SCS評価制度とは?★3・★4の違い、開始時期と企業が進める対策【2026年版】

Share
SCS評価制度とは?★3・★4の違い、開始時期と企業が進める対策アイキャッチ画像

取引先から届くセキュリティチェックシートの内容が企業ごとに異なり、回答や確認に時間がかかる。――このような悩みを抱えている発注企業、受注企業は少なくありません。サプライチェーンを通じたサイバー攻撃が相次ぐ一方で、取引先の対策状況を客観的に判断する共通の物差しは、これまで十分に整っていませんでした。こうした課題に対応するために構築されたのが、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」、通称SCS評価制度です。★3と★4については、2027年3月頃の運用開始が予定されています。

本記事では、SCS評価制度とはどのような制度なのか、対象企業や義務の有無、★3・★4の違いを整理したうえで、制度開始に向けて企業が今から進めておきたいセキュリティ対策を解説します。

サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(以降、記事内「SCS評価制度」と表記)は、サプライチェーンに関わる組織のセキュリティ対策を共通基準で可視化する制度です。★3は専門家確認付き自己評価、★4は第三者評価と技術検証によって確認され、2027年3月頃の運用開始が予定されています。

※本記事の情報は2026年9月3日時点でIPA、経済産業省およびBBSecが公表している資料に基づいています。今後公表・更新される情報については、最新の公式資料をご確認ください。

SCS評価制度とは

SCS評価制度とは、組織が定めた適用範囲におけるIT基盤などのセキュリティ対策状況を共通の基準で評価し、段階別のマークによって可視化する制度です。2026年3月に公表された制度構築方針を基礎に設計され、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の監督のもと、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営します。*1

この制度で想定されているのは、企業間の取引契約などにおいて、委託元が委託先に適切な段階(★)を提示し、その水準に応じた対策の実施状況を確認する使い方です。委託元は取引先のセキュリティ対策を共通基準で確認しやすくなり、委託先は複数の取引先から届く異なるチェックリストへ個別に回答する負担を軽減できると期待されています。

つまり、SCS評価制度の本質は企業を単純に格付けすることではなく、発注側と受注側がセキュリティ対策について共通の言葉で確認できるようにすることにあります。 ここでいうサプライチェーンは、製造業の部品供給網だけを指すものではありません。業務委託やITサービスの利用関係を含む「ビジネス・ITサービスサプライチェーン」を念頭に置いた制度です。委託先への攻撃による事業・サービスの停止、機密情報の漏えいや改ざん、取引先を踏み台とした不正侵入などのリスクを減らし、サプライチェーン全体のセキュリティ水準を高めることが制度の目的です。

なぜSCS評価制度が創設されたのか

企業の事業活動は、自社だけで完結するものではありません。クラウドサービスや外部のシステム運用、ソフトウェア開発、物流、決済など、さまざまな取引先とのつながりによって成り立っています。そのため、自社が対策を強化していても、委託先のシステムやアカウントを起点として被害が波及するおそれがあります。攻撃経路が取引先へ広がる一方で、対策確認のコストは発注側と受注側の双方に積み上がってきました。SCS評価制度は、この二つの問題を同じ共通基準で扱い、サプライチェーン上の立場やリスクに応じた対策を選びやすくするための仕組みです。

SCS評価制度はいつから始まるのか

IPAのFAQによると、SCS評価制度の★3・★4は、2027年3月頃の運用開始が予定されています。2026年4月には★3・★4の要求事項・評価基準が公開*2され、同年9月2日には、制度の基本規程や評価機関、技術検証事業者などに関する規則が公開・更新されました。*3

今後は、要求事項・評価基準の解説書、取得ガイド、申請方法が2026年10月頃に公開される予定です。★4の第三者評価を担当する評価機関は2026年12月末頃、★3の自己評価結果を確認するSCSセキュリティ専門家は2027年1月以降に公表される予定となっています。申請・登録にかかる費用は、2026年9月3日時点では公表されていません。

制度の詳細は今後も更新されるため、対応を検討する企業はIPAの公式サイトで最新情報を確認する必要があります。ただし、要求事項・評価基準はすでに公開されています。制度開始まで待つのではなく、現状とのギャップを把握し、時間のかかる対策から着手できる段階に入っています。

SCS評価制度の対象企業と義務の有無

SCS評価制度は、特定の業種や企業規模だけに限定されたものではありません。ビジネス・ITサービスサプライチェーンに関わる幅広い組織での活用が想定されています。ただし、すべての企業にマーク取得を法律で義務付ける制度ではなく、SCS評価制度自体は任意制度です。ここは「制度が任意であること」と「取引上求められる可能性があること」を分けて考える必要があります。

同制度では、二社間の取引契約などにおいて、委託元が委託先に適切な段階を提示する利用方法が想定されています。そのため、法令上の一律の義務ではなくても、取引条件や調達要件として特定の段階への対応を求められる可能性はあります。受注側の企業にとっては、取引先から問い合わせを受けてから準備を始めるのではなく、自社の対策状況を説明できる状態にしておくことが重要です。

SCS評価制度の★3・★4・★5の違い

SCS評価制度では、企業に求めるセキュリティ対策を段階別に示します。先行して運用されるのが★3と★4で、より高度なサイバー攻撃への対応を想定する★5は、要求事項や評価方法、開始時期を含めて検討中です。IPAの公表資料に基づいて両段階を整理すると、次のようになります。

比較項目★3★4
想定する水準一般的なサイバー脅威に対処し得る水準初期侵入の防御に加え、被害拡大や攻撃目的の達成を抑え、取引先のデータやシステムの保護に寄与する水準
要求事項26項目43項目(★3の要求事項を包含)
評価方法SCSセキュリティ専門家の確認を受けた自己評価評価機関による第三者評価と技術検証
主な確認内容自己評価書類の確認と助言文書確認、実地審査、技術検証
有効期間登録完了の通知日から1年間登録完了の通知日から3年間。ただし、1年ごとに自己評価を実施

★3:専門家確認付きの自己評価

公表資料では、★3は「一般的なサイバー脅威に対処し得る水準」と位置づけられ、26の要求事項が設定されています。取得希望組織が行った自己評価を、制度に登録されたSCSセキュリティ専門家が確認・助言し、経営層による自己適合宣言などを添えてIPAへ申請します。単なる自己申告ではなく、すべての要求事項・評価基準を満たす必要があり、有効期間は1年間です。

★3で求められる26の要求事項・81の評価基準や、自己評価から登録までの流れについては、「SCS評価制度の★3とは?26の要求事項・81の評価基準と自己評価を解説」で解説しています。

★4:第三者評価と技術検証によって確認

★4は★3の要求事項を包含し、合計43の要求事項が設定されています。初期侵入を防ぐだけでなく、侵入後の被害拡大防止や、取引先のデータ・システムを守る対策までが求められます。評価機関による文書確認・実地審査に加え、評価機関または評価機関から委託された技術検証事業者による技術検証が行われます。有効期間は3年間ですが、有効期間中も1年ごとの自己評価が必要です。

★4で求められる43の要求事項や、第三者評価・技術検証の内容については、「SCS評価制度の★4とは?43の要求事項・第三者評価・技術検証と取得準備を解説」で解説しています。

★3を取得せずに★4を目指すことも可能

★4は★3の内容を包含していますが、★3を先に取得しなければ申請できない制度ではありません。自社のサプライチェーン上の役割や取引先から求められる水準を踏まえ、当初から★4を目指すこともできます。 ただし、★4では43の要求事項に加えて第三者評価と技術検証が行われます。準備負担や必要な期間を把握しないまま目標を決めるのではなく、まず自社の現状と不足事項を確認することが重要です。

自社は★3と★4のどちらを目指すべきか

目指す段階は、会社の規模だけで一律に決めるものではありません。SCS評価制度は、委託元が取引上のリスクに応じて委託先へ適切な段階を提示する使い方を想定しています。まず確認すべきなのは、主要な取引先や業界でどのような水準が求められそうか、自社の事業停止や情報漏えいが取引先へどの程度の影響を及ぼすかという点です。

取引先の機密情報や重要なシステムを扱う企業、障害が発生した際に取引先の事業継続へ大きな影響を与える企業では、より高い水準を求められる可能性があります。一方で、自社だけで段階を断定するのではなく、公開済みの要求事項を確認し、取引先との協議や専門家の助言を踏まえて判断するのが現実的です。

SECURITY ACTIONやISMSとの違い

SCS評価制度と混同されやすい仕組みに、IPAの「SECURITY ACTION」があります。SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策へ取り組むことを自ら宣言する制度です。IPAも、SCS評価制度の★3・★4を目指す準備段階としてSECURITY ACTIONを案内しています。一方、SCS評価制度では公開された要求事項への適合が必要となり、★3では専門家確認、★4では第三者評価と技術検証が加わります。

ISMSは、JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)を基準として、組織が情報セキュリティマネジメントシステムを確立し、実施、維持、継続的改善しているかを第三者の認証機関が評価する仕組みです。これに対しSCS評価制度は、サプライチェーン上の取引で必要となる対策水準を段階別に可視化することを目的としています。

既存の制度に取り組んでいる企業は、これまで整備した規程やリスク管理の仕組みをSCS評価制度への準備に活用できる可能性があります。ただし、SCS評価制度で登録を受けるには、対象となる段階で定められたすべての要求事項・評価基準を満たす必要があります。ISMS認証やSECURITY ACTIONの宣言だけで、SCS評価制度の登録へ自動的に移行するものではありません。

SCS評価制度に向けて企業が今から進める対策

評価の適用範囲とIT資産を整理する

最初に行いたいのは、どの組織、拠点、システムを評価の適用範囲とするかを整理することです。SCS評価制度は、登録を希望する組織が定めた適用範囲内のIT基盤などを対象にします。サーバ、ネットワーク機器、端末、クラウドサービスなどのIT資産が把握できていなければ、要求事項への適合状況も正確に判断できません。

要求事項と現在の対策との差を確認する

次に、公開済みの要求事項・評価基準と、自社の規程、システム設定、実際の運用を照合します。すでに実施している対策、証跡が残っていない対策、未対応の項目に分けると、課題が見えやすくなります。規程を作るだけでなく、決めたルールどおりに運用され、その実施記録を示せるかまで確認しておきたいところです。

優先順位を付けてロードマップを策定する

不足している対策を一度に整備しようとすると、現場の負担が大きくなります。規程の改定で対応できる課題と、ツール導入、システム変更、教育、訓練が必要な課題を分け、担当者、期限、予算を含むロードマップへ落とし込みます。特に★4を目指す場合は、対策を日常業務へ組み込み、実施記録や証跡を継続的に残せる状態が欠かせません。

適用範囲の設定からギャップ分析、是正計画、証跡の整備まで、具体的な準備の進め方については、「SCS評価制度への対応は何から始める?ギャップ分析から是正・運用定着まで」で解説しています。

制度開始前の準備には専門的な支援も有効

SCS評価制度への対応では、要求事項を読むだけでなく、評価範囲の設定、現状分析、規程と実運用の確認、是正計画の策定を並行して進める必要があります。社内だけでは判断が難しい場合、制度開始前に外部の専門家を活用し、自社の現在地を客観的に把握する方法があります。

BBSecでは、SCS評価制度の運用開始に備えた事前対策支援サービスを提供しています。公開済みの★3・★4要求事項に沿って行った事前点検の結果をコンサルタントが分析し、評価サマリーと対策ロードマップを提供する「★3/★4自己評価対応支援(プレリミナリーサーベイ)」のほか、★4の要求事項と既存対策との差を文書確認やインタビューで整理する取得準備支援、策定したロードマップに沿って対策の実行を支援する「★3/★4準拠に向けた対策実行支援(BBSec Prime for Supply Chain Security Measures)」を用意しています。

これらは、SCS評価制度の正式な登録やマーク付与そのものではなく、評価取得に向けた現状把握、準備、是正・実装を支援するサービスです。★3の申請には、SCS評価制度へ登録されたセキュリティ専門家の確認が必要です。★4には、制度運営機関から指定を受けた評価機関による第三者評価と、評価機関または技術検証事業者による技術検証が必要です。その前段階で要求事項とのギャップを明らかにし、対応の手戻りを抑えるための選択肢となります。 ★3・★4の要求事項と自社の現状との差を把握したい、対応ロードマップを整理したい、社内の人員だけでは是正が進まないといった課題がある場合は、制度開始を待たずにご相談ください。

SCS評価制度に関するよくある質問

▼ SCS評価制度はいつから始まりますか
▼ SCS評価制度への対応は義務ですか
▼ ★3と★4の違いは何ですか
▼ ★4を取得する前に★3の取得は必要ですか
▼ SCS評価制度の申請・登録費用はいくらですか

まとめ

SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策を共通基準で評価し、取引先へ説明しやすくする制度です。★3はSCSセキュリティ専門家の確認を受ける自己評価、★4は評価機関による第三者評価と技術検証という違いがあり、2027年3月頃の運用開始が予定されています。制度自体は任意ですが、取引先との契約や調達で活用されることが想定されています。公開済みの要求事項を確認し、適用範囲とIT資産の整理、現状とのギャップ分析、対策ロードマップの策定から準備を始めることが重要です。制度の開始時期を待つのではなく、自社が現在どこまで対応できているのかを把握することが、最初の一歩になります。

【参考情報】

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

DDoS攻撃を受けたらどうする?―初動対応から復旧までの流れを解説―

Share
DDoS攻撃を受けたらどうする?アイキャッチ画像

DDoS攻撃では、事前の対策だけでなく、攻撃を受けた際の迅速な初動対応が重要です。対応が遅れると、サービス停止だけでなく、売上機会の損失や顧客対応の混乱につながるおそれがあります。本記事では、DDoS攻撃を受けた場合の初動対応から、ISP・クラウド事業者との連携、復旧、再発防止までの流れを解説します。

DDoS攻撃の基本的な仕組みや種類、被害、対策については、「DDoS攻撃とは?仕組み・被害・対策を企業向けに解説」もあわせてご覧ください。

DDoS攻撃を受けたときに想定される影響

DDoS攻撃を受けると、大量の通信やリクエストによってWebサイトやサービスの応答が遅延し、場合によっては利用できなくなります。影響はサービス停止だけでなく、決済・予約・受発注などの業務停止、顧客・取引先からの問い合わせ増加などにも及ぶ可能性があります。

また、DDoS攻撃による混乱に乗じて、不正アクセスや情報窃取など別の攻撃が行われる可能性も考慮する必要があります。そのため、単なる通信障害と判断せず、セキュリティインシデントとして状況を確認することが重要です。DoS攻撃が単一または少数の攻撃元から行われるのに対し、DDoS攻撃は多数の端末などを悪用して分散的に行われるため、攻撃元の特定や単純な遮断が難しくなります。

DoS攻撃とDDoS攻撃の仕組みや違いについて詳しくは、「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは 仕組み・被害・対策を比較解説」をご覧ください。

DDoS攻撃を受けたときの対応の流れ

DDoS攻撃が疑われる場合、場当たり的に設定変更や機器の再起動を行うのではなく、状況を確認しながら段階的に対応することが重要です。基本的な流れは、次のとおりです。

実際の対応方法は、攻撃の種類や規模、システム構成、利用しているクラウド・ネットワークサービスなどによって異なります。重要なのは、技術担当者だけで対応を完結させようとせず、必要に応じて社内外の関係者と連携できる体制を整えることです。

初動対応で最初に行うべきこと

DDoS攻撃を受けた場合、最初に必要なのは、慌てて機器の再起動や設定変更を行うことではありません。まず、発生している事象がDDoS攻撃によるものなのか、通常のアクセス増加やシステム障害なのかを切り分ける必要があります。初初動対応では、攻撃の有無を確認し、被害範囲を把握し、関係者へ連絡するとともに、可能な範囲でログなどの証跡を保全します。

攻撃発生を確認する

最初に、どのような異常が発生しているかを確認します。Webサイトの応答遅延、タイムアウト、サーバーエラー、CPUやメモリ使用率の急上昇、ネットワーク帯域の逼迫、特定URLへのリクエスト集中などが確認ポイントになります。

アクセス解析、サーバーログ、WAFログ、ロードバランサーのメトリクス、クラウド監視サービス、ネットワーク機器のトラフィック情報を確認し、通常時と比べて異常な増加がないかを調べます。平時のトラフィック量やピーク時の傾向を把握していれば、DDoS攻撃なのか、キャンペーンやニュース掲載などによる正規アクセスの増加なのかを判断しやすくなります。

ただし、DDoS攻撃は必ずしも大量通信だけとは限りません。アプリケーション層を狙う攻撃では、一見すると通常のHTTPリクエストに見える通信が集中し、検索機能、ログイン画面、APIなど特定の処理に負荷がかかることがあります。そのため、通信量だけでなく、アクセス先、リクエスト頻度、送信元の分布、レスポンスコードの変化なども確認します。

被害範囲を把握する

次に、どのサービスが影響を受けているかを把握します。コーポレートサイトだけなのか、ECサイトや会員サイトも影響を受けているのか、社内ネットワークや業務システムにも影響があるのかを整理します。被害範囲を確認する際は、外部からの疎通確認だけでなく、社内からの接続状況、監視アラート、問い合わせ件数、取引先からの連絡内容なども確認します。攻撃対象が特定のドメイン、IPアドレス、ポート、URL、APIなどに集中していることがわかれば、後続のトラフィック制御やCDN・WAF設定の調整にも役立ちます。

また、DDoS攻撃による負荷によってログ出力や監視自体が遅延している可能性もあります。一つの監視画面だけで判断せず、複数の情報源を突き合わせて状況を確認することが重要です。

関係者へ連絡する

DDoS攻撃の可能性がある場合は、社内の関係者へ速やかに連絡します。情報システム部門、セキュリティ担当、ネットワーク担当、Webサイト運用担当、カスタマーサポート、広報、法務、経営層など、影響範囲に応じて必要な関係者へ情報を共有します。サービス停止が顧客や取引先に影響する場合は、技術的な復旧だけでなく、問い合わせ対応や外部への説明も必要になります。復旧の見通しが立っていない段階でも、「現在確認している事象」「影響を受けているサービス」「現在実施している対応」などを社内で共有しておくことで、対応の混乱を抑えられます。あわせて、契約しているISP、クラウド事業者、CDN、WAF、セキュリティ監視サービス、運用保守ベンダーへの連絡準備も進めます。

ログを保全する

DDoS攻撃への対応では、復旧作業と並行して、可能な範囲でログなどの証跡を保全することも重要です。負荷軽減を優先する過程で設定を変更したり、ログローテーションによって過去のログが上書きされたりすると、後から攻撃状況を確認できなくなる可能性があります。保全対象としては、Webサーバーログ、WAFログ、ロードバランサーログ、DNSログ、ファイアウォールログ、クラウド監視メトリクス、ネットワーク機器のトラフィック情報、アラート履歴などが考えられます。

これらの情報は、攻撃の種類や影響範囲を分析するだけでなく、DDoS攻撃の前後に不正アクセスなど別の事象が発生していなかったかを確認する際にも役立ちます。

ISP・クラウド事業者と連携する

DDoS攻撃への対応では、自社だけで完結しようとしないことが重要です。攻撃トラフィックが自社回線に到達してから遮断しようとしても、すでに回線帯域が逼迫していれば、正規利用者の通信も届かなくなる可能性があります。そのため、攻撃の種類や規模に応じて、ISP、クラウド事業者、CDN、DDoS対策サービスなどと連携し、上流側でトラフィックを制御することが重要になります。

ISPへの連絡

オンプレミス環境や自社回線でサービスを公開している場合、ISPへの連絡が必要になることがあります。自社のファイアウォールで遮断する前に回線が逼迫している場合には、上流側でのフィルタリングや経路制御などの対応が必要になる可能性があるためです。

ISPへ連絡する際は、攻撃を受けているグローバルIPアドレス、影響を受けているサービス、発生時刻、観測している通信量、主なプロトコルやポート、送信元の傾向、現在発生している障害内容を整理して伝えます。また、契約内容によっては、DDoS緩和サービスや緊急時のトラフィック制御オプションが提供されている場合があります。攻撃が発生してから確認するのではなく、平時から連絡窓口、受付時間、必要情報、対応範囲などを把握しておくことが望まれます。

CDN・WAFの活用

WebサイトやWebアプリケーションを公開している場合、CDNやWAFを活用して攻撃トラフィックを緩和できる場合があります。CDNはアクセスを分散し、オリジンサーバーへの負荷を軽減するために利用できます。WAFでは、HTTPリクエストの特徴やアクセス頻度などに応じて、不審なアクセスを制御することが可能です。ただし、CDNやWAFを導入しているだけで、すべてのDDoS攻撃を防げるわけではありません。DNSが適切にCDN経由になっているか、オリジンサーバーへ直接アクセスできる状態になっていないか、必要な防御機能が有効になっているかなどを確認する必要があります。

攻撃中にアクセス制御を強化する場合は、正規利用者まで遮断してしまう可能性にも注意が必要です。ログやトラフィックの状況を確認しながら、段階的に調整します。

クラウド事業者との連携

クラウド環境でサービスを運用している場合は、利用しているクラウド事業者が提供するDDoS対策機能やサポートサービスを確認します。主要なクラウド事業者では、ネットワークレベルのDDoS対策機能や、契約内容に応じたサポートが提供されています。攻撃発生時に支援を受けられるよう、対象リソース、攻撃状況、アプリケーションの正常性、WAFやロードバランサーのログなどを共有できる状態にしておくことが重要です。また、クラウド環境ではスケールアウトによって一時的に処理能力を増やせる場合がありますが、攻撃トラフィックに応じてリソースを増やし続ければ、利用料金が増大する可能性があります。CDN、WAF、ロードバランサー、オートスケーリング、DDoS対策機能などを組み合わせて対応することが重要です。

復旧時に確認すべきポイント

DDoS攻撃の通信量が減少し、Webサイトやサービスが再び利用できるようになっても、すぐに「復旧完了」と判断するのは危険です。攻撃が一時的に弱まっている可能性や、緊急対応として行った設定変更がサービスに影響している可能性があります。また、DDoS攻撃と同時に別の攻撃が行われていなかったかも確認する必要があります。

サービスが正常に利用できるか

Webサイトへアクセスできることだけでなく、ログイン、検索、決済、予約、API連携など、主要な機能が正常に動作しているかを確認します。サーバーやネットワーク機器のCPU・メモリ・帯域使用率、エラー発生状況なども確認し、通常時に近い状態へ戻っているかを確認します。また、攻撃が再開する可能性も考慮し、一定期間はトラフィックやアラートを継続して監視することが重要です。

二次被害が発生していないか

DDoS攻撃への対応中は、大量のアラートやサービス障害への対応に注意が集中します。そのため、同じ時間帯に不審なログインや脆弱性を狙ったアクセスなど、別の不審な事象が発生していなかったかを確認します。WAF、認証、サーバー、ネットワーク機器、EDRなどのログを確認し、通常とは異なる挙動が確認された場合は、必要に応じて追加調査を行います。

一時的に変更した設定がないか

DDoS攻撃への緊急対応として、IPアドレスや地域によるアクセス制限、WAFルールの変更、レート制限などを実施することがあります。こうした設定を残したままにすると、正規利用者のアクセスや業務に影響する可能性があります。攻撃収束後は、変更した設定とその目的を確認し、継続すべき設定と元に戻す設定を整理します。

顧客や取引先への説明

サービス停止などによって顧客や取引先に影響が発生した場合は、必要に応じて障害の発生時刻、影響範囲、復旧状況などを説明します。この段階では、確認できていない原因や被害を断定しないことも重要です。技術部門だけで判断せず、広報、法務、顧客対応部門などと連携して説明内容を整理します。

再発防止に向けて見直すべきこと

サービスを復旧させた後は、今回の攻撃と対応内容を振り返り、次の攻撃に備えます。DDoS攻撃を完全に防ぐことは難しいため、「攻撃を受けないこと」だけではなく、「受けても影響を抑え、早期に復旧できること」が重要です。

攻撃ログやトラフィックの分析

保全したログやトラフィック情報を確認し、攻撃がいつ始まり、どのサービスが狙われ、どのような通信が発生していたのかを整理します。あわせて、検知から関係者への連絡、緩和策の実施、サービス復旧までにどの程度の時間を要したかを振り返ることで、対応上の課題を把握できます。

ネットワーク構成の見直し

まず見直すべきは、ネットワーク構成です。公開サービスが単一の回線や単一拠点に依存していないか、CDNやAnycastを活用できる構成になっているか、オリジンサーバーが直接攻撃を受けやすい状態になっていないかを確認します。また、Webサイト、API、管理画面、社内業務システムなどが同じネットワークに過度に依存している場合、一つの攻撃による影響が複数のサービスや業務へ波及する可能性があります。公開系と管理系の分離や、DNS構成なども含め、攻撃を受けた際に影響が広がりにくい構成になっているかを確認することが重要です。

DDoS攻撃では、回線帯域、ネットワーク機器、DNS、Webアプリケーション、APIなど、攻撃の種類によって影響を受ける箇所が異なります。今回の攻撃でどこがボトルネックになったのかを確認し、その結果をネットワーク構成の見直しに反映することが、次の攻撃による影響を抑えることにつながります。

DDoS対策サービスの導入・見直し

次に、DDoS対策サービスの導入や見直しを検討します。CDN、WAF、DDoSスクラビング、クラウド事業者のDDoS保護機能、ISPのDDoS緩和サービスなど、選択肢は複数あります。重要なのは、自社のサービス特性に合った対策を選ぶことです。静的コンテンツが多いサイトであればCDNによるキャッシュが有効な場合があります。ログインや検索、予約、決済など動的処理が多いサービスでは、WAFやレート制限、アプリケーション層の監視が重要になります。大規模な帯域攻撃が想定される場合は、上流側でのDDoS緩和やスクラビングを検討する必要があります。

また、対策サービスは導入して終わりではありません。緊急時の連絡窓口、対応開始条件、保護対象のIPアドレスやドメイン、ログの取得方法、誤検知時の解除手順、費用条件を事前に確認しておく必要があります。攻撃発生時に初めて管理画面を開く状態では、十分な対応ができないおそれがあります。

DDoS攻撃に備えて平時から準備しておくこと

DDoS攻撃が発生してから対策や連絡体制を検討していては、初動が遅れるおそれがあります。攻撃による影響を抑え、迅速に対応・復旧するためには、ネットワーク構成やDDoS対策サービス、インシデント対応手順などを平時から確認し、実際の攻撃を想定した訓練を行っておくことが重要です。

インシデント対応手順の見直し

対応手順には、攻撃発生時の確認項目、社内連絡先、外部事業者の連絡先、判断権限、ログ保全方法、顧客告知の流れ、復旧判断基準を含めます。特にDDoS攻撃では、技術部門だけでなく、カスタマーサポート、広報、営業、法務、経営層との連携が必要になるため、役割分担を明確にしておくことが重要です。

また、インシデント対応手順は一度作成しただけでは十分ではありません。サービス構成の変更、クラウドへの移行、新しいWAFやCDNの導入、担当者の異動、外部ベンダーの変更などがあれば、それにあわせて手順も更新する必要があります。古い連絡先や現在は利用していないシステム名などが残っていないか、定期的に確認しておきましょう。

DDoS攻撃を含むセキュリティインシデントでは、事前に対応手順を整備しておくことが重要です。関連記事「セキュリティインシデントとは?基礎知識と代表的な事例を解説」もあわせてご覧ください。

訓練の実施

DDoS攻撃への対応力を高めるには、訓練の実施が有効です。実際の攻撃時には、監視アラート、問い合わせ、社内報告、外部事業者との連絡が同時に発生します。手順書を読むだけでは、こうした混乱の中で適切に動けるかは分かりません。

訓練では、「Webサイトの応答が急激に悪化した」「特定APIに大量アクセスが集中している」「ISPから異常トラフィックの連絡があった」など、具体的なシナリオを用意します。そのうえで、誰が最初に状況を確認するのか、どの情報を集めるのか、誰がISPやクラウド事業者へ連絡するのか、どの段階で顧客告知を検討するのかを確認します。

訓練後は、手順の不備や連絡体制の弱点を洗い出し、改善します。DDoS攻撃の対応では、攻撃を完全に止めることだけでなく、被害を限定し、事業への影響を抑え、利用者に適切に説明することが重要です。そのためには、平時からの準備と訓練が欠かせません。

まとめ

DDoS攻撃を受けた場合は、単にサーバーを復旧させるだけでなく、攻撃状況の確認、影響範囲の把握、関係者への連絡、ISP・クラウド事業者などとの連携を並行して進める必要があります。また、通信量が減少したからといって、すぐに対応を終了するのではなく、サービスが正常に利用できることや、DDoS攻撃の前後に別の不審な事象が発生していないことを確認することも重要です。

DDoS攻撃を完全に防ぐことは困難ですが、平時から連絡体制やログ取得、外部事業者との連携方法を整理しておくことで、攻撃発生時の混乱を抑え、サービスへの影響を最小限にすることができます。

【参考情報】

編集責任:木下


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?委託先管理の見直しポイントを解説

Share
サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?アイキャッチ画像

製造業では、委託先や部品メーカーへのサイバー攻撃が、自社の生産停止や納期遅延につながる可能性があります。本記事では、サイバー攻撃を事業継続リスクとして捉え、サプライチェーンBCPと委託先管理で確認すべきポイントを解説します。

ランサムウェアによる情報漏洩や供給への影響については、「ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説」もあわせてご覧ください。

サプライチェーンBCPにサイバー攻撃を含めるべき理由

BCPとは、災害や事故などの緊急事態が発生した際にも、重要な事業を継続・早期復旧するための計画です。従来のBCPでは、地震、台風、火災、感染症、物流停止などが主な想定リスクとされてきました。しかし、製造業においては、サイバー攻撃も同じように事業を止める要因になり得ます。

たとえば、製造委託先がランサムウェア攻撃を受けた場合、生産管理システムや受発注システムが停止し、製品の出荷や納品が遅れる可能性があります。また、部品メーカーが攻撃を受ければ、必要な部材が届かず、自社の生産計画にも影響が及びます。物流会社や保守会社が停止した場合も、製品の配送や設備対応に支障が出ることがあります。さらに、サイバー攻撃では業務停止だけでなく、情報漏洩も同時に発生する可能性があります。設計情報、部品表、製造工程、顧客情報、取引条件などが流出すれば、復旧後も知的財産の保護、契約対応、顧客説明、信用回復が必要になります。

このように、サイバー攻撃は単なるIT障害ではなく、調達、生産、物流、販売、法務、広報を巻き込む事業継続リスクです。サプライチェーンBCPでは、委託先や取引先のサイバー被害を想定するとともに、「どの委託先が停止すると、どの事業・製品・工程に影響するのか」を把握し、事業への影響が大きい委託先から優先して対策を検討することが重要です。

製造業のサプライチェーンが狙われる背景や、製造委託先への攻撃が取引先へ及ぼす影響については、「Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策」で詳しく解説しています。

委託先管理で確認すべきポイント

サイバー攻撃に備えるためには、すべての委託先を一律に管理するのではなく、自社の事業への影響度に応じて優先順位をつけることが重要です。委託している業務の重要度、取り扱う情報、システムへのアクセス範囲、代替の可否などを確認し、停止や情報漏洩が発生した場合の影響が大きい委託先から優先して対策状況を確認します。

委託先のセキュリティ対策を確認する

重要な委託先については、契約時だけでなく、取引継続中もセキュリティ対策の状況を定期的に確認することが重要です。EDRやウイルス対策の導入状況、脆弱性管理、OSやソフトウェアの更新、多要素認証、ログ監視、バックアップなどを確認します。アンケートによる自己申告だけでなく、必要に応じて監査や証跡の確認などを行い、実際の対策状況を確認することも有効です。

共有する情報を必要最小限にする

委託先に提供している設計データ、部品表、仕様書、検査手順、顧客情報などが、本当に業務上必要な範囲に限定されているかを確認します。必要以上の情報を共有していると、委託先がサイバー攻撃を受けた際に、情報漏洩の影響範囲が広がる可能性があります。委託する業務に応じて、共有する情報や保存期間を見直すことが重要です。

アクセス権限を適切に管理する

委託先に自社のシステムやクラウドサービスへのアクセスを許可している場合は、必要最小限の権限になっているかを確認します。プロジェクト単位、顧客単位、工程単位などで権限を分けることで、アカウントが侵害された場合の影響を限定しやすくなります。また、共有フォルダやクラウドストレージに過剰な権限が付与されていないか、退職者や異動者のアカウント等が残っていないかを定期的に確認し、担当者変更の際には速やかにアクセス権限を見直すことも重要です。

再委託先まで把握する

委託先がさらに別の企業へ業務を委託している場合、自社の情報や業務がどこまで広がっているのか把握できていないことがあります。再委託の可否や条件、再委託先に求めるセキュリティ対策、情報の取り扱い範囲などをあらかじめ定め、重要な業務については再委託先を含めたサプライチェーンを把握しておくことが重要です。

インシデント発生時に備えた契約・体制の見直し

委託先がサイバー攻撃を受けた場合に備え、契約や対応体制を事前に整えておくことも重要です。インシデントが発生してから対応範囲を確認していては、初動が遅れ、被害の把握や顧客対応に支障が出る可能性があります。

まず契約面では、インシデント発生時の通知期限を明確にしておく必要があります。インシデントを認識した場合の通知時期、通知先、共有すべき情報をあらかじめ定めておくことが望まれます。また必要に応じて「認識後○時間以内」など具体的な通知期限を契約上定めることも検討します。さらに調査協力や証拠保全に関する条項も重要です。ログ、通信記録、端末情報、アクセス履歴などの証拠が適切に保全されなければ、被害範囲や原因の特定が難しくなります。外部専門家によるフォレンジック調査を行う場合の協力範囲も、事前に整理しておくべきです。

そして、情報漏洩が発生した場合の責任範囲、法令等に基づく報告、顧客・取引先への説明、損害対応についても確認が必要です。特に製造業では、設計情報や部品情報の流出が競争力や取引関係に影響するため、単なる個人情報漏洩とは異なる観点で対応を考える必要があります。

体制面では、委託先の停止を想定した代替策を準備しておくことが重要です。代替生産先、代替部品、在庫確保、出荷優先順位、顧客への連絡手順、重要データの社内保全などを事前に整理しておくことで、サイバー攻撃発生時の混乱を抑えることができます。サプライチェーンBCPは、計画を作成して終わりではありません。定期的に訓練を行い、委託先や関係部門を含めて、実際に機能するかを確認することが重要です。

まとめ

サプライチェーンのサイバーリスク対策では、委託先のセキュリティ対策を確認するだけでなく、「どの委託先が停止すると自社の事業に影響するのか」を把握することが重要です。重要度に応じて対策状況や契約、インシデント時の連携方法を確認し、代替策や復旧手順をBCPに組み込んでおく必要があります。サイバー攻撃による停止を前提として、委託先や関係部門を含めた訓練と見直しを継続することが、サプライチェーン全体のレジリエンス向上につながります。

参考情報

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対策

Share
AIセキュリティとは?生成AI時代に企業が知っておくべきリスクと対アイキャッチ画像策

生成AIの業務利用が広がる一方、情報漏洩や誤情報、著作権、AIシステムを狙った攻撃など、新たなリスクも生じています。本記事では、企業がAIを安全に活用するために押さえておきたい、AIセキュリティの主なリスクと対策を紹介します。

AIセキュリティについて、テーマ別に詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

AIセキュリティとは

AIセキュリティとは、AIの利用やAIを組み込んだシステムに伴うセキュリティ上のリスクを把握し、情報やシステム、業務を守るための取り組みです。企業におけるAI活用を考える際には、大きく二つの観点があります。

一つは、AIを利用することで生じるリスクです。従業員が生成AIに機密情報や個人情報を入力することによる情報漏洩、生成された誤情報の利用、著作権や知的財産に関する問題、企業が把握していないAIサービスを業務に利用する「シャドーAI」などが挙げられます。

もう一つは、AIシステムそのものに対するセキュリティリスクです。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムでは、悪意のある指示によって意図しない動作を引き起こすプロンプトインジェクションをはじめ、機密情報の漏洩や不適切な権限の利用など、AI特有のリスクを考慮する必要があります。

生成AIやAIエージェントの普及により、AIは単に質問に回答するツールから、社内データを参照したり、外部のシステムやサービスと連携して処理を行ったりする存在へと用途を広げています。そのためAIセキュリティでは、従業員の利用ルールだけでなく、AIに接続するデータやシステム、付与する権限まで含めてリスクを捉えることが重要になります。

AIセキュリティが注目される背景

生成AIは、文章作成や要約、翻訳、情報収集、プログラミングなど幅広い業務で活用されています。また、既存の業務システムやWebサービスに生成AIを組み込むケースも増え、企業とAIとの接点は広がっています。

こうした活用の拡大に伴い、セキュリティ上の課題も顕在化しています。従業員が組織の許可を得ずに生成AIを利用するシャドーAIによる情報漏洩や、不正確な出力による業務への影響などは、その代表例です。

さらに、AIシステム自体が攻撃対象になることも考慮しなければなりません。従来のWebアプリケーションやクラウドサービスへのセキュリティ対策に加えて、AI・LLMの特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

AIをめぐっては、国内外で安全性や透明性、適正な利用に関するルールやガイドラインの整備も進められています。企業には、技術的なセキュリティ対策だけでなく、こうした動向を踏まえてAIの利用方針や管理体制を継続的に見直すことも求められます。

従来のセキュリティ対策との違い

AIを利用する場合でも、アクセス制御や認証、脆弱性管理、ログ監視といった従来のセキュリティ対策が不要になるわけではありません。これらは引き続き重要な基盤となります。そのうえでAIセキュリティでは、AIへの入力、AIからの出力、AIが参照するデータ、AIに与える権限といった新たな要素についても対策を考える必要があります。

例えば、システムへのアクセス権限が適切に管理されていても、従業員が外部の生成AIサービスへ機密情報を入力すれば、別の経路から情報が外部へ渡る可能性があります。また、AIを組み込んだシステムでは、通常の操作では想定していなかった指示によってAIの動作が誘導される可能性もあります。

したがって、AIセキュリティでは従来のサイバーセキュリティを土台としながら、「AIをどのように利用するか」と「AIを組み込んだシステムをどのように守るか」の両面から対策を考えることがポイントとなります。

企業が注意すべき生成AIの主なリスク

生成AIは業務効率化や情報収集などに役立つ一方、使い方によっては情報漏洩や誤った判断につながる可能性があります。企業で利用する際には、どのような情報を入力するのか、生成された内容をどのように扱うのかといった観点からリスクを把握する必要があります。

機密情報・個人情報の漏洩

生成AIに顧客情報や社内の機密情報、個人情報などを入力すると、利用するサービスの仕様や設定によっては、入力した情報がサービス提供者側で保存・利用される可能性があります。業務で生成AIを利用する場合は、入力してよい情報と禁止する情報を明確にするとともに、利用するサービスのデータ取り扱い方針や設定を確認することが必要です。

誤情報・ハルシネーション

生成AIは、事実と異なる内容や、もっともらしい誤情報を生成することがあります。こうした現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。

生成された文章や回答を十分に確認せず、社内資料や顧客への回答、意思決定などに利用すると、誤った情報が業務に影響を及ぼすおそれがあります。重要な情報については、信頼できる情報源と照合するなど、人による確認が欠かせません。

著作権・知的財産に関するリスク

生成AIでは、入力する情報と生成されたコンテンツの双方について、著作権や知的財産への配慮が必要です。第三者が権利を持つ文章や画像などを安易に入力したり、AIが生成したコンテンツを確認せずに公開・商用利用したりすると、権利上の問題につながる可能性があります。利用する生成AIサービスの規約を確認するとともに、生成物の利用方法に応じた確認体制を整えることが求められます。

シャドーAI

シャドーAIとは、組織が把握・管理していない生成AIサービスを従業員が業務で利用している状態を指します。企業が生成AIの利用を一律に禁止していても、従業員が個人アカウントなどを使って利用すれば、機密情報が管理外のサービスへ入力される可能性があります。そのため、単に利用を禁止するだけでなく、利用可能なAIサービスや用途を明確にし、組織として利用状況を把握できる環境を整えることが重要です。

生成AIの利用に伴うリスクや企業が取るべき対策については、「生成AIのリスクとは?企業利用で注意すべき情報漏洩・著作権・誤情報と対策」で詳しく紹介します。

AIを狙ったサイバー攻撃にも注意が必要

AIセキュリティで考えるべきなのは、従業員が生成AIを安全に利用するための対策だけではありません。AIやLLM(大規模言語モデル)を組み込んだシステムが普及することで、AIの仕組みや特性を悪用した攻撃への備えも必要になっています。

プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションは、攻撃者が悪意のある指示をAIに与えることで、本来想定されていない動作や出力を引き起こそうとする攻撃です。ユーザーが直接入力する指示だけでなく、AIが読み込むWebページや文書などに悪意のある指示を埋め込む「間接プロンプトインジェクション」にも注意が必要です。外部の情報を参照するAIや、他のシステムと連携して処理を行うAIでは、影響範囲が広がる可能性があります。

センシティブ情報の漏洩

AIを組み込んだシステムでは、モデルが参照できる情報やユーザーの入力内容などが、意図せず出力される可能性があります。特に、社内文書や顧客情報などをAIから参照できるようにしている場合には、利用者の権限に応じて参照可能な情報を制御するなど、AIだけに依存しないアクセス制御が必要です。

データやモデルへの不正な操作

AIの動作は、学習データや外部から取得する情報などの影響を受けます。攻撃者によってデータが意図的に操作されれば、AIの判断や出力が影響を受ける可能性があります。AIが参照するデータの信頼性を確認するとともに、データへのアクセスや変更を適切に管理することが求められます。

AIに与える権限にも注意

AIエージェントなど、AIが外部サービスや社内システムと連携して処理を実行する仕組みでは、AIにどこまでの権限を与えるかが重要になります。必要以上の権限を付与すると、AIが意図しない操作を行った場合や攻撃者に悪用された場合の影響が大きくなります。人のアカウントと同様に、AIについても必要最小限の権限を設定し、重要な処理には人による確認を組み合わせることが重要です。

OWASPが示すLLMアプリケーションのリスク

LLMを利用したアプリケーションには、従来のWebアプリケーションと共通するリスクに加え、プロンプトインジェクションをはじめとしたLLM特有のリスクがあります。

OWASPでは、LLMや生成AIアプリケーションで特に注意すべきセキュリティリスクを整理しています。AIを組み込んだサービスを開発・提供する企業では、こうしたリスクを踏まえて、設計・開発・運用の各段階で対策を検討する必要があります。

具体的な脅威と対策については、「LLMセキュリティとは?プロンプトインジェクションなどの脅威と対策」で詳しく紹介します。

AIセキュリティ対策は「利用」と「システム」の両面から考える

ここまで見てきたように、AIセキュリティには、従業員による生成AIの利用に伴うリスクと、AIを組み込んだシステムそのものに対するリスクがあります。そのため企業では、利用ルールの整備だけでなく、ガバナンスや技術的なセキュリティ対策を組み合わせて取り組むことが必要です。

AI利用ルールを整備する

まず、従業員がどのような条件でAIを利用できるのかを明確にします。利用可能なAIサービスや用途、入力してはいけない情報、生成物を利用する際の確認方法などを定め、従業員が判断に迷わないルールにすることが重要です。また、AIサービスや利用方法は変化するため、一度ルールを作成して終わりにせず、利用状況に応じて見直していく必要があります。

AIガバナンスの体制を整備する

AIの利用を個々の従業員や部門だけに任せるのではなく、組織として管理する仕組みも必要です。誰がAI利用を管理するのか、どのようにリスクを評価するのか、問題が発生した場合にどの部門が対応するのかなど、役割と責任を明確にします。

AI利用ガイドラインの策定方法や組織としての管理体制については、「AIガバナンスとは?企業に必要な体制とAI利用ガイドラインの作り方」で詳しく紹介します。

シャドーAIを把握・管理する

ルールを整備しても、組織が把握していないAIサービスが利用されていれば、リスクを十分に管理できません。どの部門でどのようなAIが利用されているかを把握し、必要に応じて利用サービスを承認制にするなど、実際の利用状況とルールを一致させる取り組みが必要です。

AIを組み込んだシステムのセキュリティを確認する

AIを利用したシステムを開発・導入する場合には、通常のアプリケーションと同様のセキュリティ対策に加えて、AI・LLM固有のリスクも確認します。入力・出力の検証、アクセス制御、権限管理、APIや外部サービスとの連携、ログの記録などを確認し、プロンプトインジェクションをはじめとする攻撃への対策も検討します。

継続的なセキュリティ対策の見直し

AIを取り巻くサービスや技術、攻撃手法は変化しています。現在安全と判断した利用方法や設定であっても、将来も同じとは限りません。AIの利用状況や新たな脅威を定期的に確認し、ガイドラインやシステム設定、セキュリティ対策を継続的に見直していくことが重要です。

企業はAIセキュリティ対策をどこから始めるべきか

AIセキュリティといっても、すべての対策を一度に導入する必要はありません。まずは自社でAIがどのように使われているかを把握し、リスクの高い領域から優先して対策を進めます。

STEP1 AIの利用状況を把握する
利用しているAIサービス、利用部門、用途、取り扱う情報などを整理します。
STEP2 扱う情報とリスクを整理する
機密情報や個人情報など、AIで扱う情報と想定されるリスクを確認します。
STEP3 AI利用ガイドラインを整備する
利用可能なサービスや用途、禁止事項、生成物の確認方法などを定めます。
STEP4 技術的なセキュリティ対策を実施する
AIを組み込んだシステムについて、アクセス制御や権限管理、入出力の検証、脆弱性への対策などを行います。
STEP5 継続的に評価・改善する
利用状況や新たなリスクを確認し、ルールと技術対策を定期的に見直します。

AIの利用を一律に禁止するのではなく、どこにリスクがあるのかを把握したうえで、業務上のメリットと安全性のバランスを取りながら活用していくことが重要です。

AIセキュリティに関するよくある質問

▼ AIセキュリティとは何ですか?
▼ 生成AIを業務で利用する場合、どのようなリスクがありますか?
▼ AI利用ガイドラインには何を定めればよいですか?
▼ LLMにはどのようなセキュリティリスクがありますか?

まとめ

生成AIの普及によって、企業がAIを業務やシステムに取り入れる機会は広がっています。それに伴い、情報漏洩や誤情報、著作権などの利用上のリスクだけでなく、プロンプトインジェクションをはじめとするAI・LLMを狙った攻撃についても考える必要があります。AIセキュリティでは、AIを安全に利用することとAIを組み込んだシステムを安全にすることの両面から対策を進めることがポイントです。まずは自社でどのようにAIが利用されているかを把握し、AI利用ガイドラインや管理体制を整備するとともに、AIを組み込んだシステムについてはアクセス制御や権限管理、入出力の検証など、技術的な対策も進めていきましょう。

AIを取り巻く技術や脅威は変化しています。利用を一律に制限するのではなく、リスクを継続的に把握・評価しながら、安全なAI活用につなげていくことが重要です。


参考情報

公開日:2025年4月16日
更新日:2026年8月26日

編集責任:木下


BBSecでは

AIの利用拡大に伴い、企業を取り巻くIT環境やセキュリティリスクも変化しています。公開IT資産の把握、脆弱性の確認、セキュリティ対策の有効性検証など、自社の課題に応じた対策をご相談ください。


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説

Share
ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説アイキャッチ画像

ランサムウェア攻撃では、データを暗号化するだけでなく、窃取した情報の公開をちらつかせる「二重恐喝」が大きな脅威となっています。本記事では、製造業のサプライチェーンに及ぶ影響と企業が備えるべき対策を解説します。

製造委託先への攻撃リスクについては、前回記事「Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策」もあわせてご覧ください。

ランサムウェアの二重恐喝とは

二重恐喝とは、攻撃者が企業のデータを暗号化するだけでなく、事前に重要データを窃取し、「身代金を支払わなければ公開する」と脅す攻撃手法です。企業がバックアップからシステムを復旧できる場合でも、窃取されたデータの公開リスクが残るため、攻撃者にとって強い圧力材料になります。

この手口では、まずフィッシングメール、脆弱性の悪用、認証情報の窃取、リモートアクセス環境の不正利用などを通じて社内ネットワークに侵入します。その後、社内のファイルサーバ、共有フォルダ、業務システムなどを探索し、重要情報を外部へ持ち出します。最後にシステムやファイルを暗号化し、復号や窃取データの非公開と引き換えに金銭を要求します。

従来のランサムウェア対策では、バックアップを取得していれば復旧できる可能性がありました。しかし、二重恐喝では「復旧できるか」だけではなく、「漏洩した情報をどう扱うか」が大きな問題になります。特に顧客情報、取引先情報、設計情報、契約情報などが含まれる場合、情報の内容や影響範囲によっては、法令等に基づく報告や、顧客・取引先への説明、法務・広報対応などが必要になることがあります。つまり、二重恐喝は単なるIT障害ではなく、情報管理、法務、広報、経営判断を巻き込む重大インシデントです。

製造業で二重恐喝の影響が大きくなりやすい理由

製造業では、情報漏洩と業務停止の影響が同時に発生しやすい点に注意が必要です。製造現場では、生産管理システム、在庫管理、受発注システム、設計データ共有基盤、品質管理システムなど、多くのシステムが業務に直結しています。これらが暗号化や停止の影響を受けると、生産ラインの停止、納期遅延、在庫不足、出荷停止につながる可能性があります。

さらに、製造業が扱う情報には、競争力に直結するものが多く含まれます。設計図、部品表、製造工程、検査手順、試作品情報、原価情報、調達先情報などが流出した場合、模倣品の製造、価格競争力の低下、技術ノウハウの不正利用といったリスクが生じます。

製造業のサプライチェーンでは、製造委託先や部品メーカーとの間で、設計データ、仕様書、受発注情報などを共有するケースがあります。そのため、攻撃を受けた企業自身の情報だけでなく、委託元や取引先から預かっている情報まで窃取される可能性があります。自社が直接攻撃を受けていなくても、取引先への攻撃を起点として情報漏洩や供給停止の影響を受ける点が、サプライチェーンにおける二重恐喝の大きなリスクです。

また、製造業はサプライチェーンが複雑であり、一社の停止が複数の企業に波及しやすい特徴があります。製造委託先、部品メーカー、物流会社、保守会社、販売会社などが連携しているため、どこか一社がランサムウェア被害を受けると、関連企業にも納期調整や代替手配、顧客説明などの負担が発生します。さらに操業停止による事業への影響に加えて、設計情報や取引先情報などの漏洩リスクも生じます。そのため二重恐喝を受けた場合、システム復旧、情報漏洩への対応、取引先への説明などを同時に迫られる可能性があります。製造業では二重恐喝を、サプライチェーン全体の事業継続リスクとして捉える必要があります。

二重恐喝への対策として企業が確認すべきこと

二重恐喝への対策では、暗号化への備えと情報漏洩への備えを分けて考えることが重要です。まず、暗号化への備えとして、バックアップの取得と復旧手順の確認が欠かせません。バックアップは定期的に取得するだけでなく、攻撃者に同時に暗号化・削除されないよう、オフライン保管や改ざん耐性のある仕組みを検討する必要があります。

次に、情報漏洩への備えとして、重要データの所在を把握し、アクセス権限を必要最小限にすることが重要です。設計情報や顧客情報などの重要データに誰がアクセスできるのか、どのシステムに保存されているのかを整理し、不要な共有や過剰な権限を見直します。

また、DLP(Data Loss Prevention:情報漏洩防止)やログ監視を活用し、大量ダウンロード、不審な外部送信、通常と異なるアクセスを検知できる体制を整えることも有効です。EDRや脆弱性管理、メール対策、多要素認証などにより、侵入そのものを防ぐ取り組みも必要です。さらに、インシデント発生時には、IT部門だけでなく、法務、広報、経営層、事業部門が連携して対応する必要があります。情報漏洩の可能性がある場合、顧客や取引先への説明、監督官庁への報告、証拠保全、外部専門家との連携が求められます。

製造業では被害が生産や供給に波及する可能性があります。サイバー攻撃を想定した事業継続や委託先管理については、「サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?委託先管理の見直しポイントを解説」で詳しく解説します。

まとめ

ランサムウェアの二重恐喝は、システムの暗号化だけでなく、窃取データの公開を材料に企業へ圧力をかける攻撃手法です。バックアップによってシステムを復旧できたとしても、情報漏洩のリスクは残るため、企業にはより広範な対応が求められます。特に製造業では、設計情報、部品表、製造工程、調達情報など、競争力や事業継続に直結する情報を多く扱います。ランサムウェア攻撃を受けた場合、情報漏洩、操業停止、供給遅延、取引先対応が同時に発生する可能性があります。企業は、バックアップだけでなく、重要データへのアクセス管理、データ持ち出しの監視、EDR、脆弱性管理、多要素認証などを組み合わせ、暗号化と情報漏洩の双方に備える必要があります。

さらに製造業では、取引先や委託先を含めた事業継続の観点も欠かせません。次回は、サイバー攻撃を前提としたサプライチェーンBCPと委託先管理について解説します。

参考情報

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策

Share
「Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策」アイキャッチ画像

2026年5月、電子機器の製造受託大手Foxconnの北米拠点がサイバー攻撃を受け、攻撃者は約8TBのデータを窃取したと主張しました。製造委託先には複数企業の設計・製造情報が集まるため、侵害の影響が取引先へ広がるおそれがあります。本記事では、製造委託先が狙われる理由と、企業が取るべきサプライチェーン対策を解説します。

Foxconnへのサイバー攻撃で何が起きたのか

2026年5月、電子機器の製造受託大手Foxconnは、北米の一部拠点がサイバー攻撃を受けたことを明らかにしました。Foxconnによると、影響を受けた工場では復旧対応が進められ、通常の生産体制へ段階的に戻っているとされています。

この攻撃について、ランサムウェア攻撃グループ「Nitrogen」は、約8TB、1,100万件を超えるファイルを窃取したと主張しました。窃取した情報には、Apple、Intel、Google、Dell、Nvidia、AMDなどの顧客企業に関係する情報が含まれるとも主張しています。

ただし、データ窃取の規模や内容、顧客企業に関する情報が実際に含まれていたかについて、Foxconnは詳細を公表していません。そのため、攻撃者側の主張とFoxconnが確認・公表している事実は分けて捉える必要があります。

なぜ製造委託先はサイバー攻撃の標的になりやすいのか

製造委託先が狙われやすい理由の一つは、発注元企業との間に多くの情報連携が発生するためです。製造委託企業には、設計図、部品表、製品仕様、検査手順、試作品情報、調達計画など、製品開発や量産に必要な情報が集約されることがあります。

攻撃者から見ると、こうした企業を侵害することで、発注元企業へ直接侵入しなくても、重要情報に近づける可能性があります。特に大企業はセキュリティ対策が強化されている一方で、委託先や再委託先まで同じ水準で管理されているとは限りません。攻撃者はこの「守りの差」を狙い、比較的侵入しやすい取引先を足がかりにすることがあります。

また、製造業では受発注システム、設計データ共有基盤、生産管理システム、保守対応の連絡経路など、複数企業をまたぐ業務連携が多く存在します。こうした接点が適切に管理されていない場合、侵害された委託先から関連企業へ芋づる式に影響が広がる可能性があります。

つまり、製造委託先は単なる外部企業ではなく、発注元企業の事業継続や情報保護に直結するサプライチェーンの一部として考える必要があります。

Foxconnでは過去にも被害が発生

なお、Foxconnとその関連企業では今回が初めての被害ではなく、過去にもサイバー攻撃による被害が報じられています。

2020年はDoppelPaymerによる攻撃、2022年には別のメキシコ拠点がLockBitの標的となりました。また2024年には子会社のFoxsemiconも攻撃を受けています。

世界各地に拠点や子会社を持つ企業では、組織全体で統一した対策を進めていても、拠点や関連会社によってセキュリティ対策や運用の水準に差が生じることがあります。攻撃者は、こうしたサプライチェーンやグループ企業内の接点を狙う可能性があります。

製造委託先の侵害がもたらす主なリスク

製造委託先が侵害された場合、影響は委託先単独の問題に留まりません。まず懸念されるのは、顧客企業に関係する情報の漏洩です。実際にFoxconnの事例では、攻撃者側が顧客企業の機密情報の窃取を主張しており(Foxconn側は詳細未公表)、こうした主張の真偽が確認される前から報道が先行する点も、企業にとって風評面のリスクとなり得ます。

設計情報や部品表、製造手順、製品仕様などが流出すれば、知的財産の漏洩、模倣品の製造、競争力の低下につながるおそれがあります。

また、製品やシステムの構成情報が外部に出ることで、攻撃者が弱点を分析しやすくなる可能性もあります。たとえば、使用している部品、ソフトウェア、通信仕様、検査工程などの情報が悪用されれば、将来的な攻撃の足がかりになることも考えられます。

さらに、ランサムウェア攻撃では、工場の操業停止や生産ラインの停止も大きなリスクです。製造委託先の業務が止まれば、発注元企業にとっても納期遅延、欠品、代替生産の調整、顧客説明などの対応が必要になります。

近年のランサムウェア攻撃では、システムを暗号化するだけでなく、事前にデータを窃取したうえで公開をちらつかせる「二重恐喝」も多く確認されています。そのため、バックアップからシステムを復旧できたとしても、窃取された情報の公開リスクが残ります。

ランサムウェアの二重恐喝の仕組みや、製造業のサプライチェーンに与える影響については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説」

製造委託先の侵害は、情報漏洩、知財リスク、操業停止、供給遅延、信用低下が同時に発生し得る、サプライチェーン全体のリスクとして捉えるべきです。

企業が取るべき対策

企業は、製造委託先を「外部の別会社」として扱うだけではなく、自社のサプライチェーンの一部として管理することが重要です。

委託先と共有する情報を最小限にする

まず実施すべきことは、委託先に渡す情報を必要最小限にすることです。設計データ、部品表、製造手順などの重要情報は、必要な範囲、期間、担当者に限定して共有する必要があります。

アクセス権限を分離する

次に、アクセス権限をプロジェクト単位で分離することが有効です。すべての担当者が広範な情報にアクセスできる状態では、侵害時の被害が拡大しやすくなります。プロジェクトごと、顧客ごと、工程ごとにアクセス範囲を分けることで、万一の侵害時にも影響範囲を抑えやすくなります。

委託先の対策状況を定期的に確認する

委託先のセキュリティ対策状況を定期的に確認することも重要です。ただし、すべての委託先に同じ水準の対策や監査を一律に求めるのではなく、委託する業務の重要度や、共有する情報の機密性に応じて確認内容を設定する必要があります。

たとえば、設計情報や顧客情報を扱う委託先、業務停止時に自社の生産や供給へ大きな影響を及ぼす委託先については、ランサムウェア対策、EDRなどの端末監視、バックアップ、ログ管理、脆弱性管理、インシデント対応体制を重点的に確認します。一方で、扱う情報や事業への影響が限定的な委託先については、確認項目を絞るなど、リスクに応じた管理が現実的です。

重要な委託先については、契約時の確認だけで終わらせず、取引期間中も定期的に対策状況を確認し、環境やリスクの変化に応じて見直すことが求められます。

情報漏洩とランサムウェアへの技術的対策を講じる

技術的な対策としては、DLPによるデータ持ち出し監視、アクセスログの分析、大量ダウンロードの検知、重要データの暗号化、バックアップの分離保管などが挙げられます。特にランサムウェア対策では、バックアップが攻撃者に同時に破壊・暗号化されないよう、オフライン保管や改ざん耐性のあるバックアップ設計を検討する必要があります。

契約と事業継続計画を整備する

契約面では、インシデント発生時の通知期限、調査協力、証拠保全、再委託先管理、損害範囲、データ削除義務を明確にしておくことが重要です。さらに、代替生産先、代替部品、重要データの社内保全を含め、サイバー攻撃を前提としたサプライチェーンBCPを整備する必要があります。

サイバー攻撃を想定したサプライチェーンBCPの考え方や、委託先管理で確認すべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?委託先管理の見直しポイントを解説」

まとめ

製造委託先は、複数の顧客企業に関わる設計情報や製造情報を扱うため、攻撃者にとって高価値な標的になり得ます。発注元企業のセキュリティ対策が強固であっても、委託先や再委託先に弱点があれば、そこを入口として情報漏洩や業務停止が発生する可能性があります。

製造業におけるサプライチェーンリスクは、自然災害や物流停止だけではありません。サイバー攻撃による情報漏洩、操業停止、供給遅延、二重恐喝も、事業継続に直結する重要なリスクです。 企業は、委託先への情報共有を最小限に抑え、アクセス権限を分離し、定期的なセキュリティ監査を行うことが求められます。加えて、契約面の見直しやサイバー攻撃を想定したBCPの整備を進めることで、サプライチェーン全体のレジリエンスを高めることが重要です。

【参考情報】(2026年8月時点)

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

さくらのレンタルサーバ不正アクセスが示す「管理環境」のリスク―583アカウントに不正ログイン

Share
さくらのレンタルサーバで不正アクセスアイキャッチ画像

2026年8月17日、さくらインターネットは「さくらのレンタルサーバ」の一部顧客環境への不正アクセスを公表しました。本記事では、同社や公的機関の一次情報をもとに、判明している事実や情報漏えいの可能性、利用企業が確認すべき対策を解説します。

※本記事は2026年8月17日時点で確認できる公表資料に基づき作成しています。

さくらインターネットへの不正アクセスで何が起きたのか

さくらインターネットの発表によると、同社は2026年8月9日、管理するサーバ環境で異常を検知し、調査を開始しました*4。その後、第三者が同社の管理環境を経由して、「さくらのレンタルサーバ」の一部顧客環境へ不正アクセスしていたことが判明しました。8月9日は攻撃開始日ではなく、異常を検知した日です。

8月17日の公表時点で、不正ログインの対象は583アカウントです。第三者が顧客アカウントからアクセスできる領域まで到達していたほか、一部のサーバにはマルウェアが設置されていました。また、一部の顧客情報を含む個人データが、第三者に閲覧または取得された可能性があるとされています。漏えいした可能性がある情報として挙げられているのは、「顧客領域内に保存された情報」と「利用者識別子」です。ただし、具体的な情報項目、対象人数、実際に取得されたデータの範囲は調査中です。

同社は認証情報の失効、アクセス遮断、マルウェアの除去、監視強化、外部専門機関を交えたフォレンジック調査を進めています。あわせて、データベースアップグレード機能、プラン変更、移行ツールなどの一部機能を制限しています。現時点では「さくらのVPS」「さくらのクラウド」「さくらの専用サーバ PHY」「高火力 PHY」への影響は確認されていませんが、その他のサービスを含めた調査は継続中です。

注目すべきは『管理環境を経由』した点

一般的なWebサイトの不正アクセスでは、更新されていないCMSやプラグイン、弱いパスワードなど、顧客側の環境が侵入口になるケースがあります。しかし今回の発表は、第三者がさくらインターネットの管理環境を経由して顧客環境へアクセスしたと説明しています。「管理環境」が具体的にどのシステムを指すのか、最初の侵入に脆弱性や窃取された認証情報が使われたのかは公表されていません。そのため、特定の製品やWordPressの脆弱性、ゼロデイ攻撃などと結び付ける根拠はありません。それでも、サービス提供者側の管理環境を経由し、複数の顧客アカウントへ影響が及んだ点は重要です。

さくらインターネットのサポート情報によれば、「さくらのレンタルサーバ」は複数の利用者が1台のサーバを共有する共用サーバとして運営されています*2。共用ホスティングでは、利用企業が自社サイトを適切に管理していても、サービス提供者側の管理層で発生した問題の影響を完全にコントロールすることはできません。これは「レンタルサーバだから危険」という話ではありません。自社ですべてのサーバを運用する場合にも、別の脆弱性や運用リスクがあります。重要なのは、外部サービスへ運用を委ねることで負担は軽減できても、情報管理やインシデント対応まで外部へ丸投げできるわけではないという点です。なお、「さくらのレンタルサーバ」は共用サーバとして提供されていますが、今回の不正アクセスと共用サーバという構成との因果関係は公表されていません。

583アカウントは「583人分の情報漏えい」ではない

今回さくらインターネットから公表された「583」という数字は、情報漏えいが確認された人数ではなく、不正ログインが判明したアカウント数です。また、「被害申告が確認されていない」ことと「改ざんがなかったことが確認された」ことは区別して捉える必要があります。現段階では、不正ログインとマルウェアの設置は確認済みである一方、個々の顧客環境で何が閲覧、取得、変更されたのかを調べている途中だと捉えるのが適切でしょう。

「通信の秘密」に該当する情報とは

さくらインターネットは、攻撃者が顧客情報だけでなく、「通信の秘密」に該当する情報へアクセスできる状態にあったと説明しています。通信の秘密は、メール本文などの通信内容だけを意味するものではありません。

個人情報保護委員会と総務省の「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」では、通信当事者の住所や氏名、発受信場所、通信年月日、通信回数、通信の存在自体に関する情報も含まれるとされています。ただし、今回どの情報が実際に閲覧・取得されたのかは公表されておらず、具体的な影響範囲は調査中です。さくらインターネットは、総務省や個人情報保護委員会などの関係機関への報告・情報共有を行うとともに、影響の可能性がある顧客への個別通知を開始しています。

レンタルサーバの侵害が企業へ及ぼす影響

企業が利用するレンタルサーバには、WebサイトのHTMLファイルや画像だけが置かれているとは限りません。問い合わせフォームから取得した情報、会員データ、データベース、業務用メールなどが保存されている場合があります。アプリケーションの設定ファイルに、データベースや外部クラウドサービスへ接続するための認証情報が記録されているケースもあります。

さくらインターネットの公式マニュアルでは、サーバーコントロールパネルへ管理者権限でログインした場合、そのレンタルサーバで行えるすべての操作に加え、作成された全メールアドレスの受信メール閲覧や設定変更などが可能と説明されています*3。ただし、今回不正ログインされた583アカウントが、この管理者権限を持つアカウントに該当するかは公表されていません。ここで重要なのは、実際の被害を先回りして断定することではなく、自社がサーバ上に何を保存し、どのシステムと接続しているかを把握しておくことです。

Webサイトが停止・改ざんされれば、情報発信や問い合わせ受付、ECサイトの販売などに影響します。仮にメールアカウントなどが不正利用された場合には、なりすましメールやフィッシング、取引先への攻撃に悪用されるおそれもあります。外部サービス上の一つのアカウントが、社内外の複数システムをつなぐ接点になっていないかを確認する必要があります。

相次ぐサービス提供者側の不正アクセス

サービス提供者側のシステムが侵害され、利用企業やその顧客へ影響が波及した事例は、今回が初めてではありません。

2025年には、インターネットイニシアティブ(IIJ)の法人向けメールセキュリティサービス「IIJセキュアMXサービス」が、第三者製ソフトウェアの当時未発見だった脆弱性を悪用した不正アクセスを受けました。そして2026年には、KDDIがISP事業者向けに提供していたメールシステムでも、第三者製ソフトウェアの未知の脆弱性を悪用した不正アクセスが発生し、メールアドレスやパスワードなどの漏えいが確認されています。

IIJやKDDIの事案と、今回のさくらインターネットへの不正アクセスが同じ原因や攻撃手法によるものだと示す情報はありません。一方、サービス提供者のシステムが侵害された場合、その影響がサービスを利用する複数の組織へ広がり得る点は共通しています。

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」は組織向け脅威の2位となっています。ただし、今回の侵入原因や攻撃者の目的は判明しておらず、本件をサプライチェーン攻撃と断定することはできません。「委託先やITサービスを通じて自社へ影響が及ぶリスク」を考えるための事例として捉えるのが適切です。

さくらのレンタルサーバ利用者が確認すべきこと

今回の事案を受けて確認すること

さくらインターネットは利用者に対し、身に覚えのないファイルや管理者アカウントが追加されていないか、Webサイトやアプリケーションに不審な変更がないか、心当たりのないログインやメール送信が発生していないかを確認するよう求めています。確認の際は、現在表示されているWebサイトだけを見て「異常なし」と判断するのではなく、サーバーコントロールパネルのログイン履歴、取得できる範囲の接続・メール送信ログ、ファイルの更新日時なども確認します。身に覚えのないファイルや不審な通信を発見した場合は、調査に必要な記録を残したうえで、さくらインターネットやセキュリティの専門家へ相談することが重要です。

なお、2026年8月17日時点では、全利用者に対する一律のパスワード変更は求められていません。さくらインターネットは、パスワード変更などの追加対応が必要と判明した場合、対象者へ個別に案内するとしています。個別通知を受けた場合はその指示に従い、同じパスワードを他のサービスでも使用している場合は、該当サービスのパスワードも変更する必要があります。

平時から備えておくこと

平時の対策としては、サーバーコントロールパネルとWebメールの二要素認証を有効にし、管理者権限を必要な担当者だけに限定することが有効です。ただし、今回のようにサービス提供者の管理環境を経由した不正アクセスでは、利用者側の二要素認証だけですべてのリスクを防げるとは限りません。今回の侵入を二要素認証で防げたとする情報も公表されていないため、一般的なアカウント乗っ取り対策として捉える必要があります。また、Webサイト、データベース、メール、設定ファイルなど、サーバ上に保存している情報を定期的に棚卸しし、漏えいした場合の影響を把握しておくことも重要です。あわせて、復旧に必要なデータは同じサービス内だけに保存せず、別の媒体や環境にもバックアップを保持します。

IPAの「日常における情報セキュリティ対策」では、データを3つ持ち、2種類の異なる媒体でバックアップし、そのうち1つは異なる場所(オフサイト)で保管する「321ルール」を紹介しています。

外部へ委託しても自社のリスク管理は必要

レンタルサーバやクラウドサービスを利用する目的の一つは、専門事業者へ運用を任せ、自社の負担を軽減することです。しかし、サービス上で扱う情報の種類や重要度を決めるのは利用企業であり、インシデント発生時には、利用企業側にも顧客や取引先への説明・対応が求められる場合があります。サービスを選ぶ際は、料金や容量、表示速度だけでなく、取得できるログ、バックアップの保存場所、障害・不正アクセス時の連絡方法、調査への協力範囲、データの返却・削除方法なども確認しておく必要があります。特に、Webサイトやメールが事業継続に直結する企業では、サービス停止や情報漏えいを想定した連絡体制と復旧手順を、委託先と共有しておくことが重要です。

IPAが進める「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」でも、ITサービスを含む委託先への攻撃を起点としたサービス停止、機密情報の漏えい、改ざん、踏み台化などがリスクとして挙げられています。委託先のセキュリティを確認することは、自社の事業を守るためのリスク管理です。

さくらのレンタルサーバ不正アクセスに関するFAQ

▼ 自分のアカウントが対象か確認する方法は?
▼ パスワード変更は必要ですか?
▼ どの情報が漏えいした可能性がありますか?

まとめ

今回のさくらインターネットへの不正アクセスでは、583アカウントへの不正ログインや一部サーバへのマルウェア設置が確認され、顧客領域に保存された情報などが第三者に閲覧・取得された可能性も公表されています。一方、侵入経路や攻撃の開始時期、実際に取得された情報の範囲などは、現時点では調査中です。今回注目すべきなのは、被害の数字だけでなく、サービス提供者の管理環境を経由して複数の顧客環境へ不正アクセスが行われた点です。利用企業は公式情報を継続的に確認するとともに、自社環境に不審な変更がないかを点検し、サーバ上に保存している情報や外部システムとの接続関係を把握しておく必要があります。 外部サービスを利用していても、自社の情報や事業へのリスクがなくなるわけではありません。本件を、自社のセキュリティ対策だけでなく、委託先やITサービスを含めたリスク管理を見直す機会とすることが重要です。

参考情報

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。


ウェビナー開催のお知らせ

  • 2026年8月26日(水)「AI時代に見直すセキュリティ対策 ~ASMの考え方で始める攻撃対象領域の可視化とリスク対策~」
  • 最新情報はこちら


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    2026年2Q KEVカタログに見る攻撃トレンド ― 実際に悪用された脆弱性から読み解く攻撃者の狙い

    Share
    2026年2Q KEVカタログに見る攻撃トレンドアイキャッチ画像

    前回記事では、2026年第2四半期(2Q)のKEVカタログを統計データから分析しました。本記事では、同期間にKEVへ追加された脆弱性のうち、実際の攻撃事例に着目。攻撃者が狙う製品の共通点や脆弱性の悪用方法を分析し、2026年2Qに見られた攻撃トレンドを読み解きます。

    実際の攻撃事例から見える2026年2Qの特徴

    2026年第2QにKEVへ追加された脆弱性のうち、具体的な攻撃事例が確認されているものを見ると、VPNやRMM(Remote Monitoring and Management)、メールサーバ、業務システム、開発ツールなど、さまざまな製品が攻撃対象となっています。一見すると異なる製品ですが、事例を横断すると共通点も見えてきます。特に注目したいのが、インターネットからアクセス可能なシステムや、侵害後に組織内部へのアクセスに利用できる管理系製品が狙われていることです。

    攻撃者にとっては、こうした製品を侵害できれば、その先にある社内ネットワークへ侵入する足掛かりを得られます。つまり、狙われているのは単に「脆弱な製品」ではなく、侵害後の展開に利用価値の高い製品だと考えることができます。

    さらに、開発環境やソフトウェアサプライチェーンを起点として、別の製品や利用者へ被害が連鎖する事例も見られました。以下では、代表的な事例から、こうした攻撃の特徴を詳しく見ていきます。

    VPNや管理システムは「入口」として狙われる

    象徴的な事例の一つが、Check Point Security GatewayのCVE-2026-50751です。この脆弱性は、非推奨となっているIKEv1を利用したRemote Access VPNなどに存在する認証回避の脆弱性で、攻撃者が有効なユーザーパスワードを持たなくてもVPNセッションを確立できる可能性があります。Check Pointは実際の悪用を確認しており、事例の一つには侵害後の活動にランサムウェア「Qilin」との関連性も確認されています*4。

    VPNは本来、社外から安全に組織内部へ接続するための仕組みです。しかし、その認証機構自体が突破されれば、攻撃者にとっては社内ネットワークへの正規の入口に近い役割を果たしてしまいます。

    同様の特徴は、Oracle PeopleSoft Enterprise PeopleToolsのCVE-2026-35273にも見られます。Google Threat Intelligence GroupとMandiantは、ShinyHuntersとして知られるUNC6240による攻撃でこの脆弱性と整合する悪用を確認しています*2。活動はOracleによるアドバイザリ公開前から観測されており、ゼロデイとして悪用されていたと分析しています。

    狙われるRMM・リモート管理製品の脆弱性

    同様に注意したいのがRMM製品です。2026年第2Qには、ConnectWise ScreenConnectのCVE-2024-1708や、SimpleHelpの複数の脆弱性もKEVへ追加されています。

    SimpleHelpでは、CVE-2024-57726やCVE-2024-57728など、複数の脆弱性が確認されています。CVE-2024-57726では低権限の技術者アカウントから過剰な権限を持つAPIキーを作成して管理者権限へ昇格でき、CVE-2024-57728では管理者権限を得た攻撃者が細工したZIPファイルを利用して任意の場所へファイルを書き込み、コード実行につなげられる可能性があります。SimpleHelp自身も、これらの脆弱性を組み合わせることで、情報取得から権限昇格、最終的なコード実行までの攻撃チェーンが成立し得ると説明しています。

    RMM製品は、管理者が複数の端末へ遠隔接続し、操作やソフトウェア配布などを行うための正規ツールです。そのため、攻撃者に侵害された場合、単にRMMサーバ自体が被害を受けるだけではありません。正規の管理機能が、侵入後のアクセス維持や別端末への展開に悪用される可能性があります。

    これらの事例に共通するのは、侵害後に組織内部へアクセスしやすい製品が攻撃対象になっていることです。攻撃者にとって重要なのは、脆弱性そのものの深刻度だけではありません。その製品を侵害した後に「どこまでアクセスできるか」「次の攻撃へつなげられるか」という点も、標的を選ぶうえで重要な要素になっていると考えられます。Microsoftが報告したStorm-1175の活動でも、この特徴が明確に表れています。

    既知の脆弱性を使い分けるランサムウェア攻撃

    Storm-1175は、ランサムウェア「Medusa」を展開する金銭目的の攻撃者です。Microsoftによると、同グループはインターネット上に公開された脆弱なシステムを探索し、主に公開済みのNデイ脆弱性を悪用して初期侵入した、といいます*3。侵入後は情報窃取などを行い、数日以内、場合によっては24時間以内にランサムウェア展開まで進むことが確認されています。Storm-1175の特徴は、特定の製品や一つの脆弱性だけを狙っているわけではない点です。

    Nデイ脆弱性についてはこちらの記事でも解説しています。あわせてぜひご覧ください。
    「定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!-放置された脆弱性のリスクと対処方法-」

    Microsoftの調査では、PaperCut、Microsoft Exchange Server、ConnectWise ScreenConnect、JetBrains TeamCity、SimpleHelp、BeyondTrustなど、複数の製品の脆弱性が初期侵入に利用されていました。2026年第2四半期にKEVへ追加された脆弱性にも、これらの活動で利用されたものが複数含まれています。侵入後には、新しい管理者アカウントを作成してアクセスを維持し、PowerShellやPsExecなどのツールを使用してネットワーク内部へ展開します。さらに、RMMツールを永続化やペイロード配布、横展開などに利用し、認証情報の窃取やセキュリティ機能の妨害を経て、最終的にMedusaランサムウェアを展開するという攻撃の流れが確認されています。

    この事例から見えてくるのは、攻撃者が特定のCVEだけに固執するのではなく、外部から侵入可能な複数の脆弱性を使い分け、その時点で利用できるものを入口としているという実態です。つまり、一つの注目度の高い脆弱性だけに対応しても、別のインターネット公開システムに悪用可能な脆弱性が残っていれば、そこが新たな侵入口になる可能性があります。

    開発環境も攻撃対象に ― サプライチェーン経由の侵害

    もう一つ、2026年第2Qで注目したいのが、一般的なWebサーバやVPNへの脆弱性攻撃とは異なるソフトウェアサプライチェーン経由の攻撃です。CVE-2026-45321として登録されたTanStackのサプライチェーン侵害では、正規のnpmパッケージとして悪意あるバージョンが公開されました。悪意あるコードは、AWSやGCPなどのクラウド認証情報、GitHubトークン、npmトークン、SSH秘密鍵など、開発環境に保存されているさまざまな認証情報を窃取する機能を持っていました。さらに、この侵害は別の製品にも波及しました。

    Nx ConsoleのCVE-2026-48027では、悪意あるバージョンのVS Code拡張機能が公開され、ディスクやメモリ上の認証情報を収集するペイロードが実行されました。Nxの調査によると、開発者の一人がTanStackに関連するサプライチェーン攻撃の影響を受け、流出したGitHub認証情報がNx Consoleの不正公開につながったとされています*4。

    つまり、ある開発ツールの侵害 → 認証情報の窃取 → 別プロジェクトの侵害 → 正規ソフトウェアを通じた被害拡大、という連鎖が生じたことになります。

    Nx Consoleの悪意のあるバージョンは、Visual Studio Marketplaceでは約18分間公開されていました。短時間で削除されたとしても、ソフトウェアの自動更新や正規マーケットプレイスへの信頼を利用した攻撃では、その間に利用者へ影響が及ぶ可能性があります。 これは、境界機器の脆弱性を突いて社内へ侵入する攻撃とは異なります。正規の配布経路や信頼された開発者アカウントそのものが攻撃経路になるため、「正規のアップデートだから安全」という前提だけでは防ぎにくい点が特徴です。

    2026年2Qの事例から見えた3つの攻撃トレンド

    今回の事例を横断すると、三つの特徴が見えてきます。

    第一は、攻撃者が侵害後の展開に利用しやすいシステムを入口としていることです。VPNやRMMなどは外部からアクセス可能であるだけでなく、組織内部への接続や複数端末の管理といった機能を持っています。そのため、侵害されると、その正規機能自体が次の攻撃段階へ進むための足掛かりになり得ます。第二は、攻撃者が複数の既知脆弱性を使い分けていることです。Storm-1175の事例では、PaperCut、Microsoft Exchange Server、ConnectWise ScreenConnect、JetBrains TeamCity、SimpleHelp、BeyondTrustなど、複数製品のNデイ脆弱性が初期侵入に利用されていました。重要なのは、個々の脆弱性の新旧だけではなく、攻撃者が外部から侵入可能なシステムを探し、その時点で利用可能な脆弱性を入口としている点です。第三は、攻撃対象が組織の境界から開発環境やソフトウェアサプライチェーンへも広がっていることです。TanStackとNx Consoleの事例では、一つの認証情報の侵害が別のソフトウェアへ連鎖し、正規の配布経路を通じて被害が広がるリスクが示されました。

    これらに共通するのは、攻撃者にとっての「侵害後の価値」です。外部から到達できるか、高い権限や重要な認証情報を得られるか、さらに別のシステムへアクセスできるかといった条件が、攻撃対象を考えるうえで重要になっていると考えられます。

    まとめ

    2026年第2四半期にKEVへ追加された脆弱性の実際の悪用事例を見ると、統計データだけでは見えにくい攻撃者の行動が浮かび上がってきます。VPNやRMMなどの管理系システムを足掛かりとした侵入、既知の脆弱性を使い分けて短期間でランサムウェア展開まで進む攻撃、そして開発環境から別のソフトウェアへ被害が連鎖するサプライチェーン攻撃など、攻撃経路は多様化しています。こうした事例を見るうえで重要なのは、「どのCVEが危険なのか」だけでなく、その製品やシステムが侵害された場合、攻撃者が次に何をできるのかという視点です。実際の悪用事例と自組織のIT資産を照らし合わせ、インターネットへの公開状況や権限、他システムとの接続関係まで含めてリスクを捉えることが、攻撃の早期発見や被害拡大の防止につながります。

    【参考情報】

    編集責任:木下


    BBSecでは

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


    サイバーインシデント緊急対応

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2026年8月19日(水)14:00~15:00「セキュリティ対策の有効性を検証する ―ペネトレーションテストの実施ポイントと脆弱性診断との違い―」
  • 2026年8月26日(水)「AI時代に見直すセキュリティ対策 ~ASMの考え方で始める攻撃対象領域の可視化とリスク対策~」
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    猛威を振るうランサムウェア攻撃 ‐被害を拡大させる攻撃の実態と、企業に求められる備えとは‐

    Share
    猛威を振るうランサムウェア攻撃アイキャッチ画像

    企業・組織を狙ったランサムウェア攻撃が後を絶ちません。近年では、データを暗号化して身代金を要求するだけでなく、窃取した情報を公開すると脅迫するなど、その手口も巧妙化・多様化しています。

    ランサムウェア攻撃による被害は、システムや業務の停止、情報漏洩、取引先への影響など、事業全体に及ぶ可能性があります。こうした脅威に対し、企業はどのような点に注意し、どのような備えを進めるべきなのでしょうか。

    本記事では、猛威を振るうランサムウェア攻撃の動向や手口を整理しながら、被害を防ぐために企業・組織に求められる対策について解説します。

    この記事でわかること

    • ランサムウェア攻撃を取り巻く現状
    • 近年のランサムウェア攻撃の特徴
    • ランサムウェア攻撃が企業・組織にもたらす影響

    以下、SQAT® Seurity Report 2026年春夏号【注目テーマ】「猛威を振るうランサムウェア攻撃」より一部抜粋、編集

    ランサムウェア攻撃の脅威は今も続いている

    ランサムウェアは、サーバや端末のデータを暗号化し、その復旧を条件に金銭を要求するマルウェアです。

    近年では、データを暗号化するだけでなく、攻撃によって取得した機密情報をリークサイトなどに掲載したり、Webサイトに対してDDoS攻撃を仕掛けたりと、複数の脅迫を組み合わせるケースも増えています。

    また、VPN装置などのネットワーク機器に存在する脆弱性を悪用して組織のネットワークへ侵入する手法や、専門知識がなくてもランサムウェア攻撃を行える「RaaS(Ransomware as a Service)」と呼ばれるビジネスモデルも確認されています。

    出典:警察庁 「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」より引用
    https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7kami/R07_kami_cyber_jyosei.pdf

    ランサムウェア被害が企業にもたらす影響

    ランサムウェア攻撃による被害は、データの暗号化やシステム停止だけにとどまりません。

    警察庁の令和7年上半期統計データによれば、ランサムウェア被害報告件数は116件で、半期の件数としては最多でした(上図)。また、ランサムウェア被害からの調査・復旧に1,000万円以上を要した組織の割合は前年と比較して増加しています。

    被害に遭ったサーバによっては、取引先との取引停止やECサイト、工場の停止などにつながる可能性もあり、復旧費用だけでなく、事業機会の損失や顧客・取引先からの信用低下など、企業活動全体へ損害が発生することも考えられます。

    国内大手飲料メーカーを襲ったランサムウェア攻撃

    2025年下半期には、国内大手飲料メーカーのグループ企業がランサムウェア攻撃を受け、大規模なシステム障害が発生しました。

    ランサムウェアによって複数のサーバや一部のPCのデータが暗号化され、事業継続に必要なシステムが使用不能となったことで、受注・出荷業務や生産ラインなどにも影響が及びました。

    では、ランサムウェア攻撃による被害を防ぎ、万が一侵入された場合にも被害を最小限に抑えるためには、どのような備えが必要なのでしょうか。


    続きはSQAT® Seurity Reportでご覧ください

    SQATSeurity Report2026春夏号表紙画像

    「SQAT® Security Report 2026年春夏号」では、ランサムウェア攻撃の実態や実際の被害事例をさらに詳しく取り上げるとともに、企業・組織が講じるべき対策を「予防」「検知・防御」「復旧」の観点から解説しています。

    具体的な対策についてはぜひ資料をダウンロードのうえ、ご確認ください。

    無料ダウンロード

    参考情報

    編集責任:木下


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    HOMEに戻る

    2026年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

    Share
    2026年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析アイキャッチ画像

    前回記事では、米CISAから公開された「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」へ2026年第1四半期(1Q)に追加された脆弱性を統計的に分析し、実際に悪用された脆弱性から見える攻撃傾向について解説しました。本記事では、2026年4月1日から6月30日までにKEVカタログへ追加された脆弱性を対象に、前回四半期との比較を交えながら、2026年第2四半期(2Q)に見られた特徴を整理します。

    2026年2四半期(2Q)の統計データ概要

    2026年2QにKEVカタログへ追加された脆弱性は75件でした。2026年第1四半期(1Q)と比較すると4件増加しており、件数だけを見ると大きな変化ではありません。しかし、KEVは「実際に悪用されたことが確認された脆弱性」を掲載するカタログであるため、追加件数の増減以上に「どのような脆弱性が追加されたのか」を見ることが重要です。

    月別では追加件数にばらつきが見られ、一時的な集中というよりは、四半期を通じて継続的に新たな悪用事例が確認されたことが分かります。

    月別のKEV追加件数

    月追加件数構成比
    4月3141.3%
    5月2128.0%
    6月2330.7%

    このことは、攻撃者が特定の大型脆弱性だけを狙うのではなく、新たに公開された脆弱性や過去の脆弱性を継続的に攻撃対象へ組み込んでいることを示唆しています。

    主要ベンダー別の内訳

    KEVへ追加された脆弱性をベンダー別に見ると、複数の脆弱性が同一ベンダーへ集中しているケースが確認されました。一方で、2026年2Qの特徴は、特定ベンダーへの極端な集中というよりも、ネットワーク機器、リモート管理ツール、業務システム、Webアプリケーションなど、幅広い製品群に悪用対象が広がっていることです。

    企業が保有するIT資産は多様化しており、攻撃者もそれに合わせて侵入口を分散させています。そのため、「Microsoft製品だけを優先する」「VPN製品だけを重点管理する」といった限定的な運用では十分とは言えません。

    ベンダー別KEV追加件数(上位10社)

    順位ベンダーQ2件数Q1件数増減
    1Microsoft1512+3
    2Cisco74+3
    3SimpleHelp30新規
    3Ubiquiti30新規
    3Ivanti32+1
    3Adobe30新規
    7LiteSpeed20新規
    7Oracle20新規
    7Google23-1
    7BerriAI20新規

    特に管理用途で利用される製品やインターネットへ公開される機器は、侵害された場合の影響が大きく、継続して攻撃対象となっています。

    脆弱性タイプ(CWE)の分布

    CWE件数
    CWE-22(パストラバーサル)6
    CWE-20(不適切な入力検証)5
    CWE-94(コードインジェクション)5
    CWE-287(不適切な認証)5
    CWE-306(重要な機能の使用に対する認証の欠如)4
    CWE-502(不適切なデータ逆シリアル化)3
    CWE-78(OSコマンドインジェクション)3
    CWE-284(不適切なアクセス制御)3
    CWE-89(SQLインジェクション)3

    KEVに追加された脆弱性をCWE別に分類すると、依然として攻撃者が初期侵入に利用しやすい脆弱性が多く確認されました。代表的な脆弱性として以下が上位を占めています。

    • OSコマンドインジェクション
    • 認証回避
    • 不適切な認可
    • パストラバーサル
    • リモートコード実行(RCE)

    これらはいずれも、攻撃者が認証前または低権限の状態からシステムへ侵入し、その後の権限昇格や横展開につなげやすい脆弱性です。特に認証回避や認可不備は、CVSSスコア以上に実運用への影響が大きく、VPN機器や管理画面、リモート保守製品などで繰り返し悪用されています。

    脆弱性の種類を見ると、「攻撃者が最初にシステムへ入り込むための入り口」が依然として重点的に狙われていることが分かります。

    攻撃の自動化容易性(Automatable)

    2026年第2Qも、自動化が容易である「Yes」と評価された脆弱性が一定数確認されました。攻撃者は現在、脆弱性を発見すると短期間でスキャンツールへ組み込み、インターネット上の対象を広範囲に探索するケースが一般的です。認証回避やリモートコード実行(RCE)の脆弱性は、PoC(概念実証コード)が公開されると、数日から数週間で大規模なスキャンの対象になることも珍しくありません。

    企業側としては、「実際に狙われてから対応する」のではなく、自動化攻撃の対象になり得る脆弱性については、公開直後から迅速なパッチ適用や緩和策の実施を検討する必要があります。

    CVSSスコア分布‐CVSSだけでは優先順位は決められない‐

    重大度Q2件数Q2構成比Q1件数
    Critical(9.0~10.0)2736.0%30
    High(7.0~8.9)3850.7%34
    Medium(4.0~6.9)1013.3%7
    Low/None00%0

    KEVへ登録された脆弱性のCVSSを集計すると、CriticalとHighを合わせて全体の約87%を占めました。これは高リスク脆弱性が多いことを示していますが、一方でMedium評価の脆弱性もKEVへ登録されています。つまり、CVSSがそれほど高くなくても、実際に悪用されれば優先的な対応対象になるという点が、KEVの大きな特徴です。

    CVSSは技術的な深刻度を示す指標ですが、攻撃者が利用するかどうかまでは評価していません。そのため、脆弱性管理ではCVSSとKEVを組み合わせて優先順位を判断することが重要になります。また、現在はCVSS v3.xとCVSS v4.0が混在しており、単純なスコア比較には注意が必要です。評価体系が異なるため、スコアだけで危険性の増減を判断すべきではありません。

    実際にランサムウェア攻撃に悪用された脆弱性

    2026年第2Qでは、12件(全体の16.0%)の脆弱性でランサムウェアとの関連が確認されました。件数だけを見ると全体の一部に見えますが、ランサムウェア攻撃で利用される脆弱性は、侵入後に高い権限を取得できるものや、企業ネットワーク全体へ影響を及ぼしやすいものが多い点に注意が必要です。

    一方で、「Unknown」と分類された脆弱性は、「ランサムウェアでは利用されていない」という意味ではありません。現時点で公開情報から確認できていないことを示しており、今後の調査やインシデント分析によって状況が変わる可能性があります。

    第1四半期(1Q)との比較

    追加件数だけを見ると、2Qは1Qから大きく増加したわけではありません。しかし、登録された脆弱性の内容を見ると、いくつかの特徴が見えてきます。

    まず、攻撃対象が特定のベンダーに集中するのではなく、ネットワーク機器やリモート管理ツール、業務システム、Webアプリケーション、開発環境など、多様な製品へ広がっている点が挙げられます。また、認証回避や認可不備といった初期侵入につながる脆弱性が引き続き多く確認されました。こうした傾向からは、攻撃者が新たな攻撃手法を次々と生み出すというよりも、既知の脆弱性を効率的に悪用し、侵入の足掛かりとして利用している状況がうかがえます。

    さらに、KEVには公開から時間が経過した脆弱性も継続して追加されています。これは、攻撃者が古い脆弱性を積極的に狙っているというよりも、パッチ未適用のシステムやサポート終了製品が依然として運用されている実態を反映している可能性があります。脆弱性が公表されてから時間が経過していても、適切な更新が行われていなければ、引き続き攻撃対象となることを示していると言えるでしょう。

    統計から見える3つのポイント

    2026年2QのKEVを俯瞰すると、特に注目すべき点は次の3つです。

    攻撃対象の分散

    従来は特定ベンダーのゼロデイ脆弱性が大きく注目されることがありましたが、第2四半期は幅広い製品が攻撃対象となりました。企業は個別製品への対応だけでなく、自社が保有する資産全体を把握した上で、継続的に脆弱性を管理する必要があります。

    自動化攻撃への対応

    Automatableと評価された脆弱性は、公開後短期間で大規模なスキャンの対象になる可能性があります。攻撃が始まってから対応するのではなく、KEVへの追加を一つの判断材料として優先的に対処することが重要です。

    CVSSだけでは優先順位を決められない

    高いCVSSスコアを持つ脆弱性への対応はもちろん重要ですが、実際に攻撃で悪用されているという事実は、運用上さらに重要な意味を持ちます。KEVは、その「実際の悪用」という観点を補完する情報源として活用できます。

    まとめ

    2026年2Qは、件数そのものよりも、攻撃対象の多様化や、自動化しやすい脆弱性、認証回避など初期侵入を容易にする脆弱性が継続して悪用されている点が特徴的でした。これらは特定の業種や製品に限った問題ではなく、多くの組織が共通して直面するリスクと言えるでしょう。定期的にKEVの追加状況を確認し、自社資産との照合やパッチ適用の優先順位付けへ活用することは、限られたリソースで効果的な脆弱性管理を実施するための重要な取り組みとなります。

    件数や分類だけでは、実際の攻撃者がどのような製品を標的とし、どのような脆弱性を悪用しているのかまでは見えてきません。実際に攻撃で悪用された事例の分析については以下の記事をご覧ください。
    「2026年2Q KEVカタログに見る攻撃トレンド ― 実際に悪用された脆弱性から読み解く攻撃者の狙い」

    【参考情報】

    編集責任:木下


    BBSecでは

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


    サイバーインシデント緊急対応

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

    サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
    SQAT緊急対応バナー

    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2026年8月19日(水)14:00~15:00「セキュリティ対策の有効性を検証する ―ペネトレーションテストの実施ポイントと脆弱性診断との違い―」
  • 2026年8月26日(水)「AI時代に見直すセキュリティ対策 ~ASMの考え方で始める攻撃対象領域の可視化とリスク対策~」
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る