2026年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

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前回記事では、米CISAから公開された「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」へ2026年第1四半期(1Q)に追加された脆弱性を統計的に分析し、実際に悪用された脆弱性から見える攻撃傾向について解説しました。本記事では、2026年4月1日から6月30日までにKEVカタログへ追加された脆弱性を対象に、前回四半期との比較を交えながら、2026年第2四半期(2Q)に見られた特徴を整理します。

2026年2四半期(2Q)の統計データ概要

2026年2QにKEVカタログへ追加された脆弱性は75件でした。2026年第1四半期(1Q)と比較すると4件増加しており、件数だけを見ると大きな変化ではありません。しかし、KEVは「実際に悪用されたことが確認された脆弱性」を掲載するカタログであるため、追加件数の増減以上に「どのような脆弱性が追加されたのか」を見ることが重要です。

月別では追加件数にばらつきが見られ、一時的な集中というよりは、四半期を通じて継続的に新たな悪用事例が確認されたことが分かります。

月別のKEV追加件数

追加件数構成比
4月3141.3%
5月2128.0%
6月2330.7%

このことは、攻撃者が特定の大型脆弱性だけを狙うのではなく、新たに公開された脆弱性や過去の脆弱性を継続的に攻撃対象へ組み込んでいることを示唆しています。

主要ベンダー別の内訳

KEVへ追加された脆弱性をベンダー別に見ると、複数の脆弱性が同一ベンダーへ集中しているケースが確認されました。一方で、2026年2Qの特徴は、特定ベンダーへの極端な集中というよりも、ネットワーク機器、リモート管理ツール、業務システム、Webアプリケーションなど、幅広い製品群に悪用対象が広がっていることです。

企業が保有するIT資産は多様化しており、攻撃者もそれに合わせて侵入口を分散させています。そのため、「Microsoft製品だけを優先する」「VPN製品だけを重点管理する」といった限定的な運用では十分とは言えません。

ベンダー別KEV追加件数(上位10社)

順位ベンダーQ2件数Q1件数増減
1Microsoft1512+3
2Cisco74+3
3SimpleHelp30新規
3Ubiquiti30新規
3Ivanti32+1
3Adobe30新規
7LiteSpeed20新規
7Oracle20新規
7Google23-1
7BerriAI20新規

特に管理用途で利用される製品やインターネットへ公開される機器は、侵害された場合の影響が大きく、継続して攻撃対象となっています。

脆弱性タイプ(CWE)の分布

CWE件数
CWE-22(パストラバーサル)6
CWE-20(不適切な入力検証)5
CWE-94(コードインジェクション)5
CWE-287(不適切な認証)5
CWE-306(重要な機能の使用に対する認証の欠如)4
CWE-502(不適切なデータ逆シリアル化)3
CWE-78(OSコマンドインジェクション)3
CWE-284(不適切なアクセス制御)3
CWE-89(SQLインジェクション)3

KEVに追加された脆弱性をCWE別に分類すると、依然として攻撃者が初期侵入に利用しやすい脆弱性が多く確認されました。代表的な脆弱性として以下が上位を占めています。

  • OSコマンドインジェクション
  • 認証回避
  • 不適切な認可
  • パストラバーサル
  • リモートコード実行(RCE)

これらはいずれも、攻撃者が認証前または低権限の状態からシステムへ侵入し、その後の権限昇格や横展開につなげやすい脆弱性です。特に認証回避や認可不備は、CVSSスコア以上に実運用への影響が大きく、VPN機器や管理画面、リモート保守製品などで繰り返し悪用されています。

脆弱性の種類を見ると、「攻撃者が最初にシステムへ入り込むための入り口」が依然として重点的に狙われていることが分かります。

攻撃の自動化容易性(Automatable)

2026年第2Qも、自動化が容易である「Yes」と評価された脆弱性が一定数確認されました。攻撃者は現在、脆弱性を発見すると短期間でスキャンツールへ組み込み、インターネット上の対象を広範囲に探索するケースが一般的です。認証回避やリモートコード実行(RCE)の脆弱性は、PoC(概念実証コード)が公開されると、数日から数週間で大規模なスキャンの対象になることも珍しくありません。

企業側としては、「実際に狙われてから対応する」のではなく、自動化攻撃の対象になり得る脆弱性については、公開直後から迅速なパッチ適用や緩和策の実施を検討する必要があります。

CVSSスコア分布‐CVSSだけでは優先順位は決められない‐

重大度Q2件数Q2構成比Q1件数
Critical(9.0~10.0)2736.0%30
High(7.0~8.9)3850.7%34
Medium(4.0~6.9)1013.3%7
Low/None00%0

KEVへ登録された脆弱性のCVSSを集計すると、CriticalとHighを合わせて全体の約87%を占めました。これは高リスク脆弱性が多いことを示していますが、一方でMedium評価の脆弱性もKEVへ登録されています。つまり、CVSSがそれほど高くなくても、実際に悪用されれば優先的な対応対象になるという点が、KEVの大きな特徴です。

CVSSは技術的な深刻度を示す指標ですが、攻撃者が利用するかどうかまでは評価していません。そのため、脆弱性管理ではCVSSとKEVを組み合わせて優先順位を判断することが重要になります。また、現在はCVSS v3.xとCVSS v4.0が混在しており、単純なスコア比較には注意が必要です。評価体系が異なるため、スコアだけで危険性の増減を判断すべきではありません。

実際にランサムウェア攻撃に悪用された脆弱性

2026年第2Qでは、12件(全体の16.0%)の脆弱性でランサムウェアとの関連が確認されました。件数だけを見ると全体の一部に見えますが、ランサムウェア攻撃で利用される脆弱性は、侵入後に高い権限を取得できるものや、企業ネットワーク全体へ影響を及ぼしやすいものが多い点に注意が必要です。

一方で、「Unknown」と分類された脆弱性は、「ランサムウェアでは利用されていない」という意味ではありません。現時点で公開情報から確認できていないことを示しており、今後の調査やインシデント分析によって状況が変わる可能性があります。

第1四半期(1Q)との比較

追加件数だけを見ると、2Qは1Qから大きく増加したわけではありません。しかし、登録された脆弱性の内容を見ると、いくつかの特徴が見えてきます。

まず、攻撃対象が特定のベンダーに集中するのではなく、ネットワーク機器やリモート管理ツール、業務システム、Webアプリケーション、開発環境など、多様な製品へ広がっている点が挙げられます。また、認証回避や認可不備といった初期侵入につながる脆弱性が引き続き多く確認されました。こうした傾向からは、攻撃者が新たな攻撃手法を次々と生み出すというよりも、既知の脆弱性を効率的に悪用し、侵入の足掛かりとして利用している状況がうかがえます。

さらに、KEVには公開から時間が経過した脆弱性も継続して追加されています。これは、攻撃者が古い脆弱性を積極的に狙っているというよりも、パッチ未適用のシステムやサポート終了製品が依然として運用されている実態を反映している可能性があります。脆弱性が公表されてから時間が経過していても、適切な更新が行われていなければ、引き続き攻撃対象となることを示していると言えるでしょう。

統計から見える3つのポイント

2026年2QのKEVを俯瞰すると、特に注目すべき点は次の3つです。

攻撃対象の分散

従来は特定ベンダーのゼロデイ脆弱性が大きく注目されることがありましたが、第2四半期は幅広い製品が攻撃対象となりました。企業は個別製品への対応だけでなく、自社が保有する資産全体を把握した上で、継続的に脆弱性を管理する必要があります。

自動化攻撃への対応

Automatableと評価された脆弱性は、公開後短期間で大規模なスキャンの対象になる可能性があります。攻撃が始まってから対応するのではなく、KEVへの追加を一つの判断材料として優先的に対処することが重要です。

CVSSだけでは優先順位を決められない

高いCVSSスコアを持つ脆弱性への対応はもちろん重要ですが、実際に攻撃で悪用されているという事実は、運用上さらに重要な意味を持ちます。KEVは、その「実際の悪用」という観点を補完する情報源として活用できます。

まとめ

2026年2Qは、件数そのものよりも、攻撃対象の多様化や、自動化しやすい脆弱性、認証回避など初期侵入を容易にする脆弱性が継続して悪用されている点が特徴的でした。これらは特定の業種や製品に限った問題ではなく、多くの組織が共通して直面するリスクと言えるでしょう。定期的にKEVの追加状況を確認し、自社資産との照合やパッチ適用の優先順位付けへ活用することは、限られたリソースで効果的な脆弱性管理を実施するための重要な取り組みとなります。

件数や分類だけでは、実際の攻撃者がどのような製品を標的とし、どのような脆弱性を悪用しているのかまでは見えてきません。実際に攻撃で悪用された事例の分析については以下の記事をご覧ください。
2026年2Q KEVに見る攻撃トレンド分析 ― 実際に悪用された事例から読み解く攻撃者の狙い

【参考情報】

編集責任:木下


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