Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

デジタルフォレンジック調査の質は「誰に任せるか」によって大きく左右されます。調査を依頼する際は、必要なスキルや資格を有する信頼できる専門家を見極めることが重要です。「企業のためのデジタルフォレンジック入門」シリーズ第3回目となる今回は、デジタルフォレンジック調査に求められるスキルや、信頼できる調査パートナーを選ぶためのポイントについて解説します。
デジタルフォレンジック調査に求められるスキル
デジタルフォレンジック調査は、単なる技術的作業にとどまらず、法的対応や組織内のコミュニケーションなど、多岐にわたるスキルが求められる高度な専門分野です。調査の正確性と法的証拠能力を確保するためには、以下のようなスキルが求められます。
1.技術的スキル
フォレンジック調査では、コンピュータやモバイルデバイス、ネットワーク機器など、さまざまなデジタルデバイスから証拠を収集・分析する高度な技術が不可欠です。具体的には、ログ解析、マルウェア解析、ネットワークトラフィックの分析、暗号化データの復号、クラウド環境やIoTデバイスからのデータ抽出など、多岐にわたる技術的知識と経験が求められます。
2.法的知識
デジタルフォレンジックの調査結果は、訴訟や内部処分などの法的対応に利用されるケースが多くあります。そのため、証拠保全の適切な手続きや電子データの証拠能力を担保する方法についての理解は欠かせません。調査の過程で収集したデータが、法的に無効とならないよう慎重に取り扱うことが求められます。
3.分析力と問題解決能力
フォレンジック調査では、大量のデータの中から関連性のある情報を特定し、攻撃の手口や経路を明らかにする必要があります。そのため、データの相関関係を見抜く分析力や、複雑な問題に対して柔軟に対応する問題解決能力が重要です。
またフォレンジック調査は、調査担当者だけで完結するものではありません。調査を円滑に進めるためには、IT部門や法務部門、経営層との連携が不可欠です。専門的な調査結果を、非技術部門にもわかりやすく説明し、経営判断や法的対応に必要な情報を正確に伝える力も重要です。これらのスキルをバランスよく備えた人材が、企業のインシデント対応力を大きく高める鍵となります。調査を依頼する際は、こうしたスキルセットを有する専門家に依頼することが、調査の精度と効果を高めるための重要なポイントです。
デジタルフォレンジック関連の資格
デジタルフォレンジック調査は高度な専門知識と技術が求められる分野であり、調査を担当する人材のスキルによって調査結果の正確性や証拠能力が大きく左右されます。そのため、調査を依頼する際は、担当者がどのような資格や専門性を持っているかを必ず確認することが重要です。以下に、代表的な資格とその特徴を紹介します。
GCFA(GIAC Certified Forensic Analyst)
GCFAはSANS Instituteが提供するGIAC認定資格の一つで、デジタルフォレンジック調査に特化した国際資格です。データ侵害の調査、インシデント対応、脅威ハンティングなど、実践的なスキルを証明します。
CDFP(Certified Digital Forensics Professional)
デジタル・フォレンジック研究会が実施する資格で、基礎資格(CDFP-B)、実務者資格(CDFP-P)、管理者資格(CDFP-M)の3段階があります。日本国内でのデジタルフォレンジックに特化した資格として注目されています。
CHFI(Computer Hacking Forensic Investigator)
EC-Councilが提供する資格で、サイバー攻撃の痕跡を特定し、必要な証拠を適切に収集・分析するスキルを習得することを目的としています。
またクレジットカード業界の情報漏えい事故を調査する資格にQSA(Qualified Security Assessor)があります。特に、カード情報を扱う企業にとっては、QSAの資格を持つ専門家によるフォレンジック調査が重要な意味を持ちます。
これらの資格は単なる知識だけでなく、実務経験や倫理的な判断能力を備えていることの証明にもなります。調査を依頼する際は、「どの資格を保有しているか」「過去にどのような調査実績があるか」を確認し、信頼できる専門家に依頼することが重要です。
インシデント対応としてのフォレンジックの重要性
サイバー攻撃や内部不正などのインシデントが発生した際、企業に求められるのは迅速かつ的確な対応です。その中で、デジタルフォレンジック調査は、被害の拡大を防ぎ、再発防止策を講じるうえで極めて重要な役割を果たします。
フォレンジック調査を適切に実施することで、攻撃者の侵入経路や攻撃手法、被害範囲を正確に特定できます。これにより、攻撃の拡大を防ぐために必要な対策を即座に講じることが可能となり、被害の最小化につながります。また、攻撃の原因を突き止め、脆弱性の修正や運用体制の見直しを行うことで、同様の被害が再び発生するリスクを大幅に低減できます。
しかし、こうした迅速な対応を実現するには、事前の備えが不可欠です。経営層や管理部門は、平時からインシデント発生時の対応体制を整えておく必要があります。具体的には、以下のような準備が求められます。
- インシデント対応ポリシーの策定:どのような事象をインシデントと定義し、発生時にどの部門がどのように対応するかを明確化します。
- 証拠保全体制の整備:調査に必要なログやデータを適切に保存し、改ざんや消失を防ぐ体制を構築します。
- 外部専門家との連携準備:緊急時にすぐに相談・調査を依頼できるよう、フォレンジック調査会社との連絡ルートや契約手続きを整えておきます。
- 社内教育・訓練の実施:情報システム部門や関係者に対して、インシデント対応手順や証拠保全の重要性について定期的な教育を行います。
インシデントは、いつ発生してもおかしくありません。被害拡大を防ぎ、企業の信用を守るためには、フォレンジック調査を中心とした実効性のあるインシデント対応体制の構築が不可欠です。経営層がリスクマネジメントの一環としてこの重要性を認識し、積極的に体制整備に取り組むことが、企業の持続的な成長と信頼維持につながります。
【関連サービス】
インシデント初動対応準備支援はこちら
信頼できる調査会社・専門家の選び方
デジタルフォレンジック調査を依頼する際には、調査会社や専門家の信頼性と対応力を慎重に見極めることが不可欠です。
1.過去の調査実績・公開事例の有無
調査会社や専門家を選ぶ際は、まず過去の調査実績や公開事例の有無を確認しましょう。実績が豊富な会社は、さまざまな業種や企業規模のインシデントに対応した経験を持っており、適切な調査手法と迅速な対応力を備えています。また、可能であれば、同業他社での対応事例や解決までのプロセスを確認することで、自社の課題に対する対応力を具体的にイメージできます。
2.調査体制(緊急対応可能か、社内対応チームの有無)
サイバーインシデントは突発的に発生します。万が一の際に備え、24時間365日対応可能な緊急体制を整えているかを確認することが重要です。また、外部委託だけでなく、社内に専門の調査チームを有している企業は、ノウハウの蓄積や迅速な意思決定が可能であり、調査の品質も高い傾向にあります。緊急時の連絡手段や初動対応までの所要時間も事前に確認しておくと安心です。
3.事前相談・見積もり段階での対応姿勢
調査を依頼する前段階の事前相談や見積もり時の対応姿勢も、信頼できる調査会社かどうかを見極めるポイントです。質問に対する回答が的確かつ分かりやすいか、専門用語をかみ砕いて説明してくれるかなど、コミュニケーションの質を重視しましょう。また、調査内容や費用の内訳について明確に説明がない場合は、後から想定外の追加費用が発生するリスクもあるため、しっかりと確認しましょう。
このように、実績・体制・対応姿勢の3点をバランスよく確認することで、信頼できるパートナーを選定することができます。インシデント発生時に慌てることがないよう、平時から調査会社の候補をリストアップし、必要に応じて事前相談を行っておくことが理想的です。
まとめ:リスクに備える最善の準備とは
サイバー攻撃や情報漏えいといったインシデントは、今やどの企業にとっても現実的なリスクとなっています。そのリスクにどう向き合い、どのように被害を最小限に抑えるかは、企業の信頼性と持続的成長を左右する重要な課題です。本シリーズでは、デジタルフォレンジック調査の基礎知識から、調査の流れや費用、そして信頼できる調査パートナーの選び方まで、実務に役立つ情報を解説してきました。これらの内容は、単にインシデント発生時の対応策としてだけではなく、経営層や管理部門が平時から備えておくべきリスクマネジメントの一環です。企業がこれから取り組むべきは、「万が一ではなく、いつ起きてもおかしくない」という前提で、適切な体制を整えておくこと」です。必要な情報を正しく理解し、信頼できる専門家とのネットワークを構築しておくことで、万が一の事態にも冷静かつ的確に対応できる企業体制を実現できるでしょう。本記事が、皆様のリスク対策とインシデント対応体制の強化に少しでも貢献できれば幸いです。
緊急時の対応にお困りですか?
24時間365日対応可能な専門チームが、迅速にサポートいたします。
今すぐ相談する

サイバー攻撃や情報漏えいのリスクは、企業規模を問わず現実のものとなっています。万が一の事態に備え、信頼できるパートナーと連携し、迅速かつ適切な対応体制を整えておくことが重要です。株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では緊急対応支援サービスを提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏えいの懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。詳細はこちら。

【連載一覧】
―第1回「デジタルフォレンジック調査とは?企業が知っておくべき基本情報」―
―第2回「デジタルフォレンジック調査の流れと費用とは?」―
Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る






