ランサムウェア その被害と対応策、もし感染したら企業経営者はどう向き合うべきか

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企業内のデータを勝手に暗号化して使用不能にし、元に戻すための身代金を要求するサイバー攻撃「ランサムウェア」について解説します。人命に関わる事態を引き起こした、海外のランサムウェア被害事例や、20年以上前から存在していたランサムウェアが、近年これほど多く被害が報告されるようになった理由を考え、感染経路と対策方法、注意事項をお知らせします。

ランサムウェアとは

ランサムウェアとは、PCのハードディスクやファイルサーバのデータ等を攻撃者が暗号化し、大事なデータにアクセスできないようにしたうえで、元に戻してやるからと称して「身代金(Ransom)」を支払うよう個人や企業を脅迫・恐喝するマルウェアです。

たとえば、ある日全データが使えなくなってしまったら、業務が止まって組織の存続に関わる影響が生じます。

身代金はビットコインなどの仮想通貨で要求されることがほとんどです。ただし、支払ってもデータ等が必ず元に戻るとは限りません。また、暗号化されたファイルのパスワードを解析して、自力で元に戻すことは、ほぼ不可能です。

ランサムウェア感染事例、間接的な死亡者も

2017年5月、「WannaCry(ワナクライ)」と呼ばれるランサムウェアが世界中で猛威を振るい、日本の大手企業も被害を受けたことが新聞やテレビで大きく報道されました。この報道でランサムウェアを知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今年に入ってからもランサムウェアの被害は増え続けており、2020年7月には、スポーツ用のスマートウォッチで知られる米ガーミン社がランサムウェアの攻撃を受け、サービスが一部停止しました。

つづく2020年9月には、ドイツの病院のシステムがランサムウェアに感染、搬送予定だった患者の受け入れができなくなることで、治療が遅れ、その結果亡くなるという痛ましい事件も起こっています。

ランサムウェアの歴史と隆盛の理由

世界初と考えられている「AIDS(エイズ)」と呼ばれるランサムウェアは1989年に発見されました。それから20年以上にわたってランサムウェアは、サイバー犯罪の地味な手法のひとつに過ぎませんでした。

しかし、その後、2013年に発見された「CryptoLocker(クリプトロッカー)」のように、ビットコインなどの仮想通貨を用いることで、警察などの追跡から逃れやすくなるとともに世界中から身代金を請求できるようになるという革新が起き、グローバルで急速に蔓延するようになりました。FBIによれば、2013年10月1日~2019年11月7日のおよそ6年間でビットコインだけで約1億4400万アメリカドルが身代金として支払われるなど、大きな被害を生んでいるのです。

ランサムウェアの新しい傾向「暴露型」「破壊型」とは?

従来はファイルを暗号化して身代金を要求するだけだったランサムウェアですが、新しい傾向として「暴露型」と「破壊型」と呼ばれる類型のものが出てきています。

「暴露型」のランサムウェア攻撃とは、暗号化する前にデータを盗み出し、身代金に加え、企業の機密情報をインターネットに公開するぞと、二重に脅迫を行う新しい手法です。

また、「ランサム(身代金)ウェア」とは、そもそも「お金を払えばデータは元に戻る」という想定のもとに成り立つ犯罪ですが、近年、その想定を外れる、「破壊型」などと呼ばれるランサムウェア攻撃の例も報告されています。

「破壊型」は、システムやビジネス、施設等にダメージを与えることを目的としてデータの暗号化を行うもので、内閣サイバーセキュリティセンターが2018年に公開した資料では、こうしたランサムウェアは「機微な情報や重要な社会インフラ等を取り扱う組織にとって(中略)機能停止を引き起こす別次元の攻撃となり得る」と言及されています。

ランサムウェアだから身代金を支払えば済むと思っていたら、ファイルを暴露されたり、システムを破壊されたり・・・そんなケースが起こりうるのです。

ランサムウェアの感染経路

ランサムウェアは、すでに感染したUSBメモリやCD-ROMなどの可搬媒体の使用によって感染することもありますが、最も注意すべき感染経路は、電子メールとWeb閲覧のふたつ、つまり、電子メールに含まれた悪意ある添付ファイルを開くことと、本文中のURLをクリックすることによる感染です。

中でも知っておきたいのが、マルウェアを介してランサムウェアに感染するというケースです。たとえば、「Emotet(エモテット)」に感染したとしましょう。Emotet自体はランサムウェアではなくマルウェアで、ご存じの通りメールアカウントの乗っ取りや、過去のメールデータを盗み出すことで知られています。しかしEmotetはこれ以外に、「Trickbot(トリックボット)」「Qbot(キューボット)」などのトロイの木馬ウイルスをダウンロードすることでも知られています。

それらをダウンロードした後どうなるかというと、たとえばTrickbotであれば、Trickbot自体のランサムウェアとしての機能があり、その機能を使ったランサムウェア攻撃を行うことがあります。また、Trickbotは他のランサムウェア、たとえば「Ryuk(リューク)」「Conti(コンティ)」などを追加でダウンロードしたうえでランサムウェア攻撃を実行することもあります。

このように、1つのマルウェアに感染することで様々なランサムウェアに感染する可能性があり、攻撃のパターンも複数あるということを認識しておく必要があります。

EDR、SIEM、標的型攻撃メール訓練がランサムウェア対策に有効

ランサムウェアの対策として、EDR(Endpoint Detection and Response)やSIEM(Security Information and Event Management)製品を活用して、早期検知とブロックを行う方法がよく知られていますが、最大の感染経路のひとつである「メール」を対象にした訓練を行うことも有効でしょう。

ランサムウェア対策のメール訓練としては、「定型のメールを一斉送信し、部署毎に開封率のレポートを出す」ことに加え、事前に会社の組織図や業務手順等のヒアリングを行ったうえで、よりクリックされやすいカスタマイズした攻撃メールを作成し、添付ファイルや危険なURLをクリックすることで最終的にどんな知財や資産に対してどんな被害が発生するか、具体的なリスク予測までを実施することをおすすめします。

セキュリティ企業のサービスを検討する際は、こうした対応が行えるかどうかを選定の条件にするとよいでしょう。さらに、ひとたび社内に入り込んだマルウェアやランサムウェアがどのように感染拡大する可能性があるかを診断するサービスを利用することも、対策を立てるうえでの選択肢として考慮すべきでしょう。

以前、不正アクセスに関する記事の解説で、「かかりつけ医」ならぬ「かかりつけセキュリティ企業」を持つことの、有事の際の心強さをご説明しましたが、こうしたサービスの利用をきっかけとして、信頼できるセキュリティ企業を見つけるのもいいかもしれません。

なお、ブロードバンドセキュリティでは、標的型メール訓練、標的型攻撃リスク診断「SQAT®APT」ほか、多彩なラインナップで、ランサムウェア対策への取り組みをご支援しています。

感染したときのための無料復号ツール

ランサムウェアで暗号化されたデータを復号する無料ツールが、インターネットにいくつも公開されています。欧州刑事警察機構(ユーロポール)やセキュリティ企業による共同プロジェクト「No More Ransom」によるものなどが有名です。

こうしたツールを使用してデータ復旧を試みることはもちろん可能です。しかし、そのデータが企業にとって重要であればあるほど、デジタルフォレンジックを行う専門企業の支援を受けるのが最善の対応であると、SQAT.jpは考えます。

セキュリティインシデント対応の経験がない技術者がランサムウェアの対応をするのは、全く得策ではありません。その理由は、証拠保全ができなくなり説明責任を果たせなくなる可能性があること、感染経路がわからなくなることで対策が打てなくなり、その結果、企業として自信を持って終息宣言を出せなくなることなど、いくつか挙げられます。

また、もし暴露型のランサムウェア攻撃の場合、データが暴露されることで被害を受けるステークホルダーは、グループ会社や取引先など多岐にわたり、もはや自社だけの問題ではなくなります。そもそも暴露型であることなど、攻撃の初期段階ではわからないのです。

ランサムウェアの身代金を支払うとマネーロンダリングの犯罪に?

なんらかの理由で攻撃者に対して身代金を支払うという決定を組織が行った場合、たとえばアメリカ合衆国財務省はランサムウェアへの身代金支払いをマネーロンダリングの一種、すなわち違法行為とみなすことがあり、事前に米財務省への申請が必要になる場合があることをご存じでしょうか。支払いのためのアドバイザリーが公開されていますので、外資系企業や米国子会社のある企業は注意しましょう。

また、たとえ日本企業であっても、反社会的勢力に対して金銭を供与するという事実は何ら変わりません。事前の充分な法的配慮が必要となることは言うまでもないでしょう。

なお、支払っても元に戻るとは限らないことをここで再度申し上げておきます。

まとめ

  • ランサムウェアとは大事なデータを暗号化して元に戻す際に身代金(Ransom)として、お金の支払いを要求するマルウェアのことです。
  • 世界中でランサムウェアの被害が報告されており、ドイツの病院のランサムウェア攻撃事例では死者が出ています。
  • 身代金支払いにビットコインなどの仮想通貨を用いるなど、ランサムウェアは進化し、世界中で大流行するようになりました。
  • データを暗号化するだけでなく、データを盗み出してインターネットに公開する「暴露型」など、新しいランサムウェア攻撃の事例も報告されています。
  • ランサムウェアの主な感染経路のひとつがメールであるため、ランサムウェア対策には、EDR、SIEMに加え、標的型攻撃メール訓練が有効です。
  • アメリカではランサムウェアの身代金を支払うと、マネーロンダリングに加担したとみなされることがあるので、注意が必要です。

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