2026年第2QにKEVへ追加された脆弱性のうち、具体的な攻撃事例が確認されているものを見ると、VPNやRMM(Remote Monitoring and Management)、メールサーバ、業務システム、開発ツールなど、さまざまな製品が攻撃対象となっています。一見すると異なる製品ですが、事例を横断すると共通点も見えてきます。特に注目したいのが、インターネットからアクセス可能なシステムや、侵害後に組織内部へのアクセスに利用できる管理系製品が狙われていることです。
Nx Consoleの悪意のあるバージョンは、Visual Studio Marketplaceでは約18分間公開されていました。短時間で削除されたとしても、ソフトウェアの自動更新や正規マーケットプレイスへの信頼を利用した攻撃では、その間に利用者へ影響が及ぶ可能性があります。 これは、境界機器の脆弱性を突いて社内へ侵入する攻撃とは異なります。正規の配布経路や信頼された開発者アカウントそのものが攻撃経路になるため、「正規のアップデートだから安全」という前提だけでは防ぎにくい点が特徴です。
ランサムウェアの感染経路として見落とされやすいのが、OS、ミドルウェア、業務システム、Webアプリケーション、ネットワーク機器などのソフトウェア脆弱性です。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」(DBIR)でも、脆弱性の悪用による初期アクセスが増加していることが示されており、境界デバイスや外部公開システムの管理が企業のセキュリティ課題として重要になっています。
ランサムウェアの感染経路は、自社のネットワークや端末だけに限られません。委託先、外部サービス、クラウドサービス、保守ベンダー、取引先との接続環境を通じて侵入されることもあります。こうした外部経由の侵入は、サプライチェーン攻撃としても知られています。Verizon「2025 Data Breach Investigations Report」でも、漏えい・侵害に第三者が関与する割合が増加していることが示されており、サプライチェーンリスクは企業規模を問わず無視できない課題になっています。
SBOM(Software Bill of Materials)は、ソフトウェアを構成するOSSやライブラリ、依存関係を可視化する「ソフトウェア部品表」です。本記事では、SBOMの基本から注目される背景、OSS脆弱性管理やソフトウェアサプライチェーン対策との関係、企業が導入すべき理由まで分かりやすく解説します。
はじめに
ソフトウェアの安全性を考えるうえで、近年急速に重要性が高まっているのがSBOM(Software Bill of Materials)です。日本語では「ソフトウェア部品表」とも呼ばれ、ソフトウェアを構成するライブラリ、モジュール、依存関係、供給元などを整理して把握するための考え方として広がっています。背景にあるのは、企業システムの多くが自社開発のコードだけで成り立っているわけではなく、OSS、外部コンポーネント、パッケージ、クラウドネイティブな部品を組み合わせて構築されている現実です。そのため、どのソフトウェアに何が含まれているのか分からない状態では、脆弱性対応もソフトウェアサプライチェーン対策も後手に回りやすくなります。NIST(米国立標準技術研究所)ではSBOMについて、「ソフトウェアを構築するために使われた各種コンポーネントとサプライチェーン上の関係を記録した正式な記録」と説明しています*4https://www.nist.gov/itl/executive-order-14028-improving-nations-cybersecurity/software-security-supply-chains-software-1。
SBOMは単なる開発者向けの技術資料ではありません。新しい脆弱性が公開されたときに、自社のどのシステムが影響を受けるのかを素早く把握するための基盤であり、調達先のソフトウェアを評価するための材料でもあり、継続的な脆弱性管理を支える台帳にもなります。NTIA(米国商務省電気通信情報局:National Telecommunications and Information Administration)は、「SBOMの最低要件が脆弱性管理、ソフトウェア在庫管理、ライセンス管理といった基本的なユースケースを可能にする」と整理しています*2https://www.ntia.gov/report/2021/minimum-elements-software-bill-materials-sbom。つまりSBOMは、単に「何が入っているか」を眺めるための一覧ではなく、ソフトウェアの透明性を高め、セキュリティ運用を速く正確にするための実務ツールです。
SBOMを実務で扱うには、機械可読な形式が重要です。NTIAの minimum elements でも、自動化を支える仕組みが重要な要件のひとつとして示されています。手書きの一覧表では更新に追いつかず、脆弱性情報との突合も難しいためです。実務で広く知られている代表的な形式としては、OWASP CycloneDX (ECMA-424)やSPDXが挙げられます。少なくともCycloneDXは、サイバーリスク低減のためのフルスタックのBill of Materials (BOM)標準として位置付けられており、現在はECMA-424として標準化されています。
近年では SBOM(Software Bill of Materials) を利用してソフトウェア構成を可視化する企業も増えています。SBOMは、ソフトウェアに何の部品が含まれているかを一覧化する考え方で、影響範囲の特定や依存関係の把握に有効です。 「SBOMとは?ソフトウェア部品表の基本と企業が導入すべき理由」
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