サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

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サイバー攻撃による被害は、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。ランサムウェア被害を中心に、日本企業が被るサイバー攻撃の被害コストは平均で2億円規模に達しています。復旧費用や身代金だけでなく、業務停止による機会損失、信用低下、取引停止など、被害は連鎖的に拡大します。本記事では、最新データと事例をもとに、企業経営に直結するサイバー攻撃の被害コストの実態を整理し、なぜ今リスク評価が欠かせないのかを解説します。

サイバー攻撃は「ITトラブル」ではなく財務リスク

現在私たちを取り巻くビジネス環境において、「サイバー攻撃」という言葉の響きは劇的に変化しました。かつて、それはIT部門のサーバールームの中だけで処理される技術的なトラブルであり、ファイアウォールやウイルス対策ソフトを導入していれば済む「対岸の火事」でした。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の隅々まで浸透した今、その認識は致命的な時代錯誤と言わざるを得ません。サイバー攻撃は、もはやシステムのエラーではなく、明日の決算書を赤字に転落させ、積み上げてきたブランドを一瞬で崩壊させる、極めて現実的な「財務リスク」へと変貌を遂げたのです。

多くの経営者が「セキュリティ対策はコストだ」と嘆きます。確かに、何も起きなければ利益を生まない投資に見えるかもしれません。しかし、ひとたびセキュリティインシデントが発生した際に企業が支払うことになるコストの総額は、事前対策費の数十倍、場合によっては数百倍に膨れ上がるのが現実です。本記事では、感情的な脅威論ではなく、最新の統計データと実際の事例に基づいた数字を用いて、企業が直面しているリスクの正体を解き明かしていきます。なぜ、セキュリティベンダーやコンサルタントが口を酸っぱくしてサイバー攻撃対策とリスク評価の重要性を説くのか。その答えは、これから提示する衝撃的な金額の中にあります。

ランサムウェア被害額の現実:平均2億2千万円

まず、私たちが直視しなければならないのは、具体的な金銭的被害の規模です。セキュリティベンダー大手のトレンドマイクロ社が2024年末に公表した調査データ*1によると、過去3年間において日本国内の組織が経験したサイバー攻撃による累積被害額は、平均で約1億7千万円に達しています。これだけでも中小企業の年間利益を吹き飛ばすには十分な金額ですが、さらに深刻なのは、データを暗号化し身代金を要求するランサムウェアによる被害に限定した場合です。この場合、被害総額の平均は約2億2千万円にまで跳ね上がります。

この2億円という数字を聞いて、多くの経営者は耳を疑うかもしれません。「たかがウイルスの除去に、なぜビルが建つほどの金がかかるのか」と。しかし、ここには大きな誤解があります。サイバー攻撃における被害とコストの構造は、氷山のようなものです。海面にみえている身代金の支払いやシステムの初期復旧費用は、全体の一部に過ぎません。水面下には、より巨大で複雑なコストが潜んでいます。

例えば、攻撃の侵入経路や被害範囲を特定するためのデジタルフォレンジック調査費用です。高度な専門知識を持つスペシャリストを数週間拘束するこの調査だけで、多額の請求書が届くことはめずらしくありません。さらに、個人情報が漏洩した場合の対応コストも莫大です。顧客への詫び状の発送、専用コールセンターの設置、見舞金の支払い、そして法的責任を問われた際の弁護士費用や損害賠償金―これらが積み重なった結果が、2億円という冷酷な数字なのです。

2億円という金額は、多くの中堅・中小企業にとって、単なる特別損失として処理できる範囲を遥かに超えており、場合によっては事業継続そのものを断念せざるを得ない致命傷となり得ます。「うちは盗まれて困るような重要データはないから大丈夫だ」と語る経営者にも、警鐘を鳴らさなければなりません。近年の攻撃者が狙っているのは、情報の機密性(データの価値)だけではありません。彼らのビジネスモデルは、業務の可用性(システムが動いていること)を人質に取ることにシフトしています。あなたの会社のデータに市場価値がなくても、そのデータが使えなくなることで業務が止まり、あなたが困るなら、そこには「身代金を払う動機」が生まれます。つまり、事業活動を行っているすべての組織が、例外なく標的とされているのです。

こうした被害は、運任せで発生するものではありません。多くの場合、事前のリスク評価によって発生確率や影響度を見積もり、優先的に対策すべきポイントを絞り込むことが可能です。
「サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践」

最大の盲点は業務停止損害(機会損失)

被害コストを算出する際、我々はつい、財布から出ていく現金(キャッシュアウト)だけに目を奪われがちです。しかし、真に恐ろしいのは機会損失という形で見えないコストが積み上がっていく業務停止損害です。

前述したトレンドマイクロ社による2024年の調査データによれば、ランサムウェア攻撃を受けた際の平均的な業務停止期間は、約10.2日にも及ぶことが明らかになっています。10日間、会社の機能が完全に停止する状況を具体的に想像してみましょう。まず、受発注システムが画面にロック画面を表示したまま動かなくなります。倉庫の在庫データにはアクセスできず、どの商品をどこへ出荷すべきかわからなくなります。メールサーバーもダウンし、取引先との連絡手段は個人の携帯電話だけになります。製造ラインの制御システムが感染していれば、工場の稼働音は止まり、静寂が支配することになるでしょう。この10日間の空白が生み出すサイバー攻撃の被害とコストは計り知れません。本来得られるはずだった売上高が消滅するだけではありません。納期遅延によって取引先からの信頼を失い、契約解除や損害賠償請求を受けるリスクも発生します。

さらに、腐敗しやすい商品を扱う食品業界や、ジャストインタイムで部品を供給する製造業界においては、たった数日の停止がサプライチェーン全体を麻痺させ、億単位のペナルティに発展することさえあります。実際に、九州地方の地域密着型スーパーマーケットチェーンでは、システム障害により全店舗が数日間にわたって臨時休業に追い込まれる事態が発生しました。新鮮な食材を求める地域住民の期待を裏切り、廃棄処分となる商品の山を築いてしまったこの事例は、サイバー攻撃が単なるデジタル空間の出来事ではなく、物理的な生活インフラを破壊する脅威であることを如実に物語っています。

また、復旧後も影響は長く尾を引きます。「あの会社はセキュリティが甘い」という評判は、SNS時代においては瞬く間に拡散し、デジタルタトゥーとして残り続けます。新規顧客の獲得コストは高騰し、既存顧客の離脱を食い止めるためのマーケティング費用も嵩みます。上場企業であれば、インシデント公表直後の株価下落による時価総額の毀損も、広義の被害コストに含まれるでしょう。このように、業務停止が引き起こす連鎖的な損害は、表面的な復旧費用の数倍、時には数十倍に膨れ上がるのです。

「中小企業は関係ない」という神話の崩壊とサプライチェーンリスク

「サイバー攻撃は大企業が狙われるもので、我々のような中小企業は関係ない。」―2025年において、この認識は完全に誤った神話であり、極めて危険なバイアスであると断言できます。警察庁が公表する「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によれば、ランサムウェア被害の報告件数のうち、実に約6割が中小企業で占められているのが実情です。なぜ、資金力のある大企業ではなく、中小企業が狙われるのでしょうか。そこには、攻撃者側の明確な戦略的合理性が存在します。

第一の理由は、サプライチェーン攻撃の踏み台としての利用です。セキュリティ予算が潤沢で、強固な防御壁を築いている大企業を正面から突破するのは、攻撃者にとっても骨の折れる作業です。そこで彼らは、大企業の取引先でありながら、セキュリティ対策が比較的脆弱な中小企業に狙いを定めます。まず中小企業のネットワークに侵入し、そこから正規の取引メールを装ってマルウェアを送りつけたり、VPN(仮想専用線)接続を通じて大企業の本丸へ横移動したりするのです。もしあなたの会社が踏み台にされ、取引先の大企業に被害を与えてしまった場合、その損害賠償請求額は自社の存続を揺るがす規模になるでしょう。そして何より、長年築き上げてきたビジネスパートナーとしての信用は地に落ち、取引停止という最悪の結末を招きかねません。

第二の理由は、攻撃の自動化と無差別化です。攻撃者はAIを駆使したツールを用いて、インターネット上の脆弱なサーバーを24時間365日、休むことなくスキャンし続けています。そこに大企業か中小企業か、という選別はありません。カギの開いているドアがあれば、誰の家であろうと入ってくる空き巣と同じです。セキュリティパッチ(修正プログラム)の適用が遅れているVPN機器や、パスワード設定が甘いリモートデスクトップ機能などは、格好の餌食となります。

“数打ちゃ当たる”戦法で無差別にばら撒かれたウイルスに感染し、暗号化されたデータを人質に取られてしまう。―中小企業における平均被害額も数千万円規模に達することがありますが、資金的体力の乏しい企業にとって、このサイバー攻撃の被害とコストのインパクトは大企業以上に甚大です。さらに、中小企業では「ひとり情シス」や「兼任担当者」が一般的で、セキュリティの専門家が不在であるケースが大半です。日々の業務に追われ、サイバー攻撃 リスク評価を行う余裕もないまま放置されたシステムは、攻撃者にとって宝の山に見えていることでしょう。攻撃者は、あなたが「自分は狙われない」と思っているその隙を、虎視眈々と狙っているのです。

数値化しづらい“人的コスト”が復旧を遅らせる

金銭的なコストや信用の失墜に加え、もう一つ忘れてはならないのが、現場で対応にあたる従業員の疲弊という「人的コスト」です。インシデントが発生した瞬間から、IT担当者や経営幹部は不眠不休の対応を強いられます。原因究明、システム復旧、関係各所への連絡、殺到する問い合わせ対応。極度のプレッシャーの中で行われる意思決定の連続は、担当者のメンタルヘルスを確実に蝕んでいきます。

さらに、事態が収束した後も現場には深い爪痕が残ります。「自分のせいで会社に損害を与えてしまった」という自責の念から、優秀なエンジニアが退職してしまうケースも後を絶ちません。また、再発防止策として導入される厳格すぎるセキュリティルールが、日々の業務効率を低下させ、従業員のモチベーションを下げる要因となることもあります。このように、サイバー攻撃は組織の「人」という資産をも毀損し、長期的な成長力を奪っていくのです。これもまた、決算書には表れない重大なサイバー攻撃の被害とコストの一部と言えるでしょう。

サイバー攻撃リスク評価で何を可視化するのか

ここまで述べてきたように、サイバー攻撃による被害は、もはや運が悪かったで済ませられる事故ではなく、現代のビジネスを行う上で避けては通れない発生しうる経営コストとして、あらかじめ計算に含めておくべき確定的なリスクです。平均2億2千万円という衝撃的な被害額は、適切なセキュリティ投資を怠った場合に市場から請求される高すぎる授業料と言い換えることもできるでしょう。

では、この破滅的なコストを回避し、持続可能な経営を行うためにはどうすればよいのでしょうか。その唯一の解は、漠然とした不安を具体的なアクションに変えることにあります。すなわち、自社のどこに弱点があり、どのような脅威に晒されているのかを客観的に可視化するリスク評価の実施です。「敵を知り、己を知る」。孫子の兵法にも通じるこのアプローチこそが、限られた予算で最大の防御効果を生み出すための出発点となります。


サイバー攻撃による被害コストは決して偶発的なものではなく、事前に把握・管理できるリスクでもあります。では、こうした被害を未然に防ぐために、企業はどこから手を付けるべきなのでしょうか。次の記事では、サイバー攻撃リスク評価の考え方と具体的な進め方について、実務視点で詳しく解説します。
「サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践」

【参考情報】


サイバーインシデント緊急対応

セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

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最短7営業日で診断完了 — 脆弱性診断サービス「SQAT® with Swift Delivery」で企業セキュリティを強化

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デジタル化が進む今、企業を狙うサイバー攻撃はかつてないほど高度化、巧妙化しています。 法規制やコンプライアンスの強化も相まって、「自社システムの安全性」は経営リスクそのもの。 そこで注目されるのが、短期間でセキュリティの脆弱性を“洗い出す”脆弱性診断サービスです。 本記事では、最短7営業日で診断可能な「SQAT® with Swift Delivery」について、その特長と導入メリットをご紹介します。

なぜ今、企業に「脆弱性診断」が求められているのか

サイバー攻撃の高度化 — 増え続ける脅威

企業を狙う攻撃は、従来のフィッシングやマルウェアにとどまりません。サプライチェーンを狙った攻撃、ゼロデイ攻撃、AI を悪用したフィッシングなど、手口は年々進化。これにより、既存の防御だけでは不十分なケースが増えています。

製造業

  • 製造業へのサイバー攻撃が前年比で 30%増加。週あたり平均攻撃件数が 1,585件という調査報告あり
  • ランサムウェアの被害件数でも産業別で「製造業」が上位に定着
  • 事例:日本の大手飲料メーカー「アサヒグループ」でも Qilin ランサムグループによる攻撃があり、生産ラインに影響。

参考:Check Point Research「The State of Ransomware Q3 2025」(https://research.checkpoint.com/2025/the-state-of-ransomware-q3-2025/

法規制とコンプライアンス対応の強化

個人情報保護法の改正や国際的なデータ保護規制の拡大により、企業には厳格なセキュリティ対策と定期的な診断が求められています。これを怠ると、情報漏えいや監査リスク、企業イメージの毀損につながる可能性があります。

事業継続性と企業信用を守るためのリスク管理

万が一のインシデントが発生した際、対応が遅れれば復旧までに大きな時間とコストがかかります。脆弱性診断で潜在的リスクを洗い出し、事前に対策することは、「ビジネスの継続性」と「顧客・取引先の信頼維持」に直結します。

多くの企業が抱える「脆弱性管理」の課題

多くの企業が抱える脆弱性管理の課題は、次の3点に集約されます。

  1. 脆弱性の発見遅延:新規脆弱性の平均発見所要時間は205日(出典:Ponemon Institute 2023 Vulnerability Report)、重大な脆弱性の見落とし率は約27%(出典:Cybersecurity Ventures
  2. 対応の遅延:脆弱性の発見から修正までの平均所要時間は67日(出典:Verizon Data Breach Investigations Report 2023)、クリティカルな脆弱性の放置率は約21%(出典:Gartner Security Trends 2023
  3. リソースの不足:セキュリティ人材不足率は約64%(出典:ISC2「Cybersecurity Workforce Study 2023」)、予算不足を報告する企業は68%に上る(出典:Deloitte Cyber Risk Report 2023

事例から見る被害の実態

事例1: 大手小売業A社
被害額:約8.5億円。原因は既知の脆弱性の放置で、顧客情報320万件が流出。

事例2: 製造業B社
被害額:約12億円。新規サービス展開時の脆弱性を突かれ、生産ラインが14日間停止。

「SQAT® with Swift Delivery」が選ばれる理由

最短7営業日で診断結果をスピード提供

通常の診断サービスでは数週間〜数ヶ月かかることも多いところ、SQAT® with Swift Delivery なら最短 7営業日 で報告書を納品。タイムリーな意思決定と迅速な対策を可能にします。

明確かつ分かりやすい料金体系

診断日数に応じた料金設定で、予算も立てやすく、コスト管理が容易。セキュリティ対策費用の導入障壁を下げます。

60,000件超の診断実績と信頼性

多様な業種・規模の企業での診断実績をもとに、高い汎用性と信頼性を確保。初めて脆弱性診断を導入する企業にも安心感があります。

わかりやすい報告書で改善対応がスムーズ

専門用語をできるだけ排し、改修のための情報を整理・整理。技術部門だけでなく、経営層や広報部門にも説明しやすい形で報告します。

サービスご提供の流れ

  1. 初期相談:要件をヒアリングし、基点URLを基に診断の準備を開始。スケジュール確定が重視される
  2. 診断の実施:優先順位をつけて重要な部分から診断を行い、全体を効率よくカバー
  3. 報告書の提出:診断終了から2営業日以内に提出
  4. フォローアップ:報告書の内容についての質問対応を行い、次の対策につなげるサポートを実施

導入企業が期待できる効果

  • セキュリティ強化による情報漏えい/不正アクセスの防止
  • 法規制・コンプライアンスへの対応と監査対策の効率化
  • システム障害やインシデント発生時の影響最小化 — 事業継続性の確保
  • 顧客や取引先、ステークホルダーからの信頼維持/向上

まとめ

サイバー攻撃の脅威が増す現代において、ただ “守る” だけではもはや不十分。スピーディで高品質な診断を実行できる SQAT® with Swift Delivery のような、短納期 × 高信頼の脆弱性診断サービスが、企業の安全性と成長を支える鍵となります。サイバー攻撃の脅威が増す中、迅速かつ効果的な脆弱性診断は企業の存続に不可欠です。

今こそ、自社のセキュリティ体制を見直し、“攻撃される前” の対策を。


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DXとセキュリティ

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今回は、デジタル技術を活用して経済にイノベーションをもたらすDXと、そのセキュリティについて考えます。「DX」と「IT化」との違いや、日本企業のDXを阻害すると考えられている「2025年の崖」とは何か、そして、政府によるDX推進のための補助金などを紹介します。

また、DXと歩みを同じくするように進化を続けるサイバー犯罪に対応するための心構えについても、今回は考えてみたいと思います。

DXとは

DXは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。Trans(トランス)には「交差する」という意味があり、「Trans」を「X」と表記することがあるため(「X」は線が交差しているから)、「DT」でなく「DX」と略されます。

DXとは、デジタル技術を活用してビジネスやサービスを変革し、イノベーションを推進することです。

単なる「IT化」と「DX」の違い

これまでの「IT化」は、既存のビジネスにITを導入することによって、「効率化」「省力化」「高速化」を行いました。既存のビジネスプロセスや商習慣は大きく変わることなく、IT技術はあくまで「手間を減らすため」「少ない人数でできるようにするため」「以前よりも速くするため」に奉仕する存在でした。

一方でDXは、従来の方法を単に強化してサポートするだけではなく、デジタル技術が生み出すイノベーションによって、全く新しいビジネスモデルを生み出す点が異なります。

レガシーに足を取られて前進できない~DXを阻む「2025年の崖」とは

経済産業省は2018年、「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」と題した報告書を公開し、日本経済のDXを阻害する要因に対して警鐘を鳴らしました。「2025年の崖」とは、過去の「IT化」によって生み出されたシステムのメンテナンスに予算と人員がとられて、日本経済が停滞してしまうという予測です。

森喜朗首相(当時)によって「IT革命」が叫ばれた西暦2000年頃、NHFを代表とするシステムインテグレータ企業は、日本企業の複雑かつときに奇怪にすら見えたビジネス慣習に、いかに寄り添って微細にカスタマイズをして納品するか、その腕前を競い合いました。こうして複雑にカスタマイズされたシステムが年を経て技術が時代遅れになり、ブラックボックス化して機能追加もままならなくなり、管理も属人化してしまいました。

経産省のレポートでは、こうした新しい価値を生まないシステムの維持のために、IT投資の9割が使われ、それによって日本経済が停滞すると予測しています。まさに砂漠に水を撒き続けるような状態です。

技術的な負債となり得るIT投資

(出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」)

あなたの会社が今やろうとしていることは、このようなIT投資になっていないでしょうか。DXを進める際に注意したいポイントです。

DXの成功事例、Uberは何が革新的だったのか

配車サービスのUberは、DXの成功事例のひとつといえるでしょう。乗り合いサービスを提供したいドライバーと利用者をマッチングするアプリは、世界各国で使われています。GPSと地図、マッチングと評価の機能、Uberが用いているのは特段新しい技術ではありません。Uberが行ったのは、新しいビジネスモデルの創出なのです。

一方でUberは、ロンドンやニューヨークをはじめとする世界中で、タクシー業界を壊滅させるサービスとして猛反発を受けています。既存の業界やビジネスプロセス、商習慣に対して、ときに破壊的インパクトを与えるのもDXの特徴のひとつといえるかもしれません。

2025年の崖にも、DXによる解決方法はきっとあるはずです。

税金や補助金など、DX優遇あれこれ

人口減少社会に突入した日本経済の起爆剤として、政府はDXを強力に推進しています。2020年10月には、大手経済紙が、2021年度の税制改正で、DXを進める企業への税制優遇策を政府が検討していると報じました。

税制優遇は詳細がまだ明らかにはなっていませんが、その他にも「IT導入補助金」「DX認定制度」など、DXを推進するためのさまざまな施策が政府の後押しで行われています。あなたの会社でも利用できるものがあるかどうか、一度調べてみてもいいかもしれません。なお、2020年度の「IT導入補助金」交付申請締め切りは、2020年12月18日17時です。

革新が進むサイバー攻撃

残念ながら、サイバー攻撃もまた、DXによってイノベーションが進んでいます。これまでもサイバー攻撃は進化を続けてきましたが、サイバー犯罪にも質的変化や革新が起こりました。

たとえばランサムウェアは、1989年に初めて発見され、長らくパッとしないサイバー犯罪のひとつとして存在し続けていました。しかし2013年、身代金受け取りにビットコイン等の仮想通貨を用いるというビジネスモデルの刷新によって、一転「収益を生むサイバー犯罪」に変わりました。近年、暗号化して人質にしたデータの復号だけでなく、データを一般公開すると脅し二度金銭を要求したり、大事なデータをオークションで販売するなど、ランサムウェアは悪質化の一途を辿っています。

「DX with Cybersecurity」、SQAT.jpが考える3つのキーワード

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は、報告書「サイバーセキュリティ2020 」の中で、「DX with Cybersecurity」として「サイバーセキュリティ対応能力の効果・効率を向上させるためにDXを推進する」と記載しています。

なかなか難しい「DXとセキュリティ」というテーマではありますが、SQAT.jpとしてあえて3つのキーワードを挙げてみましょう。

1.担当者だけではない

デジタル技術そのものが新しい価値と利益を生み出すDXでは、セキュリティは情報システム部門やセキュリティ部門、あるいは品質管理部門や経営企画だけが担えばよいものではなく、すべての部門が自分事として取り組む必要があります。事業会社であるなら、たとえ間接部門に所属していても全部署の人が利益を考えて活動しなければならないことと同じように、全社員がセキュリティを考えて動く必要があります。

2.能動的セキュリティ

これまでセキュリティは、攻撃を未然に防ぐよう対策を行い、万一事故が発生したらそれを受けて対応するのが常でした。しかしこれからのDX時代は違います。企画段階からセキュリティバイデザインで要件定義を行い、将来脆弱性を生まないように、コード診断を行いながらDevSecOpsで開発をスピーディに進めるなど、先手先手でセキュリティの試みを能動的に行うようになるでしょう。「シフトレフト」があたりまえになって、その言葉すらなくなるかもしれません。

3.持続・継続性

DXによって生み出されるサービスの多くでは、「新時代の石油」と呼ばれる「データ」、つまり、位置情報や決済情報、健康情報等と結びついた個人情報が、渦となって集積することになるでしょう。セキュリティを担保する活動を定常的に行い続けることが、DX時代の企業の新しい存在意義のひとつになると考えられます。そこでは、クラウドの活用や自動化の推進、優秀な人材の確保が欠かせません。また、SQAT.jpが提唱してきた「セキュリティのかかりつけ医」的な会社との関係を構築することも鍵になるのではないでしょうか。

DX時代もセキュリティの本質は変わらない

DX時代、セキュリティ業務はその対象をIoTやAPIにまで拡大し、その方法も様変わりしていくことが予想されます。しかし、脆弱性診断で隠れたセキュリティホールを探したり、脆弱性が報告されたらすばやくパッチをあてたり、日々パスワード管理を行ったりするなど、安全を守るための活動を日々積み重ねていくことの重要性に変わりはありません。

DXの時代はむしろ、全社にセキュリティの重要性が認識され、受け身だった仕事に能動的な側面が増えることで、セキュリティの業務の価値がいっそう高まっていくでしょう。

まとめ

  • DXとは、デジタル技術を活用してビジネスにイノベーションをもたらすことです。
  • 既存のビジネスにITを導入するだけの「IT化」とDXは異なります。
  • 複雑にカスタマイズされてブラックボックス化した既存システムは企業のDXを阻害します。
  • 政府は優遇税制や補助金などを用意してDXを推進しています。
  • サイバー犯罪もまた革新と進化を続けています。
  • しかしDX時代とはいえ、セキュリティ業務の本質は何ら変わるものではありません。

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APIのセキュリティ脅威とは

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APIとは、ソフトウェアが相互に機能やデータを利用しあうための仕組みで、機能や開発効率を向上させるなどのメリットがあります。しかしAPIにもセキュリティ上のリスクがあり、セキュリティ対策を怠ったことによる被害も報告されています。今回は、APIの安全な利活用について解説します。

「API」とは

「API」とは「Application Programming Interface」の略で、複数のソフトウェアが相互に機能を利用しあうために設けられたインターフェースを意味します。コンピュータプログラムやWebサービスなどをつないで連携させ、さまざまな機能やデータを共有可能にすることで、従来にない価値を生み出せるという点が大きなメリットといわれています。例えば、あるアプリが、特定の機能を持つAPIを利用することで、それまでなかったサービスをユーザに提供できるようになります。

APIのなかでも広く利用されているのがWebに公開されている「Web API」で、多数のWebサービスやプラットフォーマーが各社のWeb APIを公開しています。身近な例としては、位置情報ゲームで地図情報サービスが提供するAPIを利用するケースなどがあります。

APIの積極的な活用は、IoTや企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の実践に不可欠と言っても大げさではありません。さまざまなアプリやWebサービスがAPIを通じて相互接続することで、利用者の利便性の向上、経済の活性化など、単独では実現できなかった価値を生み出せるようになります。こうした仕組みのことを「APIエコノミー」と呼ぶこともあります。

あなたの身近にあるAPIの活用例

Webサービスなどを利用しているときに「Facebookでログイン」「Googleでログイン」などのボタンを見たことはありませんか? Facebook、Google、Twitterなどで設定したアカウントを使って、別のECサイトなどにログインする「ソーシャルログイン」は、各サービスが公開するAPIを使って実現されています。また、企業などのWebサイトで地図情報がGoogle Mapから呼び出されて掲載されている、あの仕組みもAPIによるものです。

API活用のメリット

APIを活用すれば、個別の機能を各サービスで一から開発する必要がなくなるため、開発効率が上がり、コストを抑えることができます。機能を提供する側も、機能を使ってもらうことで自社のブランド力の向上、広告収入といった経済的利益を得られます。また、前出の「ソーシャルログイン」などでは、独自のログイン用プログラムを各企業がそれぞれ開発する場合に比べ、一定のセキュリティ水準を確保できるという効果も期待できます。

Web APIはWebアプリケーションでどう使われるか

ここで、「Web API」はいわゆる「Webアプリケーション」でどう使われるのか、少し補足しておきましょう。

WebアプリケーションがAPIを用いて地図情報だけを外部の地図サーバから取得しているケースについて考えてみます。Webサーバはブラウザからのリクエストを受け、WebアプリケーションからAPIを経由して地図情報を地図サーバにリクエストします。地図サーバはAPIを介して地図情報をWebアプリケーションへ送り返します。それを受けたWebサーバが、地図情報を含めたページ全体をユーザに返します。ユーザから見たときにはAPIを使っているかどうかはわかりませんが、このように、APIは、特定の機能のため、特定の情報のやり取りのために利用されているのです。

APIのセキュリティの重要性

Webサービスを利用するユーザ側から見れば、そこでAPIが使われているかどうかは何ら重要なことではありません。しかしサービス提供側から考えた場合、APIにもWebアプリケーション同様、脆弱性をはじめとするさまざまなセキュリティリスクが存在することを忘れてはなりません。また、近年のスマートフォンの普及により、スマートフォンのアプリケーションがAPIを直接利用するケースも増えており、今までサーバ側での利用が主流だったAPIがユーザの手元から直接利用される時代になっている点にも注意が必要です。

適切なセキュリティ対策を怠った場合のリスクは、むしろWebアプリケーションよりも深刻かもしれません。さまざまなソフトウェアと連携するというAPIの特質から、被害が自社のコントロールの及ぶ範囲を超えて広がる可能性が想定されるためです。

APIが原因で起こったサイバー攻撃被害

2018年、米大手SNSが開発者向けに公開していたAPIのバグが悪用され、ログインを行う際のカギとなるデータが盗まれる事件が発生しました。2019年には、大手配車マッチングアプリで、APIが降車時の支払い方法の検証をしないことで、無賃乗車ができてしまうバグが報告されています。

米大手SNSの事件は、多数のAPIが組み合わされることによって、バグの検出やセキュリティ上の問題の発見が遅れたり困難になったりするという問題をあらわにしたものでした。また、配車マッチングアプリのバグは、APIの入力値を検証することの重要性を改めて気づかせるものでした。

その利便性から急速に普及が進んでいるAPIですが、「事故やサイバー攻撃被害の発生によって初めて、リスクの存在を認識する」という昨今の状況を踏まえると、セキュリティに関してはまだまだ未成熟な領域であるといえるでしょう。

「OWASP API Security Top 10」などのリソースを活用して対策を立てる

こうしたサイバー攻撃被害や事故を受け、今、APIのセキュリティは最重要事項の1つとして取り組まれるようになっています。その大きな成果の1つとして、「API Security Top 10」をご紹介しましょう。これは、Webアプリケーションセキュリティに関する国際的コミュニティOWASP(Open Web Application Security Project )がAPIセキュリティに関する10大リスクを選定・解説したもので、2019年末に公開されました。API固有のセキュリティリスクを把握し、対策を講じるために役立ちます。


OWASPによるAPIセキュリティ10大リスク

1.オブジェクトレベルでの許可の不備(Broken Object Level Authorization)
2.認証の不備(Broken User Authentication)
3.データの過度な露出(Excessive Data Exposure)
4.リソースの制限、頻度の制限の不足(Lack of Resources & Rate Limiting)
5.機能レベルの認可の不備(Broken Function Level Authorization)
6.一括での割り当て(Mass Assignment)
7.不適切なセキュリティ設定(Security Misconfiguration)
8.インジェクション(Injection)
9.不適切なアセット管理(Improper Assets Management)
10.不充分なロギングとモニタリング(Insufficient Logging & Monitoring)

(翻訳:SQAT.jp 編集部)


上記のような資料は、自組織のAPIセキュリティを点検する際のガイドラインとしてぜひ活用したいものです。さらに、APIを含むWebアプリケーションに対する脆弱性診断サービスを利用して、第三者視点から、自組織のシステムで使用されているAPIのセキュリティを定期的に評価することもお勧めします。

まとめ

・APIとはアプリやWebサービスなどが相互に機能やデータを利用しあうための仕組みです。
・API活用には、開発のスピードアップやコスト削減などのメリットがあります。
・近年はスマートフォンからAPIを直接利用できるケースも増えており、利用の機会が増えています。
・APIにもセキュリティ上のリスクがありますが、様々なサービスとつながるために利用するという性質から、ひとたび事故や攻撃が起こった場合、より広い範囲に影響が及ぶ可能性があります。
・APIのセキュリティ対策を怠ったことによるサイバー攻撃被害や事故が報告されています。
・OWASP「API Security Top 10 2019」などを参考にAPIのセキュリティ強化に取り組みましょう。

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