セキュリティ運用は何から始めるべきか 担当者が最初に整理すべきポイント

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セキュリティ運用を始める際に最初に必要なのはツール導入ではなく、「何を守るか」と「どの順序で対応するか」を整理することです。セキュリティは単発の施策ではなく、継続的に判断と改善を繰り返す活動であるため、最初の設計を誤ると後から修正が難しくなります。本記事では、実務担当者が最初に整理すべきポイントを現場目線で解説します。

セキュリティ運用の全体像や考え方については、以下の記事で整理しています。
セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

「セキュリティ運用を始めたいが、何から手を付ければよいのか分からない」。これは多くの企業担当者が最初に直面する課題です。検索でも「セキュリティ運用 何から始める」「セキュリティ運用 方法」「セキュリティ運用 チェックリスト」といったキーワードが増えており、導入段階から運用段階へ関心が移っていることがうかがえます。セキュリティ対策そのものについての情報は多く存在しますが、実際の運用をどの順序で立ち上げるべきかについては、体系的に語られることが少ないのが現状です。

「何を守っているか分からない」状態が最大の問題

セキュリティ運用を始める際、多くの組織がいきなりツール導入やチェックリスト作成に進みます。しかし提供された文脈に基づくと、最初に取り組むべき課題は技術ではありません。「自分たちは何を守っているのか」を把握することです。企業には業務システム、クラウドサービス、端末、アカウント、外部委託先など、さまざまな資産が存在します。ところが実際には、全体像が整理されないまま個別対策が積み重なっているケースが少なくありません。この状態では、どのリスクが重要なのか判断できず、対応が場当たり的になります。資産やシステムの棚卸しは単なる一覧作成ではなく、「事業にとって停止すると困るものは何か」という視点で整理する作業です。優先順位が存在しない運用では、軽微な問題に時間を使い、本来対応すべきリスクを見逃す可能性があります。

守るべき対象や優先順位を整理する際には、サイバー攻撃リスク評価の考え方が役立ちます。 「サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

セキュリティ運用の最小単位を作る

セキュリティ運用という言葉から大規模な仕組みを想像すると、着手のハードルが高くなります。しかし実務では、まず「最小単位」を作ることが重要です。運用は、情報を集め、それを判断し、必要な対応を行い、その結果を記録するという循環によって成立します。この四つの流れが成立していれば、規模が小さくても運用は始まっています。情報収集とは脆弱性情報や注意喚起の把握を指します。判断とは自社への影響を考える行為であり、対応は設定変更やパッチ適用など具体的な行動です。そして記録は、後から判断理由を再確認できる状態を作ります。多くの組織では対応だけが行われ、判断理由や経緯が残されません。その結果、同じ問題が繰り返されます。最小単位とは作業量を減らすことではなく、循環を成立させることを意味します。

日常業務に組み込める運用とは

セキュリティ運用が続かない理由の一つは、「特別な仕事」として設計されてしまう点にあります。通常業務とは別に毎日実施する作業を増やすと、忙しい時期に必ず停止します。 現実的な運用は、毎日行うものではなく、一定の周期や条件に応じて動く仕組みとして設計されます。たとえば月次で確認する作業、更新時のみ実施する確認、アラート発生時に対応する流れなど、業務のリズムに合わせることが重要になります。提供された構成意図に基づくと、セキュリティ運用とは負担を増やすことではなく、既存業務の中に判断ポイントを組み込むことだと理解できます。運用が日常に溶け込んだとき、初めて継続性が生まれます。

よくある失敗例

セキュリティ運用を開始した組織が直面しやすいのが、形骸化です。チェックリストを作成しても実際には確認されず、記録だけが残る状態は珍しくありません。チェックそのものが目的化すると、リスク低減という本来の目的が見えなくなります。また、ツール導入によって運用が自動化されたと誤解されるケースもあります。ツールは検知や可視化を支援しますが、最終的な判断は組織側に残ります。判断基準がなければ、アラートは増えるだけで改善につながりません。さらに問題となるのが属人化の放置です。「詳しい人がいるから大丈夫」という状態は短期的には効率的ですが、長期的には運用停止リスクを高めます。

実際に、運用が形骸化した結果、ランサムウェアや委託先経由の被害につながるケースもあります。
サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

小さく始めて回し続けるコツ

セキュリティ運用を成功させる組織に共通しているのは、最初から完成形を目指さない点です。理想的な運用設計を追求すると準備期間が長期化し、実運用が始まらないことがあります。むしろ重要なのは、小さく始めて継続することです。判断軸を共有し、「どのように考えて対応したのか」を残すだけでも、組織の知識は蓄積されていきます。運用は改善を前提とした活動です。最初から完璧である必要はなく、回しながら修正することで現実に適合していきます。提供された文脈に基づくと、セキュリティ成熟度は導入規模ではなく継続期間によって高まる傾向があると整理できます。

体制の話は次のステップ

ここまでの内容は、担当者レベルで始められるセキュリティ運用の基礎です。しかし運用を継続し、属人化を防ぐためには、やがて役割分担や体制設計が必要になります。誰が判断し、誰が実行し、どこに記録が集約されるのかが明確になることで、運用は個人依存から組織運用へと移行します。ただし体制設計は最初の段階で無理に行う必要はありません。まずは回る運用を作ることが先になります。

運用を属人化させず、継続的に回すための体制づくりについては、次の記事で詳しく解説します。
「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

セキュリティ運用は「始め方」で成否が決まる

セキュリティ運用は高度な技術から始まるものではありません。何を守るのかを理解し、小さな循環を作り、それを日常業務の中で継続することから始まります。チェックリストやツールは重要な要素ですが、それだけでは運用は成立しません。判断・対応・記録という流れが回り始めたとき、セキュリティは単発対応から継続的な活動へ変わります。「セキュリティ運用は何から始めるべきか」という問いへの答えは一つではありませんが、提供された構成意図に基づくと、最初に必要なのは完璧な設計ではなく、回り続ける最小単位を作ることだと言えるでしょう。

本記事は、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理したものです。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。


運用を属人化させず、継続的に回すためには体制づくりが欠かせません。次の記事で詳しく解説します。
「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

BBSecでは

委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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編集責任:木下

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サイバー攻撃リスク評価を投資判断に活かす:コストから経営戦略へ転換する方法

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サイバーセキュリティ対策を単なるコストとして捉えている限り、企業は本質的な防御力を高めることができません。サイバー攻撃リスク評価は、被害コストを可視化し、投資対効果を示すことで、経営判断を支える重要なツールになります。近年では、取引条件や企業価値評価の一部としてリスク管理体制が問われるケースも増えています。本記事では、リスク評価を経営戦略やセキュリティ投資にどう活かすべきか、その考え方と実践ポイントを解説します。

本記事で扱う「投資判断としてのサイバー攻撃リスク評価」は、リスク評価の全体像を理解していることが前提となります。評価の考え方や具体的な進め方については、以下の記事で整理しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

なぜ今、サイバー攻撃リスク評価が経営戦略に必要なのか

サイバー攻撃の脅威は劇的な進化と拡大を続けています。日本の経営現場でもセキュリティ投資を「将来の不確定損失への保険」として扱う潮流は根強く残っていました。しかし今や、サイバー攻撃リスク評価とサイバー攻撃の被害とコストの具体的な計算なしには本気の経営戦略も企業価値向上も語れません。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する2026年以降、強固なサイバーセキュリティ体制が顧客からの信頼・安定的なサービス・市場競争力の三本柱になる現実を、多くの企業が既に体感し始めています。

被害コストを起点に考える投資対効果

これまで企業の経営層がセキュリティ対策費をコスト、いわば”掛け捨ての保険”と見なしていたのは、具体的な被害像や金額イメージが掴めなかったことが大きいでしょう。しかしランサムウェアの急増に象徴されるように、ひとたびサイバー攻撃がヒットすれば、全国で数億円規模のダメージが企業や組織を襲います。一度の攻撃でシステムが10日間停止し、数千万~数億円の売上機会が消失、追加の訴訟・通知・見舞金対応費が膨れ上がる実例も後を絶ちません。サイバー攻撃 被害 コストを具体的な数字で算定し、いかに戦略的に投資配分するか。—この問いへ本質的に向き合う企業のみが、次の時代へ生き残ると言えます。

このような投資対効果の考え方は、実際にどの程度の被害コストが発生しているのかを把握して初めて成立します。
サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均「2億円」?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

サイバー攻撃リスク評価を「共通言語」にする

実際、経営層を動かすには共通言語としてのリスク評価が不可欠です。たとえば担当者が「EDRソリューション導入予算が欲しい」と要望しても、テクニカルな言葉だけでは決裁は通りません。しかしリスク評価とコスト算定を示し、「現状では年間18%の確率で直接被害2億円が発生します。今回の500万円投資で、その確率が2%まで低減し、被害コスト回避インパクトは桁違いです」と数値根拠に基づき説明すれば、経営トップの意思決定を導けます。セキュリティ投資は、単なる損失回避のコストではなく、企業価値や信用、レジリエンス(回復力)向上の“収益性ある施策”として位置付けるべき新時代に来たのです。

AI時代に求められるリスク評価サイクルの高速化

サイバー攻撃リスク評価の精度・スピードはAIの登場によって質的な転換点を迎えています。Hornetsecurity社の調査レポートによれば、サイバー攻撃側は生成AIによる偽装メールや未知マルウェア作成など、かつてない速度と精度で攻撃を自動化しているとのデータもあります。実際、前年度比でマルウェア混入メールは131%増加というショッキングな統計も出ています。これに対抗すべく、防御側にもAI型EDRや脅威インテリジェンス、リスク評価自動化プラットフォームの導入が相次いでおり、もはや従来の手動&記憶頼み、年1回の見直しだけでは攻防サイクルに全く追いつかないのが現実です。セキュリティは攻めのIT、新たな事業基盤であるという認識転換が急務です。

サプライチェーンリスク評価が企業価値を左右する

また、近年問題化しているのがサプライチェーン全体のリスク管理です。大手・中小を問わず、委託や取引先からの情報漏洩・部品供給ストップが自社の市場シェアやサービスそのものに致命的な影響を及ぼします。実際、IPAや警察庁など複数の一次資料も、サイバー攻撃リスク評価を取引条件に組み込み、委託先企業を定量的に監査する流れの重要性を強調しています。既存市場では、リスク評価を実施していない企業は受託から外されるリスクも急上昇しているのです。安全なサプライチェーン網の維持こそが、新たな事業参入や大型受注の“入場パス”となりつつあります。

レジリエンス(回復力)を軸にした経営判断

最後に、サイバー攻撃対策で企業が真に目指すべきゴールは「レジリエンス=回復力の獲得」です。全ての攻撃を100%阻止するのは不可能である。—この冷徹な現実を受け容れ、発生時に致命的な被害コストだけは外さない仕組みを整える、そしていざインシデント発生時には準備したBCP(事業継続計画)やプレイブックに即し、冷静かつ迅速に被害最小化策を実行できる現場文化を育てること。その強靭さこそが不確実なデジタル経済を生き残る最大の武器となります。

こうしたレジリエンス重視の経営判断も、場当たり的に行うことはできません。前提となるのは、自社の資産・脅威・影響度を整理したサイバー攻撃リスク評価です。
サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

おわりに:リスク評価を投資サイクルに組み込む経営へ

繰り返しますが、恐怖や煽りでは企業は変わりません。正確なリスク評価と客観的な投資対効果を土台に、合理的判断によるサイバー攻撃対策投資を経営に実装すること。このサイクルだけが、激変する2026年以降の未来で貴社・貴組織の持続可能な価値創造を支える唯一の道なのです。

サイバー攻撃リスク評価を経営に活かすためには、まず自社の現状を正しく把握することが不可欠です。具体的な評価プロセスや実践手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

【参考情報】


サイバーインシデント緊急対応

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サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

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サイバー攻撃対策は、サービスや製品を導入するだけでは十分とは言い切れません。重要なのは、自社がどのような攻撃リスクにさらされ、どこに弱点があり、被害が出た場合にどれほどの影響があるのかを正しく把握することです。サイバー攻撃リスク評価は、限られた予算や人材で最大の防御効果を得るための出発点となります。本記事では、資産の棚卸しから脅威・脆弱性の分析、優先順位付けまで、実務に使えるリスク評価プロセスを体系的に解説します。

サイバー攻撃リスク評価が重要とされる背景には、実際に企業が被っている被害コストの深刻さがあります。リスク評価の前提として、まずはサイバー攻撃が企業経営にどれほどの損失をもたらしているのかを把握しておくことが重要です。
サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均「2億円」?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化」(https://www.sqat.jp/tamatebako/41157/

なぜ今、サイバー攻撃リスク評価が必要なのか

サイバー攻撃という言葉を聞いても、多くの経営者やIT担当者は漠然とした脅威を感じながらも、それが具体的に自社経営のどこに、どのようなコストとして跳ね返るのかを十分に自覚できていない現実があります。サイバー攻撃の被害コストが平均で数億円に達する状況下、「とにかく新しいセキュリティ製品を導入すれば安心する」といった対症療法的な取り組みでは、もはや防御しきれない時代へと突入しました。必要なのは「敵を知り、己を知る」戦略的なサイバー攻撃に対するリスク評価、すなわち、自社の弱点と外部の脅威を冷静に見極める経営判断の力です。

サイバー攻撃リスク評価の本質とは

敵を知り、己を知る

IPA「情報セキュリティ白書」をはじめとし、各所で訴えられているのが、「サイバー攻撃に対するリスク評価の重要性」です。ただしその本質は、単なるITシステムのスキャンやツールベースの脆弱性チェックではありません。真のリスク評価とは、経済合理性の観点で、何を守り、何を諦めるのかという意思決定を支える土台なのです。どれほど強力な製品やサービスを導入しても、リスクの本質を社内の誰も把握していなければ、最悪のシナリオを防ぐことはできません。リスクが見えない会社はまるで地図も持たずに夜の海を航海する船と同じです。限られた人材・予算で最大効果を追求するため、全社員が自分ごととしてリスクを理解することが必要不可欠になります。

ステップ1:守るべき資産の棚卸しから始める

リスク評価の第一歩は、組織の守るべきものを徹底的に洗い出すことです。単に個人情報やサーバーと抽象的に捉えるのではなく、顧客の個人情報DB、製造業の設計図ファイル、EC企業のオーダー処理システム、医療機関なら電子カルテや診療録など、具体的な業務上の資産を1つ1つリストアップしていきます。この資産の棚卸し作業には経営部門、現場担当、IT管理者それぞれの視点が欠かせません。しばしば現場を訪れてヒアリングすることで、「社内の共有フォルダに重要な決裁書が保管されていた」「知らないうちに外部のクラウドサービスを使っていた」といった予想外のリスクが浮かび上がることも多いのです。

さらに、一つ一つの資産が「漏洩した場合」「改ざんされた場合」「利用不可になった場合」それぞれでどんな損失が出るかを具体的に算定します。例えば、「受注管理のExcelファイルが消えたら、次月の売上がいくら減るか」「サプライヤーリストが流出したら、競合にどんな損失があるか」など、リアルな金額で被害コストを試算することで、リスク評価の精度は飛躍的に高まります。こうした積み上げが正確なサイバー攻撃リスク評価の基礎となるのです。

ステップ2:脅威と脆弱性のリアルな分析

守るべき資産が可視化されたら、同時に「どのような攻撃(脅威)によって、それが被害を受けるのか」「自社のどこに抜け穴(脆弱性)があるのか」という分析を行います。ランサムウェアや標的型攻撃、内部不正やサプライチェーン攻撃など、攻撃手口は年々進化を続けており、特に2025年には生成AIを活用したフィッシングメールの飛躍的高度化や、関連会社を経由したサイバー攻撃が国内外で激増しています*1。この脅威分析は、単なるIT部門の仕事ではありません。現場従業員のうかつなファイル操作、ベンダーから納品されたIoT機器の未対策状態、管理者のミス設定まで、多層的な視点が必要となります。例えば「ファイアウォールは万全だが、受付担当者がメールで来たExcel添付を毎回開いてしまう」、こうした人為的な脆弱性こそが深刻なリスクとなりえるのです。

さらに、最新の脅威情報をウォッチし、自社の資産一つ一つに「どの攻撃手口がどれだけ現実的なのか」「実際に被害が起きたらどんな損失が発生するか」をひとつずつ当てはめていきます。IPAやJPCERT、経済産業省のガイドライン等で公開されている被害事例も積極的に参照し、決して机上の空論にならないようにすることが重要です。

ステップ3:リスク値の算定と現実的な対策の選定

資産の価値、脅威シナリオ、脆弱性の分析がそろったら、それらを掛け合わせて「リスク値」を定量的または定性的に算定します。年に1回は「このシステムが被害を受ける確率」「被害にあった場合の復旧・損失コスト」を具体的に予測し、たとえば年間予想被害額(Annualized Loss Expectancy, ALE)といった尺度で数値化してみます。数値化が難しければ、「この資産は被害が出た場合、顧客離脱や損害賠償リスクが最も高い」といった三段階の定性的評価でも構いません。

こうした評価から、「このサーバーは古いが利用者が少ないので対応を先送りする」「この顧客データベースは被害時の損害コストが極めて高いため、早急に多要素認証や暗号化を施す」など、リスクごとに優先順位を定めて取り組むことが可能になります。リスクゼロは現実的に不可能ですが、限られたリソースを最大限有効活用し、許容できない損害だけは絶対に回避する。保険・外部委託など、リスクを下げきれない部分のコスト転嫁も積極的な選択肢となります。

なお、ここで言うリスクとは抽象的な危険性ではなく、実際に発生しうる被害コストや業務停止損害を含んだ現実的な損失を指します。
サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均「2億円」?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

リスク評価を“一度きり”で終わらせないために

サイバー攻撃リスク評価は、決して一度やったら終わりではありません。IT環境は日々進化し、新しい脆弱性や攻撃手口が次々に出現します。たった1年で状況が一変するデジタル社会において、リスク評価を定期的な健康診断や棚卸しのようにサイクルに組み込むことの重要性はますます高まっています。たとえばセキュリティインシデントが起こった直後には再評価を実施し、現場の運用ルールやセキュリティ教育もアップデートする、その繰り返しが強靭な組織基盤を作り上げていきます。

この継続プロセスの副次的な効用として、現場担当者も経営層も含めた当事者意識の醸成という大きな成果も見逃せません。全員が自分たちの業務にどんなサイバー攻撃被害コストが潜んでいるかを肌感覚で理解し、日常業務の中でこのデータの扱い方は安全かと常に問い続ける風土が生まれます。これが最終的には、組織としてのサイバー攻撃耐性・セキュリティ文化の創出へとつながっていくのです。

まとめ―サイバー攻撃リスク評価が企業を強くする

「守るべきものの棚卸し」「脅威と脆弱性のリアルな洗い出し」「定量・定性評価による対応策の優先順位付け」、このサイクルの徹底こそが、サイバー攻撃リスク評価の真髄です。安易な製品導入による対策の自己満足から脱却し、本質的な経営判断としてのリスク評価を習慣化すること。―これこそが、2026年を生き抜く企業の競争力を底上げする最短の道となります。サイバー攻撃リスク評価を“実装”すれば、サイバー攻撃の被害コストに怯える毎日から、主体的に未来を選び取る経営へと転換できることでしょう。


サイバー攻撃リスク評価は、評価して終わりではありません。算出したリスクをどう解釈し、どこに投資し、どのリスクを許容するのかという経営判断に落とし込むことで、初めて意味を持ちます。次の記事では、リスク評価をセキュリティ投資や経営戦略にどのように活かすべきかを解説します。
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サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

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「サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化」アイキャッチ画像

サイバー攻撃による被害は、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。ランサムウェア被害を中心に、日本企業が被るサイバー攻撃の被害コストは平均で2億円規模に達しています。復旧費用や身代金だけでなく、業務停止による機会損失、信用低下、取引停止など、被害は連鎖的に拡大します。本記事では、最新データと事例をもとに、企業経営に直結するサイバー攻撃の被害コストの実態を整理し、なぜ今リスク評価が欠かせないのかを解説します。

サイバー攻撃は「ITトラブル」ではなく財務リスク

現在私たちを取り巻くビジネス環境において、「サイバー攻撃」という言葉の響きは劇的に変化しました。かつて、それはIT部門のサーバールームの中だけで処理される技術的なトラブルであり、ファイアウォールやウイルス対策ソフトを導入していれば済む「対岸の火事」でした。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の隅々まで浸透した今、その認識は致命的な時代錯誤と言わざるを得ません。サイバー攻撃は、もはやシステムのエラーではなく、明日の決算書を赤字に転落させ、積み上げてきたブランドを一瞬で崩壊させる、極めて現実的な「財務リスク」へと変貌を遂げたのです。

多くの経営者が「セキュリティ対策はコストだ」と嘆きます。確かに、何も起きなければ利益を生まない投資に見えるかもしれません。しかし、ひとたびセキュリティインシデントが発生した際に企業が支払うことになるコストの総額は、事前対策費の数十倍、場合によっては数百倍に膨れ上がるのが現実です。本記事では、感情的な脅威論ではなく、最新の統計データと実際の事例に基づいた数字を用いて、企業が直面しているリスクの正体を解き明かしていきます。なぜ、セキュリティベンダーやコンサルタントが口を酸っぱくしてサイバー攻撃対策とリスク評価の重要性を説くのか。その答えは、これから提示する衝撃的な金額の中にあります。

ランサムウェア被害額の現実:平均2億2千万円

まず、私たちが直視しなければならないのは、具体的な金銭的被害の規模です。セキュリティベンダー大手のトレンドマイクロ社が2024年末に公表した調査データ*2によると、過去3年間において日本国内の組織が経験したサイバー攻撃による累積被害額は、平均で約1億7千万円に達しています。これだけでも中小企業の年間利益を吹き飛ばすには十分な金額ですが、さらに深刻なのは、データを暗号化し身代金を要求するランサムウェアによる被害に限定した場合です。この場合、被害総額の平均は約2億2千万円にまで跳ね上がります。

この2億円という数字を聞いて、多くの経営者は耳を疑うかもしれません。「たかがウイルスの除去に、なぜビルが建つほどの金がかかるのか」と。しかし、ここには大きな誤解があります。サイバー攻撃における被害とコストの構造は、氷山のようなものです。海面にみえている身代金の支払いやシステムの初期復旧費用は、全体の一部に過ぎません。水面下には、より巨大で複雑なコストが潜んでいます。

例えば、攻撃の侵入経路や被害範囲を特定するためのデジタルフォレンジック調査費用です。高度な専門知識を持つスペシャリストを数週間拘束するこの調査だけで、多額の請求書が届くことはめずらしくありません。さらに、個人情報が漏洩した場合の対応コストも莫大です。顧客への詫び状の発送、専用コールセンターの設置、見舞金の支払い、そして法的責任を問われた際の弁護士費用や損害賠償金―これらが積み重なった結果が、2億円という冷酷な数字なのです。

2億円という金額は、多くの中堅・中小企業にとって、単なる特別損失として処理できる範囲を遥かに超えており、場合によっては事業継続そのものを断念せざるを得ない致命傷となり得ます。「うちは盗まれて困るような重要データはないから大丈夫だ」と語る経営者にも、警鐘を鳴らさなければなりません。近年の攻撃者が狙っているのは、情報の機密性(データの価値)だけではありません。彼らのビジネスモデルは、業務の可用性(システムが動いていること)を人質に取ることにシフトしています。あなたの会社のデータに市場価値がなくても、そのデータが使えなくなることで業務が止まり、あなたが困るなら、そこには「身代金を払う動機」が生まれます。つまり、事業活動を行っているすべての組織が、例外なく標的とされているのです。

こうした被害は、運任せで発生するものではありません。多くの場合、事前のリスク評価によって発生確率や影響度を見積もり、優先的に対策すべきポイントを絞り込むことが可能です。
サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

最大の盲点は業務停止損害(機会損失)

被害コストを算出する際、我々はつい、財布から出ていく現金(キャッシュアウト)だけに目を奪われがちです。しかし、真に恐ろしいのは機会損失という形で見えないコストが積み上がっていく業務停止損害です。

前述したトレンドマイクロ社による2024年の調査データによれば、ランサムウェア攻撃を受けた際の平均的な業務停止期間は、約10.2日にも及ぶことが明らかになっています。10日間、会社の機能が完全に停止する状況を具体的に想像してみましょう。まず、受発注システムが画面にロック画面を表示したまま動かなくなります。倉庫の在庫データにはアクセスできず、どの商品をどこへ出荷すべきかわからなくなります。メールサーバーもダウンし、取引先との連絡手段は個人の携帯電話だけになります。製造ラインの制御システムが感染していれば、工場の稼働音は止まり、静寂が支配することになるでしょう。この10日間の空白が生み出すサイバー攻撃の被害とコストは計り知れません。本来得られるはずだった売上高が消滅するだけではありません。納期遅延によって取引先からの信頼を失い、契約解除や損害賠償請求を受けるリスクも発生します。

さらに、腐敗しやすい商品を扱う食品業界や、ジャストインタイムで部品を供給する製造業界においては、たった数日の停止がサプライチェーン全体を麻痺させ、億単位のペナルティに発展することさえあります。実際に、九州地方の地域密着型スーパーマーケットチェーンでは、システム障害により全店舗が数日間にわたって臨時休業に追い込まれる事態が発生しました。新鮮な食材を求める地域住民の期待を裏切り、廃棄処分となる商品の山を築いてしまったこの事例は、サイバー攻撃が単なるデジタル空間の出来事ではなく、物理的な生活インフラを破壊する脅威であることを如実に物語っています。

また、復旧後も影響は長く尾を引きます。「あの会社はセキュリティが甘い」という評判は、SNS時代においては瞬く間に拡散し、デジタルタトゥーとして残り続けます。新規顧客の獲得コストは高騰し、既存顧客の離脱を食い止めるためのマーケティング費用も嵩みます。上場企業であれば、インシデント公表直後の株価下落による時価総額の毀損も、広義の被害コストに含まれるでしょう。このように、業務停止が引き起こす連鎖的な損害は、表面的な復旧費用の数倍、時には数十倍に膨れ上がるのです。

「中小企業は関係ない」という神話の崩壊とサプライチェーンリスク

「サイバー攻撃は大企業が狙われるもので、我々のような中小企業は関係ない。」―2025年において、この認識は完全に誤った神話であり、極めて危険なバイアスであると断言できます。警察庁が公表する「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によれば、ランサムウェア被害の報告件数のうち、実に約6割が中小企業で占められているのが実情です。なぜ、資金力のある大企業ではなく、中小企業が狙われるのでしょうか。そこには、攻撃者側の明確な戦略的合理性が存在します。

第一の理由は、サプライチェーン攻撃の踏み台としての利用です。セキュリティ予算が潤沢で、強固な防御壁を築いている大企業を正面から突破するのは、攻撃者にとっても骨の折れる作業です。そこで彼らは、大企業の取引先でありながら、セキュリティ対策が比較的脆弱な中小企業に狙いを定めます。まず中小企業のネットワークに侵入し、そこから正規の取引メールを装ってマルウェアを送りつけたり、VPN(仮想専用線)接続を通じて大企業の本丸へ横移動したりするのです。もしあなたの会社が踏み台にされ、取引先の大企業に被害を与えてしまった場合、その損害賠償請求額は自社の存続を揺るがす規模になるでしょう。そして何より、長年築き上げてきたビジネスパートナーとしての信用は地に落ち、取引停止という最悪の結末を招きかねません。

第二の理由は、攻撃の自動化と無差別化です。攻撃者はAIを駆使したツールを用いて、インターネット上の脆弱なサーバーを24時間365日、休むことなくスキャンし続けています。そこに大企業か中小企業か、という選別はありません。カギの開いているドアがあれば、誰の家であろうと入ってくる空き巣と同じです。セキュリティパッチ(修正プログラム)の適用が遅れているVPN機器や、パスワード設定が甘いリモートデスクトップ機能などは、格好の餌食となります。

“数打ちゃ当たる”戦法で無差別にばら撒かれたウイルスに感染し、暗号化されたデータを人質に取られてしまう。―中小企業における平均被害額も数千万円規模に達することがありますが、資金的体力の乏しい企業にとって、このサイバー攻撃の被害とコストのインパクトは大企業以上に甚大です。さらに、中小企業では「ひとり情シス」や「兼任担当者」が一般的で、セキュリティの専門家が不在であるケースが大半です。日々の業務に追われ、サイバー攻撃 リスク評価を行う余裕もないまま放置されたシステムは、攻撃者にとって宝の山に見えていることでしょう。攻撃者は、あなたが「自分は狙われない」と思っているその隙を、虎視眈々と狙っているのです。

数値化しづらい“人的コスト”が復旧を遅らせる

金銭的なコストや信用の失墜に加え、もう一つ忘れてはならないのが、現場で対応にあたる従業員の疲弊という「人的コスト」です。インシデントが発生した瞬間から、IT担当者や経営幹部は不眠不休の対応を強いられます。原因究明、システム復旧、関係各所への連絡、殺到する問い合わせ対応。極度のプレッシャーの中で行われる意思決定の連続は、担当者のメンタルヘルスを確実に蝕んでいきます。

さらに、事態が収束した後も現場には深い爪痕が残ります。「自分のせいで会社に損害を与えてしまった」という自責の念から、優秀なエンジニアが退職してしまうケースも後を絶ちません。また、再発防止策として導入される厳格すぎるセキュリティルールが、日々の業務効率を低下させ、従業員のモチベーションを下げる要因となることもあります。このように、サイバー攻撃は組織の「人」という資産をも毀損し、長期的な成長力を奪っていくのです。これもまた、決算書には表れない重大なサイバー攻撃の被害とコストの一部と言えるでしょう。

サイバー攻撃リスク評価で何を可視化するのか

ここまで述べてきたように、サイバー攻撃による被害は、もはや運が悪かったで済ませられる事故ではなく、現代のビジネスを行う上で避けては通れない発生しうる経営コストとして、あらかじめ計算に含めておくべき確定的なリスクです。平均2億2千万円という衝撃的な被害額は、適切なセキュリティ投資を怠った場合に市場から請求される高すぎる授業料と言い換えることもできるでしょう。

では、この破滅的なコストを回避し、持続可能な経営を行うためにはどうすればよいのでしょうか。その唯一の解は、漠然とした不安を具体的なアクションに変えることにあります。すなわち、自社のどこに弱点があり、どのような脅威に晒されているのかを客観的に可視化するリスク評価の実施です。「敵を知り、己を知る」。孫子の兵法にも通じるこのアプローチこそが、限られた予算で最大の防御効果を生み出すための出発点となります。


サイバー攻撃による被害コストは決して偶発的なものではなく、事前に把握・管理できるリスクでもあります。では、こうした被害を未然に防ぐために、企業はどこから手を付けるべきなのでしょうか。次の記事では、サイバー攻撃リスク評価の考え方と具体的な進め方について、実務視点で詳しく解説します。
サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

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脆弱性診断は受けたけれど~脆弱性管理入門

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~とある会社Aと脆弱性診断の結果を受け取った関係者とのやり取り~

脆弱性診断を受けたA社では入社3年目のセキュリティ担当・Bさんが結果に頭を抱えています。なぜなら、社内ネットワークに使っているスイッチにCVSSスコア9.8の脆弱性、リモートアクセスに使用しているVPNゲートウェイにCVSSスコア8.8、オンラインショップ用の受発注管理に利用しているデータベースにCVSSスコア7.5の脆弱性が見つかってしまったからです。リスクはどれも「高」レベルとして報告されたため、Bさんは上司に相談し、すべてに修正パッチを当てるようスイッチとVPNゲートウェイについてはインフラチームの担当者に、データベースについては開発部に連絡することにしました。

インフラチームのCさんとSlackでやり取りをしていたBさんはCさんからこんなことを伝えられます。

インフラチームCさん「修正パッチを適用するとなると、インフラチームは基本みんなリモートだから、誰かを土日のどこかで休日出勤させるか、急ぎだったら平日の夜間に勤務させて、パッチを当てることになるけど、どれぐらい急ぎなの?」

「あと、VPNとスイッチ、どっちを先に作業したほうがいいの?パッチの情報を調べてみたら、VPNのほうは一度途中のバージョンまで上げてから最新バージョンまで上げないといけないみたいで、作業時間がすごくかかりそうだから、別日で作業しないとだめかもしれないんだよね」

Bさんは答えに詰まってしまいました。リスクレベルは高だといわれているけれども、どれぐらい急ぐのかは誰も教えてくれないからです。

答えに詰まって「確認してから折り返し連絡します」と返したところ、「セキュリティ担当はいいなあ。土日とか夜間に作業しなくていいし、すぐに答えなくてもいいんだから」と嫌味までいわれてしまいました。

Bさんは脆弱性診断の結果が返ってきてから1週間後、開発部門のD部長にセキュリティ担当と開発部門の定例会議の際に報告事項としてパッチ適用の件を報告しました。するとD部長はこういいました。

開発部D部長「この件、1週間ほど報告に時間を要したようですが、脆弱性診断の結果以外に何か追加の情報はありますか?あと、この脆弱性診断の結果によるとリスクレベル高とありますが、社内の規定としてどの程度急ぐかといった判断はされましたか?」

開発部のほかの人にもこんなことをいわれてしまいます。

開発部担当者「パッチを適用する場合、ステージング環境で影響を調査したうえで必要であればコードや設定の修正などを行う必要がありますが、その時間や工数は考慮されていないですよね。通常の開発業務とどちらを優先すべきかといった判断はどうなっているんですか?」

Bさんはまたもや言葉に詰まってしまいます。セキュリティ担当は自分と上司の2人だけ、上司は別の業務との兼務でパッチの適用の優先順位付けまで考えている時間はありません。自分もEDRやファイアウォールの運用をしながら脆弱性診断の依頼や結果を受け取るだけで、とても他の部門の業務内容や環境のことまで把握しきる余裕がないのです。


ここまで、架空の会社A社と脆弱性診断の結果を受け取った関係者の反応を物語形式でお送りいたしました。現在、弊社の脆弱性診断サービスでは脆弱性単体のリスクの度合いの結果をご提供させていただくことはあっても、その脆弱性をどういった優先度で修正しなければならないかといった情報はご提供しておりません。なぜならば、パッチを適用するにあたって優先順位をつけるためにはお客様しか知りえない、以下の要素が必要になるためです。

パッチ適用の優先順位をつけるための3つの要素

  1. 脆弱性を持つアセットが置かれている環境
    ・インターネット上で公開された状態か、IPSやFWなどで制御されたネットワーク内か、もしくはローカル環境依存といった非常に限定的な環境かといった分類
    ・CVSSでいう環境スコア(CVSS-E)の攻撃区分(MAV)にあたる、実際の環境依存の要素
  2. アセットが攻撃を受けた場合に事業継続性に与える影響
  3. アセットが攻撃を受けた場合に社会や社内(運用保守・人材)に与える影響

冒頭のA社のケースでは以下のように整理できるでしょう。

アセットが置かれている環境

  • VPN:インターネット上で公開された状態
  • データベース:設定を間違っていなければIPSやFWなどで制御されたネットワーク配下だが、公開ネットワーク寄り
  • スイッチ:設置環境によって制御されたネットワーク内かローカル環境になる。

アセットが公開されている場合、攻撃者からよりアクセスしやすいことからより緊急度が高いといえるので、VPN=データベース>スイッチの順になると考えられるでしょう。

アセットが攻撃を受けた場合に事業継続性に与える影響

アセットが攻撃を受けた場合に自社の事業継続にどの程度影響が出るかといった要素です。
仮にランサムウェア攻撃によって影響を受けた場合、それぞれのアセットの停止でどの程度の影響が出るかを想定してください。A社の場合事業継続性への影響度順でいうと、データベース>VPN>スイッチの順になると考えられます。

今回の場合はデータベースが事業に直結しており、顧客情報を含むデータを持っているため、継続性への影響度が高いという想定です。アセットの利用目的や環境によってはこの順番が入れ替わることもあります。

アセットが攻撃を受けた場合に社会や社内に対して与える影響

A社がランサムウェア攻撃を受けた場合はオンラインショッピングサイトのデータベース関連で以下の影響が見込まれます。

  • 顧客情報の漏洩
  • 運用およびシステムの復旧にかかる費用と工数

このほかにVPNやスイッチもフォレンジック調査の対象となって業務が行えなくなる可能性が高いと考えられます。VPNに関しては利用できない期間、社員の出社が必須になるなどワークスタイルへの影響も出る可能性もあります。こういったことから、社会および社内に対して与える影響でA社の例を考えると影響度は、データベース>VPN=スイッチと考えられるでしょう。

SSVCとは

こうした情報があったうえで利用ができようになる優先順位付けの方法があります。それが「SSVC(Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization)」です。SSVCは脆弱性管理プロセスに関与する利害関係者のニーズに基づいて脆弱性に優先順位を付けるための方法論とされており、経営・マネジメント層、システム開発者、システム運用者といったステークホルダーと一緒に脆弱性に対処していくための方法論といえます。SSVCは脆弱性そのものの技術的評価ではなく、脆弱性にどのように対処するかという観点での評価を行うフレームワークになります。

SSVCの3つのモデル

  1. ソフトウェアやハードウェアの供給者、すなわちパッチを開発する人が用いる「Supplier Decision Model
  2. ソフトウェアやハードウェアを利用する側、つまりパッチを適用する人が用いる「Deployer Decision Model
  3. CSIRTやPSIRT、セキュリティ研究者やBug Bounty Programなど、脆弱性に対して何らかの調整やコミュニケーションのハブとなりうる人、コーディネーターが用いる「Coordinator Decision Model

このうち、「Deployer Decision Model」と「Supplier Decision Model」ではプライオリティ(対応優先度)付けの結果を4つにわけています。

SSVCで得られるプライオリティ付けの結果

Deployer ModelSupplier Model
Immediateすべてのリソースを投入し、通常業務を止めてでもパッチの適用を直ちに行うべきである全社的にすべてのリソースを投入して修正パッチを開発し、リリース
Out-of-cycle定期的なメンテナンスウィンドウより前に、やむを得ない場合は残業を伴う形で緩和策または解消策を適用緩和策または解消策を他のプロジェクトからリソースを借りてでも開発し、完成次第セキュリティパッチとして修正パッチをリリース
Scheduled定期的なメンテナンスウィンドウで適用通常のリソース内で定期的な修正パッチのリリースタイミングでパッチをリリース
Defer現時点で特に行うことはない現時点で特に行うことはない

ここではDeployer Decision ModelをもとにA社がどのようにパッチを適用すべきか検討してみましょう。

まず、Bさんは上司に相談したうえで、前述した3つの要素、「脆弱性を持つアセットが置かれている環境」、「事業継続性への影響」、「社会や社内への影響度」を定義していく必要があります。また、この定義に当たっては実際の環境や利用用途、部門内のリソースなどをよく知っているインフラチームや開発部といった当事者、つまりステークホルダーの関与(少なくとも承認)が必要となってきます。このほかに優先順位付けの結果、”Immediate”や”Out-of-Cycle”が出た場合の対応プロセスも用意しておく必要があります。Bさん1人で何かできることはそれほど多くはなく、社内のステークホルダーへの聞き取りや経営層への説明、必要なプロセスの準備と合意形成など、上司や部門全体も含めて組織的に取り組まなければならないといえます。さらに、Bさんは脆弱性自体が持つ以下の要素を調べる必要があります。

脆弱性が持つ要素

自動化の可能性

攻撃者がツール化して脆弱性を悪用するかどうかを判定するものとなります。これは攻撃者がツール化した場合、攻撃者間でツールの売買が行われるなど汎用的に悪用される可能性があるため、把握が必要な要素となります。一部の脆弱性はCISA VulnrichmentやCVSS4.0のSupplement MetricsのAutomatableの値が参照できますが、情報の参照先がないものについてはPoCの有無やPoCの内容から自動化の可否を判断する必要があります。この点はSSVC利用の難点として挙げられることもあります。

悪用の状況

実際に攻撃されていることを示すActive、PoCのみを示すPoC、悪用されていないことを表すNoneの3つに分類されます。この情報は時間の経過とともに変化する可能性が最も高く、逐次状況を確認する必要があります。情報の参照先は、KEVカタログ、CISA VulnrichmentのExploitationの値、CVSS4.0のThreat MetricsやNVDのReferenceのPoCの有無といったものが利用できます。唯一難点があるとすれば、日本国内でシェアの高い国内メーカー機器の情報がKEVカタログやCISA Vulnrichmentなどにあまり反映されない点にあります。

まとめ ~CVSSとSSVCの活用~

これまではCVSSが高い値のものだけ対処していた、という組織も多いでしょう。CVSSは脆弱性の単体評価ができ、脆弱性が広く悪用された場合の深刻度を測るための評価システムです。ただし、その脆弱性が存在するアセットがどのように利用されているか、そのアセットが業務継続性や運用保守、ひいては社会全体に対してどのような影響を与えるかといった観点が欠けていることが長らく問題視されてきたのも事実です。

脆弱性管理は手間がかかる、登場人物が多い、意見がまとまらないといったこともあるでしょうし、「自動化の可能性とかわからないし、攻撃の状況をずっと見ているほどの時間の余裕はない!」といった様々なお声があるかと思います。しかし、今この瞬間どの企業がいつサイバー攻撃を受けるのか全く見当もつかない状況の中、少しでもリスクを回避したい、どこにリスクがあるのか手がかりをはっきりしておきたいという企業の皆さまもいらっしゃるかもしれません。本記事を通じて、こういった脆弱性管理手法があることを知っていただき、活用することでリスク回避ができるようになるための役立つ情報提供となれば幸いです。

参考情報:

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