DoS攻撃のリスクと対策:アクセス急増の原因と見分け方、サービス停止を防ぐ初動対応

Share

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

「DoS攻撃のリスクと対策:アクセス急増の原因と見分け方、サービス停止を防ぐ初動対応」アイキャッチ画像

Webサイトやオンラインサービスでアクセスが急増した場合、その原因が通常の利用増加なのか、DoS攻撃などによる異常な負荷なのかを早期に見極めることが重要です。判断を誤ると、サービス停止や業務影響につながるおそれがあります。

本記事では、アクセス急増時に確認すべきポイントを整理し、DoS攻撃による停止リスクが高まる状況の見分け方や、企業が優先して実施すべきDoS攻撃対策の考え方を解説します。用語解説にとどまらず、脆弱性管理や初動対応など実務で役立つ判断軸を中心にまとめています。

アクセス急増が起きたときに最初に考えるべきこと

アクセス数や通信量が増えること自体は、必ずしも問題ではありません。キャンペーンやメディア露出など、正当な理由でトラフィックが増加するケースも多くあります。

一方で、原因を確認しないまま放置すると、サーバやネットワークに過剰な負荷がかかり、応答遅延やエラーの多発、最悪の場合はサービス停止に発展します。重要なのは「増えている」という事実そのものではなく、なぜ増えているのかを切り分けることです。

最初の15分で確認すべき初動対応のポイント

アクセス急増を検知した直後は、次の観点を優先的に確認します。

  • いつから増え始め、どの程度の時間継続しているか
  • 影響が出ているのはどこか(ネットワーク、ロードバランサ、アプリケーション、DBなど)
  • 帯域・リクエスト数・エラー率のどれが増えているか
  • 直近で行ったリリースや設定変更の有無

この初動判断が、DoS攻撃か通常のアクセス増加かを見極める第一歩になります。

サービス停止につながる代表的な原因

アクセス急増や負荷増大の原因には、いくつかのパターンがあります。

一時的な正規アクセス集中

特定の時間帯やイベントをきっかけに利用が集中するケースです。多くの場合、時間の経過とともに自然に収束します。

設定不備・設計上の問題

アクセス制限やリソース管理が適切でないと、通常利用でも過剰な負荷がかかり、サービス停止を招くことがあります。

悪意ある大量リクエスト(DoS攻撃・DDoS攻撃)

意図的に大量の通信や処理を発生させ、サービスを利用不能にするケースです。一般にDoS攻撃やDDoS攻撃と呼ばれるものは、この原因の一つとして位置づけられます。

重要なのは、最初から攻撃と決めつけず、原因を整理して順序立てて切り分けることです。

DoS攻撃とは何か・DDos攻撃との違い

「DoS(Denial of Service)攻撃」とは、サーバやネットワークに過剰な負荷をかけることで、サービスを正常に利用できなくする攻撃手法です。単一の攻撃元から行われる場合もあれば、複数の端末を利用して分散的に行われるケースもあります。複数の分散した(Distributed)拠点から同時に行われるものは、「DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃」と呼ばれます。

DDos攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
記録破りのDDoS攻撃!サイバー脅威の拡大と企業が取るべき対策とは?
【徹底解説】 日本航空のDDoS攻撃被害の実態と復旧プロセス

企業のWebサービスは外部公開されている性質上、DoS攻撃の影響を受けやすく、特に処理能力に余裕がない構成や設定不備がある環境では、比較的少ない負荷でもサービス停止に至ることがあります。DoS攻撃は「特別な脅威」ではなく、サービス停止リスクの一因として日常的に考慮すべきものです。

DoS攻撃 / DDoS攻撃の特徴

攻撃難易度の低さ

DoS攻撃/DDoS攻撃の特徴のひとつが攻撃の難易度の低さです。

多くの場合、コンピュータプログラムを書いてマルウェアを開発するような技術力は不要で、APTのような組織・資金・技術力もいりません。

インターネット上には、多数のDoS攻撃ツールが存在します。また、ストレステスト等の正規ツールを悪用してDoS攻撃を行う場合もあります。そればかりか、クレジットカードさえあればすぐに利用できる「DDoS攻撃を請け負う違法サービス」すら存在しています。

DoS攻撃/DDoS攻撃によるサービス停止は機会損失を生み、ブランド毀損は通常のサイバー攻撃より大きい場合もあります。また、直接攻撃対象とならなくても、攻撃の踏み台にされることで間接的な加害者となる危険性もあります。

社会・政治的動機

DoS攻撃、特にDDoS攻撃の特徴を示すキーワードが「社会・政治」です。

2010年、米大手決済サービスが、国際的な内部告発サイトが運営のために支援者から寄付を集める際に利用していた口座を、規約にしたがって凍結したことに対し、ハッカー集団がDDoS攻撃を実施、米大手決済サービスのサービスが一部停止する事態に陥りました。

このように、実施のハードルが低いDoS攻撃/DDoS攻撃は、人々が自身のさまざまな意思を表明するために、あたかもデモ行進のように実施されることがあります。かつては、DDoS攻撃をデモ活動同様の市民の権利として認めるべきであるという議論がまじめに行われていたこともありました。しかし、実際には「気に食わない」だけでもDDoS攻撃は行われ得るのです。社会課題の解決、ナショナリズム、倫理などを標榜していたとしても、端から見るとヘイトや嫌がらせと変わらないことがあります。

このような背景があるため、単に技術的な負荷として片付けられない場合もある点に留意が必要です。

ブランド毀損など、DoS攻撃/DDoS攻撃を受けた場合の被害が大きい

政治的、社会的、あるいは倫理的文脈から批判が集中した企業やサービスなどに対して、一度DoS攻撃/DDoS攻撃がはじまると、その趣旨に共感した人々が次々と参加し、ときに雪だるま式に拡大することがあるのもこの攻撃の特徴です。

また、DoS攻撃/DDoS攻撃は、攻撃が起こっていることが外部からもわかるという点で、外部に公表するまでは事故の発生がわからない情報漏えいのようなタイプのサイバー攻撃とは異なります。「広く一般に知られる」ことが容易に起こりうるため、ブランドへの負のインパクトが発生する可能性も大きいといえます。

DoS攻撃/DDoS攻撃の発生に気づくのが難しい

そもそもWebサービスは、その性質上外部に公開されるものです。そのためDoS攻撃やDDoS攻撃を完全に防ぐことは容易ではありません。特に多数の機器を踏み台として巻き込むDDoS攻撃の標的となった場合には、気づく間もなくあっという間にサービス拒否状態に陥る可能性が高いでしょう。

DoS攻撃による企業への影響とリスク

DoS攻撃による影響は、単なる一時的な停止にとどまりません。

  • Webサイトやサービスが利用できなくなることによる機会損失
  • 業務システム停止による業務遅延
  • 顧客満足度の低下や信用・ブランドへの影響

特にBtoBサービスの場合、短時間の停止であっても取引先への影響が大きく、事後対応に多くの工数を要するケースがあります。

関連記事:「DoS攻撃/DDoS攻撃の脅威と対策

DoS攻撃かどうかを見分けるための確認ポイント

アクセス急増時には、いくつかの観点から状況を確認することで、異常かどうかを判断しやすくなります。

タイミングと継続時間

増加のタイミングと継続時間です。特定の時間帯だけ集中しているのか、長時間にわたって負荷が続いているのかによって、想定される原因は異なります。

アクセス元・リクエスト内容

同じ操作やURLへのリクエストが繰り返されていないか、特定のIP帯や地域に偏っていないかを見ることで、通常利用との違いが見えてきます。

ログ・監視データから見る攻撃兆候

エラー発生状況やレスポンス時間の変化を確認することで、単なるアクセス増加なのか、処理を圧迫する挙動なのかを把握できます。

これらを総合的に確認することで、「様子見でよいケース」か「早急な対応が必要なケース」かを判断できます。

企業が優先して実施すべきDoS攻撃対策

DoS攻撃対策は、すべてを一度に実施する必要はありません。優先順位を付けて、自社環境に合った対策を選択することが重要です。

DoS攻撃/DDoS攻撃にも有効な3つの基本的対策

DoS攻撃、特にDDoS攻撃の対策としては、CDN(Content Delivery Networks)の利用、DDoS攻撃対策専用アプライアンス、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)などが威力を発揮します。

そして、これらの対策を適用する際には、同時に、セキュリティ対策の基本ともいえる以下の3点に対応できているかどうかも確認しましょう。

1.必要のないサービス・プロセス・ポートは停止する
2.DoS攻撃/DDoS攻撃の端緒になりうる各種の不備を見つけて直す
3.脆弱性対策が施されたパッチを適用する

いずれもセキュリティ対策の「基本中の基本」といえるものばかりですが、防御可能なタイプのDoS攻撃を回避し、システムがDDoS攻撃の踏み台にされることを防ぐためにきわめて有効です。

DoS攻撃対策でよくある誤解と見落とし

DoS攻撃対策というと、高価な専用製品を導入しなければ防げないと考えられがちですが、それだけで十分とは限りません。「対策しているつもり」になっている状態や、運用面の確認が不十分なケースも多く見られます。日常的な設定確認や運用の見直しが、結果としてリスク低減につながります。

自社だけでの対応が難しい場合の考え方

アクセス急増の原因が複雑で判断が難しい場合や、継続的な運用に不安がある場合は、第三者の視点を取り入れることも有効です。定期的なセキュリティ診断や評価を通じて、自社では気づきにくいリスクを把握することができます。

脆弱性や設定不備を狙ったDoS攻撃は防ぐことができる

DoS攻撃/DDoS攻撃は攻撃の発生に気づくのが難しいという話を前段で述べましたが、一方で、防ぐことができるタイプの攻撃も存在します。

一部のWebサイトでは、「長大な文字列を受け入れてしまう」「ファイルの容量を制限しない」など、DoS攻撃につけ込まれてしまう問題が存在することがあります。また、ネットワーク関連の設定の不備によってDoS攻撃を受ける可能性も存在します。しかし、こうした脆弱性は、修正による回避が可能です。

また、あなたの企業が直接DoS攻撃の攻撃対象とならなくても、上述のような脆弱性を放置しておくとDDoS攻撃の踏み台にされることもあります。その対策としては、各種機器・OS・ソフトウェアの脆弱性管理を適切に行うことや、脆弱性診断等のセキュリティ診断を定期的に実施して未知のリスクを把握し、対処することが重要です。

Webアプリケーション脆弱性診断バナー

診断会社あるある「すわ、DoS攻撃?」

ここで余談ではありますが、診断実施に伴う「あるある」エピソードを。

セキュリティ診断を行う際には、必ず、実施の年月日や時間帯を関連する部署に周知しなくてはなりません。

実は、診断実施に伴って事業部門等が「DoS攻撃が発生した!」と勘違いすることが、しばしばあるのです。もちろん、一般にインターネット上に公開しているシステムの場合には業務に差し支えるような検査の仕方をしないというのが大前提ですが、それでも、大量の問合せ等が発生すると何も知らされていない担当部署はサイバー攻撃と勘違いすることがあります。ついでにこの際に抜き打ちで社内のサイバー訓練を・・・と目論みたい気持ちが出たとしても、それを実行に移すのは大変危険です。訓練は訓練させる側にきちんとした検証シナリオがあってこそ効果を発揮します。まずは関係各所との連携を徹底するところから始めましょう。

まとめ

DoS攻撃は、特別なケースではなく、サービス停止リスクの一因として日常的に考慮すべきものです。

  • アクセス急増時はまず原因を切り分ける
  • DoS攻撃の影響と兆候を理解する
  • 見分け方を把握し、初動対応を誤らない
  • 優先順位を付けて対策・運用を進める
  • 必要のないサービス・プロセス・ポートの停止、などの基本的対策が有効
  • 脆弱性を突いて行われるDoS攻撃は、脆弱性診断などで発見し対策できる

これまで述べたように、DoS攻撃/DDoS攻撃は、機会損失やブランド毀損など事業継続性を損なうダメージをもたらし得るサイバー攻撃です。DDoS攻撃の踏み台となれば社会的責任が問われることもあるでしょう。経営課題のひとつとして認識し、対処することが大切です。

お問い合わせ

お問い合わせはこちらからお願いします。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

【速報】アサヒグループホールディングス社長会見、犯行は「Qilin」―サイバー攻撃の全貌とセキュリティの盲点

Share

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

【速報】アサヒグループホールディングス社長会見、犯行は「Qilin」―サイバー攻撃の全貌とセキュリティの盲点アイキャッチ画像

2025年11月27日、東京都内でアサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)の勝木敦志社長らが記者会見を開き、同年9月に発生した大規模なアサヒグループへのサイバー攻撃の詳細と今後の復旧見通しを初めて公にしました*1。現場で明かされたのは、ロシア系ランサムウェア集団「Qilin」(キリン)による容赦のない犯行手口と、日本企業が直面する「境界型防御」の限界でした。セキュリティアナリストの視点から、今回の事件が投げかける教訓を解説します。

なぜ侵入を許したのか?ロシア系ランサムウェア「Qilin」の執拗な手口

会見で最も注目されたのは、攻撃の実行犯とその侵入経路の特定でした。アサヒGHDへの攻撃を行ったのは、医療機関や重要インフラを標的にすることで悪名高いランサムウェアグループ、Qilin(キリン)であることが判明しました。

彼らの手口は極めて巧妙でした。攻撃者はまず、アサヒグループ内の一拠点にあるネットワーク機器の脆弱性を突き、そこを足場にVPN(仮想プライベートネットワーク)を経由して内部ネットワークへ侵入しました。一度内部に入り込むと、特権IDを奪取し、データセンター内のサーバーや端末を一気に暗号化。まさに電光石火のランサムウェア攻撃です。アサヒグループ側は「NIST(米国国立標準技術研究所)基準に基づいた防御策を講じていた」としていますが、攻撃者はその防御網のわずかな隙間―パッチ未適用の機器や古いVPN設定―を見逃しませんでした。

今回のQilin(キリン)のような攻撃手口を通じて、従来の境界防御(社内は安全、社外は危険という考え方)のみでは限界がある、ということが改めて浮き彫りになりました。なお、アサヒグループ側は攻撃者からの身代金要求には一切応じておらず、支払いを拒否したという毅然とした対応を見せています。

191万件の情報漏洩リスクと復旧までの長い道のり

被害の規模は甚大です。会見では、顧客や従業員を含む最大191万件の個人情報が漏洩した可能性があると発表されました。これには氏名や住所などが含まれている恐れがあり、企業としての信頼に直結する重大なインシデントです。

また、実体経済への影響も深刻です。現在もアサヒグループでは電話やFAXによるアナログな受注対応を余儀なくされており、物流の一部に遅延が生じています。勝木社長は「システムの完全な正常化は2026年2月になる」との見通しを示しました。攻撃発生から実に半年近くを要することになり、ランサムウェア被害からの復旧がいかに困難で、ビジネスを長期停滞させるかを物語っています。

「境界防御」から「ゼロトラスト」へ―学ぶべき教訓

今回のアサヒGHDの事例から、私たちセキュリティ担当者が学ぶべき最大の教訓は、侵入されることを前提とした対策へのシフトです。同社は再発防止策として、従来のVPNに依存した境界防御を廃止し、ゼロトラストアーキテクチャ(すべてのアクセスを疑い、検証する仕組み)への移行を明言しました。これは正しい方向性ですが、同時に多大なコストと時間を要する決断でもあります。

Qilin(キリン)のような脅威アクターは、明日にもあなたの組織を狙うかもしれません。

  • 公開されているVPN機器の脆弱性パッチは即時適用されているか?
  • 多要素認証(MFA)はすべての外部アクセスに強制されているか?
  • 「侵入された後」の検知体制は整っているか?

―今回の会見は、これらを再点検するための警鐘として捉えるべきでしょう。アサヒGHDの事例を対岸の火事とせず、自組織のセキュリティ態勢を見直す契機としてください。

【参考情報】

技術解説・背景情報(Qilinの手口)

サイバーインシデント緊急対応

セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年12月3日(水)14:00~15:00
    【最新事例解説】Qilin攻撃に学ぶ!組織を守る“サイバーレジリエンス強化のポイント”喫緊のランサムウェア被害事例からひも解く ― 被害を最小化するための“備えと対応力”とは?
  • 2025年12月10日(水)14:00~15:00
    【最短7営業日で報告書納品】短納期で実現するWeb脆弱性診断の新提案-SQAT® with Swift Delivery紹介セミナー
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    企業がランサムウェアに感染したら?被害事例から学ぶ初動対応と経営者が取るべき対策

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    企業がランサムウェアに感染したら?被害事例から学ぶ初動対応と経営者が取るべき対策アイキャッチ画像

    近年、企業を狙ったサイバー攻撃は巧妙化・高度化し、なかでも「ランサムウェア」被害は深刻さを増しています。業務停止や顧客情報の漏えい、取引先・株主からの信頼低下など、企業経営を直撃するリスクが現実のものとなっています。もし企業がランサムウェアに感染したら、対応の遅れは損害の拡大を招きます。経営層こそ、リスクを正しく理解し、事前の備えと発生時の迅速な意思決定を行う必要があります。本記事では、企業向けにランサムウェアの最新動向と、感染した際に最優先で行うべき初動対応、そして再発防止策について解説します。

    ランサムウェアとは

    ランサムウェアは企業の重要データを暗号化し、復元と引き換えに身代金(Ransom)を支払うよう要求するマルウェアの一種です。

    かつては個人を標的とするケースが中心でしたが、近年では高額な金銭を得られる企業が主な攻撃対象となっています。製造、医療、インフラ、小売、自治体など業界を問わず被害が発生しており、サプライチェーン全体に影響を与えるケースも増加しています。

    身代金はビットコインなどの仮想通貨で要求されることがほとんどです。ただし、支払ってもデータ等が必ず元に戻るとは限りません。また、暗号化されたファイルのパスワードを解析して、自力で元に戻すことは、ほぼ不可能です。

    なぜ企業が狙われるのか

    企業が持つデータは攻撃者にとって高い価値を持ちます。特に以下の理由が挙げられます。

    • 業務停止を避けるため、身代金が支払われやすい
    • 顧客・取引先データなど外部へ悪用できる情報を保有している
    • セキュリティレベルのばらつきがある
    • クラウド移行、DX加速に伴い防御範囲が拡大している

    攻撃者は従業員のメールや脆弱なVPNを突破口として企業ネットワークに侵入し、内部に潜伏しながらバックアップ破壊など周到な準備を行った上で暗号化を実行します。

    被害を拡大させる「二重脅迫」が主流

    従来はファイルを暗号化して身代金を要求するだけだったランサムウェア攻撃ですが、近年主流となっているのが「二重脅迫(二重恐喝)」型です。これは、暗号化する前にデータを盗み出し、身代金の要求に加え、企業の機密情報をインターネットに公開するぞと、二重に脅迫を行う手法です。

    復旧可能なバックアップがあったとしても、情報漏えいリスクから身代金の支払いに追い込まれるケースが後を絶ちません。また、支払い後もデータ公開を止めない犯罪グループも存在します。

    企業のランサムウェア被害がもたらす影響

    ランサムウェア感染により、企業は多面的な損害を受けます。

    影響範囲内容
    業務面生産ライン停止、受注業務・物流遅延、顧客対応停止
    経済面身代金、復旧費、情報漏えい対応費、機会損失
    信頼面顧客・取引先・株主・社会的信用の失墜
    法的責任個人情報保護法、業界規制等による報告義務

    被害の総額は数千万円〜数十億円規模にのぼる例もめずらしくありません。

    どこから感染するのか(ランサムウェアの主な感染経路)

    多くは企業のセキュリティ対策が不十分な“穴”(=セキュリティホール)をついて侵入されます。

    • 標的型攻撃メール(添付ファイル・悪意あるリンク)
    • 脆弱性のあるVPN装置・リモート環境
    • 不正なソフトウェア・USBデバイス
    • サプライチェーンを介した侵入
    • 不正アクセスにより管理権限を奪取

    「メールを開いただけ」といった小さな油断から大被害へと発展します。このように、1つのマルウェアに感染することで様々なランサムウェアに感染する可能性があり、攻撃のパターンも複数あるということを認識しておく必要があります。

    企業がランサムウェアに感染したら:最初の72時間で何をすべきか

    感染発覚後の初動対応が、復旧の成否と被害額を大きく左右します。以下は企業が取るべき基本手順です。

    1. 被害範囲の特定と隔離
      ネットワークから切り離し、被害が拡大しないよう封じ込めます。
    2. 外部専門機関への早期連絡
      フォレンジック調査、インシデントレスポンス(CSIRT)と連携し、被害を技術的に分析します。
    3. 重要関係者への状況共有
      経営層/法務/広報/顧客/取引先/監督官庁など、情報開示を適切に実施します。
    4. バックアップからの復旧検討
      データの安全性を確認した上で、段階的に業務を再開します。
    5. 法的観点に基づく対応
      情報漏えいが発生した場合は報告義務が生じる可能性があります。

    “自社だけで判断しない”ことが極めて重要です。

    サイバーインシデント緊急対応

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    身代金を支払えば解決するのか?

    結論から言えば、身代金支払いは推奨されません。その主な理由は以下の通りです。

    • 復号ツールを受け取れる保証がない
    • データ公開を止める保証がない
    • 再び標的にされる可能性が高まる
    • 資金が犯罪組織の活動に利用される
    • 法令や国際規制に抵触するリスク

    国際的にも支払いは原則「NG」とされており、法務と専門家の判断を必須とすべき領域です。

    企業が導入すべきランサムウェア対策

    感染防止と被害最小化は両輪で取り組む必要があります。

    予防策(侵入させない)

    • EDR/XDRの導入
    • 脆弱性管理・パッチ適用
    • ゼロトラスト型アクセス制御
    • メール訓練と従業員教育

    ランサムウェアの対策として、EDR(Endpoint Detection and Response)やSIEM(Security Information and Event Management)製品を活用して、早期検知とブロックを行う方法がよく知られていますが、最大の感染経路のひとつである「メール」を対象にした訓練を行うことも有効でしょう。

    ランサムウェア対策のメール訓練としては、「定型のメールを一斉送信し、部署毎に開封率のレポートを出す」ことに加え、事前に会社の組織図や業務手順等のヒアリングを行ったうえで、よりクリックされやすいカスタマイズした攻撃メールを作成し、添付ファイルや危険なURLをクリックすることで最終的にどんな知財や資産に対してどんな被害が発生するか、具体的なリスク予測までを実施することをおすすめします。

    標的型メール訓練

    https://www.bbsec.co.jp/service/training_information/mail-practice.html
    ※外部サイトへリンクします。

    被害軽減策(侵入されても止める)

    • 隔離可能なネットワーク構成
    • 攻撃検知・自動遮断システム
    • 権限最小化・多要素認証

    復旧策(迅速に回復する)

    • オフライン・多重バックアップ
    • 復旧手順の事前検証
    • インシデント対応訓練

    経営者が担うべき役割

    ランサムウェアはIT部門だけでは対応できません。経営者視点で求められるのは以下です。

    • セキュリティ投資判断と優先順位付け
    • リスクを踏まえた継続的な管理体制の構築
    • 社内文化としてのセキュリティ意識向上
    • インシデント発生時の意思決定と情報開示方針の確立

    セキュリティは経営課題であり、企業価値を守るための投資です。

    まとめ:感染したら“すぐ動ける企業”へ

    企業がランサムウェアに感染したら、時間との戦いが始まります。初動が遅れるほど被害は拡大し、業務停止や情報漏えい、社会的信用喪失といった影響は深刻さを増します。だからこそ、「事前の備え(体制・技術・教育)」「迅速な判断(経営レベル)」「確実な復旧(検証された手順)」が不可欠です。

    攻撃はいつ起きてもおかしくありません。“感染したらどうするか”ではなく、“必ず起きる前提で備える”―それが企業のセキュリティ対策の出発点です。

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策アイキャッチ画像

    2025年9月、世界各地で「ゼロデイ脆弱性」を悪用したサイバー被害が相次ぎました。ゼロデイ攻撃とは、まだ修正プログラム(パッチ)が公開されていない未知の脆弱性を突く攻撃であり、検知や防御が極めて困難です。今、ゼロデイ攻撃は誰にとっても避けて通れないサイバーリスクとなっているのです。本記事では、最新のゼロデイ攻撃の事例、被害の傾向、そして今すぐ取るべき対策について解説します。ゼロデイ脆弱性の脅威を正しく理解し、被害を防ぐための第一歩にしましょう。

    世界各地でゼロデイ脆弱性が続発

    2025年9月、世界中でゼロデイ脆弱性をめぐる一連のサイバー攻撃が相次いで報告されました。ゼロデイ脆弱性とは、ソフトウェアやOSに潜む修正前のバグ、つまり開発元ですら把握していない段階で第三者によって悪用される脆弱性のことであり、攻撃者は一般公開前・パッチ適用前にこれを利用して侵入や情報搾取、システム乗っ取りを仕掛けます。2025年9月には、AppleのiPhoneやiPad、GoogleのAndroid端末、CiscoルーターやVPN装置、SAPやAdobe、SonicWallなど多岐にわたるプロダクトが標的となりました。

    Apple・Googleのゼロデイ脆弱性が顕在化

    Apple関連では、「CVE-2025-43300」「CVE-2025-55177」という画像解析に関するゼロクリック型脆弱性が公表され、iPhoneやiPadが世界的な攻撃対象になりました。Apple社は直ちに150ヶ国以上のユーザーへ警告通知を送り、Lockdown Modeの利用を強く推奨しました。実際に攻撃が検知された端末も多く、海外では医療機関や金融サービスを狙った“標的型ゼロデイ攻撃”の発生も確認されています。

    Android端末でも深刻な脆弱性(CVE-2025-38352など)が確認されており、カーネルやランタイム部分の権限誤取得によって、スマートフォンが遠隔操作される事例が増加しました。Chromeブラウザでもゼロデイ脆弱性が発見され、公式パッチのリリースを急いだ流れがあります。これらの技術情報は国際的なセキュリティ速報サイトや公式ベンダーのアドバイザリが一次情報となっており、日々関係者向けに更新されています。

    ビジネスシステムも標的に

    さらに、Windowsのファイル圧縮ソフトWinRARでは「CVE-2025-8088」の脆弱性が報告され、悪意を持ったファイル一つでシステム内部に侵入されるリスクが浮上しました。Citrix NetScalerにおいてはリモートコード実行(RCE)を許す「CVE-2025-7775」、企業内パスワード管理ツールPasswordstateでもゼロデイ攻撃による被害が発生しています。こうしたビジネス系システムでは、管理画面だけで全システムが乗っ取られる危険性が顕在化しており、複数企業が業務停止・復旧対応に追われています。

    ゼロデイ攻撃の基本的な流れ

    ゼロデイ攻撃の基本的な流れは、メール・Web・ファイルアップロードなどを入り口として、権限昇格の脆弱性を突き、最終的に情報搾取や遠隔操作へと至るという流れです。特に企業ユーザーはパッチ適用・監視強化・多層防御など、従来型のセキュリティ運用だけでは防ぎきれない時代に直面しています。一般のエンドユーザーも自らが使うスマートフォンやタブレットがゼロデイ脆弱性を抱えている可能性を念頭に、定期的なアップデートや公式情報の取得を習慣化する必要があります。

    ゼロデイ脆弱性は誰もが直面する脅威

    ゼロデイ脆弱性は一部の大企業だけの問題ではありません。個人が使うアプリやデバイスにもリスクが存在し、誰もが常に脅威に晒される現状が2025年の特徴です。正確な情報源に基づき、自分自身と組織の防御体制を早急に見直すことが求められているのです。

    【参考情報】

    BBSecでは

    サイバーインシデント緊急対応

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年11月12日(水)14:00~15:00
    なぜ今“脆弱性診断”が必要なのか?実績データで見る検出傾向とサービス比較
  • 2025年11月26日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「クラウド設定ミスが招く情報漏洩リスク -今こそ取り組むべき「クラウドセキュリティ設定診断」の重要性-
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    【2025年最新】日本国内で急増するランサムウェア被害-無印良品・アスクル・アサヒグループの企業の被害事例まとめ-

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    日本国内で急増するランサムウェア被害事例まとめアイキャッチ画像

    2025年、日本国内でランサムウェア被害がかつてない勢いで拡大しています。無印良品、アスクル、アサヒグループなど名だたる企業でシステム障害や物流停止が発生し、社会インフラにも影響が波及。中小企業を狙う攻撃も急増し、もはやどの組織も例外ではありません。本記事では、最新の統計と主要な被害事例をもとに、日本で深刻化する脅威の実態と求められる対策を解説します。

    日本国内で深刻化するランサムウェア被害の現状

    2025年に入り、日本ではランサムウェアによるサイバー攻撃が過去にないペースで増加しています。警察庁「令和7年上半期における サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」の統計データによると、2025年上半期だけで116件もの法人・団体被害が確認され、3期連続で100件を超える高水準が続いています。特に、製造業や物流、医療機関、教育関連といった社会インフラを支える業界が標的にされる傾向が顕著です。

    Cisco Talosの分析「2025年上半期における日本でのランサムウェア被害の状況」によれば、被害数は前年同期比1.4倍と急増し、約7割が資本金10億円未満の中小企業だったことから、攻撃者が「防御の甘い組織」を狙っている実態が浮き彫りとなっています。加えて、感染経路の多くでVPN機器やリモートデスクトップ経由の侵入が確認され、テレワーク環境に潜む脆弱性が依然として主要なリスク要因となっています。

    無印良品のネットストア停止、物流依存の脆弱性が露呈

    10月19日夜、良品計画が運営する「無印良品ネットストア」が突如として受注・出荷停止に追い込まれ、多くの利用者がアクセス不能となりました*2。原因は、配送委託先であるアスクル株式会社のシステムがランサムウェアに感染し、物流中枢が一時的にまひしたことにあります。復旧作業は続いているものの、再開時期は未定であり、公式アプリ「MUJIアプリ」にも障害が波及。店舗販売は継続しているものの、サプライチェーン全体の連動性が高い現代における、小売業の脆弱さを象徴する事例といえます。この一件を受けて、他企業でも外注先のセキュリティ体制見直しが急務となっています。

    アスクル全システム停止、全国的な影響が拡大

    事件の中心にあるアスクルでは、自社のWebサイト、FAX注文、会員登録、返品受付など主要サービスがすべて停止に追い込まれ、企業間取引にも連鎖的な影響が出ました*2 。特に、医薬品関連業務を扱う「ロハコドラッグ」でも受注と問い合わせがストップし、医療・小売業双方への波及が確認されている。物流プラットフォームとして無数の企業を支える同社の被害は、単一企業の障害にとどまらず、全国で商品供給遅延が発生する深刻な社会問題へと発展しています。専門家は、これを「日本版Colonia Pipeline事件」と形容し、サプライチェーン全体の“単一障害点(SPOF)”対策の必要性を強調しています。

    アサヒグループでも感染、製造・出荷に支障

    2025年9月末、アサヒグループホールディングスでランサムウェア感染による重大なシステム障害が発生しました。同社の調査報告によると、外部からの不正アクセスによるサーバ感染により、社内通信システムや受発注処理の一部が機能停止、復旧までには数週間を要したということです。また、現在は個人情報を含むデータ流出の可能性についても調査を継続中としています*3 。この事件を受け、世界的企業においても情報セキュリティ体制が問われ、飲料・食品メーカー各社が内部サーバ・VPN運用方針を見直す契機となりました。

    埼玉県商工会連合会への攻撃、地方組織にも波及

    10月中旬には、埼玉県商工会連合会がサイバー攻撃によるシステム障害を公表しました*4 。調査の結果、外部からの攻撃によってサーバが停止したことが確認され、業務システムの利用不能状態が続いています。現時点で個人情報の流出は確認されていないものの、復旧には時間を要しています。全国の商工団体や自治体は同様のシステム構成を採用しているケースが多く、今後同種の攻撃が波及する可能性も指摘されています。こうした事例は、地方行政や中小組織におけるセキュリティ対策の遅れを改めて浮かび上がらせました。

    被害の拡大要因と今後の対策

    各事例に共通していえるのは、ランサムウェア攻撃が単一の企業問題にとどまらず、社会的インフラとしての供給網全体に深刻な影響を与えている点です。警察庁の報告では、感染経路の6割がVPN機器経由であり、初期侵入を防ぐ「ゼロトラスト構成」や「多要素認証」が依然として導入不足であることが問題とされています*5 。加えて、国際的犯罪グループによる「日本語対応型ランサムウェア」も台頭しており、警告文を日本語化することで金銭要求の成功率を上げる手口も増えています。企業や団体においては、セキュリティパッチの即時適用、オフラインバックアップの準備、サプライチェーン全体でのセキュリティ協定の明文化といった具体的施策が今後不可欠となります。加えて、個人ユーザーも取引先の障害や情報流出の影響を受ける可能性があり、パスワードの管理や多要素認証の徹底も求められることになります。

    2025年の日本はランサムウェア攻撃が“社会的リスク”として定着する段階に入りつつあります。今後は、企業の危機対応力とサプライチェーン全体の連携体制こそが、経済活動の信頼を支える鍵となるでしょう。

    BBSecでは

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーインシデント緊急対応

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年11月5日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「SQAT®ペネトレーションテスト実演付き!-攻撃の“成立”を見極めるペネトレーションテストとは-
  • 2025年11月12日(水)14:00~15:00
    なぜ今“脆弱性診断”が必要なのか?実績データで見る検出傾向とサービス比較
  • 2025年11月26日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「クラウド設定ミスが招く情報漏洩リスク -今こそ取り組むべき「クラウドセキュリティ設定診断」の重要性-
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    【続報】Qilinランサムウェア攻撃の実態と対策 -2025年の情勢と企業・個人が取るべき行動-

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    【続報】Qilinランサムウェア攻撃の実態と対策 アイキャッチ画像

    本記事は「Qilinランサムウェア攻撃の実態と対策:Fortinet脆弱性の悪用を解説」の続報となります。前回記事とあわせてぜひご覧ください。

    2025年10月8日、アサヒグループホールディングス株式会社を襲ったサイバー攻撃でランサムウェア攻撃グループ「Qilin(キリン)」から犯行声明が出されました。現在もなお、攻撃の手を緩めておらず、警戒が高まっています。

    アサヒグループホールディングスのサイバー攻撃に関する記事はこちら
    アサヒグループを襲ったランサムウェア攻撃

    本記事では、ランサムウェア攻撃の実態を踏まえ、企業がとるべき対策・行動について解説いたします。

    サイバー攻撃の現場では、年々脅威が高度化し被害規模も拡大しています。なかでも「Qilin(キリン)」と呼ばれるランサムウェアは、ここ数年で著しい存在感を示し、2025年も企業や社会インフラを揺るがす脅威の一つとなっています。

    Qilinとは何か—巧妙さを増した“身代金ウイルス”

    Qilinは、2022年ごろからサイバー犯罪の地下で「Agenda」として登場し、独自の犯罪ビジネスモデル(RaaS: Ransomware as a Service )を展開。WindowsやLinuxだけでなく、ESXiなど企業利用の仮想基盤まで標的とする、高度なマルチプラットフォーム型が特徴です。実装にはRustとC言語を用い、検知回避・高速暗号化など最新技術を積極的に採用している点でも業界の注目を集めています。

    MITRE ATT&CKで示されるように、Qilinは標的型メール(LockBit, Cl0p, BlackBasta 等)との主な違いは、攻撃の多様性・速度、そしてビジネスモデル(報酬率の高さ、サポート体制)にあります。

    何が問題なのか—現場で考えるインパクト

    例えば、大規模病院が攻撃を受ければ、診察や手術、ITシステムだけでなく命にもかかわる混乱が起こります。製造業でもプラント停止や供給網の寸断、金融機関であれば社会的信用の失墜につながります。実際にQilinの被害を受けた組織の多くでは、サイバー保険の範囲を超える損失や、事業継続そのものが難しくなるケースも報告されています。

    具体的な対策—被害を防ぐ/最小化するために

    システムの最新化と脆弱性管理

    まずはWindows、Linux、仮想化基盤などのシステム全てに最新のセキュリティパッチを適用。ベンダーが公開する脆弱性情報を定期的に確認し、重大度が高い場合は即時対処を徹底しましょう。

    バックアップルールの運用

    業務データは“3-2-1-1ルール”(3種類・2媒体・1コピーをオフライン・1つはイミュータブル)を参考に複数箇所へ分散。月1回以上の復旧テストも有効です。

    異常の早期検知と対応訓練

    エンドポイント保護や監視(EDR)、SIEMMFAによる多要素認証を導入し、万が一の場合は、従業員ごとに具体的なエスカレーション手順・初動マニュアルの整備が必要です

    従業員へのサイバーセキュリティ教育

    フィッシングメールや不審な操作に気付けるよう、月1回程度の模擬訓練や意識向上セミナーも推奨されます。

    まとめ:自ら考え動く対応力が肝要

    Qilinに限らず、ビジネスの現場とリアル社会双方に大きなインパクトを及ぼすサイバー攻撃が続く時代、一人一人がサイバー脅威を自分ごととして捉え、アップデート・バックアップ・初動訓練 の3本柱を習慣化することが、サイバー攻撃の被害を最小化するための基本戦略といえるでしょう

    【参考情報】

    本記事は2025年10月時点の公式発表・主要レポートをもとに作成しています。今後も技術進化や脅威情勢の変化に応じて、定期的に情報収集をされることをおすすめします。


    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    サイバーインシデント緊急対応

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年10月22日(水)14:00~15:00
    ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~
  • 2025年10月29日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    アサヒグループを襲ったランサムウェア攻撃

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    アサヒグループを襲った大規模サイバー攻撃アイキャッチ画像

    2025年9月29日午前7時頃、日本を代表する飲料メーカー、アサヒグループホールディングス株式会社が大規模なサイバー攻撃を受けました*6 。サイバー攻撃を受け、アサヒグループの業務システムが全面的に停止する事態に陥り、ビジネスの根幹を揺るがす重大なインシデントとなりました。本記事では、公式発表をもとに攻撃の概要と影響範囲、今後の課題について解説します。

    【関連ウェビナー開催情報】
    弊社では10月22日(水)14:00より、「ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~」と題したウェビナーを開催予定です。最新のランサムウェア攻撃手口と国内外の被害事例を解説するとともに、企業が取るべき実践的な「防御の仕組み」を具体的に紹介します。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。

    事件の概要

    2025年9月29日午前7時頃、アサヒグループホールディングス株式会社が突如として大規模なサイバー攻撃を受けました。サイバー攻撃を受け、アサヒグループの業務システムが全面的に停止する事態に陥り、ビジネスの根幹を揺るがす重大なインシデントとなりました。アサヒグループは国内外で事業を展開する巨大企業であり、日本市場での売り上げが全体の約半分を占めています。そのため今回の攻撃は業界内外に大きな波紋を広げています。事件は単なる技術的問題にとどまらず、日本企業が直面するサイバーセキュリティの現状と課題を象徴するものであることを強調しておきたいところです。

    攻撃の影響範囲

    今回のサイバー攻撃は日本国内の事業に限定されており、特に受注や出荷をはじめとした物流業務、さらに顧客対応を担うコールセンター、さらには生産活動にまで深刻な影響を与えました。受注および出荷業務のシステム停止は全国内のグループ各社に及び、ビールや清涼飲料水などの商品供給が一時的に滞ったことは想像に難くありません。生産面では国内約30の工場の多くが停止し、供給網全体が断絶寸前の状況に追い込まれました。一方で、欧州やオセアニア、東南アジアなどの海外事業には影響がなく、地域単位でセキュリティ境界を設計していたことが一定の防御効果をもたらした可能性が示唆されています。

    情報漏洩の現状とリスク

    アサヒグループは公式声明で、現段階で個人情報や顧客データ、企業情報の漏洩は確認されていないと発表しているものの、詳細な調査は継続中であるとしています。サイバー攻撃の被害調査は時間を要するものであり、新たな事実が明らかになる可能性を完全には否定できません。この点は、情報管理が企業の信用維持に直結する食品・飲料業界において特に重要なポイントです。これまでのところ、流出がないことは幸いですが、それでも引き続き厳密な対応が求められています。

    サーバへのランサムウェア攻撃であることを確認

    これまでの調査で明らかにされている事実は、攻撃開始が9月29日の早朝であり、標的は日本国内の主要業務システムに絞られていることです。攻撃により業務システムの完全停止という被害をもたらしているものの、サイバー攻撃の詳細なシナリオは現時点(2025年10月3日時点)で非公表となっています。専門家たちはアサヒグループのサーバに対するランサムウェア攻撃である、と確認しましたが、犯行グループからの声明がなく、ダークウェブでの脅迫サイトにもアサヒの名はみられないため、具体的な状況は流動的です。身代金の要求自体も公にされていない中で、交渉が進行中であるとの報告もあり、今後の展開に注目が集まっています。

    巨大企業に与えたビジネスインパクトと市場への影響

    アサヒグループは従業員約3万人、年間で1億ヘクトリットルもの飲料を生産する日本最大級の飲料メーカーです。2024年の売上高は約2兆9,394億円に達し、日本のビール市場の約3分の1を占めています。今回のサイバー攻撃による業務停止は、たんにアサヒグループの損失にとどまらず、同業界全体に波及するリスクを含んでいます。食品・飲料業界はダウンタイムに対して極めて厳しい規制や慣習があり、1時間の停止だけで数億円の損失が発生するケースも珍しくありません。過去の類似事例では、Marks & Spencerが約3億ドル、Co-operative Groupが約1億8百万ドルの損失を出したことからも、アサヒグループの被害がいかに大きいか推測できます。

    システム復旧対応の状況と今後の課題

    2025年10月3日現在、アサヒグループは依然として復旧の見通しが立っておらず、生産再開が遅れている状況を公表しています。10月1日に予定されていた新商品発表会も中止され、事態の深刻さがうかがえます。今後の最大の課題は迅速な復旧とビジネス継続性の確保であり、これと並行してセキュリティ対策の抜本的な見直しと強化、顧客信頼の回復、そしてサプライチェーン全体の再構築が急務です。これらは単に企業の情報システムの問題のみにとどまらず、社会的信用や取引先との関係維持に直結する重要なポイントです。

    日本企業を襲うサイバー攻撃の波

    今回の事件は、日本企業全体が直面するサイバー脅威の一例に過ぎません。実際、日本国内ではランサムウェア攻撃が増加しており、特に中小企業は脆弱な体制のために深刻なリスクに晒されています。さらに、サプライチェーン経由の攻撃も増えており、2022年に起きた小島プレス工業株式会社の攻撃によりトヨタの国内14工場が操業停止に追い込まれたケース*2
    は記憶に新しいです。これらの事例は、業界全体や取引先と連携した包括的なセキュリティ対策の必要性を企業に対して訴えています。

    迅速な対応と長期的セキュリティ対策の重要性

    アサヒグループをはじめとする日本企業は、今回の事件を踏まえて即時的な対策を講じる必要があります。インシデント対応計画の見直しやバックアップ体制の強化、サプライチェーンのリスク評価は最低限必須です。また、危機時の情報伝達(Crisis communication)体制も整備し、ステークホルダーへの透明で迅速な対応が求められます。長期的にはゼロトラストアーキテクチャの導入、定期的なセキュリティ訓練、業界横断での脅威情報共有、さらにサイバー保険によるリスクの財務的緩和といった多層的な防御策を推進することが望まれます。

    食品・飲料業界全体への提言と未来への展望

    食品・飲料業界はその性質上、ダウンタイムに対する許容度が非常に低く、今回のアサヒグループの事件が業界全体に警鐘を鳴らすこととなりました。業界標準のセキュリティフレームワークを策定し、サプライチェーン全体での防御態勢を強化するとともに、官民が連携して新たな脅威に対抗するための研究開発へ投資を行うべきでしょう。こうした取り組みが、将来的な安全性の担保やブランド価値の維持に不可欠となります。アサヒグループの早期復旧と、事件を契機とした日本企業全体のセキュリティレベルの向上が期待されます。

    【関連情報】


    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年10月8日(水)14:00~15:00
    ウェビナー参加者限定特典付き!
    ソースコード診断で実現する安全な開発とは?脆弱性対策とDevSecOps実践
  • 2025年10月22日(水)14:00~15:00
    ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~
  • 2025年10月29日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。

    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。


    Security Serviceへのリンクバナー画像

    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像

    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで
    第2回:セキュリティインシデント発生時の対応 ─初動から復旧まで

    Share
    セキュリティインシデント発生時の対応アイキャッチ画像

    セキュリティインシデントは、発生した瞬間から組織に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、どれほど迅速かつ的確に対応できるかが被害の拡大を防ぐ鍵となります。特に初動対応の遅れは、情報漏洩の範囲拡大やシステム停止の長期化といった二次被害を招きかねません。本記事では、セキュリティインシデントが発生した際に組織が取るべき対応を、初動から原因調査、復旧、そして報告体制まで段階的に解説します。

    インシデント対応が遅れると被害が拡大する―「初動対応」の重要性

    セキュリティインシデントが発生した際、最初に求められるのは「被害の拡大を防ぐこと」です。具体的には、該当システムのネットワーク接続を遮断する、影響範囲を限定する、ログを確保して証拠を保存するといった行動が挙げられます。ここで重要なのは、焦ってシステムを完全に停止させたり証拠を消去したりしてしまわないことです。例えば、感染が疑われるPCを慌てて初期化すると、攻撃経路やマルウェアの痕跡といった重要な調査情報を失うことになり、後続の対応が困難になります。そのため、インシデント発生時には「まず拡大防止と証拠保全を優先する」という基本原則を徹底する必要があります。初動段階での判断ミスが、被害規模や復旧にかかる時間を大きく左右するのです。

    セキュリティインシデント対応の基本フロー

    社内連携と報告体制

    セキュリティインシデントが発生した際、技術的な対応と同じくらい重要なのが「社内連携と報告体制」です。現場担当者が異常を検知した場合、直属の上司や情報システム部門への迅速な報告はもちろん、経営層へのエスカレーションルートを明確にしておくことが不可欠です。さらに、インシデント対応を一部門だけに任せるのではなく、法務・広報・総務など関連部門との連携が欠かせません。例えば、法務部門は法的リスクの確認や外部機関への届出判断を担い、広報部門は顧客や取引先への適切な情報発信を行います。これらが連携できていないと、組織全体としての対応が後手に回り、混乱や信頼失墜を招く恐れがあります。そのため、平常時から「誰が・どのタイミングで・誰に報告するか」を明文化したインシデント対応計画を整備しておくことが重要です。

    被害範囲の特定

    セキュリティインシデントが発生した際に、初動対応で重要なのが「被害範囲の特定」です。単なる障害や一時的な不具合と、外部からの不正アクセスやマルウェア感染といったインシデントを明確に区別する必要があります。具体的には、ログの解析やネットワーク監視、ユーザ報告などを通じて、侵入経路や影響を受けたシステム、漏洩が疑われる情報を洗い出します。この段階で誤った判断を下すと、被害を過小評価して対応が遅れたり、逆に過大評価して不要な混乱を招いたりするリスクがあります。そのため、迅速かつ客観的に状況を評価できる仕組みを整えておくことが欠かせません。

    被害の封じ込め・拡大防止

    被害範囲を特定した後は、被害の「封じ込め」が必要です。これは、インシデントの拡大を防ぎ、さらなる被害を最小限に抑えるための重要なプロセスです。例えば、侵害を受けたサーバをネットワークから切り離す、攻撃者が利用したアカウントを即座に無効化する、通信を一時的に遮断するなどの対応が考えられます。ただし、封じ込めの方法を誤ると、証拠が失われたり、攻撃者に異変を察知されて活動を隠蔽されたりする恐れもあります。そのため、封じ込めの対応はセキュリティチーム内で役割を明確にし、優先順位を付けて慎重に進めることが求められます。

    原因調査・ログ解析・フォレンジック調査

    封じ込めが完了した後は、インシデントの原因を突き止める「原因調査」が不可欠です。攻撃者がどのように侵入したのか、どの脆弱性を悪用したのか、内部関係者の過失や不正が関与していないかなど、多角的な視点から調査を進める必要があります。ログ解析やフォレンジック調査を通じて、攻撃経路や被害状況を正確に把握することが求められます。この段階で調査が不十分だと、再発防止策が不完全となり、再び同様の被害を招く可能性が高まります。そのため、外部のセキュリティ専門家の協力を得るケースも少なくありません。

    復旧対応

    原因が特定された後は、システムやサービスの復旧作業に移ります。ただ単に停止したサービスを再開させるのではなく、原因を取り除き、安全性を確認したうえで再稼働することが重要です。例えば、脆弱性が悪用されていた場合はセキュリティパッチを適用し、不正アクセスで改竄されたデータがあればバックアップから復旧します。また、復旧の際には「段階的な再開」を意識することが推奨されます。いきなり全システムを戻すのではなく、優先度の高いシステムから順に稼働させ、監視を強化しながら正常性を確認することで、再度の障害発生や攻撃再開のリスクを軽減できます。

    関係者への報告・情報共有

    復旧作業と並行して、関係者への適切な報告や情報共有も欠かせません。セキュリティインシデントは自社だけの問題ではなく、取引先や顧客、さらには規制当局にまで影響が及ぶ可能性があります。そのため、影響範囲を正確に把握したうえで、必要な関係者に迅速かつ誠実に情報を提供することが求められます。特に個人情報漏洩が発生した場合、法令やガイドラインに従った報告が義務付けられているケースも多く、対応を怠れば法的リスクや企業の信頼失墜につながります。また、社内向けの情報共有も重要であり、従業員が不安や誤情報に惑わされないよう、明確なメッセージを発信する体制を整えることが望まれます。

    再発防止策の検討

    インシデント対応の最終段階は、再発を防ぐための改善策を講じることです。単に原因を修正するだけでなく、組織全体のセキュリティ体制を見直す機会として活用することが重要です。例えば、脆弱性管理の仕組みを強化する、アクセス制御のルールを見直す、ログ監視やアラートの精度を高めるなど、技術的な改善が挙げられます。また、従業員へのセキュリティ教育や定期的な訓練を実施し、人為的なミスや不注意を減らす取り組みも効果的です。さらに、インシデント対応の流れを記録し、振り返り(ポストモーテム)を行うことで、今後同様の事態が発生した際に迅速かつ適切に対処できる体制を構築できます。

    BBSecでは

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスも提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーインシデント緊急対応

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    まとめ

    本記事では、セキュリティインシデントが発生した際に組織が取るべき対応を、初動から原因調査、復旧、関係者への報告、そして再発防止まで段階的に解説しました。インシデント対応は単なる技術的作業ではなく、社内連携や外部機関との調整、法令遵守、そして企業全体の信頼維持といった広範な要素が関わります。特に初動対応の速さや正確さは被害の拡大を防ぐ鍵となるため、日頃からの対応体制の整備や訓練が欠かせません。次回第3回では、インシデントの発生を未然に防ぐ取り組みや、組織全体でのセキュリティ強化策について詳しく解説し、実践的な予防策のポイントを紹介します。


    ―第3回へ続く―

    【参考情報】


    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年10月8日(水)14:00~15:00
    ウェビナー参加者限定特典付き!
    ソースコード診断で実現する安全な開発とは?脆弱性対策とDevSecOps実践
  • 2025年10月22日(水)14:00~15:00
    ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~
  • 2025年10月29日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    AIとセキュリティ最前線 -AI搭載マルウェアとは?脅威とセキュリティ対策-

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    AIとセキュリティ最前線‐AI搭載マルウェアとは?脅威とセキュリティ対策‐アイキャッチ画像

    AIの進化により業務効率化を促進された一方で、ChatGPTを悪用したフィッシングメールやAI画像による偽装、AIを搭載したマルウェア・ランサムウェアの出現、さらにプロンプトインジェクションによる情報漏洩など、脅威が多様化しています。本記事では「AIとセキュリティ」をテーマに、AIの脆弱性と悪用事例を整理し、マルウェア検知や組織が取るべき防御策を解説します。AI活用に取り組む企業にとって必読の内容です。

    AIとセキュリティの関係性

    AI技術の進歩は、業務効率や創造性の向上に大きく寄与する一方で、サイバーセキュリティの面では新たな脅威を生み出しています。近年では、AIを悪用したフィッシングメールや偽画像の拡散、AIを組み込んだマルウェアやランサムウェアの登場、さらにプロンプトインジェクションによるチャットボットの不正操作や情報漏洩など、AIに関連した多様な攻撃手法が報告され、「AIとセキュリティ」は組織にとって喫緊の課題となっています。こうした脅威はいずれも、組織の情報資産や業務全体に影響を及ぼすリスクの一部として理解することが重要です。

    一方、防御の側面でもAIは進化しており、マルウェア検知やログ監視の高度化、EDRによる未知の脅威の早期発見など、攻撃と防御の双方でAIセキュリティは進化しています。組織には、脅威を正しく理解すると共に、防御面におけるAI活用を積極的に進める姿勢が求められます。

    SQAT.jpでは過去にも「ChatGPTとセキュリティ」をテーマにした記事を公開しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    ChatGPTとセキュリティ-サイバーセキュリティの観点からみた生成AIの活用と課題-

    フィッシングメールの高度化

    従来までのフィッシングメールは、誤字脱字や不自然な日本語が多く、注意深い利用者であれば比較的容易に見抜くことができました。しかし、生成AIの普及により状況は一変しています。生成AIにより日本語の生成精度が飛躍的に高まり、違和感のない文章を伴ったフィッシングメールが大量に作成されるようになったからです。加えて、AIの支援により攻撃者は高度なソーシャルエンジニアリング手法を容易に組み込めるようになっています。例えば、受信者の立場や業務状況に即した文脈を織り込み、心理的に開封やクリックを誘導しやすいメールを簡単に作成できるのです。これにより、従来の「日本語が怪しい」「文脈が不自然」といった従来型のチェックでは見抜けないケースが増えています。

    世の多くの組織にとってそうであるように、サイバー攻撃者にとっても生成AIはコスト削減と効率化の強力な武器となっています。組織にとっては、こうしたフィッシングの高度化が新たなリスクとして突き付けられており、今後は人の注意力に依存した防御では限界があることを認識する必要があります。

    AI内蔵型マルウェア「LameHug」

    LameHugは、2025年7月にウクライナのCERT‑UAによって発見された、APT29の関与が疑われるAI(大規模言語モデル:LLM)を実行時に活用するマルウェアです。従来型マルウェアがあらかじめ定義されたコマンドや固定の挙動を持つのに対し、LameHugは感染端末の環境に応じてリアルタイムにコマンドを生成します。スピアフィッシングメールを起点に感染が始まり、攻撃メールには偽装されたアーカイブが添付されています。LameHugは被害者のファイル構造やネットワーク構成に応じて、LLMが最適なWindowsコマンド(systeminfo、tasklist、netstat、ipconfigなど)を組み合わせて指令を出すため、従来型マルウェアより柔軟な挙動が可能です。さらに、署名ベースや静的検知に頼る従来のセキュリティツールを回避しやすい点も特徴です。動的にコマンドを生成するため、固定パターンでは検知が困難です。また、データ窃取も迅速に行われ、持続的なバックドアより「一度に情報を奪う」設計となっています。

    このように、LameHugは従来型マルウェアと比べ、環境適応性・リアルタイム性・検知回避能力が大きく進化しており、サイバーセキュリティの脅威像を再定義する存在と言えます。

    AI搭載ランサムウェア「PromptLock」

    2025年8月、ESETの研究チームは世界初のAI搭載ランサムウェア「PromptLock」を発見したと発表し、セキュリティ業界に大きな注目を集めました。後にこれはニューヨーク大学(NYU)の研究者による実験的な取り組みであることが判明しましたが、AIを活用したランサムウェアのコンセプトが現実に成立し得ることを示した意義は非常に大きいといえます。

    PromptLockは、従来型ランサムウェアと異なり、感染後の挙動や身代金要求文をAIが自動生成できる点が特徴です。これにより、固定的なパターンに依存した従来の検知方法では捕捉が難しくなるだけでなく、対象組織の環境や状況に応じたカスタマイズ攻撃も可能となります。また、複数の端末やネットワーク構成に合わせた戦略的な攻撃展開も現実的に行えるため、AIを用いたランサムウェアの概念が現実の攻撃として成立し得ることが明確に示されました。

    プロンプトインジェクション攻撃

    近年、AIブラウザやチャットボットを対象とした「プロンプトインジェクション攻撃」が、新たな深刻な脆弱性として指摘されています。生成AIの普及とブラウザや業務システムとの連携拡大に伴い、攻撃の実現可能性は高まっています。この攻撃は、ユーザが入力する指示文に悪意あるプロンプトを仕込み、AIを騙して本来想定されていない動作をさせるものです。具体的には、外部の攻撃者が生成AIを組み込んだブラウザに不正な指示を与え、社内機密や顧客データを外部に送信させたり、悪意あるコードを実行させたりするリスクが確認されています。AIが入力テキストを過剰に信用する設計に起因するこの脆弱性は、単なる技術的課題にとどまらず、組織の情報漏洩や業務継続への影響、コンプライアンス違反など、幅広いリスクに直結します。AIを導入する際には、セキュリティ検証やアクセス制御を徹底し、AIであることを安全の前提と考えない姿勢が重要です。

    AIのセキュリティリスク

    AIの利活用が広がる中で、組織が直面するセキュリティリスクは多岐にわたります。代表的なものとして、学習データの改竄・汚染(データポイズニング)、情報漏洩、シャドーAIの3つが挙げられます。

    データの改竄・汚染(データポイズニング)

    AIは学習データに依存して判断を行うため、攻撃者が学習データに不正なデータを混入させると、AIは誤った判断を下す危険があります。例えば、不正な金融取引データを「正常」と学習させれば、不正検知システムは攻撃を見逃してしまいます。製造や物流などの業務プロセスでも同様に、AIが学習したセンサーデータや工程情報に不正を混ぜ込まれると、品質管理や異常検知の精度が低下し、損害や事故につながる可能性があります。データポイズニングは、従来のサイバー攻撃のようにネットワークや端末に直接侵入するものではなく、AIの判断プロセスそのものを標的にする攻撃である点が特徴で、組織のAI活用戦略全体に影響を及ぼす深刻なリスクです。

    情報漏洩

    生成AIはときに業務データや個人情報を入力したうえで利用されます。しかし、AIが取り扱うデータが外部に流出すると、個人のプライバシー侵害や顧客情報の漏洩、さらには競合優位性の喪失といった深刻な問題を引き起こすことを意味します。特に外部クラウド型AIサービスを利用する場合、データがどのように保存され、処理されるのかを正確に把握しておく必要があります。また、AIが生成したアウトプットに機密情報が含まれる場合、意図せず社外に配信される可能性もあるため、データ取り扱いルールやアクセス権限の厳格化が不可欠です。AIによる業務効率化の恩恵を享受する一方で、情報漏洩のリスクを軽視することはできません。

    シャドーAI

    まず、次の情報をご覧ください。

    • 44%の従業員が会社のポリシーに反してAIを職場で使用
    • 38%の従業員が承認なしに機密データをAIプラットフォームと共有

    【参考情報】

    このように、多くの組織では、従業員が個人アカウントで生成AIを業務に利用する「シャドーAI」の実態が明らかになってきています。このことは、管理部門の把握を超えてAIが利用されるため、セキュリティ上の盲点となる可能性があります。例えば、従業員が個人アカウントで顧客データをAIに入力して分析した場合、管理者はその行為を追跡できず、万一情報漏洩が発生しても原因究明が困難です。また、AIの利用ログが社内ポリシーで管理されていないと、不正利用や誤った意思決定の温床になる可能性があります。組織は、シャドーAIの使用状況を可視化し、利用ガイドラインや教育プログラムを整備することが求められます。

    これらのリスクは、AIの利便性と表裏一体です。経営層や情報システムの担当者は、AIがもたらす業務効率化の恩恵とリスクの両面を正しく理解し、自社の業務環境に即した具体的な対策を講じることが不可欠です。

    組織が実施すべきセキュリティ対策

    組織はAIを活用する環境において、従来のセキュリティ対策だけでは不十分です。まず、AIモデルやAPIを利用する際には、アクセス制御や権限管理を徹底する必要があります。利用者ごとに適切な権限を設定し、外部からの不正アクセスや情報の持ち出しを防ぐことが重要です。また、マルウェア検知やログ監視を強化することも不可欠です。これにより、AI環境を安全に運用しつつ、組織の情報資産を守る基盤を整備できます。

    SQAT.jpでは過去もフィッシング対策に関する記事を公開しています。あわせてぜひご参照ください。
    ソーシャルエンジニアリング最前線【第4回】企業が実践すべきフィッシング対策とは?
    フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策

    セキュリティ人材の育成

    AIを含む高度化するサイバー攻撃に対応するには、技術だけでなく人材の育成も不可欠です。組織は情報セキュリティ教育を通じて、従業員にAIの利活用に伴うリスクや最新の脅威動向を理解させる必要があります。例えば、フィッシングメールの高度化やプロンプトインジェクションの可能性、シャドーAIではどのようなリスクがあるのかなどを具体的に学ぶことで、日常業務におけるリスク意識を高められます。また、社内での演習やシミュレーションを通じて、攻撃を想定した実践的な対応力を養うことも重要です。こうした取り組みにより、単なるツールの管理者ではなく、攻撃に対して能動的に判断・対応できる人材を育て、組織全体のセキュリティ体制を強化することが可能です。詳しくは下記のお問い合わせボタンからお問い合わせページに飛んでいただき、お気軽にお問い合わせください。

    AIの進化は、組織に大きな競争優位をもたらす一方で、新たなサイバー脅威を次々と生み出しています。今後の組織に求められるのは、防御と利活用のバランスを取りながらAI時代にふさわしいセキュリティ戦略を構築し、競争力を維持していくことでしょう。

    BBSecでは

    インシデント初動対応準備支援

    拡大するサイバーセキュリティの脅威に対応するために今すぐにでも準備すべきことを明確にします。

    https://www.bbsec.co.jp/service/evaluation_consulting/incident_initial_response.html
    ※外部サイトにリンクします。

    G-MDRTM

    サイバー攻撃への防御を強化しつつ、専門技術者の確保や最新技術への投資負担を軽減します

    https://www.bbsec.co.jp/service/mss/gmdr.html
    ※外部サイトにリンクします。

    エンドポイントセキュリティ

    組織の端末を24/365体制で監視。インシデント発生時には端末隔離等の初動対応を実施します。

    https://www.bbsec.co.jp/service/mss/edr-mss.html
    ※外部サイトにリンクします。

    サイバーインシデント緊急対応

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年10月1日(水)13:00~14:00
    2025年10月Windows10サポート終了へ 今知るべきサポート切れのソフトウェアへのセキュリティ対策ガイド
  • 2025年10月8日(水)14:00~15:00
    ウェビナー参加者限定特典付き!
    ソースコード診断で実現する安全な開発とは?脆弱性対策とDevSecOps実践
  • 2025年10月22日(水)14:00~15:00
    ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~
  • 2025年10月29日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで
    第1回:セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例

    Share

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例アイキャッチ画像

    近年、企業や組織を取り巻くサイバー攻撃はますます巧妙化しており、「セキュリティインシデント」が発生した場合、情報漏洩や不正アクセスなどによって、金銭的損失だけでなく企業の信用失墜にも直結します。本記事では、セキュリティインシデントの定義や種類、実際に発生した事例を取り上げ、その影響とリスクを理解するための基礎知識を解説します。

    セキュリティインシデントの定義

    セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークにおいて、情報のセキュリティの3要素、「機密性」「完全性」「可用性」を脅かす事象の総称です。具体的には、不正アクセスや情報漏洩、マルウェア感染、サービス運用妨害(DoS)攻撃などが含まれます。近年はクラウドやリモートワークの普及により、攻撃対象や被害の範囲が広がり、セキュリティインシデントの発生リスクは増大しています。国内外で大規模な事件が相次いで報道されるなか、インシデントの発生はもはや大企業に限られた問題ではなく、中小企業や自治体、教育機関に至るまで幅広い組織が直面しています。そのため、経営層から現場担当者に至るまで、セキュリティインシデントへの理解と備えが求められているのです。

    セキュリティインシデントの種類(例)

    一口にセキュリティインシデントといっても、その内容は多岐にわたります。代表的なものとしては、まず「不正アクセス」が挙げられます。攻撃者が外部からシステムに侵入し、機密情報を窃取したり改竄したりするケースです。次に「マルウェア感染」があります。ウイルスやランサムウェアなどの悪意あるソフトウェアにより、データが暗号化され業務が停止する被害が増えています。また、従業員による「内部不正」も見逃せません。権限を持つ社員が意図的に情報を持ち出すケースや、誤操作による情報流出が問題化しています。さらに「情報漏洩」や「サービス停止(DoS/DDoS攻撃など)」も、企業活動を直撃する深刻なインシデントです。このようにセキュリティインシデントは外部攻撃だけでなく、内部要因やシステム障害など多面的に発生し得るため、幅広い視点での備えが不可欠です。

    実際に発生した主なセキュリティインシデント事例

    セキュリティインシデントは国内外で日々多発しています。この表は2025年8月から9月にかけて発生した主要な国内インシデント事例をまとめたものです。ランサムウェア攻撃や不正アクセスによる被害が多く、特に製造業や重要インフラへの影響が深刻化している傾向が見られます。

    被害報告日 被害企業 概要 主な原因 影響範囲
    2025年9月 国内ガス・電力会社 人為的ミス LPガス検針端末の紛失 顧客情報6,303件の漏洩等のおそれ*3
    2025年9月 国内デジタルサービス運営委託事業者 個人情報漏洩 受講状況管理ツールへの登録作業ミス リスキリングプログラム受講者1名の個人情報が他の受講者1名に閲覧可能に*2
    2025年9月 国内食料品小売業 個人情報漏洩 サーバへの第三者からの不正アクセス 企業情報及び個人情報が流出した可能性*3
    2025年9月 委託事業者 操作・管理ミス オペレーターの利用者情報取り違い 高齢者の見守り・安否確認が行われず*4
    2025年9月 国内オフィス機器販売会社 個人情報漏洩 第三者による不正アクセス カード支払い顧客の情報漏洩の可能性*5
    2025年8月 ハウステンボス株式会社 システム障害 第三者による不正アクセス 一部サービスが利用できない状況に*6
    2025年8月 国内電力関連会社 不正ログイン リスト型攻撃(複数IPアドレスから大量ログイン試行) ポイント不正利用444件*7
    2025年8月 国内機器メーカー企業 不正アクセス 海外グループ会社を経由した第三者の不正アクセス 一部サービス提供停止(8月16日復旧)*8
    2025年8月 医療用メーカー企業 マルウェア感染 システムのランサムウェア感染 2日間出荷停止、その後再開*9
    2025年8月 国内建設事業者 マルウェア感染 システムのランサムウェア感染 海外グループ会社の一部サーバが暗号化*10
    2025年8月 国内外郭団体 乗っ取り 第三者による一部メールアドレスの乗っ取り 迷惑メール送信元として悪用*11
    2025年8月 暗号資産交換事業者 クラウド設定ミス 顧客データ移転作業中のクラウド設定ミス 海外メディアの報道で発覚、アクセス制限不備*12
    2025年8月 国内銀行 元従業員による情報の不正取得 出向職員による電子計算機使用詐欺 アコムから出向の元行員が逮捕・懲戒解雇*13
    2025年8月 国内病院 個人情報不正利用 委託職員が診療申込書から電話番号を不正入手 LINEで患者に私的メッセージを送付*14
    2024年12月 国内総合印刷事業者 マルウェア感染 VPNからの不正アクセス(パスワード漏洩または脆弱性悪用) 複数のサーバが暗号化される被害*15

    これらの事例は「セキュリティインシデントは特定の大企業だけの問題ではない」という現実を示しており、規模や業種にかかわらず備えが不可欠であることを強調しています。

    セキュリティインシデントが企業に与える影響

    セキュリティインシデントが発生すると、企業は多方面に深刻な影響を受けます。最もわかりやすいのは、システム停止や情報漏洩に伴う金銭的損失です。業務が一時的に止まることで売上が減少し、復旧作業や調査にかかる費用も膨大になります。さらに、顧客情報や取引先情報が流出すれば、企業の信頼性が大きく揺らぎ、契約解除や取引停止に直結する可能性があります。また、個人情報保護法や業界ごとのセキュリティ基準に違反すれば、法的責任や行政処分を受けるリスクも高まります。株式市場に上場している企業であれば、セキュリティインシデントの公表によって株価が急落するケースも少なくありません。このように、単なるシステム障害にとどまらず、企業経営全体に打撃を与える点がセキュリティインシデントの恐ろしさといえます。

    まとめ

    本記事では、セキュリティインシデントの定義や種類、実際に発生した事例、そして企業に及ぼす影響について解説しました。改めて強調すべきは、セキュリティインシデントは大企業だけでなく、中小企業や自治体、教育機関などあらゆる組織にとって現実的な脅威であるという点です。しかも一度発生すると、金銭的損失だけでなく、顧客や取引先からの信頼低下、法的リスク、社会的信用の失墜といった連鎖的な被害を引き起こします。こうした背景から、セキュリティインシデントを「発生してから考える」姿勢ではなく、「発生する前提で備える」姿勢が求められています。次回は、実際にインシデントが発生した際にどのような対応が必要なのか、初動から復旧までの流れを詳しく解説します。

    【参考情報】


    ―第2回へ続く―

    サイバーインシデント緊急対応

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2025年10月1日(水)13:00~14:00
    2025年10月Windows10サポート終了へ 今知るべきサポート切れのソフトウェアへのセキュリティ対策ガイド
  • 2025年10月8日(水)14:00~15:00
    ウェビナー参加者限定特典付き!
    ソースコード診断で実現する安全な開発とは?脆弱性対策とDevSecOps実践
  • 2025年10月22日(水)14:00~15:00
    ランサムウェア対策セミナー2025 ~被害を防ぐための実践的アプローチ~
  • 2025年10月29日(水)13:00~14:00
    【好評アンコール配信】「フィッシング攻撃の最新脅威と被害事例〜企業を守る多層防御策〜
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像