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生成AIを活用したコーディングの現場で、いま最も注目されているトピックのひとつが「AIエージェント」です。エージェントは人間の最小限の指示をもとに計画・推論・実行を繰り返す自律的な仕組みであり、シングルエージェントからマルチエージェントまで多様なアーキテクチャが登場しています。さらに通信の標準化を担うMCP(Model Context Protocol)やA2A(Agent-to-Agent)といったプロトコルの整備が進み、エコシステム全体に大きな影響を与えています。本記事では、AIエージェントの基本構造、利点とリスク、新しい標準プロトコルの動向について解説します。
※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。
AIエージェントとは何か
生成AIを使用したコーディングのなかでも昨今注目を浴びているのがAIエージェント(Agentic AI)を用いたAgenticコーディングです。Agenticコーディングの前にまずはAIエージェントの動きを見てみましょう。AIエージェントは人間による最低限の指示や監督をもとに計画・推論・実行を繰り返す、自律的処理を行うAIです。
シングルエージェントの仕組み
まずはわかりやすい、単一のエージェントのみが動くシングルエージェントのアーキテクチャを見てみましょう。下図はシングルエージェントのアーキテクチャを示したものです。
図1:シングルエージェントのアーキテクチャ

シングルエージェントモデルではアプリケーションからの入出力(人間による指示)をもとに単一のエージェントが自律的にルーチンを実行し、LLMモデルや関連サービスとの間の連携を図り、出力を行います。人による監督はHuman in the loop(HITL)という形で行われます。この図の中でいうAIアプリケーション(及びエージェント)が各種サービスやデータベースなどと通信する際、昨今ではMCP (Model Context Protocol)を用いた標準化された通信プロトコルが用いられていることが増えています。MCPについては後程解説します。
マルチエージェントの仕組み
一方マルチエージェントのアーキテクチャは下図のとおりです。
図2:マルチエージェントのアーキテクチャ

マルチエージェントの場合はAIアプリケーション(及びエージェント)と各種サービス、DBなどとのMCPでの通信に加えて、エージェント間の通信(図中のマルチエージェント通信)が必要となります。エージェント間の通信を標準化したものがA2A(Agent2Agent)プロトコルになります。こちらも後程解説します。
AIエージェントの利点とリスク
AIエージェントを利用する場合、人間の監督・指示が最低限で済む一方で、以下のような利点と課題・リスクが存在します。
図3:AIエージェントの利点と課題・リスク

上記に挙げたAIエージェントのリスクのうち、「誤行動・報酬設計の欠陥」と「倫理・説明責任」を取り上げて解説します。
誤行動・報酬設計の欠陥
報酬のミススペックによりエージェントが意図しない行動をとることを指します*1。 最近の報告ではエージェントが自身の地位を脅かされる場合や、目標の対立が発生した場合に内通者のような不正行動を低率ながら遂行する可能性が指摘されています*2。
倫理・説明責任
AIエージェントの自律判断の責任を負うのは誰かという問題。倫理的な問題に加えて著作権に代表されるような法的な問題に加えて、信頼性・公平性といった問題についての課題も指摘されています*3。
新しい標準プロトコル:MCPとA2A
ここ最近、「MCP」や「A2A」といったキーワードを目にする機会が増えているのではないでしょうか。ここでは簡単にMCPとA2Aについてご紹介します。
MCP(Model Context Protocol)とは
MCPとはAIアプリケーションがLLMにコンテキストを提供する方法を標準化するプロトコルで、Anthropicによって仕様が策定され、現在はオープンソース化されています。現在C#、Java、Kotlin、Python、Ruby、Swift、TypeScript向けのSDKが提供されており、幅広い言語環境で利用できること、AIアプリケーションのUSB-Cポートとして標準化されていること、そして認証認可にOAuth2.1を用いることが必須要件となっている点など、順次仕様が変更されており、新しいプロトコルとして注目を浴びています。またオープンソースであることやそのコンセプトから多くの実装例がすでに存在しています。一方でセキュリティ上の問題点も指摘されています。
図4:MCP関連の主なセキュリティ課題

A2A(Agent-to-Agent)とは
A2AはGoogleが立ち上げたエージェント間の通信プロトコルで、2025年6月にLinux財団に寄付され、Linux財団を中心に開発が進められています。こちらはGoogleのVertexなどを皮切りに実装が始まっています。A2Aプロトコルはマルチエージェントでの処理のニーズの増大、クラウドでのベンダーロックイン問題の影響でベンダーロックインの回避への強い要求があったことや、AIエージェントに対するコンプライアンスやガバナンス要求(EUのAI法など)の高まりといったところにうまくマッチしたものとも言えます。
AIエージェントは今後の開発を大きく変える存在ですが、その基盤を支えるのがMCPやA2Aといった標準プロトコルです。次回第4回では、これらの仕組みをより詳しく掘り下げ、エンジニアが知っておくべき活用ポイントを解説します。
―第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」へ続く―
【参考情報】
- https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/en-us/report/agentic-process-automation
- https://markaicode.com/ai-agent-reward-hacking-prevention-2025/
- https://blogs.nvidia.com/blog/what-is-agentic-ai/
- https://scet.berkeley.edu/the-next-next-big-thing-agentic-ais-opportunities-and-risks/
- https://arxiv.org/pdf/2502.00289v3
- https://www.redhat.com/en/blog/model-context-protocol-mcp-understanding-security-risks-and-controls
【連載一覧】
―第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」―
―第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」―
―第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」―
第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」
第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題」
第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望」
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