DDoS攻撃とは?仕組み・種類・被害・対策を企業向けに解説

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DDoS攻撃は、大量の通信を送り付けて、Webサイトやサーバーを利用しにくくするサイバー攻撃です。サービス停止や業務の停滞を招くおそれがあるため、企業は仕組みと対策を理解しておく必要があります。本記事では、DDoS攻撃の種類や被害、基本的な対策を解説します。

DoS攻撃との違いを詳しく知りたい方、実際にDDoS攻撃を受けた場合の初動対応や復旧の流れについて知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは
DDoS攻撃を受けたらどうする?

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、Webサイトやサーバー、ネットワーク機器などに大量の通信やリクエストを送り付け、正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃です。攻撃を受けると、Webサイトの表示遅延やサービス停止、ネットワークの応答遅延などが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

DDoS攻撃の特徴は、攻撃者が多数の端末やネットワークを利用する点にあります。攻撃者は、マルウェアなどに感染した機器で構成される「ボットネット」を悪用します。

世界中の端末から一斉に通信を送るため、単一の送信元を遮断するだけでは防ぎにくい攻撃です。近年では、ECサイトや金融機関、自治体、医療機関など、幅広い組織が標的となっています。企業規模を問わず対策が求められています。

また、DDoS攻撃は、サービス停止だけを目的とするものではありません。攻撃による混乱に乗じて、不正アクセスや情報窃取など、別の攻撃を試みる「陽動」として利用されるケースもあります。

DDoS攻撃を理解するためには、まずDoS攻撃との違いや、どのような目的で実行されるのかを知ることが重要です。

DoS攻撃との違い

DoS攻撃は、単一または少数の端末からサービスを妨害する攻撃です。DDoS攻撃は、多数の端末から分散して通信を送るため、攻撃元の特定や遮断が難しくなります。

DoS攻撃とDDoS攻撃の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは

なぜDDoS攻撃が行われるのか

DDoS攻撃の目的は、単にWebサイトやサービスを停止させることだけではありません。企業活動を妨害したり、金銭を要求したり、別のサイバー攻撃を成功させるための陽動として利用されたりするなど、さまざまな目的で実行されます。

例えば、ECサイトや予約システムを停止させることで売上機会の損失を狙うケースや、競合他社への業務妨害を目的とした攻撃が報告されています。

また、サービス停止による混乱の中で、不正アクセスや情報窃取を試みることもあります。このような「陽動攻撃」として、DDoS攻撃が利用されるケースもあります。

近年では、IoT機器の普及やボットネットの大規模化が進んでいます。その結果、専門的な知識がなくても、攻撃サービスを利用して大規模なDDoS攻撃を実行できる環境が問題視されています。

こうしたサービスは、DDoS-for-Hire、すなわちDDoS請負サービスなどと呼ばれます。そのため、企業規模を問わず、DDoS攻撃を想定した備えが重要になっています。

DDoS攻撃の仕組み

DDoS攻撃は、多数の端末やサーバから、標的へ一斉に大量の通信を送る攻撃です。サーバやネットワーク機器に過剰な負荷をかけ、正常なサービス提供を妨げます。

攻撃対象は、Webサイトだけではありません。DNSサーバやVPN、API、クラウドサービスなど、多岐にわたります。

攻撃者は、自ら大量の通信を送るのではありません。マルウェアに感染したIoT機器やパソコン、サーバーなどを遠隔操作します。そして、ボットネットを構築して攻撃を実行するのが一般的です。

また、DDoS攻撃は、大量の通信によって回線帯域を圧迫するものだけではありません。ネットワーク機器に負荷をかける攻撃や、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送る攻撃など、複数の手法があります。

そのため、自社サービスを守るためには、攻撃の仕組みを理解し、それぞれの手法に応じた対策を講じることが重要です。

ボットネットによる分散攻撃

DDoS攻撃では、多くの場合「ボットネット(Botnet)」と呼ばれるネットワークが悪用されます。ボットネットとは、マルウェアに感染したパソコンやサーバ、IoT機器などが攻撃者の遠隔操作下に置かれた状態のネットワークです。攻撃者はこれらの端末へ一斉に指示を送り、標的に大量の通信を発生させます。

近年では、監視カメラやルーター、ネットワーク機器など、十分なセキュリティ対策が施されていないIoT機器がボットネットに組み込まれる事例も確認されています。機器の所有者が気付かないまま攻撃に加担しているケースも少なくありません。

ボットネットを利用したDDoS攻撃では、世界中に分散した多数の端末から同時に通信が送られるため、単一の送信元を遮断するだけでは十分な対策が難しくなります。

攻撃の流れ

DDoS攻撃は、一般的に次のような流れで実行されます。

  1. ボットネットの構築
    攻撃者は、マルウェアに感染したパソコンやサーバー、IoT機器などを遠隔操作できる状態にし、ボットネットを構築します。
  2. 攻撃対象の選定
    WebサイトやECサイト、VPN、DNSサーバー、APIなど、攻撃対象となるシステムを選定します。
  3. 攻撃命令の送信
    攻撃者がボットネットへ攻撃命令を送ると、多数の端末が一斉に標的へ通信やリクエストを送信します。
  4. サービスへの影響
    大量の通信によってネットワーク回線やサーバー、ネットワーク機器、Webアプリケーションに負荷がかかり、応答遅延やサービス停止などが発生します。

攻撃の種類によっては、ネットワーク帯域を圧迫するだけでなく、ファイアウォールやロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかけるものや、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送るものもあります。そのため、攻撃の種類に応じた対策を講じることが重要です。

DDoS攻撃の主な種類

DDoS攻撃にはさまざまな手法がありますが、大きく分けると「ボリューム攻撃」「プロトコル攻撃」「アプリケーション層攻撃」の3種類に分類できます。

攻撃対象や攻撃方法が異なるため、サービスへの影響や有効な対策もそれぞれ異なります。攻撃の種類を理解することは、自社サービスがどのようなリスクにさらされているのかを把握し、適切な対策を講じるための第一歩です。

ここでは、代表的な3つの攻撃手法について解説します。

ボリューム攻撃

ボリューム攻撃は、大量の通信を送り付けてネットワーク回線の帯域を圧迫し、正規の利用者がサービスへアクセスできない状態にする攻撃です。DDoS攻撃の中でも代表的な手法であり、回線容量を超える通信が発生すると、サーバーが正常に稼働していてもサービスを利用できなくなることがあります。

代表的な手法として、UDP FloodDNS Amplification(DNSリフレクション攻撃)NTP Amplificationなどがあります。特にDNSやNTPなどの公開サーバーを悪用する反射・増幅型攻撃では、小さなリクエストを利用して何倍もの通信量を発生させるため、攻撃者は比較的少ない通信量でも大きな負荷を与えることができます。

プロトコル攻撃

プロトコル攻撃は、TCP/IPなどの通信プロトコルの仕組みを悪用し、サーバーやファイアウォール、ロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかける攻撃です。通信回線そのものを埋め尽くすボリューム攻撃とは異なり、ネットワーク機器やサーバーの処理能力を消費させることで、正常な通信を妨害します。

代表的な手法としては、SYN Floodがあります。TCP通信の接続要求(SYNパケット)を大量に送り付けることで、サーバは接続待ちの状態を維持し続けることになり、新たな正規ユーザからの接続を受け付けられなくなる場合があります。このほか、Ping FloodSmurf攻撃などもプロトコル攻撃の一種として知られています。

アプリケーション層攻撃

アプリケーション層攻撃は、WebサイトやWebアプリケーション、APIなどを標的とするDDoS攻撃です。利用者が直接アクセスするサービスが狙われます。

通信量そのものはそれほど多くなくても、サーバーが処理に時間を要するリクエストを大量に送ることで、CPUやメモリなどのリソースを消費させ、サービスの応答遅延や停止を引き起こします。

代表的な手法としてHTTP Floodがあります。通常のWeb閲覧と同じHTTPリクエストを大量に送信するため、正規のアクセスと見分けにくく、単純な通信量の監視だけでは検知が難しい場合があります。また、検索機能やログイン画面、APIなど、サーバー負荷の高い処理を集中的に狙う攻撃も確認されています。

DDoS攻撃による被害

DDoS攻撃による影響は、単にWebサイトが一時的に閲覧できなくなるだけではありません。サービス停止による売上機会の損失や業務の停滞、顧客対応の負荷増加など、企業活動全体へ影響が及ぶ可能性があります。

また、長時間にわたってサービスが利用できない状態が続くと、企業の信頼低下やブランドイメージの毀損につながるおそれもあります。

近年では、DDoS攻撃を単独で行うだけでなく、その混乱に乗じて不正アクセスや情報窃取など別の攻撃を試みるケースも報告されています。そのため、DDoS攻撃は単なる通信障害ではなく、企業の事業継続に関わるセキュリティリスクとして捉えることが重要です。

ここでは、企業が受ける代表的な被害について解説します。

サービス停止

DDoS攻撃による代表的な被害は、Webサイトやオンラインサービスの停止です。

大量の通信やリクエストが送られると、サーバーやネットワーク機器に過剰な負荷がかかります。その結果、Webページの表示遅延やタイムアウト、エラーが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

特に、ECサイトや予約システム、会員向けサービス、決済サービスなど、インターネットを通じて提供されるサービスでは、短時間の停止であっても売上機会の損失や顧客満足度の低下につながる可能性があります。

さらに、DDoS攻撃ではサーバー自体に障害が発生していなくても、回線帯域の逼迫やネットワーク機器への負荷によってサービスが利用できなくなる場合があります。そのため、システムが正常に稼働しているように見えても、利用者からは「サービスが停止している」と認識されるケースも少なくありません。

業務への影響

DDoS攻撃の影響は、Webサイトの停止だけにとどまりません。公開サービスと社内システムが同じネットワークや認証基盤を利用している場合には、VPNや業務システム、クラウドサービスなどへ影響が及び、日常業務に支障をきたすことがあります。

また、サービス停止に伴い、顧客や取引先からの問い合わせが急増し、カスタマーサポートや営業部門の対応負荷が高まることもあります。

ECサイトでは注文処理や決済が滞り、BtoBサービスでは取引先の業務に影響を与えるなど、事業継続にも大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、障害対応のために情報システム部門やセキュリティ担当者が長時間の対応を余儀なくされ、本来予定していた業務が停滞するケースも少なくありません。

企業の信頼低下

DDoS攻撃によるサービス停止が長時間続いたり、繰り返し発生したりすると、企業に対する信頼の低下につながるおそれがあります。利用者は「サービスが安定して利用できない企業」という印象を持つ可能性があり、顧客離れや新規顧客の獲得機会の損失につながることもあります。

さらに、DDoS攻撃をきっかけに、自社のセキュリティ対策やインシデント対応体制が十分であるかを取引先や顧客から問われることもあります。そのため、平時から適切な対策を講じるとともに、攻撃発生時には迅速かつ適切な対応を行うことが、企業の信頼維持につながります。

企業が実施すべきDDoS攻撃対策

DDoS攻撃は、完全に防ぐことが難しいサイバー攻撃の一つです。そのため、攻撃を受けることを前提に、被害を最小限に抑えるための対策を講じることが重要です。ここでは、企業が押さえておきたい代表的なDDoS攻撃対策を紹介します。

通信の監視と異常検知

DDoS攻撃による被害を最小限に抑えるためには、通信状況を継続的に監視し、通常とは異なるアクセスを早期に検知できる体制を整えることが重要です。

アクセス数や通信量、リクエスト数などの推移を日頃から把握しておくことで、異常な増加が発生した際に迅速な対応につなげることができます。

近年では、SIEM(Security Information and Event Management)やネットワーク監視ツールを活用し、異常な通信を自動で検知・通知する仕組みを導入する企業も増えています。

DDoS攻撃は短時間で通信量が急増するケースが多いため、異常を検知してから対応を開始するまでの時間が重要です。

CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用

DDoS攻撃は、攻撃元が世界中の多数の端末に分散しているため、自社設備だけで防ぎきることは難しく、外部サービスとの連携が対策の基本方針になります。特に、大量の通信が発生するボリューム攻撃では、自社ネットワークに到達する前に不要な通信を分散・遮断する仕組みが重要になります。

  • CDN(Content Delivery Network):コンテンツを複数のサーバーに分散して配信することで、通信負荷を分散し、サービスの継続性向上に役立ちます。
  • WAF(Web Application Firewall):Webアプリケーションへの不正なアクセスや不審なリクエストを検知・制御する機能を備えており、特にアプリケーション層を狙った攻撃への対策として有効です。
  • DDoS対策サービス:専用の設備で攻撃トラフィックを検知・吸収・フィルタリングし、正常な通信のみを自社環境へ転送する仕組みを提供しています。

攻撃の規模やサービスの重要度に応じて、ISPやクラウド事業者が提供する対策サービスも含め、自社に適した構成を検討するとよいでしょう。

自社の対策状況に不安がある場合

「どのサービスを、どこまで導入すべきか」の判断が難しい場合は、専門会社によるDDoS耐性評価・セキュリティ診断を活用するのも一つの方法です。現状のリスクを可視化したうえで、優先度をつけて対策を進めることができます。

インシデント対応体制の整備

DDoS攻撃は、技術的な対策だけで完全に防ぐことは困難です。そのため、攻撃を受けた際に迅速かつ適切に対応できる体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。

具体的には、攻撃発生時の連絡体制や対応手順を文書化し、情報システム部門だけでなく、経営層や広報部門、カスタマーサポート部門など、関係者の役割を明確にしておくことが求められます。

また、ISPやクラウド事業者、セキュリティベンダーなどの連絡先や支援体制を事前に確認しておくことで、緊急時の対応を円滑に進められます。

まとめ

DDoS攻撃は、大量の通信によってWebサイトやネットワークサービスを利用できない状態にするサイバー攻撃です。攻撃手法にはボリューム攻撃、プロトコル攻撃、アプリケーション層攻撃などがあり、それぞれ特徴や有効な対策が異なります。

企業は、通信の監視や異常検知、CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用に加え、インシデント対応体制の整備など、多層的な対策を講じることが重要です。また、攻撃を完全に防ぐことは難しいため、被害を最小限に抑えるための備えも欠かせません。

攻撃発生時の具体的な対応手順や、復旧までの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
DDoS攻撃を受けたらどうする?初動対応から復旧までの流れを解説

【関連記事】

DDos攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。

【参考情報】


DDoS対策や公開システムのセキュリティに不安はありませんか?

DDoS攻撃への備えには、ネットワークやWebアプリケーションのリスクを把握することが重要です。BBSecでは、脆弱性診断をはじめ、お客様の環境に応じたセキュリティ評価をご提供しています。

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アクセス急増の原因が複雑で判断が難しい場合や、継続的な運用に不安がある場合は、第三者の視点を取り入れることも有効です。定期的なセキュリティ診断や評価を通じて、自社では気づきにくいリスクを把握することができます。


公開日:2021年6月23日
更新日:2026年7月29日

編集責任:木下


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APT攻撃対策とは?検知・監視・初動対応の考え方

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前回記事で解説した通り、APT攻撃は標的組織を事前に調査したうえで侵入し、権限昇格や横展開を重ねながら目的の情報に近づいていきます。一度侵入を許すと長期間にわたり情報窃取や不正活動が継続するケースも少なくありません。そのためAPT攻撃対策では「侵入させない」ことだけを目指すのではなく、侵入前対策・侵入後対策・インシデント対応体制を組み合わせ、早期発見と被害最小化を実現する仕組みが欠かせません。本記事では、その具体的な対策内容について解説します。

APT攻撃の侵入経路や攻撃の流れについて詳しく知りたい方は、「APT攻撃の手口とは?侵入から情報窃取までの流れを解説」で、初期侵入から情報窃取までのプロセスを解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

なぜAPT攻撃は防ぎにくいのか

APT攻撃が防ぎにくい理由は、攻撃者が特定の組織を狙い、時間をかけて侵入経路を探すためです。一般的なマルウェア感染やばらまき型攻撃とは異なり、APT攻撃では、攻撃者が標的組織の業務、取引先、利用システム、従業員の役割などを事前に調査します。そのうえで、標的型メールや脆弱性の悪用、正規アカウントの不正利用など、検知されにくい手口を選びます。また、APT攻撃では、最初の侵入後すぐに目立つ被害が発生するとは限りません。攻撃者は内部ネットワークに潜伏し、権限昇格や横展開を行いながら、機密情報や認証情報の所在を探ります。正規の管理ツールや盗まれたID・パスワードを使って活動する場合もあり、従来型の境界防御だけでは不審な動きを見落とす可能性があります。そのため、APT攻撃対策では、入口を守る対策に加えて、侵入後の異常を検知する仕組み、ログをもとに調査できる体制、被害を最小化する初動対応が欠かせません。さらに、入口対策だけでなく、「侵入を前提」とした検知・監視・対応体制も必要です。

侵入前対策

APT攻撃への備えとして、まず重要になるのは侵入前対策です。侵入前対策とは、攻撃者が組織内へ入り込む可能性を下げるための基本的な防御策です。完全な防御は難しいものの、攻撃者にとって侵入しにくい環境を作ることで、被害の発生確率を下げることができます。 なかでも重要なのが、多要素認証、脆弱性管理、標的型メール対策です。これらは単独ではなく、多層防御の考え方で組み合わせることが重要です。複数の対策を組み合わせ、攻撃者が一つの弱点を突破しても、次の段階へ進みにくい状態をつくることが求められます。

MFA(多要素認証)

IDとパスワードだけに頼らず、スマートフォンアプリ、セキュリティキー、生体認証など、複数の認証要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。APT攻撃では、フィッシングメールやマルウェアによって認証情報が盗まれることがあります。IDとパスワードだけで社内システムやクラウドサービスへアクセスできる環境では、攻撃者が正規ユーザになりすましてログインするリスクが高まります。MFAを導入することで、パスワードが漏えいした場合でも、不正ログインを防げる可能性が高まります。ただし、MFAを導入すればすべての攻撃を防げるわけではありません。近年は、MFAを突破しようとするフィッシングや、認証疲れを狙った攻撃も確認されています。そのため、可能であればフィッシング耐性の高い認証方式(例:FIDO2、パスキーなど)を採用し、管理者アカウントやリモートアクセス、クラウド管理画面など、重要度の高い環境から優先的に適用することが重要です。

脆弱性管理

APT攻撃では、VPN機器、公開サーバ、メールサーバ、業務システム、クラウド環境などの脆弱性が侵入経路として悪用されることがあります。特に、インターネットからアクセス可能な機器やシステムに未修正の脆弱性が残っている場合、攻撃者にとって侵入の足がかりになります。脆弱性管理では、単に脆弱性情報を収集するだけでなく、自社のどのシステムに影響があるのか、外部公開されているのか、悪用事例があるのか、業務上の重要度は高いのかを踏まえて、対応の優先順位を決める必要があります。すべての脆弱性へ同時に対応することは現実的ではないため、実際に悪用されている脆弱性や、外部から攻撃可能なシステムを優先して修正する考え方が重要です。また、パッチ適用がすぐに難しい場合には、一時的な回避策、アクセス制限、監視強化、不要サービスの停止などを組み合わせる必要があります。APT攻撃では、脆弱性の放置が初期侵入や横展開につながる可能性があるため、脆弱性管理は単なる情報システム部門の運用作業ではなく、経営リスクを下げるための重要な取り組みといえます。

標的型メール対策

標的型メールは、APT攻撃の代表的な侵入経路の一つです。現在はメールだけでなく、チャットやクラウドサービスを悪用した攻撃も増えています。標的型メール対策では、メールセキュリティ製品による検査だけでなく、従業員教育、訓練、報告しやすい仕組みの整備が重要です。攻撃メールを完全に遮断することは難しいため、従業員が不審なメールに気づき、開封前または開封後すぐに報告できる体制を作る必要があります。また、メールをきっかけに認証情報が入力されるケースもあるため、MFAやアクセス制御と組み合わせて対策することが効果的です。標的型メール対策は、単独で完結するものではなく、認証管理、端末防御、ログ監視、インシデント対応と連動させることで、初めてAPT攻撃への実効性が高まります。

標的型攻撃の手口の詳細は「標的型攻撃とは?代表的な手口と企業が取るべき対策を解説」をご参照ください。

侵入後対策

APT攻撃では、侵入前対策をすり抜けられる可能性があります。そのため、侵入後に攻撃者の活動を検知し、被害拡大を防ぐ仕組みが必要です。侵入後対策の中心になるのが、EDR、SIEM、ログ監視です。従来のセキュリティ対策では、外部からの攻撃を境界で防ぐことに重点が置かれてきました。しかし、クラウド利用、テレワーク、サプライチェーン連携が広がる現在では、社内と社外の境界があいまいになっています。APT攻撃への対策では、端末、サーバー、ネットワーク、クラウド、IDの動きを継続的に監視し、通常とは異なる振る舞いを早期に見つけることが重要です。

EDR

EDRは、Endpoint Detection and Responseの略で、PCやサーバーなどのエンドポイント上の不審な挙動を検知し、調査や対応を支援する仕組みです。APT攻撃では、マルウェアの実行、認証情報の窃取、管理ツールの悪用、不審なプロセスの起動などが端末上で発生することがあります。EDRは、こうした端末上の動きを可視化し、攻撃の兆候を把握するために有効です。EDRの重要な役割は、単にマルウェアを検知することではありません。侵入後に何が起きたのか、どの端末からどの端末へ移動したのか、どのファイルが操作されたのか、どのアカウントが使われたのかを調査するための情報を提供する点にあります。APT攻撃では、発見時点で攻撃がすでに横展開している場合もあります。そのため、EDRによって端末単位の挙動を把握し、感染端末の隔離、プロセス停止、調査対象の特定などを迅速に行える状態を整えておく必要があります。最近では、EDRに加え、メールやクラウドも含めて分析するXDRを導入する企業も増えています。

SIEM

SIEMは、Security Information and Event Managementの略で、複数のシステムからログを集約し、相関分析(複数のログを組み合わせて関連性を分析すること)を行う仕組みです。APT攻撃では、個々のログだけを見ると小さな異常に見える行動が、複数のログを組み合わせることで攻撃の流れとして見えてくることがあります。たとえば、通常とは異なる国や地域からのログイン、深夜帯の管理者権限利用、短時間での大量アクセス、普段使わない端末からの認証、ファイルサーバへの大量アクセスなどは、単独では見逃されることがあります。しかし、SIEMで複数のログを関連付けることで、初期侵入、権限昇格、横展開、情報窃取の兆候を把握しやすくなります。SIEMを有効に活用するには、ログを集めるだけでなく、どのログを監視対象にするのか、どのような条件でアラートを出すのか、誰が確認するのか、アラート発生後にどのような初動を取るのかを事前に決めておく必要があります。そしてツールを導入するだけではなく、運用設計まで含めて整えることも重要です。社内で運用が難しい場合は、SOCサービスなど外部監視サービスを利用する方法もあります。

ログ監視

ログ監視は、APT攻撃対策の基盤となる取り組みです。攻撃者の行動は、認証ログ、端末ログ、プロキシログ、DNSログ、VPNログ、クラウドサービスの監査ログ、ファイルアクセスログなどに痕跡として残ることがあります。しかし、ログが取得されていなかったり、保存期間が短かったり、必要な項目が記録されていなかったりすると、インシデント発生後に攻撃の流れを追跡できません。特にAPT攻撃では、侵入から発見までに時間がかかることがあるため、一定期間のログを保管し、過去にさかのぼって調査できる状態を作る必要があります。ログ監視では、単に大量のログを保存するだけでは不十分です。重要なのは、通常時のアクセス傾向を把握し、そこから外れた動きを見つけることです。普段アクセスしないサーバーへの接続、短時間での権限変更、退職者アカウントの利用、海外からのVPN接続、大量のファイル圧縮や外部送信など、攻撃の兆候となる行動を継続的に確認する必要があります。保持期間は法令や業種要件、インシデント対応を考慮して決める必要があります。

ゼロトラストの考え方

ここまで紹介した侵入前対策・侵入後対策は、いずれもゼロトラストという一つの考え方の実装例と捉えることができます。

ゼロトラストとは、社内ネットワークにいるから安全、正規ユーザだから安全といった前提を置かず、ユーザ、端末、アプリケーション、データへのアクセスを継続的に確認する考え方です。従来の境界防御では、社内ネットワークの内側を比較的信頼する考え方が一般的でした。しかし、APT攻撃では、一度内部へ侵入した攻撃者が正規アカウントや管理ツールを悪用し、横展開する可能性があります。そのため、社内ネットワーク内の通信であっても、常に正当性を確認し、必要最小限の権限だけを付与することが前提になります。ゼロトラストの実現には、MFA、ID管理、端末管理、アクセス制御、ログ監視、ネットワーク分離、継続的なリスク評価などが関係します。単一の製品を導入すれば完成するものではなく、組織の業務やシステム構成に合わせて段階的に整備していく必要があります。

APT攻撃への対策としてゼロトラストを取り入れることで、攻撃者が一つのアカウントや端末を悪用しても、重要情報へ簡単に到達できない環境を作りやすくなります。侵入を前提に、被害範囲を限定し、異常を早期に検知するという点で、ゼロトラストはAPT対策と相性のよい考え方です。

インシデント対応体制

APT攻撃への対策では、検知した後の初動対応によって被害の大きさが大きく左右されます。初動対応では「封じ込め(Containment)」「根絶(Eradication)」「復旧(Recovery)」の順で進める考え方が一般的です。不審な挙動を発見しても、対応手順や判断基準が決まっていなければ、関係者への連絡、端末隔離、証拠保全、外部報告、復旧判断が遅れてしまいます。その間に攻撃者が横展開を進めたり、情報を外部へ持ち出したりする可能性があります。

インシデント対応体制では、まず「誰が判断するのか」を明確にする必要があります。情報システム部門、セキュリティ担当、経営層、法務、広報、事業部門、外部専門家など、関係者の役割を事前に決めておくことが重要です。特にAPT攻撃では、技術的な調査だけでなく、事業影響、顧客対応、取引先対応、法的対応、広報対応が必要になる場合があります。 また、初動対応では、証拠を消さないことも重要です。感染が疑われる端末をすぐに初期化してしまうと、侵入経路や攻撃範囲を調査するための情報が失われる可能性があります。端末の隔離、ログ保全、アカウント停止、通信遮断、影響範囲の確認などを、状況に応じて慎重に実施する必要があります。平時からインシデント対応手順を整備し、訓練を行っておくことで、実際の攻撃発生時に混乱を減らすことができます。APT攻撃対策は、技術的な防御だけではなく、組織としてどのように判断し、対応するかまで含めた取り組みです。

まとめ

APT攻撃対策では、侵入を完全に防ぐことだけを目指すのではなく、侵入前対策、侵入後対策、インシデント対応体制を組み合わせることが重要です。MFA、脆弱性管理、標的型メール対策によって侵入リスクを下げ、EDR、SIEM、ログ監視によって侵入後の不審な動きを早期に検知します。さらに、インシデント対応体制を整備し、攻撃が疑われる場合に迅速な初動対応を取れるようにしておくことで、被害の拡大を抑えることができます。APT攻撃は、攻撃者が時間をかけて目的達成を狙う攻撃であるため、企業側も継続的な監視と改善を前提に備える必要があります。

次の記事はこちら
APT攻撃事例から学ぶ ―国内外の被害事例と企業が取るべき対策―」
APT攻撃は実際にどのような企業・組織で発生しているのでしょうか。代表的な国内外の事例から、攻撃の特徴や企業が学ぶべきポイントを解説します。

【参考情報】

編集責任:木下


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APT攻撃は、侵入を完全に防ぐことが難しい高度なサイバー攻撃です。侵入経路の把握や脆弱性管理、監視体制の強化など、継続的な対策が求められます。弊社、ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、脆弱性診断、アタックサーフェス管理調査、セキュリティ運用サービス、コンサルティングサービスなど、企業のセキュリティ対策を支援するサービスを提供しています。


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IT資産管理を効率化する方法とは?担当者が押さえたい運用のポイント

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IT資産管理を継続するには、台帳を作成するだけでは十分ではありません。定期的な棚卸しや資産台帳の整備、ツールの活用、運用ルールの見直しなど、継続して管理できる仕組みづくりが重要です。本記事では、IT資産管理を効率化するための基本ステップと、実務で押さえたい運用のポイントを解説します。

IT資産管理の基本について知りたい方は、まず「IT資産管理とは」をご覧ください。
IT資産管理とは?企業のセキュリティ対策で最初に取り組むべき理由を解説

IT資産管理は重要だと分かっていても、実際の運用では「台帳が更新されない」「管理対象が多すぎる」「クラウドやSaaSまで把握しきれない」といった悩みが起こりがちです。特に、少人数の情報システム部門や兼任体制の企業では、手作業だけでIT資産を正確に管理し続けるのは現実的ではありません。

IT資産管理で押さえるべき基本ステップ

IT資産管理を効率化するには、いきなりツールを導入するのではなく、基本ステップを整理することが大切です。最初に行うべきことは、管理対象の範囲を決めることです。PC、サーバー、ネットワーク機器、スマートフォン、タブレット、ソフトウェア、クラウドサービス、SaaS、アカウント、ライセンスのうち、どこまでをIT資産管理の対象にするのかを明確にします。次に、現在のIT資産を棚卸しします。棚卸しによって、台帳に載っていない端末、使われていないSaaS、放置されたクラウド環境、サポート期限が近いソフトウェアなどを洗い出します。その後、資産台帳を整備し、資産の種類、利用者、管理責任者、重要度、バージョン、サポート期限、最終確認日などを記録します。

棚卸しを定期的に行う

IT資産棚卸しは、IT資産管理の出発点です。棚卸しでは、以下のような複数の情報源を突き合わせます。ひとつの情報源だけに頼ると、見落としが発生しやすいため、複数の情報を照合することが重要です。

  • 購買台帳・リース契約
  • MDM/EDR
  • Active DirectoryやID管理基盤
  • クラウド管理画面
  • SaaSの契約情報 – ネットワーク接続情報

たとえば、購買台帳には存在するのにEDRには表示されない端末があれば、未セットアップ、未接続、廃棄漏れの可能性があります。逆に、EDRやネットワーク上には存在するのに購買台帳や資産台帳にない端末があれば、未登録端末や持ち込み端末の可能性があります。クラウド環境では、誰が作成したか分からないインスタンス、公開設定のまま放置されたストレージ、検証後に削除されていないリソースを確認します。棚卸しの頻度は、企業規模やIT環境によって異なりますが、少なくとも年1回の一斉棚卸しだけでは変化に追いつきにくくなっています。端末の入れ替え、SaaS契約、クラウド環境の作成など、変化が多い領域については、月次や四半期単位で確認する運用が望ましいでしょう。

どのような資産が見落とされやすいかについては「見落としがちなIT資産がセキュリティ事故を招く?企業で起こりやすい5つの管理課題」もあわせてご覧ください。

資産台帳を整備する

棚卸しで見つけたIT資産は、資産台帳に整理します。台帳は、単に資産名を並べるためのものではありません。脆弱性対応、パッチ適用、ライセンス管理、費用管理、インシデント対応に使える情報でなければ、実務では役に立ちません。資産台帳には、資産ID、資産種別、製品名、メーカー、OSやソフトウェアのバージョン、利用者、所属部門、管理責任者、設置場所、IPアドレス、利用目的、業務上の重要度、保存・処理する情報の種類、サポート期限、ライセンス情報、最終確認日などを記録します。すべてを最初から完璧に埋める必要はありませんが、脆弱性対応やインシデント対応に必要な項目は優先して整備するべきです。

NIST SP 1800-5では、有効なIT資産管理は物理資産と仮想資産を結びつけ、資産が何で、どこにあり、どのように使われているかを把握できるようにするものと説明されています。 この視点を踏まえると、台帳は固定的な一覧ではなく、現場の利用実態を反映する情報基盤として設計する必要があります。

ツールで自動化する

IT資産管理を効率化するうえで、ツールによる自動化は有効です。管理対象が少ないうちは手作業でも対応できますが、端末、クラウド、SaaS、アカウント、ソフトウェアが増えると、人手だけで最新状態を維持するのは難しくなります。IT資産管理ツールを使えば、端末情報、インストール済みソフトウェア、OSバージョン、利用者情報、接続状況などを自動収集しやすくなります。MDMはモバイル端末やPCの管理に役立ち、EDRは端末の稼働状況やセキュリティ状態の把握に活用できます。クラウド環境では、クラウド管理ツールやCSPMによって、リソース、設定、公開状態、権限の可視化を進められます。SaaSについては、ID管理基盤やSaaS管理ツールと連携し、利用アカウントや不要ライセンスを確認します。

IT資産管理ツールによって可視化した資産情報は、脆弱性管理にも活用できます。資産台帳とスキャン結果を結びつけることで、どの資産にどの脆弱性が存在するのかを把握しやすくなります。

運用ルールを整備する

IT資産管理は、ツールを導入するだけでは定着しません。新しい端末を購入したとき、SaaSを契約したとき、クラウド環境を作成したとき、従業員が異動・退職したとき、機器を廃棄したときに、誰が、いつ、どの情報を更新するのかを決めておく必要があります。

ライフサイクル管理

調達から廃棄までのライフサイクルにIT資産管理を組み込むことも重要です。購入申請時に資産登録を行い、利用開始時に管理責任者を設定し、定期的に利用状況を確認し、不要になったらアカウント停止やデータ消去、契約解除、廃棄証跡の保管まで行う。この流れが決まっていないと、台帳はすぐに古くなります。

シャドーIT対策

シャドーIT対策では、禁止だけでなく申請しやすい仕組みも必要です。現場が必要なツールを安全に使える申請ルート、承認済みSaaSの一覧、例外利用時の確認項目を整備することで、非公式な利用を減らしやすくなります。英国のサイバーセキュリティ機関NCSCも、「シャドーITは従業員が業務上の課題を解決しようとして発生することが多く、責めるのではなく、報告しやすいセキュリティ文化を作ることが重要」だと説明しています*1

IT資産の可視化を脆弱性管理やパッチ管理につなげる

近年では、社内で管理しているIT資産だけでなく、インターネット上に公開されている資産を継続的に把握・管理するために、ASM(Attack Surface Management)を活用する企業も増えています。

IT資産の可視化はゴールではありません。可視化した資産情報を、脆弱性管理やパッチ管理につなげることが重要です。NIST SP 800-40 Rev.4では、パッチ管理を、パッチやアップデートを識別し、優先順位付けし、取得し、適用し、適用結果を検証するプロセスとして説明しています。 その前提として、どの資産が存在し、どのソフトウェアやバージョンを利用しているかを把握している必要があります。たとえば、重大な脆弱性が公開された場合、資産台帳が整備されていれば、対象バージョンを利用している端末やサーバーをすばやく抽出できます。重要システム、外部公開システム、個人情報を扱うシステムなどを優先して対応する判断も可能になります。逆に、資産情報がなければ、全社に一斉確認を依頼するしかなく、対応に時間がかかります。

IT資産管理、脆弱性管理、パッチ管理は別々の業務ではなく、つながった運用として設計することが重要です。IT資産を把握し、リスクを評価し、優先順位をつけ、対策し、結果を確認する。この流れができて初めて、セキュリティ対策は継続的に機能します。

まとめ:効率化の目的は、管理を楽にすることではなく対応を早くすること

IT資産管理を効率化する目的は、単に運用負荷を減らすことではありません。IT資産を継続的に把握し、脆弱性への対応やインシデント発生時の初動対応を迅速に行える状態を維持することが重要です。そのためには、定期的な棚卸しや資産台帳の整備、ツールによる自動化、運用ルールの見直しを組み合わせ、自社のIT環境に合わせた継続的な運用を構築しましょう。

【参考情報】

CIS(Center for Internet Security)「The 18 CIS Critical Security Controls」(https://www.cisecurity.org/controls/cis-controls-list

【関連記事】

編集責任:木下


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サッポロHD海外2社に不正アクセス ―海外グループ会社を狙うサイバー攻撃リスクとは

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サッポロホールディングスが公表した海外グループ会社2社への不正アクセスは、海外拠点を狙ったサイバー攻撃リスクを改めて浮き彫りにしました。現時点では情報漏洩の有無や影響範囲は調査中ですが、海外子会社や現地法人のセキュリティがグループ全体の事業継続や信頼に影響を及ぼす可能性があります。本記事では、本件の概要を整理するとともに、海外拠点が攻撃の入口になりやすい理由や、企業が見直すべき認証管理、ログ監視、脆弱性管理などの対策について解説します。

※本記事は2026年6月30日までに公開された情報もとに作成しています。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。


サッポロホールディングス株式会社は2026年6月24日、同社の海外グループ会社2社のシステムに対して不正アクセスが発生したことを公表しました*2。対象となったのは、POKKA PTE. LTD.とSLEEMAN BREWERIES LTD.です。サイバー攻撃の恐れがある不正な通信ログを検知し、初動調査を行った結果、不正アクセスが判明したとされています。

今回の事案で注目すべきなのは、国内本社ではなく海外グループ会社で不正アクセスが確認された点です。企業のグローバル展開が進むなか、海外子会社、海外拠点、現地法人、委託先、販売会社などを含めたセキュリティ対策は、もはや一部門だけの問題ではありません。サイバー攻撃は、もっとも守りが弱い場所から侵入し、グループ全体の信頼や事業継続に影響を及ぼす可能性があります。 サッポロホールディングスの公表によると、POKKA PTE. LTD.では2026年6月14日、SLEEMAN BREWERIES LTD.では同年6月17日に不正アクセスを確認しています。安全確保のため、関係するシステムや機器は遮断され、外部専門家の協力のもと原因や影響範囲の調査が進められています。公表時点では、情報漏洩の事実および影響範囲は確認中であり、国内事業への影響は確認されていません。また、2社への不正アクセスについて、現時点で因果関係は認められていないとされています。

サッポロHDの海外グループ会社で何が起きたのか

今回の不正アクセスは、サッポロホールディングスの海外グループ会社であるPOKKA PTE. LTD.とSLEEMAN BREWERIES LTD.において確認されました。POKKA PTE. LTD.は海外飲料事業、SLEEMAN BREWERIES LTD.は海外酒類事業に関係する企業です。サッポロホールディングスは海外酒類事業を北米中心に展開しており、海外飲料事業ではシンガポール、マレーシア、中東など約60か国でPOKKAブランドを展開していると説明しています。

このことから、今回の事案は単なる「海外拠点のトラブル」として片付けるべきものではありません。企業が海外展開を進めるほど、システム、ネットワーク、アカウント、取引先、現地運用体制は複雑になります。国内本社のセキュリティレベルが高くても、海外子会社や現地拠点の監視体制、認証管理、端末管理、ログ管理が十分でなければ、攻撃者にとって侵入口になり得ます。ただし、現時点で公表されている情報からは、ランサムウェア攻撃であったか、特定の攻撃グループが関与したか、どのような情報が外部に流出したかは確認できません。したがって、本件を「情報漏洩事故」や「ランサムウェア被害」と断定することは避ける必要があります。一次ソースから確認できるのは、不正な通信ログの検知、不正アクセスの判明、関係システム・機器の遮断、外部専門家による調査、情報漏洩の有無は確認中という点です。

なぜ海外グループ会社はサイバー攻撃の入口になりやすいのか

海外グループ会社や海外子会社は、サイバー攻撃の入口になりやすい構造的なリスクを抱えています。理由の一つは、拠点ごとにIT環境やセキュリティ運用の成熟度が異なりやすいことです。本社ではEDR、ログ監視、多要素認証、脆弱性管理が整備されていても、海外拠点では現地事情や人員不足により、同じ水準の対策が実施されていないケースがあります。

もう一つの理由は、グループ会社が業務上、本社や他拠点とつながっていることです。販売、製造、物流、会計、メール、クラウドサービスなど、業務に必要な連携がある以上、一つの拠点への不正アクセスが、別拠点への攻撃や認証情報の悪用につながる可能性は否定できません。今回のサッポロホールディングスの発表では2社間の因果関係は認められていないとされていますが、企業一般のリスクとしては、海外拠点を含めたグループ全体のセキュリティ統制が重要になります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から公開された「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向け脅威の上位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が挙げられています。これは、攻撃者が必ずしも本丸である大企業や本社を直接狙うのではなく、関係会社、委託先、取引先、外部サービスなどを経由して侵入を試みるリスクが高まっていることを示しています。

不正通信ログの検知が示す「早期発見」の重要性

今回の公表で見落としてはならないのが、「サイバー攻撃の恐れがある不正な通信ログを検知した」という点です。不正アクセスは、必ずしも最初から目に見える被害として現れるわけではありません。ファイルが暗号化される、Webサイトが改ざんされる、顧客情報が公開されるといった被害が起きる前に、攻撃者がネットワーク内で探索や権限拡大を行っている場合があります。

そのため、企業にとって重要なのは、攻撃を完全に防ぐことだけではなく、異常な通信、不審なログイン、通常と異なる端末挙動を早期に見つける体制です。ログを取得していても、監視や分析ができていなければ、攻撃の兆候を見逃してしまいます。特に海外拠点では、時差、言語、現地ベンダーとの契約、運用担当者の違いにより、インシデントの発見や報告が遅れる可能性があります。 不正アクセス対策では、ファイアウォールやウイルス対策ソフトだけでは不十分です。EDRによる端末監視、SIEMによるログ分析、SOCによる常時監視、ID管理、多要素認証、脆弱性診断、ペネトレーションテストなどを組み合わせ、攻撃を受けた場合でも早期に検知し、被害を最小化する考え方が求められます。

情報漏洩が確認されていない段階でも対応が必要な理由

サッポロホールディングスは、公表時点で情報漏洩の事実および影響範囲は確認中としています。ここで重要なのは、「漏洩が確認されていない」ことと「リスクがない」ことは同じではないという点です。サイバー攻撃では、外部送信の痕跡、認証情報の悪用、攻撃者の侵入経路、アクセスされたファイル、影響を受けたシステムを慎重に調査する必要があります。

調査中の段階では、企業は被害範囲を過小評価することも、過度に断定することも避けなければなりません。公表内容において「確認中」「影響が確認された場合は速やかに報告」といった表現が使われているのは、調査結果に基づいて正確に説明する姿勢の表れといえます。企業が同様の事案に備えるためには、インシデント発生後の連絡体制、初動対応手順、システム遮断の判断基準、外部専門家への相談ルート、顧客・取引先への説明方針を事前に整備しておくことが重要です。サイバー攻撃を受けてから対応を考えるのではなく、攻撃を受ける前提で準備しておくことが、事業継続と信頼維持につながります。

海外拠点を持つ企業が見直すべきセキュリティ対策

海外グループ会社や海外子会社を持つ企業は、まずグループ全体のIT資産を把握する必要があります。どの拠点にどのシステムがあり、誰が管理し、どのネットワークとつながっているのかが分からなければ、リスクの評価も対策の優先順位付けもできません。

次に重要なのが、認証情報の管理です。海外拠点のVPN、メール、クラウドサービス、業務システムに対して多要素認証を導入し、不要なアカウントや退職者アカウントを放置しないことが求められます。攻撃者は、脆弱性だけでなく、漏洩したID・パスワードや使い回された認証情報を悪用することがあります。

また、脆弱性管理も欠かせません。海外拠点では、本社の管理外にあるサーバ、ネットワーク機器、リモートアクセス環境、業務アプリケーションが残っている場合があります。定期的な脆弱性診断や外部公開資産の棚卸しを行い、攻撃者から見える入口を減らすことが重要です。

さらに、ログ監視とインシデント対応訓練も見直すべきです。不正通信ログを検知しても、その意味を判断できる人がいなければ対応は遅れます。検知、報告、遮断、調査、復旧、再発防止までの流れを整備し、海外拠点を含めて実効性を確認しておく必要があります。

サイバー攻撃対策は「国内本社だけ」では足りない

今回のサッポロホールディングスの事案は、海外グループ会社への不正アクセスとして公表されました。国内事業への影響は確認されていないとされていますが、企業にとっては、海外拠点を含むグループ全体のセキュリティを見直すきっかけになります。

サイバー攻撃は、企業規模や知名度に関係なく、システムの弱点、管理のすき間、監視の遅れを突いてきます。特に海外展開を進める企業では、本社、海外子会社、委託先、取引先、クラウドサービスを含めた全体像を把握し、どこから攻撃されても早期に検知・対応できる体制を作ることが欠かせません。 不正アクセス、情報漏洩、ランサムウェア、サプライチェーン攻撃への備えは、もはや情報システム部門だけの課題ではありません。経営リスクとしてセキュリティを捉え、グループ全体で守る仕組みを整えることが、企業の信頼と事業継続を守るための第一歩です。

まとめ

サッポロホールディングスの海外グループ会社2社で確認された不正アクセスは、海外拠点を持つ企業にとって重要な示唆を含んでいます。公表時点では情報漏洩の有無や影響範囲は確認中であり、国内事業への影響も確認されていません。しかし、海外子会社や現地法人を含むグループ全体のセキュリティ管理が求められる時代であることは明らかです。

企業は、海外拠点のセキュリティ対策を現地任せにせず、IT資産の把握、認証管理、脆弱性診断、ログ監視、インシデント対応体制の整備を進める必要があります。攻撃を完全に防ぐことが難しい今、重要なのは、侵入の兆候を早く見つけ、被害を広げない仕組みを持つことです。 サイバー攻撃対策を見直す際は、国内本社だけでなく、海外グループ会社、委託先、取引先、クラウド環境まで含めた全体像を確認することが欠かせません。今回の事案は、グローバル企業だけでなく、海外取引や外部委託を行うすべての企業にとって、自社のセキュリティ体制を点検する機会といえるでしょう。

【参考情報】

サッポロビール株式会社「当社の海外グループ会社2社のシステムへの不正アクセス発生について」(2026年6月24日公表)(https://www.sapporobreweries.com/notice/detail/20260624000010.html

編集責任:木下


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  • 2026年7月15日(水)14:00~15:00「AI事業者ガイドライン第1.2版に基づくセキュリティ対策の実践ポイント~生成AIからAIエージェントへ~
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    インシデント対応体制とは?CSIRTの役割と企業が整えるべき運用のポイント

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    サイバー攻撃や情報漏えいなどのセキュリティインシデントでは、迅速かつ適切な対応が被害の拡大防止につながります。そのためには、担当者任せではなく、役割分担や連絡体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。本記事では、インシデント対応体制の基本的な考え方をはじめ、CSIRTやSOCの役割、企業が体制を構築・運用する際のポイントを解説します。

    インシデント管理の全体像については、以下の記事をご覧ください。
    セキュリティインシデント管理とは?企業が押さえるべき対応フローと体制の全体像

    サイバー攻撃や情報漏洩、ランサムウェア感染、不正アクセスなどのセキュリティインシデントは、発生してから担当者が個別に対応するだけでは十分に対処できません。インシデント対応では、技術的な調査や復旧だけでなく、経営判断、法務確認、顧客対応、広報対応、取引先との調整など、複数の部門が関係します。

    そのため、企業にはあらかじめインシデント対応体制を整備しておくことが求められます。誰が異常を受け付け、誰が初動対応を判断し、誰が調査を進め、誰が経営層や外部関係者へ報告するのかが決まっていなければ、発生直後の混乱を避けることはできません。JPCERT/CCは「CSIRTマテリアル」について、組織的なインシデント対応体制である「組織内CSIRT」の構築を支援する目的で作成したものと説明しています。また、すべての組織が同じ形のCSIRTを持つべきというものではなく、それぞれの組織の状況に応じた適切な形があるとしています。つまり、インシデント対応体制は、大企業だけが整備する特別な仕組みではなく、企業規模や事業内容に応じて現実的に設計すべきものです。

    なぜ体制が必要なのか

    インシデント対応体制が必要な理由は、セキュリティインシデントが一部門だけで完結する問題ではないためです。たとえば、マルウェア感染が発生した場合、情報システム部門は端末隔離やログ調査を行います。しかし、個人情報漏洩の可能性があれば法務や個人情報保護の担当部門が関与し、顧客影響があれば営業やカスタマーサポートが対応し、外部公表が必要になれば広報や経営層の判断が必要になります。

    不正アクセスやランサムウェア感染では、技術的な調査と同時に、事業継続の判断も必要になります。システムを停止するのか、どの業務を優先して復旧するのか、取引先へいつ説明するのかといった判断は、現場担当者だけで決められるものではありません。事前に体制がなければ、関係者への連絡が遅れ、対応の優先順位も曖昧になります。

    NIST SP 800-61 r2「Computer Security Incident Handling Guide」でも、効果的なインシデント対応は複雑な取り組みであり、成功する対応能力を確立するには、計画とリソースが必要であるとされています。また、インシデント対応では、IT部門だけでなく、法務などの内部関係者や、外部のインシデント対応チーム、法執行機関などとの連携も想定されています。

    体制がない企業では、インシデントが発生したときに「誰に報告すればよいか分からない」「誰が判断責任を持つのか分からない」「外部ベンダーに何を依頼すればよいか分からない」という状態になりがちです。平時であれば多少の確認不足は補えますが、インシデント発生時には時間が限られています。対応の遅れは、被害拡大や情報漏洩、事業停止、信用低下につながる可能性があります。

    独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開するプラクティス・ナビ「指示7 インシデント発生時の緊急対応体制の整備」の中で、CSIRT等の対応体制が整備されていないこと、証拠保全ルールや外部報告・公表ルールが定められていないこと、想定インシデントに応じた分析・対応手順がないこと、CSIRT業務が属人化していること、演習を行っていないことを課題として挙げています。

    インシデント対応体制とは、単に担当者の名前を決めることではありません。発生時に必要な判断、作業、報告、連携を整理し、組織として動ける状態にすることです。対応体制が整っていれば、発生直後の混乱を抑え、被害拡大防止、原因調査、復旧、再発防止までを一貫して進めやすくなります。

    インシデント対応体制の基本構成

    インシデント対応体制は、企業規模や業種、システム構成によって異なります。ただし、多くの企業に共通する基本構成として、CSIRT、SOC、各部門の連携があります。これらはそれぞれ役割が異なり、単独で機能するものではありません。CSIRTは、インシデント対応を組織として進めるための中核的な役割を担います。インシデントの受付、事実確認、対応方針の調整、関係部門への連絡、外部機関や専門ベンダーとの連携、再発防止策の整理などを担うことが一般的です。企業によっては、専任組織として設置される場合もあれば、情報システム部門やセキュリティ担当者を中心に兼任体制で運用される場合もあります。SOCは、Security Operation Centerの略で、主に監視や検知、分析を担う機能です。EDR、SIEM、ファイアウォール、クラウド監査ログ、認証ログなどを監視し、不審な通信や挙動を検知します。SOCは、インシデントの兆候を早期に発見し、CSIRTや情報システム部門へエスカレーションする役割を持ちます。自社内にSOCを持つ企業もありますが、専門ベンダーのSOCやMDRサービスを活用する企業もあります。

    各部門の役割も重要です。情報システム部門は、端末、サーバ、ネットワーク、クラウド環境の技術的対応を担います。法務部門は、個人情報保護法や契約上の責任、監督官庁への報告要否などを確認します。広報部門は、外部公表やメディア対応、顧客向け説明文の調整を担います。営業部門やカスタマーサポート部門は、顧客や取引先からの問い合わせ対応を担います。経営層は、事業停止や外部公表、重大なリスク判断について意思決定を行います。

    これらの体制は、実際のインシデント対応フローの中で機能します。具体的な対応手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
    インシデント対応フローとは?発生時に企業が取るべき手順と判断ポイント

    重要なのは、CSIRT、SOC、各部門の役割を分けるだけでなく、連携の流れを決めておくことです。SOCが検知したアラートを誰に報告するのか、CSIRTがどの基準で重大度を判断するのか、法務や広報をどのタイミングで巻き込むのか、経営層への報告基準は何かを定めておかなければ、体制図があっても実際には動きません。インシデント対応体制は、組織図上の箱を作ることではなく、実際に発生したときに機能する連絡・判断・対応の仕組みを作ることです。

    CSIRTとは何か

    CSIRTとは、Computer Security Incident Response Teamの略で、コンピューターセキュリティインシデントに対応するチームを意味します。JPCERT/CCによれば、CSIRTは「Computer Security Incident Response Team=コンピューターセキュリティインシデントに対応するチーム」の略であると説明されています。CSIRTの役割は、単に技術的な調査を行うことだけではありません。組織内で発生したインシデントの情報を集約し、対応方針を整理し、関係部門をつなぎ、必要に応じて外部機関や専門ベンダーと連携することが重要な役割です。企業によっては、脆弱性情報の収集、注意喚起、セキュリティ教育、訓練、再発防止策の推進など、平時の活動もCSIRTが担う場合があります。

    JPCERT/CCの公開する資料「組織内 CSIRT の役割とその範囲」では、組織内CSIRTの役割には違いがあり、インシデントへの直接対応、支援的対応、調整役としての対応などが示されています。つまり、CSIRTは必ずしもすべての技術対応を自ら行う必要はありません。企業の体制に応じて、現場対応を支援する立場、部門間を調整する立場、外部専門家との窓口になる立場など、現実的な役割を設計することが重要です。

    CSIRTが必要とされる理由は、インシデント発生時に情報と判断を一元化するためです。インシデント対応では、端末の隔離、ログ調査、外部連絡、顧客説明、法務判断、復旧作業など、さまざまな対応が同時に発生します。これらが各部門でばらばらに進むと、情報の食い違いや判断の遅れが起こりやすくなります。CSIRTが中心となって情報を集約すれば、経営層への報告も整理しやすくなります。経営層が必要とするのは、単なる技術情報ではなく、事業への影響、顧客への影響、復旧見通し、法的・契約上のリスク、外部公表の必要性などです。CSIRTは、技術部門と経営判断をつなぐ役割を担うことで、インシデント対応を企業全体のリスク対応として進めやすくします。ただし、CSIRTは設置するだけでは機能しません。連絡先が古い、権限が曖昧、判断基準がない、訓練をしていない、担当者が兼任で実質的に動けないといった状態では、有事に十分な役割を果たせません。CSIRTの必要性を理解したうえで、自社の規模やリソースに合った運用を設計することが大切です。

    体制が機能しない原因

    インシデント対応体制が機能しない原因として、最も多いのが属人化です。特定の担当者だけがシステム構成を理解している、ログの確認方法を知っている、外部ベンダーとの連絡先を把握している、過去のインシデント対応の経緯を覚えているという状態では、その担当者が不在のときに対応が止まります。属人化は、日常業務では見えにくい問題です。詳しい担当者がいれば、普段のトラブルはその人が解決できてしまいます。しかし、インシデント発生時には、短時間で多くの判断と作業が必要になります。特定の個人に情報や判断が集中すると、対応速度が落ち、確認漏れや連絡漏れが起こりやすくなります。

    IPAのプラクティス・ナビ「プラクティス7-4 CSIRT業務の属人化回避も兼ねたインシデントや脅威に関する情報の共有・蓄積」では、CSIRT業務の属人化回避を目的とした情報共有・蓄積の重要性を示しています。公開されている事例でも、CSIRT設立の中核だった従業員が退職した際に対応能力が低下し、その後、業務を属人化させない仕組みの整備が必要になったことが紹介されています。

    もう一つの原因は、判断基準がないことです。どのアラートをインシデントとして扱うのか、どの段階でCSIRTを招集するのか、端末隔離やシステム停止を誰が判断するのか、外部報告や公表を検討する基準は何かが決まっていなければ、現場は迷います。判断基準がないと、対応は担当者の経験や感覚に依存します。経験豊富な担当者であれば適切に判断できる場合もありますが、担当者が変われば対応品質も変わります。また、重大なインシデントほど、技術的な判断だけでなく、事業影響や法務リスク、顧客影響を含めた判断が必要になります。判断基準が曖昧なままでは、経営層への報告も遅れやすくなります。

    体制が機能しない企業では、形式的な体制図だけが存在していることもあります。CSIRTという名前はあるものの、実際のメンバー、役割、権限、連絡手順、訓練計画が決まっていない状態です。このような体制では、インシデント発生時に「誰が何をするのか」を改めて確認することになり、初動対応が遅れます。 さらに、部門間の連携不足も大きな要因です。情報システム部門が技術対応を進めていても、法務や広報、営業、経営層への共有が遅れると、顧客説明や外部公表の準備が間に合いません。反対に、経営層や広報が十分な事実確認を待たずに情報発信を進めると、誤った説明につながる可能性があります。インシデント対応体制を機能させるには、体制図を作るだけでなく、情報共有の流れ、判断権限、報告基準、記録方法を具体化する必要があります。

    体制構築のポイント

    インシデント対応体制を構築するうえで重要なのは、まず対応フローを明確にすることです。検知、初動対応、調査、復旧、再発防止という流れの中で、誰がどの工程を担当するのかを整理します。たとえば、従業員からの不審メール報告を誰が受け付けるのか、SOCや監視サービスのアラートを誰が確認するのか、感染端末の隔離を誰が実施するのか、経営層への報告を誰が行うのかを定めます。このとき、細かすぎる手順書を作ることよりも、実際に使える判断ルールを整備することが大切です。インシデントは事案ごとに状況が異なるため、すべてを手順書通りに進められるとは限りません。だからこそ、重大度の判断基準、エスカレーション条件、外部連携の基準、証拠保全の原則、復旧判断の考え方を整理しておく必要があります。

    IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0 実践のためのプラクティス集 第4版」では、インシデント発生時の緊急対応体制の整備として、司令塔としてのCSIRTの設置、従業員の初動対応の規定、想定されるインシデントに関するセキュリティ分析計画の事前策定、情報共有・蓄積、インシデント対応演習などが示されています。

    次に重要なのが、訓練です。手順書や体制図を作っても、実際に動かしていなければ、有事に機能するとは限りません。インシデント対応訓練では、ランサムウェア感染、不正アクセス、情報漏洩、Webサイト改ざん、委託先からの侵害連絡など、想定シナリオをもとに、連絡、判断、報告、初動対応の流れを確認します。訓練では、技術対応だけでなく、経営層への報告、法務確認、広報文案の検討、顧客問い合わせへの対応、外部ベンダーへの連絡も含めて確認することが望ましいです。実際に演習してみると、連絡先が古い、判断者が不在時の代替ルートがない、ログの取得範囲が不足している、委託先との責任分界点が曖昧といった課題が見つかります。

    体制構築では、外部リソースの活用も現実的な選択肢になります。すべての企業が専任CSIRTや自社SOCを持てるわけではありません。特に中堅・中小企業では、情報システム部門が日常業務とセキュリティ対応を兼任しているケースも多くあります。その場合は、外部SOC、MDR、インシデント対応支援ベンダー、フォレンジック調査会社、顧問弁護士、保険会社など、必要な支援先を平時から整理しておくことが重要です。ただし、外部委託すればすべて任せられるわけではありません。外部ベンダーが調査や監視を支援しても、最終的な事業判断、顧客対応、外部公表、再発防止策の実行は企業自身が行う必要があります。外部リソースは、自社の対応体制を補完するものとして位置づけることが大切です。

    インシデント対応体制の整備は、情報漏洩対策全体の一部でもあります。あわせて以下の記事もご確認ください。
    情報漏洩対策とは何か ―企業が知るべき原因・リスク・防止策の全体像―

    まとめ

    インシデント対応体制とは、セキュリティインシデントが発生したときに、企業が組織として対応するための仕組みです。CSIRT、SOC、情報システム部門、法務、広報、営業、経営層などが連携し、検知、初動対応、調査、復旧、再発防止を進められる状態を整えることが重要です。CSIRTは、インシデント対応の司令塔や調整役として、情報を集約し、対応方針を整理し、関係部門や外部機関との連携を担います。SOCは、監視や検知、分析を通じて、インシデントの兆候を早期に発見する役割を持ちます。各部門は、それぞれの専門性に基づいて、技術対応、法務判断、顧客説明、広報対応、経営判断を担います。

    一方で、体制は作るだけでは機能しません。属人化した対応、曖昧な判断基準、古い連絡先、訓練不足、部門間連携の弱さがあると、インシデント発生時に初動が遅れます。特に、誰が判断し、誰が報告し、誰が外部と連携するのかが曖昧な状態では、対応の品質は担当者個人に依存してしまいます。 企業がまず取り組むべきことは、自社のインシデント対応フローを整理し、役割分担と連絡ルートを明確にすることです。そのうえで、重大度の判断基準、証拠保全ルール、外部報告・公表の検討基準、委託先や外部ベンダーとの連携方法を定め、定期的な訓練によって実効性を確認する必要があります。インシデント対応体制は、セキュリティ部門だけのための仕組みではありません。情報漏洩対策、事業継続、顧客信頼、経営リスク管理を支える重要な基盤です。自社の規模に合った現実的な体制から整備し、継続的に見直していくことが、インシデント発生時の被害最小化につながります。

    【参考情報】

    編集責任:木下


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    セキュリティインシデント発生時の対応 ―初動から復旧まで解説―

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    セキュリティインシデントが発生した際は、限られた時間の中で被害拡大を防ぎ、原因を調査し、業務復旧を進める必要があります。しかし、実際の現場では「まず何をすべきか」「どこまで影響が広がっているのか」「誰に報告すべきか」と判断に迷うケースも少なくありません。

    初動対応の遅れや判断ミスは、情報漏えいや業務停止などの被害拡大につながる可能性があります。本記事では、セキュリティインシデント発生時に企業が取るべき対応について、初動対応から復旧までの流れを解説します。

    なお、インシデント管理の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
    セキュリティインシデント管理とは?企業が押さえるべき対応フローと体制の全体像

    インシデント対応が遅れると被害が拡大する―「初動対応」の重要性

    セキュリティインシデントが発生した際、最初に求められるのは「被害の拡大を防ぐこと」です。具体的には、該当システムのネットワーク接続を遮断する、影響範囲を限定する、ログを確保して証拠を保存するといった行動が挙げられます。ここで重要なのは、焦ってシステムを完全に停止させたり証拠を消去したりしてしまわないことです。例えば、感染が疑われるPCを慌てて初期化すると、攻撃経路やマルウェアの痕跡といった重要な調査情報を失うことになり、後続の対応が困難になります。そのため、インシデント発生時には「まず拡大防止と証拠保全を優先する」という基本原則を徹底する必要があります。初動段階での判断ミスが、被害規模や復旧にかかる時間を大きく左右するのです。

    セキュリティインシデント対応の基本フロー

    社内連携と報告体制

    セキュリティインシデントが発生した際、技術的な対応と同じくらい重要なのが「社内連携と報告体制」です。現場担当者が異常を検知した場合、直属の上司や情報システム部門への迅速な報告はもちろん、経営層へのエスカレーションルートを明確にしておくことが不可欠です。さらに、インシデント対応を一部門だけに任せるのではなく、法務・広報・総務など関連部門との連携が欠かせません。例えば、法務部門は法的リスクの確認や外部機関への届出判断を担い、広報部門は顧客や取引先への適切な情報発信を行います。これらが連携できていないと、組織全体としての対応が後手に回り、混乱や信頼失墜を招く恐れがあります。そのため、平常時から「誰が・どのタイミングで・誰に報告するか」を明文化したインシデント対応計画を整備しておくことが重要です。

    被害範囲の特定

    セキュリティインシデントが発生した際に、初動対応で重要なのが「被害範囲の特定」です。単なる障害や一時的な不具合と、外部からの不正アクセスやマルウェア感染といったインシデントを明確に区別する必要があります。具体的には、ログの解析やネットワーク監視、ユーザ報告などを通じて、侵入経路や影響を受けたシステム、漏洩が疑われる情報を洗い出します。この段階で誤った判断を下すと、被害を過小評価して対応が遅れたり、逆に過大評価して不要な混乱を招いたりするリスクがあります。そのため、迅速かつ客観的に状況を評価できる仕組みを整えておくことが欠かせません。

    被害の封じ込め・拡大防止

    被害範囲を特定した後は、被害の「封じ込め」が必要です。これは、インシデントの拡大を防ぎ、さらなる被害を最小限に抑えるための重要なプロセスです。例えば、侵害を受けたサーバをネットワークから切り離す、攻撃者が利用したアカウントを即座に無効化する、通信を一時的に遮断するなどの対応が考えられます。ただし、封じ込めの方法を誤ると、証拠が失われたり、攻撃者に異変を察知されて活動を隠蔽されたりする恐れもあります。そのため、封じ込めの対応はセキュリティチーム内で役割を明確にし、優先順位を付けて慎重に進めることが求められます。

    原因調査・ログ解析・フォレンジック調査

    封じ込めが完了した後は、インシデントの原因を突き止める「原因調査」が不可欠です。攻撃者がどのように侵入したのか、どの脆弱性を悪用したのか、内部関係者の過失や不正が関与していないかなど、多角的な視点から調査を進める必要があります。ログ解析やフォレンジック調査を通じて、攻撃経路や被害状況を正確に把握することが求められます。この段階で調査が不十分だと、再発防止策が不完全となり、再び同様の被害を招く可能性が高まります。そのため、外部のセキュリティ専門家の協力を得るケースも少なくありません。

    復旧対応

    原因が特定された後は、システムやサービスの復旧作業に移ります。ただ単に停止したサービスを再開させるのではなく、原因を取り除き、安全性を確認したうえで再稼働することが重要です。例えば、脆弱性が悪用されていた場合はセキュリティパッチを適用し、不正アクセスで改竄されたデータがあればバックアップから復旧します。また、復旧の際には「段階的な再開」を意識することが推奨されます。いきなり全システムを戻すのではなく、優先度の高いシステムから順に稼働させ、監視を強化しながら正常性を確認することで、再度の障害発生や攻撃再開のリスクを軽減できます。

    関係者への報告・情報共有

    復旧作業と並行して、関係者への適切な報告や情報共有も欠かせません。セキュリティインシデントは自社だけの問題ではなく、取引先や顧客、さらには規制当局にまで影響が及ぶ可能性があります。そのため、影響範囲を正確に把握したうえで、必要な関係者に迅速かつ誠実に情報を提供することが求められます。特に個人情報漏洩が発生した場合、法令やガイドラインに従った報告が義務付けられているケースも多く、対応を怠れば法的リスクや企業の信頼失墜につながります。また、社内向けの情報共有も重要であり、従業員が不安や誤情報に惑わされないよう、明確なメッセージを発信する体制を整えることが望まれます。

    再発防止策の検討

    インシデント対応の最終段階は、再発を防ぐための改善策を講じることです。単に原因を修正するだけでなく、組織全体のセキュリティ体制を見直す機会として活用することが重要です。例えば、脆弱性管理の仕組みを強化する、アクセス制御のルールを見直す、ログ監視やアラートの精度を高めるなど、技術的な改善が挙げられます。また、従業員へのセキュリティ教育や定期的な訓練を実施し、人為的なミスや不注意を減らす取り組みも効果的です。さらに、インシデント対応の流れを記録し、振り返り(ポストモーテム)を行うことで、今後同様の事態が発生した際に迅速かつ適切に対処できる体制を構築できます。

    BBSecでは

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスも提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

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    まとめ

    本記事では、セキュリティインシデントが発生した際に組織が取るべき対応を、初動から原因調査、復旧、関係者への報告、そして再発防止まで段階的に解説しました。インシデント対応は単なる技術的作業ではなく、社内連携や外部機関との調整、法令遵守、そして企業全体の信頼維持といった広範な要素が関わります。特に初動対応の速さや正確さは被害の拡大を防ぐ鍵となるため、日頃からの対応体制の整備や訓練が欠かせません。次回第3回では、インシデントの発生を未然に防ぐ取り組みや、組織全体でのセキュリティ強化策について詳しく解説し、実践的な予防策のポイントを紹介します。

    インシデント発生時の対応を円滑に進めるためには、平時から対応体制を整備しておくことが重要です。
    インシデント対応体制とは?CSIRTの役割と企業が整えるべき運用のポイント

    【参考情報】

    公開日:2025年10月8日
    更新日:2026年6月17日

    編集責任:木下


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    セキュリティインシデントとは?基礎知識と代表的な事例を解説

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    セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例アイキャッチ画像

    サイバー攻撃や情報漏えい、不正アクセス、ランサムウェア感染など、企業を取り巻くセキュリティリスクは年々増加しています。こうした事象は「セキュリティインシデント」と呼ばれ、発生した場合は情報資産の損失だけでなく、事業停止や信用低下につながる可能性があります。

    しかし、「どのような事象がセキュリティインシデントに該当するのか」「企業はどのようなリスクを認識すべきか」を正しく理解できていないケースも少なくありません。

    本記事では、セキュリティインシデントの定義や代表的な事例、企業への影響についてわかりやすく解説します。

    インシデント管理や対応フローの全体像については、関連記事もあわせてご覧ください。
    セキュリティインシデント管理とは?企業が押さえるべき対応フローと体制の全体像

    セキュリティインシデントの定義

    セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークにおいて、情報のセキュリティの3要素、「機密性」「完全性」「可用性」を脅かす事象の総称です。具体的には、不正アクセスや情報漏洩、マルウェア感染、サービス運用妨害(DoS)攻撃などが含まれます。近年はクラウドやリモートワークの普及により、攻撃対象や被害の範囲が広がり、セキュリティインシデントの発生リスクは増大しています。国内外で大規模な事件が相次いで報道されるなか、インシデントの発生はもはや大企業に限られた問題ではなく、中小企業や自治体、教育機関に至るまで幅広い組織が直面しています。そのため、経営層から現場担当者に至るまで、セキュリティインシデントへの理解と備えが求められているのです。

    セキュリティインシデントの種類(例)

    一口にセキュリティインシデントといっても、その内容は多岐にわたります。代表的なものとしては、まず「不正アクセス」が挙げられます。攻撃者が外部からシステムに侵入し、機密情報を窃取したり改竄したりするケースです。次に「マルウェア感染」があります。ウイルスやランサムウェアなどの悪意あるソフトウェアにより、データが暗号化され業務が停止する被害が増えています。また、従業員による「内部不正」も見逃せません。権限を持つ社員が意図的に情報を持ち出すケースや、誤操作による情報流出が問題化しています。さらに「情報漏洩」や「サービス停止(DoS/DDoS攻撃など)」も、企業活動を直撃する深刻なインシデントです。このようにセキュリティインシデントは外部攻撃だけでなく、内部要因やシステム障害など多面的に発生し得るため、幅広い視点での備えが不可欠です。

    実際に発生した主なセキュリティインシデント事例

    セキュリティインシデントは国内外で日々多発しています。この表は2025年8月から9月にかけて発生した主要な国内インシデント事例をまとめたものです。ランサムウェア攻撃や不正アクセスによる被害が多く、特に製造業や重要インフラへの影響が深刻化している傾向が見られます。

    被害報告日被害企業概要主な原因影響範囲
    2025年9月国内ガス・電力会社人為的ミスLPガス検針端末の紛失顧客情報6,303件の漏洩等のおそれ*2
    2025年9月国内デジタルサービス運営委託事業者個人情報漏洩受講状況管理ツールへの登録作業ミスリスキリングプログラム受講者1名の個人情報が他の受講者1名に閲覧可能に*2
    2025年9月国内食料品小売業個人情報漏洩サーバへの第三者からの不正アクセス企業情報及び個人情報が流出した可能性*3
    2025年9月委託事業者操作・管理ミスオペレーターの利用者情報取り違い高齢者の見守り・安否確認が行われず*4
    2025年9月国内オフィス機器販売会社個人情報漏洩第三者による不正アクセスカード支払い顧客の情報漏洩の可能性*5
    2025年8月ハウステンボス株式会社システム障害第三者による不正アクセス一部サービスが利用できない状況に*6
    2025年8月国内電力関連会社不正ログインリスト型攻撃(複数IPアドレスから大量ログイン試行)ポイント不正利用444件*7
    2025年8月国内機器メーカー企業不正アクセス海外グループ会社を経由した第三者の不正アクセス一部サービス提供停止(8月16日復旧)*8
    2025年8月医療用メーカー企業マルウェア感染システムのランサムウェア感染2日間出荷停止、その後再開*9
    2025年8月国内建設事業者マルウェア感染システムのランサムウェア感染海外グループ会社の一部サーバが暗号化*10
    2025年8月国内外郭団体乗っ取り第三者による一部メールアドレスの乗っ取り迷惑メール送信元として悪用*11
    2025年8月暗号資産交換事業者クラウド設定ミス顧客データ移転作業中のクラウド設定ミス海外メディアの報道で発覚、アクセス制限不備*12
    2025年8月国内銀行元従業員による情報の不正取得出向職員による電子計算機使用詐欺アコムから出向の元行員が逮捕・懲戒解雇*13
    2025年8月国内病院個人情報不正利用委託職員が診療申込書から電話番号を不正入手LINEで患者に私的メッセージを送付*14
    2024年12月国内総合印刷事業者マルウェア感染VPNからの不正アクセス(パスワード漏洩または脆弱性悪用)複数のサーバが暗号化される被害*15

    これらの事例は「セキュリティインシデントは特定の大企業だけの問題ではない」という現実を示しており、規模や業種にかかわらず備えが不可欠であることを強調しています。

    セキュリティインシデントが企業に与える影響

    セキュリティインシデントが発生すると、企業は多方面に深刻な影響を受けます。最もわかりやすいのは、システム停止や情報漏洩に伴う金銭的損失です。業務が一時的に止まることで売上が減少し、復旧作業や調査にかかる費用も膨大になります。さらに、顧客情報や取引先情報が流出すれば、企業の信頼性が大きく揺らぎ、契約解除や取引停止に直結する可能性があります。また、個人情報保護法や業界ごとのセキュリティ基準に違反すれば、法的責任や行政処分を受けるリスクも高まります。株式市場に上場している企業であれば、セキュリティインシデントの公表によって株価が急落するケースも少なくありません。このように、単なるシステム障害にとどまらず、企業経営全体に打撃を与える点がセキュリティインシデントの恐ろしさといえます。

    セキュリティインシデントを理解したら、次に重要なのは実際に発生した際の対応手順です。初動対応から復旧までの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    インシデント対応フローとは?発生時に企業が取るべき手順と判断ポイント

    まとめ

    本記事では、セキュリティインシデントの定義や種類、実際に発生した事例、そして企業に及ぼす影響について解説しました。改めて強調すべきは、セキュリティインシデントは大企業だけでなく、中小企業や自治体、教育機関などあらゆる組織にとって現実的な脅威であるという点です。しかも一度発生すると、金銭的損失だけでなく、顧客や取引先からの信頼低下、法的リスク、社会的信用の失墜といった連鎖的な被害を引き起こします。こうした背景から、セキュリティインシデントを「発生してから考える」姿勢ではなく、「発生する前提で備える」姿勢が求められています。次回は、実際にインシデントが発生した際にどのような対応が必要なのか、初動から復旧までの流れを詳しく解説します。

    【関連記事】

    セキュリティインシデントへの理解を深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

    【参考情報】

    公開日:2025年10月1日
    更新日:2026年6月17日

    編集責任:木下


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    CitrixBleed 3(CVE-2026-3055)の脆弱性:NetScaler ADC / Gatewayの影響・リスク・対策

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    CitrixBleed 3(CVE-2026-3055)の脆弱性:NetScaler ADC / Gatewayの影響・リスク・対策アイキャッチ画像

    CVE-2026-3055が注目される背景(CitrixBleedとの関連)

    2026年3月、Cloud Software Groupは、Citrix NetScaler ADCおよびNetScaler Gatewayに関する複数の脆弱性情報を公表しました*16。その中でも特に注意が必要なのが、CVE-2026-3055です。

    CVE-2026-3055は、NetScaler ADCおよびNetScaler GatewayがSAML IDPとして構成されている場合に影響を受ける、入力検証不備に起因するメモリオーバーリードの脆弱性です。Citrix公式アドバイザリでは、CWE-125、CVSS v4.0のベーススコア9.3Criticalとして評価されています。本脆弱性は、通称「CitrixBleed 3」と呼ばれています。JPCERT/CCは、過去に大きな問題となったCitrix Bleed系の脆弱性、CVE-2023-4966CVE-2025-5777との類似点が海外セキュリティ企業によって指摘されていると説明しています*2

    2025年7月に公表されたCitrix Bleed2(CVE-2025-5777)の脆弱性については以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    今すぐ対応を!Citrix Bleed2(CVE-2025-5777)の脆弱性情報まとめ

    企業にとって重要なのは、この脆弱性が単なる製品不具合ではなく、外部公開されている認証基盤やリモートアクセス基盤から情報漏洩につながる可能性がある点です。NetScaler GatewayはVPNやリモートアクセス、SSO連携の前段に置かれることが多く、侵害された場合の影響が社内ネットワーク全体に及ぶおそれがあります。

    CVE-2026-3055の概要

    CVE-2026-3055は、NetScaler ADCおよびNetScaler Gatewayにおけるメモリオーバーリードの脆弱性です。NVD(National Vulnerability Database)では、NetScaler ADCおよびNetScaler GatewayがSAML IDPとして構成されている場合、不十分な入力検証によりメモリオーバーリードが発生すると説明されています*3

    メモリオーバーリードとは、本来読み取るべきではないメモリ領域のデータが読み取られてしまう問題です。JPCERT/CCは、CVE-2026-3055について、遠隔の第三者によって意図しないメモリ領域のデータが読み取られる可能性があると注意喚起しています。この種の脆弱性で問題になるのは、攻撃者が直接ファイルを盗み出さなくても、メモリ上に一時的に残っていた情報が漏洩する可能性があることです。NetScalerのような認証や通信制御に関わる装置では、セッション情報、認証処理に関係する情報、SAML連携に関する情報などがメモリ上で扱われるため、情報漏洩の影響を慎重に評価する必要があります。

    影響を受ける製品とバージョン

    CVE-2026-3055の影響を受けるのは、NetScaler ADCおよびNetScaler Gatewayの一部バージョンです。Citrix公式アドバイザリでは、NetScaler ADCおよびNetScaler Gateway 14.1の14.1-60.58より前、13.1の13.1-62.23より前、NetScaler ADC FIPSおよびNDcPPの13.1-37.262より前が影響を受けるとされています。

    ただし、バージョンだけでなく構成条件も重要です。Citrix公式は、CVE-2026-3055について、Citrix ADCまたはCitrix GatewayがSAML IDP Profileとして構成されていることを前提条件として示しています。確認方法として、NetScalerの設定内に “add authentication samlIdPProfile .*” が存在するかを確認するよう案内しています。つまり、NetScalerを利用しているすべての環境が同じ条件で影響を受けるわけではありません。しかし、SAML IDPはSSOや認証連携に関わる重要な構成で使われるため、該当する場合は優先度を上げて確認すべきです。

    CVE-2026-3055はKEVカタログ登録済みの脆弱性

    CVE-2026-3055は、すでに米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)のKEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities Catalog)に追加されています。NVD上でも、CVE-2026-3055がCISA KEVに登録されていること、追加日が2026年3月30日であること、米国連邦政府機関向けの対応期限が2026年4月2日であることが確認できます。KEVカタログへの追加は、少なくともCISAが既知の悪用済脆弱性として扱っていることを意味します。そのため、CVE-2026-3055は「将来的に悪用されるかもしれない脆弱性」ではなく、実際の攻撃リスクを前提として対応すべき脆弱性です。

    JPCERT/CCも、2026年3月31日時点で海外セキュリティ企業から悪用に関する観測情報や詳細な技術情報が公表されていると説明しています。 公開インターネット上にNetScaler ADCやNetScaler Gatewayを設置している企業は、すでに攻撃対象として探索されている可能性を考慮する必要があります。

    CVE-2026-3055が「CitrixBleed 3」と呼ばれる理由

    CVE-2026-3055は、正式名称として「CitrixBleed 3」と命名されているわけではありません。しかし、セキュリティ業界では、過去に大きな影響を与えたCitrix Bleed系の脆弱性との類似性から、このように呼ばれることがあります。過去のCitrix Bleedでは、NetScaler ADCやNetScaler Gatewayにおける情報漏洩が問題となり、認証情報やセッション情報の悪用が懸念されました。今回のCVE-2026-3055も、NetScaler製品におけるメモリ読み取りの問題であり、境界装置から情報が漏えいする可能性があるという点で、過去のCitrix Bleed系の問題を想起させます。JPCERT/CCも、CVE-2023-4966およびCVE-2025-5777との類似点が指摘されているとしています。

    企業のセキュリティ担当者がこの名称に注意すべき理由は、名前そのものではなく、攻撃者が狙いやすい外部公開機器で、認証に関わる情報が漏洩する可能性があるという構図です。これは、ランサムウェア攻撃や標的型攻撃の初期侵入経路として悪用されるリスクを高めます。

    悪用された場合のリスク

    CVE-2026-3055を悪用された場合、最も懸念されるのは、NetScalerのメモリ上に存在する情報が第三者に読み取られることです。JPCERT/CCは、遠隔の第三者によって意図しないメモリ領域のデータが読み取られる可能性があると説明しています。

    NetScalerは、社外から社内システムへアクセスする際の入口として利用されることがあります。SSL VPN、リモートアクセス、SSO、認証連携の前段に配置されることも多く、ここで情報漏えいが発生すると、単一システムの問題にとどまらず、社内ネットワークへの不正アクセスやアカウント悪用につながる可能性があります。

    特に注意すべきなのは、パッチ適用だけでリスクが完全に消えるとは限らない点です。メモリ情報漏えい型の脆弱性では、修正前に何らかの情報が読み取られていた場合、その情報が後から悪用される可能性を否定できません。そのため、アップデートとあわせて、ログ調査、セッションの無効化、認証情報の見直し、関連アカウントの監視を実施することが重要です。

    企業がまず確認すべきポイント

    CVE-2026-3055への対応では、まず自社がNetScaler ADCまたはNetScaler Gatewayを利用しているかを確認する必要があります。特に、VPN、リモートアクセス、SSO、認証連携、社外公開システムの前段にNetScalerが配置されていないかを確認することが重要です。

    次に、対象バージョンに該当するかを確認します。Citrix公式アドバイザリでは、NetScaler ADCおよびNetScaler Gateway 14.1の14.1-60.58より前、13.1の13.1-62.23より前、NetScaler ADC FIPSおよびNDcPPの13.1-37.262より前がCVE-2026-3055の影響を受けるとされています。

    さらに、SAML IDPとして構成されているかを確認します。Citrix公式は、NetScaler Configuration内に”add authentication samlIdPProfile .* ”が存在するかを確認するよう案内しています。 この設定が存在する場合、CVE-2026-3055の影響を受ける条件に該当する可能性があります。

    対応方針:アップデートが最優先

    CVE-2026-3055について、JPCERT/CCは、Cloud Software Groupが本脆弱性に対する回避策を提供していないと説明しています。 そのため、アクセス制限や監視強化だけで対応を完了させるのではなく、修正済みバージョンへのアップグレードを基本方針とすべきです。Citrix公式アドバイザリでも、影響を受ける顧客に対して、関連する更新済みバージョンをできるだけ早くインストールするよう強く推奨しています。 本番環境では検証や切り戻し計画が必要になる場合がありますが、KEVカタログに登録されていることを踏まえると、通常の月次パッチ対応よりも高い優先度で扱うべき脆弱性です。

    侵害有無の確認方法

    CVE-2026-3055では、パッチ適用と同時に侵害有無の確認も重要です。JPCERT/CCは、watchTowr Labsの情報として、CVE-2026-3055を悪用する攻撃の試行は、/saml/login への細工したPOSTリクエストや、/wsfed/passive?wctx へのGETリクエストによって行われると紹介しています。通常運用で想定されない送信元IPから、これらのエンドポイントへのアクセスがログに記録されていないか確認することが推奨されています。また、JPCERT/CCは、DEBUGレベルのログを有効化している場合、/var/log/ns.log に意図しない文字列が挿入される点もwatchTowr Labsが指摘していると説明しています。 侵害が疑われる場合は、ログの保全、関係者への報告、メーカーや専門事業者への相談を検討すべきです。重要なのは、「アップデートしたから終わり」としないことです。すでに攻撃を受けていた場合、攻撃者が取得した可能性のある情報を前提に、セッションの無効化や認証情報の更新、管理者アカウントの確認、異常なログイン履歴の調査を進める必要があります。

    なぜ境界装置は狙われるのか

    近年、VPN装置、ADC、認証ゲートウェイ、ファイル転送装置など、インターネット境界に置かれる機器の脆弱性が繰り返し悪用されています。これらの機器は社内ネットワークへの入口に位置し、多くの場合、認証情報やセッション情報、社内システムへのアクセス経路を扱います。攻撃者にとっては、境界装置の侵害が効率のよい初期侵入手段となります。一般的な端末を一台ずつ狙うよりも、外部公開された認証基盤やリモートアクセス装置を突破する方が、社内環境へ到達しやすい場合があるためです。CVE-2026-3055は、まさにこの文脈で捉える必要があります。NetScaler ADCやNetScaler Gatewayを導入している企業は、単に脆弱なバージョンを更新するだけではなく、外部公開資産の棚卸し、設定確認、ログ監視、脆弱性情報の継続的な収集を組み合わせて対応する必要があります。

    脆弱性管理で求められる実務対応

    CVE-2026-3055のような重大なリスクレベルの脆弱性に対応するには、まず資産を把握していることが前提になります。どの拠点、どのクラウド環境、どのネットワーク境界にNetScalerが存在するのかを把握できていなければ、脆弱性情報が公開されても迅速に判断できません。また脆弱性の深刻度だけでなく、自社環境での露出状況を評価する必要があります。CVE-2026-3055はCVSS v4.0で9.3のCriticalと評価されていますが、実務上は、インターネットから到達可能か、SAML IDPとして構成されているか、認証基盤としてどの範囲に影響するかを確認することが重要です。さらに、KEVカタログへの登録の有無も優先順位付けの重要な判断材料になります。CVE-2026-3055はKEVカタログへ登録済みであり、NVD上でもその情報が確認できます。 既知悪用脆弱性に該当する場合、通常の脆弱性対応よりも優先度を上げ、短期間での対応計画を立てるべきでしょう。

    この脆弱性から学ぶべきポイント

    CVE-2026-3055は、個別の製品脆弱性であると同時に、企業の脆弱性管理体制を見直すきっかけにもなります。特に、VPNや認証ゲートウェイのような外部公開機器は、業務継続に不可欠である一方、攻撃者にとっても魅力的な標的です。今後も、境界装置や認証基盤に関する脆弱性は継続的に公表されると考えられます。そのたびに場当たり的に対応するのではなく、外部公開資産の一覧化、バージョン管理、設定管理、ログ監視、緊急パッチ適用の判断基準をあらかじめ整備しておくことが求められます。特に、情シス部門やセキュリティ担当者が少人数で運用している企業では、脆弱性情報の収集、影響調査、優先順位付け、パッチ適用、侵害調査をすべて自社だけで行うことが難しい場合があります。その場合は、外部診断やセキュリティ監視サービス、インシデント対応支援を組み合わせ、重要な境界装置を継続的に確認できる体制を整えることが現実的です。

    まとめ:CVE-2026-3055への対応ポイント

    CVE-2026-3055は、NetScaler ADCおよびNetScaler GatewayがSAML IDPとして構成されている場合に影響を受ける、メモリオーバーリードの重大脆弱性です。この脆弱性の本質は、NetScalerという外部公開されやすい認証・通信制御基盤から、意図しないメモリ領域のデータが読み取られる可能性がある点にあります。企業は、NetScaler ADC / Gatewayの利用有無、対象バージョン、SAML IDP構成の有無を確認し、該当する場合は修正版へのアップグレードを速やかに進める必要があります。あわせて、/saml/login/wsfed/passive?wctxへの不審なアクセスの有無を確認し、侵害が疑われる場合はログ保全と専門的な調査を行うことが重要です。

    CVE-2026-3055は、単なる一製品の脆弱性ではなく、外部公開資産と認証基盤の管理が企業のセキュリティに直結することを示す事例です。脆弱性管理は、パッチを当てる作業だけではありません。資産を把握し、影響を判断し、優先順位を付け、侵害有無まで確認する一連の運用として整備することが、今後ますます重要になるでしょう。

    【参考情報】


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  • 2026年5月20日(水)14:00~15:30 <BBSec/Future/ハンモック共催>
    脆弱性管理の最適解 ― ASM・IT資産管理・脆弱性管理を分けて考え、統合するという選択
  • 2026年5月27日(水)14:00~15:00
    ~取引先から求められる前に押さえる~ SCS評価制度への対応準備と現実的な進め方
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    脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント

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    「脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント」アイキャッチ画像

    脆弱性スキャンは、企業のシステムやネットワーク、Webアプリケーション、クラウド環境に存在する既知の脆弱性を効率よく洗い出すための基本的な手段です。近年は、公開サーバーやVPN機器だけでなく、クラウド上のワークロード、コンテナ、OSSライブラリまで管理対象が広がっており、手作業だけで安全性を確認するのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、脆弱性スキャナーや脆弱性診断ツールを使って、環境全体を継続的に確認する考え方です。CISAも、インターネット公開資産に対する継続的な 脆弱性スキャンを、基本的な「サイバーハイジーン(Cyber Hygiene)」の一環として位置付けています。

    ただし、脆弱性スキャンを導入すれば自動的に安全になるわけではありません。スキャンはあくまで既知の弱点を機械的に見つける仕組みであり、誤検知や過検知、設定不備の見落とし、業務影響を踏まえた優先順位判断までは自動では完結しません。そのため実務では、脆弱性スキャンの役割を正しく理解したうえで、脆弱性診断や脆弱性管理のプロセスと組み合わせて運用する必要があります。本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理します。

    脆弱性スキャンとは

    脆弱性スキャンとは、サーバー、ネットワーク機器、Webアプリケーション、クラウド環境などに対して自動的に検査を行い、既知の脆弱性や不適切な設定、不足している更新などを検出する仕組みです。企業が脆弱性スキャンを導入する目的は、攻撃者に悪用される前に自社環境の弱点を見つけ、修正につなげることにあります。米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)のCyber Hygiene Servicesでも、Vulnerability Scanning(脆弱性スキャン)はインターネットから到達可能な資産を継続的に監視し脆弱性の有無を評価するサービス、として説明されています。

    脆弱性スキャンの特徴は、自動化にあります。人手では確認しきれない大量のIPアドレス、Webアプリケーション、仮想マシン、コンテナイメージなどを機械的に点検し、既知の脆弱性情報や設定ミスと突き合わせることで、短時間に広い範囲を確認できます。NIST SP 800-115『Technical Guide to Information Security Testing』でも、自動化されたテスト手法は情報セキュリティ評価の重要な手段とされ、SCAPのような標準化された枠組みが脆弱性管理の自動化を支えるものとして紹介されています。

    一方で、脆弱性スキャンには限界もあります。自動スキャンは既知のパターンには強いものの、業務ロジックに起因する脆弱性や、文脈を踏まえた攻撃シナリオまでは把握しきれない場合があります。また、誤検知や重複検知が発生することもあるため、結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、影響の確認と優先順位付けが必要です。つまり脆弱性スキャンは、脆弱性管理の入口として非常に有効ですが、それだけで完結するものではありません。

    脆弱性スキャンを適切に実施するためには、対象となるIT資産を正確に把握することが重要です。サーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境やOSSコンポーネントも対象となります。IT資産管理と脆弱性管理の関係については、以下の記事も参考になります。
    脆弱性管理とIT資産管理 -サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

    脆弱性診断との違い

    脆弱性スキャン脆弱性診断は混同されやすい言葉ですが、実務上は役割が異なります。脆弱性スキャンは、既知の脆弱性や設定不備を自動的に広く洗い出すことに向いています。これに対して脆弱性診断は、専門家が対象システムの構造や挙動を踏まえながら、ツールだけでは見つけにくい問題も含めて詳細に評価する行為です。OWASPでは、ペネトレーションテストやセキュリティテストがスキャン単独よりも実際の攻撃可能性やリスク評価をより正確に把握する助けになる、と説明しています*4

    たとえば、Webアプリケーションに対する自動スキャンでは、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングの典型的なパターンは検出しやすい一方で、権限管理の不備や業務フロー上のロジック欠陥、複数機能をまたいだ複雑な脆弱性は取り逃がす可能性があります。OWASPのOWASP Web Security Testing Guideでは、Webセキュリティ評価が単なる自動実行ではなく、アプリケーションの設計や攻撃面を踏まえた体系的なテストであることを示しています。

    そのため企業では、脆弱性スキャンと脆弱性診断を対立概念として捉えるよりも、目的に応じて使い分けることが重要です。日常的な広範囲確認には脆弱性スキャンが向いており、公開Webサービスや重要システムの深い評価には脆弱性診断が向いています。脆弱性スキャンは継続運用の基盤、脆弱性診断は重点箇所の深掘りというように整理すると理解しやすいでしょう。

    脆弱性スキャンの種類

    脆弱性スキャンにはいくつかの種類があり、どこを対象にするかで使うツールや評価軸が変わります。

    Webスキャン

    OWASPでは、Webアプリケーション脆弱性スキャンを、外部からWebアプリケーションを自動検査し、XSS、SQLインジェクション、コマンドインジェクション、パストラバーサル、不適切な設定などの脆弱性を探すツール、として説明しています*2。いわゆるDAST(Dynamic Application Security Testing)に近い領域であり、インターネット公開されるサービスでは特に重要です。企業サイト、会員サイト、管理画面、APIなど、公開面があるならWebスキャンは有力な選択肢になります。

    ネットワークスキャン

    サーバー、ルーター、ファイアウォール、VPN装置などに対して、開いているポート、稼働サービス、既知の脆弱性、更新不足の状況を確認するものです。特にインターネットに公開された機器は攻撃対象になりやすいため、CISAも継続的なスキャンの重要性を強調しています。

    クラウドスキャン

    クラウドでは、OSやミドルウェアの脆弱性だけでなく、ストレージの公開設定、IAM権限、コンテナ設定、イメージの更新状況なども安全性に大きく影響します。従来型のネットワークスキャンだけでは十分でなく、CSPMやCNAPP系の機能を持つツールでクラウド設定やワークロードを可視化する必要があります。共有責任モデルのもとでは、クラウド事業者が管理しない部分は利用企業側が継続的に見なければなりません。

    さらに、OSS脆弱性スキャン、いわゆるSCAも見逃せません。現代のソフトウェアは多くのOSSライブラリに依存しており、アプリケーション本体に問題がなくても、依存パッケージの脆弱性がリスクになります。NTIA(米国商務省電気通信情報局:National Telecommunications and Information Administration)が公開している「The Minimum Elements For a Software Bill of Materials (SBOM) 」では、SBOMをソフトウェアを構成する各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録、と定義しており、OSS脆弱性管理の前提として極めて重要です。SCAやSBOM対応ツールを使うことで、どのアプリケーションにどの部品が含まれているかを把握しやすくなります。

    脆弱性スキャナーの比較

    脆弱性スキャナーを比較するとき、まず見るべきなのはCVE対応の範囲です。脆弱性スキャンの基本は、既知の脆弱性データと自社環境を突き合わせることにあるため、どの程度広くCVE情報やベンダー情報に対応しているかは重要です。とはいえ、単に「CVEに対応している」と書かれているだけでは不十分で、更新頻度、対応製品の広さ、クラウドやコンテナへの追従性まで見たほうが実務では役立ちます。CISAが示す脆弱性管理の考え方*3でも、継続的に変化する資産や脅威を前提にした運用が重視されています。

    次に確認したいのがスキャン精度です。脆弱性スキャナーは便利ですが、誤検知が多すぎると運用部門が疲弊し、逆に本当に重要な項目を見逃しやすくなります。逆に、検知が甘ければ見つかるべき脆弱性を取り逃がすことになります。ツールの比較では、単なる検知件数ではなく、結果がどれだけ実務で使いやすいか、重複排除や重要度の絞り込みがしやすいかも見ておく必要があります。OWASPが指摘するようにスキャン結果だけでは実際の攻撃可能性を完全に評価できない*4ため結果の解釈しやすさも重要です。

    さらに、OSSライブラリ検出やSBOM生成の可否は、近年ますます重要になっています。SCAに対応していないツールでは、アプリケーション内部の依存関係まで把握できず、ソフトウェアサプライチェーンリスクへの対応が難しくなります。SBOMを生成・管理できるかどうかは、脆弱性スキャンの範囲をインフラからソフトウェア部品まで広げられるかどうかに直結します。NTIAはSBOMが脆弱性管理、ソフトウェア在庫管理、ライセンス管理などの基本ユースケースに役立つとしています。

    脆弱性スキャン導入のポイント

    脆弱性スキャンを導入する際に考えるべきポイントは以下のとおりです。

    導入目的の明確化

    公開Webサイトの安全性を高めたいのか、社内サーバーの更新漏れを防ぎたいのか、クラウド設定不備を見つけたいのか、OSS脆弱性を把握したいのかで、適したツールは変わります。目的が曖昧なまま「有名だから」という理由だけで導入すると、期待した検知ができなかったり、運用負荷だけが増えたりします。

    導入後の運用体制の整備

    脆弱性スキャンは、導入しただけでは意味がなく、誰が結果を確認し、どこまで精査し、どの基準で是正依頼を出し、修正後にどう再確認するかまで決めておく必要があります。NISTのパッチ・脆弱性管理ガイドでも、技術そのものより、継続運用のプロセス設計が重要であることが示されています。ツール導入はゴールではなく、脆弱性管理のサイクルを回すための手段です。

    資産管理との連携

    スキャン結果を脆弱性対応に直結させるためには、資産管理との連携も欠かせません。どのサーバーがどの業務に使われているのか、どのシステムが外部公開されているのか、どのアプリケーションがどのOSS部品を利用しているのかが分からなければ、検出された脆弱性の優先順位を決められません。特にクラウドやコンテナ環境では、資産の増減が激しいため、台帳やCMDB、クラウド資産可視化と組み合わせた運用が重要です。

    脆弱性診断・ペネトレーションテストとの併用

    脆弱性スキャンは広く速く確認するのに強い一方で、業務ロジックや複雑な攻撃経路までは十分に評価できないことがあります。公開サービスや重要システムでは、重点的な診断を組み合わせるほうが現実的です。OWASPも、ペネトレーションテストがスキャンだけでは見えない実攻撃視点の評価に役立つと説明しています。

    脆弱性スキャンで脆弱性を発見した後は、迅速に対応を行うことが重要です。適切な優先順位付けやパッチ適用を行わなければ、攻撃リスクを低減することはできません。脆弱性対応の具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性対応とは?CVE対応とパッチ管理の実務フロー

    脆弱性管理との関係

    脆弱性スキャンは、脆弱性管理そのものではありませんが、脆弱性管理を支える重要な要素です。脆弱性管理は、資産把握、脆弱性情報収集、評価、是正、再確認を継続的に回す運用全体を指します。その中で脆弱性スキャンは、「発見」と「継続的な監視」を支える手段として機能します。CISAが脆弱性管理を、脆弱性や悪用可能な状態の頻度と影響を減らす取り組みとして整理している*5ことからも、スキャン単独ではなく運用全体の中で捉えるべきことが分かります。

    脆弱性スキャンは、脆弱性管理の一部として実施される重要なプロセスです。しかし、スキャンを実施するだけでは不十分であり、発見した脆弱性を評価・対応まで含めて継続的に管理する必要があります。企業の脆弱性管理全体の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

    実務では、脆弱性スキャンで見つけた結果をそのまま並べるだけでは意味がありません。資産の重要度、公開状態、CVSS、既知悪用の有無、業務影響などを踏まえて優先順位を決め、必要な修正や診断につなげていく必要があります。さらに、OSS脆弱性についてはSCAやSBOMを組み合わせて調査範囲を広げることが重要です。つまり脆弱性スキャンは、脆弱性管理の入口であり、全体運用へつなぐための観測手段だといえます。

    まとめ

    脆弱性スキャンとは、既知の脆弱性や設定不備を自動的に洗い出し、企業の攻撃面を継続的に可視化するための基本手段です。ネットワークスキャン、Webスキャン、クラウド環境スキャン、OSS脆弱性スキャンといった種類があり、企業のシステム構成に応じて適切に選ぶ必要があります。ただし、脆弱性スキャンは万能ではなく、脆弱性診断やペネトレーションテストのような深い評価とは役割が異なります。広く見つけるのがスキャン、深く確かめるのが診断、と整理すると理解しやすいです。

    導入時に重要なのは、ツールの知名度ではなく、自社の目的に合っているかどうかです。CVE対応の広さ、スキャン精度、クラウド対応、OSSライブラリ検出、SBOM生成の可否などを見極めたうえで、導入後に誰がどのように結果を処理するかまで設計しておく必要があります。脆弱性スキャンを単独の製品選定で終わらせず、脆弱性管理の継続運用へつなげることが、企業にとって本当の導入効果につながります。

    【参考情報】


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    本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理しました。次回、5月20日(水)14時からの開催のウェビナーでは、AssetViewFutureVulsのメーカーが登壇し、各領域の役割をどのように整理し、どのように連携させれば実効性ある脆弱性管理が実現できるのか、解説します。脆弱性管理の考え方について深くを理解されたい方は、ぜひご参加ください。

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    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    編集責任:木下

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    TLS設定の安全性と確認ポイント:古い暗号設定が引き起こすリスクと改善手順

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    インターネット上の通信を安全に行うために欠かせない技術が「TLS(Transport Layer Security)」です。WebサイトのHTTPS通信は、このTLSによって保護されています。しかし、TLSは単に導入すれば安全というものではなく、バージョンや設定によってはセキュリティリスクが生じる可能性があります。本記事では、TLS設定の安全性を判断するために押さえておくべき基本的な考え方と確認ポイントを整理します。

    具体的なバージョン確認や設定チェックの手順については、実践編の記事で詳しく解説しています。「TLSバージョン確認と安全な暗号設定方法

    TLSとは?

    TLS(Transport Layer Security)は、インターネット上でやり取りされる通信を暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防ぐための仕組みです。Webサイトのログイン情報や個人情報、業務データなどを安全に送受信するための、通信の土台となる技術といえます。

    かつてはSSLと呼ばれていましたが、現在はTLSが標準となっており、SSLはすでに非推奨です。TLSが正しく設定されていない場合、通信内容が外部から読み取られたり、不正に操作されたりするリスクが高まります。

    TLSの仕組み

    TLSは主に以下の仕組みで通信を保護しています。

    暗号化通信

    送受信されるデータを暗号化することで、第三者に内容を読み取られないようにします。

    認証(証明書)

    サーバ証明書を用いて、通信先が正しい相手であることを確認します。

    完全性の確保

    通信内容が途中で改ざんされていないかを検証します。

    TLSバージョンの違い

    TLSには複数のバージョンが存在し、それぞれ安全性や対応状況が異なります。

    • TLS 1.0 / 1.1
      すでに脆弱性が指摘されており、主要ブラウザやサービスでは非推奨・無効化が進んでいます
    • TLS 1.2
      適切な暗号スイートを選択すれば安全に利用できます。
    • TLS 1.3
      最新バージョンであり、セキュリティとパフォーマンスの両面で改善されています

    基本方針としては、TLS 1.3を有効化し、古いバージョンを無効にすることが推奨されます。
    現在どのバージョンが使われているかを把握することが、最初の重要なステップです。

    TLS1.2/1.3への移行手順と設定のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    TLSバージョンの確認方法とは?ブラウザ・OpenSSL・ツールでのチェック手順と安全な設定ポイント

    TLSの脆弱性リスク

    TLSは安全な通信技術ですが、バージョンや設定によっては脆弱性が存在します。

    古いTLSのリスク

    TLS1.0や1.1は既知の攻撃手法により、通信の安全性が低下する可能性があります。

    設定不備によるリスク

    • 設定不備によるリスク
    • 証明書の不備
    • 設定ミス

    攻撃への悪用

    これらの問題がある場合、

    • 通信の盗聴
    • データ改ざん
    • 不正アクセス

    といった攻撃につながる可能性があります。

    TLSの脆弱性は、発見後の対応も重要です。「脆弱性対応の基本と実践ポイント

    TLS暗号設定ガイドラインと基本設計方針

    TLSを安全に運用するためには、適切な暗号設定が不可欠です。以下は基本的なガイドラインです。

    TLS暗号設定ガイドラインは、TLS通信における安全性考慮したセキュリティ設定基準を設けています。これにより、TLSサーバの構築者や運用者が実際の商業的背景やシステム要件に応じた適切な設定を行うための根拠を提供します。

    IPA「TLS暗号設定ガイドライン(2025年4月25日 第3.1.1版公開)」は電子政府推奨暗号の安全性の評価プロジェクト「CRYPTREC」が作成したWebサーバでのTLS暗号設定方法をまとめたガイドラインです。TLSサーバの構築者や運用者が適切なセキュリティを考慮して暗号設定を行うための指針として提供されています。

    本ガイドラインで提唱されている3つの設定基準(「推奨セキュリティ型」「高セキュリティ型」「セキュリティ例外型」)は、各種国際的標準(NIST SP800/PCI DSSv4.0/OWASP ASVS等)の指針に対応したものであり、準拠への取り組みや、暗号設定における今後のセキュリティ対策を検討する上でも役に立ちます。ぜひ参照されることをお勧めします。

    • 高セキュリティ型: TLS 1.3およびTLS 1.2を使用し、強い暗号スイートのみを利用。
    • 推奨セキュリティ型: 一般的に推奨される設定で、セキュリティとアクセス性のバランスが取れています。
    • セキュリティ例外型: TLS 1.3~TLS 1.0のいずれかで、アクセス性を確保しますが、セキュリティの強度は低下します。

    (※セキュリティ例外型での設定内容は2029年度を目途に終了予定のため、速やかに推奨セキュリティ型への移行が推奨されます)

    設定要求: 各設定基準に応じた具体的なプロトコルバージョンや暗号スイートの要求設定が示されています。これには、遵守項目と推奨項目が含まれ、安全性を確保するために満たすべき要件が詳細に説明されています。

    チェックリスト: TLSサーバの構築者や運用者が設定を実施する際に利用できるチェックリストも用意されており、設定忘れを防ぐためのガイダンスを提供します。

    定期的な設定確認

    TLS設定は定期的に見直し、最新の推奨設定に更新する必要があります。

    TLS設定の具体的な確認方法はこちら。
    TLSバージョンの確認方法とは?ブラウザ・OpenSSL・ツールでのチェック手順と安全な設定ポイント

    TLS設定の見直しが必要かどうか判断に迷う場合や、自社だけでの確認が難しい場合は、第三者の視点で現状を整理することも有効です。通信設定を含めたWebサイト全体のセキュリティ状況を把握したい場合は、専門家によるセキュリティ診断や設定確認を検討するのも一つの方法です。

    よくある質問(FAQ)

    ▼ TLSとは何ですか?
    ▼ TLS1.2とTLS1.3の違いは何ですか?
    ▼ TLSは導入すれば安全ですか?
    ▼ TLS1.0/1.1は使用しても問題ありませんか?

    まとめ

    TLSはWeb通信の安全性を支える重要な技術です。

    • 通信の暗号化
    • 認証
    • 改ざん防止

    といった役割を持ちますが、適切な設定と運用が不可欠です。

    また、TLSバージョン設定の確認や脆弱性対応と組み合わせることで、より安全なシステム運用が可能になります。

    【関連情報】

    ● 量子コンピュータの実用化と耐量子暗号の標準化動向


    公開日:2020年7月29日
    更新日:2026年4月1日

    編集責任:木下

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