの入力機密情報・個人情報の漏洩、著作物・知的財産の取り扱い
AIからの出力誤情報・ハルシネーション、著作権等の問題、AIへの過度な信頼
組織での利用シャドーAI、利用状況を把握できないリスク
外部からの脅威攻撃者による生成AIの悪用

生成AIに何を入力するかだけを管理しても、出力された情報を無条件に信用してしまえば別の問題が生じます。また、社内ルールを整備していても、従業員が管理外の生成AIを利用していれば、企業としてリスクを把握できません。

さらに、自社が生成AIを利用するリスクだけでなく、攻撃者が生成AIを利用することでサイバー攻撃が効率化される可能性についても考えておく必要があります。

生成AIに機密情報を入力するとどうなる?

生成AIの企業利用で特に注意したいのが、機密情報や個人情報の取り扱いです。例えば、次のような使い方は業務効率化のために自然に行われる可能性があります。

  • 顧客から届いたメールを貼り付けて返信文を作成する
  • 会議録をアップロードして要点をまとめる
  • 契約書を読み込ませて内容を要約する
  • ソースコードを入力してエラーの原因を調べる
  • 社内資料を読み込ませて新しい資料を作成する

しかし、そこに顧客情報や個人情報、社外秘情報、未公開情報などが含まれていれば、企業が管理すべき情報を外部の生成AIサービスへ渡すことになります。

「生成AIに入力するとすべて学習される」は正しい?

生成AIへの情報入力について、「入力した情報はすべてAIの学習に使われる」と説明されることがあります。しかし、必ずしも一律にそうなるわけではありません。入力データが保存されるのか、モデルの学習やサービス改善に利用されるのかといった条件は、サービスや契約プラン、設定などによって異なります。そのため、「生成AIだから機密情報を入力してはいけない」という単純な判断だけではなく、自社が利用するサービスで入力データがどのように取り扱われるのかを確認することが重要です。

企業では、利用規約やプライバシーポリシー、データの保存・利用条件などを確認したうえで、業務利用を認めるサービスを選定する必要があります。また、入力してよい情報と禁止する情報を具体的に定め、従業員に周知することも重要です。「機密情報は禁止」とするだけでなく、顧客情報、個人情報、社外秘資料、認証情報など、自社の業務に即した例を示すと判断しやすくなります。

生成AIと著作権で注意すべきこと

生成AIと著作権の問題についても、「AIが作ったものを使ってよいか」という生成物だけに目を向けるのではなく、AIへ何を入力するかという点から考える必要があります。

他人の文章や画像を生成AIに入力してよいのか

生成AIを利用する際、Web上の文章や画像、顧客・取引先から提供された資料などを入力することがあります。しかし、こうした情報には著作権のほか、契約上の秘密保持義務や利用条件などが関係する場合があります。「インターネットで公開されている」「自社が保有している」という理由だけで、どのような使い方でも認められるとは限りません。業務で生成AIへ情報を入力する場合は、その情報をAIサービスへ提供して問題がないかという観点からも確認する必要があります。

AIが作った文章や画像なら自由に使えるのか

生成AIが作成した文章や画像、プログラムコードなどについても、無条件に自由に利用できるとは限りません。生成物が既存の著作物と類似していたり、第三者の権利に関係する内容を含んでいたりする可能性があります。また、利用する生成AIサービスによって生成物に関する利用条件が異なる場合もあります。

特に、Webサイトや広告、製品、顧客向け資料など外部に公開するコンテンツに生成AIを利用する場合には、人による確認を行い、用途に応じて権利関係についても確認することが重要です。生成AIの利便性が高まるほど、「AIが作ったから問題ない」と考えず、最終的にその生成物を利用する側が確認するという意識が必要になります。

生成AIは「もっともらしく間違える」

生成AIのもう一つの特徴が、必ずしも正しい情報を出力するとは限らないことです。生成AIは、事実とは異なる情報を、自然で説得力のある文章として生成する場合があります。このような現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。

例えば、

  • 存在しない事例を紹介する
  • 誤った数値を示す
  • 実在しない書籍や論文、Webページを出典として挙げる
  • 古い情報を現在の情報として回答する
  • 質問の前提を誤って解釈したまま回答する

といったことが考えられます。

問題は「間違いが間違いらしく見えない」こと

生成AIの誤情報で注意したいのは、単にAIが間違えることだけではありません。回答が自然な文章で生成されるため、利用者が誤りに気づかず、「AIが回答したのだから正しいだろう」と信用してしまう可能性があります。例えば、存在しない制度や統計を社内資料に記載したり、誤った内容を顧客への回答に使用したりすれば、企業の信用にも影響しかねません。

そのため、生成AIを検索エンジンや一次情報そのもののように扱うことは避ける必要があります。重要な情報については、公的機関や企業の公式情報、原典などを確認します。また、顧客への回答や外部公開資料、法務・財務・セキュリティなど重要な判断に利用する場合には、人によるレビューを組み込むことが必要です。

生成AIは判断を代替するものではなく、情報整理や作業を支援するツールとして使うことが基本となります。

生成AIはサイバー攻撃にも使われる

ここまでは企業が生成AIを「使う側」のリスクを見てきました。しかし、生成AIを利用できるのは企業や一般ユーザーだけではありません。攻撃者にとっても、生成AIは情報収集や文章作成、プログラミングなどを支援するツールになり得ます。

フィッシングメール作成のハードルを下げる

フィッシング攻撃では、受信者をだまして偽サイトへ誘導したり、マルウェアを実行させたりするためのメールやメッセージが利用されます。

生成AIを使えば、自然な文章の作成や翻訳、文章の修正などを短時間で行うことができます。攻撃対象の業種や立場に合わせた文章を作成する作業にも利用できるため、攻撃者によるコンテンツ作成の負担を減らす可能性があります。

従来、不自然な日本語や文法上の誤りは不審なメールを見分ける手掛かりの一つでした。しかし、生成AIによって自然な文章を容易に作成できるようになれば、文章の不自然さだけでフィッシングを見抜くことはさらに難しくなります。

マルウェアや攻撃コードの作成にも悪用されるのか

主要な生成AIサービスでは、有害なコンテンツやサイバー攻撃への悪用を防ぐための安全対策が講じられています。それでも、生成AIがプログラムコードの作成や修正、技術情報の整理などに利用できる以上、攻撃者が攻撃準備や作業の一部を効率化するために利用する可能性はあります。ここで重要なのは、「生成AIが登場したことで、これまで存在しなかったサイバー攻撃が突然生まれた」と捉えることではありません。

生成AIでサイバー攻撃はどう変わるのか

生成AIがサイバー攻撃に与える大きな影響の一つは、既存の攻撃を「速く」「大量に」「巧妙に」実行するための支援に使われる可能性があることです。

例えば、攻撃対象に関する情報収集、フィッシングメールの文章作成、翻訳、プログラムコードの作成支援など、従来は攻撃者自身が時間をかけて行っていた作業の一部を効率化できます。これは防御する企業側にとっても重要な変化です。これまでと同じ種類の攻撃であっても、攻撃者が試行できる量や速度が増えれば、企業が直面する脅威も変化します。

生成AI時代のセキュリティを考える際には、「AIそのものからどう情報を守るか」だけでなく、AIを利用して効率化される既存のサイバー攻撃にどう備えるかという視点も必要です。

生成AI時代でも基本的なセキュリティ対策は重要

生成AIによってサイバー攻撃が効率化・巧妙化する可能性があるからといって、企業に求められるセキュリティ対策がすべて新しいものに変わるわけではありません。フィッシングやマルウェア、不正アクセスなど、生成AIが悪用される可能性のある攻撃の多くは、以前から存在する攻撃手法です。そのため、生成AI時代においても、基本的なセキュリティ対策を継続することが重要です。

基本的なセキュリティ対策の例

基本的な対策こそが重要の画像

特にフィッシングについては、生成AIによって自然な文章を作成しやすくなることで、「日本語が不自然だから怪しい」といった従来の見分け方だけでは判断が難しくなる可能性があります。送信元やURL、要求されている操作などを確認し、文章の自然さだけでメールの安全性を判断しないことが大切です。

生成AIによる脅威を特別なものとして切り離して考えるのではなく、従来のセキュリティ対策を着実に行ったうえで、生成AIの利用や悪用によって生じる新たなリスクへの対策を加えていくことが基本となります。

「生成AIは危険だから禁止」でよいのか

ここまで生成AIのさまざまなリスクを見てきました。それでは、企業は生成AIの利用を禁止すれば安全なのでしょうか。生成AIを利用しなければ回避できるリスクがあるのは確かです。しかし、利用禁止だけで問題が解決するとは限りません。

禁止だけでは「シャドーAI」につながる可能性も

組織が許可・把握していない生成AIサービスを従業員が業務に利用することは、「シャドーAI」と呼ばれます。例えば、会社では生成AIの利用を認めていなくても、従業員が個人アカウントで生成AIへアクセスし、業務資料を要約しているかもしれません。

この場合、企業側では、

  • 誰がどの生成AIを利用しているのか
  • どのような情報を入力したのか
  • 入力データがどのように扱われているのか
  • 生成された情報を何に利用したのか

を把握することが難しくなります。生成AIを禁止するか許可するかという二者択一ではなく、業務上の利用ニーズとリスクの両方を踏まえて管理することが重要です。

リスクを理解したうえで利用する

生成AIを安全に利用するためには、「生成AIは危険か、安全か」という単純な判断ではなく、利用方法を具体的に考える必要があります。

例えば、

  • どの生成AIサービスを利用するのか
  • どのような業務に利用するのか
  • 何を入力してよいのか
  • AIの出力を誰が確認するのか
  • 問題が起きた場合にどこへ報告するのか

といった点を明確にすることで、リスクを管理しながら生成AIを活用しやすくなります。

生成AIを安全に利用するために企業が行うべき5つの対策

生成AIのリスクは、特定のセキュリティ製品だけで解決できるものではありません。利用環境、ルール、教育などを組み合わせ、組織として取り組む必要があります。

  1. 利用する生成AIサービスを決める
    業務で利用を認める生成AIサービスを明確にします。サービスの機能だけでなく、入力データの保存・利用条件、アクセス管理、管理者向け機能なども確認して選定します。
  2. 入力してよい情報・禁止する情報を決める
    生成AIへ入力できる情報の範囲を明確にします。個人情報、顧客情報、社外秘資料、ソースコード、認証情報など、自社で実際に扱う情報を例示すると、従業員が判断しやすくなります。
  3. AIの出力を確認する
    生成AIから得た回答や生成物をそのまま利用せず、用途に応じて確認します。特に外部公開する情報、顧客への回答、重要な意思決定に利用する場合には、事実関係や権利関係などを人が確認するプロセスを設けます。
  4. AI利用ガイドラインを整備する
    利用可能なサービスや用途、入力禁止情報、生成物の確認方法、問題が発生した場合の報告先などをルールとして整理します。
  5. 利用状況を把握し、継続的に見直す
    生成AIのサービスや機能は変化し続けています。新しいサービスが利用されていないか、現在のルールが実態に合っているかを定期的に確認します。新たなリスクや利用方法が確認された場合には、ガイドラインや利用環境、従業員教育も見直していくことが重要です。

AI利用ガイドラインや組織としての管理体制については、「AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方」で詳しく紹介します。

生成AIのリスクに関するよくある質問

▼ ChatGPTなどに会社の情報を入力すると情報漏洩になりますか?
▼ 生成AIで作った文章や画像は自由に利用できますか?
▼ 会社で生成AIの利用を禁止すれば安全ですか?
▼ 生成AIによってサイバー攻撃は増えるのでしょうか?

まとめ

生成AIは、業務を効率化する便利なツールである一方、機密情報の漏洩、著作権・知的財産、誤情報など、利用方法に応じたリスクがあります。また、攻撃者が生成AIを利用し、フィッシングなど既存のサイバー攻撃を効率化する可能性にも注意が必要です。

重要なのは、生成AIを過度に恐れることではなく、どのような場面で、どのようなリスクが生じるのかを理解したうえで利用することです。企業では生成AIの利用を個々の従業員の判断だけに任せず、利用するサービス、入力できる情報、生成物の確認方法などを明確にする必要があります。さらに、利用状況を把握し、AIサービスや脅威の変化に応じてルールや対策を継続的に見直していくことが、安全な生成AI活用につながります。

LLMを利用したシステムでは、プロンプトインジェクションなど、LLMの特性を悪用したセキュリティリスクにも注意が必要です。LLMアプリケーションで注意すべき脅威と技術的な対策については、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で詳しく解説しています。

公開日:2023年6月28日
更新日:2026年9月2日

編集責任:木下


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AIの利用拡大に伴い、企業を取り巻くIT環境やセキュリティリスクも変化しています。公開IT資産の把握、脆弱性の確認、セキュリティ対策の有効性検証など、自社の課題に応じた対策をご相談ください。


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AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策

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AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対アイキャッチ画像策

生成AIの業務利用が広がる一方、情報漏洩や誤情報、著作権、AIシステムを狙った攻撃など、新たなリスクも生じています。本記事では、企業がAIを安全に活用するために押さえておきたい、AIセキュリティの主なリスクと対策を紹介します。

AIセキュリティとは

AIセキュリティとは、AIの利用やAIを組み込んだシステムに伴うセキュリティ上のリスクを把握し、情報やシステム、業務を守るための取り組みです。企業におけるAI活用を考える際には、大きく二つの観点があります。

一つは、AIを利用することで生じるリスクです。従業員が生成AIに機密情報や個人情報を入力することによる情報漏洩、生成された誤情報の利用、著作権や知的財産に関する問題、企業が把握していないAIサービスを業務に利用する「シャドーAI」などが挙げられます。

もう一つは、AIシステムそのものに対するセキュリティリスクです。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムでは、悪意のある指示によって意図しない動作を引き起こすプロンプトインジェクションをはじめ、機密情報の漏洩や不適切な権限の利用など、AI特有のリスクを考慮する必要があります。

生成AIやAIエージェントの普及により、AIは単に質問に回答するツールから、社内データを参照したり、外部のシステムやサービスと連携して処理を行ったりする存在へと用途を広げています。そのためAIセキュリティでは、従業員の利用ルールだけでなく、AIに接続するデータやシステム、付与する権限まで含めてリスクを捉えることが重要になります。

AIセキュリティが注目される背景

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミングなど幅広い業務で活用されています。また、既存の業務システムやWebサービスに生成AIを組み込むケースも増え、企業とAIとの接点は広がっています。

こうした活用の拡大に伴い、セキュリティ上の課題も顕在化しています。従業員が組織の許可を得ずに生成AIを利用するシャドーAIによる情報漏洩や、不正確な出力による業務への影響などは、その代表例です。

さらに、AIシステム自体が攻撃対象になることも考慮しなければなりません。従来のWebアプリケーションやクラウドサービスへのセキュリティ対策に加えて、AI・LLMの特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

AIをめぐっては、国内外で安全性や透明性、適正な利用に関するルールやガイドラインの整備も進められています。企業には、技術的なセキュリティ対策だけでなく、こうした動向を踏まえてAIの利用方針や管理体制を継続的に見直すことも求められます。

従来のセキュリティ対策との違い

AIを利用する場合でも、アクセス制御や認証、脆弱性管理、ログ監視といった従来のセキュリティ対策が不要になるわけではありません。これらは引き続き重要な基盤となります。そのうえでAIセキュリティでは、AIへの入力、AIからの出力、AIが参照するデータ、AIに与える権限といった新たな要素についても対策を考える必要があります。

例えば、システムへのアクセス権限が適切に管理されていても、従業員が外部の生成AIサービスへ機密情報を入力すれば、別の経路から情報が外部へ渡る可能性があります。また、AIを組み込んだシステムでは、通常の操作では想定していなかった指示によってAIの動作が誘導される可能性もあります。

したがって、AIセキュリティでは従来のサイバーセキュリティを土台としながら、「AIをどのように利用するか」と「AIを組み込んだシステムをどのように守るか」の両面から対策を考えることがポイントとなります。

企業が注意すべき生成AIの主なリスク

生成AIは業務効率化や情報収集などに役立つ一方、使い方によっては情報漏洩や誤った判断につながる可能性があります。企業で利用する際には、どのような情報を入力するのか、生成された内容をどのように扱うのかといった観点からリスクを把握する必要があります。

機密情報・個人情報の漏洩

生成AIに顧客情報や社内の機密情報、個人情報などを入力すると、利用するサービスの仕様や設定によっては、入力した情報がサービス提供者側で保存・利用される可能性があります。業務で生成AIを利用する場合は、入力してよい情報と禁止する情報を明確にするとともに、利用するサービスのデータ取り扱い方針や設定を確認することが必要です。

誤情報・ハルシネーション

生成AIは、事実と異なる内容や、もっともらしい誤情報を生成することがあります。こうした現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。

生成された文章や回答を十分に確認せず、社内資料や顧客への回答、意思決定などに利用すると、誤った情報が業務に影響を及ぼすおそれがあります。重要な情報については、信頼できる情報源と照合するなど、人による確認が欠かせません。

著作権・知的財産に関するリスク

生成AIでは、入力する情報と生成されたコンテンツの双方について、著作権や知的財産への配慮が必要です。第三者が権利を持つ文章や画像などを安易に入力したり、AIが生成したコンテンツを確認せずに公開・商用利用したりすると、権利上の問題につながる可能性があります。利用する生成AIサービスの規約を確認するとともに、生成物の利用方法に応じた確認体制を整えることが求められます。

シャドーAI

シャドーAIとは、組織が把握・管理していない生成AIサービスを従業員が業務で利用している状態を指します。企業が生成AIの利用を一律に禁止していても、従業員が個人アカウントなどを使って利用すれば、機密情報が管理外のサービスへ入力される可能性があります。そのため、単に利用を禁止するだけでなく、利用可能なAIサービスや用途を明確にし、組織として利用状況を把握できる環境を整えることが重要です。

生成AIの利用に伴うリスクや企業が取るべき対策については、「生成AIのリスクとは?企業利用で注意すべき情報漏洩・著作権・誤情報と対策」で詳しく紹介します。

AIを狙ったサイバー攻撃にも注意が必要

AIセキュリティで考えるべきなのは、従業員が生成AIを安全に利用するための対策だけではありません。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムが普及することで、AIの仕組みや特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションは、攻撃者が悪意のある指示をAIに与えることで、本来想定されていない動作や出力を引き起こそうとする攻撃です。ユーザーが直接入力する指示だけでなく、AIが読み込むWebページや文書などに悪意のある指示を埋め込む「間接プロンプトインジェクション」にも注意が必要です。外部の情報を参照するAIや、他のシステムと連携して処理を行うAIでは、影響範囲が広がる可能性があります。

センシティブ情報の漏洩

AIを組み込んだシステムでは、モデルが参照できる情報やユーザーの入力内容などが、意図せず出力される可能性があります。特に、社内文書や顧客情報などをAIから参照できるようにしている場合には、利用者の権限に応じて参照可能な情報を制御するなど、AIだけに依存しないアクセス制御が必要です。

データやモデルへの不正な操作

AIの動作は、学習データや外部から取得する情報などの影響を受けます。攻撃者によってデータが意図的に操作されれば、AIの判断や出力が影響を受ける可能性があります。AIが参照するデータの信頼性を確認するとともに、データへのアクセスや変更を適切に管理することが求められます。

AIに与える権限にも注意

AIエージェントなど、AIが外部サービスや社内システムと連携して処理を実行する仕組みでは、AIにどこまでの権限を与えるかが重要になります。必要以上の権限を付与すると、AIが意図しない操作を行った場合や攻撃者に悪用された場合の影響が大きくなります。人のアカウントと同様に、AIについても必要最小限の権限を設定し、重要な処理には人による確認を組み合わせることが重要です。

OWASPが示すLLMアプリケーションのリスク

LLMを利用したアプリケーションには、従来のWebアプリケーションと共通するリスクに加え、プロンプトインジェクションをはじめとしたLLM特有のリスクがあります。

OWASPでは、LLMや生成AIアプリケーションで特に注意すべきセキュリティリスクを整理しています。AIを組み込んだサービスを開発・提供する企業では、こうしたリスクを踏まえて、設計・開発・運用の各段階で対策を検討する必要があります。

具体的な脅威と対策については、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で詳しく紹介します。

AIセキュリティ対策は「利用」と「システム」の両面から考える

ここまで見てきたように、AIセキュリティには、従業員による生成AIの利用に伴うリスクと、AIを組み込んだシステムそのものに対するリスクがあります。そのため企業では、利用ルールの整備だけでなく、ガバナンスや技術的なセキュリティ対策を組み合わせて取り組むことが必要です。

AI利用ルールを整備する

まず、従業員がどのような条件でAIを利用できるのかを明確にします。利用可能なAIサービスや用途、入力してはいけない情報、生成物を利用する際の確認方法などを定め、従業員が判断に迷わないルールにすることが重要です。また、AIサービスや利用方法は変化するため、一度ルールを作成して終わりにせず、利用状況に応じて見直していく必要があります。

AIガバナンスの体制を整備する

AIの利用を個々の従業員や部門だけに任せるのではなく、組織として管理する仕組みも必要です。誰がAI利用を管理するのか、どのようにリスクを評価するのか、問題が発生した場合にどの部門が対応するのかなど、役割と責任を明確にします。

AI利用ガイドラインの策定方法や組織としての管理体制については、「AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方」で詳しく紹介します。

シャドーAIを把握・管理する

ルールを整備しても、組織が把握していないAIサービスが利用されていれば、リスクを十分に管理できません。どの部門でどのようなAIが利用されているかを把握し、必要に応じて利用サービスを承認制にするなど、実際の利用状況とルールを一致させる取り組みが必要です。

AIを組み込んだシステムのセキュリティを確認する

AIを利用したシステムを開発・導入する場合には、通常のアプリケーションと同様のセキュリティ対策に加えて、AI・LLM固有のリスクも確認します。入力・出力の検証、アクセス制御、権限管理、APIや外部サービスとの連携、ログの記録などを確認し、プロンプトインジェクションをはじめとする攻撃への対策も検討します。

継続的なセキュリティ対策の見直し

AIを取り巻くサービスや技術、攻撃手法は変化しています。現在安全と判断した利用方法や設定であっても、将来も同じとは限りません。AIの利用状況や新たな脅威を定期的に確認し、ガイドラインやシステム設定、セキュリティ対策を継続的に見直していくことが重要です。

企業はAIセキュリティ対策をどこから始めるべきか

AIセキュリティといっても、すべての対策を一度に導入する必要はありません。まずは自社でAIがどのように使われているかを把握し、リスクの高い領域から優先して対策を進めます。

STEP1 AIの利用状況を把握する
利用しているAIサービス、利用部門、用途、取り扱う情報などを整理します。
STEP2 扱う情報とリスクを整理する
機密情報や個人情報など、AIで扱う情報と想定されるリスクを確認します。
STEP3 AI利用ガイドラインを整備する
利用可能なサービスや用途、禁止事項、生成物の確認方法などを定めます。
STEP4 技術的なセキュリティ対策を実施する
AIを組み込んだシステムについて、アクセス制御や権限管理、入出力の検証、脆弱性への対策などを行います。
STEP5 継続的に評価・改善する
利用状況や新たなリスクを確認し、ルールと技術対策を定期的に見直します。

AIの利用を一律に禁止するのではなく、どこにリスクがあるのかを把握したうえで、業務上のメリットと安全性のバランスを取りながら活用していくことが重要です。

AIセキュリティに関するよくある質問

▼ AIセキュリティとは何ですか?
▼ 生成AIを業務で利用する場合、どのようなリスクがありますか?
▼ AI利用ガイドラインには何を定めればよいですか?
▼ LLMにはどのようなセキュリティリスクがありますか?

まとめ

生成AIの普及によって、企業がAIを業務やシステムに取り入れる機会は広がっています。それに伴い、情報漏洩や誤情報、著作権などの利用上のリスクだけでなく、プロンプトインジェクションをはじめとするAI・LLMを狙った攻撃についても考える必要があります。AIセキュリティでは、AIを安全に利用することとAIを組み込んだシステムを安全にすることの両面から対策を進めることがポイントです。まずは自社でどのようにAIが利用されているかを把握し、AI利用ガイドラインや管理体制を整備するとともに、AIを組み込んだシステムについてはアクセス制御や権限管理、入出力の検証など、技術的な対策も進めていきましょう。

AIを取り巻く技術や脅威は変化しています。利用を一律に制限するのではなく、リスクを継続的に把握・評価しながら、安全なAI活用につなげていくことが重要です。


参考情報

公開日:2025年4月16日
更新日:2026年8月26日

編集責任:木下


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AIの利用拡大に伴い、企業を取り巻くIT環境やセキュリティリスクも変化しています。公開IT資産の把握、脆弱性の確認、セキュリティ対策の有効性検証など、自社の課題に応じた対策をご相談ください。


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IPA情報セキュリティ10大脅威2026にみる、AI時代のサイバーリスク

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「IPA情報セキュリティ10大脅威 2026に見る、AI時代のサイバーリスク」アイキャッチ画像

近年、生成AIをはじめとするAI技術の進展により、組織におけるAIの活用は急速に広がっています。本記事では、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」の内容をもとに、AIの利用をめぐるサイバーリスクについて整理するとともに、企業に求められる対応の方向性について解説します。

IPA「情報セキュリティ10大脅威」速報版の記事はこちら。「AIの利用をめぐるサイバーリスク」以外の脅威の項目についても知りたい方は、こちらもぜひあわせてご覧ください。
「【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2026 -脅威と対策を解説-」

はじめに

業務効率の向上や新たな価値創出の手段として、多くの企業がAIの導入を進めています。一方でAI利用に伴うリスクについても、十分な注意が求められています。こうした状況を反映して、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」という脅威が初めてランクインし、3位に位置付けられました。

なぜいま「AIの利用」が脅威として注目されるのか

IPA「情報セキュリティ10大脅威」は、前年に発生した社会的影響の大きい事案等をもとに選定されたものであり、順位は単純に危険度の高さを示すものではありません。しかし、AI利用に関するリスクが新たに選出されたことは、企業や組織におけるAI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえるでしょう。

2026年3月12日に公開された、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書では、AIは有用なツールである一方で、十分な理解がないまま利用した場合、情報漏洩や権利侵害といった問題につながる可能性があると指摘されています。特に、生成AIへの入力内容が外部に取り扱われることによる機密情報の漏洩や、生成された情報の正確性を確認せずに業務に利用することによって発生するトラブルなど、従来の情報システム利用とは異なる観点でのリスクが挙げられています。 また、AIは利用者の裾野が広く、専門的な知識がなくても活用できるという特性を持っています。そのため、組織として利用状況を把握しきれないまま、個人単位で業務利用が進むケースも想定されます。このような利用形態は、管理の行き届かないリスク、いわゆるシャドーITに類似した問題を引き起こす可能性があります。

AI利用をめぐる主なリスク

IPAはAIの利用拡大に伴い、いくつかの代表的なリスクが指摘しています。これらは、AIの技術そのものというよりも、その利用方法や特性に起因するものが多い点が特徴です。

  • 情報漏洩リスク
  • 誤情報生成リスク(ハルシネーション)
  • サイバー攻撃の高度化リスク
  • 利用実態の把握困難(シャドーAI)
  • 権利侵害リスク

生成AIへの入力内容に起因する情報漏洩

クラウドサービスとして提供されるAIに対し、機密情報を入力することで、意図せず外部に情報が送信される可能性があるというリスクです。

AIの出力結果に関するリスク

対話型AIは実在しない情報を生成する(=ハルシネーション)場合があり、このことを十分に理解せずに利用すると、誤った判断や誤情報発信につながるおそれがあります。

AIの悪用によるサイバー攻撃の高度化

AIを活用することで、攻撃の効率化や手口の巧妙化が進む可能性があります。さらに、組織における利用実態の把握が難しい点も重要なリスクです。

シャドーAIのリスク

個人単位でAIサービスを利用されてしまうことで、組織の目の届かない範囲での利用が発生する可能性があります。

著作権侵害などの権利問題

AIの利用に関する理解不足により、著作権侵害などの権利問題が生じる可能性も指摘されています。

AI利用において想定される主な事例

AI利用に伴うリスクは、特別な環境でのみ発生するものではなく、日常業務の中で自然に発生し得るものです。例えば業務の効率化を目的として、従業員が個人で利用している生成AIサービスを業務に活用するケースが考えられます。メール文面の作成や資料作成の補助としてAIを利用する延長で、社内資料の内容や顧客情報をそのまま入力してしまうことがありえます。生成AIはクラウド上で動作しており、入力した内容はサービス側で処理されます。場合によっては、入力内容がサービスの改善や学習に利用されることもありえます。この点を十分に理解しないまま利用すると、機密情報を外部サービスに送信してしまうことになり、情報漏洩につながるおそれがあるのです。

また、対話型AIの回答をそのまま精査せずに業務に利用してしまうことで問題に発展する可能性もあります。調査や資料作成の過程でAIが生成した情報を十分に確認せずに利用した結果、ハルシネーションの内容を含んだまま社内外に共有してしまうといった事態が起こり得ます。このように、AI利用に伴うリスクは特定の専門領域に限らず、日常業務の延長線上で発生する点に特徴があります。

組織における課題

AIの利用が広がる一方で、組織としてこれらのリスクを適切に管理することにはいくつかの課題があります。

社内でのAI利用の促進とルールの策定のバランス

まず、AI利用に関するルールやガイドラインの整備が追いついていない点が挙げられます。現場での利用が先行する中で、組織としての利用方針が明確でない場合、統一的な管理が難しくなります。また、利用状況の把握が困難であることも大きな課題です。クラウド型のAIサービスは個人単位で容易に利用可能なため、組織として誰がどのように利用しているかを正確に把握することが難しくなります。実際には、想定以上に広範囲で利用が進んでいるケースも少なくありません。さらに、ポリシーを整備しても現場に浸透しないという課題もあります。AIは業務効率の向上に直結するため、利便性を優先してルールが守られないケースや、現場ごとに独自の運用が行われるといった状況も発生し得ます。加えて、AI利用と既存のセキュリティ対策との間にギャップが生じる点も課題です。従来のセキュリティ対策は想定していなかった利用形態が増えることで、管理や統制が追いつかない場面が生じる可能性があります。さらに、利用者への教育不足も課題の一つです。AIの特性やリスクに関する教育や周知が十分でないために、組織として意図しない利用が広がり、統制が効かなくなるおそれがあります。

このように、AIの活用においては、ルール整備や利用状況の把握といった基本的な対応に加え、実際の運用における課題も踏まえた継続的な対応が求められます。

企業が取るべきアクション

AIの利用に伴うリスクに対応するためには、個別の技術対策にとどまらず、組織としての管理と運用の整備が重要となります。AI利用に関しては、ルール整備や教育、基本的なセキュリティ対策の徹底といった観点での対応が求められています。

  1. AIの利用に関するルールやガイドラインの整備
    どのような用途でAIを利用してよいのか、入力してよい情報の範囲、利用してはならない行為などを明確に定めることで、利用に伴うリスクを一定程度抑制することが可能となります。
  2. 利用状況の把握と管理
    AIサービスは個人単位でも容易に利用できるため、組織としてどのように利用されているかを把握し、必要に応じて管理の対象とすることが重要です。これにより、管理の行き届かない利用、いわゆるシャドーAIの発生を抑制することが期待されます。
  3. AI利用者への教育
    AIの特性やリスクについて正しく理解させることで、生成結果の確認や適切な情報の取り扱いといった基本的な行動を促すことができます。技術的な制御だけでなく、利用者の理解を前提とした運用が不可欠です。
  4. 基本的なセキュリティ対策の徹底・見直し
    認証の適切な運用や情報管理の強化といった既存の対策は、AI利用においても引き続き基盤となるものです。その上で、AIの利用が業務に広く組み込まれる中では、従来の対策だけでは対応しきれない場面も想定されるため、AI利用を前提としたセキュリティの見直しや再設計が必要となる可能性もあります。

このように、AIの安全な活用には、ルール、管理、教育、AIを前提とした基本的なセキュリティ対策といった複数の観点からの継続的な取り組みが重要です。

AI時代に求められるセキュリティ支援

こうした課題に対応するためには、組織単独での取り組みだけでなく、専門的な支援の活用も有効です。以下のようなセキュリティ支援の例が挙げられます。

  • セキュリティ診断・リスクアセスメント
    AI利用に伴うリスクを把握するためのセキュリティ診断やリスクアセスメントが重要となります。現状の利用状況や潜在的なリスクを可視化することで、適切な対策の検討につなげることができます。
  • 運用監視体制の強化
    AIの利用状況を継続的に監視し、問題の早期発見や対応を行う体制を整備することで、リスクの低減が期待されます。
  • AI利用ガイドライン策定支援
    組織の実態に即したルールを整備し、現場で実際に運用可能な形に落とし込むことが求められます。

さいごに

「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が新たにランクインしたことは、AI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえます。AIに関するリスクは、新たな技術そのものに起因するというよりも、その利用方法や理解不足に起因する側面が大きい点が特徴です。そのため、対策としては、ルール整備や利用状況の把握、教育といった組織的な対応に加え、基本的なセキュリティ対策を継続して実施することが重要となります。

また、IPAが示す通り、10大脅威の順位は危険度の高さを示すものではなく、自組織の状況に応じて適切にリスクを評価し、優先順位を定めて対策を講じることが求められます。 AIの活用は今後さらに進むことが想定されますが、その利便性を最大限に活かすためにも、リスクを正しく理解し、組織として適切に管理・運用していくことが重要です。


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本記事では、生成AIの利用に伴うサイバーリスクと、企業への影響について整理しました。AIの活用が進む一方で、情報漏えいや誤利用、統制の難しさといった課題が現実のものとなっています。では、こうしたリスクは実際にどのように悪用され、どのような攻撃として現れているのでしょうか。2026年4月15日に開催のウェビナーでは、生成AIを悪用した具体的な事例をもとに、サイバー脅威の実態と防御戦略を詳しく解説します。リスクの「背景」だけでなく、「実際に何が起きるのか」を理解したい方は、ぜひご参加ください。

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