
顧客や会員との交流を支えるコミュニティサービスで、個人情報の漏洩が発生しました。コミュニティサービス「Commune」「Commune for Work」を提供するコミューン株式会社は2026年10月9日、両サービスへの不正アクセスにより、推計約30.7万人の会員情報が漏洩したと公表しています*1。利用企業からも影響が公表されていますが、対象情報や漏洩の確認状況は各社で異なります。本記事では公表情報をもとに、事件の概要と、企業がSaaSを使う際に見直したい管理のポイントを整理します。
Communeで何が起きたのか
コミューンの発表では、非公開コミュニティの招待リンクが不正に取得され、一般会員としての登録が行われたほか、管理者へのなりすましによって会員情報の閲覧・取得やデータの上書きが行われました。今回の事案では、コミュニティへの参加方法と管理者権限の両方が確認すべきポイントとなります。約30.7万人は、コミューンの従業員・テスト用デモアカウントも含む推計です。また利用企業の設定や運用が原因ではないと説明しています。個々の利用者への影響は、参加するコミュニティと登録情報によって異なります。
なお同社は、10月13日、10月9日の公表以降に新たな不正アクセスや情報漏洩は確認されていないものの、引き続き調査と対応を進めていると発表しています。悪用された脆弱性の種類や認証の仕組みについて、詳細は明らかにされていません。
LINEヤフーとSansanで異なる情報漏洩の確認状況
LINEヤフーは、「DS.INSIGHT」内のコミュニティ機能「DS.LAB」の利用者1,750人について、情報が閲覧・取得された可能性を公表しました*2。対象には氏名、メールアドレス、自己紹介、所属グループなどが含まれます。同社のシステムへの不正アクセスは確認されておらず、コミューンが運営するサーバーで起きた事案と説明しています。
Sansanは「Sansan User Forum」について、漏洩を確認した1,325人と、漏洩の可能性がある8,687人を分けて公表しました*3。前者の対象情報にはメールアドレス、アカウント名、自己紹介、プロフィール画像、グループ所属情報が含まれ、後者はメールアドレスを除くこれらの情報が対象です。また、営業AXサービス「Sansan」など、同社の各サービスやそこで預かる情報への影響はないと説明しています。
今回の事案では、利用企業ごとに対象情報や漏洩の確認状況が異なります。情報漏洩の影響を判断する際には、対象となったサービスや情報の種類、漏洩が確認されているかどうかを区別することが重要です。
図:Commune事案の影響をサービスごとに確認

※各社の対象人数は全体推計に加算していません。対象情報・漏洩の確認状況は各社の公表内容に基づきます。コミューンは10月13日、10月9日の公表以降、新たな不正アクセスや情報漏洩は確認されていないと発表しています。
SaaSの権限管理ではアクセスと操作の範囲を分けて考える
ここからは、今回の事案を踏まえて見直したい一般的なSaaSセキュリティ対策です。英国国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、クラウドの安全性を評価する観点として、顧客間の分離、安全な利用者管理、認証、管理機能の保護を挙げています。ログインができることと、会員情報の一括取得や権限変更が許されることは、別々に制御しなければなりません。利用企業は、管理者を必要な担当者に限定し、退職や担当変更に応じてアクセス権を見直します。提供事業者に対しては、一般会員と管理者の境界や、顧客ごとのデータの境界を、どのように検証しているか確認することが重要です。
なお、今回の事案でテナント間の分離が破られたと確認されたわけではありません。多要素認証も有効な基本対策ですが、認証を強めればあらゆる権限の問題が解決するわけではありません。NCSCのSaaS利用ガイダンスを参考に、認証と権限設定をあわせて確認し、不要な機能や不要になった利用者のアクセスを残さない運用を整えましょう。
SaaSで扱う情報と事故調査に必要なログを把握する
SaaSを導入した部署が、登録項目や連携先を追加することもあります。契約時の評価だけで終えず、現在どの情報を扱っているのかを確認することが出発点です。会員登録の必須項目だけでなく、自由記述の自己紹介、追加プロフィール、画像に何が含まれ得るかまで運営担当者と整理します。事故への備えでは、監査ログを「保存しているか」だけで判断できません。NCSCは、利用企業が調査に必要な監査情報を入手できること、その提供方法や保存期間を把握していること、記録が改ざん・削除から保護されることを重視しています。会員情報へのアクセスや設定変更の履歴を、誰がどの手順で取り出せるのか、導入時から確認しておく必要があります。
連絡の受け手も決めておきたいところです。通知が契約担当者だけに届いても、運営の停止や会員への案内を判断する部署へ伝わらなければ対応が遅れます。SaaS事業者からの通知を、情報システム部門と実際の運営部門の双方が受け取り、対象者と対象情報の確定状況を同じ記録で追えるようにします。NCSCも、サービス全体の障害を含めた対応手順と、有効な連絡先の準備を求めています。
利用者には確認済みの情報を正確に伝える
利用者には、自分が参加するコミュニティの運営企業の公式発表を確認してもらうことが基本です。LINEヤフーは、本件に便乗する不審なメールやメッセージへの注意を呼びかけ、心当たりのないリンクを開いたり個人情報を入力したりしないよう案内しています。お詫びメールを装う連絡も想定し、正規の問い合わせ先と確認方法を明示すると、利用者が判断しやすくなります。一方で、漏洩項目に含まれない情報まで「流出した」と知らせるべきではありません。今回のSansanの発表でも、パスワードは対象外と明記されています。調査中の事項は調査中と伝え、対象範囲が変わった場合に更新する運用が必要です。
クラウド利用の管理体制を BBSecと見直す
SaaSの安全な利用には、技術的な設定と、委託先との役割分担・社内規程を結び付ける作業が欠かせません。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)が提供している「ISO/IEC 27017 クラウドセキュリティ認証取得支援」は、クラウドの提供事業者と利用事業者を対象とし、現状のアセスメント、規格とのギャップ把握、規程文書の整備、社員教育を支援します。クラウドサービスの管理状況を把握し、権限管理や事故対応のルールを含めた管理体制の整備を検討される際は、BBSecへご相談ください。
【参考情報】
- コミューン株式会社「当社サービス『Commune』『Commune for Work』への不正アクセスによる個人情報の漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月9日)(https://communeinc.com/ja/news/2026oct09)
- LINEヤフー株式会社「委託先システムへの不正アクセスに伴う情報漏えいに関するお知らせとお詫び」(2026年10月9日)(https://www.lycorp.co.jp/ja/privacy-security/announcement/020892/)
- Sansan株式会社「オンラインコミュニティー『Sansan User Forum』における会員情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月9日)(https://jp.corp-sansan.com/news/2026/1009.html)
- National Cyber Security Centre (NCSC) 「The cloud security principles」(https://www.ncsc.gov.uk/collection/cloud/the-cloud-security-principles)
- National Cyber Security Centre (NCSC) 「Using Software as a Service (SaaS) securely」(https://www.ncsc.gov.uk/collection/cloud/using-cloud-services-securely/using-saas-securely)
- National Cyber Security Centre (NCSC) 「Principle 13: Audit information and alerting for customers」(https://www.ncsc.gov.uk/collection/cloud/the-cloud-security-principles/principle-13-audit-information-and-alerting-for-customers)
- コミューン株式会社「当社サービスの臨時メンテナンスに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月13日)(https://communeinc.com/ja/news/2026oct13)
編集責任:木下
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