サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?委託先管理の見直しポイントを解説

Share
サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?アイキャッチ画像

製造業では、委託先や部品メーカーへのサイバー攻撃が、自社の生産停止や納期遅延につながる可能性があります。本記事では、サイバー攻撃を事業継続リスクとして捉え、サプライチェーンBCPと委託先管理で確認すべきポイントを解説します。

ランサムウェアによる情報漏洩や供給への影響については、「ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説」もあわせてご覧ください。

サプライチェーンBCPにサイバー攻撃を含めるべき理由

BCPとは、災害や事故などの緊急事態が発生した際にも、重要な事業を継続・早期復旧するための計画です。従来のBCPでは、地震、台風、火災、感染症、物流停止などが主な想定リスクとされてきました。しかし、製造業においては、サイバー攻撃も同じように事業を止める要因になり得ます。

たとえば、製造委託先がランサムウェア攻撃を受けた場合、生産管理システムや受発注システムが停止し、製品の出荷や納品が遅れる可能性があります。また、部品メーカーが攻撃を受ければ、必要な部材が届かず、自社の生産計画にも影響が及びます。物流会社や保守会社が停止した場合も、製品の配送や設備対応に支障が出ることがあります。さらに、サイバー攻撃では業務停止だけでなく、情報漏洩も同時に発生する可能性があります。設計情報、部品表、製造工程、顧客情報、取引条件などが流出すれば、復旧後も知的財産の保護、契約対応、顧客説明、信用回復が必要になります。

このように、サイバー攻撃は単なるIT障害ではなく、調達、生産、物流、販売、法務、広報を巻き込む事業継続リスクです。サプライチェーンBCPでは、委託先や取引先のサイバー被害を想定するとともに、「どの委託先が停止すると、どの事業・製品・工程に影響するのか」を把握し、事業への影響が大きい委託先から優先して対策を検討することが重要です。

製造業のサプライチェーンが狙われる背景や、製造委託先への攻撃が取引先へ及ぼす影響については、「Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策」で詳しく解説しています。

委託先管理で確認すべきポイント

サイバー攻撃に備えるためには、すべての委託先を一律に管理するのではなく、自社の事業への影響度に応じて優先順位をつけることが重要です。委託している業務の重要度、取り扱う情報、システムへのアクセス範囲、代替の可否などを確認し、停止や情報漏洩が発生した場合の影響が大きい委託先から優先して対策状況を確認します。

委託先のセキュリティ対策を確認する

重要な委託先については、契約時だけでなく、取引継続中もセキュリティ対策の状況を定期的に確認することが重要です。EDRやウイルス対策の導入状況、脆弱性管理、OSやソフトウェアの更新、多要素認証、ログ監視、バックアップなどを確認します。アンケートによる自己申告だけでなく、必要に応じて監査や証跡の確認などを行い、実際の対策状況を確認することも有効です。

共有する情報を必要最小限にする

委託先に提供している設計データ、部品表、仕様書、検査手順、顧客情報などが、本当に業務上必要な範囲に限定されているかを確認します。必要以上の情報を共有していると、委託先がサイバー攻撃を受けた際に、情報漏洩の影響範囲が広がる可能性があります。委託する業務に応じて、共有する情報や保存期間を見直すことが重要です。

アクセス権限を適切に管理する

委託先に自社のシステムやクラウドサービスへのアクセスを許可している場合は、必要最小限の権限になっているかを確認します。プロジェクト単位、顧客単位、工程単位などで権限を分けることで、アカウントが侵害された場合の影響を限定しやすくなります。また、共有フォルダやクラウドストレージに過剰な権限が付与されていないか、退職者や異動者のアカウント等が残っていないかを定期的に確認し、担当者変更の際には速やかにアクセス権限を見直すことも重要です。

再委託先まで把握する

委託先がさらに別の企業へ業務を委託している場合、自社の情報や業務がどこまで広がっているのか把握できていないことがあります。再委託の可否や条件、再委託先に求めるセキュリティ対策、情報の取り扱い範囲などをあらかじめ定め、重要な業務については再委託先を含めたサプライチェーンを把握しておくことが重要です。

インシデント発生時に備えた契約・体制の見直し

委託先がサイバー攻撃を受けた場合に備え、契約や対応体制を事前に整えておくことも重要です。インシデントが発生してから対応範囲を確認していては、初動が遅れ、被害の把握や顧客対応に支障が出る可能性があります。

まず契約面では、インシデント発生時の通知期限を明確にしておく必要があります。インシデントを認識した場合の通知時期、通知先、共有すべき情報をあらかじめ定めておくことが望まれます。また必要に応じて「認識後○時間以内」など具体的な通知期限を契約上定めることも検討します。さらに調査協力や証拠保全に関する条項も重要です。ログ、通信記録、端末情報、アクセス履歴などの証拠が適切に保全されなければ、被害範囲や原因の特定が難しくなります。外部専門家によるフォレンジック調査を行う場合の協力範囲も、事前に整理しておくべきです。

そして、情報漏洩が発生した場合の責任範囲、法令等に基づく報告、顧客・取引先への説明、損害対応についても確認が必要です。特に製造業では、設計情報や部品情報の流出が競争力や取引関係に影響するため、単なる個人情報漏洩とは異なる観点で対応を考える必要があります。

体制面では、委託先の停止を想定した代替策を準備しておくことが重要です。代替生産先、代替部品、在庫確保、出荷優先順位、顧客への連絡手順、重要データの社内保全などを事前に整理しておくことで、サイバー攻撃発生時の混乱を抑えることができます。サプライチェーンBCPは、計画を作成して終わりではありません。定期的に訓練を行い、委託先や関係部門を含めて、実際に機能するかを確認することが重要です。

まとめ

サプライチェーンのサイバーリスク対策では、委託先のセキュリティ対策を確認するだけでなく、「どの委託先が停止すると自社の事業に影響するのか」を把握することが重要です。重要度に応じて対策状況や契約、インシデント時の連携方法を確認し、代替策や復旧手順をBCPに組み込んでおく必要があります。サイバー攻撃による停止を前提として、委託先や関係部門を含めた訓練と見直しを継続することが、サプライチェーン全体のレジリエンス向上につながります。

参考情報

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策

Share
「Foxconnへのサイバー攻撃とは?製造委託先が狙われる理由とサプライチェーン対策」アイキャッチ画像

2026年5月、電子機器の製造受託大手Foxconnの北米拠点がサイバー攻撃を受け、攻撃者は約8TBのデータを窃取したと主張しました。製造委託先には複数企業の設計・製造情報が集まるため、侵害の影響が取引先へ広がるおそれがあります。本記事では、製造委託先が狙われる理由と、企業が取るべきサプライチェーン対策を解説します。

Foxconnへのサイバー攻撃で何が起きたのか

2026年5月、電子機器の製造受託大手Foxconnは、北米の一部拠点がサイバー攻撃を受けたことを明らかにしました。Foxconnによると、影響を受けた工場では復旧対応が進められ、通常の生産体制へ段階的に戻っているとされています。

この攻撃について、ランサムウェア攻撃グループ「Nitrogen」は、約8TB、1,100万件を超えるファイルを窃取したと主張しました。窃取した情報には、Apple、Intel、Google、Dell、Nvidia、AMDなどの顧客企業に関係する情報が含まれるとも主張しています。

ただし、データ窃取の規模や内容、顧客企業に関する情報が実際に含まれていたかについて、Foxconnは詳細を公表していません。そのため、攻撃者側の主張とFoxconnが確認・公表している事実は分けて捉える必要があります。

なぜ製造委託先はサイバー攻撃の標的になりやすいのか

製造委託先が狙われやすい理由の一つは、発注元企業との間に多くの情報連携が発生するためです。製造委託企業には、設計図、部品表、製品仕様、検査手順、試作品情報、調達計画など、製品開発や量産に必要な情報が集約されることがあります。

攻撃者から見ると、こうした企業を侵害することで、発注元企業へ直接侵入しなくても、重要情報に近づける可能性があります。特に大企業はセキュリティ対策が強化されている一方で、委託先や再委託先まで同じ水準で管理されているとは限りません。攻撃者はこの「守りの差」を狙い、比較的侵入しやすい取引先を足がかりにすることがあります。

また、製造業では受発注システム、設計データ共有基盤、生産管理システム、保守対応の連絡経路など、複数企業をまたぐ業務連携が多く存在します。こうした接点が適切に管理されていない場合、侵害された委託先から関連企業へ芋づる式に影響が広がる可能性があります。

つまり、製造委託先は単なる外部企業ではなく、発注元企業の事業継続や情報保護に直結するサプライチェーンの一部として考える必要があります。

Foxconnでは過去にも被害が発生

なお、Foxconnとその関連企業では今回が初めての被害ではなく、過去にもサイバー攻撃による被害が報じられています。

2020年はDoppelPaymerによる攻撃、2022年には別のメキシコ拠点がLockBitの標的となりました。また2024年には子会社のFoxsemiconも攻撃を受けています。

世界各地に拠点や子会社を持つ企業では、組織全体で統一した対策を進めていても、拠点や関連会社によってセキュリティ対策や運用の水準に差が生じることがあります。攻撃者は、こうしたサプライチェーンやグループ企業内の接点を狙う可能性があります。

製造委託先の侵害がもたらす主なリスク

製造委託先が侵害された場合、影響は委託先単独の問題に留まりません。まず懸念されるのは、顧客企業に関係する情報の漏洩です。実際にFoxconnの事例では、攻撃者側が顧客企業の機密情報の窃取を主張しており(Foxconn側は詳細未公表)、こうした主張の真偽が確認される前から報道が先行する点も、企業にとって風評面のリスクとなり得ます。

設計情報や部品表、製造手順、製品仕様などが流出すれば、知的財産の漏洩、模倣品の製造、競争力の低下につながるおそれがあります。

また、製品やシステムの構成情報が外部に出ることで、攻撃者が弱点を分析しやすくなる可能性もあります。たとえば、使用している部品、ソフトウェア、通信仕様、検査工程などの情報が悪用されれば、将来的な攻撃の足がかりになることも考えられます。

さらに、ランサムウェア攻撃では、工場の操業停止や生産ラインの停止も大きなリスクです。製造委託先の業務が止まれば、発注元企業にとっても納期遅延、欠品、代替生産の調整、顧客説明などの対応が必要になります。

近年のランサムウェア攻撃では、システムを暗号化するだけでなく、事前にデータを窃取したうえで公開をちらつかせる「二重恐喝」も多く確認されています。そのため、バックアップからシステムを復旧できたとしても、窃取された情報の公開リスクが残ります。

ランサムウェアの二重恐喝の仕組みや、製造業のサプライチェーンに与える影響については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ランサムウェアの二重恐喝とは?製造業サプライチェーンに与える影響を解説

製造委託先の侵害は、情報漏洩、知財リスク、操業停止、供給遅延、信用低下が同時に発生し得る、サプライチェーン全体のリスクとして捉えるべきです。

企業が取るべき対策

企業は、製造委託先を「外部の別会社」として扱うだけではなく、自社のサプライチェーンの一部として管理することが重要です。

委託先と共有する情報を最小限にする

まず実施すべきことは、委託先に渡す情報を必要最小限にすることです。設計データ、部品表、製造手順などの重要情報は、必要な範囲、期間、担当者に限定して共有する必要があります。

アクセス権限を分離する

次に、アクセス権限をプロジェクト単位で分離することが有効です。すべての担当者が広範な情報にアクセスできる状態では、侵害時の被害が拡大しやすくなります。プロジェクトごと、顧客ごと、工程ごとにアクセス範囲を分けることで、万一の侵害時にも影響範囲を抑えやすくなります。

委託先の対策状況を定期的に確認する

委託先のセキュリティ対策状況を定期的に確認することも重要です。ただし、すべての委託先に同じ水準の対策や監査を一律に求めるのではなく、委託する業務の重要度や、共有する情報の機密性に応じて確認内容を設定する必要があります。

たとえば、設計情報や顧客情報を扱う委託先、業務停止時に自社の生産や供給へ大きな影響を及ぼす委託先については、ランサムウェア対策、EDRなどの端末監視、バックアップ、ログ管理、脆弱性管理、インシデント対応体制を重点的に確認します。一方で、扱う情報や事業への影響が限定的な委託先については、確認項目を絞るなど、リスクに応じた管理が現実的です。

重要な委託先については、契約時の確認だけで終わらせず、取引期間中も定期的に対策状況を確認し、環境やリスクの変化に応じて見直すことが求められます。

情報漏洩とランサムウェアへの技術的対策を講じる

技術的な対策としては、DLPによるデータ持ち出し監視、アクセスログの分析、大量ダウンロードの検知、重要データの暗号化、バックアップの分離保管などが挙げられます。特にランサムウェア対策では、バックアップが攻撃者に同時に破壊・暗号化されないよう、オフライン保管や改ざん耐性のあるバックアップ設計を検討する必要があります。

契約と事業継続計画を整備する

契約面では、インシデント発生時の通知期限、調査協力、証拠保全、再委託先管理、損害範囲、データ削除義務を明確にしておくことが重要です。さらに、代替生産先、代替部品、重要データの社内保全を含め、サイバー攻撃を前提としたサプライチェーンBCPを整備する必要があります。

サイバー攻撃を想定したサプライチェーンBCPの考え方や、委託先管理で確認すべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
サイバー攻撃に備えるサプライチェーンBCPとは?委託先管理の見直しポイントを解説

まとめ

製造委託先は、複数の顧客企業に関わる設計情報や製造情報を扱うため、攻撃者にとって高価値な標的になり得ます。発注元企業のセキュリティ対策が強固であっても、委託先や再委託先に弱点があれば、そこを入口として情報漏洩や業務停止が発生する可能性があります。

製造業におけるサプライチェーンリスクは、自然災害や物流停止だけではありません。サイバー攻撃による情報漏洩、操業停止、供給遅延、二重恐喝も、事業継続に直結する重要なリスクです。 企業は、委託先への情報共有を最小限に抑え、アクセス権限を分離し、定期的なセキュリティ監査を行うことが求められます。加えて、契約面の見直しやサイバー攻撃を想定したBCPの整備を進めることで、サプライチェーン全体のレジリエンスを高めることが重要です。

【参考情報】(2026年8月時点)

編集責任:木下


BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。

サイバーインシデント緊急対応

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら


Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像

Security NEWS TOPに戻る
バックナンバー TOPに戻る

2026年2Q KEVカタログに見る攻撃トレンド ― 実際に悪用された脆弱性から読み解く攻撃者の狙い

Share
2026年2Q KEVカタログに見る攻撃トレンドアイキャッチ画像

前回記事では、2026年第2四半期(2Q)のKEVカタログを統計データから分析しました。本記事では、同期間にKEVへ追加された脆弱性のうち、実際の攻撃事例に着目。攻撃者が狙う製品の共通点や脆弱性の悪用方法を分析し、2026年2Qに見られた攻撃トレンドを読み解きます。

実際の攻撃事例から見える2026年2Qの特徴

2026年第2QにKEVへ追加された脆弱性のうち、具体的な攻撃事例が確認されているものを見ると、VPNやRMM(Remote Monitoring and Management)、メールサーバ、業務システム、開発ツールなど、さまざまな製品が攻撃対象となっています。一見すると異なる製品ですが、事例を横断すると共通点も見えてきます。特に注目したいのが、インターネットからアクセス可能なシステムや、侵害後に組織内部へのアクセスに利用できる管理系製品が狙われていることです。

攻撃者にとっては、こうした製品を侵害できれば、その先にある社内ネットワークへ侵入する足掛かりを得られます。つまり、狙われているのは単に「脆弱な製品」ではなく、侵害後の展開に利用価値の高い製品だと考えることができます。

さらに、開発環境やソフトウェアサプライチェーンを起点として、別の製品や利用者へ被害が連鎖する事例も見られました。以下では、代表的な事例から、こうした攻撃の特徴を詳しく見ていきます。

VPNや管理システムは「入口」として狙われる

象徴的な事例の一つが、Check Point Security GatewayのCVE-2026-50751です。この脆弱性は、非推奨となっているIKEv1を利用したRemote Access VPNなどに存在する認証回避の脆弱性で、攻撃者が有効なユーザーパスワードを持たなくてもVPNセッションを確立できる可能性があります。Check Pointは実際の悪用を確認しており、事例の一つには侵害後の活動にランサムウェア「Qilin」との関連性も確認されています*1

VPNは本来、社外から安全に組織内部へ接続するための仕組みです。しかし、その認証機構自体が突破されれば、攻撃者にとっては社内ネットワークへの正規の入口に近い役割を果たしてしまいます。

同様の特徴は、Oracle PeopleSoft Enterprise PeopleToolsのCVE-2026-35273にも見られます。Google Threat Intelligence GroupとMandiantは、ShinyHuntersとして知られるUNC6240による攻撃でこの脆弱性と整合する悪用を確認しています*2。活動はOracleによるアドバイザリ公開前から観測されており、ゼロデイとして悪用されていたと分析しています。

狙われるRMM・リモート管理製品の脆弱性

同様に注意したいのがRMM製品です。2026年第2Qには、ConnectWise ScreenConnectのCVE-2024-1708や、SimpleHelpの複数の脆弱性もKEVへ追加されています。

SimpleHelpでは、CVE-2024-57726CVE-2024-57728など、複数の脆弱性が確認されています。CVE-2024-57726では低権限の技術者アカウントから過剰な権限を持つAPIキーを作成して管理者権限へ昇格でき、CVE-2024-57728では管理者権限を得た攻撃者が細工したZIPファイルを利用して任意の場所へファイルを書き込み、コード実行につなげられる可能性があります。SimpleHelp自身も、これらの脆弱性を組み合わせることで、情報取得から権限昇格、最終的なコード実行までの攻撃チェーンが成立し得ると説明しています。

RMM製品は、管理者が複数の端末へ遠隔接続し、操作やソフトウェア配布などを行うための正規ツールです。そのため、攻撃者に侵害された場合、単にRMMサーバ自体が被害を受けるだけではありません。正規の管理機能が、侵入後のアクセス維持や別端末への展開に悪用される可能性があります。

これらの事例に共通するのは、侵害後に組織内部へアクセスしやすい製品が攻撃対象になっていることです。攻撃者にとって重要なのは、脆弱性そのものの深刻度だけではありません。その製品を侵害した後に「どこまでアクセスできるか」「次の攻撃へつなげられるか」という点も、標的を選ぶうえで重要な要素になっていると考えられます。Microsoftが報告したStorm-1175の活動でも、この特徴が明確に表れています。

既知の脆弱性を使い分けるランサムウェア攻撃

Storm-1175は、ランサムウェア「Medusa」を展開する金銭目的の攻撃者です。Microsoftによると、同グループはインターネット上に公開された脆弱なシステムを探索し、主に公開済みのNデイ脆弱性を悪用して初期侵入した、といいます*3。侵入後は情報窃取などを行い、数日以内、場合によっては24時間以内にランサムウェア展開まで進むことが確認されています。Storm-1175の特徴は、特定の製品や一つの脆弱性だけを狙っているわけではない点です。

Nデイ脆弱性についてはこちらの記事でも解説しています。あわせてぜひご覧ください。
定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!-放置された脆弱性のリスクと対処方法-

Microsoftの調査では、PaperCut、Microsoft Exchange Server、ConnectWise ScreenConnect、JetBrains TeamCity、SimpleHelp、BeyondTrustなど、複数の製品の脆弱性が初期侵入に利用されていました。2026年第2四半期にKEVへ追加された脆弱性にも、これらの活動で利用されたものが複数含まれています。侵入後には、新しい管理者アカウントを作成してアクセスを維持し、PowerShellやPsExecなどのツールを使用してネットワーク内部へ展開します。さらに、RMMツールを永続化やペイロード配布、横展開などに利用し、認証情報の窃取やセキュリティ機能の妨害を経て、最終的にMedusaランサムウェアを展開するという攻撃の流れが確認されています。

この事例から見えてくるのは、攻撃者が特定のCVEだけに固執するのではなく、外部から侵入可能な複数の脆弱性を使い分け、その時点で利用できるものを入口としているという実態です。つまり、一つの注目度の高い脆弱性だけに対応しても、別のインターネット公開システムに悪用可能な脆弱性が残っていれば、そこが新たな侵入口になる可能性があります。

開発環境も攻撃対象に ― サプライチェーン経由の侵害

もう一つ、2026年第2Qで注目したいのが、一般的なWebサーバやVPNへの脆弱性攻撃とは異なるソフトウェアサプライチェーン経由の攻撃です。CVE-2026-45321として登録されたTanStackのサプライチェーン侵害では、正規のnpmパッケージとして悪意あるバージョンが公開されました。悪意あるコードは、AWSやGCPなどのクラウド認証情報、GitHubトークン、npmトークン、SSH秘密鍵など、開発環境に保存されているさまざまな認証情報を窃取する機能を持っていました。さらに、この侵害は別の製品にも波及しました。

Nx ConsoleのCVE-2026-48027では、悪意あるバージョンのVS Code拡張機能が公開され、ディスクやメモリ上の認証情報を収集するペイロードが実行されました。Nxの調査によると、開発者の一人がTanStackに関連するサプライチェーン攻撃の影響を受け、流出したGitHub認証情報がNx Consoleの不正公開につながったとされています*4

つまり、ある開発ツールの侵害 → 認証情報の窃取 → 別プロジェクトの侵害 → 正規ソフトウェアを通じた被害拡大、という連鎖が生じたことになります。

Nx Consoleの悪意のあるバージョンは、Visual Studio Marketplaceでは約18分間公開されていました。短時間で削除されたとしても、ソフトウェアの自動更新や正規マーケットプレイスへの信頼を利用した攻撃では、その間に利用者へ影響が及ぶ可能性があります。 これは、境界機器の脆弱性を突いて社内へ侵入する攻撃とは異なります。正規の配布経路や信頼された開発者アカウントそのものが攻撃経路になるため、「正規のアップデートだから安全」という前提だけでは防ぎにくい点が特徴です。

2026年2Qの事例から見えた3つの攻撃トレンド

今回の事例を横断すると、三つの特徴が見えてきます。

第一は、攻撃者が侵害後の展開に利用しやすいシステムを入口としていることです。VPNやRMMなどは外部からアクセス可能であるだけでなく、組織内部への接続や複数端末の管理といった機能を持っています。そのため、侵害されると、その正規機能自体が次の攻撃段階へ進むための足掛かりになり得ます。第二は、攻撃者が複数の既知脆弱性を使い分けていることです。Storm-1175の事例では、PaperCut、Microsoft Exchange Server、ConnectWise ScreenConnect、JetBrains TeamCity、SimpleHelp、BeyondTrustなど、複数製品のNデイ脆弱性が初期侵入に利用されていました。重要なのは、個々の脆弱性の新旧だけではなく、攻撃者が外部から侵入可能なシステムを探し、その時点で利用可能な脆弱性を入口としている点です。第三は、攻撃対象が組織の境界から開発環境やソフトウェアサプライチェーンへも広がっていることです。TanStackとNx Consoleの事例では、一つの認証情報の侵害が別のソフトウェアへ連鎖し、正規の配布経路を通じて被害が広がるリスクが示されました。

これらに共通するのは、攻撃者にとっての「侵害後の価値」です。外部から到達できるか、高い権限や重要な認証情報を得られるか、さらに別のシステムへアクセスできるかといった条件が、攻撃対象を考えるうえで重要になっていると考えられます。

まとめ

2026年第2四半期にKEVへ追加された脆弱性の実際の悪用事例を見ると、統計データだけでは見えにくい攻撃者の行動が浮かび上がってきます。VPNやRMMなどの管理系システムを足掛かりとした侵入、既知の脆弱性を使い分けて短期間でランサムウェア展開まで進む攻撃、そして開発環境から別のソフトウェアへ被害が連鎖するサプライチェーン攻撃など、攻撃経路は多様化しています。こうした事例を見るうえで重要なのは、「どのCVEが危険なのか」だけでなく、その製品やシステムが侵害された場合、攻撃者が次に何をできるのかという視点です。実際の悪用事例と自組織のIT資産を照らし合わせ、インターネットへの公開状況や権限、他システムとの接続関係まで含めてリスクを捉えることが、攻撃の早期発見や被害拡大の防止につながります。

【参考情報】

編集責任:木下


BBSecでは

アタックサーフェス調査サービス

インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


サイバーインシデント緊急対応

セキュリティインシデントの再発防止や体制強化を確実に行うには、専門家の支援を受けることも有効です。BBSecでは緊急対応支援サービスをご提供しています。突然の大規模攻撃や情報漏洩の懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン
SQAT緊急対応バナー

ウェビナー開催のお知らせ

  • 2026年8月19日(水)14:00~15:00「セキュリティ対策の有効性を検証する ―ペネトレーションテストの実施ポイントと脆弱性診断との違い―
  • 2026年8月26日(水)「AI時代に見直すセキュリティ対策 ~ASMの考え方で始める攻撃対象領域の可視化とリスク対策~
  • 最新情報はこちら


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    IT資産管理を効率化する方法とは?担当者が押さえたい運用のポイント

    Share
    IT資産管理を効率化する方法とは?アイキャッチ画像

    IT資産管理を継続するには、台帳を作成するだけでは十分ではありません。定期的な棚卸しや資産台帳の整備、ツールの活用、運用ルールの見直しなど、継続して管理できる仕組みづくりが重要です。本記事では、IT資産管理を効率化するための基本ステップと、実務で押さえたい運用のポイントを解説します。

    IT資産管理の基本について知りたい方は、まず「IT資産管理とは」をご覧ください。
    IT資産管理とは?企業のセキュリティ対策で最初に取り組むべき理由を解説

    IT資産管理は重要だと分かっていても、実際の運用では「台帳が更新されない」「管理対象が多すぎる」「クラウドやSaaSまで把握しきれない」といった悩みが起こりがちです。特に、少人数の情報システム部門や兼任体制の企業では、手作業だけでIT資産を正確に管理し続けるのは現実的ではありません。

    IT資産管理で押さえるべき基本ステップ

    IT資産管理を効率化するには、いきなりツールを導入するのではなく、基本ステップを整理することが大切です。最初に行うべきことは、管理対象の範囲を決めることです。PC、サーバー、ネットワーク機器、スマートフォン、タブレット、ソフトウェア、クラウドサービス、SaaS、アカウント、ライセンスのうち、どこまでをIT資産管理の対象にするのかを明確にします。次に、現在のIT資産を棚卸しします。棚卸しによって、台帳に載っていない端末、使われていないSaaS、放置されたクラウド環境、サポート期限が近いソフトウェアなどを洗い出します。その後、資産台帳を整備し、資産の種類、利用者、管理責任者、重要度、バージョン、サポート期限、最終確認日などを記録します。

    棚卸しを定期的に行う

    IT資産棚卸しは、IT資産管理の出発点です。棚卸しでは、以下のような複数の情報源を突き合わせます。ひとつの情報源だけに頼ると、見落としが発生しやすいため、複数の情報を照合することが重要です。

    • 購買台帳・リース契約
    • MDM/EDR
    • Active DirectoryやID管理基盤
    • クラウド管理画面
    • SaaSの契約情報 – ネットワーク接続情報

    たとえば、購買台帳には存在するのにEDRには表示されない端末があれば、未セットアップ、未接続、廃棄漏れの可能性があります。逆に、EDRやネットワーク上には存在するのに購買台帳や資産台帳にない端末があれば、未登録端末や持ち込み端末の可能性があります。クラウド環境では、誰が作成したか分からないインスタンス、公開設定のまま放置されたストレージ、検証後に削除されていないリソースを確認します。棚卸しの頻度は、企業規模やIT環境によって異なりますが、少なくとも年1回の一斉棚卸しだけでは変化に追いつきにくくなっています。端末の入れ替え、SaaS契約、クラウド環境の作成など、変化が多い領域については、月次や四半期単位で確認する運用が望ましいでしょう。

    どのような資産が見落とされやすいかについては「見落としがちなIT資産がセキュリティ事故を招く?企業で起こりやすい5つの管理課題」もあわせてご覧ください。

    資産台帳を整備する

    棚卸しで見つけたIT資産は、資産台帳に整理します。台帳は、単に資産名を並べるためのものではありません。脆弱性対応、パッチ適用、ライセンス管理、費用管理、インシデント対応に使える情報でなければ、実務では役に立ちません。資産台帳には、資産ID、資産種別、製品名、メーカー、OSやソフトウェアのバージョン、利用者、所属部門、管理責任者、設置場所、IPアドレス、利用目的、業務上の重要度、保存・処理する情報の種類、サポート期限、ライセンス情報、最終確認日などを記録します。すべてを最初から完璧に埋める必要はありませんが、脆弱性対応やインシデント対応に必要な項目は優先して整備するべきです。

    NIST SP 1800-5では、有効なIT資産管理は物理資産と仮想資産を結びつけ、資産が何で、どこにあり、どのように使われているかを把握できるようにするものと説明されています。 この視点を踏まえると、台帳は固定的な一覧ではなく、現場の利用実態を反映する情報基盤として設計する必要があります。

    ツールで自動化する

    IT資産管理を効率化するうえで、ツールによる自動化は有効です。管理対象が少ないうちは手作業でも対応できますが、端末、クラウド、SaaS、アカウント、ソフトウェアが増えると、人手だけで最新状態を維持するのは難しくなります。IT資産管理ツールを使えば、端末情報、インストール済みソフトウェア、OSバージョン、利用者情報、接続状況などを自動収集しやすくなります。MDMはモバイル端末やPCの管理に役立ち、EDRは端末の稼働状況やセキュリティ状態の把握に活用できます。クラウド環境では、クラウド管理ツールやCSPMによって、リソース、設定、公開状態、権限の可視化を進められます。SaaSについては、ID管理基盤やSaaS管理ツールと連携し、利用アカウントや不要ライセンスを確認します。

    IT資産管理ツールによって可視化した資産情報は、脆弱性管理にも活用できます。資産台帳とスキャン結果を結びつけることで、どの資産にどの脆弱性が存在するのかを把握しやすくなります。

    運用ルールを整備する

    IT資産管理は、ツールを導入するだけでは定着しません。新しい端末を購入したとき、SaaSを契約したとき、クラウド環境を作成したとき、従業員が異動・退職したとき、機器を廃棄したときに、誰が、いつ、どの情報を更新するのかを決めておく必要があります。

    ライフサイクル管理

    調達から廃棄までのライフサイクルにIT資産管理を組み込むことも重要です。購入申請時に資産登録を行い、利用開始時に管理責任者を設定し、定期的に利用状況を確認し、不要になったらアカウント停止やデータ消去、契約解除、廃棄証跡の保管まで行う。この流れが決まっていないと、台帳はすぐに古くなります。

    シャドーIT対策

    シャドーIT対策では、禁止だけでなく申請しやすい仕組みも必要です。現場が必要なツールを安全に使える申請ルート、承認済みSaaSの一覧、例外利用時の確認項目を整備することで、非公式な利用を減らしやすくなります。英国のサイバーセキュリティ機関NCSCも、「シャドーITは従業員が業務上の課題を解決しようとして発生することが多く、責めるのではなく、報告しやすいセキュリティ文化を作ることが重要」だと説明しています*5

    IT資産の可視化を脆弱性管理やパッチ管理につなげる

    近年では、社内で管理しているIT資産だけでなく、インターネット上に公開されている資産を継続的に把握・管理するために、ASM(Attack Surface Management)を活用する企業も増えています。

    IT資産の可視化はゴールではありません。可視化した資産情報を、脆弱性管理やパッチ管理につなげることが重要です。NIST SP 800-40 Rev.4では、パッチ管理を、パッチやアップデートを識別し、優先順位付けし、取得し、適用し、適用結果を検証するプロセスとして説明しています。 その前提として、どの資産が存在し、どのソフトウェアやバージョンを利用しているかを把握している必要があります。たとえば、重大な脆弱性が公開された場合、資産台帳が整備されていれば、対象バージョンを利用している端末やサーバーをすばやく抽出できます。重要システム、外部公開システム、個人情報を扱うシステムなどを優先して対応する判断も可能になります。逆に、資産情報がなければ、全社に一斉確認を依頼するしかなく、対応に時間がかかります。

    IT資産管理、脆弱性管理、パッチ管理は別々の業務ではなく、つながった運用として設計することが重要です。IT資産を把握し、リスクを評価し、優先順位をつけ、対策し、結果を確認する。この流れができて初めて、セキュリティ対策は継続的に機能します。

    まとめ:効率化の目的は、管理を楽にすることではなく対応を早くすること

    IT資産管理を効率化する目的は、単に運用負荷を減らすことではありません。IT資産を継続的に把握し、脆弱性への対応やインシデント発生時の初動対応を迅速に行える状態を維持することが重要です。そのためには、定期的な棚卸しや資産台帳の整備、ツールによる自動化、運用ルールの見直しを組み合わせ、自社のIT環境に合わせた継続的な運用を構築しましょう。

    【参考情報】

    CIS(Center for Internet Security)「The 18 CIS Critical Security Controls」(https://www.cisecurity.org/controls/cis-controls-list

    【関連記事】

    編集責任:木下


    公開IT資産を可視化してみませんか?

    社内で管理しているIT資産と、インターネット上から見える資産は必ずしも一致しません。攻撃者視点で公開資産を可視化する「アタックサーフェス調査サービス」をご紹介します。

    BBSecのアタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    見落としがちなIT資産がセキュリティ事故を招く?企業で起こりやすい5つの管理課題

    Share
    「見落としがちなIT資産管理の課題5選」アイキャッチ画像

    前回記事では、IT資産管理の基本と重要性を解説しました。管理されていない端末やクラウド環境、シャドーIT、サポート終了製品など、見落とされたIT資産が被害につながるケースも少なくありません。今回は、管理が行き届かない場合に実際どのような問題が起こりやすいのか、企業で起こりやすい5つの管理課題を具体的に見ていきます。

    IT資産管理の基本について知りたい方は、まず「IT資産管理とは」をご覧ください。
    IT資産管理とは?企業のセキュリティ対策で最初に取り組むべき理由を解説

    セキュリティ事故は、必ずしも高度な攻撃だけで起こるわけではありません。実際には、管理されていない端末、放置されたクラウド環境、退職者のアカウント、サポート終了ソフトウェアなど、見落としがちなIT資産がきっかけになることがあります。IT資産管理が不十分な状態では、脆弱性情報が公開されても対象資産を特定できず、インシデント発生時にも影響範囲をすばやく把握できません。

    なぜ管理漏れが起こるのか

    IT資産の管理漏れは、担当者の怠慢だけで起こるものではありません。むしろ、事業スピードに管理体制が追いつかないことで発生します。新しいSaaSを部門単位で契約する、検証用にクラウド環境を作成する、テレワーク用に端末を追加する、業務委託先にアカウントを付与する。こうした日常的な業務の中で、台帳更新や承認プロセスが後回しになると、実態とのズレが広がっていきます。

    企業で起こりやすい5つの管理課題

    台帳が更新されない

    IT資産管理で最も起こりやすい課題は、資産台帳が更新されないことです。導入時には正確だった台帳も、ソフトウェア更新やクラウド環境の追加が反映されなければ、すぐに実態とずれていきます。特にExcelやGoogleスプレッドシートで管理している場合、更新担当者が限られ、現場の変更が反映されないまま時間が経過しがちです。その結果、台帳上は存在するのに実際には廃棄済みの機器、逆に台帳にはないが稼働している資産が発生します。インシデント対応時にこの状態だと、影響範囲の特定に時間がかかり、初動対応の遅れにつながります。

    シャドーITが増える

    シャドーITとは、情報システム部門や管理部門が把握していないIT資産やサービスが、業務目的で利用されている状態を指します。英国のサイバーセキュリティ機関NCSCでは、「シャドーITは悪意によって生まれるとは限らず、従業員が業務を進めるために、承認済みのツールやプロセスでは対応できない課題を解決しようとして発生することが多い」と説明しています。たとえば、ファイル共有が不便だから個人用クラウドストレージを使う、社内承認に時間がかかるため部門でSaaSを契約する、開発検証のために個人名義に近い形でクラウド環境を作る、といった行動です。本人に悪意がなくても、会社のセキュリティポリシー、バックアップ、アクセス制御、監査ログ、退職時のアカウント削除の対象外になるため、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。シャドーIT対策で重要なのは、単に禁止することではありません。なぜ現場が非公式な手段を使わざるを得なかったのかを把握し、業務に必要なツールを安全に使える仕組みに変えることです。

    クラウド資産が把握できない

    クラウド環境では、サーバやストレージ、データベース、コンテナ、API、アカウント、権限設定などが短時間で作成・変更・削除されます。オンプレミス環境のように物理的なサーバーが目に見えるわけではないため、管理対象から漏れやすいのが特徴です。検証用に作ったクラウド環境が放置され、インターネットに公開されたままになる。開発者が一時的に広い権限を付与し、その後も戻されない。ログ設定やバックアップ設定が本番環境と異なる。こうした状態は、クラウド利用が進む企業ほど起こりやすくなります。米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)の「Cybersecurity Performance Goals」でも、既知の資産だけでなく、未知の資産、シャドー資産、未管理資産を特定し、新たな脆弱性への検知・対応を速めることが目的として示されています。

    EOL(End of Life)・EOS(End of Service)を見逃す

    サポートが終了したOS、ネットワーク機器、VPN機器、業務アプリケーション、ミドルウェアを使い続けることも、IT資産管理上の大きな課題です。サポートが終了した製品は、脆弱性が発見されても修正プログラムが提供されない可能性があります。資産台帳にサポート期限や保守期限が記録されていなければ、更新計画を立てることもできません。

    EOL・EOSについては前回記事でも触れていますので、あわせてご覧ください。

    また、ソフトウェア資産の構成管理まで行いたい場合、EOL・EOS対策の延長としてSBOM(ソフトウェア部品表)も重要になります。経済産業省「ソフトウェア管理に向けたSBOMの導入に関する手引 Ver.2.0」では、資産管理台帳だけでは、下位コンポーネントとして利用されるOSSなどに脆弱性が見つかった場合に、間接的な影響を検知できない場合があると説明されています。

    SBOMについては、「SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由」でも解説しています。あわせてご覧ください。

    部門ごとに管理している

    IT資産管理が部門ごとに分断されていることも、企業でよく見られる課題です。情報システム部門はPCとネットワーク機器を管理し、開発部門はクラウド環境を管理し、総務部門はリース契約を管理し、各事業部がSaaS契約を管理している。このような状態では、全社としてどのIT資産が存在するのかを把握できません。部門ごとの管理は、現場のスピードを保つうえでは便利です。しかし、セキュリティ事故が起きたときには、誰が責任者なのか、どの情報が保存されているのか、どの範囲に影響があるのかが分からなくなります。特に、SaaSやクラウドサービスでは、管理者権限を持つ担当者が異動・退職した後に、契約やアカウントだけが残り続けるケースもあります。

    管理課題を解決するポイント

    IT資産管理の課題を解決するには、台帳を作るだけでは不十分です。重要なのは、資産が増える、変わる、使われなくなるタイミングで、台帳や管理システムが自然に更新される運用を作ることです。まず、IT資産管理の対象範囲を明確にします。PCやサーバだけでなく、クラウド環境、SaaS、アカウント、ネットワーク機器、ソフトウェア、ライセンスまで含めるかを決めます。次に、資産ごとに管理責任者を定めます。所有者が曖昧な資産は、脆弱性対応や費用管理、廃棄判断が遅れやすくなります。そのうえで、購買、入社、異動、退職、クラウド作成、SaaS契約、機器廃棄といった業務フローにIT資産管理を組み込みます。ツールを導入する場合も、単体で完結させるのではなく、ID管理、EDR、MDM、脆弱性管理、クラウド管理と連携させることで、実態に近い情報を保ちやすくなります。

    課題を解決する具体的な運用方法については「IT資産管理を効率化する方法とは?担当者が押さえたい運用のポイント」をご覧ください。

    まとめ:見えていないIT資産は、守れない

    IT資産管理の課題は、すぐに大きな障害として表面化するとは限りません。しかし、管理漏れ、シャドーIT、クラウド資産の放置、サポートが終了した製品・機器の見逃し、部門ごとの分断が積み重なると、セキュリティ事故の温床になります。

    次回は、こうした課題を解決するための具体的な運用方法について解説します。

    【参考情報】

    編集責任:木下


    公開IT資産を可視化してみませんか?

    社内で管理しているIT資産と、インターネット上から見える資産は必ずしも一致しません。攻撃者視点で公開資産を可視化する「アタックサーフェス調査サービス」をご紹介します。

    BBSecのアタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    IT資産管理とは?企業のセキュリティ対策で最初に取り組むべき理由を解説

    Share
    IT資産管理とは?企業のセキュリティ対策で最初に取り組むべき理由アイキャッチ画像

    企業のセキュリティ対策では、EDRや脆弱性診断などの対策に注目が集まりがちですが、その前提となるのが「IT資産管理」です。自社で利用している端末やサーバー、クラウドサービス、SaaSなどを正確に把握できていなければ、脆弱性への対応やインシデント対応も適切に行えません。本記事では、IT資産管理の基本から重要性、管理できていない場合のリスク、実践のポイントまで分かりやすく解説します。

    企業のセキュリティ対策というと、EDR、WAF、脆弱性診断、ゼロトラスト、SOCなどの高度な対策を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、どれだけ優れたセキュリティ製品を導入しても、自社がどの端末、サーバー、クラウドサービス、ソフトウェアを利用しているのかを把握できていなければ、守るべき対象を正しく守ることはできません。 IT資産管理は、企業が利用するIT資産を継続的に把握・管理する取り組みです。単なる資産台帳の作成ではなく、脆弱性管理やパッチ管理、ライセンス管理、インシデント対応を支える重要な基盤となります。

    IT資産管理とは

    IT資産管理とは、企業活動で利用されるIT機器、ソフトウェア、クラウドサービス、ネットワーク機器、アカウントなどを把握し、誰が、どこで、何の目的で、どの状態で使っているのかを管理することです。従来は、PCやサーバーの購入日、設置場所、利用者、リース期限などを管理する「物品管理」に近い意味で使われることもありました。しかし現在のIT資産管理では、資産を一覧化するだけでなく、資産の追加・変更・廃止に合わせて継続的に更新し、常に最新の状態で管理することが求められています。管理対象となるIT資産には、業務用PC、サーバー、スマートフォン、タブレット、ネットワーク機器、複合機、IoT機器、仮想マシン、クラウド上のインスタンス、SaaS、業務アプリケーション、OS、ミドルウェア、ライセンス、利用アカウントなどが含まれます。

    NIST(米国国立標準技術研究所)が金融サービス業界向けに公表した実装ガイドでは、物理的な資産管理だけでは「自社の端末がどのOSを使っているか」「どの端末に脆弱性があるか」までは分からないとした上で、IT資産管理はこうした情報を結びつけて管理することで、資産の可視性とセキュリティを高めるものだと説明しています*2

    また、IT資産管理の重要性は、NISTだけでなくCISクリティカルセキュリティコントロール(CISコントロール)でも示されています。ベストプラクティス「Control 1」では、モバイル端末を含むエンドユーザー端末、ネットワーク機器、IoT機器、サーバーを対象資産と定め、これらを物理・仮想・リモート・クラウド環境を問わず継続的に把握・追跡することが、資産管理の第一歩として位置づけられています。あわせて、未承認・未管理の資産を洗い出し、除去または是正することも求められています。

    このように、IT資産管理は単なる資産一覧の作成ではなく、継続的に資産を可視化し、セキュリティ対策へつなげるための基盤といえます。IT資産管理とは「パソコンが何台あるか」を数える作業ではなく、攻撃者から見たときに侵入口になり得るもの、業務停止につながるもの、情報漏洩につながるものを可視化する取り組みです。資産の存在を知らなければ、脆弱性があっても対応できません。利用者が分からなければ、インシデント発生時に連絡できません。重要度が分からなければ、限られた人員で何から対応すべきか判断できません。

    なぜ今IT資産管理が重要なのか

    IT資産管理の重要性が高まっている背景には、クラウド利用の拡大、テレワークの普及、SaaSの増加があります。総務省「通信利用動向調査」は、企業における情報通信ネットワークや情報通信サービスの利用動向を把握するための統計であり、企業編ではクラウドサービス利用やテレワーク導入状況などのデータが提供されています。こうした環境では、社内ネットワーク内にある機器だけを見ていればよい時代ではなくなりました。たとえば、開発部門が検証用にクラウド環境を作成し、営業部門が顧客管理のためにSaaSを契約し、従業員が自宅や外出先から業務システムにアクセスする。こうした働き方は業務効率を高める一方で、情報システム部門が把握していないIT資産を生みやすくします。社内の承認を経ずに導入されたSaaS、管理されていないクラウドストレージ、退職者のアカウント、放置された検証環境は、いずれもセキュリティ上のリスクになります。さらに、生成AIサービスの業務利用が広がり、情報システム部門が把握していないクラウドサービスやAIツールが利用されるケースも増えています。

    経済産業省とIPAが公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver.3.0」でも、経営者が確認すべきチェック項目として、「守るべきデジタル環境・サービス・情報を特定し、資産の場所やビジネス上の価値等に基づいて対策の優先順位付けを行うこと」(指示4)、さらに「重要なシステムの資産管理・構成管理・パッチ管理を行うこと」、「組織内でシャドーITを利用させない対策を行うこと」(指示5)が挙げられています。

    IT資産管理は、セキュリティ対策の中でも地味に見えるかもしれません。しかし、攻撃対象となる端末やサービスが増え続ける現在では、最初に取り組むべき基盤です。

    IT資産管理で起こりやすい課題について詳しく解説した記事はこちら
    見落としがちなIT資産がセキュリティ事故を招く?企業で起こりやすい5つの管理課題

    IT資産管理ができていない企業で起こる問題

    IT資産管理ができていないと、管理漏れやシャドーITの発生、サポート終了製品の放置など、セキュリティインシデントにつながるさまざまなリスクを抱えることになります。代表的な課題は次のとおりです。

    管理漏れ

    新しく購入した端末が台帳に反映されない、退職者のPCやアカウントが残ったままになる、検証用サーバーが本番環境と同じネットワークに接続されたまま放置される、といった状態です。平時には問題が見えにくくても、脆弱性情報が公開されたときやインシデントが発生したときに、どの端末が対象なのか、誰が利用しているのかが分からず、対応が遅れます。

    シャドーIT

    英国のサイバーセキュリティ機関NCSCは、シャドーITを、業務目的で使われているにもかかわらず資産管理の対象に含まれておらず、組織のITプロセスやポリシーからも外れている「未知の資産」だと位置づけています*2。対象はデバイスに限らず、従業員が個人契約しているクラウドストレージや、部門が独自に導入した未承認のクラウドサービスも含まれるとした上で、機密データの流出やマルウェア感染の拡大につながるリスクを指摘しています。

    EOL(End of Life)機器

    サポートが終了した製品では、脆弱性が発見されても修正プログラムが提供されない場合があります。JPCERT/CCも、マイクロソフト製品のサポート終了に関する注意喚起の中で、サポート終了後の製品は新たに発見された脆弱性が修正プログラムの提供対象外となり、悪用されるリスクが残り続けると繰り返し呼びかけています*3

    ライセンス管理

    不要なSaaS契約が残り続ける、退職者分のライセンスが解放されない、利用許諾に反したソフトウェア利用が発生する、といった問題は、コスト面だけでなくコンプライアンス面のリスクにもつながります。

    IT資産管理と脆弱性管理の違い

    IT資産管理と脆弱性管理の違いを整理すると、下表のとおりです。

    項目IT資産管理脆弱性管理
    目的管理対象を把握するリスクを評価する
    何を行うか台帳を整備する脆弱性を検出する
    管理内容利用状況を管理する優先順位を付ける
    継続的な運用継続的に更新する修正・パッチ適用する

    IT資産管理と脆弱性管理は、それぞれ独立した取り組みではありません。まずIT資産管理によって「何を管理すべきか」を明確にし、その上で脆弱性管理を通じてリスクを評価・対応することが重要です。IT資産を正確に把握できていなければ、脆弱性の有無を確認したり、適切に対策を講じたりすることはできません。

    NIST SP 800-40 Rev.4では、企業のパッチ管理を、パッチやアップデートを識別し、優先順位付けし、取得し、適用し、適用結果を検証するプロセスとして説明しています。同文書は、パッチ適用を技術基盤の「予防保守」として位置づけ、事業継続のために必要なコストであるとも指摘しており、経営判断としても軽視すべきでない活動だとしています。これは、資産が把握されていることを前提にした活動です。

    IT資産を把握した後は、脆弱性管理によってリスクを評価・対応していく必要があります。詳しくは「脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】」をご覧ください。

    まず何から始めればよいのか

    IT資産管理を始める際に、最初から完璧な台帳を作ろうとする必要はありません。まずは、自社が守るべき範囲を決め、主要な端末、サーバー、ネットワーク機器、クラウドサービス、SaaS、アカウントを棚卸しすることから始めます。情報システム部門が管理している台帳、購買履歴、ネットワーク接続情報、MDMやEDRの管理画面、クラウド管理画面、SaaSの契約情報を突き合わせるだけでも、見落としていた資産が見つかることがあります。次に、資産台帳を整備します。台帳には、資産名、種別、利用部門、利用者、管理責任者、設置場所、OSやソフトウェアのバージョン、IPアドレス、重要度、サポート期限、最終確認日などを記録します。重要なのは、台帳を作って終わりにしないことです。入社、異動、退職、機器購入、クラウド環境作成、SaaS契約、廃棄といった業務プロセスと台帳更新を結びつけなければ、すぐに古い情報になります。最後に、可視化を継続します。IT資産管理ツールや脆弱性スキャン、クラウド管理ツール、ID管理基盤などを組み合わせることで、手作業だけでは追いきれない変化を検知しやすくなります。実際にIT資産管理を始める際には、棚卸しや台帳整備、運用ルールの策定などのステップがあります。

    IT資産管理を効率化する具体的な方法はこちら
    IT資産管理を効率化する方法とは?担当者が押さえたい運用のポイント

    まとめ:IT資産管理はセキュリティ対策の出発点

    IT資産管理は、単にIT資産台帳を作成することではなく、企業が利用する端末やサーバー、クラウドサービス、SaaSなどを継続的に把握・管理し、セキュリティ対策の土台を築くための取り組みです。IT資産の可視化ができていなければ、脆弱性管理やパッチ管理、インシデント対応を適切に進めることはできません。またIT環境は日々変化するため、一度台帳を作れば終わりではありません。新たなクラウドサービスの利用や端末の追加・廃止、組織変更などに応じて資産情報を更新し続けることが、セキュリティリスクの低減につながります。

    次回は、管理が行き届かない場合に実際どのような問題が起こりやすいのか、具体的な課題を掘り下げていきます。

    IT資産管理についてさらに理解を深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

    また、IT資産管理の次のステップとなる脆弱性管理については、こちらの記事をご覧ください。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

    【参考情報】

    編集責任:木下


    公開IT資産を可視化してみませんか?

    社内で管理しているIT資産と、インターネット上から見える資産は必ずしも一致しません。攻撃者視点で公開資産を可視化する「アタックサーフェス調査サービス」をご紹介します。

    BBSecのアタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    KDDIメールシステムに不正アクセス、最大1,422万件漏えいの可能性―企業が見直すべき「共通基盤リスク」とは

    Share
    「KDDIメールシステムに不正アクセス、最大1,422万件漏えいの可能性」アイキャッチ画像

    KDDI株式会社(以降、KDDI)がISP事業者向けに提供するメールシステムで不正アクセスが確認され、BIGLOBEメール、@niftyメール、J:COM NET、コミュファ光、ピカラ光、CPIなど複数のメールサービスにおいて、メールアドレスやパスワードが外部に漏えいした可能性があることが公表されました。漏えいした可能性のある情報は最大1,422万件にのぼり、現在利用中のユーザーだけでなく、解約済みの顧客や一定期間利用のない休眠アカウントも含まれるとされています。

    今回の事案で注目すべきなのは、単に「メールアドレスとパスワードが漏えいした可能性がある」という点だけではありません。KDDIが提供するISP向けの共通メール基盤に不正アクセスが発生したことで、複数の事業者・複数のサービスに影響が広がった点が重要です。これは、現代の企業システムにおいて避けて通れない「外部委託先リスク」「サプライチェーンリスク」「共通基盤リスク」を象徴する事案といえます。

    本記事では、KDDIの公式発表および関係各社の公表情報をもとに、今回の不正アクセスの概要、影響範囲、利用者が取るべき対応、そして企業が学ぶべきセキュリティ対策について解説します。

    KDDIのISP向けメールシステムで何が起きたのか

    KDDIは、インターネットサービスプロバイダー、いわゆるISP事業者向けに提供しているメールシステムにおいて、不正アクセスを受けていたことを2026年6月17日に確認しました。KDDIの発表によると、不正アクセスの原因は、同システムで利用していた第三者製ソフトウェアの脆弱性を悪用されたことによるものです。

    KDDIは同日、被害拡大を防ぐためにシステムを改修し、不正アクセスの被疑箇所を特定したうえで、技術的な防御措置を実施したとしています。また、個人情報保護委員会や総務省への報告・相談を含む必要な対応も進めていると説明しています。

    現時点で公表されている漏えい可能性のある情報は、対象メールサービスで作成されたメールボックスに紐づくメールアドレスとパスワードです。件数は最大1,422万件とされており、この数字には解約済みの顧客や、一定期間利用していない休眠アカウントも含まれています。なお、パスワードの中には、ハッシュ化または暗号化されたものも含まれるとされています。

    ここで注意したいのは、最大1,422万件という数字が「実際に漏えいした件数」と確定したものではないという点です。KDDIは調査継続中であるため、現時点では漏えいした可能性のある最大値として公表されています。

    影響を受けるメールサービス

    今回の不正アクセスで対象とされているのは、KDDIがISP事業者向けに提供していたメールシステムを利用する複数のメールサービスです。KDDIの発表では、STNetのピカラ光サービス、ピカラモバイルサービス、お仕事ピカラサービスに係るメールサービス、KDDIウェブコミュニケーションズのレンタルサーバー「CPI」のメールサービス、JCOMのJ:COM NETおよびケーブルテレビ事業者向けメールサービス、中部テレコミュニケーションのコミュファ光・ビジネスコミュファのメールサービス、ニフティの@niftyメール、ビッグローブのBIGLOBEメールが対象として挙げられています。

    各社の発表を見ても、KDDIが提供する基盤システムを利用していたこと、第三者製ソフトウェアの脆弱性悪用によって不正アクセスが発生したこと、メールアドレスやメールパスワードなどが漏えいした可能性があることが説明されています。BIGLOBEでは、BIGLOBEメールアドレス、BIGLOBE IDおよびパスワードが漏えいした可能性があると公表しています。@niftyでは、メールアドレスおよびメールパスワードが第三者に漏えいした可能性があるとして、利用者にメールパスワードの変更を求めています。

    このように、ひとつの基盤システムに起きた不正アクセスが、複数ブランドの利用者に影響する形になっています。これは、クラウドサービス、外部委託システム、SaaS、共通認証基盤などを活用する多くの企業にとっても、決して他人事ではありません。

    なぜメールアドレスとパスワードの漏えいは危険なのか

    メールアドレスとパスワードの漏えいは、単なる連絡先情報の流出にとどまりません。メールアカウントは、多くのWebサービスや業務システムにおいて本人確認やパスワード再設定の起点として使われています。そのため、メールアカウントに不正ログインされると、他サービスへの侵入、なりすまし、フィッシングメールの送信、業務情報の閲覧など、被害が連鎖するおそれがあります。

    特に危険なのは、同じパスワードを複数のサービスで使い回しているケースです。攻撃者は、漏えいしたメールアドレスとパスワードの組み合わせを使い、別のWebサービスやクラウドサービスへのログインを試みることがあります。これは一般にパスワードリスト攻撃、またはクレデンシャルスタッフィングと呼ばれる手口です。

    今回の件では、対象情報にメールパスワードが含まれる可能性があるため、利用者は対象メールサービスのパスワードを変更するだけでなく、同じ、または似たパスワードを使用している他サービスについても見直す必要があります。メール、ECサイト、SNS、クラウドストレージ、業務用SaaSなどでパスワードを使い回している場合は、早急な変更が望まれます。

    利用者が今すぐ取るべき対応

    対象サービスを利用している可能性がある場合、まずは各ISP事業者やサービス提供会社の公式案内を確認することが重要です。検索結果やSNS上のリンクからではなく、公式サイト、公式サポートページ、契約時に案内された会員ページなどから確認することで、フィッシングサイトに誘導されるリスクを下げられます。

    次に、対象となるメールパスワードを変更します。@niftyのように、一定期限までに変更が確認できない場合、システム側でメールパスワードを順次無効化すると案内している事業者もあります。Outlook、Macメール、スマートフォンのメールアプリなどを利用している場合は、Web上でパスワードを変更した後、メールソフト側に保存されているパスワードも更新する必要があります。

    また、メールパスワードとログインパスワードを同じ文字列にしている場合や、他のサービスでも同じパスワードを使っている場合は、それらも変更すべきです。メールアカウントは、他サービスのパスワード再設定メールを受け取る重要な入口です。メールアカウントの安全性が崩れると、他のアカウントにも被害が広がる可能性があります。 加えて、しばらくの間は不審なメールへの警戒が必要です。今回の不正アクセスに便乗し、「パスワード変更が必要です」「アカウントを確認してください」などと称する偽メールが送られる可能性もあります。本文中のURLを安易にクリックせず、ブックマークや公式アプリ、公式サイトから手続きすることが大切です。

    「委託先だから安全」ではないという現実

    今回の事案は、企業のセキュリティ対策を考えるうえで重要な教訓を含んでいます。多くの企業は、自社の業務効率化やコスト削減、専門性の確保を目的に、メール基盤、クラウドサービス、決済システム、顧客管理システム、認証基盤などを外部サービスに委託しています。これは現代の事業運営では自然な選択です。

    しかし、外部サービスを利用しているからといって、リスクが自社から消えるわけではありません。委託先や共通基盤でインシデントが発生すれば、自社の顧客情報、業務データ、ブランド信頼にも影響が及びます。特に、複数の事業者が同じ基盤を利用している場合、一箇所の脆弱性が広範囲のサービスに波及する可能性があります。 企業に求められるのは、外部委託先を「便利なサービス提供者」として見るだけでなく、自社のセキュリティ境界の一部として管理する姿勢です。契約時のセキュリティ要件、脆弱性対応の体制、インシデント発生時の報告フロー、影響範囲の確認方法、利用者への通知方針などを事前に整理しておかなければ、実際に問題が起きた際の初動対応が遅れてしまいます。

    第三者製ソフトウェアの脆弱性はなぜ狙われるのか

    KDDIは今回の不正アクセスについて、第三者製ソフトウェアの脆弱性が悪用されたと説明しています。現時点でソフトウェア名やCVE番号などの詳細は公表されていませんが、一般論として、第三者製ソフトウェアの脆弱性は攻撃者にとって非常に狙いやすいポイントです。

    企業システムは、自社開発のプログラムだけで構成されているわけではありません。OS、ミドルウェア、メールサーバー、認証機能、管理画面、ライブラリ、監視ツールなど、さまざまな外部コンポーネントに支えられています。これらのどこかに脆弱性が存在し、修正が遅れれば、攻撃者に侵入口を与えることになります。 特に、インターネットからアクセス可能なシステムや、多数の顧客情報を扱う共通基盤では、脆弱性管理の遅れが大きなインシデントにつながりかねません。脆弱性情報を収集し、影響有無を確認し、必要なパッチ適用や回避策を迅速に実施する体制が不可欠です。

    企業が見直すべきセキュリティ対策

    今回のような不正アクセスや情報漏えいリスクに備えるには、単にパスワードを強化するだけでは不十分です。まず重要なのは、自社がどの外部サービスや委託先に、どのような情報を預けているのかを把握することです。顧客情報、メールアドレス、認証情報、業務データ、ログ情報など、預託している情報の種類と影響範囲を整理しておく必要があります。

    次に、委託先や利用サービスに対するセキュリティ確認を継続的に行うことが求められます。契約時だけでなく、運用中も脆弱性対応、インシデント報告体制、アクセス制御、ログ管理、バックアップ、暗号化、権限管理などの観点で確認を続けることが重要です。

    さらに、自社側でも認証情報の管理を強化する必要があります。多要素認証の導入、パスワード使い回しの禁止、不要アカウントの棚卸し、退職者や休眠アカウントの削除、権限の最小化などは、基本的でありながら効果の高い対策です。今回の件で解約済みや休眠アカウントも最大件数に含まれていることは、使われていないアカウントや古いデータの管理がいかに重要かを示しています。 最後に、インシデント発生時の対応手順を事前に整備しておくことも欠かせません。誰が影響範囲を確認し、誰が顧客へ通知し、どのタイミングで監督官庁へ報告し、どのように再発防止策を公表するのか。こうした手順が曖昧なままでは、被害の拡大だけでなく、顧客からの信頼低下にもつながります。

    メール漏えいではなくサプライチェーンリスクの問題

    今回のKDDIメールシステム不正アクセスは、メールアドレスとパスワードの漏えい可能性が注目されています。しかし、企業のセキュリティ担当者や経営層が本当に見るべきポイントは、その背後にある構造です。

    ひとつの共通基盤に脆弱性があり、そこを攻撃されることで、複数のISP事業者やメールサービスに影響が広がりました。これは、外部委託やクラウド利用が進む現在の企業環境において、どの企業にも起こり得る問題です。自社のシステムが直接攻撃されていなくても、委託先、取引先、共通基盤、利用中のSaaSで起きたインシデントが、自社の顧客対応や事業継続に影響する可能性があります。 セキュリティ対策は、もはや自社ネットワークの内側だけを守ればよい時代ではありません。外部サービスを含めた全体像を把握し、脆弱性管理、委託先管理、認証情報管理、インシデント対応を一体として整備することが求められます。

    まとめ

    KDDIのISP事業者向けメールシステムに対する不正アクセスでは、メールアドレスやパスワードが最大1,422万件漏えいした可能性があると公表されました。対象にはBIGLOBEメール、@niftyメール、J:COM NET、コミュファ光、ピカラ光、CPIなど複数のメールサービスが含まれており、共通基盤に起きた不正アクセスが広範囲に影響する構図となっています。

    利用者は、各事業者の公式案内を確認し、対象となるメールパスワードを速やかに変更することが重要です。同じパスワードを他サービスで使い回している場合は、あわせて変更し、不審なメールや偽のパスワード変更案内にも注意が必要です。

    企業にとっては、今回の事案を「大手通信会社の情報漏えい」として見るだけでは不十分です。第三者製ソフトウェアの脆弱性、外部委託先の管理、共通基盤への依存、休眠アカウントの扱い、インシデント発生時の連絡体制など、自社のセキュリティ運用を見直すきっかけにすべきです。 サイバー攻撃は、自社の真正面から来るとは限りません。取引先、委託先、クラウドサービス、共通基盤を経由して影響が及ぶ時代だからこそ、企業にはサプライチェーン全体を見据えたセキュリティ対策が求められています。

    【参考情報】

    編集責任:木下


    BBSecの脆弱性診断・セキュリティ対策支援サービス

    BBSec(ブロードバンドセキュリティ)では、Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断、クラウド環境診断、脆弱性管理支援など、企業のセキュリティリスクを可視化する各種サービスを提供しています。外部サービスや委託先を含めたセキュリティ体制の見直し、情報漏えいリスクへの備え、インシデント発生前の予防対策を検討している企業は、ぜひご相談ください。


    ウェビナー開催のお知らせ

  • 2026年7月1日(水)13:00~14:00「ランサムウェア対策は「侵入前提」で考える―最新事例から学ぶ、企業に求められるリスク把握と対策の考え方―
  • 2026年7月8日(水)13:00~14:00「企業は何から対策すべきか?― OWASP Top 10:2025から読み解く、最新のセキュリティリスクと対策の考え方 ―
  • 2026年7月15日(水)14:00~15:00「AI事業者ガイドライン第1.2版に基づくセキュリティ対策の実践ポイント~生成AIからAIエージェントへ~
  • 2026年7月22日(水)14:00~15:00「そのIT資産、本当に把握できていますか?~見落としがちなセキュリティリスクと対策の第一歩~
  • 最新情報はこちら


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    【企業のためのランサムウェア対策ガイド】ランサムウェアの感染経路とは ―企業が見落としがちなVPN・RDP侵入リスクを解説

    Share
    ランサムウェアの感染経路とは ―企業が見落としがちなVPN・RDP侵入リスクを解説アイキャッチ画像

    ランサムウェア対策を考えるうえで重要なのが、「どこから侵入されるのか」を理解することです。近年の企業向けランサムウェア攻撃では、メールだけでなく、VPN機器やリモートデスクトップ(RDP)の脆弱性、認証情報の悪用、サプライチェーン経由の侵入など、多様な経路が利用されています。本記事では、企業が見落としがちな代表的な感染経路と、その対策の考え方について解説します。

    ランサムウェアの基本的な仕組みや全体像については、以下の記事で整理しています。
    ランサムウェアとは何か ―企業が知るべき被害・仕組み・対策の基本―

    ランサムウェアは、ある日突然社内のパソコンやサーバ上で実行されるように見えます。しかし実際には、その前段階で攻撃者が企業ネットワークへ侵入しています。メール、VPN機器、リモートデスクトップ、ソフトウェアの脆弱性、外部委託先など、侵入経路はさまざまです。特に近年は、単に添付ファイルを開かせる攻撃だけでなく、インターネットに公開されたVPN機器やリモートアクセス環境の脆弱性、認証情報の悪用、委託先や外部サービスを踏み台にした侵入が問題になっています。警察庁やIPAの資料でも、国内のランサムウェア被害ではVPN機器やリモートデスクトップなど、テレワーク環境に関連する経路が多く確認されています。

    ランサムウェアはどこから侵入するのか

    ランサムウェアの感染経路は、ひとつに限定されません。攻撃者は、企業の外部に開いている入口、従業員が日常的に使うメール、保守やテレワークのためのリモート接続、未修正のソフトウェア、さらには取引先や委託先との接続関係まで、複数の経路を組み合わせて侵入を試みます。従来は、ランサムウェアというと「不審なメールの添付ファイルを開いて感染する」というイメージが強くありました。もちろんメールは現在でも重要な感染経路ですが、企業におけるランサムウェア被害では、VPN機器やリモートデスクトップなど、外部から社内環境へ接続するための仕組みが狙われるケースが目立ちます。

    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)が公開している「#StopRansomware Guide」でも、ランサムウェアやデータ恐喝型攻撃の初期侵入経路として、インターネットに公開された脆弱性や設定ミス、フィッシング、認証情報の悪用、リモートアクセス環境などが重視されています。つまり、ランサムウェア対策は「端末にウイルス対策ソフトを入れる」だけでは不十分であり、外部公開資産、認証、運用設定、委託先管理まで含めて考える必要があります。

    代表的な感染経路

    メールによる感染

    メールは、現在でもランサムウェア感染の代表的な入口です。攻撃者は、請求書、見積書、配送通知、業務連絡、採用関連の連絡などを装い、添付ファイルや本文中のリンクを開かせようとします。従業員が添付ファイルを開いたり、リンク先で認証情報を入力したりすると、マルウェア感染やアカウント窃取につながる可能性があります。ただし、近年のランサムウェア攻撃では、メールから即座に暗号化が始まるとは限りません。メールをきっかけに認証情報を盗み、その後VPNやクラウドサービスへ不正ログインする場合もあります。また、メール経由で侵入したマルウェアが端末内の情報を収集し、攻撃者が次の侵入経路を探す足がかりになることもあります。そのため、メール対策は「怪しいメールを開かないように教育する」だけでは不十分です。迷惑メール対策、添付ファイルの検査、URLフィルタリング、多要素認証、端末の挙動監視を組み合わせ、万が一クリックされても被害が広がりにくい仕組みを整える必要があります。

    VPN機器の脆弱性

    企業のランサムウェア対策で特に注意すべき感染経路が、VPN機器の脆弱性です。VPNは、テレワークや拠点間接続、外部からの保守作業に欠かせない仕組みですが、インターネット側に公開されているため、攻撃者にとっても狙いやすい入口になります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、ランサムウェア被害の感染経路としてVPN機器経由が大きな割合を占め、VPN機器経由とリモートデスクトップ経由を合わせると毎年高い割合を占めていることが示されています。

    VPN機器に未修正の脆弱性が残っている場合、攻撃者は認証を突破したり、機器上の情報を盗んだり、社内ネットワークへ侵入したりする可能性があります。特に、サポート切れの機器、更新が滞っているファームウェア、初期設定に近いまま運用されている環境、不要なアカウントが残っている環境は危険です。VPN機器は一度導入すると、業務インフラとして長く使われがちです。そのため、導入時には問題がなかったとしても、数年後に深刻な脆弱性が公表され、攻撃対象になることがあります。ランサムウェア対策では、VPN機器のメーカー名、型番、バージョン、サポート期限、適用済みパッチを定期的に確認することが重要です。

    リモートデスクトップ(RDP)の悪用

    リモートデスクトップ(RDP)も、ランサムウェアの代表的な感染経路です。RDPは、離れた場所から社内のPCやサーバを操作できる便利な仕組みですが、外部から直接接続できる状態になっていると、攻撃者にとって格好の侵入口になります。CISAが公開するランサムウェア関連アドバイザリ(#StopRansomware: Akira Ransomware)でも、RDPやVPNなどのリモートアクセスサービスが初期侵入に使われる事例が継続的に示されています。

    攻撃者は、単純なパスワードの総当たり攻撃、過去に漏えいした認証情報の悪用、設定不備の探索などによって、RDP接続を突破しようとします。一度RDP経由で社内端末やサーバへ入られると、攻撃者は管理者権限の取得、他端末への横展開、データの持ち出し、バックアップの削除、ランサムウェアの実行へと進む可能性があります。RDPを業務上どうしても使う場合は、インターネットへ直接公開しないことが基本です。VPNやゼロトラスト型のアクセス制御を経由させ、多要素認証を必須にし、接続元制限、ログ監視、不要アカウントの削除を徹底する必要があります。

    ソフトウェアの脆弱性

    ランサムウェアの感染経路として見落とされやすいのが、OS、ミドルウェア、業務システム、Webアプリケーション、ネットワーク機器などのソフトウェア脆弱性です。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」(DBIR)でも、脆弱性の悪用による初期アクセスが増加していることが示されており、境界デバイスや外部公開システムの管理が企業のセキュリティ課題として重要になっています。

    攻撃者は、公開された脆弱性情報をもとに、未修正のシステムをインターネット上で探索します。特に危険なのは、外部からアクセスできるシステムに深刻な脆弱性が残っている場合です。VPN、ファイアウォール、メールサーバ、ファイル転送システム、Web管理画面、クラウド連携用の管理コンソールなどは、攻撃者から常に探索対象になっていると考えるべきです。脆弱性対策では、単にパッチを適用するだけではなく、自社がどのシステムを外部公開しているかを把握することが出発点になります。資産管理が不十分なままでは、どの機器に脆弱性があるのか、どのシステムを優先して更新すべきかを判断できません。

    サプライチェーン経由の感染

    ランサムウェアの感染経路は、自社のネットワークや端末だけに限られません。委託先、外部サービス、クラウドサービス、保守ベンダー、取引先との接続環境を通じて侵入されることもあります。こうした外部経由の侵入は、サプライチェーン攻撃としても知られています。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」でも、漏えい・侵害に第三者が関与する割合が増加していることが示されており、サプライチェーンリスクは企業規模を問わず無視できない課題になっています。

    たとえば、業務委託先が利用しているアカウントが侵害され、そのアカウントを使って自社環境へ不正アクセスされるケースがあります。また、外部保守用に開放していたリモート接続が攻撃者に悪用される場合や、取引先とのファイル共有環境を通じてマルウェアが持ち込まれる場合もあります。サプライチェーン経由の感染が厄介なのは、自社だけで完全に制御しにくい点です。自社のセキュリティ対策が一定水準に達していても、接続先や委託先の管理が甘ければ、そこが攻撃者にとっての入口になります。

    こうした外部経由の侵入は、サプライチェーン攻撃としても知られています。詳しくは以下の記事で解説しています。
    サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―

    ランサムウェア対策としては、委託先との接続経路、付与している権限、共有している情報、外部アカウントの管理状況を定期的に見直す必要があります。外部委託先に対しても、多要素認証、アクセス権限の最小化、ログ取得、契約上のセキュリティ要件、インシデント発生時の連絡体制を確認しておくことが重要です。

    なぜ気づかず侵入されるのか

    ランサムウェア感染が深刻化する理由のひとつは、攻撃者が侵入してから暗号化を実行するまでに時間差があることです。企業側から見ると、ある日突然ファイルが暗号化されたように見えます。しかし実際には、その前に認証情報の窃取、社内探索、権限昇格、横展開、データ窃取といった活動が行われている場合があります。攻撃者が長く潜伏できる背景には、認証情報の管理不備があります。退職者や異動者のアカウントが残っている、管理者権限が過剰に付与されている、同じパスワードを複数システムで使い回している、多要素認証が導入されていない、といった状態では、攻撃者にとって侵入後の行動が容易になります。また、設定ミスも大きな問題です。RDPがインターネットに公開されている、VPN機器のファームウェアが古い、管理画面に外部からアクセスできる、不要なポートが開いている、ログが保存されていないといった状態は、攻撃者にとって有利に働きます。

    NIST(米国立情報技術研究所)NIST IR 8374 Rev.1「Ransomware Risk Management: A Cybersecurity Framework 2.0 Community Profile」では、ランサムウェアへの備えとして、識別、防御、検知、対応、復旧を含めた包括的なリスク管理の重要性が示されています。これは、ランサムウェア対策が単なるマルウェア対策ではなく、資産管理、アクセス制御、バックアップ、ログ監視、インシデント対応を含む経営課題であることを意味します。

    感染リスクを下げるための考え方

    ランサムウェアの感染リスクを下げるには、すべての対策を一度に完璧に実施しようとするのではなく、侵入されやすい場所から優先順位をつけて対策することが重要です。特に企業では、VPN機器、リモートデスクトップ、外部公開サーバ、メール、認証情報、委託先接続の順に確認すると、自社の弱点を見つけやすくなります。

    最初に行うべきことは、外部から見える資産の棚卸しです。どのVPN機器を使っているのか、RDPが外部公開されていないか、古いサーバや管理画面が残っていないか、クラウドサービスの管理者アカウントが適切に管理されているかを確認します。自社が把握していないシステムは、守ることも更新することもできません。次に、認証情報の保護を強化します。多要素認証の導入、不要アカウントの削除、管理者権限の最小化、パスワードの使い回し防止、ログイン試行の監視は、ランサムウェア対策の基本です。特にVPN、RDP、クラウド管理画面、メールアカウントには優先的に適用すべきです。さらに、脆弱性管理を継続的に行う必要があります。OSやソフトウェアの更新だけでなく、ネットワーク機器、VPN、ファイアウォール、NAS、ファイル転送システムなど、外部公開される可能性のある機器の脆弱性情報を確認し、リスクの高いものから修正します。バックアップも重要ですが、バックアップがあるだけでは十分ではありません。攻撃者にバックアップまで削除・暗号化されないよう、ネットワークから分離したバックアップや、復旧手順の確認が必要です。ランサムウェア対策では、感染を防ぐ対策と、感染した場合でも事業を止めない対策を組み合わせることが求められます。

    まとめ

    ランサムウェアの感染経路は、メールだけではありません。VPN機器の脆弱性、リモートデスクトップの悪用、ソフトウェアの未修正脆弱性、認証情報の窃取、設定ミス、委託先や外部サービスを経由したサプライチェーン攻撃など、企業のさまざまな入口が狙われています。特に近年の企業向けランサムウェア攻撃では、攻撃者が事前に社内ネットワークへ侵入し、権限を広げ、データを盗み、最後に暗号化を実行する流れが一般化しています。そのため、ランサムウェア対策は「感染後にどう復旧するか」だけでなく、「どこから入られる可能性があるか」を把握し、侵入経路を減らすことから始める必要があります。

    企業がまず取り組むべきことは、自社の外部公開資産を把握し、VPNやRDPの設定を見直し、ソフトウェアの脆弱性を管理し、認証情報を守り、委託先との接続経路を確認することです。すべてを一度に完璧にする必要はありませんが、攻撃者にとって狙いやすい入口を放置し続けることは、ランサムウェア被害のリスクを高めます。ランサムウェアの感染経路を理解することは、対策の出発点です。自社のどこが侵入口になり得るのかを確認し、優先順位をつけて改善していくことが、企業のランサムウェア対策において最も現実的で効果的な第一歩になります。

    万が一感染してしまった場合の具体的な対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
    セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで 第2回:セキュリティインシデント発生時の対応 ─初動から復旧まで

    【参考情報】

    編集責任:木下


    資料ダウンロードボタン
    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    お問い合わせボタン
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る

    SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由

    Share
    「SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由」アイキャッチ画像

    SBOM(Software Bill of Materials)は、ソフトウェアを構成するOSSやライブラリ、依存関係を可視化する「ソフトウェア部品表」です。本記事では、SBOMの基本から注目される背景、OSS脆弱性管理やソフトウェアサプライチェーン対策との関係、企業が導入すべき理由まで分かりやすく解説します。

    はじめに

    ソフトウェアの安全性を考えるうえで、近年急速に重要性が高まっているのがSBOM(Software Bill of Materials)です。日本語では「ソフトウェア部品表」とも呼ばれ、ソフトウェアを構成するライブラリ、モジュール、依存関係、供給元などを整理して把握するための考え方として広がっています。背景にあるのは、企業システムの多くが自社開発のコードだけで成り立っているわけではなく、OSS、外部コンポーネント、パッケージ、クラウドネイティブな部品を組み合わせて構築されている現実です。そのため、どのソフトウェアに何が含まれているのか分からない状態では、脆弱性対応もソフトウェアサプライチェーン対策も後手に回りやすくなります。NIST(米国立標準技術研究所)ではSBOMについて、「ソフトウェアを構築するために使われた各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録した正式な記録」と説明しています*4

    SBOMは単なる開発者向けの技術資料ではありません。新しい脆弱性が公開されたときに、自社のどのシステムが影響を受けるのかを素早く把握するための基盤であり、調達先のソフトウェアを評価するための材料でもあり、継続的な脆弱性管理を支える台帳にもなります。NTIA(米国商務省電気通信情報局:National Telecommunications and Information Administration)は、「SBOMの最低要件が脆弱性管理、ソフトウェア在庫管理、ライセンス管理といった基本的なユースケースを可能にする」と整理しています*2。つまりSBOMは、単に「何が入っているか」を眺めるための一覧ではなく、ソフトウェアの透明性を高め、セキュリティ運用を速く正確にするための実務ツールです。

    SBOMとは

    SBOMとは、ソフトウェアを構成する部品の一覧とその部品同士の関係を示す情報のことです。食品に原材料表示があるようにソフトウェアにも、何でできているかを示す考え方が必要だという発想で語られることが多く、NISTもその比喩を用いて説明しています。SBOMに含まれる情報としては、コンポーネント名、供給元、バージョン、識別子、依存関係などが代表的です。

    ここで重要なのは、SBOMがソースコード一覧そのものではない、という点です。SBOMは完成したソフトウェアや提供される製品・サービスの中に、どのような構成要素が含まれているかを把握するためのものです。特にオープンソースソフトウェア(OSSを多用する現代の開発では、直接利用しているライブラリだけでなく、その先の依存関係まで含めて把握することが欠かせません。自社が書いていないコードであっても、最終的に自社サービスの一部として動作している以上、その脆弱性やライセンス、供給元リスクに無関心ではいられません。SBOMは、その見えにくい構成を可視化する手段です。

    なぜ今SBOMが注目されているのか

    SBOMが注目されている最大の理由は、ソフトウェアサプライチェーンの複雑化です。現在の企業システムは、内製コードだけで完結することが少なく、OSSライブラリ、サードパーティ製コンポーネント、外部サービス、コンテナイメージなどの積み重ねで成り立っています。その結果、脆弱性が発見されたときに自社に関係あるのかがすぐに分からないケースが増えています。SBOMがあれば、影響を受けるコンポーネントの有無を確認しやすくなり、初動のスピードを上げやすくなります。米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)もSBOMを、「ソフトウェア透明性とサプライチェーンセキュリティを支える重要な要素」として扱っています*3

    また、脆弱性対応の現実もSBOMが注目される理由の一つです。脆弱性情報は日々公開されますが、公開情報だけを見ても、自社のどのシステムにその部品が含まれているか分からなければ、対応判断が遅れます。NTIAはSBOMのユースケースとして脆弱性管理を明示しており、CISAもSBOMの実務活用をサプライチェーン防御の一部として位置付けています*4。つまりSBOMは、脆弱性情報を受け取ったあとに本当に役立つ資産側の台帳として価値を持ちます。

    SBOMで分かること

    SBOMを整備すると、まずソフトウェアに含まれるコンポーネントの全体像が見えるようになります。どのOSSライブラリが使われているか、どのバージョンか、どの供給元に由来するか、どう依存しているかが分かれば、新しい脆弱性が公表されたときの影響調査が大幅にしやすくなります。また、ライセンス確認や調達先評価、保守対象の整理にも役立ちます。NTIAは、SBOMが脆弱性、在庫、ライセンスの管理に資することを明確に示しています。

    さらにSBOMは開発部門だけでなく、運用部門、調達部門、セキュリティ部門にとっても意味があります。開発部門にとっては依存関係の可視化、運用部門にとっては影響調査の迅速化、調達部門にとってはベンダー製品の透明性確認、セキュリティ部門にとっては脆弱性管理の効率化につながります。NISTがSBOMを「サプライチェーン上の関係を含む正式な記録」として位置付けているのは、こうした部門横断の活用が前提にあるからです。

    SBOMとOSS脆弱性管理の関係

    SBOMが特に力を発揮するのは、OSS脆弱性管理の場面です。近年のソフトウェアは、多数のOSSコンポーネントに依存していますが、問題はその依存関係が深くなりやすいことです。開発者が直接追加したライブラリだけでなく、その先にぶら下がる間接依存まで含めると、構成は想像以上に複雑になります。そのためSBOMがない状態では、ある脆弱性が自社に影響するのか、どのアプリケーションに含まれているのか、を迅速に判断しにくくなります。SBOMはその複雑さを整理し、脆弱性対応の起点を作る役割を果たします。

    この点で、SBOMはSCA(Software Composition Analysis)と相性が良い考え方です。SCAはソフトウェアの依存関係を解析し、既知脆弱性やライセンス情報を確認するための仕組みですが、その結果を継続的に管理しやすくするうえでSBOMが有効です。つまりSCAが見つけるための仕組みだとすれば、SBOMは構成を記録し、影響を追いやすくするための仕組みと捉えると分かりやすいです。SBOMそのものが脆弱性を自動で直すわけではありませんが、どこに何が入っているかを把握できるだけでも、対応の速度と精度は大きく変わります。

    SBOMの代表的な形式と標準

    SBOMを実務で扱うには、機械可読な形式が重要です。NTIAの minimum elements でも、自動化を支える仕組みが重要な要件のひとつとして示されています。手書きの一覧表では更新に追いつかず、脆弱性情報との突合も難しいためです。実務で広く知られている代表的な形式としては、OWASP CycloneDX (ECMA-424)やSPDXが挙げられます。少なくともCycloneDXは、サイバーリスク低減のためのフルスタックのBill of Materials (BOM)標準として位置付けられており、現在はECMA-424として標準化されています。

    形式選定で重要なのはどちらが絶対に優れているかではなく、自社の利用目的に合っているかです。開発パイプラインに組み込みやすいか、既存ツールと連携しやすいか、脆弱性管理やライセンス管理に使いやすいか、といった観点で選ぶのが現実的です。標準形式を使うことで、ツール間連携や取引先との情報共有もしやすくなります。

    企業がSBOMを導入すべき理由

    企業がSBOMを導入すべき理由は明快です。第一に、脆弱性対応が速くなるからです。新しいCVEが出たときに、対象部品が自社のどこに入っているかを確認しやすくなれば、影響調査の時間を短縮できます。第二に、ソフトウェアサプライチェーンの透明性が高まるからです。外部から調達したソフトウェアについても、何が含まれているかが分かれば、評価や説明責任を果たしやすくなります。第三に、継続的なソフトウェア資産管理に役立つからです。NTIAもこうしたユースケースをSBOMの基本的価値として整理しています。

    加えて、SBOMはこれからの脆弱性管理の前提になりつつあります。クラウドネイティブ化や DevSecOpsが進むほど、ソフトウェア構成は動的になり、人手だけで追うのは困難になります。NISTもソフトウェアサプライチェーン対策の中でSBOMを含む各種能力の実装を推奨しており、CISAもSBOM消費の実践をサプライチェーン強化の一部として扱っています。SBOMは流行語ではなく、複雑化したソフトウェア環境を管理するための土台になりつつあると考えたほうがよいでしょう。

    SBOM導入時の課題

    もっともSBOMは作れば終わりではありません。実際の課題はどう作るかよりも、どう更新し、どう使うかにあります。ソフトウェアは日々更新されるため、一度作成したSBOMを放置するとすぐに実態とずれます。またSBOMがあっても、脆弱性情報や資産台帳、SCA、CI/CDと連携していなければ、実務で十分に生きません。CISAの近年のガイダンスもSBOMの生成だけでなく消費、つまり実際の運用への組み込みを重視しています。

    そのため導入では、まず重要システムや外部公開サービスなど、影響の大きい範囲から始めるのが現実的です。CI/CDでSBOMを自動生成する仕組みを作り、SCAや脆弱性管理フローと結び付けて、脆弱性情報公開時にすぐ影響確認できるようにする。この流れができて初めて、SBOMは単なる提出資料ではなく、日常運用で役立つ仕組みになります。

    まとめ

    SBOMとは、ソフトウェアを構成する部品とその関係を記録する「ソフトウェア部品表」です。OSS利用の拡大やソフトウェアサプライチェーンの複雑化により、どのシステムに何が含まれているのかを把握する重要性はこれまで以上に高まっています。SBOMを整備することで、脆弱性対応の初動を速め、影響調査を効率化し、ソフトウェアの透明性を高めやすくなります。NTIA、NIST、CISAがいずれもSBOMを重要視しているのは、その実務的な価値が明確だからです。特にSBOMは、SBOMとは何かを理解するだけでは不十分で、脆弱性管理、SCA、CI/CD、調達管理とどう結び付けるかが重要です。企業が導入を考える際は、形式やツール選定だけでなく、更新運用と活用場面まで見据えて設計する必要があります。これからのセキュリティ運用では、SBOMは一部の先進企業だけのものではなく、ソフトウェアを安全に使い続けるための基本装備に近づいています。

    SBOMは脆弱性対応やソフトウェアサプライチェーン対策を効率化するための重要な仕組みです。ただしSBOMを整備するだけでは十分ではなく、継続的な脆弱性管理が重要になります。企業が行うべき脆弱性管理の基本や実践フローについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】


    【関連ウェビナーのご案内】
    本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理しました。次回、5月20日(水)14時からの開催のウェビナーでは、AssetViewFutureVulsのメーカーが登壇し、各領域の役割をどのように整理し、どのように連携させれば実効性ある脆弱性管理が実現できるのか、解説します。脆弱性管理の考え方について深くを理解されたい方は、ぜひご参加ください。

    その他のウェビナー開催情報はこちら


    BBSecでは

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

    SQAT®脆弱性診断サービス

    サイバー攻撃に対する備えとして、BBSecが提供する、SQAT脆弱性診断サービスでは、攻撃者の侵入を許す脆弱性の存在が見逃されていないかどうかを定期的に確認することができます。自組織の状態を知り、適切な脆弱性対策をすることが重要です。

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    編集責任:木下

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る


    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。

    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBSecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像
    ウェビナーアーカイブ動画ページバナー画像

    脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順【2026年版】

    Share
    「脆弱性管理とは?企業が行うべき脆弱性管理の基本と実践手順」アイキャッチ画像

    企業のIT環境は、もはや社内サーバーやネットワーク機器だけで完結しません。業務システムはクラウドへ移行し、開発現場ではOSSの利用が当たり前になり、SaaSやコンテナ、API連携を含めた複雑な構成が一般化しています。こうした環境では、ひとつの脆弱性が単独の問題にとどまらず、情報漏えい、業務停止、サプライチェーン全体への影響へとつながることがあります。だからこそ今、多くの企業にとって重要になっているのが「脆弱性管理」です。

    脆弱性管理とは、脆弱性を見つけることそのものではありません。自社にどの資産があり、どこに弱点があり、それがどの程度危険で、いつまでに何を直すべきかを継続的に判断し、実際に改善し続ける運用を指します。本記事では、脆弱性管理の基本から、企業が実務で押さえるべき流れ、ツールの考え方、クラウドやOSS時代に欠かせないSBOMの活用まで、2026年時点の実務に沿って整理します。

    脆弱性管理とは

    脆弱性管理とは、システムやソフトウェア、クラウド環境、ネットワーク機器などに存在するセキュリティ上の弱点を継続的に把握し、評価し、修正し、再確認する一連の運用です。単発の診断や一度きりの点検ではなく、変化し続けるIT環境に合わせて回し続けることに意味があります。CISAも、脆弱性管理を「脆弱性や悪用可能な状態の発生頻度と影響を減らす取り組み」と位置づけています。

    脆弱性管理では、日々公開される脆弱性情報を継続的に確認することが重要です。多くの脆弱性は CVE(Common Vulnerabilities and Exposures) という識別番号で管理されています。CVEの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
    CVEとは?脆弱性情報の共通識別番号を解説

    CVEは、公開されたサイバーセキュリティ上の脆弱性を識別し、共通の参照先として扱うための仕組みです。一方、NVDはそのCVE情報に対してCVSSなどの評価情報や関連データを付与し、脆弱性管理の自動化や優先順位付けに役立つデータベースとして機能しています。つまり実務では、「CVEで対象を識別し、NVDやベンダー情報で内容と深刻度を確認する」という流れが基本になります。

    現在の企業システムは、オンプレミス環境だけでなく、AWS・Azure・Google Cloud などのクラウド環境やSaaSサービスを組み合わせて構築されるケースが増えています。そのため、脆弱性管理はサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境やソフトウェアコンポーネントも含めて実施する必要があります。クラウドでは、基盤の一部は事業者が管理していても、設定、アクセス権、ゲストOS、コンテナイメージ、アプリケーションなどは利用企業側の責任範囲に残るためです。AWS、Microsoft、Google Cloudはいずれも共有責任モデルを明示しており、利用者側の継続的な管理を前提にしています。

    なぜ企業に脆弱性管理が必要なのか

    企業に脆弱性管理が必要な最大の理由は、脆弱性が「見つかっただけの情報」ではなく、「実際に悪用される入口」になっているからです。公開された脆弱性のすべてが直ちに攻撃に使われるわけではありませんが、CISAは実際に悪用が確認された脆弱性を Known Exploited Vulnerabilities(KEV) Catalog として公開し、組織に優先対応を促しています。つまり現代の脆弱性管理では、公開情報を眺めるだけでなく、「いま悪用されているか」「自社に影響するか」を見極めることが重要です。

    脆弱性を放置するリスクも明確です。攻撃者は、修正が遅れたVPN機器、公開サーバー、業務アプリケーション、ミドルウェア、コンテナ環境などを足がかりに侵入し、そこから権限昇格や横展開を進めます。問題は、重大な脆弱性があっても、自社資産を把握できていなければ「影響を受けているのに気づけない」ことです。脆弱性管理は、修正作業の前段として、自社に何が存在しているかを見える化する意味でも不可欠です。

    さらに、近年はOSS利用の拡大によって、ソフトウェアサプライチェーン全体のリスク管理が重要になっています。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとそのサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と説明しています。OSSライブラリや依存パッケージに脆弱性が含まれていた場合、アプリケーション本体に問題がなくても、企業システム全体に影響が及ぶ可能性があります。これが、いわゆるソフトウェアサプライチェーンリスクです。

    クラウド利用の拡大も、脆弱性管理の必要性をさらに高めています。クラウド環境では、サーバーを一度構築して終わりではなく、構成変更、イメージ更新、コンテナ再配備、アクセス制御変更などが高頻度で発生します。そのため、脆弱性管理を継続的に実施しなければ、未更新のソフトウェアや脆弱なイメージ、設定不備がそのまま攻撃対象になる可能性があります。共有責任モデルのもとでは、クラウド事業者がすべてを守ってくれるわけではありません。自社が責任を持つ範囲を理解し、そこを継続的に点検する必要があります。

    脆弱性管理の基本プロセス

    脆弱性管理の基本プロセスは、一般に以下のような流れです。

    • 脆弱性の発見
    • 脆弱性評価
    • 修正
    • 検証

    ただし実務では、前提としてソフトウェア資産の把握が欠かせません。なぜなら、何を保有しているか分からない状態では、脆弱性情報を受け取っても影響判断ができないからです。NVDのような脆弱性データベースは、脆弱性管理の自動化や評価に使える標準化データを提供していますが、それを生かすには自社資産との突合が必要です。

    脆弱性の発見は、公開情報の確認だけでなく、スキャンツール、構成管理情報、ベンダーアドバイザリ、クラウドのセキュリティ機能など、複数の情報源を組み合わせて行います。次に必要になるのが評価です。ここではCVSSのような一般的な深刻度だけでなく、インターネット公開の有無、業務影響、悪用実績、代替策の有無、修正難易度などを踏まえて、自社にとっての優先度を決める必要があります。NVDも、CVSSは深刻度の定性的な指標であり、リスクそのものではないと明示しています。

    その後、実際に修正を行います。修正方法は、パッチ適用、設定変更、バージョンアップ、アクセス制御の見直し、機能停止、ネットワーク遮断などさまざまです。最後に、修正後の検証を実施し、本当に脆弱性が解消されたか、別の不具合を生んでいないかを確認します。この「修正して終わりにしない」ことが、脆弱性管理を単なる作業ではなく運用として成立させるポイントです。脆弱性管理では、まず自社のIT資産を正確に把握することが重要です。対象にはサーバーやネットワークだけでなく、クラウド環境、利用しているOSSライブラリなども含まれます。

    IT資産管理と脆弱性管理の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性管理とIT資産管理とは?サイバー攻撃から組織を守る取り組み

    近年では SBOM(Software Bill of Materials) を利用してソフトウェア構成を可視化する企業も増えています。SBOMは、ソフトウェアに何の部品が含まれているかを一覧化する考え方で、影響範囲の特定や依存関係の把握に有効です。
    SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由

    脆弱性管理のフロー(実務)

    実務に落とし込むと、脆弱性管理の流れは以下のような順番で整理することができます。

    1. 脆弱性情報の収集
    2. クラウド・OSSへの影響確認
    3. 優先度判断
    4. 修正
    5. 再確認

    まず行うべきは、CVE、ベンダーアドバイザリ、クラウドベンダー通知、各種セキュリティ情報の収集です。ここで漏れがあると、そもそも対応のスタート地点に立てません。CISAは、実際に悪用が確認された脆弱性についてKEV Catalogの確認と優先的な是正を強く推奨しています。

    次に必要なのが、収集した情報が自社環境に関係するかどうかの確認です。オンプレミス機器だけなら比較的見通しが立ちますが、現在はクラウド上のワークロード、コンテナ、OSSライブラリ、CI/CDで取り込んだ部品まで視野に入れなければ、実態を取り逃がします。とくにOSS脆弱性は、アプリケーション本体よりも深い依存関係に潜んでいる場合があり、SBOMやSCAの仕組みがないと把握が難しくなります。

    優先度判断では、CVSSの高さだけで対応順を決めないことが重要です。CVSSは比較の基準になりますが、公開サーバーにあるのか、認証が必要なのか、すでに悪用実績があるのか、業務停止時の影響はどれほどかによって、実際の対応順は変わります。NVDもCVSSをリスクそのものではないと説明しており、KEVのような実悪用情報と組み合わせて判断するのが現実的です。

    修正段階では、パッチ適用だけに視野を限定しないことが大切です。クラウド環境では、OSやミドルウェアの更新に加え、コンテナイメージの差し替え、設定変更、公開範囲の見直し、権限調整なども重要な対策になります。修正後は再スキャンや設定確認を行い、実際に解消されたことを確認します。ここで検証が不十分だと、「対応したつもり」で終わってしまい、後になって再発見されることがあります。

    脆弱性管理では、脆弱性を発見するだけでなく、発見された脆弱性に対して迅速に対応することが重要です。適切な脆弱性対応を行わなければ、攻撃者に悪用され、情報漏えいやシステム停止などの重大なインシデントにつながる可能性があります。脆弱性対応の基本的な流れや実務での対応方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
    脆弱性対応とは?CVE対応とパッチ管理の実務フロ

    近年ではクラウド環境やOSSライブラリに含まれる脆弱性の影響調査も重要になっています。SBOMを利用すると、影響範囲を迅速に把握できます。

    脆弱性管理ツールの種類

    脆弱性管理を実務で回すには、ツールの力を借りることが現実的です。ただし、ひとつの製品で全領域を完全にカバーできるとは限りません。一般的な脆弱性スキャナーは、ネットワーク機器、サーバー、OS、ミドルウェア、Webアプリケーションの既知脆弱性を見つけるのに有効ですが、OSSライブラリの依存関係やソフトウェア部品表までは十分に扱えないことがあります。そこで、管理ツール、クラウドセキュリティツール、SBOM管理ツール、SCAツールなどを役割ごとに組み合わせる設計が必要になります。

    たとえば、CSPMやCNAPPのようなクラウド向けツールは、クラウド設定やワークロードの状態を継続的に可視化するのに向いています。一方、SCAはアプリケーションが依存しているOSSコンポーネントを洗い出し、既知脆弱性との突合を支援します。SBOM管理ツールは、その構成情報を継続管理し、影響調査を効率化する役割を持ちます。2026年の脆弱性管理では、ネットワークやサーバーだけを見ていても不十分で、クラウドとソフトウェアサプライチェーンまで含めた多層的な可視化が必要です。

    OSSの脆弱性を管理するために、SCA(Software Composition Analysis)ツールやSBOM管理ツールを導入する企業も増えています。これは、ソフトウェアの構成部品とその依存関係を可視化しなければ、OSS由来の脆弱性が自社に影響するかどうかを迅速に判断しにくいためです。NTIAも、SBOMをソフトウェア構成要素の透明性向上に役立つ仕組みとして整理しています。

    SCA(Software Composition Analysis)ツールとは
    ソフトウェアに含まれるオープンソースや外部ライブラリの構成要素を解析し、既知の脆弱性やライセンスリスクを可視化するセキュリティツールです。依存関係を自動的に検出し、CVEなどの脆弱性データベースと照合することで、潜在的なリスクを早期に特定できます。また、ライセンス違反の有無も確認でき、コンプライアンス対応にも有効です。開発プロセスに組み込むことで、セキュアで安全なソフトウェア開発を支援します。

    脆弱性スキャンについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
    脆弱性スキャンとは?脆弱性診断ツールの選び方と導入ポイント

    企業の脆弱性管理の課題

    多くの企業が脆弱性管理に苦労する理由は、脆弱性そのものより、管理対象の広がりにあります。

    IT資産の把握

    まず大きいのが、IT資産の把握が難しいことです。クラウド移行、テレワーク、SaaS利用、部門独自導入のツール、コンテナ活用が進むと、情報システム部門が把握していない資産が生まれやすくなります。この状態では、脆弱性情報を受け取っても、自社への影響有無を正確に判断できません。

    OSS依存関係の管理

    現代のソフトウェアは、直接導入しているライブラリだけでなく、その下位の依存関係にも数多くの部品を抱えています。表面的には安全に見えても、深い階層に脆弱なコンポーネントが含まれていることは珍しくありません。

    SBOMの未整備

    SBOMが未整備だと、こうした影響範囲調査に時間がかかり、対応の遅れにつながります。

    クラウド環境の可視化不足

    クラウドでは、責任分界が従来のオンプレミスとは異なり、サービス形態によって利用者側の責任範囲が変わります。そのため、「クラウド事業者が面倒を見ているはず」と誤解してしまうと、更新漏れや設定不備を放置しやすくなります。共有責任モデルを前提に、自社の管理範囲を明確にしなければ、脆弱性管理は形骸化します。

    OSS利用時に重要な脆弱性管理(SBOMの活用)

    OSSの活用は、開発効率や品質向上の面で大きなメリットがありますが、その一方で脆弱性管理を複雑にします。理由は明快で、企業が自分で一から書いていないコードであっても、最終的に自社サービスや製品の一部として責任を負うからです。OSS由来の脆弱性は、アプリケーション本体ではなく依存パッケージに潜んでいることも多く、目視や台帳だけで追いきるのは現実的ではありません。

    ここで重要になるのがSBOMです。NTIAはSBOMを、ソフトウェアを構成する各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録する正式な記録と定義しています。これを整備しておけば、新たな脆弱性が公表された際に、「自社のどのシステムに、その部品が含まれているか」を調べやすくなります。結果として、影響調査の初動が速くなり、不要な全件調査や属人的な確認作業を減らせます。

    SBOMは、単に監査対応のために作る資料ではありません。脆弱性管理の実務で使えてこそ意味があります。たとえば、SCAツールで依存関係を検出し、その情報をSBOMとして管理し、脆弱性公表時に突合するという流れが定着すれば、OSS脆弱性への対応速度と精度を高めやすくなります。今後の企業システムでは、OSS利用時の脆弱性管理をSBOM抜きで考えることは難しくなっていくでしょう。

    脆弱性管理を効率化する方法

    脆弱性管理を効率化する方法はいくつかあります。

    資産管理の自動化

    資産台帳を手作業で維持する運用では、クラウドやコンテナ、SaaSの増減に追いつけません。CMDB、クラウド資産可視化、ID管理、EDRやMDMの情報などを組み合わせて、現時点の資産情報を継続的に更新できる状態を目指す必要があります。資産情報が整えば、脆弱性情報との突合精度も上がります。

    OSS脆弱性監視

    OSS脆弱性監視の仕組みを作ることも重要です。開発時点だけでなく、運用中のアプリケーションについても、依存ライブラリの脆弱性を継続監視しなければなりません。脆弱性管理をインフラ部門だけの仕事にせず、開発部門やDevOps運用の中に組み込むことが、今の実務では不可欠です。

    SBOMによるソフトウェア構成管理

    SBOMによるソフトウェア構成管理を取り入れることで、影響調査の速度と精度をさらに高められます。SBOMが整っていれば、新たなCVEが公表された際にも、対象ソフトウェアの所在確認を短時間で進めやすくなります。加えて、KEVのような実悪用情報を監視し、CVSSだけでなく悪用実績も含めて優先順位を決める運用にすれば、限られた人員でも効果的に対応しやすくなります。脆弱性管理を効率化するとは、単にツールを増やすことではなく、「見つける」「判断する」「直す」を早く回せる仕組みへ変えることです。

    まとめ

    脆弱性管理とは、脆弱性を発見する作業ではなく、自社のIT資産、クラウド環境、OSSコンポーネントを継続的に把握し、影響を判断し、優先順位をつけて修正し、再確認する運用そのものです。2026年の企業環境では、オンプレミスだけを見ていては不十分で、クラウド、SaaS、コンテナ、OSSまで含めた視点が欠かせません。とくに、実際に悪用される脆弱性への対応と、SBOMを活用したソフトウェア構成の可視化は、これからの脆弱性管理の重要な柱になります。

    まず取り組むべきなのは、完璧な仕組みを一気に作ることではなく、自社の資産を洗い出し、脆弱性情報を収集し、優先度を判断し、修正後に確認するという基本サイクルを止めずに回すことです。そのうえで、クラウド可視化、SCA、SBOM管理などを段階的に取り入れていけば、脆弱性管理は現場で機能する実践的な仕組みに育っていきます。


    【関連ウェビナーのご案内】
    本記事では、脆弱性スキャンとは何か、脆弱性診断との違い、ツール比較のポイント、導入時の考え方までを整理しました。次回、5月20日(水)14時からの開催のウェビナーでは、AssetViewFutureVulsのメーカーが登壇し、各領域の役割をどのように整理し、どのように連携させれば実効性ある脆弱性管理が実現できるのか、解説します。脆弱性管理の考え方について深くを理解されたい方は、ぜひご参加ください。

    その他のウェビナー開催情報はこちら


    BBSecでは

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

    SQAT®脆弱性診断サービス

    サイバー攻撃に対する備えとして、BBSecが提供する、SQAT脆弱性診断サービスでは、攻撃者の侵入を許す脆弱性の存在が見逃されていないかどうかを定期的に確認することができます。自組織の状態を知り、適切な脆弱性対策をすることが重要です。

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    編集責任:木下

    Security NEWS TOPに戻る
    バックナンバー TOPに戻る


    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。

    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。


    Security Serviceへのリンクバナー画像
    BBSecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
    セキュリティ緊急対応のバナー画像
    ウェビナーアーカイブ動画ページバナー画像