AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方

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生成AIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを使うかどうかだけでなく、どのAIを、どの業務で、どのような条件で利用するかを組織として管理することが求められています。情報漏洩や誤情報、著作権などのリスクに加え、従業員が会社の承認を得ずにAIサービスを利用する「シャドーAI」への対応も必要です。本記事では、AIガバナンスとは何か、国内外のルールやガイドラインの動向を踏まえながら、企業に必要な体制やAI利用ガイドラインの作り方について紹介します。

AIを取り巻くリスクや、企業に求められるセキュリティ対策の全体像については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスとは

AIガバナンスとは、企業や組織がAIを適切に利用するために、方針や責任体制、ルールを定め、AIに伴うリスクを継続的に管理していく仕組みです。生成AIの利用では、入力した機密情報や個人情報の取り扱い、生成された情報の正確性、著作権・知的財産権、利用するAIサービスの安全性など、さまざまな点を考慮する必要があります。そのため、生成AIに個人情報を入力しない、といった利用上の注意事項を定めるだけでは十分とはいえません。

誰がAIの利用を管理するのか、どのようなAIサービスを利用できるのか、問題が発生した場合に誰へ報告するのか、利用するAIやリスクの変化に応じてルールをどのように見直すのか、といった運用まで含めて考える必要があります。AI利用ガイドラインは、こうしたAIガバナンスを実際の業務へ落とし込むための手段の一つといえます。

なぜ企業にAIガバナンスが必要なのか

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミング支援など、さまざまな業務で利用できるようになりました。一方、利用が容易であるからこそ、企業が把握しないまま従業員がAIサービスを業務に利用することも考えられます。例えば、従業員が個人で登録した生成AIサービスに顧客から届いたメールを入力して返信文を作成したり、社内資料やソースコードを入力して要約や分析を行ったりするケースです。企業が利用実態を把握できていなければ、どのサービスに、どのような情報が入力されているのかを管理できません。

国内でも、個人情報保護委員会やデジタル庁などが、生成AIの業務利用における個人情報や機密情報の取り扱いについて注意を促してきました。また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公開した「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」では、全社AIガバナンスとして、AIガバナンス体制の整備、利活用ガイドラインの策定、シャドーAIへの対応方針などが整理されています。生成AIを一律に禁止するだけではなく、生成AIの利用実態を把握し、リスクに応じて適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。

生成AIの情報漏洩や誤情報、著作権、サイバー攻撃への悪用などのリスクについては、「生成AIのリスクとは?企業が注意すべき情報漏洩・誤情報とサイバー攻撃への悪用」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスを取り巻く国内外のルールとガイドライン

AIの急速な普及を受け、国内外ではAIを安全かつ適切に利用するためのルールやガイドラインの整備が進められています。日本では、経済産業省と総務省が2024年に「AI事業者ガイドライン」を策定しました。その後もAIを取り巻く環境の変化に応じて改定が続けられ、2026年3月には第1.2版が取りまとめられています。AI事業者ガイドラインでは、AIに関係する事業者をAI開発者、AI提供者、AI利用者に整理し、それぞれが取り組むべき事項などが示されています。

政府においてもAI利用のルール整備が進んでいます。デジタル庁は2026年6月、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を第2.0版へ改定しました。同ガイドラインでは、政府における生成AIのガバナンスや、各府省庁が生成AIを調達・利用する際のルールなどが示されています。

個人情報の取り扱いについても注意が必要です。個人情報保護委員会からは2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で一部事業者に対する要配慮個人情報の取得及び利用目的の通知などについての注意喚起が行われています。全般の注意喚起では個人情報取扱事業者、行政機関、一般利用者それぞれに向けた注意点が記載されています。

生成AIサービスを利用する場合には、利用規約やプライバシーポリシーを確認し、入力する情報がどのように取り扱われるのかを把握したうえで利用を判断することが重要です。

AIサービスの契約条件も確認する

AIサービスを導入する際には、社内ルールだけでなく、利用するサービスの契約条件やセキュリティについて確認することも重要です。経済産業省が公開している「生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト」では、AIサービスの利用や開発にあたり、インプット・アウトプットの取り扱いや権利関係、責任分担などを確認するための観点が整理されています。

生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト(チェッリストの対象となる条項)
チェックリストの対象となる条項
出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」p.11より抜粋

セキュリティに関してはチェックリスト内に、以下の観点でのチェック項目が設けられています。

  • 対象システム(AIサービス)のセキュリティ水準
  • 監査条項等
  • ログの保存
  • 規約改定に関する留意点

AIサービスを選定する際には、機能や価格だけでなく、入力した情報がどのように扱われるのか、ログが保存されるのか、契約条件が変更された場合にどのような影響があるのか、といった点も確認する必要があります。

海外でもAIに関する制度整備が進む

海外でもAIの安全性や信頼性を確保するための制度整備が進められています。代表的なものが2024年に施行されたEUのAI全般をリスクベースで管理するためのAI法(『EU AI Act: first regulation on artificial intelligence』)です。AI法では、AIシステムをリスクに応じて分類し、許容できないリスクを持つAIを禁止するとともに、高リスクAIにはリスク管理や記録、人による監督などの要件を設けています。

また、汎用目的AI(General-purpose AI(GPAI))についても、そのリスクや役割に応じた義務が設けられています。

日本企業であっても、EU域内でAIシステムを提供したり利用したりする場合などには適用対象となる可能性があります。海外で事業を展開する企業では、自社のAI利用に関係する国や地域の制度についても確認する必要があります。

さらにEU以外でも、韓国をはじめ各国でAIの安全性や信頼性を確保するための制度・体制整備(韓国:AI基本法等)が進んでいます。

こうした動きを踏まえると、AIガバナンスは一度ルールを作れば完了するものではありません。AI技術やサービス、国内外のルールの変化に応じて、自社の管理体制も継続的に見直していく必要があります。

AIガバナンスで企業が整えるべき体制

AIガバナンスを実際に機能させるためには、AI利用に関する役割と責任を明確にする必要があります。例えば、経営層がAI活用に関する基本方針や許容するリスクを示し、情報システム・セキュリティ部門が利用するAIサービスの安全性や情報管理を確認します。法務・コンプライアンス部門は、個人情報や著作権、契約などの観点から利用条件を確認し、各事業部門は定められたルールに基づいてAIを利用します。

重要なのは、必ずしも「AIガバナンス委員会」のような新しい組織を設置することではありません。企業の規模やAIの利用状況によっては、既存の情報セキュリティ委員会やリスク管理、ITガバナンスなどの体制にAIの管理を組み込む方法も考えられます。一方で、AIに関する判断を情報システム部門だけに任せることも適切とは限りません。AIの利用にはセキュリティだけでなく、法務、知的財産、業務品質、倫理など複数の論点が関係するためです。「誰がAIを管理するのか」だけではなく、「どのような問題を、どの部門が判断するのか」まで整理しておくことが重要です。

AI利用ガイドラインには何を書くべきか

AIガバナンスの方針を従業員の具体的な行動へ落とし込むためには、AI利用ガイドラインを整備することが有効です。ガイドラインには、単に「機密情報を入力しない」と記載するだけではなく、実際の業務で従業員が判断できる内容を盛り込む必要があります。

項目定める内容の例
利用できるAI承認済みサービス、利用条件
利用目的認める業務・禁止する用途
入力情報個人情報、機密情報、顧客情報等の取り扱い
生成物ファクトチェック、著作権、外部公開時の確認
アカウント法人・個人アカウントの使い分け
外部サービスデータ保存、学習利用、ログ、契約条件
問題発生時報告先、対応フロー
見直し定期レビュー、サービス変更時の再評価

特に注意したいのが、利用禁止、とだけ定めて終わらせないことです。

例えば「機密情報を入力してはいけない」と規定していても、従業員が何を機密情報として扱うべきか判断できなければ、実際の業務では迷いが生じます。顧客から届いたメール、会議の議事録、契約書、ソースコード、未公開の製品情報など、具体的な利用場面を想定しながら、入力できる情報とできない情報を示すことが重要です。

また、生成物を業務で利用する際の確認方法も必要です。生成AIの出力には不正確な情報が含まれる可能性があるため、重要な判断や社外へ公開する情報については、人による確認や一次情報との照合を行うなどのルールを定めておくことが考えられます。

利用するAIサービス自体の確認も必要

AI利用ガイドラインを整備しても、利用するAIサービス自体の安全性やデータの取り扱いを確認していなければ、十分なリスク管理とはいえません。生成AIサービスによって、入力したデータの保存場所や保存期間、モデルの学習への利用、ログの管理、適用される法令などは異なります。そのため、AIサービスを導入する際には、少なくとも次のような点を確認することが重要です。

  • 入力したデータがどこに保存されるか
  • 入力データが学習やサービス改善に利用されるか
  • データやログの保存期間
  • 管理者が利用状況を確認できるか
  • セキュリティ対策や監査に関する条件
  • 利用規約やプライバシーポリシーの変更条件
  • どの国・地域の法令が適用されるか

AIサービスによってデータの保存場所や適用される法令などが異なるため、「有名なサービスだから」「便利だから」という理由だけで業務利用を判断するのではなく、企業としてサービスの特性を確認する必要があります。AIサービスの機能だけでなく、「企業の情報をどのように扱うサービスなのか」という観点から評価することが、AIガバナンスでは重要です。

AI利用ガイドラインを「作って終わり」にしないために

AI利用ガイドラインを策定しても、従業員に知られていなかったり、実際の業務とかけ離れたルールになっていたりすれば、十分に機能しません。会社がAI利用を全面的に禁止している一方で、現場では業務効率化のために個人アカウントの生成AIが利用されている、といった状況も考えられます。このようなシャドーAIが広がると、企業は誰がどのAIサービスを利用し、どのような情報を入力しているのか把握しにくくなります。そのため、ガイドラインの策定とあわせて、実際のAI利用状況を把握することが重要です。

また、会社が利用を認めるAIサービスを明確にし、従業員が安全に利用できる環境を提供することも有効です。ガイドライン策定後は、従業員への教育、利用状況の確認、例外的な利用が必要になった場合の申請方法、問題発生時の報告ルートなどを整備します。AIサービスは短期間で機能や利用条件が変化することがあります。また、AIエージェントのように、外部サービスやデータへアクセスし、一定の操作を実行できるAIの利用が広がれば、従来の生成AI利用とは異なるリスクも考慮する必要があります。AIガバナンスでは、ルールを作ること以上に、実際の利用状況を把握しながら継続的に見直すことが重要です。

AIやLLMを組み込んだシステムでは、プロンプトインジェクションをはじめ、生成AIの利用管理とは異なるセキュリティリスクにも注意が必要です。詳しくは、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で紹介しています。

AIガバナンスはどこから始める?

AIガバナンスという言葉から、大規模な管理体制や複雑なルールを想像するかもしれません。しかし、最初からすべてを整備する必要はありません。まずは、自社でAIがどのように利用されているのかを把握することから始めます。

STEP1 自社のAI利用状況を把握する
どの部門が、どのAIサービスを、どのような業務に利用しているのか確認します。会社が正式に導入したAIだけでなく、従業員が個別に利用しているサービスについても把握することが重要です。

STEP2 利用するAIとリスクを整理する
入力する情報、生成物の用途、外部サービスへのデータ送信、AIに与える権限などを確認し、利用方法に応じたリスクを整理します。

STEP3 責任者・管理体制を決める
AI利用に関する方針を誰が決定し、セキュリティ、法務、業務上の問題をそれぞれ誰が判断するのかを明確にします。

STEP4 AI利用ガイドラインを策定する
利用できるAI、入力できる情報、生成物の確認方法、禁止する用途、問題発生時の報告方法などを具体化します。

STEP5 教育・確認・見直しを続ける
従業員へルールを周知するとともに、実際の利用状況を確認します。AIサービスや業務、脅威、法制度などの変化に応じてガイドラインを更新します。

AIガバナンスは完成させるものではなく、AIの利用とともに継続的に改善していく取り組みと考えることが重要です。

AIガバナンスに関するよくある質問

▼ AIガバナンスとAI利用ガイドラインの違いは?
▼ AI利用ガイドラインはどの部署が作るべきですか?
▼ 生成AIの利用を禁止すればAIガバナンスは不要ですか?

まとめ

生成AIをはじめとするAIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを安全かつ適切に利用するためのガバナンスが求められています。AIガバナンスは、AI利用ガイドラインを作成することだけを意味するものではありません。AI利用に関する方針を定め、責任体制を明確にし、リスクを評価しながら、実際の利用状況に応じてルールや対策を継続的に見直していくことが重要です。

また、自社の利用ルールだけでなく、利用するAIサービスのデータの取り扱いや契約条件、セキュリティ、国内外の制度動向について確認することも必要です。まずは自社でどのようなAIが利用されているのかを把握し、利用目的や取り扱う情報、想定されるリスクを整理することが第一歩となります。そのうえで、自社の事業やAIの利用状況に合った体制とガイドラインを整備し、安全なAI活用につなげていくことが求められます。

【参考情報】

公開日:2025年4月9日
更新日:2026年9月16日

編集責任:木下


AIの安全な活用に向けた体制づくりをご支援します

ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、AIの業務利用に伴うセキュリティリスクや管理体制の整備など、企業のAI活用に関するご相談を承っています。自社のAI利用状況やセキュリティ対策の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。


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クラウドセキュリティ対策とは?企業が押さえるべき設定・運用のポイント

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クラウドサービスは、業務システムやデータの保存・共有など、企業活動のさまざまな場面で利用されています。一方で、クラウドを利用しているからといって、セキュリティ対策のすべてをクラウド事業者に任せられるわけではありません。

クラウド環境では、利用するサービスに応じて、アカウントやアクセス権限、公開範囲などを利用者側で適切に設定・管理する必要があります。設定不備や権限管理の不備は、情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティインシデントにつながる可能性があります。

本記事では、クラウド環境を安全に利用するために企業が押さえておきたい、セキュリティ設定と運用のポイントについて解説します。

クラウドセキュリティ対策とは

クラウドセキュリティ対策とは、クラウドサービスを安全に利用するために、利用環境やサービスの特性に応じて行うさまざまなセキュリティ対策のことです。クラウドサービスでは、セキュリティ対策のすべてをクラウド事業者に任せるわけではありません。利用するサービスや契約形態によって、クラウド事業者が担う範囲と利用者側で管理すべき範囲が異なります。そのため企業には、自社がどの範囲を管理する必要があるのかを把握したうえで、アカウントや認証、アクセス権限、公開範囲、ログ、データ保護などについて適切な対策を講じることが求められます。また、クラウド環境は利用状況や設定が変化しやすいため、導入時の対策だけでなく、その後も継続的に設定や運用状況を確認し、必要に応じて見直していくことが重要です。

クラウド環境でどのようなセキュリティインシデントが起こり得るのかについては、以下の記事でも紹介しています。
「クラウドセキュリティの事故・インシデント事例から学ぶ主なリスク」

クラウドサービスが持つ特性

クラウドサービスは、従来のオンプレミス環境とは異なる特性をもっています。クラウドセキュリティ対策を考えるうえでは、こうした特性を理解し、それを踏まえて対策を講じることが重要です。

クラウドサービスでは、サーバやネットワークなどのITリソースを自社で保有するのではなく、クラウド事業者が提供する環境を利用します。必要に応じてリソースを追加・変更できる柔軟性や拡張性がある一方、システムの構成や設定、利用するサービス、アカウントや権限などが変化しやすいという特徴があります。また、クラウド環境では、クラウド事業者が管理する範囲と利用者が管理する範囲が分かれています。利用するサービスによってその範囲は異なりますが、アカウントやアクセス権限、データの公開範囲など、利用者側で適切に管理しなければならない領域があります。さらに、クラウドサービスは継続的に機能の追加や仕様変更が行われます。導入時には適切だった設定でも、利用環境の変化や設定変更などによって、セキュリティ上のリスクが生じる可能性があります。

このようなクラウドサービスの特性を踏まえると、導入時にセキュリティ設定を行うだけでは十分とはいえません。自社が管理すべき範囲を把握したうえで、利用状況に応じて設定や権限を継続的に確認・見直していくことが重要です。

企業が押さえるべきクラウドセキュリティ対策

クラウド環境のセキュリティ対策は多岐にわたります。ここでは、企業が特に確認しておきたい基本的なポイントを紹介します。

アカウント・認証を適切に管理する

クラウドサービスを利用するうえで、アカウントは重要な管理対象です。不要になったアカウントが残っていたり、認証情報が適切に管理されていなかったりすると、不正アクセスにつながる可能性があります。特に管理者などの特権アカウントについては、一般ユーザーとは分けて管理し、多要素認証(MFA)の利用など、より厳格な認証・管理を行うことが重要です。また、人事異動や退職などに伴って不要となったアカウントを放置しないよう、定期的にアカウントを棚卸しすることも必要です。

アクセス権限を必要最小限にする

クラウド上の情報やシステムに対して、必要以上の権限を付与しないことも重要です。利用者の業務や役割に応じて必要最小限の権限を付与し、管理者権限などの強い権限を持つアカウントを限定します。一度設定した権限をそのままにするのではなく、組織変更や担当業務の変更などに合わせて定期的に見直しましょう。

公開範囲やネットワーク設定を確認する

クラウド環境では、ストレージやデータベース、管理画面などの公開範囲を適切に設定する必要があります。本来は社内や特定の利用者だけがアクセスする情報が、設定不備によってインターネット上からアクセス可能になっていないか確認しましょう。ファイアウォールやセキュリティグループなどのネットワーク設定についても、不要なポートや接続元を許可していないか、定期的に確認することが重要です。

ログを取得・監視する

不正アクセスや設定変更などの異常を把握するためには、クラウドサービスで取得できるログを適切に保存・監視することが重要です。たとえば、ログイン履歴、管理者による操作、権限や設定の変更などを記録しておくことで、不審な操作の早期発見や、インシデント発生時の原因調査に役立ちます。どのログを取得するのかだけでなく、保存期間や監視方法、異常を検知した場合の対応についてもあらかじめ決めておきましょう。

データを適切に保護する

クラウド上で取り扱うデータの重要度を把握し、必要に応じて暗号化などの対策を行います。また、データの消失やランサムウェアなどに備え、重要なデータについてはバックアップを確保することも重要です。バックアップについては、取得するだけでなく、必要なときに復旧できるかを確認しておく必要があります。

設定を定期的に見直す

クラウド環境は、一度安全な設定を行えば終わりというものではありません。クラウドサービスの機能追加や仕様変更に加え、利用するサービスやアカウント、権限なども時間とともに変化します。システムの構築時だけでなく、設定変更時や定期的なタイミングでセキュリティ設定を確認し、現在の利用状況に合った状態を維持することが重要です。

クラウドサービスの設定で確認すべきポイント

設定ミスを起こさないためには、クラウドサービスにおけるセキュリティ設定を確実に確認する必要があります。以下の表のような情報を参考に、自組織が扱う設定項目の洗い出しやチェックリストの作成、委託先などとの認識共有を行うことが、設定ミスの予防に役立つでしょう。

出典:総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」
【図表Ⅲ.3.1-1 クラウドにおけるセキュリティ設定項目の類型と対策】より弊社作成

設定ミスを防ぐためには、クラウドサービスにおけるセキュリティ設定を個別に確認するだけでなく、確認すべき項目を整理し、抜け漏れなくチェックできるようにすることが重要です。

総務省のガイドラインでは、クラウドにおけるセキュリティ設定項目が類型化されています。こうした情報を参考に、自組織が扱う設定項目の洗い出しやチェックリストの作成、委託先などとの認識共有を行うことが、設定ミスの予防につながります。

クラウドセキュリティは「設定して終わり」ではない

クラウドサービスの大きな特徴の一つが、サービスや機能が継続的に更新されることです。企業側でも、新しいシステムの追加、利用者の増減、権限変更、他サービスとの連携など、クラウド環境は日々変化します。導入時には適切だった設定でも、その後の変更によって不要な権限が残ったり、意図しない公開設定になったりする可能性があります。

そのため、クラウドセキュリティでは、

  • 利用しているクラウドサービスやアカウントの把握
  • 権限や公開範囲の棚卸し
  • 設定変更の管理
  • ログの継続的な確認
  • 定期的なセキュリティ設定のチェック

といった運用を継続することが重要です。セキュリティポリシーや社内ルールについても、一度策定して終わりではなく、クラウドの利用状況に合わせて見直し、実際の運用に反映していく必要があります。

セキュリティガイドラインの紹介

クラウド環境のセキュリティ設定を確認する際には、クラウド事業者が公開しているベストプラクティスや、第三者機関などが公開するガイドラインを参考にすることができます。代表的なものとして、CIS(Center for Internet Security)が策定する「CISベンチマーク」があります。CIS Benchmarksは、OSやクラウドサービスなどを安全に構成するための推奨設定をまとめたもので、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどについてもベンチマークが公開されています。

また、国内でも総務省やIPAなどから、クラウドサービスを安全に利用するためのガイドラインや手引きが公開されています。こうしたベストプラクティスやガイドラインは、自社のクラウド環境における設定状況を確認する際の基準として活用できます。

■クラウドサービス提供者向け
総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」
■クラウドサービス利用者・提供者向け
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」
経済産業省「クラウドセキュリティガイドライン 活用ガイドブック」

ただし、クラウドサービスには多くの設定項目があり、ベストプラクティスやガイドラインを確認しながら、自社環境を網羅的にチェックするには、専門知識や工数が必要になる場合があります。

第三者によるクラウドセキュリティ設定診断

自社だけでクラウド環境の設定状況を網羅的に確認することが難しい場合には、第三者によるセキュリティ設定診断を活用する方法もあります。クラウド環境の設定状況を一定の基準に基づいて確認することで、自社では気づきにくい設定不備や見落としを把握しやすくなります。また、自社での定期的な確認と第三者による客観的なチェックを組み合わせることで、継続的なクラウドセキュリティの改善につなげることができます。

クラウド環境のセキュリティ設定を確認したい方へ

BBSecではAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformを対象に、クラウド環境の設定状況を確認し、セキュリティ上のリスクを可視化する「クラウドセキュリティ設定診断」を提供しています。

まとめ

クラウドサービスを安全に利用するためには、クラウド事業者に任せるだけでなく、利用者側でも適切なセキュリティ対策を行う必要があります。特に、アカウント・認証、アクセス権限、公開範囲、ログ、データ保護などは、クラウド環境を利用する企業が継続的に確認しておきたいポイントです。また、クラウド環境はサービスの更新や利用状況の変化によって設定も変化するため、「導入時に設定したから大丈夫」と考えるのではなく、定期的な棚卸しと見直しを行うことが重要です。自社でベストプラクティスやガイドラインを活用して確認するとともに、必要に応じて第三者による設定診断を取り入れながら、クラウド環境のセキュリティリスクを継続的に把握・改善していきましょう。

公開日:2024年7月24日
更新日:2026年9月9日

編集責任:木下


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クラウドセキュリティの事故・インシデント事例から学ぶ主なリスク

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クラウドサービスの利用は利便性などのメリットがある一方で、セキュリティリスクも伴います。サイバー攻撃の被害に遭った場合、データの漏洩やサービス停止に追い込まれてしまうなどのリスクがあります。実際、国内外でもクラウドサービス(SaaS)のセキュリティ設定ミスなどを原因としたセキュリティインシデントが発生しており、その影響は深刻です。本記事では、クラウドサービスの利用時におけるセキュリティリスク、具体的なインシデント事例、サプライチェーンでのセキュリティについて解説します。

クラウドサービス利用時のセキュリティリスク

クラウドサービスの利用が拡大する一方で、組織を脅かす要因(脅威)や様々なリスクが存在します。

【要因(脅威)】

  • 不正アクセス:クラウド上のデータやシステムに対する未承認のアクセスは、企業情報の漏洩や改竄につながる可能性があります。
  • サイバー攻撃:DDoS攻撃やマルウェアの拡散は、サービスの停止やデータの破壊を引き起こすことがあります。
  • 内部不正:従業員や内部関係者が意図的に不正行為を行うケースがあり、これは情報の盗難や破壊に直結します。
  • 設定/管理の不備:アクセス権限の設定ミスやセキュリティパッチの適用漏れは、攻撃者にとって格好の侵入経路となります。

【リスク】

  • 情報漏洩:クラウド上に保存されたデータが外部に流出することです。不正アクセスやサイバー攻撃、内部不正によって機密情報が漏洩すると、企業の信用が大きく損なわれ、顧客や取引先との信頼関係が崩壊する危険性があります。
  • 情報改ざん(消失・破壊):クラウド上のデータが不正に改ざんされたり、消失・破壊されたりすることです。サイバー攻撃や内部不正が原因でデータの整合性が失われると、業務運営に重大な支障をきたし、最悪の場合、ビジネスの継続が困難になることもあります。
  • システム停止:クラウドサービス自体が停止するリスクです。DDoS攻撃や設定/管理の不備によってシステムがダウンすると、サービス提供が一時的に停止し、顧客対応や取引が滞ることになります。これにより、企業の収益に直接的な影響を与え、長期的なビジネス成長にも悪影響を及ぼす可能性があります。

クラウドサービスのセキュリティインシデントの例

近年、クラウドサービスのセキュリティに関する設定が十分でなかったために、意図せず、クラウドサービスで管理している機密情報を無認証状態で外部に公開してしまい、機密情報を漏洩させてしまった事例が相次いで報告されています。以下に、国内で実際に発生したインシデントを例に挙げ、その原因、被害状況などを紹介します。

日本国内のクラウドセキュリティインシデントの報告事例(2023年)

報告年月業種原因概要
2023年12月総合IT企業設定ミス利用するクラウドサービス上で93万5千人以上の個人情報を含むファイルが公開設定となっており、閲覧可能な状態だった*1
2023年6月地方公共団体設定ミス利用するクラウドによるアンケートフォームの設定ミスにより、申込者の個人情報が漏洩していた。*2
2023年5月自動車メーカー設定ミス関連会社が運用するクラウド環境に設定ミスがあり、管理委託する顧客約215万人分に係る情報が、外部より閲覧可能な状態だった。*3
2023年4月空調
設備メーカー
不正アクセス利用するクラウド型名刺管理サービスで従業員になりすました不正アクセスが確認され、約2万件の名刺情報が第三者に閲覧された可能性*4

2023年5月に公表された国内自動車メーカーの事例について判明した内容は以下のとおりです。顧客に関する情報が、長いものでは約10年もの間、外部から閲覧可能な状態となっていました。

公表日外部から閲覧された
可能性のある情報
対象閲覧可能になっていた期間
5月12日車載端末ID、車台番号、車両の位置情報、時刻2012年1月2日~2023年4月17日の間、該当サービスを契約していた約215万人2013年11月6日~2023年4月17日
5月12日法人向けサービスで収集されたドライブレコーダー映像(非公開)2016年11月14日~2023年4月4日
5月31日車載端末ID、更新用地図データ、更新用地図データ作成年月該当サービスに契約した顧客、および該当サービス契約者のうち、2015年2月9日~2022年3月31日の間に、特定の操作を行った顧客2015年2月9日~2023年5月12日
5月31日住所、氏名、電話番号、メールアドレス等日本を除くアジア・オセアニア2016年10月~2023年5月

本件に対しては個人情報保護委員会からの指導が入り、2023年7月には同社より以下に示した再発防止策が明示されています。サプライチェーンである委託先関連会社とも共有され、管理監督すると公表されました。自社のみならず、委託先についてもクラウド設定にセキュリティ上の不備がないか注意する必要があります。

  • 技術的安全管理措置の強化
  • 人的安全管理措置の徹底
  • 機動的な委託先管理のための見直し

また、2023年12月7日、スマホアプリなどを提供している国内総合IT企業が、Googleドライブで管理していた一部ファイルが外部から閲覧可能な状態だったと公表しました。ファイルへのリンクを知っていれば、誰でもインターネット上でアクセス可能な状態だったといいます。インシデントの原因は、Googleドライブの閲覧範囲の公開設定を「このリンクを知っているインターネット上の全員が閲覧できます」にしていたことで、設定がされてから6年以上もの間、閲覧可能な状態となっていました。

クラウドサービスの設定ミスでセキュリティインシデントが多発している原因の一つとして考えられるのが、クラウドサービスを利用している企業や組織が対応すべき情報セキュリティ対策が曖昧になっていることです。クラウドサービス事業者とクラウドサービスユーザはお互いにクラウドサービスに対する責任を共有する「責任共有モデル」を多くの場合採用しています。しかし、実際にはクラウドサービス利用者側でのセキュリティの当事者意識が低いというケースが散見され、そのために設定ミスによるインシデントが多発していると考えられます。

サプライチェーンにおけるクラウドサービスのセキュリティ

クラウド上でソフトウェアを提供するサービス「SaaS」の利用が拡大するにともない、セキュリティに関するインシデントが多く報告されています。IPA(情報処理推進機構)が2023年7月に公開した「クラウドサービス(SaaS)のサプライチェーンリスクマネジメント実態調査」によると、セキュリティインシデントの主な原因として、クラウドサービス事業者のセキュリティ対策の不足や、利用者側のセキュリティ意識の欠如が挙げられています。また、サプライチェーン全体のセキュリティ管理の不備も大きな課題となっています。特に、クラウドサービスの利用状況の可視性が低く、インシデント発生時の対応が遅れることが、被害を拡大させる要因となっています。

さらに、同調査では、セキュリティ対策の強化が急務であるとする回答が多く寄せられました。具体的な対策としては、クラウドサービス提供者との連携強化、セキュリティ教育の徹底、サプライチェーン全体のセキュリティ監査の実施などが求められています。特に、サプライチェーン全体でのセキュリティ基準の統一と、インシデントが発生した際、迅速に対応ができる体制の構築が重要であると強調されています。

今回のアンケート調査の結果は、サプライチェーン全体でのセキュリティ意識の向上と、具体的な対策の実行が不可欠であることを示しています。

まとめ

クラウドサービスの利用が拡大する一方で、様々なセキュリティリスクが存在します。主な脅威としては、不正アクセス、サイバー攻撃、内部不正、設定や管理の不備が挙げられます。これらの脅威により、情報漏洩、情報改竄、システム停止といったリスクが生じる可能性があります。

クラウドサービスのセキュリティインシデントの例として、日本国内での具体的な事例が報告されています。例えば、総合IT企業では設定ミスにより93万5千人以上の個人情報が閲覧可能となっていたり、地方公共団体や自動車メーカーでは設定ミスにより申込者や顧客の個人情報が漏洩したりする事態が発生しています。

クラウドサービスのセキュリティインシデントの主な原因としては、クラウドサービス事業者のセキュリティ対策の不足や、利用者側のセキュリティ意識の欠如が指摘されています。セキュリティ対策の強化が急務であり、クラウドサービス提供者との連携強化、セキュリティ教育の徹底、サプライチェーン全体のセキュリティ監査の実施などが求められています。特に、サプライチェーン全体でのセキュリティ基準の統一と、インシデントが発生した際には、迅速な対応ができる体制の構築が重要です。

クラウド環境のセキュリティに不安はありませんか?

クラウド環境では、設定不備や権限管理の不備がセキュリティリスクにつながることがあります。BBSecでは、クラウド環境の設定状況を確認し、セキュリティ上のリスクを可視化する「クラウドセキュリティ設定診断」を提供しています。

公開日:2024年7月17日
更新日:2026年9月9日

編集責任:木下


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クラウドサービスとは?IaaS・PaaS・SaaSの違いとセキュリティの基本

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現代のビジネス環境では、利便性や柔軟性などのメリットがある、クラウドサービスの利用が急速に広がっています。クラウドサービスは、インターネットを通じて提供される様々なサービスです。本記事では、クラウドサービスの基本概念から提供形態、さらにクラウドサービスの種類やクラウドサービスを利用することで得られるメリットについて解説します。

クラウドサービスとは

クラウドサービスとは、インターネット環境で提供される様々なサービスのことを指します。利用者は自宅や外出先から、インターネットなどのネットワークを介してクラウドサービスにアクセスします。

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出典:経済産業省「クラウドサービスとは?」

クラウドという名称は、ネットワークの模式図上で、インターネットなどの外部ネットワークを雲(Cloud)のような形状で表現していたことに由来しています。ひとつの雲で表されますが、実際には複数のサーバ機器やネットワーク機器で構成され、サーバにはサービスに必要なソフトウェアが導入されています。

従来、コンピュータのハードウェアやソフトウェアは利用者が自ら保有・管理していましたが、クラウドサービスは、物理的なサーバや設備を利用者側で管理する必要がなく、利用者が必要なときに必要な分だけリソースを利用できるため、柔軟性が高く、コスト効率にも優れています。代表的な形態には、ソフトウェアを提供するSaaS、プラットフォームを提供するPaaS、インフラを提供するIaaSの3種類があります。

クラウドサービスの提供形態

クラウドサービスは、パブリッククラウドとプライベートクラウドという提供形態に分かれます。それぞれの特性を理解し、企業のニーズに合ったクラウドサービスを選択することが重要です。

パブリッククラウド

クラウド事業者が同じアプリケーションや環境を利用者に提供し、利用者が共有して使用する形態。初期費用が不要で、運用管理もクラウド事業者に任せることが可能です。パブリッククラウド(クラウド事業者)の内、特に世界的にシェアの高い3大クラウドと言われているのが以下のクラウド事業者です。

・AWS(Amazon Web Service)
 2006年開始の老舗クラウド。圧倒的なサービス種類の豊富さと拡張性の高さを誇る。
・Microsoft Azure
 機能が多く、WindowsやMicrosoft OfficeなどのMicrosoft製品との親和性が高い。
・GCP(Google Cloud Platform)
 Googleがクラウド上で提供するサービス群。GmailやYouTube基盤として実績あり。

プライベートクラウド

企業や組織が自社専用のクラウド環境を構築し、社内やグループ会社に提供する形態。プライベートクラウドにはさらに二つのタイプがあります。

  1. オンプレミス型
    自社内でインフラの構築を行い、データセンターで運用します。カスタマイズ性が高いのが特徴です。ITリソースを完全にコントロールできるため、機密性の高いデータを扱う企業に向いています。ただし、初期投資と維持費用が高く、専門のITスタッフが必要です。
  2. ホスティング型
    外部のクラウド事業者が社内専用のクラウド環境を提供します。自社での管理負担を軽減しつつ、セキュリティとカスタマイズ性を確保できます。オンプレミス型よりもコスト効率が良く、運用管理はクラウド事業者に依存するため、企業のリソースを他の業務に集中できます。

クラウドサービスの主な種類

企業や組織で多く使われるクラウドサービスには、主に3つの種類があります。

IaaS(Infrastructure as a Service)

IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、利用者が選択したスペックやOSに合わせた、仮想的なマシン(インフラ)を提供します。利用者側で必要なアプリケーションをさらにインストールするなどして、用途に合わせてカスタマイズできます。AWS、Microsoft Azure、Google Compute Engineなどが代表的なサービスの例です。

PaaS(Platform as a Service)

PaaSは「Platform as a Service」の略称で、IaaSが提供する仮想マシンに加え、上位のミドルウェアを含め提供するプラットフォームです。PaaSは開発者にインフラの管理をせずにアプリケーションの構築、テスト、デプロイ、管理を行える環境を提供します。これにより、開発者はインフラの複雑な設定やメンテナンスから解放され、開発に集中できます。AWSのElastic Beanstalk、Google App Engine、Microsoft AzureのApp Servicesなどが代表的なサービスの例です。

SaaS(Software as a Service)

SaaSは「Software as a Service」の略で、クラウド上でソフトウェアを提供するサービスです。ユーザはソフトウェアをインストールする必要がなく、インターネットを介してアクセスするだけで利用できます。SaaSの利点は、どこからでもアクセスできること、常に最新のソフトウェアを利用できること、そしてメンテナンスやアップデートがプロバイダーによって管理されることです。Google Workspace、Microsoft Office 365、Salesforce、Dropbox、Zoomなどが代表的なサービスの例です。SaaSは手軽さとコスト効率の高さから、企業で幅広く利用されています。

クラウドサービスの特徴

クラウドサービスには5つの特徴があります。

  1. 柔軟なリソース管理:システムの拡張・縮小が迅速に行えます。必要なときに必要なリソースを追加・削減することが可能です。
  2. オンデマンド・セルフサービス:ユーザ自身でWeb画面からシステム設定ができ、必要なサービスやリソースを自由に変更できます。
  3. リソースの共有:複数のユーザが同じリソースを共有することで、コストの最適化が図れます。
  4. 従量課金制:サービス利用量を常に計測し、使った分だけ支払う仕組みで、コストを抑えることができます。
  5. 場所を問わないアクセス:インターネットさえあれば、どこからでもアクセスでき、リモートワークや外出先での利用が可能です。

クラウドサービス利用のメリット

企業や組織などでクラウドサービスの利用が飛躍的に進んだ主な理由には、以下のような効果があることが挙げられます。これらはパブリッククラウド上でクラウドサービスを提供する側からみた恩恵ですが、結果的に、利用するユーザ側のメリットにもつながります。

※主要なパブリッククラウド事業者を利用した場合の標準的なメリットであり、利用するサービスや契約内容により異なる場合があります。

まとめ

クラウドサービスは、インターネットを介して提供される様々なサービスの総称です。利用者は自宅や外出先から、インターネットなどのネットワークを介してクラウドサービスにアクセスします。クラウドという名称は、ネットワークの模式図で外部ネットワークを雲のように描いたことに由来します。

従来のコンピュータハードウェアやソフトウェアは利用者が自ら管理していましたが、クラウドサービスでは物理的なサーバや設備を管理する必要がなく、必要な時に必要な分だけリソースを利用できるため、柔軟性が高く、コスト効率にも優れています。代表的な形態には、ソフトウェアを提供するSaaS、プラットフォームを提供するPaaS、インフラを提供するIaaSの3種類があります。

クラウドサービスの提供形態は、パブリッククラウドとプライベートクラウドに分かれます。パブリッククラウドは、クラウド事業者が提供する共用のクラウド環境で、初期費用が不要で運用管理を任せることができます。主要なパブリッククラウド事業者には、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)があります。プライベートクラウドは、企業や組織が自社専用のクラウド環境を構築し、オンプレミス型とホスティング型の2タイプがあります。

クラウドサービスの利用は、迅速性・柔軟性、コスト抑制、高い利便性、高い可用性などのメリットがあり、これらが利用するユーザ側の利便性向上につながっています。

クラウド環境のセキュリティに不安はありませんか?

クラウド環境では、設定不備や権限管理の不備がセキュリティリスクにつながることがあります。BBSecでは、クラウド環境の設定状況を確認し、セキュリティ上のリスクを可視化する「クラウドセキュリティ設定診断」を提供しています。

公開日:2024年7月3日
更新日:2026年9月9日

編集責任:木下


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サイバー対処能力強化法とは?4つの柱と施行スケジュールをわかりやすく解説

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サイバー対処能力強化法は、重要インフラ等に対する重大なサイバー攻撃の被害を未然に防ぎ、拡大を抑えるため、官民連携、通信情報の利用、アクセス・無害化、政府体制を整える法律です。届出・インシデント報告などの主要規定は2026年10月1日に施行されますが、通信情報利用の中核規定は別の日に施行されます。

ニュースでは「能動的サイバー防御法」と呼ばれることもありますが、その名称の単独法があるわけではありません。また、民間企業が攻撃者へ反撃できる法律でもありません。本記事では、サイバー対処能力強化法とは何か、対象企業と施行日、企業に求められる対応を、政府の一次資料に基づいてわかりやすく解説します。

サイバー対処能力強化法とは

サイバー対処能力強化法は、正式には「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」です。これと「同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を組み合わせ、国民生活や経済活動、国と国民の安全に重大な影響を与え得るサイバー攻撃への対処能力を高めます。両法は2025年5月16日に成立し、同月23日に公布されました*5。制度の狙いは、攻撃を受けた組織だけに対処を任せるのではなく、事業者が把握したインシデント情報、国が持つ脅威情報、ベンダーが持つ脆弱性情報などを組み合わせ、被害の未然防止と拡大防止につなげることです。従来の「事故後の復旧」に加え、攻撃の兆候を早期に把握して先回りする考え方が強く打ち出されています。

制度を理解する4つの柱

政府の説明資料では、制度の全体像を「官民連携の強化」「通信情報の利用」「アクセス・無害化」「組織・体制整備」の4つの観点から整理しています。本記事でも、この4つに分けて制度の概要を見ていきます。

官民連携の強化

対象となる事業者は、特定重要電子計算機を導入した場合に製品名や製造者名などを届け出ます。また、特定重要電子計算機で一定のサイバーインシデントを認知した場合には、事業所管大臣と内閣総理大臣への報告が必要です。政府は報告情報などを整理・分析し、被害防止に必要な情報を事業者や関係機関へ提供します。守秘義務を伴う情報共有・対策のための協議会も設けられます。

通信情報の利用

国がサイバー攻撃に利用されるインフラを把握するため、通信利用者との任意の協定に基づく取得と、一定の国外関係通信を対象とする同意によらない取得の仕組みが設けられます。取得した通信情報については、人による知得を伴わない自動的な方法によって、サイバー攻撃との関連が認められる機械的情報を選別します。政府資料では、IPアドレスや指令情報などが「意思疎通の本質的な内容ではない情報」の例として示されています。

アクセス・無害化

一定の要件を満たす重大なサイバー攻撃については、警察が攻撃に使用されるサーバー等に対し、攻撃用プログラムの停止・削除などの無害化措置を行う仕組みが整備されます。また、外国政府を背景とする高度で組織的な攻撃などでは、自衛隊が対応する場合もあります。

詳しい要件や通信情報の利用との関係は、「能動的サイバー防御とは?通信情報の利用とアクセス・無害化」で詳しく解説します。

組織・体制整備

政府の司令塔機能も強化されました。内閣官房には国家サイバー統括室と内閣サイバー官が置かれ、サイバーセキュリティ戦略本部の体制も強化されています。通信情報の取扱いや無害化措置を監督するサイバー通信情報監理委員会は、2026年4月1日に設置されました。

施行日は2026年10月1日、ただし段階施行に注意

サイバー対処能力強化法は、すべての規定が同じ日に施行されるわけではありません。主要な規定は2026年10月1日に施行されますが、一部は先行施行され、通信情報の利用に関する規定は別の日に施行されます。主な施行スケジュールは以下のとおりです。

時期主な内容
2025年5月23日法律公布
先行施行政府の組織・体制整備など
2026年4月1日サイバー通信情報監理委員会の設置
2026年10月1日届出・インシデント報告など主要規定
別途政令で定める日通信情報利用に関する中核規定

特定重要電子計算機の届出、インシデント報告、官民協議会、情報の分析・提供、アクセス・無害化などの主要部分は、2026年10月1日に施行されます。しかし、通信情報の取得・利用に関する中核規定は別の施行区分です。法律上、公布から2年6か月を超えない範囲で政令により定める日から施行されるため、「2026年10月1日に全制度が一斉に始まる」と理解するのは正確ではありません。

制度は段階的に動き出しており、総則や基本方針、監督機関の設置など、先に施行された規定もあります。公開日が施行日をまたぐ場合は、「施行されます」を「施行されました」へ変更するだけでなく、通信情報利用の施行状況も別に確認する必要があります。

企業への影響は「直接的な義務」と「取引上の影響」に分かれる

企業への影響を考える際は、まず「自社が法律上の義務を直接負う事業者なのか」と、「対象事業者のベンダーや委託先として対応を求められる可能性があるのか」を分けて考える必要があります。特定重要電子計算機の届出とインシデント報告を直接義務付けられるのは、法律上の「特別社会基盤事業者」です。これは、経済安全保障推進法に基づいて指定された特定社会基盤事業者のうち、特定重要電子計算機を使用する事業者を指します。そのため、基幹インフラ分野に属する企業がすべて一律に対象になるわけではありません。

対象となる事業者やシステム、特定重要電子計算機を導入した場合の届出については、「サイバー対処能力強化法の対象企業と届出義務」で詳しく解説します。

報告対象、速報・詳報の期限、委託先やクラウドで発生した事象の扱いは、「インシデント報告の対象と期限」で確認できます。

ベンダーや委託先に法律上の届出義務が直接課されなくても、契約に基づく通知、ログや技術情報の提供、脆弱性対応を求められる可能性があります。ただし、本法がすべてのベンダーへ一律にログ保存等を義務付けているわけではありません。

まとめ

サイバー対処能力強化法では、官民連携、通信情報の利用、アクセス・無害化、政府の体制整備を通じて、重大なサイバー攻撃による被害を未然に防ぎ、拡大を防止する仕組みが整備されます。企業にとって特に重要なのは、自社が届出・インシデント報告の対象となるのかを確認し、対象となる場合には必要な情報を速やかに把握・報告できる体制を整えておくことです。また、対象事業者のベンダーや委託先にも、契約や取引を通じて対応が求められる可能性があります。次の記事から、「対象企業と届出」「インシデント報告」「通信情報の利用とアクセス・無害化」に分けて詳しく解説します。

よくある質問

▼ サイバー対処能力強化法はいつ成立しましたか
▼ 能動的サイバー防御法という法律があるのですか
▼ サイバー対処能力強化法はすべての企業が対象ですか

参考情報

編集責任:木下


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SCS評価制度とは?★3・★4の違い、開始時期と企業が進める対策【2026年版】

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取引先から届くセキュリティチェックシートの内容が企業ごとに異なり、回答や確認に時間がかかる。――このような悩みを抱えている発注企業、受注企業は少なくありません。サプライチェーンを通じたサイバー攻撃が相次ぐ一方で、取引先の対策状況を客観的に判断する共通の物差しは、これまで十分に整っていませんでした。こうした課題に対応するために構築されたのが、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」、通称SCS評価制度です。★3と★4については、2027年3月頃の運用開始が予定されています。

本記事では、SCS評価制度とはどのような制度なのか、対象企業や義務の有無、★3・★4の違いを整理したうえで、制度開始に向けて企業が今から進めておきたいセキュリティ対策を解説します。

サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(以降、記事内「SCS評価制度」と表記)は、サプライチェーンに関わる組織のセキュリティ対策を共通基準で可視化する制度です。★3は専門家確認付き自己評価、★4は第三者評価と技術検証によって確認され、2027年3月頃の運用開始が予定されています。

※本記事の情報は2026年9月3日時点でIPA、経済産業省およびBBSecが公表している資料に基づいています。今後公表・更新される情報については、最新の公式資料をご確認ください。

SCS評価制度とは

SCS評価制度とは、組織が定めた適用範囲におけるIT基盤などのセキュリティ対策状況を共通の基準で評価し、段階別のマークによって可視化する制度です。2026年3月に公表された制度構築方針を基礎に設計され、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の監督のもと、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営します。*2

この制度で想定されているのは、企業間の取引契約などにおいて、委託元が委託先に適切な段階(★)を提示し、その水準に応じた対策の実施状況を確認する使い方です。委託元は取引先のセキュリティ対策を共通基準で確認しやすくなり、委託先は複数の取引先から届く異なるチェックリストへ個別に回答する負担を軽減できると期待されています。

つまり、SCS評価制度の本質は企業を単純に格付けすることではなく、発注側と受注側がセキュリティ対策について共通の言葉で確認できるようにすることにあります。 ここでいうサプライチェーンは、製造業の部品供給網だけを指すものではありません。業務委託やITサービスの利用関係を含む「ビジネス・ITサービスサプライチェーン」を念頭に置いた制度です。委託先への攻撃による事業・サービスの停止、機密情報の漏えいや改ざん、取引先を踏み台とした不正侵入などのリスクを減らし、サプライチェーン全体のセキュリティ水準を高めることが制度の目的です。

なぜSCS評価制度が創設されたのか

企業の事業活動は、自社だけで完結するものではありません。クラウドサービスや外部のシステム運用、ソフトウェア開発、物流、決済など、さまざまな取引先とのつながりによって成り立っています。そのため、自社が対策を強化していても、委託先のシステムやアカウントを起点として被害が波及するおそれがあります。攻撃経路が取引先へ広がる一方で、対策確認のコストは発注側と受注側の双方に積み上がってきました。SCS評価制度は、この二つの問題を同じ共通基準で扱い、サプライチェーン上の立場やリスクに応じた対策を選びやすくするための仕組みです。

SCS評価制度はいつから始まるのか

IPAのFAQによると、SCS評価制度の★3・★4は、2027年3月頃の運用開始が予定されています。2026年4月には★3・★4の要求事項・評価基準が公開*2され、同年9月2日には、制度の基本規程や評価機関、技術検証事業者などに関する規則が公開・更新されました。*3

今後は、要求事項・評価基準の解説書、取得ガイド、申請方法が2026年10月頃に公開される予定です。★4の第三者評価を担当する評価機関は2026年12月末頃、★3の自己評価結果を確認するSCSセキュリティ専門家は2027年1月以降に公表される予定となっています。申請・登録にかかる費用は、2026年9月3日時点では公表されていません。

制度の詳細は今後も更新されるため、対応を検討する企業はIPAの公式サイトで最新情報を確認する必要があります。ただし、要求事項・評価基準はすでに公開されています。制度開始まで待つのではなく、現状とのギャップを把握し、時間のかかる対策から着手できる段階に入っています。

SCS評価制度の対象企業と義務の有無

SCS評価制度は、特定の業種や企業規模だけに限定されたものではありません。ビジネス・ITサービスサプライチェーンに関わる幅広い組織での活用が想定されています。ただし、すべての企業にマーク取得を法律で義務付ける制度ではなく、SCS評価制度自体は任意制度です。ここは「制度が任意であること」と「取引上求められる可能性があること」を分けて考える必要があります。

同制度では、二社間の取引契約などにおいて、委託元が委託先に適切な段階を提示する利用方法が想定されています。そのため、法令上の一律の義務ではなくても、取引条件や調達要件として特定の段階への対応を求められる可能性はあります。受注側の企業にとっては、取引先から問い合わせを受けてから準備を始めるのではなく、自社の対策状況を説明できる状態にしておくことが重要です。

SCS評価制度の★3・★4・★5の違い

SCS評価制度では、企業に求めるセキュリティ対策を段階別に示します。先行して運用されるのが★3と★4で、より高度なサイバー攻撃への対応を想定する★5は、要求事項や評価方法、開始時期を含めて検討中です。IPAの公表資料に基づいて両段階を整理すると、次のようになります。

比較項目★3★4
想定する水準一般的なサイバー脅威に対処し得る水準初期侵入の防御に加え、被害拡大や攻撃目的の達成を抑え、取引先のデータやシステムの保護に寄与する水準
要求事項26項目43項目(★3の要求事項を包含)
評価方法SCSセキュリティ専門家の確認を受けた自己評価評価機関による第三者評価と技術検証
主な確認内容自己評価書類の確認と助言文書確認、実地審査、技術検証
有効期間登録完了の通知日から1年間登録完了の通知日から3年間。ただし、1年ごとに自己評価を実施

★3:専門家確認付きの自己評価

公表資料では、★3は「一般的なサイバー脅威に対処し得る水準」と位置づけられ、26の要求事項が設定されています。取得希望組織が行った自己評価を、制度に登録されたSCSセキュリティ専門家が確認・助言し、経営層による自己適合宣言などを添えてIPAへ申請します。単なる自己申告ではなく、すべての要求事項・評価基準を満たす必要があり、有効期間は1年間です。

★3で求められる26の要求事項・81の評価基準や、自己評価から登録までの流れについては、「SCS評価制度の★3とは?26の要求事項・81の評価基準と自己評価を解説」で解説しています。

★4:第三者評価と技術検証によって確認

★4は★3の要求事項を包含し、合計43の要求事項が設定されています。初期侵入を防ぐだけでなく、侵入後の被害拡大防止や、取引先のデータ・システムを守る対策までが求められます。評価機関による文書確認・実地審査に加え、評価機関または評価機関から委託された技術検証事業者による技術検証が行われます。有効期間は3年間ですが、有効期間中も1年ごとの自己評価が必要です。

★4で求められる43の要求事項や、第三者評価・技術検証の内容については、「SCS評価制度の★4とは?43の要求事項・第三者評価・技術検証と取得準備を解説」で解説しています。

★3を取得せずに★4を目指すことも可能

★4は★3の内容を包含していますが、★3を先に取得しなければ申請できない制度ではありません。自社のサプライチェーン上の役割や取引先から求められる水準を踏まえ、当初から★4を目指すこともできます。 ただし、★4では43の要求事項に加えて第三者評価と技術検証が行われます。準備負担や必要な期間を把握しないまま目標を決めるのではなく、まず自社の現状と不足事項を確認することが重要です。

自社は★3と★4のどちらを目指すべきか

目指す段階は、会社の規模だけで一律に決めるものではありません。SCS評価制度は、委託元が取引上のリスクに応じて委託先へ適切な段階を提示する使い方を想定しています。まず確認すべきなのは、主要な取引先や業界でどのような水準が求められそうか、自社の事業停止や情報漏えいが取引先へどの程度の影響を及ぼすかという点です。

取引先の機密情報や重要なシステムを扱う企業、障害が発生した際に取引先の事業継続へ大きな影響を与える企業では、より高い水準を求められる可能性があります。一方で、自社だけで段階を断定するのではなく、公開済みの要求事項を確認し、取引先との協議や専門家の助言を踏まえて判断するのが現実的です。

SECURITY ACTIONやISMSとの違い

SCS評価制度と混同されやすい仕組みに、IPAの「SECURITY ACTION」があります。SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策へ取り組むことを自ら宣言する制度です。IPAも、SCS評価制度の★3・★4を目指す準備段階としてSECURITY ACTIONを案内しています。一方、SCS評価制度では公開された要求事項への適合が必要となり、★3では専門家確認、★4では第三者評価と技術検証が加わります。

ISMSは、JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)を基準として、組織が情報セキュリティマネジメントシステムを確立し、実施、維持、継続的改善しているかを第三者の認証機関が評価する仕組みです。これに対しSCS評価制度は、サプライチェーン上の取引で必要となる対策水準を段階別に可視化することを目的としています。

既存の制度に取り組んでいる企業は、これまで整備した規程やリスク管理の仕組みをSCS評価制度への準備に活用できる可能性があります。ただし、SCS評価制度で登録を受けるには、対象となる段階で定められたすべての要求事項・評価基準を満たす必要があります。ISMS認証やSECURITY ACTIONの宣言だけで、SCS評価制度の登録へ自動的に移行するものではありません。

SCS評価制度に向けて企業が今から進める対策

評価の適用範囲とIT資産を整理する

最初に行いたいのは、どの組織、拠点、システムを評価の適用範囲とするかを整理することです。SCS評価制度は、登録を希望する組織が定めた適用範囲内のIT基盤などを対象にします。サーバ、ネットワーク機器、端末、クラウドサービスなどのIT資産が把握できていなければ、要求事項への適合状況も正確に判断できません。

要求事項と現在の対策との差を確認する

次に、公開済みの要求事項・評価基準と、自社の規程、システム設定、実際の運用を照合します。すでに実施している対策、証跡が残っていない対策、未対応の項目に分けると、課題が見えやすくなります。規程を作るだけでなく、決めたルールどおりに運用され、その実施記録を示せるかまで確認しておきたいところです。

優先順位を付けてロードマップを策定する

不足している対策を一度に整備しようとすると、現場の負担が大きくなります。規程の改定で対応できる課題と、ツール導入、システム変更、教育、訓練が必要な課題を分け、担当者、期限、予算を含むロードマップへ落とし込みます。特に★4を目指す場合は、対策を日常業務へ組み込み、実施記録や証跡を継続的に残せる状態が欠かせません。

適用範囲の設定からギャップ分析、是正計画、証跡の整備まで、具体的な準備の進め方については、「SCS評価制度への対応は何から始める?ギャップ分析から是正・運用定着まで」で解説しています。

制度開始前の準備には専門的な支援も有効

SCS評価制度への対応では、要求事項を読むだけでなく、評価範囲の設定、現状分析、規程と実運用の確認、是正計画の策定を並行して進める必要があります。社内だけでは判断が難しい場合、制度開始前に外部の専門家を活用し、自社の現在地を客観的に把握する方法があります。

BBSecでは、SCS評価制度の運用開始に備えた事前対策支援サービスを提供しています。公開済みの★3・★4要求事項に沿って行った事前点検の結果をコンサルタントが分析し、評価サマリーと対策ロードマップを提供する「★3/★4自己評価対応支援(プレリミナリーサーベイ)」のほか、★4の要求事項と既存対策との差を文書確認やインタビューで整理する取得準備支援、策定したロードマップに沿って対策の実行を支援する「★3/★4準拠に向けた対策実行支援(BBSec Prime for Supply Chain Security Measures)」を用意しています。

これらは、SCS評価制度の正式な登録やマーク付与そのものではなく、評価取得に向けた現状把握、準備、是正・実装を支援するサービスです。★3の申請には、SCS評価制度へ登録されたセキュリティ専門家の確認が必要です。★4には、制度運営機関から指定を受けた評価機関による第三者評価と、評価機関または技術検証事業者による技術検証が必要です。その前段階で要求事項とのギャップを明らかにし、対応の手戻りを抑えるための選択肢となります。 ★3・★4の要求事項と自社の現状との差を把握したい、対応ロードマップを整理したい、社内の人員だけでは是正が進まないといった課題がある場合は、制度開始を待たずにご相談ください。

SCS評価制度に関するよくある質問

▼ SCS評価制度はいつから始まりますか
▼ SCS評価制度への対応は義務ですか
▼ ★3と★4の違いは何ですか
▼ ★4を取得する前に★3の取得は必要ですか
▼ SCS評価制度の申請・登録費用はいくらですか

まとめ

SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策を共通基準で評価し、取引先へ説明しやすくする制度です。★3はSCSセキュリティ専門家の確認を受ける自己評価、★4は評価機関による第三者評価と技術検証という違いがあり、2027年3月頃の運用開始が予定されています。制度自体は任意ですが、取引先との契約や調達で活用されることが想定されています。公開済みの要求事項を確認し、適用範囲とIT資産の整理、現状とのギャップ分析、対策ロードマップの策定から準備を始めることが重要です。制度の開始時期を待つのではなく、自社が現在どこまで対応できているのかを把握することが、最初の一歩になります。

【参考情報】

編集責任:木下


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DDoS攻撃を受けたらどうする?―初動対応から復旧までの流れを解説―

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DDoS攻撃では、事前の対策だけでなく、攻撃を受けた際の迅速な初動対応が重要です。対応が遅れると、サービス停止だけでなく、売上機会の損失や顧客対応の混乱につながるおそれがあります。本記事では、DDoS攻撃を受けた場合の初動対応から、ISP・クラウド事業者との連携、復旧、再発防止までの流れを解説します。

DDoS攻撃の基本的な仕組みや種類、被害、対策については、「DDoS攻撃とは?仕組み・被害・対策を企業向けに解説」もあわせてご覧ください。

DDoS攻撃を受けたときに想定される影響

DDoS攻撃を受けると、大量の通信やリクエストによってWebサイトやサービスの応答が遅延し、場合によっては利用できなくなります。影響はサービス停止だけでなく、決済・予約・受発注などの業務停止、顧客・取引先からの問い合わせ増加などにも及ぶ可能性があります。

また、DDoS攻撃による混乱に乗じて、不正アクセスや情報窃取など別の攻撃が行われる可能性も考慮する必要があります。そのため、単なる通信障害と判断せず、セキュリティインシデントとして状況を確認することが重要です。DoS攻撃が単一または少数の攻撃元から行われるのに対し、DDoS攻撃は多数の端末などを悪用して分散的に行われるため、攻撃元の特定や単純な遮断が難しくなります。

DoS攻撃とDDoS攻撃の仕組みや違いについて詳しくは、「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは 仕組み・被害・対策を比較解説」をご覧ください。

DDoS攻撃を受けたときの対応の流れ

DDoS攻撃が疑われる場合、場当たり的に設定変更や機器の再起動を行うのではなく、状況を確認しながら段階的に対応することが重要です。基本的な流れは、次のとおりです。

実際の対応方法は、攻撃の種類や規模、システム構成、利用しているクラウド・ネットワークサービスなどによって異なります。重要なのは、技術担当者だけで対応を完結させようとせず、必要に応じて社内外の関係者と連携できる体制を整えることです。

初動対応で最初に行うべきこと

DDoS攻撃を受けた場合、最初に必要なのは、慌てて機器の再起動や設定変更を行うことではありません。まず、発生している事象がDDoS攻撃によるものなのか、通常のアクセス増加やシステム障害なのかを切り分ける必要があります。初初動対応では、攻撃の有無を確認し、被害範囲を把握し、関係者へ連絡するとともに、可能な範囲でログなどの証跡を保全します。

攻撃発生を確認する

最初に、どのような異常が発生しているかを確認します。Webサイトの応答遅延、タイムアウト、サーバーエラー、CPUやメモリ使用率の急上昇、ネットワーク帯域の逼迫、特定URLへのリクエスト集中などが確認ポイントになります。

アクセス解析、サーバーログ、WAFログ、ロードバランサーのメトリクス、クラウド監視サービス、ネットワーク機器のトラフィック情報を確認し、通常時と比べて異常な増加がないかを調べます。平時のトラフィック量やピーク時の傾向を把握していれば、DDoS攻撃なのか、キャンペーンやニュース掲載などによる正規アクセスの増加なのかを判断しやすくなります。

ただし、DDoS攻撃は必ずしも大量通信だけとは限りません。アプリケーション層を狙う攻撃では、一見すると通常のHTTPリクエストに見える通信が集中し、検索機能、ログイン画面、APIなど特定の処理に負荷がかかることがあります。そのため、通信量だけでなく、アクセス先、リクエスト頻度、送信元の分布、レスポンスコードの変化なども確認します。

被害範囲を把握する

次に、どのサービスが影響を受けているかを把握します。コーポレートサイトだけなのか、ECサイトや会員サイトも影響を受けているのか、社内ネットワークや業務システムにも影響があるのかを整理します。被害範囲を確認する際は、外部からの疎通確認だけでなく、社内からの接続状況、監視アラート、問い合わせ件数、取引先からの連絡内容なども確認します。攻撃対象が特定のドメイン、IPアドレス、ポート、URL、APIなどに集中していることがわかれば、後続のトラフィック制御やCDN・WAF設定の調整にも役立ちます。

また、DDoS攻撃による負荷によってログ出力や監視自体が遅延している可能性もあります。一つの監視画面だけで判断せず、複数の情報源を突き合わせて状況を確認することが重要です。

関係者へ連絡する

DDoS攻撃の可能性がある場合は、社内の関係者へ速やかに連絡します。情報システム部門、セキュリティ担当、ネットワーク担当、Webサイト運用担当、カスタマーサポート、広報、法務、経営層など、影響範囲に応じて必要な関係者へ情報を共有します。サービス停止が顧客や取引先に影響する場合は、技術的な復旧だけでなく、問い合わせ対応や外部への説明も必要になります。復旧の見通しが立っていない段階でも、「現在確認している事象」「影響を受けているサービス」「現在実施している対応」などを社内で共有しておくことで、対応の混乱を抑えられます。あわせて、契約しているISP、クラウド事業者、CDN、WAF、セキュリティ監視サービス、運用保守ベンダーへの連絡準備も進めます。

ログを保全する

DDoS攻撃への対応では、復旧作業と並行して、可能な範囲でログなどの証跡を保全することも重要です。負荷軽減を優先する過程で設定を変更したり、ログローテーションによって過去のログが上書きされたりすると、後から攻撃状況を確認できなくなる可能性があります。保全対象としては、Webサーバーログ、WAFログ、ロードバランサーログ、DNSログ、ファイアウォールログ、クラウド監視メトリクス、ネットワーク機器のトラフィック情報、アラート履歴などが考えられます。

これらの情報は、攻撃の種類や影響範囲を分析するだけでなく、DDoS攻撃の前後に不正アクセスなど別の事象が発生していなかったかを確認する際にも役立ちます。

ISP・クラウド事業者と連携する

DDoS攻撃への対応では、自社だけで完結しようとしないことが重要です。攻撃トラフィックが自社回線に到達してから遮断しようとしても、すでに回線帯域が逼迫していれば、正規利用者の通信も届かなくなる可能性があります。そのため、攻撃の種類や規模に応じて、ISP、クラウド事業者、CDN、DDoS対策サービスなどと連携し、上流側でトラフィックを制御することが重要になります。

ISPへの連絡

オンプレミス環境や自社回線でサービスを公開している場合、ISPへの連絡が必要になることがあります。自社のファイアウォールで遮断する前に回線が逼迫している場合には、上流側でのフィルタリングや経路制御などの対応が必要になる可能性があるためです。

ISPへ連絡する際は、攻撃を受けているグローバルIPアドレス、影響を受けているサービス、発生時刻、観測している通信量、主なプロトコルやポート、送信元の傾向、現在発生している障害内容を整理して伝えます。また、契約内容によっては、DDoS緩和サービスや緊急時のトラフィック制御オプションが提供されている場合があります。攻撃が発生してから確認するのではなく、平時から連絡窓口、受付時間、必要情報、対応範囲などを把握しておくことが望まれます。

CDN・WAFの活用

WebサイトやWebアプリケーションを公開している場合、CDNやWAFを活用して攻撃トラフィックを緩和できる場合があります。CDNはアクセスを分散し、オリジンサーバーへの負荷を軽減するために利用できます。WAFでは、HTTPリクエストの特徴やアクセス頻度などに応じて、不審なアクセスを制御することが可能です。ただし、CDNやWAFを導入しているだけで、すべてのDDoS攻撃を防げるわけではありません。DNSが適切にCDN経由になっているか、オリジンサーバーへ直接アクセスできる状態になっていないか、必要な防御機能が有効になっているかなどを確認する必要があります。

攻撃中にアクセス制御を強化する場合は、正規利用者まで遮断してしまう可能性にも注意が必要です。ログやトラフィックの状況を確認しながら、段階的に調整します。

クラウド事業者との連携

クラウド環境でサービスを運用している場合は、利用しているクラウド事業者が提供するDDoS対策機能やサポートサービスを確認します。主要なクラウド事業者では、ネットワークレベルのDDoS対策機能や、契約内容に応じたサポートが提供されています。攻撃発生時に支援を受けられるよう、対象リソース、攻撃状況、アプリケーションの正常性、WAFやロードバランサーのログなどを共有できる状態にしておくことが重要です。また、クラウド環境ではスケールアウトによって一時的に処理能力を増やせる場合がありますが、攻撃トラフィックに応じてリソースを増やし続ければ、利用料金が増大する可能性があります。CDN、WAF、ロードバランサー、オートスケーリング、DDoS対策機能などを組み合わせて対応することが重要です。

復旧時に確認すべきポイント

DDoS攻撃の通信量が減少し、Webサイトやサービスが再び利用できるようになっても、すぐに「復旧完了」と判断するのは危険です。攻撃が一時的に弱まっている可能性や、緊急対応として行った設定変更がサービスに影響している可能性があります。また、DDoS攻撃と同時に別の攻撃が行われていなかったかも確認する必要があります。

サービスが正常に利用できるか

Webサイトへアクセスできることだけでなく、ログイン、検索、決済、予約、API連携など、主要な機能が正常に動作しているかを確認します。サーバーやネットワーク機器のCPU・メモリ・帯域使用率、エラー発生状況なども確認し、通常時に近い状態へ戻っているかを確認します。また、攻撃が再開する可能性も考慮し、一定期間はトラフィックやアラートを継続して監視することが重要です。

二次被害が発生していないか

DDoS攻撃への対応中は、大量のアラートやサービス障害への対応に注意が集中します。そのため、同じ時間帯に不審なログインや脆弱性を狙ったアクセスなど、別の不審な事象が発生していなかったかを確認します。WAF、認証、サーバー、ネットワーク機器、EDRなどのログを確認し、通常とは異なる挙動が確認された場合は、必要に応じて追加調査を行います。

一時的に変更した設定がないか

DDoS攻撃への緊急対応として、IPアドレスや地域によるアクセス制限、WAFルールの変更、レート制限などを実施することがあります。こうした設定を残したままにすると、正規利用者のアクセスや業務に影響する可能性があります。攻撃収束後は、変更した設定とその目的を確認し、継続すべき設定と元に戻す設定を整理します。

顧客や取引先への説明

サービス停止などによって顧客や取引先に影響が発生した場合は、必要に応じて障害の発生時刻、影響範囲、復旧状況などを説明します。この段階では、確認できていない原因や被害を断定しないことも重要です。技術部門だけで判断せず、広報、法務、顧客対応部門などと連携して説明内容を整理します。

再発防止に向けて見直すべきこと

サービスを復旧させた後は、今回の攻撃と対応内容を振り返り、次の攻撃に備えます。DDoS攻撃を完全に防ぐことは難しいため、「攻撃を受けないこと」だけではなく、「受けても影響を抑え、早期に復旧できること」が重要です。

攻撃ログやトラフィックの分析

保全したログやトラフィック情報を確認し、攻撃がいつ始まり、どのサービスが狙われ、どのような通信が発生していたのかを整理します。あわせて、検知から関係者への連絡、緩和策の実施、サービス復旧までにどの程度の時間を要したかを振り返ることで、対応上の課題を把握できます。

ネットワーク構成の見直し

まず見直すべきは、ネットワーク構成です。公開サービスが単一の回線や単一拠点に依存していないか、CDNやAnycastを活用できる構成になっているか、オリジンサーバーが直接攻撃を受けやすい状態になっていないかを確認します。また、Webサイト、API、管理画面、社内業務システムなどが同じネットワークに過度に依存している場合、一つの攻撃による影響が複数のサービスや業務へ波及する可能性があります。公開系と管理系の分離や、DNS構成なども含め、攻撃を受けた際に影響が広がりにくい構成になっているかを確認することが重要です。

DDoS攻撃では、回線帯域、ネットワーク機器、DNS、Webアプリケーション、APIなど、攻撃の種類によって影響を受ける箇所が異なります。今回の攻撃でどこがボトルネックになったのかを確認し、その結果をネットワーク構成の見直しに反映することが、次の攻撃による影響を抑えることにつながります。

DDoS対策サービスの導入・見直し

次に、DDoS対策サービスの導入や見直しを検討します。CDN、WAF、DDoSスクラビング、クラウド事業者のDDoS保護機能、ISPのDDoS緩和サービスなど、選択肢は複数あります。重要なのは、自社のサービス特性に合った対策を選ぶことです。静的コンテンツが多いサイトであればCDNによるキャッシュが有効な場合があります。ログインや検索、予約、決済など動的処理が多いサービスでは、WAFやレート制限、アプリケーション層の監視が重要になります。大規模な帯域攻撃が想定される場合は、上流側でのDDoS緩和やスクラビングを検討する必要があります。

また、対策サービスは導入して終わりではありません。緊急時の連絡窓口、対応開始条件、保護対象のIPアドレスやドメイン、ログの取得方法、誤検知時の解除手順、費用条件を事前に確認しておく必要があります。攻撃発生時に初めて管理画面を開く状態では、十分な対応ができないおそれがあります。

DDoS攻撃に備えて平時から準備しておくこと

DDoS攻撃が発生してから対策や連絡体制を検討していては、初動が遅れるおそれがあります。攻撃による影響を抑え、迅速に対応・復旧するためには、ネットワーク構成やDDoS対策サービス、インシデント対応手順などを平時から確認し、実際の攻撃を想定した訓練を行っておくことが重要です。

インシデント対応手順の見直し

対応手順には、攻撃発生時の確認項目、社内連絡先、外部事業者の連絡先、判断権限、ログ保全方法、顧客告知の流れ、復旧判断基準を含めます。特にDDoS攻撃では、技術部門だけでなく、カスタマーサポート、広報、営業、法務、経営層との連携が必要になるため、役割分担を明確にしておくことが重要です。

また、インシデント対応手順は一度作成しただけでは十分ではありません。サービス構成の変更、クラウドへの移行、新しいWAFやCDNの導入、担当者の異動、外部ベンダーの変更などがあれば、それにあわせて手順も更新する必要があります。古い連絡先や現在は利用していないシステム名などが残っていないか、定期的に確認しておきましょう。

DDoS攻撃を含むセキュリティインシデントでは、事前に対応手順を整備しておくことが重要です。関連記事「セキュリティインシデントとは?基礎知識と代表的な事例を解説」もあわせてご覧ください。

訓練の実施

DDoS攻撃への対応力を高めるには、訓練の実施が有効です。実際の攻撃時には、監視アラート、問い合わせ、社内報告、外部事業者との連絡が同時に発生します。手順書を読むだけでは、こうした混乱の中で適切に動けるかは分かりません。

訓練では、「Webサイトの応答が急激に悪化した」「特定APIに大量アクセスが集中している」「ISPから異常トラフィックの連絡があった」など、具体的なシナリオを用意します。そのうえで、誰が最初に状況を確認するのか、どの情報を集めるのか、誰がISPやクラウド事業者へ連絡するのか、どの段階で顧客告知を検討するのかを確認します。

訓練後は、手順の不備や連絡体制の弱点を洗い出し、改善します。DDoS攻撃の対応では、攻撃を完全に止めることだけでなく、被害を限定し、事業への影響を抑え、利用者に適切に説明することが重要です。そのためには、平時からの準備と訓練が欠かせません。

まとめ

DDoS攻撃を受けた場合は、単にサーバーを復旧させるだけでなく、攻撃状況の確認、影響範囲の把握、関係者への連絡、ISP・クラウド事業者などとの連携を並行して進める必要があります。また、通信量が減少したからといって、すぐに対応を終了するのではなく、サービスが正常に利用できることや、DDoS攻撃の前後に別の不審な事象が発生していないことを確認することも重要です。

DDoS攻撃を完全に防ぐことは困難ですが、平時から連絡体制やログ取得、外部事業者との連携方法を整理しておくことで、攻撃発生時の混乱を抑え、サービスへの影響を最小限にすることができます。

【参考情報】

編集責任:木下


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生成AIとは? -生成AIの基礎知識と最新動向-

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2025年春、生成AIが注目を集めています。今回は、生成AI関連で現在注目されている主要用語の解説、そしてDeepSeek R1の登場に伴う生成AIのセキュリティ上の課題について解説します。

はじめに

生成AIは、膨大なデータからパターンを学習し、文章や画像、音声などのコンテンツを自動生成する技術です。私たちの日常生活の中では、車載カメラでの画像認識や農業での生育・病害予測など、深層学習・機械学習を用いたAI技術がすでに利用されていますが、生成AIはさらにその範囲を拡大し、さまざまな業界に革新をもたらしています。

生成AI、エージェントAI、大規模言語モデル(LLM)、基盤モデル

昨今注目されているのは私たちの問いかけに対して何かを生成・出力する生成AIですが、日進月歩の分野でもあることから様々な用語が出てきています。本記事ではジョージタウン大学のCSET(Center for Security and Emerging Technology)やインド工科大学カンプール校(IITK)による定義から以下のように定義して話を進めていきたいと思います。

生成AIとは

コンテンツの生成を主な機能とするあらゆるAIシステム。膨大なデータセットからパターンを発見し、出力するもの

例:

  • 画像生成ツール(Midjourney(ミッドジャーニー)、Stable Diffusionなど)
  • 大規模言語モデル(LLM)(GPT-4、PaLM、Claudeなど)
  • コード生成ツール(Copilotなど)
  • オーディオ生成ツール(VALL-E、resemble.aiなど)

エージェントAI(Agentic AI・AIエージェント)とは

事前に設定された目標に対して、人間の継続的な監視なしに、自律的に決定とアクションの実行を行うもの

LLM(大規模言語モデル)とは

言語と連携するAIシステムの一種
– 過去数年間にわたって多くのパラメータでモデルをトレーニングすることでパフォーマンスが向上されるといわれている
– 「言語」のターゲットとしてどこまでが含まれるかの定義は明確ではない(プログラミングコードはカウントされるのか、主に言語で動作するが画像を入力として受け入れるものはどうか、など)

例:OpenAIのGPT-4、GoogleのPaLM、MetaのLLaMAなど

基盤モデルとは

より多くの具体的な目的に適応できる、幅広い機能を備えたAIシステム。多くのLLMが含まれる

例:初代ChatGPTにおける GPT-3.5(LLM、基盤モデル)

出典:
・CSET
「What Are Generative AI, Large Language Models, and Foundation Models?」
・E&ICT Academy, IIT Kanpur
「gentic AI vs. Generative AI: Key Differences and Use Cases in 2025」

機密情報、個人情報とAI

DeepSeekショック

2025年に入って注目を浴びたニュースのひとつに、中国のAI研究所DeepSeekが公開した「DeepSeek-R1」があります。DeepSeekは商用利用可能なオープンソースとして公開され、チャットボットが無料であることで注目される一方で、多くのブログやレポートでセキュリティ上の問題点が指摘されています。指摘された問題は大きく分けて以下の3点になります。

  1. ジェイルブレイク脆弱性
    武器や有害物質、悪意のあるスクリプトやマルウェアの生成などが可能となるジェイルブレイク脆弱性の存在*4
  2. 通信の安全性や機密情報の取り扱いに関する問題*2
  3. データの送信先
    データをチャイナテレコム(中国電信)やバイトダンス(TikTok運営企業)に送信していること*3

AIにおける「ジェイルブレイク」とは

AIジェイルブレイクとは、AIに設定されたガードレール(緩和策)の故障を引き起こす可能性のある手法です。これにより、システムがオペレーターのポリシーに違反したり、1人のユーザーに過度に影響を受けた決定を下したり、悪意のある指示を実行したりするなど、回避されたガードレールから被害が生じます。

参考情報:
・Microsoft「AI jailbreaks: What they are and how they can be mitigated」

このように、悪意のあるスクリプトやマルウェアの生成が容易に行われることは、MaaS/RaaS/PhaaSなどのサービス化したサイバー脅威の普及に匹敵するレベルで、犯罪のすそ野を広げていく可能性があります。実際の攻撃のうち、マルウェアキャンペーンに関しては2024年時点でAIは直接的に大量に使用されていないというレポート*4がありますが、DeepSeekのようなガードレールが機能しない生成AIがこの状況を変える可能性もあります。

また、通信の安全性やデータの取扱いに問題があるサービスを利用することで、うっかり入力した個人情報や機密情報が漏洩し、二次被害を招く可能性も、サイバーセキュリティの観点から注意すべきでしょう。

ジェイルブレイクとガードレール(緩和策)

ここで主要な基盤モデルとそれぞれのジェイルブレイクや情報漏洩の報告の有無をみてみましょう。

表1 主な基盤モデルとジェイルブレイク・情報漏洩の報告の有無

基盤モデルジェイルブレイク情報漏洩
OpenAI GPT-4 あり該当なし
OpenAI GPT-4oあり該当なし
OpenAI GPT-4o-miniあり該当なし
Google Gemini Flashあり該当なし
Google Gemini Proあり該当なし
Anthropic Claude3.5 Sonnetあり該当なし
Anthropic Claude3.5 Opusあり該当なし
Meta Llama 3.1あり該当なし
Meta Llama 3 8Bあり該当なし
Grok 3あり該当なし
DeepSeek R1ありあり

情報漏洩に関して現行の基盤モデルで問題となったのはDeepSeek R1だけとなっていますが、ジェイルブレイクに関してはどの基盤モデルも何らかの形で(悪いほうの)実績があります。多くは論文で報告されているものであり、実際の被害が報告されているものではありません。しかし、かつてサイバーセキュリティにおける脆弱性も同様に論文や実証レベルでの問題が大半で悪用されていなかったものが、組織的に悪用するための武器化や武器化したツールのサービス化などであっという間に広く悪用され、社会を揺るがす問題になっていることを考えると、AIにおいて同じことが起きないとは言い切れません。

もちろん、基盤モデルを提供する事業者各社もジェイルブレイクに対するガードレールは設けていますが、実際にジェイルブレイクを狙った試行も報告*5されています。脅威アクターによるAIの悪用が今後なんらかの被害をもたらす可能性は否定できません。


関連記事:
「RaaSの台頭とダークウェブ~IPA 10大セキュリティ脅威の警告に備える」
「IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる -注目が高まる犯罪のビジネス化-」

参考情報:
・「GPT-4 Jailbreaks Itself with Near-Perfect Success   Using Self-Explanation」
  https://openreview.net/pdf?id=SMK34VBntD
・「ChatGPT-4o contains security bypass vulnerability through time and search functions called “Time Bandit”」
  https://kb.cert.org/vuls/id/733789
・「BEST-OF-N JAILBREAKING」
  https://arxiv.org/pdf/2412.03556
・https://github.com/haizelabs/llama3-jailbreak
・https://adversa.ai/blog/grok-3-jailbreak-and-ai-red-teaming/

公開日:2025年4月1日
更新日:

編集責任:木下


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AIの利用拡大に伴い、企業を取り巻くIT環境やセキュリティリスクも変化しています。公開IT資産の把握、脆弱性の確認、セキュリティ対策の有効性検証など、自社の課題に応じた対策をご相談ください。


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AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策

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AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対アイキャッチ画像策

生成AIの業務利用が広がる一方、情報漏洩や誤情報、著作権、AIシステムを狙った攻撃など、新たなリスクも生じています。本記事では、企業がAIを安全に活用するために押さえておきたい、AIセキュリティの主なリスクと対策を紹介します。

AIセキュリティについて、テーマ別に詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

AIセキュリティとは

AIセキュリティとは、AIの利用やAIを組み込んだシステムに伴うセキュリティ上のリスクを把握し、情報やシステム、業務を守るための取り組みです。企業におけるAI活用を考える際には、大きく二つの観点があります。

一つは、AIを利用することで生じるリスクです。従業員が生成AIに機密情報や個人情報を入力することによる情報漏洩、生成された誤情報の利用、著作権や知的財産に関する問題、企業が把握していないAIサービスを業務に利用する「シャドーAI」などが挙げられます。

もう一つは、AIシステムそのものに対するセキュリティリスクです。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムでは、悪意のある指示によって意図しない動作を引き起こすプロンプトインジェクションをはじめ、機密情報の漏洩や不適切な権限の利用など、AI特有のリスクを考慮する必要があります。

生成AIやAIエージェントの普及により、AIは単に質問に回答するツールから、社内データを参照したり、外部のシステムやサービスと連携して処理を行ったりする存在へと用途を広げています。そのためAIセキュリティでは、従業員の利用ルールだけでなく、AIに接続するデータやシステム、付与する権限まで含めてリスクを捉えることが重要になります。

AIセキュリティが注目される背景

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミングなど幅広い業務で活用されています。また、既存の業務システムやWebサービスに生成AIを組み込むケースも増え、企業とAIとの接点は広がっています。

こうした活用の拡大に伴い、セキュリティ上の課題も顕在化しています。従業員が組織の許可を得ずに生成AIを利用するシャドーAIによる情報漏洩や、不正確な出力による業務への影響などは、その代表例です。

さらに、AIシステム自体が攻撃対象になることも考慮しなければなりません。従来のWebアプリケーションやクラウドサービスへのセキュリティ対策に加えて、AI・LLMの特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

AIをめぐっては、国内外で安全性や透明性、適正な利用に関するルールやガイドラインの整備も進められています。企業には、技術的なセキュリティ対策だけでなく、こうした動向を踏まえてAIの利用方針や管理体制を継続的に見直すことも求められます。

従来のセキュリティ対策との違い

AIを利用する場合でも、アクセス制御や認証、脆弱性管理、ログ監視といった従来のセキュリティ対策が不要になるわけではありません。これらは引き続き重要な基盤となります。そのうえでAIセキュリティでは、AIへの入力、AIからの出力、AIが参照するデータ、AIに与える権限といった新たな要素についても対策を考える必要があります。

例えば、システムへのアクセス権限が適切に管理されていても、従業員が外部の生成AIサービスへ機密情報を入力すれば、別の経路から情報が外部へ渡る可能性があります。また、AIを組み込んだシステムでは、通常の操作では想定していなかった指示によってAIの動作が誘導される可能性もあります。

したがって、AIセキュリティでは従来のサイバーセキュリティを土台としながら、「AIをどのように利用するか」と「AIを組み込んだシステムをどのように守るか」の両面から対策を考えることがポイントとなります。

企業が注意すべき生成AIの主なリスク

生成AIは業務効率化や情報収集などに役立つ一方、使い方によっては情報漏洩や誤った判断につながる可能性があります。企業で利用する際には、どのような情報を入力するのか、生成された内容をどのように扱うのかといった観点からリスクを把握する必要があります。

機密情報・個人情報の漏洩

生成AIに顧客情報や社内の機密情報、個人情報などを入力すると、利用するサービスの仕様や設定によっては、入力した情報がサービス提供者側で保存・利用される可能性があります。業務で生成AIを利用する場合は、入力してよい情報と禁止する情報を明確にするとともに、利用するサービスのデータ取り扱い方針や設定を確認することが必要です。

誤情報・ハルシネーション

生成AIは、事実と異なる内容や、もっともらしい誤情報を生成することがあります。こうした現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。

生成された文章や回答を十分に確認せず、社内資料や顧客への回答、意思決定などに利用すると、誤った情報が業務に影響を及ぼすおそれがあります。重要な情報については、信頼できる情報源と照合するなど、人による確認が欠かせません。

著作権・知的財産に関するリスク

生成AIでは、入力する情報と生成されたコンテンツの双方について、著作権や知的財産への配慮が必要です。第三者が権利を持つ文章や画像などを安易に入力したり、AIが生成したコンテンツを確認せずに公開・商用利用したりすると、権利上の問題につながる可能性があります。利用する生成AIサービスの規約を確認するとともに、生成物の利用方法に応じた確認体制を整えることが求められます。

シャドーAI

シャドーAIとは、組織が把握・管理していない生成AIサービスを従業員が業務で利用している状態を指します。企業が生成AIの利用を一律に禁止していても、従業員が個人アカウントなどを使って利用すれば、機密情報が管理外のサービスへ入力される可能性があります。そのため、単に利用を禁止するだけでなく、利用可能なAIサービスや用途を明確にし、組織として利用状況を把握できる環境を整えることが重要です。

生成AIの利用に伴うリスクや企業が取るべき対策については、「生成AIのリスクとは?企業利用で注意すべき情報漏洩・著作権・誤情報と対策」で詳しく紹介します。

AIを狙ったサイバー攻撃にも注意が必要

AIセキュリティで考えるべきなのは、従業員が生成AIを安全に利用するための対策だけではありません。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムが普及することで、AIの仕組みや特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションは、攻撃者が悪意のある指示をAIに与えることで、本来想定されていない動作や出力を引き起こそうとする攻撃です。ユーザーが直接入力する指示だけでなく、AIが読み込むWebページや文書などに悪意のある指示を埋め込む「間接プロンプトインジェクション」にも注意が必要です。外部の情報を参照するAIや、他のシステムと連携して処理を行うAIでは、影響範囲が広がる可能性があります。

センシティブ情報の漏洩

AIを組み込んだシステムでは、モデルが参照できる情報やユーザーの入力内容などが、意図せず出力される可能性があります。特に、社内文書や顧客情報などをAIから参照できるようにしている場合には、利用者の権限に応じて参照可能な情報を制御するなど、AIだけに依存しないアクセス制御が必要です。

データやモデルへの不正な操作

AIの動作は、学習データや外部から取得する情報などの影響を受けます。攻撃者によってデータが意図的に操作されれば、AIの判断や出力が影響を受ける可能性があります。AIが参照するデータの信頼性を確認するとともに、データへのアクセスや変更を適切に管理することが求められます。

AIに与える権限にも注意

AIエージェントなど、AIが外部サービスや社内システムと連携して処理を実行する仕組みでは、AIにどこまでの権限を与えるかが重要になります。必要以上の権限を付与すると、AIが意図しない操作を行った場合や攻撃者に悪用された場合の影響が大きくなります。人のアカウントと同様に、AIについても必要最小限の権限を設定し、重要な処理には人による確認を組み合わせることが重要です。

OWASPが示すLLMアプリケーションのリスク

LLMを利用したアプリケーションには、従来のWebアプリケーションと共通するリスクに加え、プロンプトインジェクションをはじめとしたLLM特有のリスクがあります。

OWASPでは、LLMや生成AIアプリケーションで特に注意すべきセキュリティリスクを整理しています。AIを組み込んだサービスを開発・提供する企業では、こうしたリスクを踏まえて、設計・開発・運用の各段階で対策を検討する必要があります。

具体的な脅威と対策については、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で詳しく紹介します。

AIセキュリティ対策は「利用」と「システム」の両面から考える

ここまで見てきたように、AIセキュリティには、従業員による生成AIの利用に伴うリスクと、AIを組み込んだシステムそのものに対するリスクがあります。そのため企業では、利用ルールの整備だけでなく、ガバナンスや技術的なセキュリティ対策を組み合わせて取り組むことが必要です。

AI利用ルールを整備する

まず、従業員がどのような条件でAIを利用できるのかを明確にします。利用可能なAIサービスや用途、入力してはいけない情報、生成物を利用する際の確認方法などを定め、従業員が判断に迷わないルールにすることが重要です。また、AIサービスや利用方法は変化するため、一度ルールを作成して終わりにせず、利用状況に応じて見直していく必要があります。

AIガバナンスの体制を整備する

AIの利用を個々の従業員や部門だけに任せるのではなく、組織として管理する仕組みも必要です。誰がAI利用を管理するのか、どのようにリスクを評価するのか、問題が発生した場合にどの部門が対応するのかなど、役割と責任を明確にします。

AI利用ガイドラインの策定方法や組織としての管理体制については、「AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方」で詳しく紹介します。

シャドーAIを把握・管理する

ルールを整備しても、組織が把握していないAIサービスが利用されていれば、リスクを十分に管理できません。どの部門でどのようなAIが利用されているかを把握し、必要に応じて利用サービスを承認制にするなど、実際の利用状況とルールを一致させる取り組みが必要です。

AIを組み込んだシステムのセキュリティを確認する

AIを利用したシステムを開発・導入する場合には、通常のアプリケーションと同様のセキュリティ対策に加えて、AI・LLM固有のリスクも確認します。入力・出力の検証、アクセス制御、権限管理、APIや外部サービスとの連携、ログの記録などを確認し、プロンプトインジェクションをはじめとする攻撃への対策も検討します。

継続的なセキュリティ対策の見直し

AIを取り巻くサービスや技術、攻撃手法は変化しています。現在安全と判断した利用方法や設定であっても、将来も同じとは限りません。AIの利用状況や新たな脅威を定期的に確認し、ガイドラインやシステム設定、セキュリティ対策を継続的に見直していくことが重要です。

企業はAIセキュリティ対策をどこから始めるべきか

AIセキュリティといっても、すべての対策を一度に導入する必要はありません。まずは自社でAIがどのように使われているかを把握し、リスクの高い領域から優先して対策を進めます。

STEP1 AIの利用状況を把握する
利用しているAIサービス、利用部門、用途、取り扱う情報などを整理します。
STEP2 扱う情報とリスクを整理する
機密情報や個人情報など、AIで扱う情報と想定されるリスクを確認します。
STEP3 AI利用ガイドラインを整備する
利用可能なサービスや用途、禁止事項、生成物の確認方法などを定めます。
STEP4 技術的なセキュリティ対策を実施する
AIを組み込んだシステムについて、アクセス制御や権限管理、入出力の検証、脆弱性への対策などを行います。
STEP5 継続的に評価・改善する
利用状況や新たなリスクを確認し、ルールと技術対策を定期的に見直します。

AIの利用を一律に禁止するのではなく、どこにリスクがあるのかを把握したうえで、業務上のメリットと安全性のバランスを取りながら活用していくことが重要です。

AIセキュリティに関するよくある質問

▼ AIセキュリティとは何ですか?
▼ 生成AIを業務で利用する場合、どのようなリスクがありますか?
▼ AI利用ガイドラインには何を定めればよいですか?
▼ LLMにはどのようなセキュリティリスクがありますか?

まとめ

生成AIの普及によって、企業がAIを業務やシステムに取り入れる機会は広がっています。それに伴い、情報漏洩や誤情報、著作権などの利用上のリスクだけでなく、プロンプトインジェクションをはじめとするAI・LLMを狙った攻撃についても考える必要があります。AIセキュリティでは、AIを安全に利用することとAIを組み込んだシステムを安全にすることの両面から対策を進めることがポイントです。まずは自社でどのようにAIが利用されているかを把握し、AI利用ガイドラインや管理体制を整備するとともに、AIを組み込んだシステムについてはアクセス制御や権限管理、入出力の検証など、技術的な対策も進めていきましょう。

AIを取り巻く技術や脅威は変化しています。利用を一律に制限するのではなく、リスクを継続的に把握・評価しながら、安全なAI活用につなげていくことが重要です。


参考情報

公開日:2025年4月16日
更新日:2026年8月26日

編集責任:木下


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DDoS攻撃とは?仕組み・種類・被害・対策を企業向けに解説

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DDoS攻撃は、大量の通信を送り付けて、Webサイトやサーバーを利用しにくくするサイバー攻撃です。サービス停止や業務の停滞を招くおそれがあるため、企業は仕組みと対策を理解しておく必要があります。本記事では、DDoS攻撃の種類や被害、基本的な対策を解説します。

DoS攻撃との違いを詳しく知りたい方、実際にDDoS攻撃を受けた場合の初動対応や復旧の流れについて知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは」
「DDoS攻撃を受けたらどうする?」

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、Webサイトやサーバー、ネットワーク機器などに大量の通信やリクエストを送り付け、正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃です。攻撃を受けると、Webサイトの表示遅延やサービス停止、ネットワークの応答遅延などが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

DDoS攻撃の特徴は、攻撃者が多数の端末やネットワークを利用する点にあります。攻撃者は、マルウェアなどに感染した機器で構成される「ボットネット」を悪用します。

世界中の端末から一斉に通信を送るため、単一の送信元を遮断するだけでは防ぎにくい攻撃です。近年では、ECサイトや金融機関、自治体、医療機関など、幅広い組織が標的となっています。企業規模を問わず対策が求められています。

また、DDoS攻撃は、サービス停止だけを目的とするものではありません。攻撃による混乱に乗じて、不正アクセスや情報窃取など、別の攻撃を試みる「陽動」として利用されるケースもあります。

DDoS攻撃を理解するためには、まずDoS攻撃との違いや、どのような目的で実行されるのかを知ることが重要です。

DoS攻撃との違い

DoS攻撃は、単一または少数の端末からサービスを妨害する攻撃です。DDoS攻撃は、多数の端末から分散して通信を送るため、攻撃元の特定や遮断が難しくなります。

DoS攻撃とDDoS攻撃の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは」

なぜDDoS攻撃が行われるのか

DDoS攻撃の目的は、単にWebサイトやサービスを停止させることだけではありません。企業活動を妨害したり、金銭を要求したり、別のサイバー攻撃を成功させるための陽動として利用されたりするなど、さまざまな目的で実行されます。

例えば、ECサイトや予約システムを停止させることで売上機会の損失を狙うケースや、競合他社への業務妨害を目的とした攻撃が報告されています。

また、サービス停止による混乱の中で、不正アクセスや情報窃取を試みることもあります。このような「陽動攻撃」として、DDoS攻撃が利用されるケースもあります。

近年では、IoT機器の普及やボットネットの大規模化が進んでいます。その結果、専門的な知識がなくても、攻撃サービスを利用して大規模なDDoS攻撃を実行できる環境が問題視されています。

こうしたサービスは、DDoS-for-Hire、すなわちDDoS請負サービスなどと呼ばれます。そのため、企業規模を問わず、DDoS攻撃を想定した備えが重要になっています。

DDoS攻撃の仕組み

DDoS攻撃は、多数の端末やサーバから、標的へ一斉に大量の通信を送る攻撃です。サーバやネットワーク機器に過剰な負荷をかけ、正常なサービス提供を妨げます。

攻撃対象は、Webサイトだけではありません。DNSサーバやVPN、API、クラウドサービスなど、多岐にわたります。

攻撃者は、自ら大量の通信を送るのではありません。マルウェアに感染したIoT機器やパソコン、サーバーなどを遠隔操作します。そして、ボットネットを構築して攻撃を実行するのが一般的です。

また、DDoS攻撃は、大量の通信によって回線帯域を圧迫するものだけではありません。ネットワーク機器に負荷をかける攻撃や、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送る攻撃など、複数の手法があります。

そのため、自社サービスを守るためには、攻撃の仕組みを理解し、それぞれの手法に応じた対策を講じることが重要です。

ボットネットによる分散攻撃

DDoS攻撃では、多くの場合「ボットネット(Botnet)」と呼ばれるネットワークが悪用されます。ボットネットとは、マルウェアに感染したパソコンやサーバ、IoT機器などが攻撃者の遠隔操作下に置かれた状態のネットワークです。攻撃者はこれらの端末へ一斉に指示を送り、標的に大量の通信を発生させます。

近年では、監視カメラやルーター、ネットワーク機器など、十分なセキュリティ対策が施されていないIoT機器がボットネットに組み込まれる事例も確認されています。機器の所有者が気付かないまま攻撃に加担しているケースも少なくありません。

ボットネットを利用したDDoS攻撃では、世界中に分散した多数の端末から同時に通信が送られるため、単一の送信元を遮断するだけでは十分な対策が難しくなります。

攻撃の流れ

DDoS攻撃は、一般的に次のような流れで実行されます。

  1. ボットネットの構築
    攻撃者は、マルウェアに感染したパソコンやサーバー、IoT機器などを遠隔操作できる状態にし、ボットネットを構築します。
  2. 攻撃対象の選定
    WebサイトやECサイト、VPN、DNSサーバー、APIなど、攻撃対象となるシステムを選定します。
  3. 攻撃命令の送信
    攻撃者がボットネットへ攻撃命令を送ると、多数の端末が一斉に標的へ通信やリクエストを送信します。
  4. サービスへの影響
    大量の通信によってネットワーク回線やサーバー、ネットワーク機器、Webアプリケーションに負荷がかかり、応答遅延やサービス停止などが発生します。

攻撃の種類によっては、ネットワーク帯域を圧迫するだけでなく、ファイアウォールやロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかけるものや、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送るものもあります。そのため、攻撃の種類に応じた対策を講じることが重要です。

DDoS攻撃の主な種類

DDoS攻撃にはさまざまな手法がありますが、大きく分けると「ボリューム攻撃」「プロトコル攻撃」「アプリケーション層攻撃」の3種類に分類できます。

攻撃対象や攻撃方法が異なるため、サービスへの影響や有効な対策もそれぞれ異なります。攻撃の種類を理解することは、自社サービスがどのようなリスクにさらされているのかを把握し、適切な対策を講じるための第一歩です。

ここでは、代表的な3つの攻撃手法について解説します。

ボリューム攻撃

ボリューム攻撃は、大量の通信を送り付けてネットワーク回線の帯域を圧迫し、正規の利用者がサービスへアクセスできない状態にする攻撃です。DDoS攻撃の中でも代表的な手法であり、回線容量を超える通信が発生すると、サーバーが正常に稼働していてもサービスを利用できなくなることがあります。

代表的な手法として、UDP FloodやDNS Amplification(DNSリフレクション攻撃)、NTP Amplificationなどがあります。特にDNSやNTPなどの公開サーバーを悪用する反射・増幅型攻撃では、小さなリクエストを利用して何倍もの通信量を発生させるため、攻撃者は比較的少ない通信量でも大きな負荷を与えることができます。

プロトコル攻撃

プロトコル攻撃は、TCP/IPなどの通信プロトコルの仕組みを悪用し、サーバーやファイアウォール、ロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかける攻撃です。通信回線そのものを埋め尽くすボリューム攻撃とは異なり、ネットワーク機器やサーバーの処理能力を消費させることで、正常な通信を妨害します。

代表的な手法としては、SYN Floodがあります。TCP通信の接続要求(SYNパケット)を大量に送り付けることで、サーバは接続待ちの状態を維持し続けることになり、新たな正規ユーザからの接続を受け付けられなくなる場合があります。このほか、Ping FloodやSmurf攻撃などもプロトコル攻撃の一種として知られています。

アプリケーション層攻撃

アプリケーション層攻撃は、WebサイトやWebアプリケーション、APIなどを標的とするDDoS攻撃です。利用者が直接アクセスするサービスが狙われます。

通信量そのものはそれほど多くなくても、サーバーが処理に時間を要するリクエストを大量に送ることで、CPUやメモリなどのリソースを消費させ、サービスの応答遅延や停止を引き起こします。

代表的な手法としてHTTP Floodがあります。通常のWeb閲覧と同じHTTPリクエストを大量に送信するため、正規のアクセスと見分けにくく、単純な通信量の監視だけでは検知が難しい場合があります。また、検索機能やログイン画面、APIなど、サーバー負荷の高い処理を集中的に狙う攻撃も確認されています。

DDoS攻撃による被害

DDoS攻撃による影響は、単にWebサイトが一時的に閲覧できなくなるだけではありません。サービス停止による売上機会の損失や業務の停滞、顧客対応の負荷増加など、企業活動全体へ影響が及ぶ可能性があります。

また、長時間にわたってサービスが利用できない状態が続くと、企業の信頼低下やブランドイメージの毀損につながるおそれもあります。

近年では、DDoS攻撃を単独で行うだけでなく、その混乱に乗じて不正アクセスや情報窃取など別の攻撃を試みるケースも報告されています。そのため、DDoS攻撃は単なる通信障害ではなく、企業の事業継続に関わるセキュリティリスクとして捉えることが重要です。

ここでは、企業が受ける代表的な被害について解説します。

サービス停止

DDoS攻撃による代表的な被害は、Webサイトやオンラインサービスの停止です。

大量の通信やリクエストが送られると、サーバーやネットワーク機器に過剰な負荷がかかります。その結果、Webページの表示遅延やタイムアウト、エラーが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

特に、ECサイトや予約システム、会員向けサービス、決済サービスなど、インターネットを通じて提供されるサービスでは、短時間の停止であっても売上機会の損失や顧客満足度の低下につながる可能性があります。

さらに、DDoS攻撃ではサーバー自体に障害が発生していなくても、回線帯域の逼迫やネットワーク機器への負荷によってサービスが利用できなくなる場合があります。そのため、システムが正常に稼働しているように見えても、利用者からは「サービスが停止している」と認識されるケースも少なくありません。

業務への影響

DDoS攻撃の影響は、Webサイトの停止だけにとどまりません。公開サービスと社内システムが同じネットワークや認証基盤を利用している場合には、VPNや業務システム、クラウドサービスなどへ影響が及び、日常業務に支障をきたすことがあります。

また、サービス停止に伴い、顧客や取引先からの問い合わせが急増し、カスタマーサポートや営業部門の対応負荷が高まることもあります。

ECサイトでは注文処理や決済が滞り、BtoBサービスでは取引先の業務に影響を与えるなど、事業継続にも大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、障害対応のために情報システム部門やセキュリティ担当者が長時間の対応を余儀なくされ、本来予定していた業務が停滞するケースも少なくありません。

企業の信頼低下

DDoS攻撃によるサービス停止が長時間続いたり、繰り返し発生したりすると、企業に対する信頼の低下につながるおそれがあります。利用者は「サービスが安定して利用できない企業」という印象を持つ可能性があり、顧客離れや新規顧客の獲得機会の損失につながることもあります。

さらに、DDoS攻撃をきっかけに、自社のセキュリティ対策やインシデント対応体制が十分であるかを取引先や顧客から問われることもあります。そのため、平時から適切な対策を講じるとともに、攻撃発生時には迅速かつ適切な対応を行うことが、企業の信頼維持につながります。

企業が実施すべきDDoS攻撃対策

DDoS攻撃は、完全に防ぐことが難しいサイバー攻撃の一つです。そのため、攻撃を受けることを前提に、被害を最小限に抑えるための対策を講じることが重要です。ここでは、企業が押さえておきたい代表的なDDoS攻撃対策を紹介します。

通信の監視と異常検知

DDoS攻撃による被害を最小限に抑えるためには、通信状況を継続的に監視し、通常とは異なるアクセスを早期に検知できる体制を整えることが重要です。

アクセス数や通信量、リクエスト数などの推移を日頃から把握しておくことで、異常な増加が発生した際に迅速な対応につなげることができます。

近年では、SIEM(Security Information and Event Management)やネットワーク監視ツールを活用し、異常な通信を自動で検知・通知する仕組みを導入する企業も増えています。

DDoS攻撃は短時間で通信量が急増するケースが多いため、異常を検知してから対応を開始するまでの時間が重要です。

CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用

DDoS攻撃は、攻撃元が世界中の多数の端末に分散しているため、自社設備だけで防ぎきることは難しく、外部サービスとの連携が対策の基本方針になります。特に、大量の通信が発生するボリューム攻撃では、自社ネットワークに到達する前に不要な通信を分散・遮断する仕組みが重要になります。

  • CDN(Content Delivery Network):コンテンツを複数のサーバーに分散して配信することで、通信負荷を分散し、サービスの継続性向上に役立ちます。
  • WAF(Web Application Firewall):Webアプリケーションへの不正なアクセスや不審なリクエストを検知・制御する機能を備えており、特にアプリケーション層を狙った攻撃への対策として有効です。
  • DDoS対策サービス:専用の設備で攻撃トラフィックを検知・吸収・フィルタリングし、正常な通信のみを自社環境へ転送する仕組みを提供しています。

攻撃の規模やサービスの重要度に応じて、ISPやクラウド事業者が提供する対策サービスも含め、自社に適した構成を検討するとよいでしょう。

自社の対策状況に不安がある場合

「どのサービスを、どこまで導入すべきか」の判断が難しい場合は、専門会社によるDDoS耐性評価・セキュリティ診断を活用するのも一つの方法です。現状のリスクを可視化したうえで、優先度をつけて対策を進めることができます。

インシデント対応体制の整備

DDoS攻撃は、技術的な対策だけで完全に防ぐことは困難です。そのため、攻撃を受けた際に迅速かつ適切に対応できる体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。

具体的には、攻撃発生時の連絡体制や対応手順を文書化し、情報システム部門だけでなく、経営層や広報部門、カスタマーサポート部門など、関係者の役割を明確にしておくことが求められます。

また、ISPやクラウド事業者、セキュリティベンダーなどの連絡先や支援体制を事前に確認しておくことで、緊急時の対応を円滑に進められます。

まとめ

DDoS攻撃は、大量の通信によってWebサイトやネットワークサービスを利用できない状態にするサイバー攻撃です。攻撃手法にはボリューム攻撃、プロトコル攻撃、アプリケーション層攻撃などがあり、それぞれ特徴や有効な対策が異なります。

企業は、通信の監視や異常検知、CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用に加え、インシデント対応体制の整備など、多層的な対策を講じることが重要です。また、攻撃を完全に防ぐことは難しいため、被害を最小限に抑えるための備えも欠かせません。

攻撃発生時の具体的な対応手順や、復旧までの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
「DDoS攻撃を受けたらどうする?初動対応から復旧までの流れを解説」

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DDos攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。

【参考情報】


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公開日:2021年6月23日
更新日:2026年7月29日

編集責任:木下


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