KDDIメールシステムに不正アクセス、最大1,422万件漏えいの可能性―企業が見直すべき「共通基盤リスク」とは

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KDDI株式会社(以降、KDDI)がISP事業者向けに提供するメールシステムで不正アクセスが確認され、BIGLOBEメール、@niftyメール、J:COM NET、コミュファ光、ピカラ光、CPIなど複数のメールサービスにおいて、メールアドレスやパスワードが外部に漏えいした可能性があることが公表されました。漏えいした可能性のある情報は最大1,422万件にのぼり、現在利用中のユーザーだけでなく、解約済みの顧客や一定期間利用のない休眠アカウントも含まれるとされています。

今回の事案で注目すべきなのは、単に「メールアドレスとパスワードが漏えいした可能性がある」という点だけではありません。KDDIが提供するISP向けの共通メール基盤に不正アクセスが発生したことで、複数の事業者・複数のサービスに影響が広がった点が重要です。これは、現代の企業システムにおいて避けて通れない「外部委託先リスク」「サプライチェーンリスク」「共通基盤リスク」を象徴する事案といえます。

本記事では、KDDIの公式発表および関係各社の公表情報をもとに、今回の不正アクセスの概要、影響範囲、利用者が取るべき対応、そして企業が学ぶべきセキュリティ対策について解説します。

KDDIのISP向けメールシステムで何が起きたのか

KDDIは、インターネットサービスプロバイダー、いわゆるISP事業者向けに提供しているメールシステムにおいて、不正アクセスを受けていたことを2026年6月17日に確認しました。KDDIの発表によると、不正アクセスの原因は、同システムで利用していた第三者製ソフトウェアの脆弱性を悪用されたことによるものです。

KDDIは同日、被害拡大を防ぐためにシステムを改修し、不正アクセスの被疑箇所を特定したうえで、技術的な防御措置を実施したとしています。また、個人情報保護委員会や総務省への報告・相談を含む必要な対応も進めていると説明しています。

現時点で公表されている漏えい可能性のある情報は、対象メールサービスで作成されたメールボックスに紐づくメールアドレスとパスワードです。件数は最大1,422万件とされており、この数字には解約済みの顧客や、一定期間利用していない休眠アカウントも含まれています。なお、パスワードの中には、ハッシュ化または暗号化されたものも含まれるとされています。

ここで注意したいのは、最大1,422万件という数字が「実際に漏えいした件数」と確定したものではないという点です。KDDIは調査継続中であるため、現時点では漏えいした可能性のある最大値として公表されています。

影響を受けるメールサービス

今回の不正アクセスで対象とされているのは、KDDIがISP事業者向けに提供していたメールシステムを利用する複数のメールサービスです。KDDIの発表では、STNetのピカラ光サービス、ピカラモバイルサービス、お仕事ピカラサービスに係るメールサービス、KDDIウェブコミュニケーションズのレンタルサーバー「CPI」のメールサービス、JCOMのJ:COM NETおよびケーブルテレビ事業者向けメールサービス、中部テレコミュニケーションのコミュファ光・ビジネスコミュファのメールサービス、ニフティの@niftyメール、ビッグローブのBIGLOBEメールが対象として挙げられています。

各社の発表を見ても、KDDIが提供する基盤システムを利用していたこと、第三者製ソフトウェアの脆弱性悪用によって不正アクセスが発生したこと、メールアドレスやメールパスワードなどが漏えいした可能性があることが説明されています。BIGLOBEでは、BIGLOBEメールアドレス、BIGLOBE IDおよびパスワードが漏えいした可能性があると公表しています。@niftyでは、メールアドレスおよびメールパスワードが第三者に漏えいした可能性があるとして、利用者にメールパスワードの変更を求めています。

このように、ひとつの基盤システムに起きた不正アクセスが、複数ブランドの利用者に影響する形になっています。これは、クラウドサービス、外部委託システム、SaaS、共通認証基盤などを活用する多くの企業にとっても、決して他人事ではありません。

なぜメールアドレスとパスワードの漏えいは危険なのか

メールアドレスとパスワードの漏えいは、単なる連絡先情報の流出にとどまりません。メールアカウントは、多くのWebサービスや業務システムにおいて本人確認やパスワード再設定の起点として使われています。そのため、メールアカウントに不正ログインされると、他サービスへの侵入、なりすまし、フィッシングメールの送信、業務情報の閲覧など、被害が連鎖するおそれがあります。

特に危険なのは、同じパスワードを複数のサービスで使い回しているケースです。攻撃者は、漏えいしたメールアドレスとパスワードの組み合わせを使い、別のWebサービスやクラウドサービスへのログインを試みることがあります。これは一般にパスワードリスト攻撃、またはクレデンシャルスタッフィングと呼ばれる手口です。

今回の件では、対象情報にメールパスワードが含まれる可能性があるため、利用者は対象メールサービスのパスワードを変更するだけでなく、同じ、または似たパスワードを使用している他サービスについても見直す必要があります。メール、ECサイト、SNS、クラウドストレージ、業務用SaaSなどでパスワードを使い回している場合は、早急な変更が望まれます。

利用者が今すぐ取るべき対応

対象サービスを利用している可能性がある場合、まずは各ISP事業者やサービス提供会社の公式案内を確認することが重要です。検索結果やSNS上のリンクからではなく、公式サイト、公式サポートページ、契約時に案内された会員ページなどから確認することで、フィッシングサイトに誘導されるリスクを下げられます。

次に、対象となるメールパスワードを変更します。@niftyのように、一定期限までに変更が確認できない場合、システム側でメールパスワードを順次無効化すると案内している事業者もあります。Outlook、Macメール、スマートフォンのメールアプリなどを利用している場合は、Web上でパスワードを変更した後、メールソフト側に保存されているパスワードも更新する必要があります。

また、メールパスワードとログインパスワードを同じ文字列にしている場合や、他のサービスでも同じパスワードを使っている場合は、それらも変更すべきです。メールアカウントは、他サービスのパスワード再設定メールを受け取る重要な入口です。メールアカウントの安全性が崩れると、他のアカウントにも被害が広がる可能性があります。 加えて、しばらくの間は不審なメールへの警戒が必要です。今回の不正アクセスに便乗し、「パスワード変更が必要です」「アカウントを確認してください」などと称する偽メールが送られる可能性もあります。本文中のURLを安易にクリックせず、ブックマークや公式アプリ、公式サイトから手続きすることが大切です。

「委託先だから安全」ではないという現実

今回の事案は、企業のセキュリティ対策を考えるうえで重要な教訓を含んでいます。多くの企業は、自社の業務効率化やコスト削減、専門性の確保を目的に、メール基盤、クラウドサービス、決済システム、顧客管理システム、認証基盤などを外部サービスに委託しています。これは現代の事業運営では自然な選択です。

しかし、外部サービスを利用しているからといって、リスクが自社から消えるわけではありません。委託先や共通基盤でインシデントが発生すれば、自社の顧客情報、業務データ、ブランド信頼にも影響が及びます。特に、複数の事業者が同じ基盤を利用している場合、一箇所の脆弱性が広範囲のサービスに波及する可能性があります。 企業に求められるのは、外部委託先を「便利なサービス提供者」として見るだけでなく、自社のセキュリティ境界の一部として管理する姿勢です。契約時のセキュリティ要件、脆弱性対応の体制、インシデント発生時の報告フロー、影響範囲の確認方法、利用者への通知方針などを事前に整理しておかなければ、実際に問題が起きた際の初動対応が遅れてしまいます。

第三者製ソフトウェアの脆弱性はなぜ狙われるのか

KDDIは今回の不正アクセスについて、第三者製ソフトウェアの脆弱性が悪用されたと説明しています。現時点でソフトウェア名やCVE番号などの詳細は公表されていませんが、一般論として、第三者製ソフトウェアの脆弱性は攻撃者にとって非常に狙いやすいポイントです。

企業システムは、自社開発のプログラムだけで構成されているわけではありません。OS、ミドルウェア、メールサーバー、認証機能、管理画面、ライブラリ、監視ツールなど、さまざまな外部コンポーネントに支えられています。これらのどこかに脆弱性が存在し、修正が遅れれば、攻撃者に侵入口を与えることになります。 特に、インターネットからアクセス可能なシステムや、多数の顧客情報を扱う共通基盤では、脆弱性管理の遅れが大きなインシデントにつながりかねません。脆弱性情報を収集し、影響有無を確認し、必要なパッチ適用や回避策を迅速に実施する体制が不可欠です。

企業が見直すべきセキュリティ対策

今回のような不正アクセスや情報漏えいリスクに備えるには、単にパスワードを強化するだけでは不十分です。まず重要なのは、自社がどの外部サービスや委託先に、どのような情報を預けているのかを把握することです。顧客情報、メールアドレス、認証情報、業務データ、ログ情報など、預託している情報の種類と影響範囲を整理しておく必要があります。

次に、委託先や利用サービスに対するセキュリティ確認を継続的に行うことが求められます。契約時だけでなく、運用中も脆弱性対応、インシデント報告体制、アクセス制御、ログ管理、バックアップ、暗号化、権限管理などの観点で確認を続けることが重要です。

さらに、自社側でも認証情報の管理を強化する必要があります。多要素認証の導入、パスワード使い回しの禁止、不要アカウントの棚卸し、退職者や休眠アカウントの削除、権限の最小化などは、基本的でありながら効果の高い対策です。今回の件で解約済みや休眠アカウントも最大件数に含まれていることは、使われていないアカウントや古いデータの管理がいかに重要かを示しています。 最後に、インシデント発生時の対応手順を事前に整備しておくことも欠かせません。誰が影響範囲を確認し、誰が顧客へ通知し、どのタイミングで監督官庁へ報告し、どのように再発防止策を公表するのか。こうした手順が曖昧なままでは、被害の拡大だけでなく、顧客からの信頼低下にもつながります。

メール漏えいではなくサプライチェーンリスクの問題

今回のKDDIメールシステム不正アクセスは、メールアドレスとパスワードの漏えい可能性が注目されています。しかし、企業のセキュリティ担当者や経営層が本当に見るべきポイントは、その背後にある構造です。

ひとつの共通基盤に脆弱性があり、そこを攻撃されることで、複数のISP事業者やメールサービスに影響が広がりました。これは、外部委託やクラウド利用が進む現在の企業環境において、どの企業にも起こり得る問題です。自社のシステムが直接攻撃されていなくても、委託先、取引先、共通基盤、利用中のSaaSで起きたインシデントが、自社の顧客対応や事業継続に影響する可能性があります。 セキュリティ対策は、もはや自社ネットワークの内側だけを守ればよい時代ではありません。外部サービスを含めた全体像を把握し、脆弱性管理、委託先管理、認証情報管理、インシデント対応を一体として整備することが求められます。

まとめ

KDDIのISP事業者向けメールシステムに対する不正アクセスでは、メールアドレスやパスワードが最大1,422万件漏えいした可能性があると公表されました。対象にはBIGLOBEメール、@niftyメール、J:COM NET、コミュファ光、ピカラ光、CPIなど複数のメールサービスが含まれており、共通基盤に起きた不正アクセスが広範囲に影響する構図となっています。

利用者は、各事業者の公式案内を確認し、対象となるメールパスワードを速やかに変更することが重要です。同じパスワードを他サービスで使い回している場合は、あわせて変更し、不審なメールや偽のパスワード変更案内にも注意が必要です。

企業にとっては、今回の事案を「大手通信会社の情報漏えい」として見るだけでは不十分です。第三者製ソフトウェアの脆弱性、外部委託先の管理、共通基盤への依存、休眠アカウントの扱い、インシデント発生時の連絡体制など、自社のセキュリティ運用を見直すきっかけにすべきです。 サイバー攻撃は、自社の真正面から来るとは限りません。取引先、委託先、クラウドサービス、共通基盤を経由して影響が及ぶ時代だからこそ、企業にはサプライチェーン全体を見据えたセキュリティ対策が求められています。

【参考情報】

編集責任:木下


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    【企業のためのランサムウェア対策ガイド】ランサムウェアの攻撃手法とは – 侵入から暗号化までの流れを解説

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    ランサムウェア攻撃は、単にファイルを暗号化するだけではありません。近年の攻撃では、侵入後に認証情報の窃取や権限昇格、社内ネットワーク内での横展開、重要データの窃取を経て、最終的に暗号化や二重恐喝へと発展するケースが一般的です。本記事では、ランサムウェア攻撃がどのような段階を経て進行するのか、その流れと企業が警戒すべきポイントを解説します。

    ランサムウェアの基本的な仕組みや全体像については、以下の記事で整理しています。
    ランサムウェアとは何か ―企業が知るべき被害・仕組み・対策の基本―

    ランサムウェア攻撃は、単に「ウイルスに感染してファイルが暗号化される攻撃」ではありません。現在の企業向けランサムウェア攻撃では、攻撃者が社内ネットワークへ侵入し、認証情報を盗み、権限を広げ、重要データを持ち出し、最後にシステムやファイルを暗号化するという複数段階の流れをたどることが一般的です。特に近年は、暗号化だけでなく、事前に窃取したデータを公開すると脅す「二重恐喝」が多く確認されています。警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」の調査報告によると、近年のランサムウェア被害はデータを窃取したうえで「対価を支払わなければ公開する」と脅す二重恐喝が多くを占めるといいます。

    ランサムウェア攻撃の全体像

    ランサムウェア攻撃は、外部から突然暗号化プログラムが送り込まれて終わるものではありません。実際には、攻撃者が最初に侵入経路を確保し、その後に社内環境を調査し、より強い権限を持つアカウントを探し、重要なサーバやファイル共有へ移動しながら、最終的に暗号化や脅迫へ進む流れを取ります。

    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)が公開している「#StopRansomware Guide」でも、ランサムウェアやデータ恐喝型攻撃への対策が初期侵入経路ごとに整理されています。本ガイドでは、インターネットに公開されたシステム、脆弱性、認証情報、リモートアクセス、メールなどが重要な観点として扱われています。つまり、ランサムウェア対策は、暗号化プログラムそのものを止めるだけでなく、攻撃の前段階をどこで検知し、どこで遮断するかが重要になります。攻撃の流れを理解すると、ランサムウェア対策の考え方も変わります。入口対策だけではなく、侵入後の不審な認証、権限昇格、横展開、データ窃取、バックアップ破壊、暗号化準備といった兆候を監視する必要があります。特に企業では、感染を完全に防ぐことだけに注力するのではなく、侵入された場合でも早期に発見し、被害拡大を防ぐ体制が求められます。

    ランサムウェアの仕組みについては、以下の記事でより詳しく解説しています。
    ランサムウェアの仕組みとは ―感染から暗号化までの動きを解説―

    攻撃の流れ(フェーズ別)

    侵入

    ランサムウェア攻撃の最初の段階は、企業ネットワークへの侵入です。侵入経路としては、フィッシングメール、VPN機器の脆弱性、リモートデスクトップ、外部公開サーバ、認証情報の悪用、委託先や外部サービス経由のアクセスなどが挙げられます。

    攻撃者は、必ずしも高度な手法だけを使うわけではありません。公開済みの脆弱性が修正されていないVPN機器や、外部公開されたリモートデスクトップ接続(RDP)、使い回されたパスワード、退職者の残存アカウントなど、基本的な管理不備が入口になることもあります。この段階で重要なのは、自社の外部公開資産を把握し、侵入口になり得る箇所を減らすことです。攻撃者から見えるサーバ、VPN、リモートアクセス環境、クラウド管理画面、ファイル共有サービスを把握できていなければ、侵入の兆候を見つけることも、優先的に対策することも難しくなります。

    独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向け脅威として「ランサム攻撃による被害」が1位、「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が2位に挙げられており、企業にとってランサムウェアと外部経由の侵入は継続的な重要課題とされています。

    権限昇格

    侵入に成功した攻撃者は、次により強い権限を得ようとします。一般ユーザの端末に入っただけでは、重要サーバの停止や大規模な暗号化を実行できない場合があるためです。そのため、攻撃者は端末内に保存された認証情報、ブラウザに残ったパスワード、管理ツールの接続情報、設定ファイル、共有フォルダ内の情報などを探します。

    権限昇格が成功すると、攻撃者は管理者アカウントやドメイン管理者権限を悪用し、より広範囲のシステムへアクセスできるようになります。管理者権限を持つアカウントが日常業務にも使われている場合や、複数のサーバで同じ認証情報が使い回されている場合、攻撃者の行動範囲は一気に広がります。この段階を防ぐためには、管理者権限の最小化、特権アカウントの分離、多要素認証、不要アカウントの削除、認証ログの監視が重要です。ランサムウェア攻撃では、暗号化そのものより前に、認証情報の不正利用や通常とは異なるログインが発生していることがあります。その兆候を早く見つけることが、被害拡大を防ぐ鍵になります。

    横展開(ラテラルムーブメント)

    権限を得た攻撃者は、社内ネットワーク内を移動しながら、重要なサーバやデータの所在を探します。この動きを横展開、またはラテラルムーブメントと呼びます。横展開では、ファイルサーバ、業務システム、Active Directory、バックアップサーバ、仮想基盤、クラウド連携システムなどが調査対象になります。攻撃者は、どのシステムを暗号化すれば業務停止の影響が大きいか、どのデータを盗めば脅迫材料になるか、どのバックアップを破壊すれば復旧を困難にできるかを確認します。この段階では、社内通信の異常、管理者ツールの不審な利用、通常とは異なる時間帯のアクセス、複数端末への連続ログイン、ファイル共有への大量アクセスなどが兆候になります。しかし、正規のアカウントや管理ツールが悪用される場合、単純なウイルス対策ソフトだけでは検知が難しいことがあります。そのため、ランサムウェア対策では、EDRやログ監視、ネットワーク監視、認証基盤の監視を組み合わせ、侵入後の不審な行動を見つける考え方が重要になります。

    データ窃取

    近年のランサムウェア攻撃では、暗号化の前にデータを盗む手口が一般化しています。攻撃者は、顧客情報、従業員情報、契約書、財務情報、設計情報、取引先情報、メールデータなどを持ち出し、身代金交渉の材料にします。この手法が二重恐喝です。従来のランサムウェアは、ファイルを暗号化して「復号したければ身代金を支払え」と要求するものでした。しかし現在は、暗号化に加えて「盗んだデータを公開する」「取引先や顧客へ連絡する」と脅すケースが増えています。この段階で被害が発生すると、たとえバックアップからシステムを復旧できたとしても、情報漏洩対応、顧客説明、取引先対応、法的対応、信用低下への対応が必要になります。つまり、バックアップは重要ですが、バックアップだけでランサムウェア被害を完全に抑え込めるわけではありません。データ窃取を早期に検知するには、重要データへのアクセス監視、大量ダウンロードの検知、外部送信通信の監視、クラウドストレージやファイル共有サービスの利用状況確認が必要です。特に、通常業務では発生しない大量の圧縮ファイル作成や外部アップロードは、ランサムウェア攻撃の前兆として注意すべきです。

    暗号化

    攻撃の最終段階で、ランサムウェアによる暗号化が実行されます。攻撃者は、業務停止の影響が大きいサーバや共有フォルダ、端末、仮想基盤を対象にし、ファイルを暗号化します。同時に、バックアップを削除したり、復旧機能を無効化したり、セキュリティ製品を停止しようとする場合もあります。暗号化が始まると、業務システムが使えない、ファイルサーバにアクセスできない、受発注や出荷が止まる、社内の連絡体制が混乱するなど、事業継続に大きな影響が出ます。NIST(米国立標準技術研究所)が公開しているNIST IR 8374でも、重要業務の復旧優先順位、バックアップの保護、復旧手順のテスト、対応計画の整備が重要であると示されています。暗号化段階まで到達してからでは、被害をゼロに抑えることは難しくなります。そのため、企業のランサムウェア対策では、暗号化を検知する仕組みに加え、暗号化前の侵入、権限昇格、横展開、データ窃取を早期に見つけることが重要です。

    最近の攻撃の特徴

    最近のランサムウェア攻撃の特徴は、暗号化だけに依存しない点にあります。攻撃者は、データを盗み、公開をちらつかせ、企業の信用や取引関係に圧力をかけることで、身代金の支払いを迫ります。この二重恐喝型の攻撃では、システム復旧だけでは問題が終わりません。情報漏洩の有無、漏洩した可能性のある情報の範囲、顧客や取引先への説明、監督官庁への報告など、経営判断を伴う対応が必要になります。

    また、データ公開を前提にした脅迫も深刻です。攻撃者は、盗んだ情報の一部をリークサイトに掲載したり、公開期限を設けたり、顧客や取引先へ連絡すると主張したりすることがあります。これにより、企業は業務停止だけでなく、信用低下、顧客離脱、取引停止、法的責任のリスクにも直面します。

    さらに、攻撃の分業化や自動化も進んでいます。ランサムウェア攻撃では、初期アクセスを売買する攻撃者、侵入後に権限を広げる攻撃者、データを窃取する攻撃者、暗号化と脅迫を行う攻撃者が分かれている場合があります。このような状況では、従来型の「入口で防ぐ」だけの対策では限界があります。攻撃者が社内に入った後の行動をどう検知するか、重要システムへの到達をどう遅らせるか、データ窃取をどう見つけるか、暗号化された場合にどう復旧するかまで含めた対策が必要です。

    なぜ攻撃を止められないのか

    ランサムウェア攻撃を止められない大きな理由は、侵入から暗号化までの途中段階に気づけないことです。攻撃者は、正規のアカウントや管理ツールを悪用することがあります。その場合、単純に「不審なファイルがあるか」「既知のマルウェアが検出されたか」だけを見ていても、攻撃の進行に気づけない可能性があります。

    また、権限管理の不備も被害を拡大させます。管理者権限を持つアカウントが多すぎる、退職者のアカウントが残っている、共有アカウントを使っている、重要サーバへのアクセス制限が甘い、といった状態では、攻撃者が一度侵入しただけで広範囲へ移動できてしまいます。

    検知遅れの背景には、ログが残っていない、ログを見ていない、異常を判断する基準がない、担当者が限られている、休日や夜間の監視ができないといった運用面の課題もあります。セキュリティ製品を導入していても、アラートを確認する体制がなければ、攻撃の兆候を見逃す可能性があります。 そのため、ランサムウェア対策では、技術対策だけでなく、運用体制の整備が欠かせません。誰がアラートを見るのか、どの条件で隔離するのか、どの段階で経営層へ報告するのか、外部専門家へいつ相談するのかを事前に決めておく必要があります。

    企業が理解すべきポイント

    企業がまず理解すべきなのは、ランサムウェア攻撃を完全に防ぐことは難しいという現実です。もちろん、脆弱性管理、メール対策、多要素認証、EDR、バックアップ、ネットワーク分離などの対策は重要です。しかし、攻撃手法は変化し続けており、外部委託先やクラウドサービス、認証情報の悪用など、自社だけでは完全に制御しにくい要素もあります。だからこそ、企業に求められるのは「侵入されないこと」だけを前提にした対策ではなく、「侵入される可能性を前提に、早期に検知し、被害を限定し、復旧できる体制」を整えることです。早期検知の観点では、通常とは異なるログイン、権限昇格、管理者ツールの不審な利用、複数端末への連続アクセス、大量のファイル操作、外部への大容量通信などを監視することが重要です。これらは、暗号化が始まる前に現れる可能性がある兆候です。

    また、経営層はランサムウェアを単なるIT部門の問題としてではなく、事業継続、情報管理、顧客対応、法務、広報、取引先対応を含む経営リスクとして捉える必要があります。ランサムウェア攻撃は、システム停止だけでなく、情報漏洩、信用低下、売上損失、顧客離脱、サプライチェーンへの影響を引き起こす可能性があるためです。

    ランサムウェアによって企業にどのような被害が発生するのかについては、次の記事で詳しく解説します。
    ランサムウェア被害の実態 – 業務停止・損害・企業が直面するリスクとは

    まとめ

    ランサムウェア攻撃は、侵入、権限昇格、横展開、データ窃取、暗号化という複数の段階を経て進行します。暗号化は被害が目に見える最終段階であり、その前には攻撃者による認証情報の悪用、社内探索、重要データの特定、情報持ち出しが行われている可能性があります。近年は、データを暗号化するだけでなく、盗んだ情報を公開すると脅す二重恐喝が多く確認されています。そのため、バックアップを取得しているだけでは十分とはいえません。復旧できる体制に加え、データ窃取を防ぎ、早期に検知し、情報漏洩対応まで想定した準備が必要です。企業が取るべき対策は、入口対策、権限管理、ログ監視、EDR、脆弱性管理、バックアップ、インシデント対応体制を組み合わせた多層防御です。特に重要なのは、攻撃の流れを理解し、暗号化される前の段階で異常に気づくことです。ランサムウェア対策は、特定の製品を導入すれば終わるものではありません。攻撃者がどのように侵入し、どのように社内を移動し、どのようにデータを盗み、どのタイミングで暗号化するのかを理解したうえで、自社の弱点を継続的に見直すことが重要です。

    【参考情報】

    編集責任:木下


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    【企業のためのランサムウェア対策ガイド】ランサムウェアの感染経路とは ―企業が見落としがちなVPN・RDP侵入リスクを解説

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    ランサムウェアの感染経路とは ―企業が見落としがちなVPN・RDP侵入リスクを解説アイキャッチ画像

    ランサムウェア対策を考えるうえで重要なのが、「どこから侵入されるのか」を理解することです。近年の企業向けランサムウェア攻撃では、メールだけでなく、VPN機器やリモートデスクトップ(RDP)の脆弱性、認証情報の悪用、サプライチェーン経由の侵入など、多様な経路が利用されています。本記事では、企業が見落としがちな代表的な感染経路と、その対策の考え方について解説します。

    ランサムウェアの基本的な仕組みや全体像については、以下の記事で整理しています。
    ランサムウェアとは何か ―企業が知るべき被害・仕組み・対策の基本―

    ランサムウェアは、ある日突然社内のパソコンやサーバ上で実行されるように見えます。しかし実際には、その前段階で攻撃者が企業ネットワークへ侵入しています。メール、VPN機器、リモートデスクトップ、ソフトウェアの脆弱性、外部委託先など、侵入経路はさまざまです。特に近年は、単に添付ファイルを開かせる攻撃だけでなく、インターネットに公開されたVPN機器やリモートアクセス環境の脆弱性、認証情報の悪用、委託先や外部サービスを踏み台にした侵入が問題になっています。警察庁やIPAの資料でも、国内のランサムウェア被害ではVPN機器やリモートデスクトップなど、テレワーク環境に関連する経路が多く確認されています。

    ランサムウェアはどこから侵入するのか

    ランサムウェアの感染経路は、ひとつに限定されません。攻撃者は、企業の外部に開いている入口、従業員が日常的に使うメール、保守やテレワークのためのリモート接続、未修正のソフトウェア、さらには取引先や委託先との接続関係まで、複数の経路を組み合わせて侵入を試みます。従来は、ランサムウェアというと「不審なメールの添付ファイルを開いて感染する」というイメージが強くありました。もちろんメールは現在でも重要な感染経路ですが、企業におけるランサムウェア被害では、VPN機器やリモートデスクトップなど、外部から社内環境へ接続するための仕組みが狙われるケースが目立ちます。

    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)が公開している「#StopRansomware Guide」でも、ランサムウェアやデータ恐喝型攻撃の初期侵入経路として、インターネットに公開された脆弱性や設定ミス、フィッシング、認証情報の悪用、リモートアクセス環境などが重視されています。つまり、ランサムウェア対策は「端末にウイルス対策ソフトを入れる」だけでは不十分であり、外部公開資産、認証、運用設定、委託先管理まで含めて考える必要があります。

    代表的な感染経路

    メールによる感染

    メールは、現在でもランサムウェア感染の代表的な入口です。攻撃者は、請求書、見積書、配送通知、業務連絡、採用関連の連絡などを装い、添付ファイルや本文中のリンクを開かせようとします。従業員が添付ファイルを開いたり、リンク先で認証情報を入力したりすると、マルウェア感染やアカウント窃取につながる可能性があります。ただし、近年のランサムウェア攻撃では、メールから即座に暗号化が始まるとは限りません。メールをきっかけに認証情報を盗み、その後VPNやクラウドサービスへ不正ログインする場合もあります。また、メール経由で侵入したマルウェアが端末内の情報を収集し、攻撃者が次の侵入経路を探す足がかりになることもあります。そのため、メール対策は「怪しいメールを開かないように教育する」だけでは不十分です。迷惑メール対策、添付ファイルの検査、URLフィルタリング、多要素認証、端末の挙動監視を組み合わせ、万が一クリックされても被害が広がりにくい仕組みを整える必要があります。

    VPN機器の脆弱性

    企業のランサムウェア対策で特に注意すべき感染経路が、VPN機器の脆弱性です。VPNは、テレワークや拠点間接続、外部からの保守作業に欠かせない仕組みですが、インターネット側に公開されているため、攻撃者にとっても狙いやすい入口になります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、ランサムウェア被害の感染経路としてVPN機器経由が大きな割合を占め、VPN機器経由とリモートデスクトップ経由を合わせると毎年高い割合を占めていることが示されています。

    VPN機器に未修正の脆弱性が残っている場合、攻撃者は認証を突破したり、機器上の情報を盗んだり、社内ネットワークへ侵入したりする可能性があります。特に、サポート切れの機器、更新が滞っているファームウェア、初期設定に近いまま運用されている環境、不要なアカウントが残っている環境は危険です。VPN機器は一度導入すると、業務インフラとして長く使われがちです。そのため、導入時には問題がなかったとしても、数年後に深刻な脆弱性が公表され、攻撃対象になることがあります。ランサムウェア対策では、VPN機器のメーカー名、型番、バージョン、サポート期限、適用済みパッチを定期的に確認することが重要です。

    リモートデスクトップ(RDP)の悪用

    リモートデスクトップ(RDP)も、ランサムウェアの代表的な感染経路です。RDPは、離れた場所から社内のPCやサーバを操作できる便利な仕組みですが、外部から直接接続できる状態になっていると、攻撃者にとって格好の侵入口になります。CISAが公開するランサムウェア関連アドバイザリ(#StopRansomware: Akira Ransomware)でも、RDPやVPNなどのリモートアクセスサービスが初期侵入に使われる事例が継続的に示されています。

    攻撃者は、単純なパスワードの総当たり攻撃、過去に漏えいした認証情報の悪用、設定不備の探索などによって、RDP接続を突破しようとします。一度RDP経由で社内端末やサーバへ入られると、攻撃者は管理者権限の取得、他端末への横展開、データの持ち出し、バックアップの削除、ランサムウェアの実行へと進む可能性があります。RDPを業務上どうしても使う場合は、インターネットへ直接公開しないことが基本です。VPNやゼロトラスト型のアクセス制御を経由させ、多要素認証を必須にし、接続元制限、ログ監視、不要アカウントの削除を徹底する必要があります。

    ソフトウェアの脆弱性

    ランサムウェアの感染経路として見落とされやすいのが、OS、ミドルウェア、業務システム、Webアプリケーション、ネットワーク機器などのソフトウェア脆弱性です。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」(DBIR)でも、脆弱性の悪用による初期アクセスが増加していることが示されており、境界デバイスや外部公開システムの管理が企業のセキュリティ課題として重要になっています。

    攻撃者は、公開された脆弱性情報をもとに、未修正のシステムをインターネット上で探索します。特に危険なのは、外部からアクセスできるシステムに深刻な脆弱性が残っている場合です。VPN、ファイアウォール、メールサーバ、ファイル転送システム、Web管理画面、クラウド連携用の管理コンソールなどは、攻撃者から常に探索対象になっていると考えるべきです。脆弱性対策では、単にパッチを適用するだけではなく、自社がどのシステムを外部公開しているかを把握することが出発点になります。資産管理が不十分なままでは、どの機器に脆弱性があるのか、どのシステムを優先して更新すべきかを判断できません。

    サプライチェーン経由の感染

    ランサムウェアの感染経路は、自社のネットワークや端末だけに限られません。委託先、外部サービス、クラウドサービス、保守ベンダー、取引先との接続環境を通じて侵入されることもあります。こうした外部経由の侵入は、サプライチェーン攻撃としても知られています。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」でも、漏えい・侵害に第三者が関与する割合が増加していることが示されており、サプライチェーンリスクは企業規模を問わず無視できない課題になっています。

    たとえば、業務委託先が利用しているアカウントが侵害され、そのアカウントを使って自社環境へ不正アクセスされるケースがあります。また、外部保守用に開放していたリモート接続が攻撃者に悪用される場合や、取引先とのファイル共有環境を通じてマルウェアが持ち込まれる場合もあります。サプライチェーン経由の感染が厄介なのは、自社だけで完全に制御しにくい点です。自社のセキュリティ対策が一定水準に達していても、接続先や委託先の管理が甘ければ、そこが攻撃者にとっての入口になります。

    こうした外部経由の侵入は、サプライチェーン攻撃としても知られています。詳しくは以下の記事で解説しています。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    ランサムウェア対策としては、委託先との接続経路、付与している権限、共有している情報、外部アカウントの管理状況を定期的に見直す必要があります。外部委託先に対しても、多要素認証、アクセス権限の最小化、ログ取得、契約上のセキュリティ要件、インシデント発生時の連絡体制を確認しておくことが重要です。

    なぜ気づかず侵入されるのか

    ランサムウェア感染が深刻化する理由のひとつは、攻撃者が侵入してから暗号化を実行するまでに時間差があることです。企業側から見ると、ある日突然ファイルが暗号化されたように見えます。しかし実際には、その前に認証情報の窃取、社内探索、権限昇格、横展開、データ窃取といった活動が行われている場合があります。攻撃者が長く潜伏できる背景には、認証情報の管理不備があります。退職者や異動者のアカウントが残っている、管理者権限が過剰に付与されている、同じパスワードを複数システムで使い回している、多要素認証が導入されていない、といった状態では、攻撃者にとって侵入後の行動が容易になります。また、設定ミスも大きな問題です。RDPがインターネットに公開されている、VPN機器のファームウェアが古い、管理画面に外部からアクセスできる、不要なポートが開いている、ログが保存されていないといった状態は、攻撃者にとって有利に働きます。

    NIST(米国立情報技術研究所)NIST IR 8374 Rev.1「Ransomware Risk Management: A Cybersecurity Framework 2.0 Community Profile」では、ランサムウェアへの備えとして、識別、防御、検知、対応、復旧を含めた包括的なリスク管理の重要性が示されています。これは、ランサムウェア対策が単なるマルウェア対策ではなく、資産管理、アクセス制御、バックアップ、ログ監視、インシデント対応を含む経営課題であることを意味します。

    感染リスクを下げるための考え方

    ランサムウェアの感染リスクを下げるには、すべての対策を一度に完璧に実施しようとするのではなく、侵入されやすい場所から優先順位をつけて対策することが重要です。特に企業では、VPN機器、リモートデスクトップ、外部公開サーバ、メール、認証情報、委託先接続の順に確認すると、自社の弱点を見つけやすくなります。

    最初に行うべきことは、外部から見える資産の棚卸しです。どのVPN機器を使っているのか、RDPが外部公開されていないか、古いサーバや管理画面が残っていないか、クラウドサービスの管理者アカウントが適切に管理されているかを確認します。自社が把握していないシステムは、守ることも更新することもできません。次に、認証情報の保護を強化します。多要素認証の導入、不要アカウントの削除、管理者権限の最小化、パスワードの使い回し防止、ログイン試行の監視は、ランサムウェア対策の基本です。特にVPN、RDP、クラウド管理画面、メールアカウントには優先的に適用すべきです。さらに、脆弱性管理を継続的に行う必要があります。OSやソフトウェアの更新だけでなく、ネットワーク機器、VPN、ファイアウォール、NAS、ファイル転送システムなど、外部公開される可能性のある機器の脆弱性情報を確認し、リスクの高いものから修正します。バックアップも重要ですが、バックアップがあるだけでは十分ではありません。攻撃者にバックアップまで削除・暗号化されないよう、ネットワークから分離したバックアップや、復旧手順の確認が必要です。ランサムウェア対策では、感染を防ぐ対策と、感染した場合でも事業を止めない対策を組み合わせることが求められます。

    まとめ

    ランサムウェアの感染経路は、メールだけではありません。VPN機器の脆弱性、リモートデスクトップの悪用、ソフトウェアの未修正脆弱性、認証情報の窃取、設定ミス、委託先や外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃など、企業のさまざまな入口が狙われています。特に近年の企業向けランサムウェア攻撃では、攻撃者が事前に社内ネットワークへ侵入し、権限を広げ、データを盗み、最後に暗号化を実行する流れが一般化しています。そのため、ランサムウェア対策は「感染後にどう復旧するか」だけでなく、「どこから入られる可能性があるか」を把握し、侵入経路を減らすことから始める必要があります。

    企業がまず取り組むべきことは、自社の外部公開資産を把握し、VPNやRDPの設定を見直し、ソフトウェアの脆弱性を管理し、認証情報を守り、委託先との接続経路を確認することです。すべてを一度に完璧にする必要はありませんが、攻撃者にとって狙いやすい入口を放置し続けることは、ランサムウェア被害のリスクを高めます。ランサムウェアの感染経路を理解することは、対策の出発点です。自社のどこが侵入口になり得るのかを確認し、優先順位をつけて改善していくことが、企業のランサムウェア対策において最も現実的で効果的な第一歩になります。

    万が一感染してしまった場合の具体的な対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第2回:セキュリティインシデント発生時の対応 ─初動から復旧まで

    【参考情報】

    編集責任:木下


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    ゼロデイ脆弱性とは?最新事例と企業が取るべき対策を解説

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    ゼロデイ脆弱性は、修正パッチが提供される前に悪用される極めて危険な脆弱性です。ChromeやFirefox、VPN機器など、企業で日常的に利用される製品でも継続的に確認されており、情報漏えいや業務停止につながるケースもあります。本記事では、ゼロデイ脆弱性の基本的な仕組みや実際の被害事例、従来対策が通用しにくい理由を整理しながら、企業に求められる現実的な対策について解説します。

    ゼロデイ脆弱性が実際にどのように悪用されるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策

    本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。記載している脆弱性情報やCVE詳細は、公開後に内容が更新される場合があります。最新情報は各ベンダーおよびNVD・CISAの公式情報をご確認ください。

    はじめに

    ChromeやFirefoxなど、日常業務で広く使われている主要ブラウザでも、ゼロデイ脆弱性は繰り返し確認されています。ゼロデイ脆弱性とは、製品ベンダーや利用企業が十分な修正猶予を持てないまま悪用される、極めて危険度の高い脆弱性です。企業にとってゼロデイ脆弱性が厄介なのは、単に危険な脆弱性であるという点だけではありません。多くの場合、攻撃が確認された時点では、すでに悪用が始まっているか、修正パッチの適用が間に合っていない状態です。つまり、通常のパッチ管理や既知のマルウェア検知だけでは、防御が後手に回る可能性があります。 Webブラウザ、VPN機器、セキュリティ製品、業務アプリケーション、開発支援ツールなど、企業活動を支えるソフトウェアの多くは、常に外部との接点を持っています。そのため、ゼロデイ脆弱性は情報漏えい、業務停止、信用毀損、取引先への影響といったビジネスリスクに直結します。まず押さえたいのは、ゼロデイ脆弱性を悪用した攻撃に対し、完全に避けるのではなく、発生を前提に、侵入されにくく、侵入されても早期に検知し、被害を抑え込める体制を整えることです。

    ゼロデイ脆弱性とは何か

    ゼロデイ脆弱性とは、製品ベンダーや利用者がまだ十分に把握していない、または修正パッチが提供されていない脆弱性を指します。「ゼロデイ」という言葉は、攻撃者に悪用される可能性があるにもかかわらず、防御側に残された対応猶予が実質的にゼロ日であることに由来します。ここで整理しておきたいのが、「脆弱性」と「攻撃」は同じものではないという点です。脆弱性は、ソフトウェアやシステムに存在するセキュリティ上の欠陥です。一方で、ゼロデイ攻撃は、その未知または未修正の欠陥を悪用して、情報の窃取、権限昇格、不正コード実行、システム侵入などを行う攻撃行為を指します。NIST(米国立標準技術研究所)では、ゼロデイ攻撃を「これまで知られていなかったハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアの脆弱性を悪用する攻撃」と定義しています。

    たとえば、あるブラウザに不正なHTMLページを処理した際に任意のコード実行につながる欠陥があったとします。その欠陥自体がゼロデイ脆弱性であり、攻撃者が細工したWebページへ利用者を誘導して実際に悪用すれば、それがゼロデイ攻撃になります。CVEはこうした脆弱性を識別するための共通番号であり、NVD(米国国立脆弱性データベース)ではCVEプログラムについて、「特定のコードベースで確認された脆弱性を参照するための辞書、または用語集のような仕組みだ」と説明しています。

    なぜゼロデイ脆弱性は危険なのか

    ゼロデイ脆弱性が危険視される最大の理由は、修正パッチが存在しない、または広く適用される前に攻撃が始まることです。一般的な脆弱性対応では、ベンダーが脆弱性情報を公開し、修正パッチを提供し、企業が影響範囲を確認して適用するという流れになります。しかしゼロデイの場合、この順番が崩れます。攻撃者が先に脆弱性を把握し、攻撃に利用してから、ベンダーや利用者が気づくことがあるためです。もう一つの問題は、従来型のシグネチャ検知が効きにくいことです。シグネチャ型のセキュリティ対策は、既知のマルウェアや既知の攻撃パターンを検出するうえでは有効です。しかし、まだ十分に解析されていない攻撃コードや、新しい悪用手法に対しては、検知が遅れる可能性があります。NISTの関連文献でも、「ゼロデイ攻撃は未知の脆弱性を悪用するため従来のシグネチャ型検知では事前に攻撃シグネチャを用意できず有効性に限界がある*1」とされています。

    ゼロデイ攻撃は、標的型攻撃にも使われやすい傾向があります。攻撃者にとって、未修正の脆弱性は価値の高い侵入口です。特に、ブラウザ、VPN、ファイアウォール、メールサーバ、リモートアクセス製品、エンドポイント管理製品などは、企業ネットワークの入口や重要な業務環境とつながっているため、攻撃が成功した場合の影響が大きくなります。 ビジネス面では、ゼロデイ脆弱性の悪用は情報漏えい、業務停止、顧客対応コストの増加、監督官庁や取引先への報告、ブランド信用の低下などに発展します。攻撃の起点が一台の端末や一つのWebアクセスであっても、その後に認証情報の窃取、横展開、機密情報の持ち出しが行われれば、被害は組織全体へ拡大します。

    実際の被害事例

    Google Chromeで相次いだゼロデイ脆弱性

    ゼロデイ脆弱性の代表的な事例として、Google Chromeの脆弱性が挙げられます。Chromeは多くの企業で標準ブラウザとして利用されており、Webメール、SaaS、業務システム、クラウド管理画面などへのアクセスにも使われています。そのため、Chromeのゼロデイ脆弱性は、単なる個人利用者向けブラウザの問題ではなく、企業の業務端末リスクとして捉える必要があります。

    2025年には、Chromeで悪用が確認されたゼロデイ脆弱性が複数回修正されました。BleepingComputerでは、2025年から2026年にかけてChromeは複数のゼロデイ脆弱性を修正したと報じています*2。2026年2月には、CVE-2026-2441が修正されました。NVDによれば、この脆弱性はChromeのCSSにおけるUse After Free(解放済メモリの再利用)の問題であり、 Google Chrome 145.0.7632.75より前のバージョンでは、細工されたHTMLページを介してリモート攻撃者がサンドボックス内で任意のコードを実行できる可能性がありました。GoogleのChrome Releasesでも、この脆弱性について「実際に悪用が確認されている」旨が記載されています。2026年3月には、CVE-2026-3909CVE-2026-3910が修正されました。CVE-2026-3909は「Skia(Chromeが使用するグラフィック処理ライブラリ)における境界外の書き込み」で、細工されたHTMLページを介して境界外メモリアクセスにつながる可能性があります。CVE-2026-3910は「V8(ChromeのJavaScript実行エンジン)における不適切な実装」で、細工されたHTMLページを介してサンドボックス内で任意のコード実行が可能となるおそれがありました。GoogleはCVE-2026-3910について、「実際に悪用が確認されている」と公表しています。また、2026年3月末にはCVE-2026-5281も修正されています。NVDによれば、これはChromeのDawnにおける解放済メモリの再利用の脆弱性で、レンダラープロセスが侵害された状態で、細工されたHTMLページを通じて任意のコード実行につながる可能性があるものです。Googleはこの脆弱性についても、「実際に悪用が確認されている」と公表しています。

    これらの事例が示しているのは、Webブラウザが単なる閲覧ツールではなく、企業ネットワークへの入口になり得るということです。利用者が業務中にWebサイトを閲覧する、SaaSへアクセスする、メール内のリンクを開くといった日常的な操作が、ゼロデイ攻撃のきっかけになる可能性があります。

    OpenAI Codexに関するサンドボックス迂回の事例

    近年は、開発支援ツールやAI関連ツールもゼロデイリスクの対象になっています。Zero Day Initiativeは2026年4月、OpenAI Codexに関するZDI-26-305を公開しました*3。この脆弱性は、影響を受けるOpenAI Codex環境においてサンドボックスを迂回できる可能性があるものとされ、攻撃には、「標的ユーザーが悪意あるJavaScriptを含むリポジトリをCodexで処理する必要がある」と説明されています。OpenAI Codex CLIでは2025年にも、サンドボックス設定ロジックの問題により、意図したワークスペース境界を迂回し、Codexプロセスが権限を持つ範囲で任意のファイル書き込みやコマンド実行につながる可能性がある脆弱性が、GitHub Security Advisoryで公開されています*4。この問題はCodex CLI 0.39.0で修正され、利用者には更新が推奨されています。

    この事例から分かるのは、ゼロデイ脆弱性がOSやブラウザだけの問題ではないということです。開発者が利用するCLIツール、AIエージェント、コード生成支援ツール、CI/CD環境も、企業の重要な攻撃面になりつつあります。特に、ソースコード、認証情報、クラウド設定、APIキーにアクセスする可能性があるツールでは、サンドボックスや権限管理を過信しない運用が必要です。

    ゼロデイ攻撃の仕組み

    ゼロデイ攻撃の流れ概要図

    ※ゼロデイ攻撃では、脆弱性公開前や修正前に攻撃が始まるため、従来型のシグネチャ検知だけでは防御が難しい場合があります。

    ゼロデイ攻撃は、脆弱性の発見から攻撃実行までが非常に速い場合があります。攻撃者は、ソフトウェアの不具合を独自に発見することもあれば、脆弱性情報が闇市場や限定的なコミュニティで売買されることもあります。その後、攻撃者はその脆弱性を悪用するエクスプロイトコードを作成し、標的組織に対して攻撃を実行します。まず、未公開または未修正の脆弱性が発見されるところから始まります。次に、その脆弱性を悪用するための攻撃コードが作成されます。ブラウザの脆弱性であれば、細工されたHTMLページやJavaScriptが使われることがあります。VPNや外部公開サーバの脆弱性であれば、インターネット越しに直接攻撃が行われることもあります。攻撃が成功すると、攻撃者は端末やサーバへ侵入し、認証情報の取得、権限昇格、内部ネットワークへの横展開を試みます。その後、機密情報の収集、データの持ち出し、ランサムウェアの展開、バックドア設置などへ進む可能性があります。

    ゼロデイ攻撃の基本的な仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策

    従来対策が通用しない理由

    ゼロデイ脆弱性への対応で難しいのは、従来のセキュリティ対策が必ずしも十分に機能しないことです。もちろん、ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、パッチ管理、メールセキュリティ、URLフィルタリングといった対策は今でも重要です。しかし、ゼロデイ攻撃では、これらをすり抜ける可能性があります。シグネチャ型対策は、既知の攻撃には強い一方で、未知の攻撃には限界があります。攻撃コードが新しく、まだ検体や攻撃パターンが共有されていない場合、検知ルールが存在しないことがあります。さらに、攻撃者は正規のWeb通信、正規のプロセス、正規の認証情報を利用して侵入後の活動を行うため、外形上は通常の業務通信に見えることもあります。また、境界防御だけに依存した対策では対応が難しいケースも増えています。クラウドサービスやリモートワークの拡大により、従来の「社内は安全」という前提だけでは、ゼロデイ攻撃のような未知の脅威への対応が難しくなっています。ゼロデイ攻撃では、社内端末、クラウドアカウント、開発端末、外部公開資産のどこからでも侵入口が生まれる可能性があります。

    ゼロトラストの考え方を含め、従来型セキュリティ対策の課題については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
    ゼロトラストセキュリティ -今、必須のセキュリティモデルとそのポイント-

    ゼロデイ脆弱性への対策

    ゼロデイ脆弱性への対策では、未知の攻撃を完全に防ぐことだけでなく、侵入後の被害を最小限に抑えるアプローチが重要です。ゼロトラストに基づく権限管理や多要素認証に加え、EDRやXDRによる侵入後の検知、ASMによる攻撃面の把握、SOCによる継続監視などを組み合わせた多層的な対策が求められます。

    ゼロデイ攻撃対策を支援するBBSecのアプローチ

    ゼロデイ攻撃へ備えるには「脆弱性情報を知ること」だけでなく、「自社がどの製品を利用しているのか」「どこが外部公開されているのか」を知ることで自社環境への影響を迅速に把握し、継続的に監視・対応できる体制を持つことが重要になります。

    ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、EDR-MSSによる侵入後の検知・対応、G-MDRによる高度な脅威分析、ASMによる攻撃面の可視化を通じて、企業のゼロデイ対策を支援しています。ゼロデイ脆弱性への備えを強化したい方は、以下のサービスページもあわせてご覧ください。

    ASM(アタックサーフェス管理)の考え方や、攻撃面を継続的に把握する重要性については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
    脆弱性管理とIT資産管理 -サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

    まとめ

    ゼロデイ脆弱性は、主要ブラウザやVPN機器、業務ソフトウェアなど、企業が利用するさまざまな環境で発生する可能性があります。ゼロデイ攻撃による被害を抑えるためには、パッチ管理だけでなく、ゼロトラストに基づく権限管理、EDRやXDRによる侵入後の検知、ASMによる攻撃面の把握、SOCによる継続監視などを組み合わせた多層的な対策が求められます。

    【参考情報】


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    脆弱性対応とは?CVE対応とパッチ管理の実務フロー

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    脆弱性対応は、企業の情報システムを守るうえで避けて通れない業務です。新しい脆弱性は日々公開されており、それらの一部は実際に攻撃へ悪用されています。問題は、脆弱性の存在そのものではなく、自社に影響する脆弱性を見極められず、対応が遅れることです。脆弱性への初動が遅れれば、情報漏洩、業務停止、ランサムウェア感染など、企業活動に直結する被害へ発展しかねません。だからこそ、脆弱性対応は単なるパッチ適用ではなく、情報収集、影響調査、優先順位付け、修正、再確認までを含めた一連の実務として捉える必要があります。

    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)は、脆弱性対応を含むvulnerability management(脆弱性管理)の目的を、脆弱性や悪用可能な状態の発生頻度と影響を減らすことだと整理しています。

    企業の脆弱性管理については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順

    脆弱性対応とは

    脆弱性対応とは、公開された脆弱性情報や自社で発見した弱点に対して、自社システムへの影響を調査し、必要な対策を選び、修正し、修正後の状態を確認する一連の対応を指します。ここで重要なのは、脆弱性対応が「脆弱性があるからすぐパッチを当てる」という単純な作業ではないことです。実務では、対象資産の把握、公開有無、業務影響、代替策の有無、停止可能時間、クラウドやOSSへの影響などを考慮しながら判断します。NISTも、パッチ管理を「パッチ、更新、アップグレードを識別し、優先順位を付け、取得し、適用し、その適用を確認するプロセス」と定義しており、単純な更新作業ではなく管理プロセスそのものとして扱っています。

    脆弱性対応が重要視される理由のひとつは、公開された脆弱性の一部が現実に悪用されているからです。CISAは「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」で、実際に悪用が確認された脆弱性を定期的に公開しています。つまり企業に求められるのは、脆弱性情報を収集することだけではなく、「どれが今まさに危険なのか」「自社に関係するのか」を見極めて動くことです。脆弱性対応とは、攻撃の入口になりうる弱点を、優先順位をつけて現実的に潰していく運用だといえます。

    CVEとは

    脆弱性対応を進めるうえで、まず押さえておきたいのがCVEです。CVEはCommon Vulnerabilities and Exposuresの略で、公開された脆弱性や露出情報に対して一意の識別子を付ける仕組みです。米MITREはCVE Programの役割を、公開されたサイバーセキュリティ上の脆弱性を識別し、定義し、整理することだと説明しています。

    また、NVD(米国国立脆弱性データベース)でもCVEを特定の製品やコードベースに対して識別された脆弱性の辞書・用語集として扱っています。つまりCVEは、世界中のベンダー、研究者、利用企業が同じ脆弱性を同じ名前で参照するための共通言語です。脆弱性対応を行う際には、まず対象となる脆弱性情報を正確に把握することが重要です。多くの脆弱性は CVE識別番号で管理されています。

    CVEは世界中で共有される脆弱性情報の共通IDであり、企業のセキュリティ対策において重要な役割を果たします。CVEの仕組みや意味については、以下の記事で詳しく解説しています。
    CVEとは?共通脆弱性識別子の基本と管理方法を徹底解説

    実務では、CVE識別番号だけを見て終わりではありません。CVEは「何の脆弱性か」を特定するためのIDであり、深刻度や攻撃条件、自社への影響を判断するには、NVDやベンダーアドバイザリ、製品別のセキュリティ情報をあわせて確認する必要があります。NVDはCVEに対してCVSSなどの標準化データを付与し、脆弱性管理や自動化に使える情報を提供しています。そのため企業の脆弱性対応では、「まずCVEを把握し、次にNVDやベンダー情報で内容を確認し、自社資産と突き合わせる」という流れが基本になります。

    CVSSスコアの見方

    CVEを把握したあとに多くの担当者が見るのがCVSSスコアです。CVSSはCommon Vulnerability Scoring Systemの略で、脆弱性の深刻度を定性的・数値的に表すための標準的な指標です。NVDはCVSSについて、「脆弱性の重大度を示すための方法であり、リスクそのものを示すものではない」と明確に説明しています。つまり、CVSSが高いから必ず最優先、低いから後回しでよい、とは限りません。CVSSを確認するときは、まず「スコアの高さ」よりも「どういう条件で悪用されるか」に注目したほうが有効です。たとえば、ネットワーク経由で認証不要の攻撃が可能なのか、ローカル権限が必要なのか、ユーザ操作を伴うのかによって、現実の危険度は大きく変わります。

    また同じCVSSでも、インターネットに公開された機器にある脆弱性と、閉域環境の限定的なシステムにある脆弱性では、優先度は異なります。NVDはCVSSv4.0をサポートしており*5、従来よりもきめ細かな評価が可能になっていますが、それでも「深刻度」と「自社のリスク」は同一ではありません。 実際の脆弱性対応では、CVSSに加えて、公開状態、資産の重要度、業務影響、既存の緩和策、そして実悪用の有無まで見て判断する必要があります。特に、CISAのKEVカタログに掲載された脆弱性は、すでに悪用が確認されているという意味で、単なる理論上の脆弱性より一段重く扱うべきです。CVSSは脆弱性対応の出発点として有用ですが、最終判断は必ず自社環境に引きつけて行う必要があります。

    脆弱性対応の手順

    脆弱性対応の実務フローは、一般的に以下の流れで進みます。

    1. 脆弱性情報の収集
    2. 影響調査
    3. 優先順位決定
    4. パッチ適用
    5. 再確認

    まずに必要なのは、脆弱性情報を取りこぼさないことです。CVE、NVD、ベンダーのセキュリティアドバイザリ、クラウドベンダーの通知、CISAのKEVなどを継続的に確認し、自社に関係する情報を早めに捉える必要があります。CISAは、KEV Catalogを確認し、掲載された脆弱性の修正を優先することを強く推奨しています。

    次に行うのが影響調査です。ここで重要になるのは、自社がどの資産を保有し、どのソフトウェアやクラウドサービスを利用しているかを把握していることです。脆弱性情報が公開されても、自社に対象製品があるかどうか分からなければ、対応そのものが始まりません。特にクラウド環境では、OSやミドルウェアだけでなく、コンテナイメージ、マネージドサービスの設定、アクセス権限なども確認対象になります。クラウドでは共有責任モデルが採用されており、利用企業が管理すべき範囲は依然として広く残ります。

    三つ目は優先順位決定です。ここではCVSSだけでなく、インターネット公開の有無、認証要否、既知の悪用状況、業務停止時の影響、代替策の有無を踏まえて判断します。たとえば、CVSSが高くても外部到達性がなく緩和策が効いているものより、CVSSがそこまで高くなくても既知悪用されている公開資産の脆弱性のほうが先に対処すべき場合があります。NISTのパッチ管理ガイドでも、識別だけでなく優先順位付けと検証まで含めてプロセスとして扱うことが示されています。

    その後に実施するのが修正です。多くの場合はパッチ適用やバージョン更新になりますが、常にそれだけではありません。ベンダー修正がまだ出ていない場合や、即時適用が難しい場合には、設定変更、アクセス制限、機能停止、ネットワーク分離、WAFやEDRなどによる補完策を検討する必要があります。CISAも、回避策はあくまで暫定手段であり、公式パッチが利用可能になったら移行するのが望ましいと案内しています。

    最後に必要なのが再確認です。パッチを適用したつもりでも、適用漏れ、再起動未実施、対象誤認、別系統サーバーの取り残しなどは珍しくありません。NISTはパッチ管理の定義の中に「検証」を含めています。つまり脆弱性対応は、適用作業で終わりではなく、修正が有効に反映され、サービスへの悪影響がないことまで確かめて完了します。

    クラウド環境では、OSやミドルウェアの更新だけでなく、クラウドサービスの設定やコンテナイメージの更新なども脆弱性対応に含まれます。また、近年はOSSライブラリに含まれる脆弱性が問題となるケースも増えています。SBOMを利用することで、自社システムに影響するOSS脆弱性を迅速に特定できます。NTIA(米国商務省電気通信情報局National Telecommunications and Information Administration)はSBOMを「ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録」と説明しています。ただし、公開されている脆弱性情報だけでは、自社のシステムにどの脆弱性が存在するのかを完全に把握することはできません。そのため多くの企業では、脆弱性スキャンツールや脆弱性診断を用いてシステムの安全性を確認します。

    脆弱性スキャンの仕組みや診断方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント

    パッチ管理のベストプラクティス

    パッチ管理のベストプラクティスを考えるうえで大切なのは、パッチ適用を場当たり的な更新作業にしないことです。NISTはenterprise patch management(エンタープライズ向けパッチ管理)を、識別、優先順位付け、取得、適用、検証までを含むプロセスとして定義しています。この考え方に沿うなら、ベストプラクティスとは「早く当てること」だけではなく、「誰が、何を、どの順で、どこまで確認して実施するか」を事前に決めておくことになります。

    まず重要なのは、資産台帳とパッチ対象の対応関係を明確にしておくことです。対象サーバー、業務端末、ネットワーク機器、クラウド上のワークロード、仮想マシン、コンテナイメージなどが整理されていなければ、どこにパッチを適用すべきか判断できません。NISTの実装ガイドでも、日常時と緊急時の両方に対応するには、資産把握とパッチ適用の仕組みが必要だと示されています。

    次に欠かせないのが、テストと本番適用の切り分けです。重大な脆弱性だからといって、影響の大きい基幹系に無検証で更新をかけるのは危険です。一方で、テストに時間をかけすぎて攻撃されるのも問題です。したがって実務では、対象の重要度や公開状況に応じて、緊急パッチ、通常パッチ、代替策併用のように運用レベルを分ける設計が現実的です。CISAの資料でも、パッチ管理計画、テスト、バックアップ、ロールバックを含めた準備の重要性が示されています。

    さらに、近年のパッチ管理ではOSSライブラリの更新管理が欠かせません。アプリケーション本体に問題がなくても、依存するライブラリやフレームワークに脆弱性があれば、そのままリスクになります。そこで有効なのがSCAやSBOMです。SBOMによって依存関係を把握しておけば、新たなCVEが出た際にも、どのアプリケーションに影響するかを迅速に調べやすくなります。これは、パッチ管理の対象をOSやミドルウェアだけでなく、ソフトウェア部品レベルまで広げるための実務的な方法です。

    企業の脆弱性対応の失敗例

    企業の脆弱性対応が失敗する典型例は、脆弱性情報を見ているのに、自社への影響確認ができないケースです。CVEを把握しても、対象製品のバージョンや設置場所、外部公開状況が分からなければ、優先順位も対策方針も決められません。結果として、「あとで確認しよう」と先送りされ、実際に攻撃が始まった時点で慌てて対応することになります。CISAがKEVカタログを継続公開しているのは、こうした遅れが実被害につながりやすいからです。

    もうひとつ多いのは、CVSSスコアだけで機械的に対応順を決める失敗です。CVSSは重要な指標ですが、NVDでは「CVSSはリスクではない」と説明しています*2。にもかかわらず、スコアの高さだけで判断すると、公開サーバー上で悪用が進む脆弱性より、閉域環境の理論上危険な脆弱性を優先してしまうことがあります。脆弱性対応では、深刻度、公開状態、悪用実績、業務影響を合わせて考える必要があります。

    さらに、パッチを当てて終わりにしてしまうのも典型的な失敗です。適用漏れ、再起動忘れ、周辺システムの未更新、検証不足による障害発生などは珍しくありません。NISTがパッチ管理に「検証」を含めているのは、こうした現実があるからです。脆弱性対応は、修正したことを確認し、その結果を記録し、次回に再利用できる形で残して初めて組織の知見になります。

    脆弱性管理との違い

    脆弱性対応と脆弱性管理は、似ているようで役割が異なります。脆弱性対応は、個別の脆弱性が見つかったときに、影響を調べ、優先順位を付け、修正する実務です。一方の脆弱性管理は、その対応を継続的に回すための全体運用を指します。CISAが脆弱性管理を「脆弱性や悪用可能な状態の発生頻度と影響を減らすための活動」として示しているように、脆弱性管理は発見、評価、是正、確認を繰り返す仕組み全体です。脆弱性対応は、その中の重要な一工程だと考えると整理しやすくなります。

    つまり、脆弱性対応は個別事案へのアクションであり、脆弱性管理はそれを支える土台です。資産台帳、情報収集ルール、優先順位基準、パッチ管理フロー、検証体制、記録・改善の仕組みが整っていなければ、脆弱性対応は属人的になり、毎回判断がぶれます。逆に、脆弱性管理が機能していれば、新しいCVEが出ても落ち着いて影響確認と対応判断を進めやすくなります。

    IT資産管理と脆弱性管理の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とIT資産管理 -サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

    まとめ

    脆弱性対応とは、CVE情報を確認して終わることでも、パッチを当てて終わることでもありません。脆弱性情報を収集し、自社への影響を調べ、CVSSや悪用状況、業務影響を踏まえて優先順位を決め、修正し、最後に再確認するまでが一連の流れです。特に、実悪用が確認された脆弱性を優先する視点、クラウドやOSSを含めて影響を判断する視点、SBOMやSCAを活用して依存関係を見える化する視点は、今の企業実務では欠かせません。

    脆弱性対応を強くするには、単発の対応力ではなく、継続的に判断と是正を回せる仕組みが必要です。CVEを読む力、CVSSを鵜呑みにしない判断力、資産を把握する力、そしてパッチ管理を確実にやりきる運用力がそろって初めて、企業の脆弱性対応は実効性を持ちます。検索流入で「脆弱性対応」「CVE対応」「パッチ管理」を調べている担当者にとって重要なのは、知識だけでなく、明日から自社でどう動くかが見えることです。本記事がその整理の起点になれば幸いです。

    【参考情報】


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    本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理しました。次回、5月20日(水)14時からの開催のウェビナーでは、AssetViewFutureVulsのメーカーが登壇し、各領域の役割をどのように整理し、どのように連携させれば実効性ある脆弱性管理が実現できるのか、解説します。脆弱性管理の考え方について深くを理解されたい方は、ぜひご参加ください。

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    サイバー攻撃に対する備えとして、BBSecが提供する、SQAT脆弱性診断サービスでは、攻撃者の侵入を許す脆弱性の存在が見逃されていないかどうかを定期的に確認することができます。自組織の状態を知り、適切な脆弱性対策をすることが重要です。

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    編集責任:木下

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    情報漏洩対策とは何か ―企業が知るべき原因・リスク・防止策の全体像―

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    情報漏洩対策は、単にウイルス対策ソフトを入れたり、アクセス制限を強めたりするだけでは不十分で、「何が漏れるのか」「なぜ起きるのか」「起きたときに何が起きるのか」「どう防ぐのか」を分けて整理することが重要です。なぜならば、実際の情報漏洩は不正アクセスのような外部からの攻撃だけでなく、誤送信や設定不備、委託先での事故など、日常業務の延長線上で発生することが少なくないためです。

    個人情報保護委員会は、漏えい等事案への対応体制の整備や定期的な点検、見直しの必要性を示しており、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)でも企業の情報セキュリティ対策を経営課題として継続的に進める必要があるとしています。本記事では、情報漏洩対策の全体像や基本的な考え方について整理します。

    情報漏洩がなぜ起きるのか、実際の原因や事例については以下の記事で詳しく解説しています。
    情報漏洩はなぜ起きるのか ―企業で多い原因と最新事例から見るリスクの実態―

    情報漏洩とは何か

    情報漏洩とは、本来アクセス権限を持たない第三者に、企業が保有する情報が意図せず、あるいは不正に渡ってしまうことを指します。ここでいう情報には、顧客情報や従業員情報のような個人情報だけでなく、営業秘密、契約情報、設計情報、認証情報、メール本文、取引先とのやり取り、さらにはクラウド上で扱う業務データまで含まれます。

    個人情報保護委員会が公表している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」でも、個人データの漏えい等を防ぐために安全かつ適切な管理措置を講じるための内容が示されており、企業にとって情報漏洩は法務、経営、現場運用のすべてに関わる問題です。

    近年、情報漏洩がより起こりやすくなっている背景には、業務のデジタル化が急速に進んだことがあります。クラウドサービスやSaaSの利用拡大により、データは社内サーバだけでなく外部環境にも分散して保存・共有されるようになりました。その結果、設定不備や共有範囲の誤りが事故の起点になる場面が増えています。

    さらに、委託先や外部サービスを含めたサプライチェーン全体で情報を扱うことが当たり前になり、自社だけを守っていればよい時代ではなくなっています。経済産業省でも国内外のサプライチェーンでつながる関係者への目配りの必要性を明記しており、IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」でもサプライチェーンや委託先を狙った攻撃が上位に挙げられています。

    情報漏洩が企業に与える影響

    情報漏洩が起きた企業に生じる大きな影響は以下のとおりです。

    信用低下

    まず生じるのは、信用の低下です。漏洩した情報の件数や内容だけでなく、「管理が甘い企業ではないか」「再発防止ができるのか」といった不信感が、顧客や取引先、株主、採用候補者にまで広がります。情報セキュリティ事故は単発のITトラブルではなく、企業の信頼基盤そのものを揺るがす経営リスクとして扱う必要があります。経済産業省およびIPAが公開している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」でもサイバーリスクを経営者が主導して把握し、組織的に対処すべき課題として位置付けています。

    損害賠償・対応コストの増大

    漏洩の可能性が判明した後には、事実関係の調査、影響範囲の特定、本人通知、関係機関への報告、公表、問い合わせ対応、再発防止策の策定など、多くの業務が短期間に発生します。個人情報保護委員会のガイドラインでも、漏えい等事案の発生時には、調査、本人通知、報告、再発防止策の決定、公表などを行う体制をあらかじめ整備しておくことが求められています。つまり、情報漏洩対策は事故後のためにも必要であり、平時の備えが不十分だと、事故後の負担はさらに重くなります。

    事業停止の可能性

    さらに、情報漏洩は事業停止リスクにも直結します。不正アクセスやランサムウェア攻撃を伴うケースでは、単なる情報流出にとどまらず、システム停止や業務遅延、取引停止が同時に発生することがあります。

    JPCERT/CCが2021年11月に公開した資料「経営リスクと情報セキュリティ  ~ CSIRT:緊急対応体制が必要な理由 ~」の中で、インシデント発生時には対処方針の決定、問題解決、収束、再発防止の分析、教育啓発までを含めた緊急対応体制が必要であると整理しています。情報漏洩は「漏れたら終わり」ではなく、「漏れた瞬間から事業継続の問題になる」という視点が重要です。

    情報漏洩による影響や損失の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
    サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化

    情報漏洩が起きる主な原因

    情報漏洩の原因として最も見落とされやすいのが、人的ミスです。宛先の誤送信、ファイルの添付ミス、書類の紛失、権限設定の誤り、持ち出しルール違反などは、特別な攻撃を受けなくても起こります。個人情報保護委員会の年次報告でも、書類の誤交付や紛失、誤送付といった事案が多く見られるとされています。情報漏洩という言葉から外部攻撃を想像しがちですが、実務では人の確認不足やルール運用の甘さが起点になる事故が依然として多いのが実態です。

    一方で、近年無視できないのが不正アクセスによる情報漏洩です。個人情報保護法サイバーセキュリティ連絡会が公表した資料「不正アクセス発生時のフォレンジック調査の有効活用に向けた着眼点」(令和8年1月16日)でも、不正アクセス被害は近年多発しており、同委員会が受け付ける不正アクセスによる漏えい等報告件数も増加していると明記しています。また、「令和6年度個人情報保護委員会 年次報告」では、SaaS事業者への不正アクセスが多数の利用企業に影響した事案の影響も含まれるものの、不正アクセス由来の報告件数が大きく増えたことが示されています。この点は、企業が自社環境だけでなく、利用中のサービスや委託先のセキュリティ状況も確認しなければならないことを意味します。

    さらに、委託先やサプライチェーン経由の漏洩リスクも大きくなっています。自社では適切に管理していても、外部ベンダー、運用委託先、クラウドサービス事業者、グループ会社のいずれかに弱点があれば、そこが侵入口になります。

    情報漏洩がなぜ起きるのか、実際の原因や事例については以下の記事で詳しく解説しています。
    情報漏洩はなぜ起きるのか ―企業で多い原因と最新事例から見るリスクの実態―

    委託先や外部サービスを経由したリスクについては、サプライチェーン攻撃の記事も参考になります。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    企業が取るべき情報漏洩対策

    企業の情報漏洩対策は、技術対策、運用対策、組織・体制整備の三層で考えると整理しやすくなります。

    技術対策

    アクセス制御、認証強化、ログ取得、暗号化、端末管理、バックアップ、脆弱性対応などが含まれます。ただし、技術対策だけでは事故を防ぎきれません。たとえばアクセス制御の仕組みがあっても、権限付与の運用が曖昧であれば過剰権限が残り、ログを取っていても見直されなければ不審な操作に気付けません。

    運用対策

    運用対策として重要なのは、ルールを定めることではなく、現場で守られる状態をつくることです。個人情報保護委員会は、安全管理措置として、組織的、人的、物理的、技術的な観点での対応を示しています。これは裏を返せば、教育や承認手続、持ち出し管理、点検、監査、見直しまで含めて初めて情報漏洩対策になるということです。従業員教育を年一回実施しただけで対策済みとは言えず、権限棚卸しやルールの実効性確認が継続して回っているかが問われます。

    組織・体制整備

    事故が起きたときに誰が判断し、誰が調査し、誰が報告し、誰が公表を担うのかを曖昧にしないことも重要です。個人情報保護委員会のガイドラインは、漏えい等事案の発生時に備えた報告連絡体制や対応体制の整備を求めています。また、JPCERT/CCは、緊急対応、分析、普及啓発、注意喚起、演習を含めた機能の必要性を示しています。情報漏洩対策は、製品導入の話ではなく、事故前提で回る組織づくりの話でもあります。

    具体的な情報漏洩対策や運用のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    企業の情報漏洩対策 ―すぐに実践できる防止策と運用のポイント―

    まず何から始めるべきか

    情報漏洩対策を強化したい企業が最初にやるべきことは、新しいツールを入れることではなく、「現状把握」です。どの情報を、どこで、誰が、何の目的で扱っているのかが見えていなければ、守るべき対象も優先順位も定まりません。

    IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、情報資産を洗い出し、台帳化し、重要度に応じて管理することが実践の出発点として示されています。情報漏洩対策は、漠然とした不安に対して製品を足していくのではなく、自社の重要情報と業務フローを見える化するところから始めるべきです。さらにそのうえで、優先順位付けも必要になります。すべてを同じ強さで守るのではなく、情報漏洩時の影響が大きい情報、外部共有が多い情報、委託先を含めて扱われる情報、インターネット経由でアクセスされる情報から順に見直すほうが実務的です。また、「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」でも、リスクの識別と変化に応じた見直しの重要性が示されています。情報漏洩対策は一度整えたら終わりではなく、事業環境や利用サービスの変化に応じて見直し続ける運用そのものが重要です。

    どの対策を優先すべきかについては、脆弱性管理の考え方が重要になります。以下の記事もあわせてぜひご覧ください。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

    まとめ

    情報漏洩対策とは、個人情報や機密情報が外部に漏れるのを防ぐための技術、運用、組織的な取り組み全体を指します。実際の情報漏洩は、人的ミス、不正アクセス、設定不備、委託先事故など複数の原因で発生し、企業には信用低下、対応コスト増大、事業停止といった深刻な影響をもたらします。だからこそ、企業は「攻撃を防ぐ」だけでなく、「漏れてしまう前提で備える」視点を持たなければなりません。重要なのは、守るべき情報を把握し、優先順位を付け、技術対策と運用対策と体制整備を一体で進めることです。公的ガイドラインでも、体制整備、点検、監査、教育、報告連絡体制の重要性が繰り返し示されています。情報漏洩対策は、担当者任せの部分最適ではなく、企業全体で継続的に回すべき経営課題です。

    具体的な情報漏洩対策や運用のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    企業の情報漏洩対策 ―すぐに実践できる防止策と運用のポイント―

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    IPA情報セキュリティ10大脅威2026にみる、AI時代のサイバーリスク

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    「IPA情報セキュリティ10大脅威 2026に見る、AI時代のサイバーリスク」アイキャッチ画像

    近年、生成AIをはじめとするAI技術の進展により、組織におけるAIの活用は急速に広がっています。本記事では、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」の内容をもとに、AIの利用をめぐるサイバーリスクについて整理するとともに、企業に求められる対応の方向性について解説します。

    IPA「情報セキュリティ10大脅威」速報版の記事はこちら。「AIの利用をめぐるサイバーリスク」以外の脅威の項目についても知りたい方は、こちらもぜひあわせてご覧ください。
    【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2026 -脅威と対策を解説-

    はじめに

    業務効率の向上や新たな価値創出の手段として、多くの企業がAIの導入を進めています。一方でAI利用に伴うリスクについても、十分な注意が求められています。こうした状況を反映して、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」という脅威が初めてランクインし、3位に位置付けられました。

    なぜいま「AIの利用」が脅威として注目されるのか

    IPA「情報セキュリティ10大脅威」は、前年に発生した社会的影響の大きい事案等をもとに選定されたものであり、順位は単純に危険度の高さを示すものではありません。しかし、AI利用に関するリスクが新たに選出されたことは、企業や組織におけるAI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえるでしょう。

    2026年3月12日に公開された、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書では、AIは有用なツールである一方で、十分な理解がないまま利用した場合、情報漏洩や権利侵害といった問題につながる可能性があると指摘されています。特に、生成AIへの入力内容が外部に取り扱われることによる機密情報の漏洩や、生成された情報の正確性を確認せずに業務に利用することによって発生するトラブルなど、従来の情報システム利用とは異なる観点でのリスクが挙げられています。 また、AIは利用者の裾野が広く、専門的な知識がなくても活用できるという特性を持っています。そのため、組織として利用状況を把握しきれないまま、個人単位で業務利用が進むケースも想定されます。このような利用形態は、管理の行き届かないリスク、いわゆるシャドーITに類似した問題を引き起こす可能性があります。

    AI利用をめぐる主なリスク

    IPAはAIの利用拡大に伴い、いくつかの代表的なリスクが指摘しています。これらは、AIの技術そのものというよりも、その利用方法や特性に起因するものが多い点が特徴です。

    • 情報漏洩リスク
    • 誤情報生成リスク(ハルシネーション)
    • サイバー攻撃の高度化リスク
    • 利用実態の把握困難(シャドーAI)
    • 権利侵害リスク

    生成AIへの入力内容に起因する情報漏洩

    クラウドサービスとして提供されるAIに対し、機密情報を入力することで、意図せず外部に情報が送信される可能性があるというリスクです。

    AIの出力結果に関するリスク

    対話型AIは実在しない情報を生成する(=ハルシネーション)場合があり、このことを十分に理解せずに利用すると、誤った判断や誤情報発信につながるおそれがあります。

    AIの悪用によるサイバー攻撃の高度化

    AIを活用することで、攻撃の効率化や手口の巧妙化が進む可能性があります。さらに、組織における利用実態の把握が難しい点も重要なリスクです。

    シャドーAIのリスク

    個人単位でAIサービスを利用されてしまうことで、組織の目の届かない範囲での利用が発生する可能性があります。

    著作権侵害などの権利問題

    AIの利用に関する理解不足により、著作権侵害などの権利問題が生じる可能性も指摘されています。

    AI利用において想定される主な事例

    AI利用に伴うリスクは、特別な環境でのみ発生するものではなく、日常業務の中で自然に発生し得るものです。例えば業務の効率化を目的として、従業員が個人で利用している生成AIサービスを業務に活用するケースが考えられます。メール文面の作成や資料作成の補助としてAIを利用する延長で、社内資料の内容や顧客情報をそのまま入力してしまうことがありえます。生成AIはクラウド上で動作しており、入力した内容はサービス側で処理されます。場合によっては、入力内容がサービスの改善や学習に利用されることもありえます。この点を十分に理解しないまま利用すると、機密情報を外部サービスに送信してしまうことになり、情報漏洩につながるおそれがあるのです。

    また、対話型AIの回答をそのまま精査せずに業務に利用してしまうことで問題に発展する可能性もあります。調査や資料作成の過程でAIが生成した情報を十分に確認せずに利用した結果、ハルシネーションの内容を含んだまま社内外に共有してしまうといった事態が起こり得ます。このように、AI利用に伴うリスクは特定の専門領域に限らず、日常業務の延長線上で発生する点に特徴があります。

    組織における課題

    AIの利用が広がる一方で、組織としてこれらのリスクを適切に管理することにはいくつかの課題があります。

    社内でのAI利用の促進とルールの策定のバランス

    まず、AI利用に関するルールやガイドラインの整備が追いついていない点が挙げられます。現場での利用が先行する中で、組織としての利用方針が明確でない場合、統一的な管理が難しくなります。また、利用状況の把握が困難であることも大きな課題です。クラウド型のAIサービスは個人単位で容易に利用可能なため、組織として誰がどのように利用しているかを正確に把握することが難しくなります。実際には、想定以上に広範囲で利用が進んでいるケースも少なくありません。さらに、ポリシーを整備しても現場に浸透しないという課題もあります。AIは業務効率の向上に直結するため、利便性を優先してルールが守られないケースや、現場ごとに独自の運用が行われるといった状況も発生し得ます。加えて、AI利用と既存のセキュリティ対策との間にギャップが生じる点も課題です。従来のセキュリティ対策は想定していなかった利用形態が増えることで、管理や統制が追いつかない場面が生じる可能性があります。さらに、利用者への教育不足も課題の一つです。AIの特性やリスクに関する教育や周知が十分でないために、組織として意図しない利用が広がり、統制が効かなくなるおそれがあります。

    このように、AIの活用においては、ルール整備や利用状況の把握といった基本的な対応に加え、実際の運用における課題も踏まえた継続的な対応が求められます。

    企業が取るべきアクション

    AIの利用に伴うリスクに対応するためには、個別の技術対策にとどまらず、組織としての管理と運用の整備が重要となります。AI利用に関しては、ルール整備や教育、基本的なセキュリティ対策の徹底といった観点での対応が求められています。

    1. AIの利用に関するルールやガイドラインの整備
      どのような用途でAIを利用してよいのか、入力してよい情報の範囲、利用してはならない行為などを明確に定めることで、利用に伴うリスクを一定程度抑制することが可能となります。
    2. 利用状況の把握と管理
      AIサービスは個人単位でも容易に利用できるため、組織としてどのように利用されているかを把握し、必要に応じて管理の対象とすることが重要です。これにより、管理の行き届かない利用、いわゆるシャドーAIの発生を抑制することが期待されます。
    3. AI利用者への教育
      AIの特性やリスクについて正しく理解させることで、生成結果の確認や適切な情報の取り扱いといった基本的な行動を促すことができます。技術的な制御だけでなく、利用者の理解を前提とした運用が不可欠です。
    4. 基本的なセキュリティ対策の徹底・見直し
      認証の適切な運用や情報管理の強化といった既存の対策は、AI利用においても引き続き基盤となるものです。その上で、AIの利用が業務に広く組み込まれる中では、従来の対策だけでは対応しきれない場面も想定されるため、AI利用を前提としたセキュリティの見直しや再設計が必要となる可能性もあります。

    このように、AIの安全な活用には、ルール、管理、教育、AIを前提とした基本的なセキュリティ対策といった複数の観点からの継続的な取り組みが重要です。

    AI時代に求められるセキュリティ支援

    こうした課題に対応するためには、組織単独での取り組みだけでなく、専門的な支援の活用も有効です。以下のようなセキュリティ支援の例が挙げられます。

    • セキュリティ診断・リスクアセスメント
      AI利用に伴うリスクを把握するためのセキュリティ診断やリスクアセスメントが重要となります。現状の利用状況や潜在的なリスクを可視化することで、適切な対策の検討につなげることができます。
    • 運用監視体制の強化
      AIの利用状況を継続的に監視し、問題の早期発見や対応を行う体制を整備することで、リスクの低減が期待されます。
    • AI利用ガイドライン策定支援
      組織の実態に即したルールを整備し、現場で実際に運用可能な形に落とし込むことが求められます。

    さいごに

    「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が新たにランクインしたことは、AI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえます。AIに関するリスクは、新たな技術そのものに起因するというよりも、その利用方法や理解不足に起因する側面が大きい点が特徴です。そのため、対策としては、ルール整備や利用状況の把握、教育といった組織的な対応に加え、基本的なセキュリティ対策を継続して実施することが重要となります。

    また、IPAが示す通り、10大脅威の順位は危険度の高さを示すものではなく、自組織の状況に応じて適切にリスクを評価し、優先順位を定めて対策を講じることが求められます。 AIの活用は今後さらに進むことが想定されますが、その利便性を最大限に活かすためにも、リスクを正しく理解し、組織として適切に管理・運用していくことが重要です。


    【関連ウェビナーのご案内】
    本記事では、生成AIの利用に伴うサイバーリスクと、企業への影響について整理しました。AIの活用が進む一方で、情報漏えいや誤利用、統制の難しさといった課題が現実のものとなっています。では、こうしたリスクは実際にどのように悪用され、どのような攻撃として現れているのでしょうか。2026年4月15日に開催のウェビナーでは、生成AIを悪用した具体的な事例をもとに、サイバー脅威の実態と防御戦略を詳しく解説します。リスクの「背景」だけでなく、「実際に何が起きるのか」を理解したい方は、ぜひご参加ください。

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    セキュリティ運用は何から始めるべきか 担当者が最初に整理すべきポイント

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    「セキュリティ運用は何から始めるべきか」アイキャッチ画像

    セキュリティ運用を始める際に最初に必要なのはツール導入ではなく、「何を守るか」と「どの順序で対応するか」を整理することです。セキュリティは単発の施策ではなく、継続的に判断と改善を繰り返す活動であるため、最初の設計を誤ると後から修正が難しくなります。本記事では、実務担当者が最初に整理すべきポイントを現場目線で解説します。

    セキュリティ運用の全体像や考え方については、以下の記事で整理しています。
    セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

    「セキュリティ運用を始めたいが、何から手を付ければよいのか分からない」。これは多くの企業担当者が最初に直面する課題です。検索でも「セキュリティ運用 何から始める」「セキュリティ運用 方法」「セキュリティ運用 チェックリスト」といったキーワードが増えており、導入段階から運用段階へ関心が移っていることがうかがえます。セキュリティ対策そのものについての情報は多く存在しますが、実際の運用をどの順序で立ち上げるべきかについては、体系的に語られることが少ないのが現状です。

    「何を守っているか分からない」状態が最大の問題

    セキュリティ運用を始める際、多くの組織がいきなりツール導入やチェックリスト作成に進みます。しかし提供された文脈に基づくと、最初に取り組むべき課題は技術ではありません。「自分たちは何を守っているのか」を把握することです。企業には業務システム、クラウドサービス、端末、アカウント、外部委託先など、さまざまな資産が存在します。ところが実際には、全体像が整理されないまま個別対策が積み重なっているケースが少なくありません。この状態では、どのリスクが重要なのか判断できず、対応が場当たり的になります。資産やシステムの棚卸しは単なる一覧作成ではなく、「事業にとって停止すると困るものは何か」という視点で整理する作業です。優先順位が存在しない運用では、軽微な問題に時間を使い、本来対応すべきリスクを見逃す可能性があります。

    守るべき対象や優先順位を整理する際には、サイバー攻撃リスク評価の考え方が役立ちます。 「サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

    セキュリティ運用の最小単位を作る

    セキュリティ運用という言葉から大規模な仕組みを想像すると、着手のハードルが高くなります。しかし実務では、まず「最小単位」を作ることが重要です。運用は、情報を集め、それを判断し、必要な対応を行い、その結果を記録するという循環によって成立します。この四つの流れが成立していれば、規模が小さくても運用は始まっています。情報収集とは脆弱性情報や注意喚起の把握を指します。判断とは自社への影響を考える行為であり、対応は設定変更やパッチ適用など具体的な行動です。そして記録は、後から判断理由を再確認できる状態を作ります。多くの組織では対応だけが行われ、判断理由や経緯が残されません。その結果、同じ問題が繰り返されます。最小単位とは作業量を減らすことではなく、循環を成立させることを意味します。

    日常業務に組み込める運用とは

    セキュリティ運用が続かない理由の一つは、「特別な仕事」として設計されてしまう点にあります。通常業務とは別に毎日実施する作業を増やすと、忙しい時期に必ず停止します。 現実的な運用は、毎日行うものではなく、一定の周期や条件に応じて動く仕組みとして設計されます。たとえば月次で確認する作業、更新時のみ実施する確認、アラート発生時に対応する流れなど、業務のリズムに合わせることが重要になります。提供された構成意図に基づくと、セキュリティ運用とは負担を増やすことではなく、既存業務の中に判断ポイントを組み込むことだと理解できます。運用が日常に溶け込んだとき、初めて継続性が生まれます。

    よくある失敗例

    セキュリティ運用を開始した組織が直面しやすいのが、形骸化です。チェックリストを作成しても実際には確認されず、記録だけが残る状態は珍しくありません。チェックそのものが目的化すると、リスク低減という本来の目的が見えなくなります。また、ツール導入によって運用が自動化されたと誤解されるケースもあります。ツールは検知や可視化を支援しますが、最終的な判断は組織側に残ります。判断基準がなければ、アラートは増えるだけで改善につながりません。さらに問題となるのが属人化の放置です。「詳しい人がいるから大丈夫」という状態は短期的には効率的ですが、長期的には運用停止リスクを高めます。

    実際に、運用が形骸化した結果、ランサムウェアや委託先経由の被害につながるケースもあります。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    小さく始めて回し続けるコツ

    セキュリティ運用を成功させる組織に共通しているのは、最初から完成形を目指さない点です。理想的な運用設計を追求すると準備期間が長期化し、実運用が始まらないことがあります。むしろ重要なのは、小さく始めて継続することです。判断軸を共有し、「どのように考えて対応したのか」を残すだけでも、組織の知識は蓄積されていきます。運用は改善を前提とした活動です。最初から完璧である必要はなく、回しながら修正することで現実に適合していきます。提供された文脈に基づくと、セキュリティ成熟度は導入規模ではなく継続期間によって高まる傾向があると整理できます。

    体制の話は次のステップ

    ここまでの内容は、担当者レベルで始められるセキュリティ運用の基礎です。しかし運用を継続し、属人化を防ぐためには、やがて役割分担や体制設計が必要になります。誰が判断し、誰が実行し、どこに記録が集約されるのかが明確になることで、運用は個人依存から組織運用へと移行します。ただし体制設計は最初の段階で無理に行う必要はありません。まずは回る運用を作ることが先になります。

    運用を属人化させず、継続的に回すための体制づくりについては、次の記事で詳しく解説します。
    「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

    セキュリティ運用は「始め方」で成否が決まる

    セキュリティ運用は高度な技術から始まるものではありません。何を守るのかを理解し、小さな循環を作り、それを日常業務の中で継続することから始まります。チェックリストやツールは重要な要素ですが、それだけでは運用は成立しません。判断・対応・記録という流れが回り始めたとき、セキュリティは単発対応から継続的な活動へ変わります。「セキュリティ運用は何から始めるべきか」という問いへの答えは一つではありませんが、提供された構成意図に基づくと、最初に必要なのは完璧な設計ではなく、回り続ける最小単位を作ることだと言えるでしょう。

    本記事は、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理したものです。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。


    運用を属人化させず、継続的に回すためには体制づくりが欠かせません。次の記事で詳しく解説します。
    「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

    BBSecでは

    委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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    脆弱性の意味を正しく理解する―読み方・具体例・種類をわかりやすく解説

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    脆弱性の意味を正しく理解する―種類・悪用リスク・企業が取るべき対策アイキャッチ画像

    脆弱性とは、システムやソフトウェア、ネットワークなどに存在する「セキュリティ上の弱点」を指します。この弱点を攻撃者に悪用されると、不正アクセスや情報漏えいなどのサイバー攻撃につながる可能性があります。この言葉の意味を正しく理解することは、サイバーセキュリティを理解するうえで非常に重要であり、企業や組織が安全にシステムを運用するためには、脆弱性を早期に発見し、適切に対策することが重要です。本記事では、脆弱性の正しい意味、サイバー攻撃との関わり、企業が取るべき対策までを体系的に整理し、分かりやすく解説します。

    脆弱性とは何か?

    「脆弱性(ぜいじゃくせい)」とは、システムやソフトウェア、ネットワークなどに存在する「セキュリティ上の弱点」や「欠陥」のことです。この弱点が存在すると、攻撃者に悪用されることで、不正アクセス、情報漏洩、マルウェア感染、サービス停止といったサイバー攻撃の被害につながる可能性があります。

    脆弱性の多くは、「プログラムの設計ミスやコーディングミスなどによるバグ」になります。バグが存在せず正しく動作するプログラムやWebアプリケーションであっても、設計者が想定しないやり方で機能が悪用され、 結果としてサイバー攻撃が成立する場合には、その「悪用されうる機能設計」が脆弱性とみなされます。

    企業では、こうした脆弱性を早期に発見するために「脆弱性診断」を実施することが重要です。→「脆弱性診断の必要性とは?ツールなど調査手法と進め方

    脆弱性診断は、システムやアプリケーションに存在するセキュリティ上の欠陥を特定し、対策につなげるための検査です。

    しかし、いざ「脆弱性 意味」「脆弱性とは何か?」と問われると、具体的に説明できない人も少なくありません。

    脆弱性の読み方と語源

    「脆弱性」は「ぜいじゃくせい」と読みます。

    「脆」(ぜい):もろい、こわれやすいという意味
    「弱」(じゃく):よわい、力が足りないという意味
    「性」(せい):性質や特徴を示します

    つまり、「壊れやすく弱い性質」という意味で、ITセキュリティ分野では“攻撃に利用される欠陥や弱点”を指す言葉として使われます。また英語ではvulnerability(バルネラビリティ=「攻撃を受けやすいこと」の意)と呼ばれます。

    脆弱性の代表例

    脆弱性はさまざまな原因によって発生します。ここでは代表的な脆弱性の例を紹介します。

    ソフトウェアの脆弱性

    ソフトウェアのプログラムに不具合があると、それが脆弱性となる場合があります。例として、

    • 入力値の検証不足
    • バッファオーバーフロー
    • SQLインジェクション

    などが挙げられます。このような不具合を攻撃者が悪用すると、データベースの情報が盗まれたり、システムが乗っ取られたりする可能性があります。

    これらの代表的なWebアプリケーションのセキュリティリスクは、OWASP Top10として国際的な指標としてまとめられています。
    → 「OWASP Top10 2025:2021版からの変更点と企業が取るべきセキュリティ強化ポイント

    OWASP Top10はWebアプリケーションの代表的なセキュリティリスクをまとめた国際的なガイドラインです。

    設定ミスによる脆弱性

    システムの設定が適切でない場合も脆弱性の原因になります。代表的な例として

    • 管理画面がインターネットに公開されている
    • デフォルトパスワードのまま運用している
    • 不要なポートが開放されている

    などが挙げられます。こうした設定ミスは攻撃者にとって侵入の入り口となることがあります。

    設計上の問題による脆弱性

    システムの設計段階に問題がある場合、構造的な脆弱性が発生することがあります。

    例えば

    • 認証機能の設計ミス
    • 権限管理の不備
    • セッション管理の問題

    などです。設計段階の脆弱性は、後から修正するのが難しい場合も多く、開発段階からのセキュリティ対策が重要になります。

    脆弱性が攻撃の入口になる理由

    攻撃者はまず「侵入できる弱点がないか」を探します。この弱点こそが脆弱性です。例えば、

    • 公開された脆弱性のパッチを適用していない
    • 古いプログラムを長期間放置している
    • 不要なサービスやポートを開けたまま

    といった状態は、攻撃者に「ここから入れる」と示しているようなものです。実際、多くのサイバー攻撃は “脆弱性の悪用” から始まっています。

    ここまでの説明でお気づきかもしれませんが、「脆弱性が多く報告されている」ことは必ずしも「品質が悪い」ことを意味するのではありません。脆弱性が存在してもそのことが報告・公表されていなければ、「脆弱性がある」とは認知されないわけです。

    脆弱性が悪用されるとどうなる?

    脆弱性が攻撃者に悪用されると、企業や組織に大きな被害をもたらす可能性があります。代表的な被害をご紹介します。

    • 重要情報(顧客情報・社員情報・機密情報等)の漏洩
    • サイバー攻撃(ランサムウェア攻撃等)を受けるリスク
    • サービス停止や業務停止リスク

    特に近年は、脆弱性を狙った攻撃が高度化し、攻撃者が自動的に弱点を探索するツールも普及しています。「気づいたら侵入されていた」というケースも少なくありません。

    脆弱性を悪用したセキュリティ事故は日々発生しています。SQAT.jpでは以下の記事でも取り上げていますので、ぜひあわせてご参考ください。

    ● 「定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!-放置された脆弱性のリスクと対処方法-
    ● 「備えあれば憂いなし!サイバー保険の利活用

    脆弱性を防ぐための対策

    脆弱性を放置すると、重大なセキュリティ事故につながる可能性があります。脆弱性対策の基本的な考え方としては、システムの欠陥をつぶし、脆弱性を無くすこと(「攻撃の的」を無くすこと)が最も重要です。企業での実践方法としては以下の項目があげられます。

    修正パッチの適用


    衣服等の破れを補修する「継ぎ当て」や傷口に貼る「絆創膏」のことを英語で「パッチ(patch)」と言いますが、脆弱性を修正するプログラムも「パッチ」と呼ばれます。修正プログラムを適用することは「パッチをあてる」と言われたりします。パッチをあてることにより、システムに影響が及ぶ場合があります。適用にあたっては事前に調査を行い、必要に応じて十分な検証を実施してください。なお、自組織で開発したシステムに関しては、必ずテスト環境を用意し、パッチ適用による整合性チェックを行いましょう。

    ソフトウェアやOSの定期的なアップデート

    アップデートされた最新バージョンでは既知の脆弱性や不具合が修正されていますので、後回しにせずに更新を行うようにしてください。

    セキュアプログラミングで脆弱性を作りこまない体制に

    自組織で開発したソフトウェアやWebアプリケーション等の場合は、サービスが稼働する前の上流工程(開発段階)から、そもそも脆弱性を作り込まない体制を構築することが大切です。

    また、テレワーク環境では、以上の項目に加え、クライアントサイドでのパッチ適用が適切に行われているかをチェックする体制を構築することも重要です。また、シャドーITの状況把握も厳格に実施する必要があります。

    「IT部門が知らないサービスを勝手に利用され、結果として脆弱性の有無について未検証のクライアントソフトやブラウザプラグインが使われていた」という事態は防がねばなりません。

    脆弱性情報はWebサイトでチェックできる

    脆弱性は、さまざまなソフトウェアやプラットフォームで日々発見されています。そうした情報は、多くの場合、ソフトウェアやプラットフォーム提供元のWebサイトに掲載されます。
    少なくとも、自組織で利用している主要なプラットフォームに関しては、緊急性が高い脆弱性が出現していないかどうかを、提供元のWebサイトで定期的にチェックするとよいでしょう。

    JVNを利用した脆弱性情報の正確な情報収集と活用法

    一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターとIPA(独立行政法人情報処理推進機構)では、公表された脆弱性情報を収集して公開するサービス「JVN(Japan Vulnerability Notes)」を共同運営しています。日本で利用されている大半のソフトウェアの脆弱性の情報は、このサイトでチェックできます。

    脆弱性情報ソースと活用

    インシデントやゼロデイの発生情報については、セキュリティ専門のニュースサイト、セキュリティエバンジェリストのSNSなどからも情報をキャッチできます。

    情報の裏取りとして、セキュリティベンダからの発表やtechブログ等を参照することもと重要となります。攻撃の影響範囲や危険度を確認するには、Exploitの有無を技術者のPoC検証ブログやNVD等で確認することも有効です。

    ツールを使って脆弱性を見つける

    脆弱性を発見するためのソフトウェアは「チェックツール」「スキャンツール」「スキャナ」などと呼ばれます。以下に、代表的なものをご紹介しましょう。有償、無償のさまざまなツールが提供されていますので、機能や特徴を知り、ニーズに合致するものを試してみてはいかがでしょうか。

      有償ツール 無償ツール
    Webアプリケーション向けAppScan、Burp Suite、WebInspect など OWASP ZAP など
    サーバ、ネットワーク向け Nessus(一部無償)、nmap など Nirvana改弐、Vuls など

    「脆弱性診断」サービスで自組織のソフトウェアの脆弱性を見つける

    上記でご紹介したツールを使えば、脆弱性のチェックを自組織で行うことが可能です。しかし、前述の通り、「脆弱性が存在するのに報告されていない」ために情報がツールに実装されていないソフトウェアも数多くあります。また、一般に広く利用されているソフトウェアであれば次々に脆弱性が発見、公開されますが、自組織で開発したWebアプリケーションの場合は、外部に頼れる脆弱性ソースはありません。さらに、実施にあたっては相応の技術的知識が求められます。そこで検討したいのが脆弱性診断サービスの利用です。脆弱性の有無を確認するには、脆弱性診断が最も有効な手段です。

    脆弱性診断サービスでは、システムを構成する多様なソフトウェアやWebアプリケーション、API、スマホアプリケーション、ネットワークなどに関し、広範な知識を持つ担当者が、セキュリティ上のベストプラクティス、システム独自の要件などを総合的に分析し、対象システムの脆弱性を評価します。組織からの依頼に応じて、「自組織で気付けていない脆弱性がないかどうか」を調べる目的のほか、「脆弱性に対して施した対策が充分に機能しているか」を検証する目的で実施することもできます。

    対策が正常に機能しているかの検証を含めた確認には専門家の目線をいれることをおすすめしています。予防的にコントロールをするといった観点も含め、よりシステムを堅牢かしていくために脆弱性診断をご検討ください。脆弱性を防ぐためには、ソフトウェア更新や設定の見直しだけでなく、定期的なセキュリティ診断を行うことが重要です。

    特に企業のシステムでは、脆弱性診断に加えて、実際の攻撃を想定したペネトレーションテストを実施することで、セキュリティ対策の有効性を確認することができます。
    →「ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは?

    脆弱性との共存(?)を図るケースもある

    最後に、診断で発見された脆弱性にパッチをあてることができないときの対処法をご紹介しましょう。

    まず、「パッチを適用することで、現在稼働している重要なアプリケーションに不具合が起こることが事前検証の結果判明した」場合です。このようなケースでは、システムの安定稼働を優先し、あえてパッチをあてずに、その脆弱性への攻撃をブロックするセキュリティ機器を導入することで攻撃を防ぎます。セキュリティ機器によって「仮想的なパッチをあてる」という対策になるため、「バーチャルパッチ」とも呼ばれます。

    また、脆弱性が発見されたのがミッションクリティカルなシステムではなく、ほとんど使われていない業務アプリであった場合は、脆弱性を修正するのではなく、そのアプリ自体の使用を停止することを検討できるでしょう。これは、運用によってリスクを回避する方法といえます。

    なお、前項でご紹介した脆弱性診断サービスの利用は、脆弱性に対して以上のような回避策をとる場合にも、メリットがあるといえます。発見された脆弱性について、深刻度、悪用される危険性、システム全体への影響度といった、専門サービスならではのより詳細な分析結果にもとづいて、対処の意思決定を行えるためです。

    脆弱性に関するよくある質問

    ▼脆弱性とは簡単にいうと何ですか?
    ▼脆弱性とバグの違いは何ですか?
    ▼脆弱性と脅威の違いは?

    まとめ

    「脆弱性とは何か?」を正しく理解することは、サイバー攻撃に備えるうえで最も基本かつ重要なステップです。脆弱性は放置すれば攻撃者にとって“格好の入口”となり、情報漏えいやサービス停止など重大な被害を招きかねません。自社システムの安全性を確保するためにも、日頃から更新・診断・運用の見直しを行い、脆弱性を適切に管理することが求められます。

    関連情報

    ● 脆弱性診断の必要性とは?ツールなど調査手法と進め方

    公開日:2020年7月20日
    更新日:2026年3月11日

    編集責任:木下


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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―

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    なぜ取引先経由で情報漏えいが起きるのか ―国内で相次ぐサプライチェーン攻撃の実態―アイキャッチ画像

    近年、「自社に不正アクセスはなかったのに情報が漏えいした」という状況が増えています。その多くは、取引先や委託先、外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃が原因です。本記事では、なぜこうした“取引先経由”の情報漏えいが起きやすいのか、国内で実際に起きている事例や背景をもとに整理します。攻撃の構造を理解することで、見えにくいリスクに気づく視点を持つことができます。

    こうしたリスクを前提に、委託先や外注先のセキュリティをどこまで確認すべきか悩む企業も少なくありません。実務の判断ポイントについては、以下の記事で整理しています。
    委託先・外注先のセキュリティはどこまで確認すべきか

    自社が原因でなくても、情報漏えいは起きてしまう時代

    近年、「自社システムに不正アクセスはなかった」と説明される情報漏えい事故が国内で相次いでいます。調査を進めると原因は自社ではなく、取引先や外部サービスを経由した不正アクセスだった、というケースが少なくありません。こうした攻撃はサプライチェーン攻撃と呼ばれ、いま日本企業にとって最も現実的なセキュリティリスクの一つになっています。特にSaaSや外部委託、API連携が当たり前になった現在、このリスクは業種や企業規模を問わず存在します。

    サプライチェーン攻撃とは何か

    サプライチェーン攻撃とは、標的となる企業そのものではなく、取引先・委託先・連携している外部サービスを踏み台に侵入する攻撃手法です。サプライチェーン攻撃の全体像や基本的な考え方については、以下の記事で整理しています。あわせてぜひご覧ください。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    なぜ今、国内でサプライチェーン攻撃が増えているのか

    背景にあるのは、企業活動のデジタル化と外部依存の加速です。業務効率化のためにSaaSを導入し、外部ツールとAPIで連携し、専門業務を外注することは、今や珍しいことではありません。一方で、こうした外部接点が増えるほど、攻撃者にとっての「侵入口」も増えていきます。特に、委託先や小規模ベンダーでは十分なセキュリティ対策が取られていないケースもあり、結果としてそこが狙われやすくなります。さらに最近では、認証情報の使い回しや権限設定のミスを自動的に探し出す攻撃手法も増えており、従来型の対策だけでは気づかないうちに侵入されるリスクが高まっています。

    国内で実際に起きているサプライチェーン攻撃の特徴

    国内で報告されているサプライチェーン攻撃の多くには共通点があります。それは、自社システムが直接破られたわけではなく、正規の連携機能や委託先のアクセス権限が悪用されている点です。そのため、ログを見ても不正アクセスだと気づきにくく、発覚までに時間がかかることがあります。結果として、数万件から数十万件規模の個人情報や顧客データが流出して初めて問題が表面化する、という事態につながります。サプライチェーン攻撃が怖いのは、まさにこの「想定外の経路」から被害が発生する点にあります。

    サプライチェーン攻撃の国内事例や攻撃手口については、以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    事例から学ぶサプライチェーン攻撃 -サプライチェーン攻撃の脅威と対策2-

    サプライチェーン攻撃が企業にもたらす影響

    この種の攻撃によって発生するのは、単なるシステムトラブルではありません。個人情報漏えいによる顧客からの信頼低下、取引先との関係悪化、場合によっては契約違反や損害賠償の問題に発展することもあります。近年では、「原因が委託先にあった」と説明しても、情報管理責任そのものは発注元企業にあると判断されるケースが増えています。サプライチェーン攻撃は、企業の信用そのものを揺るがすリスクだと言えるでしょう。

    企業が今すぐ考えるべきサプライチェーン対策

    まず重要なのは、自社がどのような外部サービスや委託先とつながっているのかを正確に把握することです。意外と、過去に導入したまま使われていないSaaSや、誰が管理しているのか分からない連携設定が残っていることも少なくありません。そのうえで、外部サービスや委託先に付与している権限が本当に必要最小限になっているかを見直す必要があります。「業務上便利だから」という理由で広い権限を与えたままにしていると、それがそのまま攻撃経路になってしまいます。また、技術的な対策だけでなく、委託契約や運用ルールの見直しも欠かせません。インシデント発生時の報告義務や再委託の条件、セキュリティ対策状況の確認方法などを明確にしておくことで、リスクを大きく下げることができます。

    まとめ:サプライチェーン全体を見る視点が不可欠に

    サプライチェーン攻撃は、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。外部サービスを利用し、業務を委託し、クラウド連携を行っている企業であれば、規模に関係なく直面する可能性があります。重要なのは、自社のシステムだけを見るのではなく、自社を取り巻くサプライチェーン全体をどう管理するかという視点です。そこに目を向けない限り、同様の事故は今後も繰り返されるでしょう。

    また、これらの事故は経営判断とも直結します。
    サプライチェーン攻撃と経営責任 ―委託先が原因でも問われる企業の判断とは ―


    こうした実態を踏まえると、サプライチェーン攻撃は個別対策だけでは防ぎきれません。委託先や外部サービスを含めた全体像を把握し、どこにリスクが集中しているのかを整理する視点が不可欠です。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    BBSecでは

    サプライチェーン攻撃への対策では、「何となく不安だが、どこから手を付ければいいか分からない」という声を多く聞きます。外部接点が増えた現代では、勘や経験だけでリスクを把握するのは難しくなっています。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、外部委託先や連携サービスを含めたセキュリティリスクの可視化や、運用・体制面まで踏み込んだ支援を行っています。サプライチェーン全体を前提とした評価や改善を進めることで、「自社は大丈夫」という思い込みによるリスクを減らすことが可能です。もし、自社のサプライチェーンリスクに少しでも不安を感じているのであれば、一度立ち止まって全体を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】


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