産業制御システムセキュリティのいまとこれからを考える

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SQAT® Security Report 2020年春夏号

今やIoTシステムや制御系システムのセキュリティの問題は、経済的な損害だけでなく、社会的信用の失墜につながりうるものとの認識が一般的になりつつあります。特に、2020年はオリンピック・パラリンピックという国際的な大型イベントを控えており、大規模なサイバー攻撃が予想されます。こうしたイベント時に狙われる制御システムは、電気・ガス・水道や空港設備といったインフラ施設、石油化学プラントなどの制御システムなどがあげられます。

平成三十年4月にはサイバーセキュリティ戦略本部から「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針(第5版)」が公表されたものの、「サイバーセキュリティに係る保安規程・技術基準等」については未整備の業界も多く、省令の改正や国としてのガイドライン等の策定が急ピッチで進められています。こうした中、「IoTシステムや制御システムのセキュリティ」は、事業継続計画(BCP)において想定すべき主要なリスクの一つであり、経営責任が問われる課題として捉える必要があります。

産業制御システムのセキュリティとは? その現状

従来、製造業の制御系システムはインターネットに接続されていない独立系システム、いわゆる閉鎖系システムであるために安全と考えられてきましたが、近年状況が変化してきています。一般的に、OT(Operational Technology)のライフサイクルは10~20年と、ITに比べ長く、さらにシステムが停止することなく稼働し続けること(可用性)が最も重視されるため、装置自体の脆弱性が発見されたとしてもすぐに交換できません。パッチを当てるにしても操業を計画的に停止する必要があることなどから、ファームウェアやエンベデッドOS(産業用機械などに内蔵されるコンピュータシステムを制御するためのOS)のアップデートにUSBを使用するケースも少なくありません。しかし検疫体制が甘く、そこから感染してしまったという事例もあります。
さらに最近、利便性を考え制御系システムでもエンベデッドOSとしてWindowsやLinuxを採用されることが増えてきましたが、それらの端末がインターネットに接続されていることから、標的型攻撃などの脅威にさらされる機会が増えるという皮肉な結果を生んでいます(図1参照)。

図1 制御システムの進化とセキュリティ

出典:日経 xTECH EXPO オープンシアター講演資料
情報システムのようにはいかない制御システムのセキュリティ ~サイバー攻撃手法から見る制御セキュリティ対策~」IPA セキュリティセンター 福原 聡

制御システムのセキュリティと一般的な企業の情報システムとは、その対象や優先度が大きく異なり、またセキュリティの基本であるCIA(機密性・完全性・可用性)の優先度も大きく違うため、単純にWebアプリケーションやネットワークのセキュリティ対策を当てはめるわけにはいきません。特に制御システムで優先されるリスク管理項目は「人命」「環境」であり、リアルタイム性も求められるのが大きな特徴です(表1参照)。

表 1 産業制御システムと情報システムの違い

制御システムのインシデントでは2017年に起きたランサムウェア「WannaCry」が記憶に新しいでしょう。政府・病院・工場などのシステムに侵入し、コンピュータのストレージが暗号化されて身代金を要求された事件です。また、2019年にはランサムウェア「LockerGoga」により世界40ヶ国のコンピュータがサイバー攻撃を受け、ノルウェーのアルミ生産会社では、生産システムとオフィスITシステムが感染したため、手動生産に切り替えての操業を余儀なくされ、生産が大幅に減速されました。同じく、2019年の7月には南アフリカのヨハネスブルグで電力会社のプリペイド供給システムがサイバー攻撃により停止し、顧客が電力を購入できなくなる事態が発生しました。

産業制御システムのセキュリティフレームワーク

前述のように、OTはライフサイクルが長く、セキュリティよりも可用性が重視されるので、制御システムのアップデートもベンダが実施することが多いのですが、最新の脆弱性情報がOT担当者とIT担当者の間でスムーズに連携されず、結果として対策が不十分になっていることが散見されます。そもそも、IoTシステムや制御システムのセキュリティはフレームワークの違いもあり、専門家の知見によるリスクアセスメントが欠かせません。

汎用的な標準・基準として、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に対してCSMS(サイバーセキュリティマネジメントシステム)と呼ばれている制御システムセキュリティ基準 IEC62443-2-1がありますが、当社では、近年のサイバー攻撃の動向や脅威を踏まえた上で、独自に開発したフレームワークを使用しています。IEC62443に加え、NIST(米国標準技術研究所)のセキュリティガイドラインであるNIST SP800-82および53、IPAのガイドラインなどをベースとしています。(図2、表2参照)

図 2 産業制御システムのセキュリティフレームワーク
表2 BBSecの産業制御システム向けリスク評価項目例

事業継続のためにできること

冒頭にあげた「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針(第5版)」において、定期的な情報セキュリティリスクアセスメントの実施、サイバー攻撃の特性を踏まえた対応計画の策定などが求められています。

これらの重要インフラのシステムには先にみたように、一般的な情報システムのセキュリティ対策では対応できない部分も多くあります。まずはセキュリティリスクを可視化し、脆弱性があることを認識することが重要です。その上で脅威を最小化する方策を検討する必要があります。

可用性と人命・環境への配慮という2つの命題を実現するためにも、OT担当者とIT担当者が連携し、セキュリティの専門家を交えてセキュリティ体制を構築・運用していくことが欠かせません。当社では制御システムのリスクアセスメントをはじめ、CSIRT構築、セキュリティオペレーションセンターによる監視、ケースによってはセンターからのオペレーションで防御するところまでお手伝いしています。対策についても一般的なセキュリティ対策の提案だけでなく、装置の交換やエンベデッドOSのバージョンアップが難しい場合のリスク低減策もご提案いたします。

制御システムセキュリティのリスクアセスメントは、情報セキュリティ対策の第一歩である現状把握を行い、現状を踏まえた上で、セキュリティリスクに対する今後の対策を考えるためのファーストステップです。セキュリティ専門家の知見でこそできることがあります。事業継続のためにもまずはリスクアセスメントからはじめてはいかがでしょうか。

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<対談>杉浦 隆幸 氏(合同会社エルプラス 代表社員) ✕ 齊藤 義人(BBSec SS本部 本部長 )

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SQAT® Security Report 2019年3月号

     杉浦 隆幸 氏 × 齊藤 義人  

日進月歩のサイバーセキュリティ。昨年「一般社団法人 日本ハッカー協会」を設立し、サイバーセキュリティ、システム開発、IoTなどさまざまな分野でハッカーに活躍の場を提供し、ハッカーの地位向上と活躍によるネット社会の安全や健全な発展を通じて日本のセキュリティの進歩に寄与する杉浦隆幸氏に、当社セキュリティサービス本部本部長 齊藤義人が忌憚のない意見をぶつけた。

※当社は一般社団法人 日本ハッカー協会の賛助会員です。


BBSec:まずはお二人に、昨年の総括と申しましょうか、2018年に起こったサイバー事案についてお伺いします。

杉浦:総括といいますか、2018年は仮想通貨まわりの事案が大きく動きまして、2018年1月にはCoincheck(コインチェック)1、9月にはZaif(ザイフ)2 、Monappy(モナッピー)3の話題が世間をにぎわしましたね。被害額が通常では考えられないくらいの桁数が出ておりまして、500億とか、お金が絡んでハッカーが本気になると被害が大きくなるということが証明された感じです。

齊藤:金銭的な動機があった、ということが明確に現れてますね。2017年はランサムウェアとか小金を狙っていたのが、2018年では変化があった。インターネットで巨大な金額が動くとなれば、当然そちらがターゲットになっていくわけですね。

杉浦:そうですね。ランサムウェアの場合も、小金と大金がありましたが、世界的な傾向として、データベースを狙うなど、金額が大きくなった感じですね。

齊藤:攻撃者の成功体験が、またその先の誰かの攻撃手法になっていくという。

杉浦:目立つ成功は真似されやすいですよね。

齊藤:仮想通貨のお話はまさに杉浦さんのご専門ですが、先に話の出たZaifの事件は新聞にも掲載されて一般の方にも話題になるほどでしたね。元々OSINTコミュニティでMonacoinを追っている途中で、突然Zaifの話が出てきたという経緯があったため、有志の動きがものすごく早かったと聞いています。いわゆるハッカーと呼ばれている人々が一気にビットコインのシステムのハッシュを集めて…という動きを、警察で実施するとなるとおそらく膨大なコスト(人件費)がかかるので、同じようなスピードで対応するのは難しいのではないかと思います。こうしたハッカー有志が動けるというのは、言い方が正しいかどうかはともかく、経済効果がすごく見えてきたのではないかなと思っているんですよ。社会的な貢献要素というか。

杉浦:ただ実際に彼らが集まるのも、私が企画(「Zaif犯人追跡ハッカソン」4)した以上は将来的にお金が見えている可能性があるので(笑)。そうでないとあんな優秀な人たちを使えないですから、実際は。そういう仕組みをしっかり整えて、それを実証することによって、将来的に同様の事件があった場合に、速やかに対応をとれるような体制5を構築することが大事ですね。結構な費用がかかるんですが、(官は)前例がないことに費用はかけにくい。ですから前例を作ってしまおうというのが狙いではありますよね。

齊藤:それが実際に功を奏した、と。

杉浦:まぁ、そうですね。ただ、犯人はほぼ特定できたものの、実際の逮捕は警察次第。氏名が特定できても捕まるかどうかというのはまた別の問題なので。そこが難しいですね。

齊藤:それはどうしても民間では届かないところというか。役割の問題ですよね。FBIなんかですと、サイバーアタックの犯人リストがあったりしますが、日本ではそういった動きはまだないですね。
企業の対応もどうしたらいいですかね。例えば、これからも仮想通貨サービスはどんどん増えていって、いつかは法律で縛りがより強くなってくると思いますが。

杉浦:それがまさに問題ですね。実はLINEさんは仮想通貨の取引所をしていらっしゃるんですけど、知らないと思うんですよ、皆さん。というのも、サービスの提供で日本と米国は除外されているという、非常によくない状況になっていまして。コインチェック事件があったことで、認可側のマンパワーが足りないために認可がとれない状況ですね。

齊藤:なるほど。そんなことで日本の経済スピードを落としてしまうという可能性も出てくる、と。

杉浦:そうです。実際、規制があまりにも厳しすぎて経済スピードは落ちています。まぁ、事件起こしたところで、ちゃんと対策したところは、十分強くなっていますけど。

齊藤:確かに、反動力がありますね。

杉浦:ええ。相場モノですので、戻しは必ずあります。1回落ちたら必ず戻すっていうのが。

齊藤:「不正マイニング」の話なんかはどうですか。

杉浦:あれは微妙ですね。ちょうど裁判 も大詰め6、どこが不正でどこがそうでないのか、といったところで、セキュリティにかかわる人たちが怯えながら仕事しなきゃいけなくなるというのが現状ですね。

齊藤:たとえ、著名な方であっても、研究のための範囲だといっても関係ないですからね。

杉浦:(警察が)捕まえやすいかどうかいという、あまりよろしくない状況ですね。実はセキュリティは法的なラインが低いんです。そのため、捕まるときは大量に捕まる7、という。

齊藤:それは足枷ですね。

杉浦:セキュリティ業界全体の足枷となっております、これは。

齊藤:やはり日本企業全体で、セキュリティというものがリスクをとりながら行っているものなんだという理解が進んでいかないと難しいですね。いわゆる「ホワイトハッカー」、彼らが研究しないことには・・・。

杉浦:実際に守る側というのは、攻撃するすべての手段を想定しなければならないから難しい。攻撃する側は一つでも当たればOKなんですけれども。ひとつ突破口があれば皆それをまねてしまう。(攻撃側に)1人優秀な人が存在すればそれだけでリスクになる。

齊藤:日本国内ではセキュリティエンジニアが不足しているといいますが、例えばトップエンジニアとなるべき人をどう教育していくか、という課題がこれまでずっと何年も解決できていません。杉浦さんは昨年、日本ハッカー協会を設立されましたね。

杉浦:先にお話したような、攻撃者に対抗できるトップエンジニアになるには、相当高いスキルが必要です。ところが、セキュリティエンジニアの世界は特殊で、犯罪と紙一重ですから、一線越えたような人たちが業界には結構いる。そのおかげで進歩しているのに、「一線越えてしまったら帰ってこれない」では困ります。彼らの活躍の場が必要ですし、また罪に問われないように保護する仕組みが必要だと思ったわけです。日本では凶悪犯であればあるほど捕まりにくい、という面があります。小中学生とか、未熟なスキルの人ほどつかまってしまう。法的な知識もありませんし。そうすると、そこで将来が閉ざされてしまう。それを何とかしないと。

齊藤:脆弱性が発見されることに対する考え方も問題ですね。お客様の現場から、「何でこんなに脆弱性が見つかるんだ!」と聞こえてくることがある。いや、見つかってよかったじゃないですか、という話なんですけども(笑)。

杉浦:悪用される前にね(笑)。

齊藤:そうなんですよ、悪用される前に見つかってよかったじゃないですか(笑)。そのためにやっているのに、「何でこんなに脆弱性が見つかるんだ!」となってしまう。

杉浦:まぁ、そういうものは出てきて当たり前、逆に早めに全部出してくれというマインドを持っていただくことが必要ですね。むしろ何で出てこないんだ、というくらい。何も出てこないシステムはよほどしっかりした作りか、逆に脆弱性診断が実にやりにくいサイトか(笑)。

BBSec:診断しにくいシステムですか。結構あるものでしょうか。

齊藤:ありますね、診断がしにくい。何でこんなことになっているんだ、と。

杉浦:IPSが入っていて、一部しかコマンド飛ばないとか。アプリケーション診断なら、そういうものを排除してから実施したいというのはありますね。脆弱性が確定してからIPS入れて、防御しましょう、となるべきなんですが。

齊藤:本来はそういった「生」のものにアタックをかけて、さらに防衛されている防衛装置の上からでもいけますか、という二段階の診断をするのが望ましいですね。最近では、WAFとかIPSもある程度負荷をかけた状態の時には抜けてしまうというようなこともありますから、防御装置を入れてあるから大丈夫、ではなくて、その外側からもちゃんと見ていく、ということも必要ですね。

杉浦:特にエンタープライズ系のセキュリティというのは、全体的な統制がとれていないとか、実際動いてない機械が半数ということも多いですし。

齊藤:そうですね、IPSはどこかにアラートをあげるような設定を初期に行っていたとしても、だんだんチューニングがおろそかになって行って、実態と乖離してくることがある。

   合同会社エルプラス 代表社員
      杉浦 隆幸 氏

杉浦:やっぱり運用は難しいですからね。全部アウトソーシングしているところも多いですしね。社員1万人くらいの大きい会社さんでセキュリティをちゃんとマネジメントしようとすると、全部で20名以上のセキュリティ要員が必要になるでしょうからね。SOC(Security Operation Center)を作ったり、新しく導入したシステムのテストをするとか、インシデントレスポンス対策など考えると、やはりそれだけの人数は必要になりますが、なかなか自前でそれだけの技術者を用意するのは難しい。ですからセキュリティ専門企業をうまく使いこなすのが日本のセキュリティマネジメントのキーファクターですね。

齊藤:そのとおりですね。SIEM(Security Information and Event Management)なんかも多くの企業で導入していますが、本当に必要なログを有効な方法で取得しているか、あとで確認できるものになっているか、というとまだまだハテナをつけざるを得ない。特に企業側で運用を始めますと、工数のこと考え始めますから。余計なログはとりたくない、とか。そういう考えに陥ってしまう。そういう意味でいくと、セキュリティ専門でそこだけを見ているようなところに頼んでいただけると、運用工数ありきのセキュリティにはならないわけですね。

杉浦:またセキュリティのスペシャリストは専門性が高いですから、いろんな事例を知っていた方がお客様に対するフィードバックも厚くなる。そういうことを考えると、社外の、豊富な事例を知っている専門家に依頼する方が有効ですね。社内で脆弱性診断を抱える意味はまったくないです。よほどたくさんのサービスを持っているなら別でしょうけど。

BBSec:一人の優秀なエンジニアが突破口となって飛躍してしまう、とのことでしたが、そうした攻撃手法や脆弱性の検証に苦労したお話があればお伺いしたいのですが。

杉浦:検証自体、結構苦労しますよね。脆弱性を見つけるだけならバージョンチェックで済むこともありますよ。いま年間1万件以上の脆弱性が発見されるじゃないですか。専門家であっても、その数を全部追いかけるのは難しいわけですよ。

齊藤:CVSSの登録をするのがセキュリティエンジニアのマスト要件か、ぐらいの感じで(笑)。再現性の問題ですが、IoT機器なんかは、製品は大きなものなのでひとつしかお貸し出しできません、となったりすると、トライできる回数が非常に限られてしまう。そういったことが、検証が難しい要因となりますね。

杉浦:理想を言えば、「壊すのでひとつください」ですよね。いろんな検査をして結果的に壊していいものと、正常な振る舞いを見るためのもの。このふたつをください、です。

齊藤:本当に1回しかトライできないとなると、例えばBlack HatDEFCONで、爆弾処理のトレーニングがあるんですね。ちょうどその一人目がクリアする前の記録を見ると、342人とありましたので「ああ、342人死んだんだな」と。実際に防ぎなさいという場合はどう検証しようか(笑)。

杉浦:無理やり、液体窒素で冷やして、爆発しないようにして、爆発するときは爆発用に囲った中でとか、あるいは敢えて爆発させてみて検証するとか、色々あるんでしょうけども。訓練としては面白いですよね。作ってみましょうか。爆発したら花火が上がるとか・・・(笑)。
先ごろ*8 4年ぶりに改定されたOWASP IoT Top 10でもファームウェアのアップデートをちゃんとしなさい、と言っているんですが、当たり前のことがやっと書かれたくらいです。IoT機器は使われる期間が長いし、ある程度ユーザが考えていかなきゃならない部分もあるんですよね。

BBSec:企業でも忘れられた機器が残っていることがありますね。

齊藤:繰り返しになりますが、システムの運用を維持する、というのは本当に大変なことなんですよ。

杉浦:セキュリティコストが高い、といわれる一番の原因は運用の問題でして。運用もやっぱり費用がかかるわけですから、そもそもの設計段階で、安全性を担保しながら費用を軽減できる方法を考えておかなければならない。それをしないと、セキュリティをまともにやろうとした段階ですごく高コストになるんですよ。大体機器の2倍から5倍かかるというのが一般的です。コストばかりかかって実効性がないセキュリティになってしまったりするんです。それは経営層がちゃんと考えておかなければならない。予算は有限ですからね。

齊藤:例えば、建物の縁の下がどれだけゴミだらけでも住んでる人は気にしない、みたいな感じですね。放置していたらそこから腐っていって土台が緩んだりすることもあるし、誰か入り込んでくる可能性だってある。その辺をセキュリティに置き換えたときにどのくらい想像できるかでしょうね。

杉浦:誰も見てない、録画してない監視カメラがやたらあるけど・・・みたいな(笑)。ある程度の防犯効果はあるだろうけど、いざというときに役に立っていない。

齊藤:そういった防犯効果だけを求めるのであれば、高額な機器を導入するのではなく、代替機器でどうにかする、という発想も必要ですね。本当に必要な機能を適正に選んでいく、というのが大事です。先ほどの家の話でいきますと、お風呂場で覗かれるのを防ぐために防犯カメラを導入するのかというと、そこまでは必要ない。むしろ、お風呂場の窓の下に砂利を敷き詰める方がコストもかからず効果も高い。

杉浦:そうです、音が鳴るだけでも十分効果が得られますから。

齊藤:ですから、そうした全体像をどこまで描けるか、が重要ですね。

BBSec: 仮想通貨を巡る話題から、日本のセキュリティ業界のあり方やトップエンジニアの将来を守りたい、という強いお気持ちなど、「サイバーセキュリティ最前線」にふさわしいお話を伺うことができました。本日は長時間ありがとうございました。


杉浦 隆幸 氏
合同会社エルプラス 代表社員
Winnyの暗号の解読にはじめて成功、ゲームのコピープロテクトの企画開発をはじめ、 企業や官公庁の情報漏洩事件の調査コンサルティングを行う。 昨今では仮想通貨の安全性確保、Androidアプリの解析や、電話帳情報を抜くアプリの撲滅、 ドローンをハッキングで撃墜するデモや、自動車のハッキングなどを行う。テレビなどの出演多数 。

齊藤 義人
株式会社ブロードバンドセキュリティ (BBSec)
セキュリティサービス本部本部長
Webアプリケーションを中心とした開発エンジニアを経て、官公庁および 大手顧客向け脆弱性診断・ペネトレーションテストに従事。 数年にわたる長期かつ大規模システムのプロジェクトマネージャーとして活躍。


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