サプライチェーンとは
-サプライチェーン攻撃の脅威と対策1-

Share

「サプライチェーン」とは、製品やサービスが消費者の手に渡るまでの一連の流れを指します。この流れの中では多くの企業や組織が関与し、互いに密接に連携しています。情報技術製品が対象となるものもあるため、セキュリティの確保が特に重要視されます。この記事では、サプライチェーンの基本的な概念と、サプライチェーンの重要性、そしてサイバーセキュリティとの関連性について解説します。

サプライチェーンとは何か

サプライチェーンとは、製品やサービスが消費者に届くまでの一連の流れやプロセスを指す言葉です。これには、原材料の調達から製造、流通、販売に至るまでのすべての段階が含まれます。

例えば、コンビニチェーンでは生産者や農協などからお米を仕入れ食品工場でオーダー通りのおにぎりを製造します。オーダー通りのおにぎりが完成後、出荷されコンビニエンスストアの店舗に並び、最終的に消費者に届けられます。このように、おにぎりが私たちの手元に届けられるまでには、サプライチェーンを構成する様々なプレーヤーの活動があり、それらが連なって成り立っています。

サプライチェーンの重要性

サプライチェーンは現代のビジネスにおいて不可欠であり、「サプライチェーンがなければ産業は成り立たない」と言えます。一連の流れを効率的に管理することで、生産性が向上し、事業全体の効率化も実現可能です。しかし、各プロセスには多くの企業や組織が関与し、互いに密接に連携しているため、一か所にほころびが生じると、それがサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があります。そのため、サプライチェーンはサイバー攻撃などの脅威にさらされており、サプライチェーン全体のセキュリティを確保することは、企業のみならず、社会全体の経済発展にとっても不可欠な要素です。

サプライチェーンが抱える課題

前段で説明したとおり、サプライチェーンは多くの企業や組織が関与し、互いに密接に連携している性質上、複数の固有の課題に直面しています。この課題は製品の開発から配送までの各段階で発生し、サプライチェーンの効率性とセキュリティに直接影響を与えます。

サプライチェーンの規模と煩雑さ

サプライチェーンの各フェーズ(工程)では、異なる企業や組織が連携して活動しており、それぞれが一連の流れの一部を担っています。多岐にわたる組織が絡むことで、全ての組織を完全に把握することは非常に困難です。また、それぞれの組織に対する効果的な監査を実施することもまた、容易ではありません。

コンプライアンスと規制

IT製品は、多様な規制とコンプライアンス要件に準拠する必要があります。製品が他国で製造され、世界中で販売されるなど、グローバル化していることがサプライチェーンをさらに複雑にしています。国や地域によって法規制や業界の基準が異なるため、一貫した品質管理や倫理基準の維持が求められる中、その実現はさらに難しい課題となっています。

これらの課題に対処することは、サプライチェーンの管理において不可欠です。リスク管理などを実施し、適切なセキュリティ対策を実施することが求められます。

ITサプライチェーンとは?

ITサプライチェーンは、ITシステム・サービスの開発・提供を委託する組織(委託元)からITシステム・サービスに関する業務を受託する組織(委託先)の関係性を指し、IT関連の製品やサービスが最終的なユーザに届くまでの一連のプロセスを指します。各プロセスは、ソフトウェア開発者、ハードウェア製造者、配送業者、最終的にこれらの製品を使用するエンドユーザなど、多種多様なアクターで構成されています。重要なのは、これらの要素がどのように連携し、製品やサービスがスムーズに流れるかです。セキュリティの確保、品質管理、コスト削減、納期の厳守など、管理すべき要素は多岐にわたります。

プロセスの定義と役割

・委託元(ユーザ)
 ビジネスニーズに合致する品質と効率性を確保するために、適切な委託先を選定し、管理する
・委託先(ベンダ)
 委託元(ユーザ)から委託された業務を遂行する
・再委託先(2次請け先以降)
 委託先からさらに再委託された業務を遂行する

この相互依存の関係は、製品やサービスが市場の要求に応じて迅速に提供されることを可能にし、同時に、セキュリティや品質の維持にも寄与します。このように、ITサプライチェーンは、技術的な挑戦とビジネスの要求の間でバランスをとるための重要なメカニズムとなります。

サイバーセキュリティとサプライチェーン

サプライチェーンを通じて流れる情報や製品は、サイバー攻撃者にとって魅力的なターゲットです。サプライチェーンの場合、一つの企業で生じた問題がサプライチェーンで関連する企業全体に影響が及びやすいというリスクを抱えています。例えば、委託先企業の一つで最初に火がついた問題は、そこに関連する企業および再委託先企業全体に被害が及び、あっという間にサプライチェーンに関連する企業全体が火だるまとなり得るわけです。そのため、サイバーセキュリティはサプライチェーンにおいて重要な要素の一つです。

このようなサプライチェーンの問題を悪用したサイバー攻撃が「サプライチェーン攻撃」です。サプライチェーン攻撃とは、ターゲット企業に直接攻撃を仕掛けるのではなく、その企業のサプライチェーン(業務委託先やグループ会社・関連企業など)に含まれるセキュリティの弱点を利用して侵入を試みるサイバー攻撃のことです。攻撃者は企業間の信頼関係を利用し、よりセキュリティが手薄な一部のパートナー企業やサプライヤーを狙い、そこを踏み台にして間接的に本来のターゲット企業へ侵入を試みます。

サプライチェーン攻撃の脅威

サプライチェーンを通じて流れる機密情報、知的財産、顧客データなどは攻撃者にとっても魅了的なターゲットです。そのため、サプライチェーン全体が常にサイバー攻撃の脅威にさらされています。

サプライチェーン攻撃を受けてしまうと、被害は発端となった一つの企業だけでなく、そのパートナーや顧客にまで及びます。サイバー攻撃は増え続けており、手口も巧妙化しています。さらに国内主体で政治的・軍事的な目的などで情報窃取や重要インフラの破壊活動などを進めている例もあるため、脅威はますます深刻化しています。

参考資料:公安調査庁「サイバー空間における脅威の概況2023

さらにテレワーク環境の業務実施もサプライチェーンのリスクにつながります。IPA「ニューノーマルにおけるテレワークとITサプライチェーンのセキュリティ実態調査」によれば、委託元および委託先企業の約半数以上がテレワークに関する社内規定・規則・手順の遵守確認を実施していないと回答したことが明らかになりました。

たとえ委託元のシステム開発会社がクラウド利用やテレワーク環境におけるセキュリティポリシーを整備していたとしても、委託先やその他の関連企業の遵守確認が十分でないと、ITサプライチェーン全体のリスクにつながる恐れがあるのです。

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大は、国内外のサプライチェーンにも深刻な障害をもたらしました。内閣府「日本経済2021-2022」の一節にある「サプライチェーンの強靱化に向けた課題」によれば、特に、半導体不足や交通機械産業の部品調達に影響が出たといいます。また、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)への参加により中間財の国際的な依存が高まり、輸入先の集中や国際的な納期の長期化が進んでいます。これにより、多くの企業が生産調整を余儀なくされており、サプライチェーンのセキュリティ強化が急務とされています。

サプライチェーンは、生産性の向上や効率化を実現する一方で、サイバーセキュリティの脅威が増大していることなどが大きな問題となっています。サプライチェーン全体でセキュリティを確保することが、優先課題となっています。

まとめ

サプライチェーンは製品やサービスが消費者に届くまでの一連の流れがあるため、効率的な管理は、生産性の向上やコスト削減、事業のスムーズな運営をする上で不可欠です。しかし、多数の企業や組織が連携し、機能している反面、煩雑化しているといった状況です。そのため、リスク状況の把握をするには困難になっています。また、これにはIT製品やサービスなどでは、規制やコンプライアンス要件への遵守が求められるため、グローバル化する中でのサプライチェーン管理はより一層困難になります。

ITサプライチェーンは、IT製品やサービスがユーザに提供されるまでの一連のプロセスがあり、品質管理やセキュリティ、コストの管理など多岐にわたる要素が含まれるため、煩雑化しています。

サプライチェーンの脅威の一つであるサイバー攻撃ではセキュリティ対策が手薄な企業を標的とし、攻撃を仕掛けます。そのため、サプライチェーン全体でセキュリティ対策に取り組む必要があります。

2020年の新型コロナウイルス感染症の流行は、サプライチェーンにも大きな影響を与えました。特に、半導体不足や交通機械産業の部品調達に影響が出たことで、多くの企業が生産調整を余儀なくされました。これにより、サプライチェーンの強化がさらに急務となり、セキュリティの強化やリスクの最小化が課題となっています。

サプライチェーンは、現代ビジネスにおいて不可欠です。サプライチェーンを効率的に運用するためには、適切なリスク管理、セキュリティ対策の実施、法規制の遵守などが重要です。

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像