AIコーディング入門
第6回:AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望

Share

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

AIコーディング入門アイキャッチ(AIエージェントのセキュリティ対策と展望)

AIエージェントは従来のアプリケーションとは異なる特性を持ち、セキュリティ対策も新しい技術との統合が求められます。次世代の手法を取り入れることで、未知の脅威に対応し信頼性を確保するアプローチが検討されています。「AIコーディング入門」の最終回では、AIエージェントを取り巻くセキュリティ対策について解説します。

※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

AIエージェントとセキュリティの新たな課題

AIエージェントのセキュリティ対策には新しい技術の適用も必要となります。例えば前回「第5回:NHI(Non‑Human Identity)とAIエージェントのセキュリティ課題」の表3:ポストゼロトラストアプローチでご紹介したエフェメラル認証には量子耐性暗号が必要となりますし、AIエージェントが一貫したセキュリティポリシーを維持しながら複数システム間で動作できるアイデンティティのフェデレーション、入出力の異常や悪意のある動作の検知のための継続的監視など、次世代のセキュリティ技術との統合アプローチも検討されています。

表1:AIエージェントセキュリティと新規技術の統合

技術領域統合方法期待効果
量子耐性暗号エフェメラル認証は量子耐性アルゴリズムやゼロ知識証明などの新興技術と共に進化する可能性将来の暗号解読攻撃への対応
アイデンティティ連合(Identity Federation)AIエージェントが一貫したセキュリティポリシーを維持しながら複数システム間で動作できるアイデンティティ連合機能マルチクラウド・ハイブリッド環境での統一セキュリティ
解釈可能AI説明可能AIシステムによる透明で理解可能な意思決定プロセスAIエージェントの行動予測性と信頼性向上
継続的監視AI システムの入力と出力の異常または悪意のある動作を監視し、脅威検出のためにAI行動分析を適用リアルタイム脅威検出と対応
形式的検証ニューラルネットワークの敵対的堅牢性を証明するSMTソルバーや抽象解釈技術の活用数学的に証明可能なセキュリティ保証
フェデレーテッドラーニング対策ビザンチン耐性集約ルールによるモデルポイズニング攻撃の防御分散学習環境での信頼性確保
出典:次のソースより弊社にて翻訳、編集,Cloud Security Alliance “Agentic AI Identity Management Approach | CSA ” (Ken Huang, 2025),DHS ” Safety and Security Guidelines for Critical Infrastructure Owners and Operators ” (2024),NIST AI 100-2e2025 ” Adversarial Machine Learning: A Taxonomy and Terminology of Attacks and Mitigations” (2025)

まとめ

ここまででまとめてきた通り、Agenticコーディングの一要素であるAIエージェントにはすでに多くのセキュリティ課題が存在していることが知られています。また、様々な対策の検討も進んでいます。AIによるコーディングそのものにも課題があり、エージェントについてもエージェントそのものの課題に加えてエージェントとアプリケーション間、マルチエージェント間のプロトコルの仕様及び実装上のセキュリティ課題が存在します。さらに、従来型のAppSec寄りのセキュリティアプローチはAIエージェントのセキュリティ対策としては不十分であることもご説明した通りです。今までにないエンティティであるAIエージェントに対して、セキュリティ対策も今までにない技術を取り入れて進んでいくことは間違いないところでしょう。AIエージェントをサービスの一つとして利用する、またはAIエージェントを自社サービス向けに開発する場合、現在進行形で新しい課題や新しい対策が次々に現れてくる状況であることを認識しながら、適時判断と対応ができる体制をまずは整えることが重要ではないでしょうか。また、今後導入を検討される場合はAIやAIエージェントのメリットを十分に生かしつつ、利用中に新しく提供されるセキュリティ対策や新しいセキュリティポリシー、セキュリティアプローチといったものを柔軟に受け入れて消化していけることも重要になるでしょう。

今までのAppSecとは全く異なるもの、それがAIエージェントであり、今までのコーディングと全く異なるものがAgenticコーディングなのです。

付録: マルチエージェントの脅威モデリング:MAESTROとは

最後に、「第4回:MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」でご紹介した、A2Aプロトコルのセキュリティ上の課題の際に触れた、マルチエージェント環境の脅威モデリングであるMAESTROについて解説します。

図1:MAESTROの7レイヤ アーキテクチャ

MAESTROの7レイヤ アーキテクチャ

OWASPが定義したMAESTROについて解説された記事をもとに記載しています。

MAESTROモデリングはマルチエージェント環境の複雑な環境・エコシステムを評価する目的でOWASPが定義した脅威評価モデルです。エージェントが複数に及び、関連するサービスも多岐にわたる前提での評価に必要な階層型の評価フレームワークを提供しています。このモデルはマルチエージェントシステムの構築・実装・防御関係者やセキュリティ専門家、プラットフォームエンジニアなどが幅広く利用することを想定されているものです。

【連載一覧】

第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎
第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法
第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは
第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装
第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望」


Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年9月17日(水)14:00~15:00
    サイバーリスクから企業を守る ─脆弱性診断サービスの比較ポイントとサイバー保険の活用法─
  • 2025年9月24日(水)12:50~14:00
    製造業・自動車業界のためのサプライチェーン対策 -攻撃事例から学ぶ企業を守るセキュリティ強化のポイント-
  • 2025年10月1日(水)13:00~14:00
    2025年10月Windows10サポート終了へ 今知るべきサポート切れのソフトウェアへのセキュリティ対策ガイド
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像