定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!
-放置された脆弱性のリスクと対処方法-

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脆弱性、放置されてませんか? 近年、放置されたままの脆弱性が悪用されるサイバー攻撃が増加しています。システムの脆弱性を対策しないままでいると、不正アクセスやマルウェア感染などの様々なリスクがあります。本記事では、脆弱性のリスクや実際に悪用された事例を紹介しつつ、脆弱性対策の重要性について解説いたします。

脆弱性の放置が命取りに~「Nデイ脆弱性」が狙われる

脆弱性が発見されると、対応として対象製品のベンダーより修正プログラムがリリースされます。ユーザはその修正プログラムを適用することで、当該脆弱性に対応することができます。

しかし、実際には様々な理由で修正プログラムが適用されず、脆弱性が放置されてしまうことがあります。修正プログラムのリリース後から、実際に適用されるまでの期間に存在する脆弱性は「Nデイ脆弱性」と呼ばれ、それを悪用するサイバー攻撃が増加しています。

図:2020年の脆弱性を利用した攻撃の割合(月ごとの開示年別)
出典:Check Point Software Technologies Ltd.「CYBER SECURITY REPORT 2021」

上のグラフは、Check Pointが公開したレポートに記載されたもので、2020年のそれぞれの月に、いつ発見された脆弱性がどのくらい使われていたか、その割合を示すグラフで、横軸は2020年のいつのデータであるのかを、縦軸は使用された脆弱性の発見された年を示しています。グラフからは、前の年である2019年以前に登録された脆弱性が、年間を通じて攻撃者に悪用され続けたことや、観測された攻撃の約80%が、2017年以前に報告・登録された脆弱性を悪用したものであったとのことがわかります。また、上記レポートでは複数の脆弱性を組み合わせて攻撃する手法「エクスプロイトチェーン」に、新しい脆弱性が組み込まれているとも指摘しています。

Nデイ脆弱性を狙う攻撃では、修正プログラムが適用されるより前に攻撃が仕掛けられるため、ソフトウェア管理が不適切な企業が標的として狙われやすくなっています。さらには近年では脆弱性対策情報が公開された後に攻撃コード(PoC)が流通し、攻撃が本格化されるまでの時間が短くなっています*1

こういった背景から脆弱性を放置したままにすることは深刻な被害につながる可能性があります。

放置した脆弱性の持つ様々なリスク(不正アクセス・マルウェア感染・ホームページの改ざん・サーバの
ボットネット化)についてのイメージ図

既存の脆弱性を狙った事例

以下は2022年に既知の脆弱性が狙われた事例についてまとめたものです。

年月製品事例
2022/1SonicWall SMA100シリーズ*2
(VPN製品)
2021年12月に公開された既知の脆弱性が概念実証コード(PoC)を含む詳細な情報が公開されたことにより、攻撃が活発化。
2022/2eコマースプラットフォームMagento 1*3
(ECプラットフォーム)
Magento 1に存在するQuickViewプラグインの既知の脆弱性を悪用した大規模な攻撃を検知。いまだ数千ものeコマースが、2020年6月30日にサポートが終了しているMagento 1で稼働している背景を利用したと考えられる。
2022/3リモートキーレスシステム*4
(自動車)
既に「CVE-2019-20626」「CVE-2021-46145」で指摘されているが、一部の古い車種(日本車)において引き続きこのリモートキーレスシステムが利用されていたことに起因する。
2022/4Apache Struts 2*5
(Webサーバ)
2020年12月に公開された脆弱性「CVE-2020-17530」の修正が不十分であったことに起因する。
2022/5VMware製品*6
(仮想化ツール)
2022年4月に複数の脆弱性の対策版がリリースされているが、リリースから48時間とたたず、「CVE-2022-22954」「CVE-2022-22960」の悪用が確認される。
2022/9Python*7
(プログラム言語)
2007年に存在が判明していたものの修正されずにいた脆弱性「CVE-2007-4559」が、15年越しに世界中で悪用されていることが報告される。
2022/12FortiOS*8
(VPN製品)
SSL-VPN製品における深刻な脆弱性は過去にも攻撃で悪用されている。リモートワークの拡大により今後も広まることが懸念される。

ベンダーや企業が公開している脆弱性をもつソフトウェアなどの情報や修正プログラムを解析することで、脆弱性を悪用するヒントを容易に得ることができます。さらに、当該脆弱性を攻撃するためのツールがダークウェブなどで売買されるケースもあります。こうしたことから、修正プログラムが公開される前に行われるゼロデイ攻撃(※)と比べると、攻撃者自ら脆弱性を調査する必要がないため、攻撃の難易度が低いといえます。

ゼロデイ攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
IPA情報セキュリティ10大脅威にみるセキュリティリスク ―内在する脆弱性を悪用したゼロデイ攻撃とは―

Webサイトは最大の攻撃ベクター

エシカルハッカー(※)へのアンケート調査によるとエシカルハッカーの95%はWebサイトが最大の攻撃ベクターだと考えているとの回答でしたと報告されています。

エシカルハッカー・・・倫理観を持ち、高度なハッキング技術や高い知識を善良な目的のために活用するハッカーのこと。ホワイトハッカーとも呼ばれている。

また、弊社で提供しているSQAT脆弱性診断サービスにて、2019年上半期~2022年上半期に診断を実施した延べ3,762社28,179システムのうち、脆弱性が検出されたシステムはWebシステムにおいて毎年8割以上、ネットワークシステム(プラットフォーム)において5割を占めています。

BBSecシステム脆弱性診断 脆弱性検出率(Web/NW)
図:診断結果にみる情報セキュリティの現状~2022年上半期 診断結果分析~
 (SQAT® Security Report 2022-2023年 秋冬号)

脆弱性が存在するOS・アプリケーションを使用しているといったバージョン管理に関する脆弱性が高い割合で検出されているほか、クロスサイトスクリプディングやSQLインジェクションのようなインジェクション攻撃を受ける恐れのあるリスクレベルの高い脆弱性も多くみられます。

Webサイトは狙われやすい傾向にあるだけではなく、実際に様々な危険に晒されています。攻撃手法の進化や、経年によって攻撃のための製品解析が進んでしまうといった事情により、日々新たな脆弱性が検出され続けています。そういった脆弱性に対しての備えとして、適時・適切な対応を継続して行う必要があります。

定期的な診断実施を可能にする脆弱性診断ツールの活用

JPCERT/CCが発表している「Webサイトへのサイバー攻撃に備えて」によると、Webアプリケーションのセキュリティ診断に関しては、機能追加などの変更が行われたときはもちろんのこと、それ以外でも「1年に1回程度」実施することが推奨されています。

しかし、自組織内でセキュリティ対策を行うには、設備投資や人材育成に工数やコストがかかるといった不安を抱える企業も少なくありません。そこで定期的な診断の実施を後押しするものとして脆弱性診断ツールの活用をオススメします。脆弱性診断ツール活用のメリットには以下のようなものがあります。

1. 商用またはセキュリティベンダーの自社開発した診断ツールを活用するため、
  ソフトウェアインストールなどの新規設備投資が不要
2. 開発段階から診断をすることにより、後工程における手戻り発生を防ぎ、
  セキュリティコストの削減が可能
3. 手動診断と比較すると安価なため、定期的に簡易診断が可能
4. 診断結果を定点観測することで、即時に適切な対応をすることが可能

ただし、脆弱性の詳細やリスク判定に関してはセキュリティ専門家の知見が必要不可欠です。自組織に専門家がいるか、セキュリティ専門企業のサポートを受けられるか、といった点はツール選定の際に注意が必要です。

継続的なセキュリティ対策を実現するために

脆弱性診断は一度実施したらそれで終わりというものではありません。脆弱性は日々増加し続けるため、診断実施後に適切なセキュリティ対策を行っていたとしても形を変えて自組織のシステムにサイバー攻撃を行う可能性は十分にあります。顧客が安心してサービスを利用し続けられるためにも定期的な診断を実施し、洗い出されたセキュリティ上の問題に優先順位をつけて、ひとつひとつ対処することが重要です。診断ツールの検討に関しては自組織の環境やシステム特性に合わせたものを選定し、継続的なセキュリティ対策に有効活用できるようにしましょう。

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今、危険な脆弱性とその対策
―2021年上半期の診断データや攻撃事例より―

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キーボードと虫眼鏡

私たちの生活を支えるWebサイトは、攻撃者からみると、個人情報や機密情報などデータの宝庫であり、魅力的なターゲットになってしまっています。その理由は、Webサイトの多くに脆弱性が存在していることがあるためです。

本記事では、診断会社として多くの企業・組織への診断実績がある弊社の視点で、2021年上半期の診断結果、また攻撃事例などを振り返り、脆弱性対策に有効な手段を考えます。

Webサイトはなぜ狙われる?
―そこに脆弱性があるから

ハッカーがターゲットにしている対象のグラフデータ(The 2021 Hacker Reportより)

サイバー攻撃の対象は、Webサイトが最も高く、ハッカーのほとんどがWebサイトを攻撃しているといっても過言ではありません。

私たちの生活は公私共に、Webシステムに支えられており、Webサイトは個人情報や機密情報の宝庫です。そして、残念ながらWebサイトの多くには脆弱性が存在していることがあります。宝の山に脆弱性があるとなれば、悪意ある者に狙われてしまうのは当然といえます。

2021年上半期Webアプリケーション脆弱性診断結果

弊社では、様々な脆弱性診断メニューをご提供しております。その中で最もニーズの高いWebアプリケーション脆弱性診断について、2021年上半期(2021年1~6月)の結果をご紹介いたします。この半年間で14業種のべ610社、3,688システムに対して診断を行いました。

業種やシステムの大小にかかわらず、多くのWebアプリケーションになんらかの脆弱性が存在しています。検出された脆弱性をカテゴリ分けした内訳は円グラフのとおりです。

上半期診断結果脆弱カテゴリ別の円グラフ

このうち、例として、4割近くを占める「システム情報・ポリシーに関する問題」と、1割強程度ではあるものの、危険度の高い脆弱性が目立つ「入出力制御に関する問題」に分類される脆弱性の検出数をご覧ください(下記、棒グラフ参照)。

既知の脆弱性が検出されている、あるいはすでにベンダサポートが終了しているバージョンのOSやアプリケーションソフトの使用が数多く見られます。また、Webアプリケーションにおける脆弱性の代表格ともいえる「クロスサイトスクリプティング」や「SQLインジェクション」は、いまだ検出され続けているのが現状です。こうした脆弱性を放置しておくとどうなるか、実際に発生したインシデントの例を見てみましょう。

脆弱性を悪用した攻撃事例1:
既知の脆弱性が存在するWordPress

脆弱性のあるWordPressの悪用例

Webサイトの構築を便利にするCMS(Contents Management System)のうち、WordPressは世界でダントツのシェア40%以上を誇っています(CMS不使用は約35%、その他のCMSはすべて一桁パーセント以下のシェアです)*9。CMSの代名詞といえるWordPressですが、その分サイバー攻撃者の注目度も高く、脆弱性の発見とこれに対応したアップグレードを常に繰り返しています。

2021年に入ってからも10件以上の脆弱性が報告*2されているほか、国内でもWordPressを最新バージョンにアップデートしていなかったことで不正アクセスを受けたとの報告*3が上がっています。

脆弱性を悪用した攻撃事例2:SQLインジェクション

その対策が広く知れ渡っている今でも、「SQLインジェクション」は診断結果の中に比較的検出される項目です。

出典:IPA「安全なウェブサイトの作り方 – 1.1 SQLインジェクション
SQLインジェクション攻撃による国内情報流出事例

2021年も、実際にSQLインジェクション攻撃を受けたという報告*4が複数上がっています。

「SQLインジェクション」や「クロスサイトスクリプティング」のような、比較的知られている脆弱性に起因するインシデント事例は、企業のセキュリティ対策姿勢が疑われる結果につながり、インシデントによる直接的な被害だけでは済まない、信用の失墜やブランドイメージの低下といった大きな痛手を受ける恐れがあります。

最も危険な脆弱性ランキング

最も悪用された脆弱性ワースト30

脆弱性対策は世界的な問題です。2021年7月、アメリカ、イギリス、オーストラリア各国のセキュリティ機関が、共同で「Top Routinely Exploited Vulnerabilities(最も悪用されている脆弱性)」の30件を発表しました。

出典:https://us-cert.cisa.gov/ncas/alerts/aa21-209aより弊社作成

2021年にかけてサイバー攻撃グループが悪用していることが示唆されているものが多く含まれており、いまだ世界中の多くの企業や組織では、前述の脆弱性に対して未対応であることがうかがえます。

上記一覧からおわかりのとおり、ほとんどが、業務利用されているおなじみの製品群です。リモートワークの促進やクラウドシフトといったIT環境の変化が、既知の脆弱性に悪用する価値を与えているのです。各セキュリティ機関は、特にVPN製品に関する脆弱性に警鐘を鳴らしています。

思い当たる製品がある場合は、まずは侵害の痕跡(IoC:Indicator of Compromise)があるか確認し、必要に応じて対処する必要があります。そして可能な限り早急にパッチを適用する必要があります。いずれの製品にもセキュリティパッチがリリースされています。

最も危険なソフトウェアエラー 「CWE TOP25」2021年版

危険な脆弱性に関する情報として、米MITRE社より、「2021 CWE Top 25 Most Dangerous Software Weaknesses(最も危険なソフトウェアエラーTop25 2021年版)」も発表されています。CWE(Common Weakness Enumeration)は、ソフトウェアにおける共通脆弱性分類です。脆弱性項目ごとに一意のIDが決められ、そのタイプごとに体系化されています。

出典:https://cwe.mitre.org/top25/archive/2021/2021_cwe_top25.html より弊社翻訳

前年度と比較して順位を上げている項目については、特に脅威が高まっていると言えます。自組織のセキュリティの弱点と関係しているかといった分析や優先的に対策すべき項目の検討などに役立つ情報です。

脆弱性の対策に有効な手段とは?

多くのWebサイトに脆弱性が存在していることについて述べてまいりました。脆弱性の放置は、サイバー攻撃を誘発し、事業活動に甚大な影響を及ぼしかねません。たとえサイバー攻撃をすべて防ぎきることはできないにしても、セキュリティ対策をどのように講じてきたかという姿勢が問われる時代です。基本的なセキュリティ対策を怠っていたばかりに、大きく信頼を損ねる結果とならないようにしたいものです。

Webサイトにおける脆弱性の有無を確認するには、脆弱性診断が最も有効な手段です。自組織のセキュリティ状態を把握して、リスクを可視化することが、セキュリティ対策の第一歩となります。脆弱性診断を効果的に行うコツは、「システムライフサイクルに応じて」「定期的に」です。脆弱性の状況は、新規リリース時や改修時ばかりでなく、時宜に応じて変化することに注意が必要です。

変化という意味では、脆弱性情報のトレンドを把握するのも重要です。この点、様々なセキュリティ機関やセキュリティベンダなどが情報配信を行っていますので、最新状況のキャッチアップにご活用ください。

弊社では昨年8月に「テレワーク時代のセキュリティ情報の集め方」と題したウェビナーで、情報収集の仕方やソースリストのご紹介をしておりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。

リスク評価、セキュリティ対策検討の初動である、脆弱性診断および脆弱性情報の収集が、健全な事業活動継続の実現に寄与します。

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