【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴 第3回:今後のトレンドと企業が取るべき対策

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ランサムウェアギャング大図鑑:第3回 今後のトレンドと企業が取るべき対策アイキャッチ画像

急速に変化を続けるランサムウェアの脅威についてシリーズ第3回では、2025年以降に予測される攻撃トレンドと、防御の要となる企業の対策ポイントを解説します。AIを活用した攻撃の自動化、地域・業種特化型の攻撃、そして“多重恐喝”の常態化など、脅威はさらに高度化しています。被害を防ぐために企業がとるべき対策や実践的な技術的対策から組織的な備えまで、最新の防御戦略をわかりやすく紹介します。

はじめに:2025年のランサムウェア攻撃と企業への脅威

これまでの2回にわたり、ランサムウェアの進化と市場の変動、そして主要なランサムウェアギャングの勢力図の変化を見てきました。第1回では、ランサムウェア攻撃がどのように進化してきたかを、技術的な進歩や新たな攻撃手法を中心に解説しました。第2回では、ランサムウェアギャングの台頭とその戦略の変化に焦点を当て、特に「RaaS(Ransomware-as-a-Service)」の普及による攻撃の多様化を説明しました。

そして「ランサムウェアギャング大図鑑」シリーズ最終回の第3回では、これらの現状を踏まえて予測される2025年以降のランサムウェア攻撃のトレンドと、企業が今後取るべき対策をご紹介します。攻撃者の進化と企業の防御策がかみ合わないと、被害は拡大する一方です。したがって、最新の脅威動向をしっかりと把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。

今後のランサムウェア攻撃のトレンド

ランサムウェア攻撃は年々進化を続けており、攻撃者の手法はますます高度化しています。以下のトレンドが、2025年以降のランサムウェア攻撃を特徴づけると予測されます。

AIおよび機械学習を悪用した攻撃の高度化

ランサムウェア攻撃者は、攻撃をより手軽に仕掛けるため、AIや機械学習を活用し始めています。今後、生成AIの技術は、以下のような形で攻撃に悪用されると予測されています。

攻撃のターゲティング精度の向上

AIを活用することで、攻撃者はターゲットをより詳細に分析し、最も脆弱な部分を狙った攻撃が可能になります。過去の攻撃パターンやデータを学習させることで、企業にとって最も致命的な脆弱性を見つけ出すことができます。

攻撃プロセスの自動化

攻撃の自動化により、従来よりも高頻度かつ広範囲にわたる攻撃が実施される可能性が高まります。AIを利用することで、攻撃者は迅速に脆弱性を見つけ出し、効率よく攻撃を仕掛けることができるようになります。

フィッシング攻撃の進化

AIを駆使して、よりリアルで説得力のあるフィッシングメールが生成され、従業員が引っかかりやすくなります。

サプライチェーン攻撃の増加

サプライチェーン攻撃は2025年以降、さらに拡大することが予測されています。攻撃者は、特に信頼性の高い企業の取引先やパートナーを標的にし、その脆弱性を悪用して間接的に大手企業のネットワークへアクセスする手法を取ります。サプライチェーンでは多くの企業がネットワークを共有しているため、一度攻撃者の侵入を許してしまうと、その後広範囲に影響が及びます。

ランサムウェア(RaaS)モデルの深刻化

今後、RaaSのサービスプロバイダがさらに多様化し、攻撃者が手軽にランサムウェアを利用できる環境が整っていくでしょう。これにより、より多くの犯罪者がランサムウェア攻撃に参入し、その結果として攻撃が広範囲に及ぶことが予測されます。

ゼロデイ攻撃の増加

ゼロデイ攻撃は、未公開の脆弱性を突いた攻撃です。攻撃者は、パッチが公開される前に脆弱性を悪用し、感染拡大を狙います。これからのランサムウェア攻撃において引き続き重要な手段として使用されるでしょう。

ゼロデイ攻撃についてSQAT.jpでは以下の関連記事を公開中です。こちらもあわせてぜひご覧ください。
世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策
https://www.sqat.jp/tamatebako/39750/

企業がとるべきセキュリティ対策

今後、ランサムウェア攻撃はさらに巧妙化し、企業に対する脅威が増大すると予測されます。企業は以下のような対策を講じることにより、リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

多層防御策の強化

ランサムウェア攻撃を防ぐためには、単一の防御策では不十分です。多層防御を導入し、複数のセキュリティ対策を重ねることで攻撃のリスクを大幅に低減できます。具体的には以下のセキュリティ対策例が挙げられます。

エンドポイントセキュリティ(EDR)の強化

EDR(Endpoint Detection and Response)を導入し、攻撃を早期に発見できる体制を整えます。これにより、サイバー攻撃の初期兆候をいち早く検出することが重要です。

ゼロトラストモデルの導入

ゼロトラスト(Zero Trust)アーキテクチャの導入により、企業はすべてのアクセスの信頼性を常に検証し、最小限のアクセス権を付与することが求められます。

サプライチェーンリスク管理

企業は自組織のサプライチェーンの脆弱性をしっかりと把握し、取引先やパートナー企業に対するセキュリティ評価を強化する必要があります。

バックアップと復旧体制の整備

ランサムウェア攻撃を受けた場合、迅速な復旧ができる体制を整えておくことが重要です。具体的には以下のような例が挙げられます。

  • オフラインバックアップの実施
    ランサムウェアはオンラインバックアップも暗号化する可能性があるため、オフラインでバックアップを保持することが必要です
  • 復旧計画のテスト
    定期的にバックアップと復旧手順をテストし、実際の攻撃時に速やかに復旧できるよう準備します

インシデント対応計画の策定

ランサムウェア攻撃を受けた場合、迅速な対応が求められます。企業はインシデント対応計画を策定し、発生時の対応マニュアルや手順を明確にした上で、組織内での訓練を定期的に行うことが重要です。インシデント対応チームの迅速な対応が企業の存続に直結します。

まとめ:2025年のランサムウェア脅威への最適な防御策

ランサムウェア攻撃はますます巧妙化し、企業にとってその脅威は深刻化しています。しかし、適切な対策を講じることで、企業はリスクを最小化することができます。進化する攻撃トレンドに対応するために、企業は多層防御、ゼロトラスト、サプライチェーンリスク管理、バックアップ体制の強化、インシデント対応の準備を万全に整えることが求められます。今後もランサムウェア攻撃は進化し続けるため、自組織の環境に応じた適切なセキュリティ対策を実施し、組織内のセキュリティ意識を高めていくことが求められるでしょう。


―連載一覧―

第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造
第2回:2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴 第2回:2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析

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    2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析アイキャッチ画像

    世界では100を超えるランサムウェアギャングが活動しており、勢力図は日々変化しています。シリーズ第2回では、LockBitやQilin、Cl0p、Akiraなど、2025年現在も活発に活動している主要なランサムウェアギャングを中心に、その手口・特徴・攻撃傾向を徹底分析します。また、BlackCatやRansomHubなど衰退したグループの動向にも触れ、再編を繰り返すランサムウェア市場の「現在地」を整理し、企業が注視すべき最新の脅威を明らかにします。

    2025年の勢力図 ― ランサムウェア市場の再編

    2025年現在、ランサムウェアの勢力図は大きく塗り替えられています。かつて世界中で猛威を振るったContiやREvil、そしてRansomHubが姿を消した一方で、LockBit、BlackCat(ALPHV)、Play、Cactus、8Base、Medusa、Akiraなどが急速に台頭し、攻撃の主導権を握っています。特にLockBitは依然として最も活発なグループの一つであり、世界各国の企業・自治体・医療機関を標的に、短期間で多層的な攻撃を展開しています。

    また、2024年以降は「RaaS(Ransomware-as-a-Service)」モデルの成熟が進み、開発者と実行者(アフィリエイト)が分業化されることで、攻撃のスピードと規模がかつてないほど拡大しました。いまや、技術力の低い犯罪者でも高度なランサムウェア攻撃を実行できる環境が整いつつあります。一方で、法執行機関による摘発や暗号資産取引の監視強化により、いくつかの有力組織は活動停止になりました。代表例がRansomHubであり、2024年に急速に勢力を拡大したものの、2025年4月にはオンラインインフラがダークウェブ上で停止し、現在は「再編中」または「後継グループへ移行中」とみられています。

    現在も活発な主要なランサムウェアギャング(2025年時点)

    2025年時点で活動が顕著な代表的グループを一覧で紹介します。

    グループ名主な特徴最近の動向
    Qilin(キリン)製造業への攻撃を中心に活動、日本でも被害多数2025年700件超の攻撃を確認。被害最多
    LockBit(ロックビット)三重恐喝モデルの先駆者、RaaS最大手摘発から数か月後、再登場。その際、「LockBit 5.0」を提供
    BlackSuit(ブラックスーツ)BlackCatの後継とされる。カスタム暗号化ツール、情報漏洩の脅迫2024年に本格的な活動を開始。以前のBlackCatの戦術を引き継ぎつつ、新たな攻撃手法を採用
    Play(プレイ)シンプルな脅迫文と独自の暗号化方式を使用。正規ツール悪用が特徴教育・行政・製造業を標的に拡大。再現性の高い攻撃手法で模倣も多い
    Cactus(カクタス)VPN機器の脆弱性を悪用。暗号化前に自身をパスワードで保護欧州企業を中心に感染が拡大中。RaaS化も進行
    Medusa(メデューサ)攻撃的な恐喝と高額な身代金要求医療・教育機関を中心に攻撃継続。複数の新アフィリエイトを獲得
    Akira(アキラ)VPN経由での侵入とActive Directory攻撃に長ける北米・アジア企業への侵入増加。身代金の要求額は比較的低め*1

    LockBit・BlackSuitが象徴する「持続型」攻撃モデル

    LockBitは2021年以降、継続的なバージョンアップを重ね、現在の「LockBit 5.0」では暗号化速度の向上や複数OS対応を実現しています。また、被害者データを公開する「リークサイト」の運用を巧妙化し、支払い圧力を高める戦略を維持しています。一方で、米司法省などの国際捜査により一時的に活動が停止する局面も見られましたが、数週間で再建されるなど、組織の分散性と復元力が注目されています。同様に、BlackSuitは、2023年に登場したBlackCat(ALPHV)の後継とされ、依然としてRust言語を使用したカスタマイズ暗号化を得意とするグループです。BlackSuitの特徴的な点は、以前のBlackCatが行っていた情報漏洩の脅迫に加えて、さらに新たな攻撃手法を採用している点です。特に、金融機関や医療機関をターゲットにした攻撃が増加しており、その手法の精緻化が進んでいます。2024年には本格的に活動を開始し、これまでのBlackCatの後を継いで攻撃を継続中です。業界を超えて、感染経路や攻撃対象を広げると同時に、その特異な手法で注目を集めています

    両者に共通するのは、「迅速な再編」と「収益性の最大化」を重視する点であり、捜査・報復措置を受けても体制を再構築し、ブランドを維持する巧妙な経営的戦略をとっています。

    新興勢力:Qilin、Play、Cactus、8Base、Medusaの特徴

    Qilinは2025年に最も多くの攻撃を仕掛けたランサムウェアグループの一つで、製造業をターゲットにしたカスタマイズ攻撃が特徴です。2025年に入ってから、短期間で700件以上の攻撃を記録し、特に日本企業を多く標的にしています。特徴的なのは、被害者の業界や規模に合わせた細かな調整を行い、効率的に侵入する手法です。2025年9月には、アサヒグループホールディングスに対する攻撃が大きな注目を浴びました。Qilinは、LockBitやDragonForceと連携して攻撃を行うことがあり、今後のランサムウェア市場において、さらなる影響力を持つと予測されています。

    その他に急速に台頭した新興勢力の一つがPlayです。Playは2022年に登場した比較的新しいグループながら、独自の暗号化方式とシンプルな脅迫メッセージで知られています。標的選定の傾向は特定の業界に偏らず、政府機関・教育機関・中堅企業まで幅広い範囲に及びます。また、侵入後の横展開において、既知の脆弱性よりも「正規ツールの悪用」を多用する点が特徴的です

    さらに、Cactus8Baseも注目すべき新興勢力です。CactusはVPNやCitrixなどの正規アクセス経路を悪用して侵入し、通信を暗号化する独自の戦術を採用することで検知を困難にしています。被害は欧州を中心に広がり、暗号化ツールをRaaSとして提供する動きも見られます。8Baseは中小企業を中心に攻撃を展開し、データ窃取を重視する「二重脅迫型」戦略を強化しています。LockBit系列の派生とされ、独自の強い脅迫文や被害者情報の大量公開で知られます。2024年中頃をピークに報告数は減少していますが、依然として活動を続けています。また、Medusaは、支払い期限をカウントダウン表示する公開サイトを運用するなど、恐怖心を煽る戦略を取るグループとしても知られています。教育・医療機関を標的とする傾向が強く、倫理的・社会的インパクトの大きさからも注目されています

    勢力構造の変化が示す今後の方向性

    これらの動向から、2025年以降のランサムウェア市場には次のような変化が予測されます。

    短命化するグループと再編の加速

    RansomHubのように短期間で急成長し、消滅するケースが増えています。これは法執行機関の摘発強化や、内部リークによる情報流出が影響しているとみられます。

    RaaSの分散化と匿名化の進行

    大規模組織の崩壊後、開発者が小規模な派生RaaSを乱立させる傾向が見られます。結果として、検知・追跡がより困難になると予測されます。

    生成AIや自動化の活用

    脅迫文や交渉メッセージの自動生成、被害者選定の最適化など、AI技術の導入が進みつつあります。今後は攻撃プロセス全体の自動化が一層進む可能性があります。

    まとめ:常に変動する「勢力の地図」

    ランサムウェアの世界では、勢力の興亡が常態化しています。LockBitのような巨大グループでさえ摘発の影響を免れず、次々と新たな派生組織が生まれています。企業としては、「どのグループが脅威か」を追うだけでなく、「どのような攻撃パターンが再利用されているか」を分析することが重要です。攻撃者の名前が変わっても、手口は進化しながら再利用されるため、継続的な脅威インテリジェンスの収集と脆弱性管理が不可欠です。


    ―第3回へ続く―

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴
    第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造アイキャッチ画像

    2025年、ランサムウェアは依然として世界中で深刻な脅威となっています。二重恐喝型から、データ漏洩やDDoSを組み合わせた多重恐喝型へと進化し、被害は企業規模を問わず拡大中です。本シリーズでは、最新のランサムウェア勢力図を全3回で徹底分析します。第1回では、RaaS(Ransomware as a Service)の登場によって急成長したランサムウェア市場の構造と、勢力図がどのように変化してきたのかを詳しく解説します。

    ランサムウェア攻撃の現状と被害拡大

    2025年、ランサムウェアは依然として世界で最も深刻なサイバー脅威の一つとして位置づけられています。近年は暗号化による業務停止だけでなく、窃取したデータを公開・販売する「二重恐喝」や、DDoS攻撃を加えた「多重恐喝」など、攻撃の多様化が進んでいます。BlackFogの分析によると、2025年初頭のランサムウェア攻撃件数は前年同月比で20〜35%増加しており、増加傾向が続いています*2。特に製造、医療、自治体など、社会インフラに関わる業種への攻撃が目立ちます。日本国内でも被害は増加傾向にあり、企業規模を問わず中堅・中小企業への侵入事例が相次いでいます。攻撃者は直接的な金銭目的だけでなく、他国のサプライチェーンを狙った地政学的背景を持つケースもあり、もはや”無関係な企業は存在しない”状況です。

    RaaSモデルがもたらした犯罪の分業化

    ランサムウェアがここまで拡大した最大の要因が、「RaaS」と呼ばれるサービス型犯罪モデルの普及です。RaaSは、開発者が作成したランサムウェアを他の攻撃者(アフィリエイト)に貸し出し、得た身代金を分配する仕組みです。技術力を持たない犯罪者でも容易に攻撃を実行できるようになったことで、ランサムウェア攻撃の“裾野”が急拡大しました。

    「LockBit」、「Cl0p」、「BlackCat」といった代表的なランサムウェアギャングは、このRaaSモデルを最も普及させたグループです。各アフィリエイトは攻撃対象の選定や侵入手口を独自に開発し、成功報酬を得るビジネス形態を採用しています。まるで企業のような組織構造を持ち、専用のリークサイト運営、広報担当、カスタマーサポートまで存在します。攻撃が商業化・効率化されることで、ランサムウェアはもはや“闇市場の産業”といえる規模に達しています。

    勢力図の変化:旧勢力の衰退と新興ギャングの台頭

    2024年後半から2025年にかけて、ランサムウェアの勢力図は大きく変化しました。かつて世界を席巻した「Conti」や「Hive」、「Revil」、「BlackCat(ALPHV)」といった主要なランサムウェアギャングは、国際捜査機関の摘発や内部対立により次々と崩壊しました。しかし、その空白を埋めるように新たな勢力が台頭しています。特に注目されるのが、「Qilin(旧Agenda)」「Lynx」「Fog」などの新興グループです。これらは高度な暗号化技術と迅速な展開能力を持ち、企業や自治体を標的にデータ漏洩を伴う攻撃を展開しています。Qilinは日本国内の製造業や医療機関を狙う傾向が強く、すでに複数の被害が確認されています。また、LockBitも摘発を受けながらも「LockBit 5.0」として再始動するなど、ブランドの使い捨て・再構築が常態化しています。2025年のランサムウェア市場は、以前から存在するギャングの復活と新興勢力の台頭が交錯する“過渡期”にあると言えます。

    ランサムウェア市場を支える犯罪エコシステム

    現在のランサムウェア攻撃は、単独の攻撃者だけでは成り立ちません。その背景には「地下経済圏」とも呼ばれる広大な犯罪エコシステムが存在します。ここでは、侵入経路を提供するアクセスブローカー、情報窃取ツールの開発者、暗号通貨を用いたマネーロンダリング業者など、多様な役割が分業的に連携しています。たとえばアクセスブローカーは、企業ネットワークへの侵入権をオークション形式で販売し、ランサムウェアギャングがそれを購入して攻撃を開始します。また、盗み出したデータを販売する「データリークサイト」は、恐喝手段としても活用され、被害企業名を公開して支払いを促します。

    さらに近年は、SNSやダークウェブ掲示板上での広報・採用活動も活発化しており、RaaS提供者が「報酬50%保証」「高成功率ツール」といった広告を出すなど、まるでスタートアップ市場のような競争が繰り広げられています。こうした分業と再利用の仕組みにより、ランサムウェア市場は摘発を受けてもすぐに再生する自己修復的な構造を持ち、世界的な脅威として根強く残り続けています。

    まとめ:進化する脅威にどう向き合うか

    ランサムウェアはもはや“単なるマルウェア”ではなく、「経済的インセンティブを軸に発展する犯罪ビジネスモデル」へと進化しました。RaaSによる分業体制と匿名性の高い暗号資産の普及が、攻撃の拡大を後押ししています。2025年の時点で確認されている主要なランサムウェアギャングの多くは、過去に摘発・崩壊を経験しながらも、ブランドを変えて再登場しており、摘発による根絶は困難です。今後はAIを利用した自動化攻撃、ゼロデイ脆弱性の悪用、地域特化型の標的選定など、さらに巧妙な戦術が主流になると予想されます。企業に求められるのは、「攻撃を防ぐ」だけでなく、「被害を最小化し、迅速に復旧できる体制」を整えることです。第2回では、2025年時点で活動が確認されている主要なランサムウェアギャングの特徴と手口を詳しく分析し、勢力ごとの違いと警戒すべき動向を解説します。


    ―第2回へ続く―

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    【最新事例解説】Qilin攻撃に学ぶ!組織を守る“サイバーレジリエンス強化のポイント”喫緊のランサムウェア被害事例からひも解く ― 被害を最小化するための“備えと対応力”とは?
  • 2025年12月10日(水)14:00~15:00
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    AIコーディング入門 番外編:オープンソースソフトウェアのサプライチェーン攻撃とタイポの落とし穴

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    AIコーディング入門番外編アイキャッチ画像(OSSのサプライチェーン攻撃)

    AIを活用したコーディングが普及する一方で、オープンソースソフトウェア(OSS)を狙ったサプライチェーン攻撃が増加しています。特に、開発者のタイポを悪用する「Typosquatting」や、AIのハルシネーションに便乗する「Slopsquatting」といった手法は、身近で深刻な脅威です。本記事では、実例を交えながらその仕組みとリスクを解説し、安全なAIコーディングを実践するためのポイントを紹介します。

    コードを書く人やインフラストラクチャの構築をする人ならば、人生で最低でも一度は経験しているであろうこと、それはタイプミス、いわゆるタイポ(typo)ではないでしょうか。タイポ、些細なミスで、日常的に発生するものなのですが、中には重大なものもあります。

    タイプミスが招く落とし穴 ─ Typosquattingとは

    皆さんは「タイポスクウォッティング」という言葉をご存じでしょうか。Web関連のお仕事をされている方であれば、URLのタイポスクウォッティング、つまり間違いやすい・紛らわしいURLでユーザーをおびき寄せる手法としてのタイポスクウォッティングをご存じの方も多いかと思います。この手法がオープンソースソフトウェアでも昨今使用されるようになっています。

    例えばnpmの場合、

    npm install package_name

    と入力することでパッケージのインストールを実行できます。インストールしたパッケージは例えばjavascript(react)を利用している環境であれば

    import {
    コンポーネント名
    } from “@/fullpath/to/package_name”;

    の形でコードの先頭で利用するパッケージ名を宣言します。

    世の中にはこのパッケージ名のよくあるタイプミス(typo)を狙って作られたマルウェアの一種が存在します。そんなマルウェア、何のためにあるのだろうという方も多いと思いますが、例えば暗号資産のウォレットを狙ったマルウェアや、システムへの侵害目的のマルウェアなどが最近では話題になっています。

    npmやPythonなどOSSでの事例

    暗号資産を狙うマルウェアの脅威

    暗号資産を狙ったマルウェアについては偽の採用面接中に実行を求められるケースも報告されています。

    Socket,[Another Wave: North Korean Contagious Interview Campaign Drops 35 New Malicious npm Packages]https://socket.dev/blog/north-korean-contagious-interview-campaign-drops-35-new-malicious-npm-packages

    偽の採用プロセスとソーシャルエンジニアリング

    採用面接に至るということは例えば採用条件面で魅力的である、採用プロセスに見せかけたフェーズで偽の採用者に対して高い信頼を持つよう誘導されている、著名な企業などに成りすますことで権威性・信憑性を信じさせられる、オンライン環境による信頼レベルを悪用される、といったソーシャルエンジニアリングの基本ともいえる「人」が抱える脆弱性をすでに悪用された状態です。

    関連記事:
    ソーシャルエンジニアリング最前線【第1回】ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」(https://www.sqat.jp/kawaraban/37089/

    その状態で、面接というストレスのかかる、失敗が許されないと思ってしまう状況で紛らわしい名称の不正なコードや、不正なパッケージを含むコードを実行させられた場合、気づくことは容易ではありません。面接で突然コードを実行させられることに違和感を覚えてその場を退出することが最善かもしれませんが、Zoomのリモートコントロール機能を使ってマルウェアを実行するケースもあることから、特にすべてをオンラインで完了させるタイプの採用プロセスそのものに対して常に疑わしいかどうか疑問を持ち続けるしか対策はないかもしれません。

    Zoomのリモートコントロール攻撃

    参考情報:

    The Trail of Bits Blog,[Mitigating ELUSIVE COMET Zoom remote control attacks](https://blog.trailofbits.com/2025/04/17/mitigating-elusive-comet-zoom-remote-control-attacks/

    なお、昨年末に警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター・金融庁連名で偽の採用試験関連で注意喚起が出ています。今一度ご確認ください。

    警察庁/内閣サイバーセキュリティセンター/金融庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ TraderTraitor によるサイバー攻撃について (注意喚起)」(令和6年12月24日)(https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/20241224_caution.pdf

    タイポよりも怖い?生成AI時代の新たな罠 ─ Slopsquatting

    生成AIやAIエージェントの普及でAIを使用したコーディングを行う人も増えていると思います。「typoもないし、いいじゃない?」と思う方も多いと思いますが、生成AIには「ハルシネーション」という最大の難点があります。人間のtypoぐらいの頻度で遭遇する現象の一つといっても言い過ぎではないかもしれません。そんなハルシネーションを狙って、偽のパッケージが用意されていたら?という内容のレポートが公開されました。

    参考情報:

    トレンドマイクロ株式会社「スロップスクワッティング:AIエージェントのハルシネーションにつけ込む攻撃手法」(https://www.trendmicro.com/ja_jp/research/25/g/slopsquatting-when-ai-agents-hallucinate-malicious-packages.html

    生成AI単体には生成内容の検証メカニズムがありません。このため、AIエージェントを利用したコーディングの場合はエージェント側の機能として備わっている検証機能を利用することが必要です。具体的な手法はレポートにも記載がありますが、日進月歩で新たな機能が登場する現状では最新の情報も併せて探すことをお勧めします。 また、エージェントを用いない場合も含めて、以下のようなリスク回避策を基本とするのもよいかもしれません。

    • 参照するパッケージ・モジュールを限定して、typosquattingやslopsquattingなどのリスクを回避する
    • やむを得ず新しいパッケージ・モジュールをインストールする場合は人の手を介したチェックを行うことで、リスクを抑制する

    実際に筆者もプロンプトで利用パッケージを限定していますが、特に利便性の阻害を感じたことはありません。また、周囲とのコミュニケーションでパッケージ・モジュールの情報の交換、推奨などの情報を得ることも多くあり、AI時代のコーディングとはいえコミュニケーションも併せて重要であることを実感しているところです。

    プロンプトエンジニアリングと検証の重要性

    前出のレポートで指摘されている原因の一つにはプロンプトの一貫性やあいまいさといった自然言語による指示ならではの問題があります。プロンプトエンジニアリングなどについては以下の記事でもご紹介しています。ただし、モデル側の実装状況などによりユーザー側の努力の反映には限界があるため、必ず生成結果に対する人のチェック(一種のHuman in the Loop)はプロセスとして欠かさないことが望まれます。

    関連記事:
    AIコーディング入門 第1回:Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」(https://www.sqat.jp/kawaraban/38067/

    正規リポジトリの乗っ取りという最大の脅威

    2025年7月、npmの開発者をターゲットにしたフィッシングが報告されました。この後、複数のパッケージの乗っ取りが報告されています。

    npm開発者を狙ったフィッシング事例

    オープンソースソフトウェア(OSS)経由のサプライチェーン攻撃

    ここまででお気付きの方も多いと思いますが、今回取り上げた様々な攻撃手法はすべてオープンソースソフトウェア経由のサプライチェーン攻撃として、1つにまとめることができます。プログラミング言語の多く、そしてWebサイトの構築に用いられるJavaScriptのフレームワークの多くはオープンソースソフトウェアとして流通しています。プログラミング言語やJavaScriptのフレームワークは実際に利用するにあたって利便性を向上させる目的で多くのパッケージやモジュール、ライブラリなどがオープンソースとして開発・公開されています。これらのオープンソースソフトウェアは現在では多くが多数のコントリビューターとメンテナーによってGitHub上で公開され、開発が行われています。GitHubからnpmなどのパッケージ管理システムへの公開も一貫して行うことができるため、非常に利便性が高い反面、今までに挙げたような攻撃を仕掛けるための利便性も高くなっています。また、オープンソースソフトウェアは相互に依存性を持つことが多いことから、人気のあるモジュール・パッケージへの攻撃が多数のモジュール・パッケージやシステムへ影響を及ぼすことができます。これが、オープンソースソフトウェアへのサプライチェーン攻撃における最大の特徴ともいえるかもしれません。オープンソースソフトウェアを利用する以上、こういったリスクがあることは十分理解したうえで利用する必要があります。

    オープンソースソフトウェアの利用の条件としてセキュリティ面でかなりハードルが高いのは事実ですが、一方で利便性・柔軟性・モダンなシステムの構築といった観点からオープンソースソフトウェアを全く利用しない(プロプライエタリソフトウェアだけで構築する)というのは難しいという現状に鑑みるとやむを得ない選択であるとも言えます。

    開発者がとるべき対策

    こういったケースに対応するには依存関係のチェックや追跡、SBOMによる管理が必要になります。依存関係のチェックや追跡にはGitHubを使用している場合ならばDependabotの利用、その他のコードレポジトリを対象とする場合は各種の依存関係トラックツールを使用する必要があります。SBOMで自身のコードのコンポーネントと依存関係の管理を合わせて行うことで、システム全体としての管理を行うことが求められます。

    まとめ ― AI時代のオープンソースソフトウェア利用に求められる視点

    タイプミスを悪用した Typosquatting、AIのハルシネーションに便乗する Slopsquatting、さらには正規リポジトリの乗っ取りといった攻撃は、いずれもオープンソースソフトウェアを媒介とするサプライチェーン攻撃として位置づけられます。これらは利便性と引き換えに大きなリスクを伴い、暗号資産の窃取やシステム侵害といった深刻な被害へとつながりかねません。OSSの依存関係は複雑で、人気パッケージが狙われることで広範囲に影響が及ぶことも少なくありません。そのため、参照パッケージを限定する運用、人による確認(Human in the Loop)、Dependabotなどの依存関係管理ツールの活用、SBOMによる包括的なコンポーネント管理 といった対策が不可欠です。AIを活用したコーディングが普及する中でも、「便利だから任せる」のではなく、常に検証と疑問を持ち続ける姿勢 が求められます。セキュリティと利便性の両立こそが、これからのOSS利用とAI開発における鍵といえるでしょう。


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    AIコーディング入門
    第4回:MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装

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    AIコーディング4アイキャッチ(MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装)

    前回記事で述べたように、AIエージェントの普及に伴い、MCP(Model Context Protocol)やA2A(Agent-to-Agent Protocol)の実装事例が増えています。しかし、標準化が進む一方で、脆弱性やセキュリティリスクも現実化しつつあります。本記事では、AIエージェントの基盤を支える標準プロトコル「MCP(Model Context Protocol)」と「A2A(Agent-to-Agent Protocol)」をさらに深く掘り下げ、AIエージェントを安全に活用するための設計指針と実装上の留意点を整理します。

    ※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

    MCPの脆弱性

    MCPの脆弱性の事例としては以下のものが挙げられます。

    AsanaのMCPサーバの事例

    プロジェクトやタスクを一元管理するプラットフォーム(SaaS)・Asanaが2025年5月から提供し始めたMCPサーバに脆弱性があったもの。脆弱性により、MCPを使用しているユーザーが、LLMと接続しているチャットインターフェース越しに他の組織のプロジェクト、チーム、タスクを含むAsanaオブジェクトを取得できた可能性があるとされています*2。前回ご紹介した「図4:MCP関連の主なセキュリティ課題」にも挙げたように、最小特権の付与の原則の徹底(SaaS提供事業者の場合にはテナント間の厳密な分離も含みます)、リクエストやLLMの生成クエリのログの記録といった課題が改めて浮き彫りになったといえます。

    A2Aのセキュリティ課題

    MAESTRO脅威モデリングに当てはめたときには以下のような問題があると指摘されています。なおMAESTRO脅威モデリングについては下表でご紹介します。

    表:A2Aプロトコルのセキュリティ課題のMAESTROモデル分析

    レイヤ脅威概要被害を受ける人・組織発生確率影響軽減策
    1メッセージ生成攻撃 (回避)攻撃者が悪意のある入力を生成し、エージェントのモデルに誤った、偏った、または有害なメッセージを生成させ、通信中の安全メカニズムを迂回する。モデル出力の非決定論的性質が、これらの攻撃の検出と防止をより困難にする。A2A エージェントを利用する組織、システムの利用者入力検証: エージェントのモデルにコンテンツを送信する前に厳格な入力検証を実施する。入力をサニタイズする。
    出力検証: 生成されたメッセージのコンテンツに有害なコンテンツ、矛盾、または予期しない動作がないか確認する。コンテンツフィルタリングを使用する。非決定論的なモデルの動作に対する出力検証の堅牢性を高めるために、アンサンブル法や敵対的訓練などの技術を採用する。
    慎重なプロンプト設計: 敵対的攻撃の影響を受けにくいプロンプトを設計する。モデルをガイドするために少数ショットの例を使用する。
    モデル抽出A2A を介した過度または巧妙な対話により、プロプライエタリモデルの動作やパラメータに関する十分な詳細が提供され、モデルの推論または盗難が可能になる。エージェントの自律性が、予期しない情報漏洩につながる可能性のある、緩やかに制御された対話パターンを促進することで、この問題を増幅させる可能性がある。モデル所有者、企業大(潜在的に)厳格なレート制限: セッション/ユーザー/エージェントごとの A2A 対話にレート制限を適用する。
    異常検出: プロービングやデータ抽出の試みを示唆する異常なクエリパターンを監視する。
    2データ汚染 (メッセージ部分)攻撃者がエージェント間で交換されるメッセージに悪意のあるコンテンツを注入し、意思決定に使用されるデータを侵害する。エージェントの相互作用の動的な性質は、このデータポイズニングが急速に広がり、連鎖的な影響を及ぼす可能性があることを意味する。エージェント、A2A エージェントの決定に依存する組織中~高強力な検証: ファイルの整合性チェック、DataParts のスキーマ検証、TextParts のコンテンツフィルタリングを含む、すべてのメッセージパーツに対する厳格な検証を実施する。
    最小特権: 最小特権の原則に基づいて、機密データへのエージェントのアクセスを制限する。
    出どころの追跡: メッセージ内のデータの出どころと系統を追跡し、信頼性を評価する。送信元エージェントのIDとデータに適用された変換を考慮するために出どころの追跡を拡張する。
    機微情報の漏洩エージェントが、過度に広範な権限、データ管理ミス、またはモデルの幻覚により、A2A 通信または成果物で意図せず機密情報(PII、機密情報)を公開する。個人(PII の所有者)、機密情報を扱う組織中~大自動 PII 編集: 個人識別情報(PII)の検出と編集のための自動プロセスを採用する(例: Gemini のフィルター機能)。
    きめ細かなアクセス制御: エージェントの役割とタスクのコンテキストに応じて堅牢なアクセス制御を実装する。
    コンテキスト認識型ガードレール: エージェントが機密情報や制限された情報を共有するのを防ぐためにガードレールを追加する。
    3許可されていないエージェントのなりすまし攻撃者が正当なエージェントになりすまし、機密情報にアクセスしたり、他のエージェントを操作したりする。変化する資格情報や検証可能なクレデンシャルによって示されるエージェント ID の動的な性質は、この脅威をさらに複雑にする。他のエージェント、A2A プロトコルを利用する組織分散型識別子(DIDs): エージェントに ID 検証のために DID を使用することを義務付ける。ID の変更を検出するために、DID ドキュメントを定期的に更新および再検証するメカニズムを実装する。
    安全な認証: DID ベースの署名や相互 TLS などの強力な認証メカニズムを実装し、エージェントの ID を検証する。リプレイ攻撃を防ぎ、通信時に資格情報が有効であることを確認するために、タイムスタンプ付き署名を使用する。
    エージェントレジストリ: エージェントの正当性を検証するために、信頼されたエージェントレジストリを実装する。レジストリは動的なエージェント属性を処理できる必要があり、継続的に更新されるべきである。
    メッセージインジェクション攻撃攻撃者が A2A メッセージに悪意のあるコンテンツを注入し、受信エージェントの動作を操作する。エージェントの自律性は、侵害されたエージェントが人間の介入なしに悪意のあるメッセージを伝播する可能性があるため、この脅威を増幅させる。メッセージを受信するエージェント、操作されたエージェントによって制御されるシステム大(潜在的に)M デジタル署名: すべての A2A メッセージにデジタル署名を実装し、整合性と否認防止を確保する。メッセージが有効と見なされる前に、複数の信頼されたエージェントからの承認を必要とするマルチ署名スキームを実装する。
    入力検証: メッセージパーツやメタデータを含むすべてのメッセージコンテンツに厳格な入力検証を実施する。
    コンテンツフィルタリング: メッセージ内の悪意のあるコンテンツを検出してブロックするためにコンテンツフィルタリングを使用する。
    プロトコルダウングレード攻撃攻撃者がエージェントに A2A プロトコルのセキュリティの低いバージョンを使用させる。非決定論的なエージェントの相互作用により、予測がより困難な追加の攻撃ベクトルが開かれる可能性がある。A2A エージェント、A2A 通信に依存するシステム大(潜在的に)安全なプロトコルネゴシエーション: 相互認証を伴うトランスポート層セキュリティ(TLS)などの安全なプロトコルネゴシエーションメカニズムを実装し、エージェントが最も安全なプロトコルバージョンを使用するようにする。
    廃止ポリシー: 古いプロトコルバージョンに対する廃止ポリシーを明確に定義し、実施する。
    信頼できる企業を装った悪意のある A2Aサーバ攻撃者が信頼できる企業や組織が運営しているように見せかけた悪意のある A2A サーバをセットアップし、エージェントを騙して通信させ、機密情報を漏洩させたり、悪意のあるタスクを実行させたりする可能性がある。エージェント、ユーザー/組織(データ窃取の被害者)、A2A 運用に依存する組織、なりすまされた信頼できる企業(評判の損害)大(潜在的に)サーバ ID の分散型識別子(DIDs): エージェントと同様に、A2A サーバは DID を使用して識別され、その DID ドキュメントは検証可能で定期的に更新されるべきである。A2A プロトコルは、サーバからエージェントへの通信に DID ベースの認証を義務付けるべきである。
    Agent Cards の証明書透明性(CT): SSL/TLS 証明書に似た証明書透明性(CT)のようなメカニズムを実装する。Agent Cards は公開ログ(例:ブロックチェーンや分散型台帳)に登録でき、エージェントが Agent Card が正当であり、改ざんされていないことを検証できるようにする。
    相互 TLS(mTLS)認証: エージェントと A2A サーバ間の相互 TLS(mTLS)認証を強制する。
    サーバードメインの DNSSEC: A2A サーバの Agent Card にドメイン名を含む URL が含まれている場合、DNSSEC でドメインを保護し、DNS スプーフィング攻撃を防ぐ。
    エージェントレジストリ検証: A2A サーバと対話する前に、エージェントは信頼されたエージェントレジストリを参照し、サーバが正当であることを検証すべきである。
    Agent Card 署名検証: エージェントはサーバの公開鍵または DID を使用して Agent Card を暗号学的に検証し、カードが改ざんされていないことを確認すべきである。
    重要操作に対する多要素認証: 機密性の高い操作の場合、エージェントは A2A サーバと通信する前に多要素認証(MFA)を要求すべきである。
    行動分析とレピュテーションシステム: なりすましを示唆する異常なサーバ活動パターンを検出するために行動分析を実装する。
    監査とログ: エージェントと A2A サーバ間のすべての通信の詳細な監査ログを維持する。
    ハニーポットサーバー: 攻撃者を引きつけ、その技術に関する情報を収集するために、ハニーポット A2A サーバをデプロイする。
    4T4.1: DoS 攻撃攻撃者が A2A サーバにリクエストを殺到させ、エージェントが通信不能になる。エージェントの自律的な性質は、DoS 攻撃がエコシステム全体に急速に連鎖する可能性があることを意味する。A2A サーバ、A2A サービスを利用するユーザー/組織、エージェントエコシステム中~高堅牢なインフラストラクチャ: ダウンタイムを最小限に抑えるために、冗長で地理的に分散されたインフラストラクチャを使用する。
    DDoS 防御: 堅牢な DDoS 緩和策を実装する。
    レート制限: 過剰なリクエストを防ぐためにレート制限を実装する。リアルタイムのネットワーク状況とエージェントの活動パターンに基づいて調整される適応型レート制限を実装する。
    5ログデータの隠蔽・改ざん攻撃者が悪意のある活動を隠蔽するためにログエントリを変更または削除する。エージェントの動作の複雑で予測不可能な性質は、正当な活動と、操作されたログによって隠蔽された悪意のある行動を区別することをより困難にする。セキュリティチーム、監査担当者、インシデントレスポンダー、ログの整合性に依存する組織大(潜在的に)安全なログ記録インフラストラクチャ: 強力なアクセス制御を備えた安全なログ記録インフラストラクチャを使用する。
    ログ整合性監視: チェックサムまたはデジタル署名を使用してログデータの整合性を検証する。
    異常検出: エージェントの固有の非決定論性を考慮に入れた高度な異常検出技術を採用する。
    6エージェントの認証情報への認可されないアクセス攻撃者がエージェントの資格情報(例: 秘密鍵)にアクセスし、エージェントになりすまして悪意のある行動を実行できるようにする。エージェントが検証可能な資格情報を動的に取得および提示するため、侵害されたエージェントは迅速に強力な新しい能力を獲得し、損害の可能性を拡大させる。エージェント所有組織、侵害されたエージェントがアクセスするシステム安全な鍵ストレージ: エージェントの資格情報をコードに直接埋め込まない。ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)または安全な鍵管理サービスを使用する。
    鍵のローテーション: エージェントの資格情報を定期的にローテーションする。
    多要素認証: ユーザーが実際に制御していることを確認するために MFA を使用する。
    機微情報へのコンプライアンスの欠如エージェントが PII を含むデータを適切な保護なしに送信、受信、処理する。エージェントの自律性がこれらの脅威を強める。機密データを扱う組織(法的・経済的罰則)、個人(PII の所有者)中~高大(潜在的に。法的・経済的罰則を伴う)データ最小化: 個人データの収集を削減する。仮名化/匿名化:。
    データ暗号化: エンドツーエンドの暗号化と鍵の保護を確実にする。
    委任権限の濫用実装の脆弱性により、エージェントが与えられた権限を超える可能性がある。権限を委譲した組織、エージェントが動作するシステム(明示されていない。なお実装に依存する可能性が高い)(明示されていないが一般的に委任権限の濫用による影響は大きい)明示的なユーザー同意:。
    詳細な監査:。
    厳格なトークン検証:。
    7悪意のあるエージェントの相互作用侵害されたエージェントが他のエージェントと相互作用し、危害を与えたり、脆弱性を悪用したり、予期しない結果を引き起こしたりする。エージェントの ID が変化し、動作が予測不可能なため、あるエージェントが他のエージェントよりも大きな損害を引き起こす可能性を予測することは困難である。エコシステム内の他のエージェント、エージェントに接続されたシステム中~低高(潜在的に影響度が高いと想定される)安全なエージェント間通信: エージェント間の相互作用に安全な通信プロトコルと認証メカニズムを使用する。
    エージェントレピュテーションシステム: エージェントの動作を追跡し、悪意のあるエージェントを識別するためにレピュテーションシステムを実装する。レピュテーションシステムは、エージェントの ID の動的な性質を処理でき、操作に耐性がある必要がある。
    サンドボックス化: 侵害されたエージェントの影響を制限するために、エージェントを相互に隔離する。エージェントが定義された境界を超えるのを防ぐために、ランタイム監視とポリシー実施を実装する。

    出典:「Threat Modeling Google’s A2A Protocol with the MAESTRO Framework」6: Threat Modeling Results: Applying MAESTRO Layer by Layerより弊社翻訳
    ※ 本図はOWASPが定義するMAESTROモデルをベースに記載されたhttps://cloudsecurityalliance.org/blog/2025/04/30/threat-modeling-google-s-a2a-protocol-with-the-maestro-frameworkの6: Threat Modeling Results: Applying MAESTRO Layer by Layerを弊社にて翻訳、表に編集しなおしたものです。

    AIエージェント時代における標準プロトコルのリスク管理

    AIエージェントの普及に伴い、MCPやA2Aといった標準プロトコルは不可欠な基盤となりつつあります。しかし、標準化による利便性の裏側には、同じ脆弱性が広範囲に拡散するリスクが潜んでいます。リスク管理の基本は「標準=安全」と思い込まず、実装ごとにセキュリティ要件を精査することです。特にアクセス制御、暗号化、監査ログといった基礎的な対策をプロトコルレベルで徹底する必要があります。

    さらに今後は、従来の「人間を前提としたセキュリティモデル」では対応できない課題が顕在化していくことが予想されます。次回第5回では、Non Human Identity(NHI)の登場や制御不能なAIエージェントといった新たな脅威に焦点を当て、従来型セキュリティの限界とその打開策について考察します。


    ―第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題」へ続く―

    【連載一覧】

    第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎
    第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法
    第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは
    第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」
    第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
    第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望


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  • 2025年9月10日(水)14:00~15:00
    フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 2025年9月17日(水)14:00~15:00
    サイバーリスクから企業を守る ─脆弱性診断サービスの比較ポイントとサイバー保険の活用法─
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    AIコーディング入門
    第3回:AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは

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    AIコーディング3アイキャッチ(AIエージェント時代のコーディング)

    生成AIを活用したコーディングの現場で、いま最も注目されているトピックのひとつが「AIエージェント」です。エージェントは人間の最小限の指示をもとに計画・推論・実行を繰り返す自律的な仕組みであり、シングルエージェントからマルチエージェントまで多様なアーキテクチャが登場しています。さらに通信の標準化を担うMCP(Model Context Protocol)A2A(Agent-to-Agent)といったプロトコルの整備が進み、エコシステム全体に大きな影響を与えています。本記事では、AIエージェントの基本構造、利点とリスク、新しい標準プロトコルの動向について解説します。

    ※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

    AIエージェントとは何か

    生成AIを使用したコーディングのなかでも昨今注目を浴びているのがAIエージェント(Agentic AI)を用いたAgenticコーディングです。Agenticコーディングの前にまずはAIエージェントの動きを見てみましょう。AIエージェントは人間による最低限の指示や監督をもとに計画・推論・実行を繰り返す、自律的処理を行うAIです。

    シングルエージェントの仕組み

    まずはわかりやすい、単一のエージェントのみが動くシングルエージェントのアーキテクチャを見てみましょう。下図はシングルエージェントのアーキテクチャを示したものです。

    図1:シングルエージェントのアーキテクチャ

    シングルエージェントのアーキテクチャの図
    参考:OWASP LLM Applications & Generative AI Top 10(https://genai.owasp.org/resource/owasp-top-10-for-llm-applications-2025/), p.8より弊社翻訳

    シングルエージェントモデルではアプリケーションからの入出力(人間による指示)をもとに単一のエージェントが自律的にルーチンを実行し、LLMモデルや関連サービスとの間の連携を図り、出力を行います。人による監督はHuman in the loop(HITL)という形で行われます。この図の中でいうAIアプリケーション(及びエージェント)が各種サービスやデータベースなどと通信する際、昨今ではMCP (Model Context Protocol)を用いた標準化された通信プロトコルが用いられていることが増えています。MCPについては後程解説します。

    マルチエージェントの仕組み

    一方マルチエージェントのアーキテクチャは下図のとおりです。

    図2:マルチエージェントのアーキテクチャ

    マルチエージェントのアーキテクチャの図
    参考:OWASP LLM Applications & Generative AI Top 10(https://genai.owasp.org/resource/owasp-top-10-for-llm-applications-2025/), p.10より弊社翻訳

    マルチエージェントの場合はAIアプリケーション(及びエージェント)と各種サービス、DBなどとのMCPでの通信に加えて、エージェント間の通信(図中のマルチエージェント通信)が必要となります。エージェント間の通信を標準化したものがA2A(Agent2Agent)プロトコルになります。こちらも後程解説します。

    AIエージェントの利点とリスク

    AIエージェントを利用する場合、人間の監督・指示が最低限で済む一方で、以下のような利点と課題・リスクが存在します。

    図3:AIエージェントの利点と課題・リスク

    AIエージェントの利点・課題・リスク

    上記に挙げたAIエージェントのリスクのうち、「誤行動・報酬設計の欠陥」と「倫理・説明責任」を取り上げて解説します。

    誤行動・報酬設計の欠陥

    報酬のミススペックによりエージェントが意図しない行動をとることを指します*2。 最近の報告ではエージェントが自身の地位を脅かされる場合や、目標の対立が発生した場合に内通者のような不正行動を低率ながら遂行する可能性が指摘されています*2

    倫理・説明責任

    AIエージェントの自律判断の責任を負うのは誰かという問題。倫理的な問題に加えて著作権に代表されるような法的な問題に加えて、信頼性・公平性といった問題についての課題も指摘されています*3

    新しい標準プロトコル:MCPとA2A

    ここ最近、「MCP」や「A2A」といったキーワードを目にする機会が増えているのではないでしょうか。ここでは簡単にMCPとA2Aについてご紹介します。

    MCP(Model Context Protocol)とは

    MCPとはAIアプリケーションがLLMにコンテキストを提供する方法を標準化するプロトコルで、Anthropicによって仕様が策定され、現在はオープンソース化されています。現在C#、Java、Kotlin、Python、Ruby、Swift、TypeScript向けのSDKが提供されており、幅広い言語環境で利用できること、AIアプリケーションのUSB-Cポートとして標準化されていること、そして認証認可にOAuth2.1を用いることが必須要件となっている点など、順次仕様が変更されており、新しいプロトコルとして注目を浴びています。またオープンソースであることやそのコンセプトから多くの実装例がすでに存在しています。一方でセキュリティ上の問題点も指摘されています。

    図4:MCP関連の主なセキュリティ課題

    MCP関連のセキュリティ課題(仕様レベル・実装上の問題、AI・MCA独特の脆弱性、一般的な問題)

    A2A(Agent-to-Agent)とは

    A2AはGoogleが立ち上げたエージェント間の通信プロトコルで、2025年6月にLinux財団に寄付され、Linux財団を中心に開発が進められています。こちらはGoogleのVertexなどを皮切りに実装が始まっています。A2Aプロトコルはマルチエージェントでの処理のニーズの増大、クラウドでのベンダーロックイン問題の影響でベンダーロックインの回避への強い要求があったことや、AIエージェントに対するコンプライアンスやガバナンス要求(EUのAI法など)の高まりといったところにうまくマッチしたものとも言えます。

    AIエージェントは今後の開発を大きく変える存在ですが、その基盤を支えるのがMCPやA2Aといった標準プロトコルです。次回第4回では、これらの仕組みをより詳しく掘り下げ、エンジニアが知っておくべき活用ポイントを解説します。


    ―第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」へ続く―

    【参考情報】

    【連載一覧】

    ―第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」―
    ―第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」―
    ―第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」―
    第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装
    第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
    第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望

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    フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
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    サイバーリスクから企業を守る ─脆弱性診断サービスの比較ポイントとサイバー保険の活用法─
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