被害事例から学ぶサイバー攻撃対策
-サイバー攻撃への対策2-

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自分の会社がもしもサイバー攻撃を受けてしまった場合、どのような影響があるのか?もし被害に遭ってしまったら、まずどうすればよいのか?今回の記事では、サイバー攻撃の被害事例に着目し、どのような影響やリスクがあるのかについて解説する。

サイバー攻撃を受けるとどうなる?

サイバー攻撃を受けてしまうと、情報漏洩、システム停止・事業継続リスク、信用失墜、金銭的損失・経済的影響といった様々なリスクに晒されます。

情報漏洩リスク

情報漏洩とは、企業や組織が管理する重要な情報が、意図せず外部に流出してしまうことです。クレジットカード情報や個人情報などの機密データが盗まれ不正使用された場合、個人情報保護法違反に該当し、企業の信頼を損ない、経済的な損失や法的な問題を引き起こす可能性があります。

サイバー攻撃や組織における管理またはシステムの設定不備・不足等が原因となり、個人情報を含む機密情報の漏洩事故および事件が相次いで発生しています。東京商工リサーチの調査によれば、2023年に上場企業とその子会社で個人情報漏洩または紛失事故・事件を公表したのは175社、漏洩した個人情報は約4,090万人分とされています。個人情報の漏洩または紛失事故・事件は年々増加の傾向にあり、同社の調査結果を見ても2023年は社数では過去2番目、事故・事件の件数は2012年以降の12年間で過去最多を更新しました。

東京商工リサーチ 2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査画像
出典:東京商工リサーチ 2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査

関連リンク:「情報漏えいの原因と予防するための対策

金銭的損失・経済影響

機密情報等の漏洩が発生すると、その復旧作業に莫大なコストがかかります。データ侵害によりかかる世界平均コストも増加傾向にあるほか、データ侵害により信用失墜につながることで、深刻なビジネス上の被害を引き起こします。

IBM「2023年「データ侵害のコストに関する調査」画像
出典:IBM「2023年「データ侵害のコストに関する調査」

システム停止・事業継続リスク

システム停止・事業継続リスクとは、サイバー攻撃によって企業・組織の業務システムが停止したり、サービスが利用できなくなったりすることで、事業継続が困難になるリスクを指します。システムが停止すると、業務プロセスやサービス提供が滞り、顧客に影響を及ぼす可能性があります。さらに顧客の個人情報情報漏洩やデータ損失が発生すると、企業の信頼性が損なわれる恐れもあります。

ランサムウェア被害にあってしまった場合のリスク

ランサムウェアとはマルウェアの一種で、感染したコンピュータやシステムにあるファイルやデータを暗号化し、アクセスできないようにした上で、元に戻すことと引き換えに金銭(身代金)を要求するものの総称です。

ランサムウェアの攻撃手口は、時間とともに大きく進化し、より複雑かつ高度になっています。ランサムウェア攻撃の対象がクライアント(従来のランサムウェア攻撃の対象)から、サーバや業務システムを標的にした攻撃へ変化したのは、サーバが停止した場合の企業・組織への影響が大きく、攻撃者にとってより多くの身代金が手に入る可能性が高いためです。サーバでは組織内の重要情報が保存されており、データ暗号化解除の脅迫をかけやすいため、企業・組織のサーバが攻撃対象に狙われやすくなります。

関連記事:「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

信用失墜リスク

信用失墜リスクは、企業がサイバー攻撃によりブランドイメージが損なわれ、信頼性が失われる可能性のことを指します。もしも顧客データが漏洩した場合、顧客からの信頼を損なうだけでなく、将来的に新たなビジネスチャンスを逸することにもつながります。さらに、パートナーとの信頼関係を取り戻すのに時間がかかることも、信用失墜リスクの一環として考慮する必要があります。

日本国内で発生したサイバー攻撃の事例

Log4Shellは、Javaのログ処理ライブラリApache Log4j2に見つかったリモートコード実行の脆弱性*1です。攻撃者は攻撃文字列を送り、脆弱性のあるLog4j2のシステム上で任意のコードを実行させます。脆弱性を悪用した攻撃は2021年12月、日本でも確認されました。

Log4Shellの脆弱性を悪用したランサムウェア「NightSky」による攻撃も確認されました。2022年1月、国内ITサービス企業がランサムウェア「Night Sky」によるサイバー攻撃を受けました*2。攻撃者は2021年10月から侵入を開始し、12月31日にランサムウェアを使用し社内のファイルを暗号化しました。感染させたことで、社内システムの情報が流出し、一部はインターネット上で公開されました。この攻撃により、同企業は一部業務の復旧に数日を要し、セキュリティ強化策を講じました。

マルウェア「Emotet」による攻撃

Emotetはメールアカウントやパスワード、アドレス帳、メール本文といった情報窃取と、感染拡大を引き起こすマルウェアです。感染したシステムは、Emotetギャングらに情報を盗まれるばかりか、さらに悪質なプログラムをインストールされる恐れがあります。Emotetは、メールを介したマルウェア感染で知られ、添付ファイルやリンクを通じてシステムに侵入します。

<IPAに寄せられたメール被害事例>

・docファイル添付型
・URL記載型
・zipファイル添付型
・PDF閲覧ソフトの偽装
・ショートカットの悪用
・Excelファイルの悪用

参考:https://www.ipa.go.jp/security/emotet/situation/index.html

また、警察庁の解析によると、EmotetはGoogle Chromeに保存されたクレジットカード情報を盗み出す新機能が追加されました。この機能は、Chromeに暗号化されて保存されたクレジットカード番号、名義人氏名、有効期限を外部に送信します。Emotetはこれに加えて、情報を復号するための鍵も盗むため、感染した場合、クレジットカード情報が第三者に漏洩する危険があります。

https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/koho/detect/20201211.html

サプライチェーン攻撃の脆弱性を悪用した攻撃

2022年3月、国内大手自動車メーカーが部品仕入取引先のマルウェア感染被害によるシステム障害を受け、国内の全14工場の稼働を停止する事態に追い込まれました*3この事件は、サプライチェーン攻撃の深刻な影響を示す典型的な例となり、中小企業でもサイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。

ランサムウェア攻撃では通常、被害者のデータを不正に暗号化し、復号のための金銭を要求します。しかし、近年ではデータを窃取し、公開する脅迫(いわゆる「二重脅迫」)も行われています。特に中小企業ではセキュリティに関する予算や人員が十分でない場合が多く、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなっています。

国内大手自動車メーカーの事例は、サプライチェーン攻撃が大手企業に与える影響の大きさを示しており、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を含む関係省庁からもサイバーセキュリティ対策の強化について注意喚起が出されました。

病院を狙ったランサムウェア攻撃

【医療機関を狙ったランサムウェアによる被害事例】
年月地域被害概要
2021/5大阪府医療用画像参照システムがダウンし、CTやMRIなどの画像データが閲覧できない障害が発生*4
2021/10徳島県電子カルテを含む病院内のデータが使用(閲覧)不能となった*5
2022/1愛知県電子カルテが使用(閲覧)できなくなり、バックアップデータも使用不能な状態となった*6
2022/4大阪府院内の電子カルテが一時的に使用(閲覧)不能となった
2022/5岐阜県電子カルテが一時的に停止したほか、最大11万件以上の個人情報流出の可能性が確認された*7
2022/6徳島県電子カルテおよび院内LANシステムが使用不能となった*8
2022/10静岡県電子カルテシステムが使用不能となった*9
2022/10大阪府電子カルテシステムに障害が発生し、ネットワークが停止。電子カルテが使用(閲覧)不能となった*10

2023年に影響の大きかったサイバーセキュリティ脅威

「情報セキュリティ10大脅威 2024」

2024年1月24日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、情報セキュリティにおける脅威のうち、2023年に社会的影響が大きかったトピックを「情報セキュリティ10大脅威 2024」として公表しました。

注目するべきは「ランサムウェアによる被害」「内部不正による情報漏えい等の被害」イメージ
出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
情報セキュリティ10大脅威 2024」(2024年1月24日)組織向け脅威

サイバーセキュリティ対策の必要性

セキュリティ対策がなぜ必要か?

事業活動・日常生活にかかせないIT環境では様々な個人情報や機密情報等が保管・やりとりされており、業界問わず、あらゆる組織・企業がサイバー攻撃の脅威にさらされています。万が一サイバー攻撃を受けた場合、顧客情報の漏えいやシステムの停止による経済損失、コストの発生など様々な被害・影響があります。日本でも経済産業省などからサイバーセキュリティ対策の強化について注意喚起*11が出されています。リスクを少しでも低減するために組織でセキュリティ対策を実施することが求められます。

サイバーセキュリティ対策が必要な理由は、情報技術の進化に伴い保護すべき情報量が増加し、サイバー攻撃が高度化しているからです。サイバー攻撃は、データの取得、改ざん、破壊を目的とし、企業や個人に甚大な損害を与える可能性があります。企業では、紙の文書だけでなく、デジタルデータも徹底して保護する必要があります。一度情報漏洩が起こると、信用問題や多額の損害賠償に繋がる可能性があるため、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。

まとめ

サイバー攻撃は企業や組織にとって深刻なリスクをもたらし、情報漏洩、システム停止、事業継続の困難、信用失墜、金銭的損失や経済的影響などを引き起こします。情報漏洩では、クレジットカード情報や個人情報などの機密データが外部に流出し、企業の信頼を損なうと共に経済的損失や法的問題を引き起こすことがあります。またサイバー攻撃による業務システムの停止は、業務プロセスやサービス提供に大きな影響を与え、システム停止や事業継続のリスクを高めます。さらに、サプライチェーン攻撃や医療機関を狙ったランサムウェア攻撃など、特定の業界を狙った攻撃も報告されており、これらは企業や組織に深刻なダメージを与える可能性があります。

サイバー攻撃に備えるためには、組織でセキュリティ対策の実施に取り組むことが重要です。適切なセキュリティ対策を講じることで、リスクを低減し、情報漏洩やその他の被害を防ぐことが可能です。

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サイバー攻撃とは何か -サイバー攻撃への対策1-

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サイバー攻撃とは何か?どのような攻撃の種類があるのか?について紹介しつつ、なぜ対策をしなければならないのかを理解するため、今回の記事では、言葉の定義や目的について解説する。

サイバー攻撃とは

経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」によると、サイバー攻撃とは、「コンピュータシステムやネットワークに、悪意を持った攻撃者が不正に侵入し、データの窃取・破壊や不正プログラムの実行等を行うこと。」とあります。

サイバー攻撃を受けてしまった場合、情報窃取、不正アクセス、データ改ざん、破壊といった様々なリスクに晒されます。

情報窃取

顧客情報、機密情報など、組織にとって重要な情報が窃取され、悪用される可能性があります。これにより、個人情報の漏えい等のインシデント発生にもつながり、企業の信用失墜や顧客離れ、さらには多額の損害賠償責任を負う可能性があります。

不正アクセス

システムやネットワークに不正アクセスされると、管理者のアカウントのなりすまし・乗っ取りなどのリスクがあります。不正アクセスは、業務停止や経済的損失、情報漏洩などの二次被害を引き起こす可能性もあります。

データ改ざん

攻撃者よってデータが意図的に改ざんされてしまうと、情報の信頼性が損なわれ、顧客との信頼関係に影響を及ぼす可能性があります。またデータ改ざんはサイバー攻撃によるものだけでなく、システムエラーによっても発生する可能性があります。

破壊

攻撃者によりシステムやデータが故意に破壊されることで、業務停止や経済的損失、情報漏洩などの被害が発生する可能性があります。システムの復旧には膨大な日数とコストがかかることになります。

近年、サイバー攻撃は巧妙化、多様化しており、企業や組織にとって深刻な被害を引き起こす可能性があります。攻撃の形態は多岐にわたりますが、結果として経済的損失、ブランドイメージの損失、顧客信頼度の低下などが発生することがあります。経済的損失は、直接的な金銭的損失のほか、事後のインシデント調査費用などが含まれます。特に、顧客情報が漏洩した場合、顧客からの信頼を失い、顧客離れにつながる可能性があります。また、ブランドイメージの損失は、長期的に企業の価値を下げ、新規顧客の獲得や既存顧客の維持が困難になることもあります。サイバー攻撃によって企業の業務システムが狙われた場合、業務の継続性が脅かされ、長期的な運営に支障をきたすこともあります。これらの理由から、サイバー攻撃の予防と対策は、企業・組織にとって非常に重要な課題となっています。

サイバー攻撃は多種多様

事業活動に欠かせないIT環境では、様々な個人情報や機密情報等が保管・やりとりされており、サイバー攻撃者にとってそれらは宝の山です。そのため、今この瞬間もあらゆる企業・組織がサイバー攻撃の脅威にさらされています。

警察庁の「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」の調査によれば、令和5年上半期におけるサイバー空間の脅威の情勢やサイバー事案の検挙状況の要点として、「DDoS攻撃による被害とみられるウェブサイトの閲覧障害」、「クレジットカード不正利用被害額及びインターネットバンキングに係る不正送金被害の増加」、「ノーウェアランサム」による被害」等について、被害が増加するなど特に注視すべき脅威として捉え、取り上げて紹介しています。

サイバー攻撃の手口は進化し続けている

サイバー攻撃の手口は、時間とともに大きく進化し、より複雑かつ高度になっています。

初期のランサムウェア攻撃は主に「バラマキ型」と呼ばれる手法を用いていました。この手法では、攻撃者はランダムに多くのコンピュータにマルウェアを配布し、その中の一部が感染するのを期待していました。このアプローチは、フィッシングメールや悪意のあるウェブサイトを通じて、広範囲にわたる無差別的な攻撃を行うことが特徴です。しかし、最近では攻撃手法が特定の組織や個人をターゲットにした「標的型攻撃」へとシフトしています。これは、特定の企業や政府機関など高い価値のあるデータを持つターゲットに焦点を当てたもので、攻撃はより精密かつ計画的に行われます。攻撃者はしばしば、その組織のセキュリティ体制やネットワーク構造を事前に調査し、特定の脆弱性やセキュリティの盲点を狙います。

サイバー攻撃の種類

サイバー攻撃は多岐にわたり、その目的やターゲットによって様々に分類されます。以下では、目的別とターゲット別の主要なサイバー攻撃の種類を説明します。

  • マルウェア攻撃
  • ランサムウェア攻撃
    あらゆるサイバー攻撃手法を用いてデータを暗号化し、身代金を要求する攻撃。APT攻撃やサプライチェーン攻撃の目的としての破壊活動につながる可能性もある
  • 標的型攻撃
    特定のターゲットに的を絞り、実行されるサイバー攻撃
  • サプライチェーン攻撃
    様々な攻撃手法を用いて、サプライチェーンの中の弱点を狙って、サプライチェーンの内部に侵入することを目的とする。最終的にAPT攻撃に発展することや、ランサムウェア攻撃に発展することも
  • フィッシング攻撃
    偽サイトやそこに誘導するメール等によって、無差別に被害者が罠にかかるのを待つサイバー攻撃
  • ゼロデイ攻撃
    修正プログラムが提供される前の、修正パッチ未適用なソフトウェアやアプリの脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を悪用した攻撃
  • DDos攻撃
    ネットワークを構成するサービスや機器に対して大量のパケットを送りつけ、アクセスしにくい状況にしたり、使用停止状態に追い込んだりするなど、機能を停止させるサイバー攻撃
  • 総当たり攻撃(ブルートフォース)
    不正アクセスを行うために、パスワードを総当たりで試しログインを試みる攻撃
  • SQLインジェクション攻撃
    データベースを操作する「SQL」という言語を悪用して、Webアプリケーションの入力フィールドに悪意のあるSQL文を入力するなどして行うサイバー攻撃

有名なサイバー攻撃事例を振り返る

世界のサイバー攻撃事例

2017年に大規模な被害をもたらしたランサムウェア「WannaCry」は、Microsoft Windowsの未修正の脆弱性を悪用することで、世界中のコンピュータに急速に拡散しました。この脆弱性は、アメリカ国家安全保障局(NSA)が開発したとされるハッキングツールから漏洩したもので、WannaCryはこれを利用して無差別にシステムに侵入しました。攻撃の手口は、感染したコンピュータのファイルを暗号化し、被害者に身代金の支払いを要求するものでした。支払いはビットコインで行われることが多く、支払われない場合、ファイルは復号されずに失われると脅迫されました。社会への影響は甚大で、病院、学校、企業、政府機関など、世界中の数十万台のコンピュータが影響を受けました。特に医療機関では、患者の記録へのアクセスが妨げられ、治療に支障をきたす事態も発生しました。WannaCryは、サイバーセキュリティの重要性と、ソフトウェアの更新の必要性を広く認識させる契機となりました。

国内のサイバー攻撃事例

2022年3月、国内大手自動車メーカーが部品仕入取引先のマルウェア感染被害によるシステム障害を受け、国内の全14工場の稼働を停止する事態に追い込まれました。この事件は、サプライチェーン攻撃の深刻な影響を示す典型的な例となり、中小企業でもサイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。本事例は、サプライチェーン攻撃が大手企業に与える影響の大きさを示しており、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を含む関係省庁からもサイバーセキュリティ対策の強化について注意喚起が出されました。

まとめ

サイバー攻撃は、悪意ある攻撃者がシステムやネットワークに不正に侵入し、データの盗難、破壊、または不正プログラムを実行することを指します。企業や組織はこのような攻撃を受けると、重要な情報が盗まれる、システムが乗っ取られる、データが改ざんされる、または破壊されるなどのリスクにさらされます。これらは、顧客情報の流出、信用失墜、業務停止、経済的損失など、深刻な結果を招く可能性があります。

サイバー攻撃はますます巧妙で多様化しており、特にIT環境が事業活動に不可欠な今日では、あらゆる企業や組織が攻撃の脅威にさらされています。攻撃手法には、マルウェア攻撃、ランサムウェア攻撃、標的型攻撃、フィッシング攻撃などがあり、攻撃者は常に新しい手口を開発し続けています。

有名なサイバー攻撃の例としては、2017年に世界的な被害をもたらしたランサムウェア「WannaCry」や、国内大手自動車メーカーがサプライチェーン攻撃により全工場の稼働を停止させた事例が挙げられます。これらの事例は、サイバーセキュリティの重要性と、システムの定期的な更新やセキュリティ対策の強化がいかに重要かを示しています。サイバー攻撃から保護するためには、企業や組織が予防策を講じ、最新のセキュリティ情報に常に注意を払うことが必要です。

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IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる
― 注目が高まる犯罪のビジネス化 ―

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瓦版vol.20アイキャッチ画像(犯罪ビジネスとハッカーのイメージ写真)

近年、サイバー犯罪はビジネス化が危惧されています。これまで高度な技術をもつ人だけが実行できていたサイバー攻撃も、攻撃のための情報がサービスとして公開されていたり、ツールを活用したりすることで、誰でも容易に実行することが可能となっています。犯罪のビジネス化が進む世の中で我々が対抗できる手段はあるのでしょうか。本記事では、注目される犯罪のビジネス化としてRaaSやDDoS攻撃などのビジネスモデルをご紹介しつつ、サイバー攻撃に備えるにはどのような手段をとればいいのか、という点について解説いたします。

「犯罪のビジネス化」が「情報セキュリティ10 大脅威」に5年ぶりのランクイン

2023年1月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2023」(組織・個人)を発表しました。組織編の脅威に2018年を最後に圏外となっていた「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が再びランクインしました。

アンダーグラウンドサービスとは、サイバー攻撃を目的としたツールやサービスを売買しているアンダーグラウンド市場で取引が成立し、経済が成り立つサービスのことです。これらのツールやサービスを悪用することで、攻撃者が高度な知識を有していなくとも、容易にサイバー攻撃を行うことが可能となります。そのため、ランサムウェアやフィッシング攻撃といったサイバー攻撃がますます誘発され、脅威となるのです。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2023」(2023年3月29日)組織向け脅威

ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware-as-a-Service)

勢いを増しているサイバー犯罪のビジネスモデルとしてRaaS(Ransomware-as-a-Service)があります。RaaSとはランサムウェアが主にダークウェブ上でサービスとして提供されている形態のことで、RaaSを利用した攻撃者は、得た身代金の何割かを開発者に取り分として渡す仕組みになっていて、そうやって利益を得ていることなどがあります。

ランサムウェアが増加している理由についてはSQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
ランサムウェア攻撃に効果的な対策‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

図1:Raasビジネスを利用した攻撃の一例

Raasビジネスを利用した攻撃の一例画像

昨今のランサムウェア攻撃の特徴として、ランサムウェア攻撃により行われる脅迫は暗号化したデータを復旧するための身代金の要求に加えて、支払わなければ奪取したデータを外部に公開するといった二重の脅迫から、さらに支払うまでDDoS攻撃(※)を行うといった三重の脅迫から、さらにはそれでも支払いを拒否された場合には、盗んだ情報をオークションで売られてしまうといった事態に発展するなど、より被害が拡大しています。
※DDoS攻撃・・・多数の発信元から大量のデータを送り付けることでサーバを停止させる攻撃のこと。

図2:データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫

データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫画像

また、従来のランサムウェアの攻撃の手口は不特定多数に対して無差別に行うばらまき型と呼ばれる手法でしたが、近年では攻撃手法が多様化しています。以下の表は攻撃手法と事例です。

年月攻撃手法事例
2020/6標的型ランサムウェア攻撃 国内自動車メーカーの社内システムが、EKANSの攻撃を受け、日本を含む各国拠点で一時生産停止に陥るなど大きな被害を受ける。
2022/1USBデバイスを使用した
ランサムウェア攻撃
米国で攻撃者が官公庁や有名販売サイトを装い、パソコンに接続することでランサムウェアを感染させる細工を施したUSBデバイスを送付。2021年8月には運輸および保険業界の企業、11月には防衛産業企業に送られており、FBIが注意喚起を行う*12
2022/10サプライチェーン攻撃に
よるランサムウェア感染
2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道があった。

取り上げた事例の詳細について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
2022年6月の事例:「ランサムウェア最新動向2021 ―2020年振り返りとともに―
2022年10月の事例「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

このように、被害者が身代金の要求により応じやすくなるような脅迫に変化し、また攻撃手法も多様化することにより、攻撃の巧妙化によって高い収益をあげられることから、今後もランサムウェア攻撃は続くことでしょう。その背景には攻撃の実行ハードルを下げるRaaSの存在があることが考えられます。

フィッシング攻撃やDDoS攻撃もサービス化へ

フィッシング攻撃とは、有名企業等になりすますなどして偽装したメールやSMSにより、本物そっくりの偽サイトに誘導したり、悪意ある添付ファイルを実行させようとしたりするサイバー攻撃です。このフィッシング攻撃により、マルウェアを使った重要情報の奪取や、ランサムウェアの感染拡大などを行う事例*2も確認されています。

2022年11月から感染が再拡大しているマルウェア「Emotet」も、この手口を利用することで拡大しました。Emotetに感染し、メール送信に悪用される可能性がある.jpメールアドレスの数は、Emotetの感染が大幅に拡大した2020年に迫る勢いとなっています。

図3:Emotetの攻撃例イメージ図

Emotetの攻撃例イメージ図画像

フィッシング攻撃もサービス化が進んでいます。2022年9月、米国のResecurity社はダークウェブにおいて二要素認証を回避する新たなPhaaS(Phishing-as-a-Service)が登場したと発表しました。このPhaaSは「EvilProxy」と命名され、二要素認証による保護を回避する手段として、「リバースプロキシ」と「クッキーインジェクション」を使用し、被害者のセッションをプロキシング(代理接続)するというものです。このような複雑な仕組みの攻撃がサービス化されたことにより、今後フィッシング攻撃がますます活発化することが考えられます。

そのほかにも、直近では米国で定額料金を支払うことで代行してDDoS攻撃を行うサービス「DDoS攻撃代行サブスクリプションサービス」を提供するサイトの運営者が逮捕される事件*3がありました。DDoS攻撃を行う目的は「金銭目的」「嫌がらせ」「抗議の手段」「営利目的」など攻撃者の背景によって異なります。逮捕に至ったこのサービスでは2000人以上の顧客を抱えており、これまでに20万件以上のDDoS攻撃を実行したと報道がありました。ここからみえてくるのは、様々な事情を抱えた攻撃者にとって、「求められているサービス」であったということです。

犯罪ビジネスサービス利用者の標的にならないために

ここまでランサムウェアやフィッシング等のサイバー攻撃がビジネス化されている例をみてきました。このように犯罪に使用するためのサービスは、アンダーグラウンド市場で取引され、これらを悪用したサイバー攻撃が行われるというビジネスモデルが存在しているのです。サービスを利用するだけで、高度な知識をもたない攻撃者であっても、容易にサイバー攻撃を行えることから、犯罪のビジネス化は今後さらに進み、特にランサムウェア攻撃やフィッシング攻撃は活発化することが考えられます。

これらの犯罪ビジネスサービス化の拡大により増えることが想定されるランサムウェア攻撃とフィッシング攻撃に対して、攻撃を行う機会を与えないために以下のような基本的な対策が有効でしょう。

ランサムウェア対策

■定期的なバックアップの実施と安全な保管
 (物理的・ネットワーク的に離れた場所での保管を推奨)
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は、バックアップ時のみパソコンと接続
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は複数用意する
 ⇒バックアップから復旧(リストア)可能であることの定期的な確認
■OSおよびソフトウェアを最新の状態に保つ
■セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ
■認証情報の適切な管理(多要素認証の設定を有効にするなど) など

フィッシング対策

■ソフトウェアを最新にするなどパソコンやモバイル端末を安全に保つ
■従業員教育を行う
 ⇒不審なメールやSMSに注意する
 ⇒メールやSMS内に記載されたURLを安易にクリックしない
 ⇒メールやSMSに添付されたファイルを安全である確信がない限り開かない
■標的型攻撃メール訓練の実施 など

なお、セキュリティ対策は一度実施したらそれで終わりというものではありません。サイバー攻撃の手口は常に巧妙化し、攻撃手法も進化し続けているためです。脆弱性診断を定期的に行うなど、継続してサイバー攻撃に備えていくことが必要です。また、セキュリティ対策を実施した後も、侵入される可能性はないのか、万が一感染した場合はその影響範囲はどの程度かといった現状把握を行い、実装したセキュリティ対策の有効性を確認することが大切です。

BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

<侵入前・侵入後の対策の有効性確認>

BBSecでは、第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を実現する、「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

※外部サイトにリンクします。

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狙われる医療業界
―「医療を止めない」ために、巧妙化するランサムウェアに万全の備えを

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いま、医療機関を標的としたランサムウェア攻撃が増え続けています。
足元で顕著になっているのは、攻撃による被害インパクトが大きい特定のシステム・事業を狙い、「より確実に、より高額の」身代金を得ることをもくろむ、手の込んだ持続的な攻撃です。事業継続に直結するシステムや機微情報等が保存されているシステム、事業が中断・停止した場合に甚大な影響をもたらす重要インフラなどが標的にされやすく、医療機関のシステムはその最たるものといえます。本記事では、医療機関を狙うランサムウェアの現状を紹介し、取りうる対策について考えます。

勢いづく攻撃、日本も「対岸の火事」ではない

米国では、2020年秋、数週間のうちに20を超える医療機関でランサムウェア攻撃が確認されました。*4下記にその一部を紹介しますが、パンデミック下で医療現場が逼迫(ひっぱく)する中、追い打ちをかけるように攻撃の勢いが増しているのです。10月末には、米CISA、FBI、米保健福祉省が共同でセキュリティ勧告を発する事態となっています(後述)。

表1:医療機関を狙ったランサムウェア被害(一部)

2020年9月 Universal Health Services(米国の医療サービス最大手)
がシステム停止*2
ニュージャージー州の大学病院が患者データを暗号化
され、一部データを不正に公開される*3
2020年10月 オレゴン州の病院でコンピュータシステムが使用不能に*4
ニューヨーク州の複数の病院でシステムが使用不能に*5

なお、日本では2018年10月、近畿地方の公立病院がランサムウェア攻撃の被害を受け、一部の患者カルテ情報が暗号化されてしまい、診療記録等の参照ができない状況に陥りました。今後攻撃者がターゲットを広げ、米国のように日本国内でも被害が活発化するのは、もはや時間の問題かもしれません。

攻撃者はなぜ医療業界を狙うのか

もちろん、攻撃を受けた場合の被害インパクトが大きい(=高額の身代金を設定し得る)重要インフラとみなされるのは、医療のみではありません。日本では、医療のほか、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、水道、物流、化学、クレジット、石油という、計14分野が重要インフラと位置づけられています。では、なぜ攻撃者は医療業界に目をつけるのでしょう。それは、次のような特徴があるためです。

  • 患者に関する情報はブラックマーケットで特に高額で売買される
  • 「事業の停止が直接生命に関わる」という点が、身代金要求に応じさせるうえでの強力な要因になる
  • 地域医療連携など医療機関同士のやり取りでは、インターネットVPNやインターネット(TLS 1.2)、またはIP-VPN(地域医療連携専用閉域ネットワーク)が採用されており、 連携先の端末のセキュリティ対策がされていない、情報共有が上手くされていないという課題がある
  • 診断・医療に用いられるシステムは多くの場合非常に高額で長期使用を前提として作られており、コスト・技術的理由などから、古いまま使われ続けている傾向がある
  • 情報セキュリティの三要素(C(機密性)、I(完全性)、A(可用性))のうち、医療では可用性が何よりも重視される傾向があり、相対的に他の2要素への対応がおろそかになりがち

また、昨今の医療情報は、患者のデータだけではなく、IoT等の新技術やサービス等の普及により、様々な端末とつながっている場合があり、攻撃者側からすれば、「カネになるビジネス」として狙われるターゲットとなり得ます。

なお、弊社が2020年8月、国内のIT担当者を対象に実施した「脆弱性管理に関するアンケート」の結果では、医療業界は、情報システム部門を持たず別部門の担当者が兼務している状況が他業種よりも顕著で、かつ、情報システム部門を有する場合もその規模が小さいことが明らかになっています。セキュリティへの対応に十分なリソースを避けないという構造的な問題も、攻撃者を引き付ける一因といえるでしょう。

【参考情報】
医療機関では古いシステムが使われ続けている傾向が強い

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い利用が急増しているG SuiteやMicrosoft 365については、セキュリティのチェックリストや推奨設定例が公開されていますので、以下にご紹介します。古いシステムが使われ続けているという傾向に関し、医療システムに関する世界最大規模の業界団体HIMSS(Healthcare Information and Management Systems Society)による年次調査の結果を紹介しましょう(下図)。 組織内で何らかの旧式化したシステム(レガシーシステム)を使っている、という回答は、2020年において8割に達しています。最も多いのはWindows Server 2008で50%の組織に存在、昨年サポートが終了したWindows 7は49%、さらに前の世代のWindows XPは35%です。この業界が攻撃者に特に好まれることに納得する結果といえないでしょうか。


「2020 HIMSS Cybersecurity Survey」より
出典:https://www.himss.org/sites/hde/files/media/file/2020/11/16/2020_himss_cybersecurity_survey_final.pdf

なお、身代金目的とは異なりますが、このパンデミック下、ワクチン開発競争を背景に研究情報を狙った国家ぐるみのサイバー攻撃が活発化しているという点も、医療機関に対する攻撃増加の追い風になっているとみられます。

ランサムウェア攻撃の変貌2020

従来のランサムウェアでは、ウイルスを添付したメールのばらまき、悪意あるWebページへの誘導などにより、不特定多数を対象に広範な攻撃を行うことで身代金獲得を狙う、というやり方が主流でした。現在も依然としてそうした形の攻撃は存在しますが、前述のように、「より確実に、より高額の」身代金を獲得することを狙った変化が目につきます。最近のランサムウェアの特徴として指摘されているのは主に次の2点です。

人手による攻撃 ‐標的を定めて周到に準備‐

ランサムウェアを自動化されたやり方で幅広くばらまくのではなく、特定の組織を標的にして手動で侵入を試み、侵入成功後はネットワーク内に潜伏してさまざまな活動を行い、攻撃の成果を最大化することを狙います。こうした人手による攻撃には、APT(Advanced Persistent Threat:持続的標的型攻撃)との類似点が多く、その結果、ランサムウェア攻撃への対策にはAPTと同水準の取り組みが求められるようになっています。

二重の脅迫 ‐より悪質なやり方で被害者を追い詰める‐

「身代金を払え」という脅迫に加え、「身代金を支払わないと機密データを公開するぞ」という脅迫を重ねて行い、支払いを迫ります。実際にデータを公開されてしまったという事例が複数確認されているほか、データが破壊されてしまったケースも出ており、攻撃を受けた場合のダメージの大規模化、深刻化がみられます。 現在、こうした特徴を持つ新しいタイプのランサムウェアがいくつも生み出され、世界各地で猛威を振るっているのです。詳細については「変貌するランサムウェア、いま何が脅威か‐2020年最新動向‐」にまとめていますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。

ランサムウェア対策への取り組み ‐医療情報システムに関するガイドライン‐

先に触れたとおり、ランサムウェア攻撃の活発化を受け、米CISA、FBI、米保健福祉省はセキュリティ勧告「Ransomware Activity Targeting the Healthcare and Public Health Sector」を公表しました。同勧告では、各種ランサムウェアの分析結果を踏まえ、下記のようなベストプラクティスを提示しています。

図:ネットワークセキュリティ・ランサムウェア対策に関するベストプラクティス

Ransomware Activity Targeting the Healthcare and Public Health Sector」より

こうしたベストプラクティスを遂行するうえで重要なのが、ステークホルダー間の効果的な連携です。医療機関では、部門や職務によって異なる企業の製品やサービスが用いられており、システム連携はしばしば複雑です。いま、医療業界が攻撃者の明確な標的となる中、医療機関、および医療機関向けにサービスや製品を提供する事業者は、自らの責任範囲を理解したうえで、これまで以上に緊密な連携を図り、システムのセキュリティ強化に取り組んでいく必要があります。

なお、日本においては、医療情報システムの安全管理に関し、技術・制度的な動向を踏まえてガイドラインの継続的な策定・更新が行われており、現時点で医療機関、事業者のそれぞれを対象とした下記2種が提示されています。責任分界点の考え方や合意形成の考え方など、連携をより効果的にするための課題も取り上げられており、目を通しておきたい資料です。

表2:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

1)厚生労働省
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第5版、2017年5月)
  • 対象読者は、医療情報システムを運用する組織の責任者
  • 医療情報の扱いを委託したり情報を第三者提供したりする場合の責任分界点の考え方を示し、医療システムを安全に管理するために求められる対応を規定
2)経産省・総務省
医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(2020年8月)
  • 対象読者は、医療システムやサービスを提供する事業者。なお、医療機関等と直接的な契約関係のない事業者も医療システム等のサプライチェーンの一部として機能している場合、このガイドラインの適用範囲となる
  • 事業者に求められる義務と責任の考え方、医療機関等への情報提供と合意形成の考え方、リスクマネジメントの実践やリスク対応のための手順などを規定

APTと同水準の対策を立て、全方位での備えを

繰り返しになりますが、現在活発化しているランサムウェア攻撃の手口は高度かつ執拗です。守る側には、従来よりも踏み込んだ、APTと同水準の対策が求められます。そこで鍵になるのは、「侵入される」「感染する」ことを前提とした取り組みです。想定される被害範囲をあらかじめ洗い出し、優先順位をつけて対策をとりまとめていくことで、万一攻撃を受けた場合でもその被害を最小化することが可能になります。

なお、こうした対策を立てるにあたっては、セキュリティ専門企業が提供しているサービスもうまく活用しましょう。たとえば、想定される被害範囲を把握する際は、システムへの擬似攻撃等をメニューに含んだサービスを利用すると、精度もスピードも高められるでしょう。 激化するランサムウェア攻撃から医療システムを守るため、医療機関、関連事業者をはじめとするステークホルダーが連携し、全方位的なセキュリティに取り組むこと。それは、日々現場で闘う医療者を支えるための社会的ミッションともいえるでしょう。


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