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AIエージェントは従来のアプリケーションとは異なる特性を持ち、セキュリティ対策も新しい技術との統合が求められます。次世代の手法を取り入れることで、未知の脅威に対応し信頼性を確保するアプローチが検討されています。「AIコーディング入門」の最終回では、AIエージェントを取り巻くセキュリティ対策について解説します。
※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。
AIエージェントとセキュリティの新たな課題
AIエージェントのセキュリティ対策には新しい技術の適用も必要となります。例えば前回「第5回:NHI(Non‑Human Identity)とAIエージェントのセキュリティ課題」の表3:ポストゼロトラストアプローチでご紹介したエフェメラル認証には量子耐性暗号が必要となりますし、AIエージェントが一貫したセキュリティポリシーを維持しながら複数システム間で動作できるアイデンティティのフェデレーション、入出力の異常や悪意のある動作の検知のための継続的監視など、次世代のセキュリティ技術との統合アプローチも検討されています。
表1:AIエージェントセキュリティと新規技術の統合
| 技術領域 | 統合方法 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 量子耐性暗号 | エフェメラル認証は量子耐性アルゴリズムやゼロ知識証明などの新興技術と共に進化する可能性 | 将来の暗号解読攻撃への対応 |
| アイデンティティ連合(Identity Federation) | AIエージェントが一貫したセキュリティポリシーを維持しながら複数システム間で動作できるアイデンティティ連合機能 | マルチクラウド・ハイブリッド環境での統一セキュリティ |
| 解釈可能AI | 説明可能AIシステムによる透明で理解可能な意思決定プロセス | AIエージェントの行動予測性と信頼性向上 |
| 継続的監視 | AI システムの入力と出力の異常または悪意のある動作を監視し、脅威検出のためにAI行動分析を適用 | リアルタイム脅威検出と対応 |
| 形式的検証 | ニューラルネットワークの敵対的堅牢性を証明するSMTソルバーや抽象解釈技術の活用 | 数学的に証明可能なセキュリティ保証 |
| フェデレーテッドラーニング対策 | ビザンチン耐性集約ルールによるモデルポイズニング攻撃の防御 | 分散学習環境での信頼性確保 |
まとめ
ここまででまとめてきた通り、Agenticコーディングの一要素であるAIエージェントにはすでに多くのセキュリティ課題が存在していることが知られています。また、様々な対策の検討も進んでいます。AIによるコーディングそのものにも課題があり、エージェントについてもエージェントそのものの課題に加えてエージェントとアプリケーション間、マルチエージェント間のプロトコルの仕様及び実装上のセキュリティ課題が存在します。さらに、従来型のAppSec寄りのセキュリティアプローチはAIエージェントのセキュリティ対策としては不十分であることもご説明した通りです。今までにないエンティティであるAIエージェントに対して、セキュリティ対策も今までにない技術を取り入れて進んでいくことは間違いないところでしょう。AIエージェントをサービスの一つとして利用する、またはAIエージェントを自社サービス向けに開発する場合、現在進行形で新しい課題や新しい対策が次々に現れてくる状況であることを認識しながら、適時判断と対応ができる体制をまずは整えることが重要ではないでしょうか。また、今後導入を検討される場合はAIやAIエージェントのメリットを十分に生かしつつ、利用中に新しく提供されるセキュリティ対策や新しいセキュリティポリシー、セキュリティアプローチといったものを柔軟に受け入れて消化していけることも重要になるでしょう。
今までのAppSecとは全く異なるもの、それがAIエージェントであり、今までのコーディングと全く異なるものがAgenticコーディングなのです。
付録: マルチエージェントの脅威モデリング:MAESTROとは
最後に、「第4回:MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」でご紹介した、A2Aプロトコルのセキュリティ上の課題の際に触れた、マルチエージェント環境の脅威モデリングであるMAESTROについて解説します。
図1:MAESTROの7レイヤ アーキテクチャ

OWASPが定義したMAESTROについて解説された記事をもとに記載しています。
- Cloud Security Alliance, “Agentic AI Threat Modeling Framework: MAESTRO“, Ken Huang (2025)
- William Ogou, “OWASP’s MAESTRO: Securing Agentic AI’s Next Frontier”(2025)
MAESTROモデリングはマルチエージェント環境の複雑な環境・エコシステムを評価する目的でOWASPが定義した脅威評価モデルです。エージェントが複数に及び、関連するサービスも多岐にわたる前提での評価に必要な階層型の評価フレームワークを提供しています。このモデルはマルチエージェントシステムの構築・実装・防御関係者やセキュリティ専門家、プラットフォームエンジニアなどが幅広く利用することを想定されているものです。
【連載一覧】
第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」
第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」
第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」
第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」
第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題」
第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望」
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