脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

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企業のIT環境は、もはや社内サーバーやネットワーク機器だけで完結しません。業務システムはクラウドへ移行し、開発現場ではOSSの利用が当たり前になり、SaaSやコンテナ、API連携を含めた複雑な構成が一般化しています。こうした環境では、ひとつの脆弱性が単独の問題にとどまらず、情報漏えい、業務停止、サプライチェーン全体への影響へとつながることがあります。だからこそ今、多くの企業にとって重要になっているのが「脆弱性管理」です。

脆弱性管理とは、脆弱性を見つけることそのものではありません。自社にどの資産があり、どこに弱点があり、それがどの程度危険で、いつまでに何を直すべきかを継続的に判断し、実際に改善し続ける運用を指します。本記事では、脆弱性管理の基本から、企業が実務で押さえるべき流れ、ツールの考え方、クラウドやOSS時代に欠かせないSBOMの活用まで、2026年時点の実務に沿って整理します。

脆弱性管理とは

脆弱性管理とは、システムやソフトウェア、クラウド環境、ネットワーク機器などに存在するセキュリティ上の弱点を継続的に把握し、評価し、修正し、再確認する一連の運用です。単発の診断や一度きりの点検ではなく、変化し続けるIT環境に合わせて回し続けることに意味があります。CISAも、脆弱性管理を「脆弱性や悪用可能な状態の発生頻度と影響を減らす取り組み」と位置づけています。

脆弱性管理では、日々公開される脆弱性情報を継続的に確認することが重要です。多くの脆弱性は CVE(Common Vulnerabilities and Exposures) という識別番号で管理されています。CVEの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
CVEとは?脆弱性情報の共通識別番号を解説

CVEは、公開されたサイバーセキュリティ上の脆弱性を識別し、共通の参照先として扱うための仕組みです。一方、NVDはそのCVE情報に対してCVSSなどの評価情報や関連データを付与し、脆弱性管理の自動化や優先順位付けに役立つデータベースとして機能しています。つまり実務では、「CVEで対象を識別し、NVDやベンダー情報で内容と深刻度を確認する」という流れが基本になります。

現在の企業システムは、オンプレミス環境だけでなく、AWS・Azure・Google Cloud などのクラウド環境やSaaSサービスを組み合わせて構築されるケースが増えています。そのため、脆弱性管理はサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境やソフトウェアコンポーネントも含めて実施する必要があります。クラウドでは、基盤の一部は事業者が管理していても、設定、アクセス権、ゲストOS、コンテナイメージ、アプリケーションなどは利用企業側の責任範囲に残るためです。AWS、Microsoft、Google Cloudはいずれも共有責任モデルを明示しており、利用者側の継続的な管理を前提にしています。

なぜ企業に脆弱性管理が必要なのか

企業に脆弱性管理が必要な最大の理由は、脆弱性が「見つかっただけの情報」ではなく、「実際に悪用される入口」になっているからです。公開された脆弱性のすべてが直ちに攻撃に使われるわけではありませんが、CISAは実際に悪用が確認された脆弱性を Known Exploited Vulnerabilities(KEV) Catalog として公開し、組織に優先対応を促しています。つまり現代の脆弱性管理では、公開情報を眺めるだけでなく、「いま悪用されているか」「自社に影響するか」を見極めることが重要です。

脆弱性を放置するリスクも明確です。攻撃者は、修正が遅れたVPN機器、公開サーバー、業務アプリケーション、ミドルウェア、コンテナ環境などを足がかりに侵入し、そこから権限昇格や横展開を進めます。問題は、重大な脆弱性があっても、自社資産を把握できていなければ「影響を受けているのに気づけない」ことです。脆弱性管理は、修正作業の前段として、自社に何が存在しているかを見える化する意味でも不可欠です。

さらに、近年はOSS利用の拡大によって、ソフトウェアサプライチェーン全体のリスク管理が重要になっています。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとそのサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と説明しています。OSSライブラリや依存パッケージに脆弱性が含まれていた場合、アプリケーション本体に問題がなくても、企業システム全体に影響が及ぶ可能性があります。これが、いわゆるソフトウェアサプライチェーンリスクです。

クラウド利用の拡大も、脆弱性管理の必要性をさらに高めています。クラウド環境では、サーバーを一度構築して終わりではなく、構成変更、イメージ更新、コンテナ再配備、アクセス制御変更などが高頻度で発生します。そのため、脆弱性管理を継続的に実施しなければ、未更新のソフトウェアや脆弱なイメージ、設定不備がそのまま攻撃対象になる可能性があります。共有責任モデルのもとでは、クラウド事業者がすべてを守ってくれるわけではありません。自社が責任を持つ範囲を理解し、そこを継続的に点検する必要があります。

脆弱性管理の基本プロセス

脆弱性管理の基本プロセスは、一般に以下のような流れです。

  • 脆弱性の発見
  • 脆弱性評価
  • 修正
  • 検証

ただし実務では、前提としてソフトウェア資産の把握が欠かせません。なぜなら、何を保有しているか分からない状態では、脆弱性情報を受け取っても影響判断ができないからです。NVDのような脆弱性データベースは、脆弱性管理の自動化や評価に使える標準化データを提供していますが、それを生かすには自社資産との突合が必要です。

脆弱性の発見は、公開情報の確認だけでなく、スキャンツール、構成管理情報、ベンダーアドバイザリ、クラウドのセキュリティ機能など、複数の情報源を組み合わせて行います。次に必要になるのが評価です。ここではCVSSのような一般的な深刻度だけでなく、インターネット公開の有無、業務影響、悪用実績、代替策の有無、修正難易度などを踏まえて、自社にとっての優先度を決める必要があります。NVDも、CVSSは深刻度の定性的な指標であり、リスクそのものではないと明示しています。

その後、実際に修正を行います。修正方法は、パッチ適用、設定変更、バージョンアップ、アクセス制御の見直し、機能停止、ネットワーク遮断などさまざまです。最後に、修正後の検証を実施し、本当に脆弱性が解消されたか、別の不具合を生んでいないかを確認します。この「修正して終わりにしない」ことが、脆弱性管理を単なる作業ではなく運用として成立させるポイントです。脆弱性管理では、まず自社のIT資産を正確に把握することが重要です。対象にはサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境、利用しているOSSライブラリなども含まれます。

IT資産管理と脆弱性管理の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
脆弱性管理とIT資産管理とは?サイバー攻撃から組織を守る取り組み

近年では SBOM(Software Bill of Materials) を利用してソフトウェア構成を可視化する企業も増えています。SBOMは、ソフトウェアに何の部品が含まれているかを一覧化する考え方で、影響範囲の特定や依存関係の把握に有効です。
SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由

脆弱性管理のフロー(実務)

実務に落とし込むと、脆弱性管理の流れは以下のような順番で整理することができます。

  1. 脆弱性情報の収集
  2. クラウド・OSSへの影響確認
  3. 優先度判断
  4. 修正
  5. 再確認

まず行うべきは、CVE、ベンダーアドバイザリ、クラウドベンダー通知、各種セキュリティ情報の収集です。ここで漏れがあると、そもそも対応のスタート地点に立てません。CISAは、実際に悪用が確認された脆弱性についてKEV Catalogの確認と優先的な是正を強く推奨しています。

次に必要なのが、収集した情報が自社環境に関係するかどうかの確認です。オンプレミス機器だけなら比較的見通しが立ちますが、現在はクラウド上のワークロード、コンテナ、OSSライブラリ、CI/CDで取り込んだ部品まで視野に入れなければ、実態を取り逃がします。とくにOSS脆弱性は、アプリケーション本体よりも深い依存関係に潜んでいる場合があり、SBOMやSCAの仕組みがないと把握が難しくなります。

優先度判断では、CVSSの高さだけで対応順を決めないことが重要です。CVSSは比較の基準になりますが、公開サーバーにあるのか、認証が必要なのか、すでに悪用実績があるのか、業務停止時の影響はどれほどかによって、実際の対応順は変わります。NVDもCVSSをリスクそのものではないと説明しており、KEVのような実悪用情報と組み合わせて判断するのが現実的です。

修正段階では、パッチ適用だけに視野を限定しないことが大切です。クラウド環境では、OSやミドルウェアの更新に加え、コンテナイメージの差し替え、設定変更、公開範囲の見直し、権限調整なども重要な対策になります。修正後は再スキャンや設定確認を行い、実際に解消されたことを確認します。ここで検証が不十分だと、「対応したつもり」で終わってしまい、後になって再発見されることがあります。

脆弱性管理では、脆弱性を発見するだけでなく、発見された脆弱性に対して迅速に対応することが重要です。適切な脆弱性対応を行わなければ、攻撃者に悪用され、情報漏えいやシステム停止などの重大なインシデントにつながる可能性があります。脆弱性対応の基本的な流れや実務での対応方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
脆弱性対応とは?CVE対応とパッチ管理の実務フロ

近年ではクラウド環境やOSSライブラリに含まれる脆弱性の影響調査も重要になっています。SBOMを利用すると、影響範囲を迅速に把握できます。

脆弱性管理ツールの種類

脆弱性管理を実務で回すには、ツールの力を借りることが現実的です。ただし、ひとつの製品で全領域を完全にカバーできるとは限りません。一般的な脆弱性スキャナーは、ネットワーク機器、サーバー、OS、ミドルウェア、Webアプリケーションの既知脆弱性を見つけるのに有効ですが、OSSライブラリの依存関係やソフトウェア部品表までは十分に扱えないことがあります。そこで、管理ツール、クラウドセキュリティツール、SBOM管理ツール、SCAツールなどを役割ごとに組み合わせる設計が必要になります。

たとえば、CSPMやCNAPPのようなクラウド向けツールは、クラウド設定やワークロードの状態を継続的に可視化するのに向いています。一方、SCAはアプリケーションが依存しているOSSコンポーネントを洗い出し、既知脆弱性との突合を支援します。SBOM管理ツールは、その構成情報を継続管理し、影響調査を効率化する役割を持ちます。2026年の脆弱性管理では、ネットワークやサーバーだけを見ていても不十分で、クラウドとソフトウェアサプライチェーンまで含めた多層的な可視化が必要です。

OSSの脆弱性を管理するために、SCA(Software Composition Analysis)ツールやSBOM管理ツールを導入する企業も増えています。これは、ソフトウェアの構成部品とその依存関係を可視化しなければ、OSS由来の脆弱性が自社に影響するかどうかを迅速に判断しにくいためです。NTIAも、SBOMをソフトウェア構成要素の透明性向上に役立つ仕組みとして整理しています。

SCA(Software Composition Analysis)ツールとは
ソフトウェアに含まれるオープンソースや外部ライブラリの構成要素を解析し、既知の脆弱性やライセンスリスクを可視化するセキュリティツールです。依存関係を自動的に検出し、CVEなどの脆弱性データベースと照合することで、潜在的なリスクを早期に特定できます。また、ライセンス違反の有無も確認でき、コンプライアンス対応にも有効です。開発プロセスに組み込むことで、セキュアで安全なソフトウェア開発を支援します。

脆弱性スキャンについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント

企業の脆弱性管理の課題

多くの企業が脆弱性管理に苦労する理由は、脆弱性そのものより、管理対象の広がりにあります。

IT資産の把握

まず大きいのが、IT資産の把握が難しいことです。クラウド移行、テレワーク、SaaS利用、部門独自導入のツール、コンテナ活用が進むと、情報システム部門が把握していない資産が生まれやすくなります。この状態では、脆弱性情報を受け取っても、自社への影響有無を正確に判断できません。

OSS依存関係の管理

現代のソフトウェアは、直接導入しているライブラリだけでなく、その下位の依存関係にも数多くの部品を抱えています。表面的には安全に見えても、深い階層に脆弱なコンポーネントが含まれていることは珍しくありません。

SBOMの未整備

SBOMが未整備だと、こうした影響範囲調査に時間がかかり、対応の遅れにつながります。

クラウド環境の可視化不足

クラウドでは、責任分界が従来のオンプレミスとは異なり、サービス形態によって利用者側の責任範囲が変わります。そのため、「クラウド事業者が面倒を見ているはず」と誤解してしまうと、更新漏れや設定不備を放置しやすくなります。共有責任モデルを前提に、自社の管理範囲を明確にしなければ、脆弱性管理は形骸化します。

OSS利用時に重要な脆弱性管理(SBOMの活用)

OSSの活用は、開発効率や品質向上の面で大きなメリットがありますが、その一方で脆弱性管理を複雑にします。理由は明快で、企業が自分で一から書いていないコードであっても、最終的に自社サービスや製品の一部として責任を負うからです。OSS由来の脆弱性は、アプリケーション本体ではなく依存パッケージに潜んでいることも多く、目視や台帳だけで追いきるのは現実的ではありません。

ここで重要になるのがSBOMです。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と定義しています。これを整備しておけば、新たな脆弱性が公表された際に、「自社のどのシステムに、その部品が含まれているか」を調べやすくなります。結果として、影響調査の初動が速くなり、不要な全件調査や属人的な確認作業を減らせます。

SBOMは、単に監査対応のために作る資料ではありません。脆弱性管理の実務で使えてこそ意味があります。たとえば、SCAツールで依存関係を検出し、その情報をSBOMとして管理し、脆弱性公表時に突合するという流れが定着すれば、OSS脆弱性への対応速度と精度を高めやすくなります。今後の企業システムでは、OSS利用時の脆弱性管理をSBOM抜きで考えることは難しくなっていくでしょう。

脆弱性管理を効率化する方法

脆弱性管理を効率化する方法はいくつかあります。

資産管理の自動化

資産台帳を手作業で維持する運用では、クラウドやコンテナ、SaaSの増減に追いつけません。CMDB、クラウド資産可視化、ID管理、EDRやMDMの情報などを組み合わせて、現時点の資産情報を継続的に更新できる状態を目指す必要があります。資産情報が整えば、脆弱性情報との突合精度も上がります。

OSS脆弱性監視

OSS脆弱性監視の仕組みを作ることも重要です。開発時点だけでなく、運用中のアプリケーションについても、依存ライブラリの脆弱性を継続監視しなければなりません。脆弱性管理をインフラ部門だけの仕事にせず、開発部門やDevOps運用の中に組み込むことが、今の実務では不可欠です。

SBOMによるソフトウェア構成管理

SBOMによるソフトウェア構成管理を取り入れることで、影響調査の速度と精度をさらに高められます。SBOMが整っていれば、新たなCVEが公表された際にも、対象ソフトウェアの所在確認を短時間で進めやすくなります。加えて、KEVのような実悪用情報を監視し、CVSSだけでなく悪用実績も含めて優先順位を決める運用にすれば、限られた人員でも効果的に対応しやすくなります。脆弱性管理を効率化するとは、単にツールを増やすことではなく、「見つける」「判断する」「直す」を早く回せる仕組みへ変えることです。

まとめ

脆弱性管理とは、脆弱性を発見する作業ではなく、自社のIT資産、クラウド環境、OSSコンポーネントを継続的に把握し、影響を判断し、優先順位をつけて修正し、再確認する運用そのものです。2026年の企業環境では、オンプレミスだけを見ていては不十分で、クラウド、SaaS、コンテナ、OSSまで含めた視点が欠かせません。とくに、実際に悪用される脆弱性への対応と、SBOMを活用したソフトウェア構成の可視化は、これからの脆弱性管理の重要な柱になります。

まず取り組むべきなのは、完璧な仕組みを一気に作ることではなく、自社の資産を洗い出し、脆弱性情報を収集し、優先度を判断し、修正後に確認するという基本サイクルを止めずに回すことです。そのうえで、クラウド可視化、SCA、SBOM管理などを段階的に取り入れていけば、脆弱性管理は現場で機能する実践的な仕組みに育っていきます。


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IPA情報セキュリティ10大脅威2026にみる、AI時代のサイバーリスク

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近年、生成AIをはじめとするAI技術の進展により、組織におけるAIの活用は急速に広がっています。本記事では、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」の内容をもとに、AIの利用をめぐるサイバーリスクについて整理するとともに、企業に求められる対応の方向性について解説します。

IPA「情報セキュリティ10大脅威」速報版の記事はこちら。「AIの利用をめぐるサイバーリスク」以外の脅威の項目についても知りたい方は、こちらもぜひあわせてご覧ください。
【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2026 -脅威と対策を解説-

はじめに

業務効率の向上や新たな価値創出の手段として、多くの企業がAIの導入を進めています。一方でAI利用に伴うリスクについても、十分な注意が求められています。こうした状況を反映して、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」という脅威が初めてランクインし、3位に位置付けられました。

なぜいま「AIの利用」が脅威として注目されるのか

IPA「情報セキュリティ10大脅威」は、前年に発生した社会的影響の大きい事案等をもとに選定されたものであり、順位は単純に危険度の高さを示すものではありません。しかし、AI利用に関するリスクが新たに選出されたことは、企業や組織におけるAI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえるでしょう。

2026年3月12日に公開された、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書では、AIは有用なツールである一方で、十分な理解がないまま利用した場合、情報漏洩や権利侵害といった問題につながる可能性があると指摘されています。特に、生成AIへの入力内容が外部に取り扱われることによる機密情報の漏洩や、生成された情報の正確性を確認せずに業務に利用することによって発生するトラブルなど、従来の情報システム利用とは異なる観点でのリスクが挙げられています。 また、AIは利用者の裾野が広く、専門的な知識がなくても活用できるという特性を持っています。そのため、組織として利用状況を把握しきれないまま、個人単位で業務利用が進むケースも想定されます。このような利用形態は、管理の行き届かないリスク、いわゆるシャドーITに類似した問題を引き起こす可能性があります。

AI利用をめぐる主なリスク

IPAはAIの利用拡大に伴い、いくつかの代表的なリスクが指摘しています。これらは、AIの技術そのものというよりも、その利用方法や特性に起因するものが多い点が特徴です。

  • 情報漏洩リスク
  • 誤情報生成リスク(ハルシネーション)
  • サイバー攻撃の高度化リスク
  • 利用実態の把握困難(シャドーAI)
  • 権利侵害リスク

生成AIへの入力内容に起因する情報漏洩

クラウドサービスとして提供されるAIに対し、機密情報を入力することで、意図せず外部に情報が送信される可能性があるというリスクです。

AIの出力結果に関するリスク

対話型AIは実在しない情報を生成する(=ハルシネーション)場合があり、このことを十分に理解せずに利用すると、誤った判断や誤情報発信につながるおそれがあります。

AIの悪用によるサイバー攻撃の高度化

AIを活用することで、攻撃の効率化や手口の巧妙化が進む可能性があります。さらに、組織における利用実態の把握が難しい点も重要なリスクです。

シャドーAIのリスク

個人単位でAIサービスを利用されてしまうことで、組織の目の届かない範囲での利用が発生する可能性があります。

著作権侵害などの権利問題

AIの利用に関する理解不足により、著作権侵害などの権利問題が生じる可能性も指摘されています。

AI利用において想定される主な事例

AI利用に伴うリスクは、特別な環境でのみ発生するものではなく、日常業務の中で自然に発生し得るものです。例えば業務の効率化を目的として、従業員が個人で利用している生成AIサービスを業務に活用するケースが考えられます。メール文面の作成や資料作成の補助としてAIを利用する延長で、社内資料の内容や顧客情報をそのまま入力してしまうことがありえます。生成AIはクラウド上で動作しており、入力した内容はサービス側で処理されます。場合によっては、入力内容がサービスの改善や学習に利用されることもありえます。この点を十分に理解しないまま利用すると、機密情報を外部サービスに送信してしまうことになり、情報漏洩につながるおそれがあるのです。

また、対話型AIの回答をそのまま精査せずに業務に利用してしまうことで問題に発展する可能性もあります。調査や資料作成の過程でAIが生成した情報を十分に確認せずに利用した結果、ハルシネーションの内容を含んだまま社内外に共有してしまうといった事態が起こり得ます。このように、AI利用に伴うリスクは特定の専門領域に限らず、日常業務の延長線上で発生する点に特徴があります。

組織における課題

AIの利用が広がる一方で、組織としてこれらのリスクを適切に管理することにはいくつかの課題があります。

社内でのAI利用の促進とルールの策定のバランス

まず、AI利用に関するルールやガイドラインの整備が追いついていない点が挙げられます。現場での利用が先行する中で、組織としての利用方針が明確でない場合、統一的な管理が難しくなります。また、利用状況の把握が困難であることも大きな課題です。クラウド型のAIサービスは個人単位で容易に利用可能なため、組織として誰がどのように利用しているかを正確に把握することが難しくなります。実際には、想定以上に広範囲で利用が進んでいるケースも少なくありません。さらに、ポリシーを整備しても現場に浸透しないという課題もあります。AIは業務効率の向上に直結するため、利便性を優先してルールが守られないケースや、現場ごとに独自の運用が行われるといった状況も発生し得ます。加えて、AI利用と既存のセキュリティ対策との間にギャップが生じる点も課題です。従来のセキュリティ対策は想定していなかった利用形態が増えることで、管理や統制が追いつかない場面が生じる可能性があります。さらに、利用者への教育不足も課題の一つです。AIの特性やリスクに関する教育や周知が十分でないために、組織として意図しない利用が広がり、統制が効かなくなるおそれがあります。

このように、AIの活用においては、ルール整備や利用状況の把握といった基本的な対応に加え、実際の運用における課題も踏まえた継続的な対応が求められます。

企業が取るべきアクション

AIの利用に伴うリスクに対応するためには、個別の技術対策にとどまらず、組織としての管理と運用の整備が重要となります。AI利用に関しては、ルール整備や教育、基本的なセキュリティ対策の徹底といった観点での対応が求められています。

  1. AIの利用に関するルールやガイドラインの整備
    どのような用途でAIを利用してよいのか、入力してよい情報の範囲、利用してはならない行為などを明確に定めることで、利用に伴うリスクを一定程度抑制することが可能となります。
  2. 利用状況の把握と管理
    AIサービスは個人単位でも容易に利用できるため、組織としてどのように利用されているかを把握し、必要に応じて管理の対象とすることが重要です。これにより、管理の行き届かない利用、いわゆるシャドーAIの発生を抑制することが期待されます。
  3. AI利用者への教育
    AIの特性やリスクについて正しく理解させることで、生成結果の確認や適切な情報の取り扱いといった基本的な行動を促すことができます。技術的な制御だけでなく、利用者の理解を前提とした運用が不可欠です。
  4. 基本的なセキュリティ対策の徹底・見直し
    認証の適切な運用や情報管理の強化といった既存の対策は、AI利用においても引き続き基盤となるものです。その上で、AIの利用が業務に広く組み込まれる中では、従来の対策だけでは対応しきれない場面も想定されるため、AI利用を前提としたセキュリティの見直しや再設計が必要となる可能性もあります。

このように、AIの安全な活用には、ルール、管理、教育、AIを前提とした基本的なセキュリティ対策といった複数の観点からの継続的な取り組みが重要です。

AI時代に求められるセキュリティ支援

こうした課題に対応するためには、組織単独での取り組みだけでなく、専門的な支援の活用も有効です。以下のようなセキュリティ支援の例が挙げられます。

  • セキュリティ診断・リスクアセスメント
    AI利用に伴うリスクを把握するためのセキュリティ診断やリスクアセスメントが重要となります。現状の利用状況や潜在的なリスクを可視化することで、適切な対策の検討につなげることができます。
  • 運用監視体制の強化
    AIの利用状況を継続的に監視し、問題の早期発見や対応を行う体制を整備することで、リスクの低減が期待されます。
  • AI利用ガイドライン策定支援
    組織の実態に即したルールを整備し、現場で実際に運用可能な形に落とし込むことが求められます。

さいごに

「情報セキュリティ10大脅威 2026」において、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が新たにランクインしたことは、AI活用の拡大と、それに伴う課題の顕在化を示すものといえます。AIに関するリスクは、新たな技術そのものに起因するというよりも、その利用方法や理解不足に起因する側面が大きい点が特徴です。そのため、対策としては、ルール整備や利用状況の把握、教育といった組織的な対応に加え、基本的なセキュリティ対策を継続して実施することが重要となります。

また、IPAが示す通り、10大脅威の順位は危険度の高さを示すものではなく、自組織の状況に応じて適切にリスクを評価し、優先順位を定めて対策を講じることが求められます。 AIの活用は今後さらに進むことが想定されますが、その利便性を最大限に活かすためにも、リスクを正しく理解し、組織として適切に管理・運用していくことが重要です。


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Claude Code流出問題の全体像 ―事件からわかるAI開発リスクとサプライチェーンリスク―

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はじめに

「Claude Code」で起きたソースコード流出問題の経緯、なぜnpm公開物から内部ソースへ到達できたのか、何が漏れ、何が漏れていないのかを整理します。またソースコード流出によって浮き彫りになるAI開発リスクとソフトウェア供給網のリスクについても解説します。

Claude Codeソースコード流出の概要

「Claude Code」はAnthropic社が提供する公式のコーディング支援ツールです。Anthropicが公開している「Claude Code Doc」の中でも、Claude Codeはコードベース理解、ファイル編集、コマンド実行、各種開発ツール連携を行う製品として説明されています。

Claude Code流出は、単なる「話題のAIニュース」では終わりません。今回、ターミナルやIDE(統合開発環境)からコード編集、コマンド実行、検索、Git操作まで担う実運用の開発基盤の中核にあたる実装の一部が、npm配布物に含まれたソースマップ(source map)を起点に外部から参照可能な状態になっていたことがわかりました。本事件はAIエージェント時代のソフトウェアサプライチェーン問題として捉える必要があります。

流出の発端と技術的な経路(source map問題)

本事件で最初に押さえるべきなのは、「Claude本体のモデル重みが漏れた」のではなく、「Claude Codeという周辺プロダクトのソースコードが到達可能になった」という点です。事件の発端となったのは、Chaofan Shou氏(@Fried_rice)によるXの投稿です。2026年3月31日、Chaofan Shou氏は「Claude code source code has been leaked via a map file in their npm registry」(訳:Claude Codeのソースコードが、npmレジストリ内のmapファイルを通じて流出した)と投稿しており、少なくとも現時点で公開されている初動情報の起点は、この発見報告にあると考えられます。

その後に作成されたいくつかの公開GitHubリポジトリでは、漏洩経路について「npmパッケージに含まれたソースマップが、難読化前のTypeScriptソースを指しており、その参照先からsrc一式を取得できた」と説明しています。GitHubリポジトリ自体はAnthropicの公開情報ではないため、そこに書かれた全内容を鵜呑みにするべきではありませんが、少なくとも複数の公開Claude Artifacts(アーティファクト)が同じ経路を示していること、そして後述するAnthropic公式のGitHub上のIssueでも「流出またはデコンパイルされたClaude Codeのソースコード」を前提に議論が進んでいることから、ソースマップ起点として内部実装が可視化されたという大筋は相当に確度の高い情報だと言えます。さらに公開リポジトリのREADMEでは、「約1,900ファイル、51万行超のTypeScriptコードが露出した」と説明しています。

流出した内容と影響範囲

本事件が注目を集めた理由は、Claude Codeが単なるCLIラッパーではなく、幅広い機能群を内包したAI開発支援基盤であるためです。Anthropicの公開リポジトリと公式リリースノートを見るだけでも、Claude CodeにはIDE連携、MCP、プラグイン、履歴再開、権限管理、Web検索、各種設定や運用補助機能が継続的に追加されていることがわかります。また公開GitHubスナップショットREADMEでも、ツールシステム、コマンド群、IDEブリッジ、マルチエージェント協調、スキル、プラグイン、メモリやタスク管理など、多層的な構造が記述されています。

つまり今回のClaude Code流出問題は、AIコーディング支援の表面だけでなく、その実装思想や運用機能の一端まで外から読める状態になったという意味を持ちます。

何が漏れ、何が漏れていないのか

Anthropic公式情報でも、Claude Codeの内部実装に関するソースコード断片や構成が公開状態になったことは裏づけられています。Anthropic公式GitHubのIssueでも、流出コードを前提とした解析が行われていました。

Anthropicの公式GitHubリポジトリに2026年3月31日付で立てられたIssueでは、「source code isn’t publicly available, so this analysis is based on the leaked/decompiled Claude Code source」(訳:ソースコードは公開されていないため、本分析は流出またはデコンパイルされたClaude Codeのソースコードに基づく)と投稿され、Xでの発見報告とGitHub上の流出スナップショットを参照していたということがわかります。つまり、少なくともコミュニティ側では流出コードを参照した解析が現実に行われ、それがAnthropicの管理下のIssue空間にも持ち込まれていたということです。

一方で、複数の報道機関によれば、「Anthropicが今回の件を「人為的ミス」によるものと認め、顧客データや認証情報、Claudeモデルそのものの重みは流出していない」と説明したとしていますが、この点は一次ソースではなく報道ベースの情報として慎重に扱う必要があります。

なぜ深刻なのか:AIエージェント時代のリスク

それでも、このClaude Codeソースコード流出が深刻なのは、顧客データ漏洩の有無だけでは影響範囲が測れないからです。AIエージェント製品では、モデル重みそのものに価値があるのはもちろんですが、実際の使い勝手や競争力は、その周囲にあるハーネス、権限管理、ツール呼び出し、コンテキスト処理、UI、IDE統合、再開機能、運用設計によって大きく左右されます。公開スナップショットにあるディレクトリ構成やコマンド一覧、サービス層の説明を見ると、Claude Codeがかなり成熟した「製品化されたAIエージェント」であることが読み取れます。競合や研究者にとって、こうした実装知見が外から見える状態になることの意味は小さくありません。

特に重要なのは、Claude Codeが単にコードを生成するAIだけではなく、ローカル環境や周辺ツールに触れながら作業を進めるAIエージェントとして設計されている点です。漏洩したとされる公開スナップショットにも、Bash実行、ファイル読み書き、Web取得、Web検索、MCP、LSP、タスク作成、スケジュール実行などの機能が列挙されています。これは、今後のAIセキュリティを考える際に、モデル単体の安全性だけでは足りず、エージェントの実行基盤や配布パッケージの安全性まで視野に入れなければならないことを示しています。

AIエージェント時代の新課題、Non Human Identity(NHI)のセキュリティ課題と今後のAIコーディングに求められる実践的な視点を解説した記事はこちら。ぜひあわせてご覧ください。
AIコーディング入門 第5回:NHI(Non‑Human Identity)とAIエージェントのセキュリティ課題

ビルド・配布プロセスにおける問題の本質

さらに今回の一件は、ソースコード流出そのものだけでなく、公開物のビルド管理や配布管理の問題としても重要です。ソースマップ(source map)は本来、デバッグや解析のためには有用ですが、公開パッケージに不用意に含めれば、難読化やバンドルの前提を崩し、実装内部への入口になります。もしREADME記載どおり、ソースマップが外部ストレージ上の元ソース一式を指していたのであれば、問題は単なる「mapファイル混入」で終わりません。公開パッケージ、参照先URL、ストレージ公開設定、リリース工程のチェック体制まで含めた、供給網全体の設計ミスになります。ここにClaude Codeソースコード流出問題の本質があります。

「影響は限定的」という見方の限界

本事件をめぐる議論では、「どうせAIのコードはすぐ変わるから被害は限定的だ」という見方もあります。これは半分正しいです。たしかにプロダクトコードは日々更新されます。それでも、ある時点の設計方針、抽象化の仕方、権限制御、内部機能のつながり、未公開機能の痕跡は、競争戦略や攻撃面の理解に十分な価値を持ちます。現に公開スナップショットには、マルチエージェント協調、チーム作成、スキル実行、メモリ同期、リモートトリガーといった、単純なCLI以上の発想が読み取れる記述が含まれています。AI開発企業にとって、こうしたプロダクト実装の漏えいは、顧客情報漏えいとは別種の経営リスクです。

企業が取るべき対応と実務上の教訓

企業の情報セキュリティ担当者や開発責任者にとって、本事件から学ぶべき教訓は明確です。第一に、公開パッケージの中身を「本番ビルド成果物」だけでなく、「付随ファイル」まで含めて検査する必要があります。第二に、ソースマップやデバッグアーティファクトの扱いを、開発者の善意や慣習に任せてはいけません。第三に、クラウドストレージの参照先や署名URL、生成物の格納ルールを、CI/CDと一体で見直すべきです。第四に、AIエージェント製品では、モデルAPIの保護だけでなく、CLI、IDE拡張、SDK、プラグイン、MCP連携のような周辺面を含めてセキュリティレビューをかける必要があります。Claude Codeの公式リリースノートを見るだけでも、製品は短い周期で多機能化しており、変化の速さ自体がリスク管理を難しくしています。

もう一つ重要なのは、事故後の透明性です。現時点で確認できるAnthropic公式情報は、Claude Codeの製品説明やリリースノートが中心で、今回のソースコード流出事件についての障害報告書は見当たりません。そのため、実務的には「発生原因」「影響範囲」「再発防止策」を公式にどこまで明文化するかが、今後の信頼回復を左右します。AI安全性を強く掲げる企業であればなおさら、モデル安全だけではなく、配布と運用の安全性でも説明責任が問われます。今回のClaude Codeのソースコード流出は、その現実を突きつけた出来事となります。

まとめ

Claude Codeソースコード流出事件はAI本体が破られた事件ではありませんが、AI製品はモデルだけ守ればよい、という幻想は崩されました。AIコーディング支援、AIエージェント、開発者向けCLI、IDE統合、MCP、プラグイン基盤といった要素が一体化した時代において、情報漏洩リスクはモデル重みだけでなく、配布物、周辺コード、実行制御、設定、公開ストレージにもまたがります。Claude Code流出事件を単なる興味本位の話題で終わらせるのではなく、現代のソフトウェアサプライチェーンの課題とAIプロダクト運用の脆さを示す事例として読むべきでしょう。

参考文献


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    セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐ役割分担と外部活用の考え方

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    セキュリティ運用を継続していく中で、多くの組織が直面するのが「体制」の問題です。個別の対策や日常的な運用が回り始めたとしても、それが特定の担当者に依存している限り、長期的な安定は期待できません。本記事では、その発展段階として、属人化を防ぎながら継続的に回るセキュリティ運用体制の考え方を解説します。

    セキュリティ運用の全体像や考え方については、以下の記事で整理しています。
    セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

    セキュリティ運用体制とは、人員を増やすことではなく、判断・実行・記録の役割を分離し、担当者が変わっても運用が継続できる状態を設計することを意味します。「セキュリティ運用 体制」「情シス セキュリティ 体制」「セキュリティ 外部委託」といった検索が増えている背景には、技術的な課題ではなく、組織としてどう運用を維持するかという悩みがあります。セキュリティは専門技術の問題として語られがちですが、実際には役割設計と意思決定の構造に大きく左右されます。担当者の異動や退職、業務負荷の増加といった現実的な変化によって、運用そのものが停止してしまうケースは決して珍しくありません。

    なぜ「人」だけに頼る運用は破綻するのか

    多くの企業では、セキュリティ業務が情報システム担当者、いわゆる情シスに集中しています。特に中小規模組織では「ひとり情シス」と呼ばれる状況も珍しくなく、インフラ管理、ヘルプデスク、クラウド設定、セキュリティ対応を一人が担うケースも見られます。

    短期的には、この形は合理的に見えます。意思決定が速く、状況把握も一元化されるためです。しかし長期的に見ると、担当者の知識と経験に依存した状態が固定化し、組織としての再現性が失われます。担当者依存の最大の問題は、運用が見えなくなることです。判断理由や対応経緯が共有されなければ、他のメンバーは状況を理解できません。その結果、担当者が不在になった瞬間に対応速度が落ち、インシデント時の判断が遅れる可能性があります。提供された文脈に基づくと、セキュリティ体制とは人を増やすことではなく、「人が変わっても回る状態」を設計することだと整理できます。

    最低限決めておくべき役割分担

    セキュリティ運用体制を考える際、最初に必要なのは大規模な組織図ではありません。最低限の役割が整理されているかどうかが重要になります。運用の中には、リスクを評価して方向性を決める判断の役割、実際に設定変更や対応を行う実行の役割、そして履歴を残し管理する役割が存在します。これらが同一人物に集中していても構いませんが、「どの役割を担っているのか」が明確でなければ運用は属人化します。役割が定義されることで、対応の引き継ぎや支援が可能になります。誰が最終判断者なのかが曖昧な組織では、インシデント時に意思決定が停滞しやすくなります。

    体制が機能するかどうかは、インシデント発生時に明確になります。初動対応から復旧までの流れについては、以下の記事で整理されています。
    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第2回:セキュリティインシデント発生時の対応 ─初動から復旧まで

    内製・外部委託の切り分け方

    セキュリティ運用体制を検討すると、多くの組織が「内製か外部委託か」という選択に直面します。しかし実務では、この問いは二択ではありません。すべてを内製化することは理想的に見える一方で、専門知識の維持や24時間対応の負担を考えると現実的でない場合があります。一方、すべてを外部へ委託すると、組織内部に判断能力が残らず、状況理解が困難になる可能性があります。提供された構成意図に基づくと、重要なのは作業ではなく判断をどこに残すかです。監視や分析の一部を外部に任せることは可能ですが、事業影響を踏まえた最終判断は組織側が保持する必要があります。

    外部を活用する場合、委託先管理やサプライチェーンリスクも考慮が必要です。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    外部を使っても属人化するケース

    外部委託を導入しても、必ずしも属人化が解消されるわけではありません。むしろ新しい形の属人化が生まれることがあります。典型的なのは、委託先に任せきりになり、内部で内容を理解しなくなるケースです。報告書は受け取っていても、判断基準や対応背景が共有されなければ、組織側の知識は蓄積されません。さらに、外部サービスの仕組みがブラックボックス化すると、異常時に何が起きているのか説明できなくなります。この状態では、運用主体が組織ではなくベンダーへ移ってしまいます。外部活用の目的は責任移転ではなく、能力補完であると理解することが重要です。

    継続的に回る体制を作るための考え方

    セキュリティ運用体制は、一度設計して終わるものではありません。継続的に回る体制には、定期的な見直しと情報共有の仕組みが必要になります。定期レビューは、問題を探すためではなく現状を確認するために行われます。運用が想定通り機能しているかを確認することで、小さなズレを早期に修正できます。また、判断基準を共有することで、担当者が変わっても意思決定の方向性が維持されます。更新の仕組みが存在しない体制は、時間とともに現実と乖離します。環境変化を前提として設計された体制だけが、長期的に機能し続けます。提供された文脈に基づくと、体制の成熟とは組織図の完成ではなく、改善が自然に行われる状態を指すと考えられます。

    まとめ:運用は「仕組み」で支えるもの

    セキュリティ運用体制とは、人員配置の問題ではなく、意思決定を継続させる仕組みの設計です。担当者の能力に依存した運用は短期的には成立しても、組織としての持続性を持ちません。役割を明確にし、内製と外部活用を適切に組み合わせ、知識が組織に残る状態を作ることで、セキュリティは個人作業から組織活動へと変化します。セキュリティ運用体制の整備は組織ごとに最適解が異なるため、自社の状況整理が難しい場合は、第三者視点での現状診断から始める方法もおすすめします。

    本記事は、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理したものです。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。


    セキュリティ運用は、個別対策ではなく全体の仕組みとして考えることが重要です。
    セキュリティ運用とは何か 属人化を防ぎ、継続的に回すための基本的な考え方

    BBSecでは

    委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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    TLS設定の安全性と確認ポイント:古い暗号設定が引き起こすリスクと改善手順

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    インターネット上の通信を安全に行うために欠かせない技術が「TLS(Transport Layer Security)」です。WebサイトのHTTPS通信は、このTLSによって保護されています。しかし、TLSは単に導入すれば安全というものではなく、バージョンや設定によってはセキュリティリスクが生じる可能性があります。本記事では、TLS設定の安全性を判断するために押さえておくべき基本的な考え方と確認ポイントを整理します。

    具体的なバージョン確認や設定チェックの手順については、実践編の記事で詳しく解説しています。「TLSバージョン確認と安全な暗号設定方法

    TLSとは?

    TLS(Transport Layer Security)は、インターネット上でやり取りされる通信を暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防ぐための仕組みです。Webサイトのログイン情報や個人情報、業務データなどを安全に送受信するための、通信の土台となる技術といえます。

    かつてはSSLと呼ばれていましたが、現在はTLSが標準となっており、SSLはすでに非推奨です。TLSが正しく設定されていない場合、通信内容が外部から読み取られたり、不正に操作されたりするリスクが高まります。

    TLSの仕組み

    TLSは主に以下の仕組みで通信を保護しています。

    暗号化通信

    送受信されるデータを暗号化することで、第三者に内容を読み取られないようにします。

    認証(証明書)

    サーバ証明書を用いて、通信先が正しい相手であることを確認します。

    完全性の確保

    通信内容が途中で改ざんされていないかを検証します。

    TLSバージョンの違い

    TLSには複数のバージョンが存在し、それぞれ安全性や対応状況が異なります。

    • TLS 1.0 / 1.1
      すでに脆弱性が指摘されており、主要ブラウザやサービスでは非推奨・無効化が進んでいます
    • TLS 1.2
      適切な暗号スイートを選択すれば安全に利用できます。
    • TLS 1.3
      最新バージョンであり、セキュリティとパフォーマンスの両面で改善されています

    基本方針としては、TLS 1.3を有効化し、古いバージョンを無効にすることが推奨されます。
    現在どのバージョンが使われているかを把握することが、最初の重要なステップです。

    TLS1.2/1.3への移行手順と設定のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    TLSバージョンの確認方法とは?ブラウザ・OpenSSL・ツールでのチェック手順と安全な設定ポイント

    TLSの脆弱性リスク

    TLSは安全な通信技術ですが、バージョンや設定によっては脆弱性が存在します。

    古いTLSのリスク

    TLS1.0や1.1は既知の攻撃手法により、通信の安全性が低下する可能性があります。

    設定不備によるリスク

    • 設定不備によるリスク
    • 証明書の不備
    • 設定ミス

    攻撃への悪用

    これらの問題がある場合、

    • 通信の盗聴
    • データ改ざん
    • 不正アクセス

    といった攻撃につながる可能性があります。

    TLSの脆弱性は、発見後の対応も重要です。「脆弱性対応の基本と実践ポイント

    TLS暗号設定ガイドラインと基本設計方針

    TLSを安全に運用するためには、適切な暗号設定が不可欠です。以下は基本的なガイドラインです。

    TLS暗号設定ガイドラインは、TLS通信における安全性考慮したセキュリティ設定基準を設けています。これにより、TLSサーバの構築者や運用者が実際の商業的背景やシステム要件に応じた適切な設定を行うための根拠を提供します。

    IPA「TLS暗号設定ガイドライン(2025年4月25日 第3.1.1版公開)」は電子政府推奨暗号の安全性の評価プロジェクト「CRYPTREC」が作成したWebサーバでのTLS暗号設定方法をまとめたガイドラインです。TLSサーバの構築者や運用者が適切なセキュリティを考慮して暗号設定を行うための指針として提供されています。

    本ガイドラインで提唱されている3つの設定基準(「推奨セキュリティ型」「高セキュリティ型」「セキュリティ例外型」)は、各種国際的標準(NIST SP800/PCI DSSv4.0/OWASP ASVS等)の指針に対応したものであり、準拠への取り組みや、暗号設定における今後のセキュリティ対策を検討する上でも役に立ちます。ぜひ参照されることをお勧めします。

    • 高セキュリティ型: TLS 1.3およびTLS 1.2を使用し、強い暗号スイートのみを利用。
    • 推奨セキュリティ型: 一般的に推奨される設定で、セキュリティとアクセス性のバランスが取れています。
    • セキュリティ例外型: TLS 1.3~TLS 1.0のいずれかで、アクセス性を確保しますが、セキュリティの強度は低下します。

    (※セキュリティ例外型での設定内容は2029年度を目途に終了予定のため、速やかに推奨セキュリティ型への移行が推奨されます)

    設定要求: 各設定基準に応じた具体的なプロトコルバージョンや暗号スイートの要求設定が示されています。これには、遵守項目と推奨項目が含まれ、安全性を確保するために満たすべき要件が詳細に説明されています。

    チェックリスト: TLSサーバの構築者や運用者が設定を実施する際に利用できるチェックリストも用意されており、設定忘れを防ぐためのガイダンスを提供します。

    定期的な設定確認

    TLS設定は定期的に見直し、最新の推奨設定に更新する必要があります。

    TLS設定の具体的な確認方法はこちら。
    TLSバージョンの確認方法とは?ブラウザ・OpenSSL・ツールでのチェック手順と安全な設定ポイント

    TLS設定の見直しが必要かどうか判断に迷う場合や、自社だけでの確認が難しい場合は、第三者の視点で現状を整理することも有効です。通信設定を含めたWebサイト全体のセキュリティ状況を把握したい場合は、専門家によるセキュリティ診断や設定確認を検討するのも一つの方法です。

    よくある質問(FAQ)

    ▼ TLSとは何ですか?
    ▼ TLS1.2とTLS1.3の違いは何ですか?
    ▼ TLSは導入すれば安全ですか?
    ▼ TLS1.0/1.1は使用しても問題ありませんか?

    まとめ

    TLSはWeb通信の安全性を支える重要な技術です。

    • 通信の暗号化
    • 認証
    • 改ざん防止

    といった役割を持ちますが、適切な設定と運用が不可欠です。

    また、TLSバージョン設定の確認や脆弱性対応と組み合わせることで、より安全なシステム運用が可能になります。

    【関連情報】

    ● 量子コンピュータの実用化と耐量子暗号の標準化動向


    公開日:2020年7月29日
    更新日:2026年4月1日

    編集責任:木下

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    セキュリティ運用は何から始めるべきか 担当者が最初に整理すべきポイント

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    セキュリティ運用を始める際に最初に必要なのはツール導入ではなく、「何を守るか」と「どの順序で対応するか」を整理することです。セキュリティは単発の施策ではなく、継続的に判断と改善を繰り返す活動であるため、最初の設計を誤ると後から修正が難しくなります。本記事では、実務担当者が最初に整理すべきポイントを現場目線で解説します。

    セキュリティ運用の全体像や考え方については、以下の記事で整理しています。
    セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

    「セキュリティ運用を始めたいが、何から手を付ければよいのか分からない」。これは多くの企業担当者が最初に直面する課題です。検索でも「セキュリティ運用 何から始める」「セキュリティ運用 方法」「セキュリティ運用 チェックリスト」といったキーワードが増えており、導入段階から運用段階へ関心が移っていることがうかがえます。セキュリティ対策そのものについての情報は多く存在しますが、実際の運用をどの順序で立ち上げるべきかについては、体系的に語られることが少ないのが現状です。

    「何を守っているか分からない」状態が最大の問題

    セキュリティ運用を始める際、多くの組織がいきなりツール導入やチェックリスト作成に進みます。しかし提供された文脈に基づくと、最初に取り組むべき課題は技術ではありません。「自分たちは何を守っているのか」を把握することです。企業には業務システム、クラウドサービス、端末、アカウント、外部委託先など、さまざまな資産が存在します。ところが実際には、全体像が整理されないまま個別対策が積み重なっているケースが少なくありません。この状態では、どのリスクが重要なのか判断できず、対応が場当たり的になります。資産やシステムの棚卸しは単なる一覧作成ではなく、「事業にとって停止すると困るものは何か」という視点で整理する作業です。優先順位が存在しない運用では、軽微な問題に時間を使い、本来対応すべきリスクを見逃す可能性があります。

    守るべき対象や優先順位を整理する際には、サイバー攻撃リスク評価の考え方が役立ちます。 「サイバー攻撃リスク評価の進め方:見えない脅威を可視化するプロセスと実践

    セキュリティ運用の最小単位を作る

    セキュリティ運用という言葉から大規模な仕組みを想像すると、着手のハードルが高くなります。しかし実務では、まず「最小単位」を作ることが重要です。運用は、情報を集め、それを判断し、必要な対応を行い、その結果を記録するという循環によって成立します。この四つの流れが成立していれば、規模が小さくても運用は始まっています。情報収集とは脆弱性情報や注意喚起の把握を指します。判断とは自社への影響を考える行為であり、対応は設定変更やパッチ適用など具体的な行動です。そして記録は、後から判断理由を再確認できる状態を作ります。多くの組織では対応だけが行われ、判断理由や経緯が残されません。その結果、同じ問題が繰り返されます。最小単位とは作業量を減らすことではなく、循環を成立させることを意味します。

    日常業務に組み込める運用とは

    セキュリティ運用が続かない理由の一つは、「特別な仕事」として設計されてしまう点にあります。通常業務とは別に毎日実施する作業を増やすと、忙しい時期に必ず停止します。 現実的な運用は、毎日行うものではなく、一定の周期や条件に応じて動く仕組みとして設計されます。たとえば月次で確認する作業、更新時のみ実施する確認、アラート発生時に対応する流れなど、業務のリズムに合わせることが重要になります。提供された構成意図に基づくと、セキュリティ運用とは負担を増やすことではなく、既存業務の中に判断ポイントを組み込むことだと理解できます。運用が日常に溶け込んだとき、初めて継続性が生まれます。

    よくある失敗例

    セキュリティ運用を開始した組織が直面しやすいのが、形骸化です。チェックリストを作成しても実際には確認されず、記録だけが残る状態は珍しくありません。チェックそのものが目的化すると、リスク低減という本来の目的が見えなくなります。また、ツール導入によって運用が自動化されたと誤解されるケースもあります。ツールは検知や可視化を支援しますが、最終的な判断は組織側に残ります。判断基準がなければ、アラートは増えるだけで改善につながりません。さらに問題となるのが属人化の放置です。「詳しい人がいるから大丈夫」という状態は短期的には効率的ですが、長期的には運用停止リスクを高めます。

    実際に、運用が形骸化した結果、ランサムウェアや委託先経由の被害につながるケースもあります。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    小さく始めて回し続けるコツ

    セキュリティ運用を成功させる組織に共通しているのは、最初から完成形を目指さない点です。理想的な運用設計を追求すると準備期間が長期化し、実運用が始まらないことがあります。むしろ重要なのは、小さく始めて継続することです。判断軸を共有し、「どのように考えて対応したのか」を残すだけでも、組織の知識は蓄積されていきます。運用は改善を前提とした活動です。最初から完璧である必要はなく、回しながら修正することで現実に適合していきます。提供された文脈に基づくと、セキュリティ成熟度は導入規模ではなく継続期間によって高まる傾向があると整理できます。

    体制の話は次のステップ

    ここまでの内容は、担当者レベルで始められるセキュリティ運用の基礎です。しかし運用を継続し、属人化を防ぐためには、やがて役割分担や体制設計が必要になります。誰が判断し、誰が実行し、どこに記録が集約されるのかが明確になることで、運用は個人依存から組織運用へと移行します。ただし体制設計は最初の段階で無理に行う必要はありません。まずは回る運用を作ることが先になります。

    運用を属人化させず、継続的に回すための体制づくりについては、次の記事で詳しく解説します。
    「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

    セキュリティ運用は「始め方」で成否が決まる

    セキュリティ運用は高度な技術から始まるものではありません。何を守るのかを理解し、小さな循環を作り、それを日常業務の中で継続することから始まります。チェックリストやツールは重要な要素ですが、それだけでは運用は成立しません。判断・対応・記録という流れが回り始めたとき、セキュリティは単発対応から継続的な活動へ変わります。「セキュリティ運用は何から始めるべきか」という問いへの答えは一つではありませんが、提供された構成意図に基づくと、最初に必要なのは完璧な設計ではなく、回り続ける最小単位を作ることだと言えるでしょう。

    本記事は、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理したものです。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。


    運用を属人化させず、継続的に回すためには体制づくりが欠かせません。次の記事で詳しく解説します。
    「セキュリティ運用体制の作り方 属人化を防ぐための役割分担と外部活用の考え方」

    BBSecでは

    委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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    セキュリティ運用とは?属人化を防ぎ継続的に回す基本の考え方

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    セキュリティ運用とは、セキュリティ対策を導入することではなく、脆弱性情報の確認、設定管理、インシデント対応、見直しといった活動を継続的に回し続ける組織的な取り組みを指します。単発の対策ではなく、変化する環境に合わせて安全性を維持する仕組みである点が特徴です。本記事では、企業におけるセキュリティ運用支援およびインシデント対応の実務知見をもとに、一般的に公開されているセキュリティ運用の考え方を整理します。特定製品への依存を避け、組織運用の観点から解説しています。

    セキュリティ運用が重要になる背景には、インシデント発生時の初動対応や判断の難しさがあります。インシデント対応の全体像については以下の記事で整理されています。
    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第1回:セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例

    セキュリティ運用とは、セキュリティ対策を導入した状態を維持し続ける活動ではなく、「変化し続ける環境に合わせて安全性を更新し続ける仕組み」を指します。多くの企業がセキュリティ製品やルールを導入しているにもかかわらず事故を防ぎきれない背景には、この“運用”という視点の不足があります。

    近年、「セキュリティ運用とは」「セキュリティ運用 体制」「セキュリティ 属人化」といった検索が増加しているのは、セキュリティが技術課題ではなく組織運営の問題として認識され始めているためだと考えられます。導入した対策は時間とともに環境とのズレが生じるため、継続的な判断と見直しが不可欠になります。

    なぜ今「セキュリティ運用」が課題になるのか

    セキュリティ事故の多くは、対策が存在しなかったことよりも、存在していた対策が適切に機能していなかったことによって発生します。これは珍しい現象ではなく、環境変化に対して運用が追いつかなくなることで起きます。システム構成は更新され、利用者は増減し、クラウド設定や権限は日常的に変化します。その一方で、セキュリティ対策は導入時点の前提を基準に設計されていることが多く、継続的に見直されなければ現実との乖離が生まれます。

    提供された文脈に基づくと、現在は「何を導入するか」を議論する段階から、「導入したものをどう回し続けるか」を考える段階へ移行していると整理できます。つまりセキュリティはプロジェクトではなく、継続業務として扱われる必要があります。

    セキュリティ運用が属人化する典型パターン

    セキュリティ運用の失敗要因として頻繁に挙げられるのが属人化です。特定の担当者のみが状況を理解し、判断基準が共有されていない状態では、運用は組織の能力ではなく個人の努力に依存します。現場では「経験がある人が対応した方が早い」という合理的判断から属人化が進みます。しかし手順や判断理由が記録されないまま時間が経過すると、異動や退職が発生した際に運用が再現できなくなります。

    セキュリティ属人化の本質は、知識不足ではなく再現性不足です。誰が担当しても同じ方向の判断ができる状態を作ることが、セキュリティ運用体制の出発点になります。

    セキュリティ運用とは「何を回すこと」なのか

    セキュリティ運用とは単一の業務ではなく、複数の活動が循環する状態を意味します。代表的なのは、脆弱性情報の収集と評価、インシデント対応、設定および権限管理、そして教育や見直しです。脆弱性情報は継続的に公開されるため、影響評価と対応判断を繰り返す必要があります。インシデント対応では、検知から初動判断、復旧、再発防止までが一連の流れとして維持されます。設定管理では変更がリスクにならないよう追跡可能性が求められます。さらに教育やルール更新がなければ、人の行動が新しい脅威に適応できません。これらは独立した作業ではなく、相互に影響し合う循環構造として理解する必要があります。運用の全体像を地図として把握することが、部分最適によるリスク増大を防ぐ第一歩になります。

    セキュリティ運用の中でも、脆弱性をどう管理し続けるかは重要な要素です。単発で終わらせない考え方については、次の記事も参考になります。
    脆弱性対応の優先順位と判断基準―限られたリソースでリスクを下げる考え方

    属人化しないセキュリティ運用の基本原則

    属人化を防ぐために必要なのは、複雑な仕組みよりも基本原則の明確化です。まず重要なのは判断基準を定義することです。どのリスクを優先するかが共有されていなければ、対応品質は担当者によって変わります。次に記録の存在が運用を支えます。対応履歴は単なる報告ではなく、将来の判断を支える知識資産になります。そして運用は固定されたものではなく、定期的な見直しによって初めて現実に適応し続けます。提供された構成意図に基づくと、セキュリティ運用とは高度化よりも継続性を優先する活動だと整理できます。

    運用体制は完璧でなくてよい

    セキュリティ運用体制という言葉から大規模な専門組織を想像することがありますが、必ずしもそれが出発点になるわけではありません。重要なのは組織規模に適合した運用です。理想的な体制設計を目指して準備だけが進み、実際の運用が開始されない状態は現場では珍しくありません。むしろ小さく始め、実際に回る形を作ることが現実的なアプローチになります。運用が継続されることで課題が可視化され、体制は後から改善できます。逆に、回らない設計はどれほど理想的でも機能しません。

    セキュリティ運用とは「判断を継続する仕組み」である

    セキュリティ運用とは、新しい対策を増やし続けることではなく、判断と改善を繰り返す仕組みを維持することです。属人化を防ぐとは担当者を排除することではなく、判断基準と知識を組織へ移すことを意味します。提供された文脈に基づくと、セキュリティの成熟度はツール数ではなく、運用が継続しているかどうかによって左右されます。仕組みとして回り始めたとき、セキュリティは個人の努力から組織の能力へと変化します。

    セキュリティ運用とは何かという問いは、技術の話であると同時に、組織がどのように意思決定を継続するかという問いでもあると言えるでしょう。

    FAQ

    ▼セキュリティ運用とは具体的に何をすることですか?
    ▼セキュリティ運用は小規模企業でも必要ですか?
    ▼外部委託すればセキュリティ運用は不要になりますか?

    ここまで整理してきた内容から見えてくるのは、セキュリティ運用とは特別なプロジェクトではなく、日常業務の中に組み込まれる意思決定プロセスであるという点です。しかし現場では、「具体的に何から始めるべきか」という問いが必ず生まれます。守る対象の整理、優先順位の設定、最小単位の運用設計など、実務的な整理が必要になります。

    では、具体的にセキュリティ運用は何から始めればよいのでしょうか。実務レベルでの進め方については、次の記事で詳しく解説します。
    セキュリティ運用は何から始めるべきか 担当者が最初に整理すべきポイント

    BBSecでは

    委託先が関係する情報漏えいでは、自社だけで完結する対応はほとんどありません。複数の関係者が絡むからこそ、事前の整理や体制づくりが結果を大きく左右します。ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、サプライチェーン全体を前提としたインシデント対応体制の整理や、外部起因の事故を想定した初動対応の支援を行っています。「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが、これからの企業に求められる姿勢です。もし、委託先を含めた情報管理やインシデント対応に不安を感じている場合は、一度立ち止まって体制を見直すことが、将来のリスクを減らす確かな一歩になるでしょう。

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    OWASP Top 10 2025:OWASP Top 10 2021からの変更点と企業が取るべきセキュリティ強化ポイント

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    OWASP Top 10 2025:OWASP Top 10 2021からの変更点と企業が取るべきセキュリティ強化ポイントアイキャッチ画像

    OWASP Top 10はWebアプリケーションの主要なセキュリティリスクをまとめた世界的な基準です。2025年版では、ソフトウェアサプライチェーンに起因する問題や例外処理の不備など、新たなリスク項目が追加され、順位も変動しています。本記事ではこれらの新しい動向も踏まえ、各項目を平易に解説し、企業が取るべきセキュリティ対策の方向性を提示します。

    はじめに

    2025年11月、国際的なセキュリティ啓発コミュニティであるOWASP(オワスプ:Open Web Application Security Project)から、「OWASP Top 10 2025」が公開されました。前回の「OWASP Top 10 2021」より4年ぶりの公開となります。本記事ではOWASP Top 10 2025から追加された新たなリスク項目や順位変動を踏まえ、企業が取るべきセキュリティ対策の方向性を提示します。

    OWASP Top 10とは

    Webアプリケーションの代表的なセキュリティリスクをまとめた国際的なガイドラインで、意識向上を目的とする啓発資料です。全てのセキュリティ要件を網羅する標準というより、優先的な対策項目を示すリストと考えます。

    OWASP Top10は、Webアプリケーションに存在する代表的な脆弱性をまとめた指標です。脆弱性とは、システムやソフトウェアに存在するセキュリティ上の弱点のことを指します。
    → 「脆弱性の意味を正しく理解する―読み方・具体例・種類をわかりやすく解説

    OWASP Top 10 2025の特徴

    今回の「OWASP Top 10 2025」では、ソフトウェア開発の全工程にわたる新しいリスクが反映されました。特に、依存ライブラリやCI/CD環境を含む「ソフトウェアサプライチェーンの不備」や、「例外処理(エラー処理)の不備」という2つの新カテゴリが追加されています。これにより、従来のコード脆弱性に加え、開発・運用プロセス全体に起因するリスクが明確に強調されました。

    また、2021年版まで独立項目だった「サーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF)」はA01(アクセス制御)に統合され、権限回避系の攻撃に含まれるようになっています。

    OWASP Top 10の概要、「OWASP Top 10 2021」のリスク項目一覧について、以下の記事で解説しています。あわせてぜひご覧ください。
    OWASP Top 10―世界が注目するWebアプリケーションの重大リスクを知る―

    OWASP Top 10 2021からの主な変更点

    A01: アクセス制御の不備 (Broken Access Control)

    引き続き1位です。従来のアクセス制御不備に加え、サーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF)攻撃がこのカテゴリに含まれるようになりました。

    A02: セキュリティ設定のミス (Security Misconfiguration)

    2021年5位から2025年2位に上昇しました。サーバやアプリの初期設定ミスや不要なサービス公開など、設定不備のリスクが増加しています。

    A03: ソフトウェアサプライチェーンの不備 (Software Supply Chain Failures)

    2021年版のA06「脆弱で古くなったコンポーネント」から大幅に拡張され、2025年版に新設されたカテゴリです。依存パッケージやビルド環境への攻撃を含み、開発~配布の全過程におけるマルウェア侵入のリスクを扱います。

    A04: 暗号化の失敗 (Cryptographic Failures)

    前回2位から今回は4位に下降しました。古い暗号方式や不適切な暗号設定によって、機密データ漏洩のリスクが引き続き高い項目です。

    A05: インジェクション (Injection)

    前回3位から5位に下降しました。依然として多く検出されるリスクですが、他カテゴリの変動により相対的に順位が変わりました。

    A06: セキュアでない設計 (Insecure Design)

    2021年に新設された項目で、前回4位から6位になりました。設計段階でセキュリティを考慮しないことによるリスクを指し、脅威モデル不足などが該当します。最近は設計レビューや脅威モデルの導入が増えつつあります。

    OWASP Top 10 2021およびセキュアなWebアプリケーション開発にむけてどのように取り組むべきかについて、以下の記事で解説しています。あわせてぜひご覧ください。
    Webアプリケーション開発プロセスをセキュアに ―DevSecOps実現のポイント―

    A07: 認証の失敗 (Authentication Failures)

    名称が「識別と認証の不備」から若干変更され、順位は7位で維持されました。ログイン機能やパスワード管理の不備などが含まれ、標準的な認証フレームワークの利用増加でやや改善傾向にあります。

    A08: ソフトウェアとデータの整合性の不備(Software or Data Integrity Failures)

    前回同様8位です。ソフトウェア更新時やデータ伝送時の改ざん検知の欠如を扱い、サプライチェーンより下層でのデータ改ざんリスクが対象です。

    A09: ログ監視・アラートの不備 (Logging & Alerting Failures)

    同じく9位を維持しました。ログ監視や侵入検知の仕組みが不十分で、攻撃検知が遅れるリスクを指します。名称も「セキュリティログとモニタリングの不備」から変更されています。

    A10: 例外処理の不備 (Mishandling of Exceptional Conditions)

    2025年に新設された新しいカテゴリです。エラー発生時の不適切な処理(例:内部情報露出やセーフティネットの欠如)により、システム全体の安全性が損なわれるリスクを扱います。

    OWASP Top 10 2025のリスク項目詳細解説

    A01: アクセス制御の不備 (Broken Access Control)

    攻撃者が本来許可されていない操作やデータにアクセスできる脆弱性です。例として、URLやパラメータを操作して他ユーザーの情報を取得したり、管理者権限を取得したりする攻撃が挙げられます。

    A02: セキュリティ設定のミス (Security Misconfiguration)

    システムやアプリの初期設定・構成に誤りがある状態です。脆弱なデフォルト設定や、不要なサービスの有効化、パッチ未適用のサーバ起動などにより、本来防げる攻撃を許してしまいます。

    A03: ソフトウェアサプライチェーンの不備 (Software Supply Chain Failures)

    外部ライブラリやパッケージ管理システムが攻撃され、正規ソフトウェアにマルウェアが混入するリスクです。開発者の環境やCI/CDパイプラインを介して侵入するため、従来型のコード診断だけでは検知しづらい問題となっています。

    A04: 暗号化の失敗 (Cryptographic Failures)

    古い暗号方式や誤った暗号設定によって、暗号化すべきデータの機密性が損なわれるリスクです。例えば、弱い鍵長の使用や最新プロトコルの不採用により、攻撃者に通信内容を解読される危険があります。

    A05: インジェクション (Injection)

    ユーザ入力を十分に検証せずにSQL文やOSコマンド等に含めて実行することで、不正なコードが実行される脆弱性です。SQLインジェクションクロスサイトスクリプティング(XSS)などが代表例で、攻撃者がデータベース改ざんやセッションハイジャックを実行します。

    A06: セキュアでない設計 (Insecure Design)

    設計段階でセキュリティが考慮されておらず、必要な防御策(脅威モデルやセキュアアーキテクチャ)が欠落しているリスクです。実装以前の段階で脆弱性を取り除かないと、後工程では完全対応できない欠陥を内包します。

    A07: 認証の失敗 (Authentication Failures)

    ログインやセッション管理に欠陥があり、不正ログインを許してしまう脆弱性です。例えば、パスワードポリシー不備やセッションIDの固定化、二要素認証不備などにより、攻撃者が他人の権限を奪取する可能性があります。

    A08: ソフトウェアとデータの整合性の不備(Software or Data Integrity Failures)

    ソフトウェア更新やデータ取得時に改ざんを検知できない状態で、不正なコードやデータが実行されてしまうリスクです。例えば、更新ファイルやコンテナイメージが攻撃者によって差し替えられても気づかない場合が該当します。

    A09: ログ監視・アラートの不備 (Logging & Alerting Failures)

    インシデント発生時に監査ログが残らない、またはアラートが機能しない状態で、攻撃を見逃してしまうリスクです。攻撃検知や対策対応が遅れるため、被害が拡大する可能性があります。

    A10: 例外処理の不備 (Mishandling of Exceptional Conditions)

    エラー・例外発生時に適切な対処がされず、システムが想定外の動作をしたり機密情報を漏洩したりする脆弱性です。具体例として、エラーメッセージで内部情報を出力するものや、例外処理のループ抜けでシステム停止しないなどがあります。

    OWASP Top 10 2025で注目すべきポイント

    • サプライチェーンリスクの急浮上
    • 例外処理カテゴリの新設が示す業界動向
    • コード脆弱性から“開発プロセスの安全性”への時代変化

    OWASP Top 10 2025は、従来の入力検証など個別コード脆弱性に加え、サプライチェーンや設計、例外処理といったシステム全体に関わる根本原因を重視しています。企業はこれを踏まえ、開発プロセスや設計段階からの脆弱性予防策を強化する必要があります。

    企業が取るべき対応(例)

    • 開発プロセス全体のセキュリティレビュー
    • サプライチェーン管理の強化
    • 設計段階のセキュリティ確保(脅威モデリング等)
    • ログ・アラート体制の見直し

    情報システム部門やセキュリティ担当者は、今回のリスク項目をセキュリティ教育・セキュリティ診断・セキュリティ監査項目に組み込み、継続的な対策に活用しましょう。特にサプライチェーンや例外処理の項目は従来対応が十分でないことも多く、注力すべきポイントです。

    まとめ

    OWASPはTop 10に加え、SAMMやASVSなどのフレームワーク活用も推奨しています。OWASP Top 10は優先対策項目の一助と位置付け、組織全体のセキュリティ成熟度を高める施策を並行して検討することが望まれます。

    脆弱性診断の活用

    では、意図せず作りこまれてしまう脆弱性に、どう対処すればいいでしょうか。それには脆弱性診断を実施することが、最も有効な手段の一つと言えます。

    脆弱性診断によって、システムにどのような脆弱性があり、どの程度のリスクがあるのか可視化され、その優先度に応じてセキュリティ対策を検討・実施することができます。

    脆弱性診断を効果的に活用するには、システムの機能や取り扱う情報の重要度に応じて、実施時期や頻度を考慮することも大切です。セキュリティ事情は常に変化しています。日々新たな脆弱性が発見され、サイバー攻撃も巧妙化する一方です。また、何年も前に報告されたのに放置されがちな脆弱性が、改めて悪用されることもあります。健康診断と同様、脆弱性診断も定期的に実施することが重要なのです。

    また、「SQAT® Security Report」では、セキュリティ事情に関するトピックをお伝えしております。情報収集の一助としてご活用ください。

    【参考情報】

    OWASP Top 10 2025リリースノート/Aikidoブログ(https://www.aikido.dev/blog/owasp-top-10-2025-changes-for-developers#:~:text=OWASP%20emphasizes%20that%20the%20Top,Application%20Security%20Verification%20Standard


    BBSecの脆弱性診断サービス

    弊社では、お客様のニーズに合わせて、様々な脆弱性診断サービスを提供しております。システムの特徴やご事情に応じてどのような診断を行うのが適切かお悩みの場合も、ぜひお気軽にご相談ください。

    「毎日/週など短いスパンで定期診断して即時に結果を知りたい」

    デイリー自動脆弱性診断「Cracker Probing-Eyes®」は、脆弱性の検出結果を、お客様側での簡単な操作で、日々確認できます。導入のための設備投資が不要で、コストを抑えつつ手軽に診断できます。 世界的なセキュリティ基準をベースにした弊社独自基準を設け、シグネチャの見直しも弊社エンジニアが定期的に行うことで、信頼性の高い診断を実現しております。

    「システム特性に応じた高精度な診断をしたい」

    対象システムの機能が複雑である、特にミッションクリティカルであるなどの理由により、広範囲かつより網羅性の高い診断をご希望の場合は、弊社エンジニアが手動で実施する「SQAT®脆弱性診断サービス」をおすすめします。 Webアプリケーション、ネットワークはもちろんのこと、ソースコード診断やクラウドの設定に関する診断など、診断対象やご事情に応じて様々なメニューをご用意しております。

    公開日:2025年12月5日
    更新日:2026年3月11日

    編集責任:木下

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    緊急パッチ適用の判断基準 ―業務影響を抑えるにはどうすべきか―

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    脆弱性情報が公開されると、「これは緊急で対応すべきか」「業務に影響が出ても今すぐ当てるべきか」と判断に迷う場面は少なくありません。本記事では、企業が緊急パッチ対応を判断する際に押さえるべき考え方と、業務影響を抑えながら対応するための実務的な基準を整理します。

    緊急パッチとは何か

    緊急パッチとは、一般的に被害が急速に拡大する可能性がある脆弱性に対して、迅速な適用が求められる更新を指します。

    緊急対応が本当に必要なケース

    次の条件が重なる場合、即時の緊急パッチ適用を優先すべきでしょう。

    • 外部公開されており、第三者が認証なしでアクセスできる
    • すでに攻撃事例や攻撃コード(PoC)が公開されている
    • 悪用された場合、業務停止や情報漏えいに直結する

    このようなケースでは、業務影響よりも被害拡大を防ぐことを優先する判断が必要になります。

    様子見や計画対応が許容されるケース

    一方で、次のような条件であれば、即時のパッチ適用が必須でない場合もあります。

    • 内部ネットワーク限定で利用されている
    • 該当機能が業務上使われていない
    • 一時的な設定変更や回避策でリスクを下げられる
    • 影響範囲が限定的で、検証なし適用のリスクが高い

    このような場合は、この場合、影響範囲を確認したうえで、計画的な対応とする判断も現実的といえます。

    業務影響を考慮した判断のポイント

    緊急パッチ対応では、技術的な危険度だけでなく、次の視点も欠かせません。

    • パッチ適用によるサービス停止の可能性
    • 業務時間帯への影響
    • 切り戻し(ロールバック)が可能か
    • 利用部門への影響や調整コスト

    「セキュリティ上正しい」判断と「業務として現実的」な判断のバランスを取ることが重要です。

    緊急パッチ適用の運用フロー(例)

    実務では、次のような流れで判断すると整理しやすくなります。

    1. 脆弱性の概要把握
      対象システム、影響範囲、攻撃条件を確認
    2. 自社環境への影響評価
      公開範囲、利用状況、業務影響を整理
    3. 暫定対応の検討
      設定変更やアクセス制御で回避できるか
    4. 適用タイミングの決定
      即時/夜間/定例メンテナンスなどを判断

    このように段階的に考えることで、判断の属人化を防ぐことができます。

    緊急パッチ適用の判断は、単独で行うものではありません。
    脆弱性対応の優先順位:脆弱性対応全体の考え方―全体の中での位置づけ
    CVSSスコア:技術的な深刻度の把握
    本記事:実務での最終判断

    これらを総合的に判断した結果、より合理的な対応が可能になります。

    まとめ

    緊急パッチ適用で重要なのは、“急ぐべきかどうかを正しく判断すること” です。

    • 攻撃されやすさと影響度を確認する
    • 業務影響とリスクを比較する
    • 回避策や段階対応も選択肢に入れる

    この視点を持つことで、緊急パッチ対応は場当たり的な作業ではなく、管理されたセキュリティ運用に変わるのです。


    次に読むべき記事

    サイバーインシデント緊急対応

    セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

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