2025年4Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

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米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)から公開されている「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」は、実際に攻撃に悪用された脆弱性の権威あるリストとして、組織のセキュリティ対策の優先順位付けに不可欠なツールとなっています。本記事では、KEVカタログに2025年10月1日~12月29日に登録・公開された脆弱性の傾向を整理・分析します。

本記事は2025年1Q:第1四半期~3Q:第3四半期の分析レポートに続く記事となります。過去記事もぜひあわせてご覧ください。
2025年1Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
2025年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
2025年3Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

はじめに

2025年第四四半期(10月~12月)における既知の悪用された脆弱性の統計分析レポートです。本記事は最新のデータから見える傾向を解説します。前回までの分析ではMicrosoftやCisco製品への攻撃の多さや古い脆弱性が依然悪用されている実態が明らかとなりました。今回は第四四半期のデータを掘り下げ、攻撃トレンドの変化やリスクの深刻度を検証します。経営層に有用な全体像の把握と、技術担当者向けの詳細な分析を両立させ、組織が取るべき対策についても提言します。

2025年4Qの統計データ概要

2025年第四四半期に新たにKEVに追加・公開された脆弱性は62件でした。第三四半期(51件)から増加に転じ、2025年1月~12月29日時点で245件(2024年累計186件から約30%増)となっています。まずは月別推移や脆弱性の種類・深刻度について、データの全体像を俯瞰し、特にランサムウェア関連の脆弱性や影響度の大きい脆弱性、自動化攻撃が可能な脆弱性に着目します。

登録件数の月別推移

10月に追加件数が31件と突出し、11月は11件、12月は20件となりました(図1参照)。月ごとのばらつきが大きく、10月に集中して脆弱性が公表・追加されたことが分かります。これは各メーカーの定例アップデート直後に既知悪用事例が判明したケースが多いためと考えられ、特定の月に攻撃が急増する傾向が引き続き見られます。4Q全体では3Qからの増加により、年末にかけて脅威が再び活発化したことを示唆します。

2025年4Q 月別KEV登録件数の推移グラフ
図1:2025年4Q 月別KEV登録件数の推移グラフ

主要ベンダー別の内訳

4Qに新規追加された脆弱性のベンダーを見ると、Microsoftが10件と突出して最多でした。次いでOracle、Fortinet、Gladinetが各3件、Google、Samsung、Kentico、Android、OpenPLC、Dassault Systèmes、WatchGuardなどが各2件で続きます。3Qで多かったCiscoは1件に留まり、Microsoft製品への攻撃集中が際立つ結果です。一方、新たにGladinet(クラウドストレージ)やOpenPLC(産業制御システム)といったベンダーの脆弱性が複数追加されており、攻撃対象の幅が広がっていることが分かります。これは企業向けソフトウェアから家庭用/産業用機器まで攻撃者の関心が及んでいることを示し、ITインフラ全体で対策が必要です。

脆弱性タイプ(CWE)の分布

CWE脆弱性タイ
CWE-7875範囲外の書き込み
CWE-784OSコマンドインジェクション
CWE-8623認可の欠如
CWE-2843不適切なアクセス制御
CWE-202不適切な入力検証
CWE-4162解放済みメモリの使用
CWE-4342危険なタイプのファイルのアップロード許可
CWE-222パストラバーサル
CWE-792クロスサイトスクリプティング (XSS)
CWE-3062重要な機能の使用に対する認証の欠如
2025年4Q CWE分布表

悪用された脆弱性の種類としては、範囲外の書き込み(CWE-787)が5件で最多となりました。次いでOSコマンドインジェクション(CWE-78)が4件で続きます。認証・認可に関わる欠陥(CWE-862, CWE-284, CWE-306)も合計8件と多く、アクセス制御の不備が依然として攻撃者に悪用されやすいことが分かります。また、メモリ管理上の欠陥である解放済みメモリの使用(CWE-416)や範囲外の書き込み(CWE-787)など、低レベルのプログラムバグも上位を占めており、メモリ安全性の欠陥が攻撃に利用されるケースが増えています。

過去頻出したパストラバーサル(CWE-22)も複数含まれており、データから見ると、入力検証検証の不備を突いた攻撃(インジェクション系)、認証・認可の不備、そしてメモリ安全性の欠如という3つの古典的な脆弱性カテゴリーが依然悪用の中心であることが読み取れます。

攻撃の自動化容易性(Automatable)

4Qに登録された脆弱性のうち、約48%(30件)は自動化攻撃が容易である「Yes」と分類されました。これは自動スキャンやマルウェアボットによる大規模攻撃に適した脆弱性が増えたことを意味します。残る52%(32件)は「No」(手動操作や特定条件が必要)ですが、スクリプトキディでも悪用できる脆弱性が半数近くを占める状況は深刻です。(2025年年間累計は図3参照)攻撃者は脆弱性を迅速にスキャン・悪用する自動化ツールを駆使するため、組織側も早期パッチ適用と防御網の自動化で対抗する必要があります。

攻撃の自動化容易性“Yes/No”割合の円グラフ
図2:攻撃の自動化容易性“Yes/No”割合の円グラフ(2025年累計)

技術的影響範囲(Technical Impact)

62件中55件(約89%)は「Total」(=脆弱性を突かれるとシステムを完全制御されてしまう深刻な影響を持つもの)でした。(図3参照)。攻撃者がシステム全面乗っ取り可能な脆弱性を優先的に悪用していることがわかります。特に単独で完全権限を奪える脆弱性は魅力的な標的であり、一方部分的な影響に留まる脆弱性も他のTotalな脆弱性と組み合わせて攻撃チェーンに利用される恐れがあります。

Total/Partial割合の比較チャート
図3:Total/Partial割合の比較チャート

※注)KEVカタログ掲載時点で実害確認済みである以上、CVSSスコアの大小や影響範囲の違いに関わらず優先度高く対処すべきである点に留意が必要です。

CVSSスコア分布

4Qに追加された脆弱性のCVSS基本値は、最大が10.0(3件)、9.8が数件含まれ、9.0以上の「Critical(緊急)」帯が約39%(24件)、7.0~8.9の「High(高)」帯が約52%(32件)を占めました。残り約10%がMedium以下です。平均値は8.48で、前四半期同様に高スコアの欠陥が大半を占めています。3QではCVSS10.0が5件含まれていましたが、4QではCritical帯比率は維持しつつ極端に満点の脆弱性は減少しました。それでもなおHigh以上が全体の9割を超えており、KEVカタログに登録される脆弱性がいかに深刻度の高いものに偏っているかを裏付けています。Criticalでなくとも攻撃に利用され得る(実際に悪用された)ことを示すデータでもあり、スコアに油断せず注意が必要です。

攻撃手法・影響の深掘り分析

前述の統計情報を踏まえ、4Qに観測された攻撃の特徴や脅威動向をさらに分析します。ランサムウェアなどサイバー犯罪による悪用事例や、国家支援型グループ(APT)の関与、古い脆弱性の再悪用など、データから読み取れるポイントを考察します。

実際にランサムウェア攻撃に悪用された脆弱性

3Qと同様、ランサムウェア攻撃での悪用が確認された事例はごく少数に留まります。4Qに追加された62件中、実際にランサムウェアに悪用されたと判明しているのは3件(約5%)でした。具体的にはオラクルの Oracle Concurrent Processing における認証に関する脆弱性/Oracle E-Business Suite(EBS)のSSRF(サーバサイドリクエストフォージェリ)の脆弱性(CVE-2025-61882および61884)やReact Server Componentsにおける認証不要のリモートコード実行の脆弱性(CVE-2025-55182)がランサムウェア攻撃で利用された例です。これらはいずれも企業の基幹システムや広く使われるフレームワークに関わる欠陥で、金銭目的の攻撃者に狙われたと考えられます。ただしKEVカタログ全体で見ると、依然として国家主体・高度なAPT攻撃での悪用例が多く、ランサムウェアによる事例は氷山の一角です。これは、KEVカタログが単なる理論上の危険性ではなく、「現在進行形で利用されている攻撃手法」を反映したリストであることを示しています。高度な攻撃者はゼロデイ脆弱性を含む様々な欠陥を悪用しており、ランサムウェア以外の脅威にも引き続き注意が必要です。

古い脆弱性の再注目

4Qに新規登録された脆弱性の中には、2024年以前に発見されたものが17件(約27%)含まれていました。最も古いものは2010年公表のMicrosoft製品の脆弱性(CVE-2010-3962)で、15年以上前の欠陥が今になって攻撃に利用されたことになります。前四半期にも2020年公表のD-Link製品脆弱性が複数追加されており、サポート切れの古い機器・ソフトが依然として攻撃対象になる実態が浮き彫りです。こうした古い脆弱性はパッチ未適用のまま放置されている資産が狙われており、攻撃者は年代を問わず利用可能な欠陥を有効活用しています。組織内に残存するレガシーシステムの脆弱性管理を怠ると、想定外に古いバグで侵入を許すリスクがあることに注意が必要です。

脆弱性悪用の手口

攻撃者の手口としては、引き続きリモートコード実行(RCE)や権限昇格といった直接的にシステム乗っ取りに繋がる攻撃が顕著です。例えば前述のCWE分布にあるCWE-787, CWE-416などのメモリ破壊型脆弱性は、悪用された場合、ターゲットプロセス内で任意コード実行やサービス停止を引き起こします。またCWE-78等のコマンドインジェクションは、サーバー上で攻撃者のコマンドを実行させる手段として多用されています。4Qにはこれらテクニカルな攻撃に加え、認証・認可の不備(CWE-306/862等)を突いて管理者権限を不正取得するケースも見られ、攻撃パターンは多岐に及びます。総じて攻撃者は最も効率よく高い権限を得られる脆弱性の組み合わせを模索しており、一つでも未対策の弱点があれば連鎖的に侵入を許す恐れがあります。

影響とリスクの評価

攻撃者は完全なシステム制御が可能な脆弱性(=「Total」)を好んで悪用します。CVSSスコアが「High」や「Critical」の深刻度であればなおさらですが、たとえ中程度でも「KEVカタログに掲載=実害発生済み」である以上、油断は禁物です。特にランサムウェア攻撃では、初期侵入に使った脆弱性自体はさほど目立たない中~高程度の欠陥であっても、内側で別のCritical脆弱性と組み合わせて横展開・権限昇格することが知られています。部分的な影響の脆弱性であっても他の欠陥と組み合わされば致命傷となり得るため、既知の悪用脆弱性は大小問わず優先的に潰す姿勢が重要です。経営層にとっても、これらの統計が示すリスクの高さを踏まえれば、脆弱性対応に十分なリソース投資と適切な意思決定を行う必要性が理解できるでしょう。

組織が取るべき対策

4Qの分析レポートの結果を受け、組織として優先的に講じるべき脆弱性管理策を整理します。経営層は戦略的視点から、現場のセキュリティ担当者は実践的観点から、以下のセキュリティ対策の実施をおすすめします。

KEV掲載脆弱性の最優先パッチ適用

CISAは継続的にKEVカタログ掲載項目を優先的に修正するよう勧告しています。自社で利用する製品・システムに該当する脆弱性が公開された場合、定例パッチを待たず緊急で対応する体制を整えましょう。自動アラートによる通知や情報資産との照合などによって見落としを防ぐ運用が有効です。特に公表から日が浅い脆弱性は攻撃者も素早く狙ってくるため、初動対応のスピードが重要になります。

主要ベンダー製品の迅速なアップデート

MicrosoftやOracle、Cisco、Googleなど主要ベンダーのソフトウェアや機器は引き続き攻撃者の主要標的です。毎月発表されるセキュリティ更新プログラム(例: Microsoftの月例パッチ)や緊急アップデート情報を速やかに収集し、適用テストを経て迅速に全社展開する習慣をつけましょう。4QではMicrosoft製品の脆弱性が突出しましたが、他ベンダーでもゼロデイが報告されればすぐ悪用される可能性があります。例えば「重要なアップデートは可能な限り2週間以内に適用」などといった内部目標を設定し、経営陣もその重要性を認識すべきでしょう。

ネットワーク機器・IoT/産業機器の点検

企業ネットワークや工場内に設置されたルーター、NAS、監視カメラ、制御システム等も忘れてはいけません。4QにもD-LinkルーターやOpenPLCなどIoT/OT機器の脆弱性が含まれており、これらは往々にしてファームウェア更新が滞留しがちです。サポート切れやアップデート未適用の機器がないか棚卸しし、可能な限り最新ファームウェアへの更新や機器リプレースを実施しましょう。どうしても更新できない場合は、ネットワーク分離やアクセス制限など緩和策を講じ、インターネットから直接アクセスできる状態を放置しないことが重要です。

脅威検知とインシデント対応の強化

脆弱性への対策だけでなく、悪用された際に速やかに検知・対応する能力も不可欠です。IPS/IDSやエンドポイント検知(EDR)のシグネチャを最新化し、KEVに掲載された脆弱性の既知の攻撃パターンやIoC(Indicators of Compromise)を監視します。CISAやセキュリティベンダーから提供される検知ルールやYARAルールを活用し、ログ分析やトラフィック監視に組み込みましょう。また万一侵入を許した場合でも、早期にそれを発見し被害を最小化できるようインシデント対応訓練を積んでおくことも有効です。

資産管理と内部教育の徹底

攻撃者に狙われる脆弱性は多岐にわたるため、まずは自社システムの全容を把握することが出発点です。ハードウェア・ソフトウェア資産の最新インベントリを整備し、使用中の全ての製品についてサポート状況や最新パッチ適用状況をチェックします。使われていないシステムや旧式OSは計画的に撤去し、やむを得ず残す場合もネットワークを分離するなどリスク低減策を講じます。またIT部門や開発部門に対し、「古い脆弱性を放置しない」「定期的なアップデート適用は必須」といった意識付けを行います。定期的なセキュリティ研修や訓練で、脆弱性管理の重要性を全社員と共有することも大切です。

脆弱性管理プロセスの強化と自動化

増加する脆弱性に対処するには、属人的な対応から脱却しプロセスとツールの整備を進める必要があります。脆弱性情報収集から評価、パッチ適用状況のトラッキングまで一元管理できる仕組みを整えましょう。例えばKEVカタログのデータを自社資産データベースと照合する自動ツールを導入すれば、新たな緊急欠陥の検知と対応指示を迅速化できます。また定期的に脆弱性対応状況をレビューし、未対応件数や所要日数といったKPIを計測・改善することも効果的です。経営層は必要な人員・予算を投じ、継続的に脆弱性管理体制を進化させることが求められます。

脆弱性管理プロセスの概要とポイントについては以下の記事でも解説しています。あわせてぜひご覧ください。
脆弱性管理とIT資産管理-サイバー攻撃から組織を守る取り組み-

まとめ

2025年4QKEVカタログ分析レポートからは、攻撃者の手口がより広範かつ巧妙になっている実態が浮き彫りになりました。特に今年はKEVカタログへのCVE追加件数が前年より増加し記録更新となったことから、従来以上のハイペースで緊急脆弱性が発生・悪用される可能性が高まっています。侵入前提での備えを強化すべきでしょう。

2025年を通じて言えることは、脆弱性対応のスピードと徹底度を組織文化として根付かせることです。経営層はリスクと投資対効果を理解し、現場は技術的施策を愚直に実行する。そして最新の脅威情報をキャッチアップし続けることで、組織全体のサイバー耐性を高められるでしょう。来たる2026年も同様のレポートを継続し、変化する攻撃者の戦術に対抗すべく知見をアップデートしていきます。

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    CWE Top 25 2025年版(前編)– Web/APIで狙われやすい弱点12項目と診断ポイント

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    2025年12月、MITREより「CWE Top 25:2025」が公開されました。本記事では、CWE Top 25 2025年版のうち、WebアプリケーションやAPIに直結する12項目をピックアップし、リスクと診断観点を整理します。

    CWE Top 25とは

    Webアプリケーションや業務システムを狙った攻撃は年々巧妙化していますが、実は“よく悪用される脆弱性”には一定の傾向があります。限られた工数の中で効果的に対策を進めるには、脆弱性を闇雲に潰すのではなく、被害につながりやすい弱点から優先して対応することが重要です。そこで参考になるのが、MITREが公開している「CWE Top 25」です。CWE(Common Weakness Enumeration、共通脆弱性タイプ)は、ソフトウェアに潜む弱点を体系的に整理したもので、CWE Top 25はその中でも特に危険度が高く、実際の攻撃にもつながりやすい弱点をランキング形式でまとめたものです。開発・運用の現場で「どこから手を付けるべきか」を判断するための指標として活用できます。

    CWE Top 25は毎年アップデートされるため、年ごとの傾向を追うことで「長年狙われ続けている脆弱性」や「新たに注目されているリスク」も見えやすくなります。2024年版の内容は過去記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
    【CWE TOP 25 2024年版】にみる新たなセキュリティ脅威と指針」(https://www.sqat.jp/kawaraban/33156/

    CWE Top 25 2025年版

    順位CWE ID脆弱性名称
    1CWE-79入出力の不適切な無害化(クロスサイトスクリプティング(XSS))
    2CWE-89SQLコマンドの特殊要素の不適切な無害化(SQLインジェクション)
    3CWE-352クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)
    4CWE-862認可の欠如
    5CWE-787範囲外の書き込み
    6CWE-22制限ディレクトリへのパス制限不備(パストラバーサル)
    7CWE-416解放したメモリの使用
    8CWE-125範囲外の読み取り
    9CWE-78OSコマンドで使用される特殊要素の不適切な無効化(OSコマンドインジェクション)
    10CWE-94コード生成の不適切な制御(コードインジェクション)
    11CWE-120入力サイズチェックなしのバッファコピー(古典的バッファオーバーフロー)
    12CWE-434危険なタイプのファイルのアップロード許可
    13CWE-476NULLポインター逆参照
    14CWE-121スタックベースバッファオーバーフロー
    15CWE-502不適切なデータ逆シリアル化
    16CWE-122ヒープベースバッファオーバーフロー
    17CWE-863不適切な認可
    18CWE-20不適切な入力検証
    19CWE-284不適切なアクセス制御
    20CWE-200権限を持たないユーザへの機密情報の漏洩
    21CWE-306重要な機能の使用に対する認証の欠如
    22CWE-918サーバサイドリクエストフォージェリ(SSRF)
    23CWE-77コマンドで使用される特殊要素の不適切な無害化(コマンドインジェクション)
    24CWE-639ユーザ制御キーによる認可バイパス
    25CWE-770制限やスロットリングなしのリソース割当

    Web/APIに直結する“狙われやすい12項目”

    CWE Top 25 2025年版には、メモリ安全性の弱点など幅広い項目が含まれていますが、脆弱性診断会社の視点で特に注目したいのは、WebアプリケーションやAPIに直結し、実被害につながりやすい脆弱性です。Web/APIは外部からアクセス可能な入口が多く、仕様変更や機能追加も頻繁に発生します。その結果、実装ミスや設計の抜けが生まれやすく、攻撃者にとっても狙いやすい領域になりがちです。ここでは、Top 25のうちWeb/APIに絡む以下の12項目をピックアップし、リスクと脆弱性診断の観点を整理します。

    Web/APIで特に重要な12項目一覧

    1. CWE-79
    2. CWE-352
    3. CWE-862
    4. CWE-22
    5. CWE-434
    6. CWE-863
    7. CWE-20
    8. CWE-284
    9. CWE-200
    10. CWE-306
    11. CWE-918
    12. CWE-639

    入力・出力の不備(攻撃の入口になりやすい)

    CWE-79:クロスサイトスクリプティング(XSS)

    コメント欄のような分かりやすい入力欄だけでなく、検索結果、プロフィール、管理画面のメモ欄など「入力した内容が表示される場所」全般が対象になります。XSSが成立すると、セッション情報の窃取によるアカウント乗っ取り、偽画面による情報詐取、管理者権限での操作悪用などにつながる可能性があります。特に管理画面で発生した場合、被害が大きくなりやすい点が特徴です。

    脆弱性診断では、入力点の洗い出しに加え、“どこで入力が表示されるか(出力箇所)” を意識して確認します。実装側で「入力チェックをしている」つもりでも、表示時のエスケープが不十分なケースは多く、テンプレートの扱いや出力文脈(HTML/属性/JavaScript)まで含めた確認が重要になります。

    SQAT.jpでは過去にもクロスサイトスクリプティングについて、初心者向けの解説記事を公開しています。こちらもあわせてご覧ください。
    クロスサイトスクリプティング(XSS)の脆弱性 -Webアプリケーションの脆弱性入門 1-」(https://www.sqat.jp/tamatebako/27269/

    CWE-20:不適切な入力検証

    入力検証不備は、受け取った値が想定どおりかどうかの確認が不足している状態です。一見すると地味な問題に見えますが、WebアプリやAPIでは、入力値がそのままDB検索、権限判定、外部連携、ファイル処理などに渡ることが多く、他の脆弱性の引き金になりやすい“起点”です。特にAPIでは、フォーム入力だけでなくJSON形式のリクエスト、配列やネスト構造、数値・文字列の型違いなど、入力のバリエーションが増えます。その結果、「画面側では弾けているのにAPI直叩きで通ってしまう」「境界値や異常値で想定外の挙動になる」といった事故が起きやすくなります。

    脆弱性診断では、正常系だけでなく、境界値・異常系・型違い・過剰な長さ・未定義パラメータなどを含めて入力を揺さぶり、想定外の処理やエラー露出が起きないかを確認します。

    リクエスト偽装・処理のすり抜け(攻撃者が「操作」を作る)

    CWE-352:クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

    CSRFは攻撃者が用意したページやリンクを踏ませることで、ユーザ本人が操作したように見えるリクエストが送信され、設定変更や登録情報更新などが実行されてしまう可能性があります。特に危険なのは、パスワード変更、メールアドレス変更、権限変更、退会処理など「状態を変える操作」です。攻撃が成立しても操作主体が正規ユーザに見えるため、被害に気づきにくい点もCSRFの厄介なところです。

    脆弱性診断では、重要操作にCSRFトークンが実装されているか、SameSite属性が適切か、Origin/Refererの扱いがどうなっているかなどを確認します。SPAやAPI中心の構成では「CSRFは関係ない」と思われがちですが、認証方式によっては成立するため、設計前提から整理して確認することが重要です。

    SQAT.jpでは過去にもクロスサイトリクエストフォージェリについて、初心者向けの解説記事を公開しています。こちらもあわせてご覧ください。
    クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF/XSRF)とは?狙われやすいWebアプリケーションの脆弱性対策」(https://www.sqat.jp/tamatebako/12249/

    CWE-918:サーバサイドリクエストフォージェリ(SSRF)

    SSRFは、サーバ側が外部へアクセスする仕組みを悪用され、攻撃者が任意の宛先にリクエストを送らせる脆弱性です。たとえば「指定したURLから画像を取得する」「外部APIのURLを登録する」といった機能がある場合、入力値の制御が不十分だとSSRFにつながる可能性があります。SSRFが危険なのは、外部から直接アクセスできない内部ネットワークや管理系サービスに到達できてしまう点です。環境によっては、クラウドのメタデータ(認証情報)取得など、重大な侵害につながるケースもあります。

    脆弱性診断では、URL入力や外部通信の機能を洗い出し、許可リスト制御があるか、名前解決やリダイレクトがどう扱われるか、内部アドレス(localhostやプライベートIP)へのアクセスが可能かなどを確認します。外部連携機能は便利な反面、攻撃の入口になりやすいため、重点的な確認が必要です。

    認証・認可の不備(ログインしていても守れていない)

    CWE-306:重要な機能の使用に対する認証の欠如

    重要な機能の使用に対する認証の欠如は、本来ログインが必要な操作が、認証なしで実行できてしまう状態です。代表例としては、管理者向けのAPIや運用機能が「画面からは触れない」ために見落とされ、URL直叩きで実行できてしまうケースが挙げられます。 この弱点があると、攻撃者はアカウントを用意する必要すらなく、いきなり機能を悪用できてしまいます。影響範囲は機能次第で、情報閲覧だけでなく、設定変更やデータ削除などにつながる可能性もあります。

    脆弱性診断では、ログイン前に到達できるURL・APIを洗い出し、認証が正しくかかっているかを横断的に確認します。特に、管理系の機能や“メンテナンス用”に追加されたエンドポイントは、抜けが起きやすいポイントです。

    CWE-862:認可の欠如

    認可の欠如は、「ログインしているユーザが、その操作をしてよいか」の判定が不足している状態です。認証が正しく実装されていても、認可が抜けていると、一般ユーザが管理機能を実行できたり、他人の情報にアクセスできたりするリスクが生まれます。現代のWebアプリはAPI化が進み、画面とAPIが分離されているケースも多くあります。その結果、「画面上ではボタンが表示されないが、APIを直接叩くと通ってしまう」といった問題が発生しやすくなります。認可は“画面制御”ではなく“サーバ側判定”が必須です。

    脆弱性診断では、ユーザ権限を切り替えながら同じAPIを試す、IDを変更して他人データに触れないか確認するなど、権限境界を意識したテストを行います。認可不備は事故につながりやすい一方で見落とされやすいため、重点的に確認すべき項目です。

    CWE-863:不適切な認可

    誤った認可は、認可チェック自体は存在するものの、判定条件が不十分・誤っている状態です。たとえば「ロール(一般/管理者)は見ているが、所属組織や契約単位の制御が抜けている」「閲覧は制御できているが更新だけ抜けている」など、複雑な仕様ほど起きやすい傾向があります。このタイプの問題は、単純な“認可チェックの抜け”よりも発見が難しく、機能仕様を理解したうえでテストしないと見落とされがちです。結果として、公開後に利用者からの指摘やインシデントで発覚することもあります。

    脆弱性診断では、ロールだけでなく、組織・契約・所有権などの境界を整理し、境界を跨ぐ操作ができてしまわないかを確認します。実装だけでなく、設計段階での権限モデルの整理が重要になります。

    CWE-284:不適切なアクセス制御

    不適切なアクセス制御は、認証・認可・制限の仕組み全体が適切に機能していない状態を指す、非常に重要なカテゴリです。CWE-862やCWE-863、CWE-639などと密接に関係し、実際のインシデントでは“アクセス制御の穴”としてまとめて問題になるケースも少なくありません。アクセス制御の難しさは、実装ミスだけでなく、仕様変更や機能追加によって整合性が崩れやすい点にあります。APIが増えるほど確認対象も増え、権限チェックの一貫性を保つのが難しくなります。

    脆弱性診断では、画面・API・直接URLアクセスなど複数経路からの到達性を確認し、「見えないはずの機能が触れてしまう」「アクセスできないはずの情報が見えてしまう」といった問題を洗い出します。アクセス制御は“守りの土台”であり、最優先で見直すべき領域です。

    CWE-639:ユーザ制御キーによる認可バイパス

    ユーザ制御キーによる認可バイパスは、ユーザが指定できるIDやキーを悪用し、認可を回避できてしまう問題です。いわゆるIDOR(Insecure Direct Object Reference)として知られるケースが多く、例えば「注文ID」「請求書ID」「ユーザID」などを変更するだけで他人の情報にアクセスできてしまうといった形で発生します。この脆弱性が厄介なのは、画面上では正しく動いて見えることが多い点です。正規ルートでは問題がなくても、パラメータを改ざんすると成立してしまうため、悪意ある操作を前提にした確認が欠かせません。

    脆弱性診断では、IDやキーを意図的に変更し、他人データの閲覧・更新・削除ができないかを確認します。設計としては、IDを推測しにくくするだけでなく、サーバ側で必ず所有権チェックを行うことが重要です。

    情報の露出(「次の攻撃」の起点になる)

    CWE-200:権限を持たないユーザへの機密情報の漏洩

    機密情報の露出は、権限のない相手に情報が見えてしまう状態です。例としては、APIレスポンスに不要な項目が含まれている、エラーメッセージに内部情報が出ている、管理画面の情報が一般ユーザから参照できる、といったケースが挙げられます。情報漏洩は、それ単体でも重大な事故ですが、攻撃者にとっては“次の攻撃を成功させる材料”になります。たとえば、ユーザ情報や内部構成が漏れることで、なりすましや権限突破、別の脆弱性悪用が容易になることがあります。

    脆弱性診断では、画面表示だけでなくAPIレスポンスの内容、エラー出力、ログ出力の扱いまで含めて確認します。「返さなくてもよい情報を返していないか」を見直すことは、対策コストに対して効果が大きいポイントです。

    ファイル・パスの取り扱い(“便利機能”が事故の原因になる)

    CWE-22:パストラバーサル

    パストラバーサルは、ファイル・パスの指定を悪用され、想定外のファイルにアクセスされてしまう脆弱性です。例えば、ダウンロード機能や画像表示機能で、パラメータがそのままファイル・パスに使われている場合に発生しやすく、設定ファイルや機密ファイルの閲覧につながる可能性があります。この問題は、アプリケーション内部の設定情報や秘密鍵などの露出を招くことがあり、被害が“情報漏えい”に留まらず、侵入やなりすましの起点になることもあります。

    脆弱性診断では、パス指定のパラメータを揺さぶり、制限ディレクトリ外の参照ができないかを確認します。設計としては、ファイルはIDで管理し、サーバ側で実体パスに変換する方式が安全です。

    CWE-434:危険なタイプのファイルのアップロード許可

    危険なファイルアップロードは、攻撃者が悪意あるファイルをアップロードできてしまう脆弱性です。拡張子チェックだけで判定している場合、実体がスクリプトや実行形式であってもすり抜けられることがあり、Webシェル設置やマルウェア配布などにつながる危険があります。また、アップロードしたファイルがそのまま公開ディレクトリに置かれている場合、アクセスされるだけで攻撃が成立するケースもあります。ファイル機能はユーザにとって便利な一方で、攻撃者にとっても“侵入口”になりやすい領域です。

    脆弱性診断では、アップロード可能な拡張子・MIME・実体判定、保存先、参照方法、実行可否などを確認します。特に「アップロード後にどう扱われるか(公開されるか、変換されるか)」まで含めて評価することが重要です。

    【補足】なぜこの12項目が脆弱性診断で重要なのか
    ここまで見てきた12項目は、いずれもWebアプリやAPIで発生しやすく、攻撃者が外部から試行しやすい弱点です。また、認可やアクセス制御のように、仕様・設計・実装が絡み合う領域は、チェック漏れが起きやすい一方で、発見が遅れると影響が大きくなりがちです。 そのため、開発時のレビューや自動テストだけでなく、第三者視点での脆弱性診断によって「実際に攻撃が成立するか」を確認し、優先度を付けて改善していくことが有効です。

    現場での優先度付け(Web/API向け)

    CWE Top 25に含まれる弱点は幅広く、すべてを一度に潰すのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、「被害が大きいもの」「攻撃者が試しやすいもの」から優先して対策する考え方です。ここでは、WebアプリケーションやAPIを前提に、現場で取り組みやすい優先順位を整理します。

    認可

    まず最優先に見直したいのは、認可(Authorization)に関する脆弱性です。認証(ログイン)が正しく動いていても、「そのユーザがその操作をしてよいか」の判定が甘いと、他人の情報閲覧や不正更新、管理機能の悪用につながります。特にAPIが増えるほど、権限チェックの抜けや判定ミスが起きやすく、事故の原因になりがちです。認可の問題は、攻撃が成立すると影響範囲が大きく、かつログ上は正規ユーザの操作に見えることもあります。Web/APIにおけるセキュリティの土台として、まずは認可を最優先で点検することが重要です。

    入出力・CSRF

    次に優先したいのは、入出力の取り扱い(XSSや入力検証不備など)と、CSRFです。
    入力値は、画面表示・DB操作・外部連携など多くの処理に影響するため、わずかな実装ミスが攻撃の入口になりやすい領域です。またXSSは、利用者のアカウント乗っ取りや管理画面の悪用につながる可能性があり、優先度の高い脆弱性です。CSRFについても、状態変更系の操作(変更・更新・削除)がある限り、対策の抜けがあると被害につながります。「ログインしているから安全」ではなく、“正しい意図の操作かどうか”を担保できているかを確認する必要があります。

    SSRF・ファイル関連

    SSRFやファイル関連の脆弱性は、システムに該当機能がある場合、優先度を一段階上げて確認すべき項目です。たとえば、URL入力を受け付ける機能(外部連携、Webhook、画像取得など)がある場合、SSRFが成立すると内部ネットワークへのアクセスや情報取得につながる可能性があります。また、ファイルアップロード/ダウンロード機能がある場合は、危険なファイルの混入やパストラバーサルによる情報漏えいなど、攻撃の入口になりやすい要素が揃っています。利便性の高い機能ほどリスクも増えやすいため、仕様として存在するなら“重点確認対象”として扱うのが安全です。

    情報露出・認証の欠如

    最後に、見落とし厳禁として挙げたいのが「情報露出」と「認証欠如」です。機密情報の露出は、単体でも重大な事故ですが、攻撃者にとっては次の攻撃を成立させるための材料にもなります。APIレスポンスの過剰返却やエラーメッセージの出し方など、“つい残ってしまう情報”が原因になることも少なくありません。また、重要機能の認証欠如は、成立すると攻撃者がログインすらせずに機能を悪用できてしまいます。管理用のエンドポイントや運用機能など、「利用者が限られるから大丈夫」と思われがちな部分ほど抜けが起きやすいため、公開前後での棚卸しが重要です。

    Web/APIは定期診断が有効

    Web/APIは機能追加や仕様変更が多く、開発時点で対策していたとしても、改修のたびに新しい抜けが生まれる可能性があります。だからこそ、開発段階での対策に加えて、第三者視点の脆弱性診断で「実際に攻撃が成立するか」を確認し、優先度を付けて改善することが効果的です。定期的に診断を実施することで、仕様変更による取りこぼしを早期に発見し、インシデントを未然に防ぐことにつながります。

    後編では、CWE Top 25 2025年版で目立つもう一つのポイントとして、メモリ領域の安全に関わる脆弱性が上位に増えている背景を整理します。なぜ今メモリ系が注目されているのか、どのように備えるべきかを、診断・運用の観点も含めて解説します。


    ―後編に続く―

    BBSecでは

    「どこが危ないのか」を把握しないまま対策を進めると、重要な弱点が残ったり、修正の手戻りが増えたりすることがあります。Webアプリケーション/APIの脆弱性診断により、実際に攻撃が成立するポイントを洗い出し、優先度を付けて改善につなげることが可能です。まずは現状の課題や診断範囲について、お気軽にご相談ください。


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    テレワーク環境に求められるセキュリティ強化

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    テレワークセキュリティ2.26更新版サムネイル

    テレワークの普及に伴い、セキュリティ対策の重要性が一層高まっています。特に、在宅勤務やモバイルワークなど、多様な働き方が浸透する中で、情報漏えいや不正アクセスといったリスクへの対応が求められます。本記事では、最新のガイドラインや具体的な対策を踏まえ、テレワーク環境におけるセキュリティ強化のポイントを解説します。

    テレワークの現状とセキュリティの重要性

    総務省によれば、テレワークは「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。

    テレワークを推進する総務省が刊行する「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」では、テレワークの形態を自宅を勤務場所とする「在宅勤務」、出先や移動中に作業する「モバイル勤務」、本社から離れた営業所やシェアオフィスなどを利用する「サテライトオフィス勤務」の3つに分類しています。

    これらの働き方は柔軟性を提供する一方で、情報セキュリティの観点から新たな課題も浮上しています。特に、家庭内ネットワークの脆弱性や公共のWi-Fiを利用する際のリスクなど、従来のオフィス環境とは異なる脅威が存在します。

    テレワークのセキュリティの基本的考え方

    ガイドラインでは、クラウドサービスの活用やゼロトラストセキュリティの概念など、最新のセキュリティ動向を踏まえた対策が示されています。また、中小企業向けには「テレワークセキュリティに関する手引き(チェックリスト)」が提供されており、具体的な対策項目が整理されています。

    図:テレワークにおける脅威と脆弱性について

    (画像出典:総務省:「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」より一部抜粋)

    テレワークにおけるセキュリティ対策の基本方針

    テレワーク環境のセキュリティ対策は、「ルール」「人」「技術」の3つの要素のバランスが重要です。総務省のガイドラインでは、以下のポイントが強調されています。

    • ルールの整備:情報セキュリティポリシーの策定や、テレワーク時のデバイス使用に関する規定を明確にする
    • 人への教育:従業員に対する定期的なセキュリティ教育や訓練を実施し、フィッシング詐欺やマルウェアへの対処方法を周知する
    • 技術的対策:VPNの導入や多要素認証の活用、最新のセキュリティパッチの適用など、技術的な防御策を講じる

    テレワーク環境下の人を狙ったサイバー攻撃

    総務省ガイドラインが示す「ルール」「人」「技術」の中でも、特に忘れてはならない重要ポイントは人の問題です。令和元年度の情報通信白書においても、「ソーシャルエンジニアリング」が再び攻撃の中心になるという予測を紹介しています。

    ソーシャルエンジニアリング対策としては、警視庁が「そのテレワーク、犯罪者が狙ってる!」と題する動画や、短編アニメ「テレワーク勤務時のセキュリティ基本篇」、啓発チラシ「ちょっと待って! そのテレワーク、セキュリティは大丈夫?」などを公開配布しています。

    オフィスでみんなが席を並べて仕事していたら、いつもと違うメールが着信しても「こんなメールが届いた」と、隣席の同僚や情報システム部門に気軽に相談することができます。しかしテレワークではそれが簡単ではなくなります。人間心理の隙間を衝くような標的型攻撃メールなどに今まで以上に警戒が必要です。

    また、政府のセキュリティ機関である内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は2020年4月、「テレワークを実施する際にセキュリティ上留意すべき点について」と題したテレワークに関する注意喚起を行っています。

    NISCの注意喚起では、「政府機関」「重要インフラ事業者」「国民一般」の3つのカテゴリー毎に、セキュリティポリシーやルール整備、ICT環境の準備、安全な接続方法であるVPNやリモートデスクトップなどの技術活用にあたっての留意事項、遠隔会議システムの安全な利活用、機器のアップデートやパスワードの複雑化など、必要なセキュリティ対策がリストアップされています。

    さらに、ノートPCの支給が間に合わずに個人端末の使用を許す場合もあり、これまでのような情報システム・IT部門による一括管理は難しくなりました。情報システム部門が個人端末に対してどこまで管理できるかの法的な問題もあります。また、一般社員に向けて、テレワークのセキュリティの留意点を告知したとしても、すべての社員がその内容を理解できているとは限りません。従業員向けの通達の意味が分からない場合、そのまま放置される可能性はどの程度あるでしょうか。それがリスクにつながるのであれば、通達の方法を変更するべきです。全従業員による確実な実施を徹底するため、情報システム部門からの通達内容において、使用されているIT用語は読み手のスキルレベルに対して適切か、耳慣れないと想定される言葉やプロセスは図を使用するなどして誰にでも等しくわかるような説明がなされているか、といった観点の校閲を設けるくらいの心構えが必要です。

    テレワーク環境下でのセキュリティ対策

    テレワーク環境の安全性を確保するためには、以下のようなポイントでセキュリティ対策を実施することを推奨いたします。

    • デバイスの管理:業務用デバイスと私用デバイスを明確に区別し、業務データの漏えいを防止する
    • ネットワークの安全性確保:自宅のWi-Fiには強固なパスワードを設定し、公共のWi-Fi利用は避ける
    • データの暗号化:重要なデータは暗号化し、万が一の情報漏えいに備える
    • アクセス権限の管理:必要最小限のアクセス権限を設定し、不正アクセスを防ぐ
    • 定期的なセキュリティ診断:専門機関によるセキュリティ診断やペネトレーションテストを実施し、システムの安全性を確認する

    技術的な対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識の向上や定期的なルールの見直しを行い、組織全体で継続的にセキュリティ対策を強化していくことが重要です。

    セキュリティ診断もリモートで実施可能

    情報システム部門が安全のためにできることがもうひとつあります。それは、リモートワーク環境を構成するVPN機器や認証サーバ、クラウド環境の接続拠点といったアクセスの出入り口における設定不備や、不正アクセスの原因となりうるセキュリティ上の欠陥の有無について、ハードやソフト面のセキュリティ診断を行うことです。

    Webアプリケーションの脆弱性診断や、脆弱性が悪用された場合のインパクトを事前に調べるペネトレーションテストといったセキュリティ診断の多くは、インターネットを介して行うことができます。新型コロナ感染症対策でテレワークを経験した企業では、今後もテレワークを希望する人が少なくありません。今後もこうした働き方を継続するのであれば、一度は脆弱性の有無を確認し、安全な環境で業務を行えるよう環境を整備することをお勧めします。

    まとめ

    ・新型コロナウイルス感染対策にともない、多くの組織が拙速にテレワークに移行したためセキュリティの課題がある。
    ・まずは警視庁や内閣サイバーセキュリティセンターの注意喚起を参照。
    ・総務省の出している詳しいガイドラインに沿って「ルール」「人」「技術」を見直そう。
    ・VPN機器やクラウド環境などテレワーク環境全体のセキュリティ診断を受けよう。

    【関連情報】

    ●<インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長

    ●<コラム>「ゼロトラストアーキテクチャ」とは?

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    記録破りのDDoS攻撃!サイバー脅威の拡大と企業が取るべき対策とは?

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    近年、DDoS攻撃の規模と頻度が急激に増加しており、企業や組織にとって無視できない脅威となっています。特に、2024年第4四半期には、過去最大規模となる5.6テラビット毎秒(Tbps)のDDoS攻撃が確認され、サイバー攻撃の新たな段階へと突入したことがわかりました。この攻撃は、わずか80秒間で1万3,000台以上のIoTデバイスを利用して実行され、Cloudflare社のDDoS防御システムによって自動的に検出・ブロックされました。

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    DDos攻撃の事例として、SQAT.jpでは日本航空へのサイバー攻撃の実態についても解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
    【徹底解説】 日本航空のDDoS攻撃被害の実態と復旧プロセス
    Dos攻撃とは?DDos攻撃との違い、すぐにできる3つの基本的な対策

    DDoS攻撃の増加と進化する手口

    2024年第4四半期には、Cloudflare社が軽減したDDoS攻撃の件数が690万件にのぼり、前四半期比16%、前年比83%の増加を記録しました。さらに、1Tbpsを超える大規模攻撃の件数は前四半期比で1,885%も増加し、これまで以上に大規模な攻撃が常態化しつつあります。

    HTTP DDoS攻撃では、既知のボットネットによる攻撃が全体の73%を占め、11%は正規のブラウザを装った攻撃、10%は疑わしいHTTPリクエストによる攻撃でした。ネットワーク層(L3/L4)攻撃では、SYNフラッド(38%)、DNSフラッド(16%)、UDPフラッド(14%)が主要な手法として確認されています。また、Miraiボットネットの亜種による攻撃が特に顕著であり、2024年第4四半期には、この攻撃手法の使用頻度が131%も増加しました。

    企業が直面するDDoS攻撃のリスクとは?

    DDoS攻撃がもたらす影響は多岐にわたります。最も直接的な被害は、システムのダウンによる業務停止であり、企業の信用低下や顧客離れにつながる可能性があります。また、近年増加している「ランサムDDoS攻撃(Ransom DDoS)」では、攻撃を受けた企業が身代金の支払いを要求されるケースが増えています。2024年第4四半期には、Cloudflare社の顧客でDDoS攻撃を受けた顧客のうち、12%が身代金の支払いを求められ、前年同期比で78%の増加を記録しました。

    業界別にみると、通信業界が最も多くの攻撃を受け、次いでインターネット関連業界、マーケティング・広告業界が標的となっています。特に、金融業界は依然としてサイバー犯罪者にとって魅力的なターゲットとなっており、資金詐取を目的とした攻撃が増加しています。

    DDoS攻撃から企業を守るための対策

    DDoS攻撃の脅威が拡大するなか、企業は効果的な防御策を講じる必要があります。特に、以下のような対策が推奨されます。

    1. 常時オンのDDoS防御システムの導入
      DDoS攻撃の多くは短時間で発生するため、人間の対応では間に合わないケースが多いです。自動検知・防御機能を備えたDDoS対策ソリューションを導入することで、攻撃を迅速に無力化できます。
    1. ネットワーク層とアプリケーション層の両方を保護
      DDoS攻撃には、L3/L4(ネットワーク層)攻撃とL7(アプリケーション層)攻撃があります。両方の層に対する防御対策を講じ、ファイアウォールやWAF(Web Application Firewall)を活用することが重要です。
    1. ゼロトラストアーキテクチャの採用
      攻撃者の侵入を最小限に抑えるために、ゼロトラストモデルを導入することも有効です。認証・認可プロセスを強化し、アクセス制御を厳格化することで、不正なトラフィックを遮断できます。
    1. クラウドベースのDDoS対策の活用
      オンプレミスのDDoS対策はコストが高く、攻撃の規模が拡大するにつれて対応が難しくなります。クラウドベースのDDoS防御サービスを活用することで、スケーラブルなセキュリティ対策を実現できます。
    1. 定期的な脆弱性診断とインシデント対応計画の策定
      攻撃のリスクを最小限に抑えるために、定期的なセキュリティ監査を実施し、DDoS攻撃を想定したインシデント対応計画を策定することが不可欠です。特に、SLA(サービスレベルアグリーメント)を明確にし、攻撃発生時の対応フローを事前に決めておくことが重要です。

    今後のDDoS攻撃トレンドと企業が取るべきアクション

    DDoS攻撃は今後さらに巧妙化し、大規模化すると予想されています。特に、AIを活用したボットネット攻撃や、IoTデバイスを悪用した攻撃が増加する見込みです。さらに、特定の企業や業界を標的とした「高度な標的型攻撃(APT)」の手法がDDoS攻撃にも応用される可能性があります。

    企業は、単に防御するだけでなく、プロアクティブなセキュリティ戦略を採用し、攻撃を未然に防ぐ体制を構築する必要があります。DDoS攻撃はもはや一部の企業だけの問題ではなく、あらゆる業界にとって喫緊の課題となっています。

    常に最新の脅威情報を把握し、効果的な防御策を講じることで、企業のシステムとデータを守ることができます。DDoS攻撃のリスクを最小限に抑えるためには、今すぐ適切な対策を実施することが求められるでしょう。


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  • 2025年2月26日(水)13:00~14:00
    AWS/Azure/GCPユーザー必見!企業が直面するクラウドセキュリティリスク
  • 2025年3月5日(水)13:00~14:00
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    APIとは何か(2)~APIの脅威とリスク~

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    APIセキュリティは、現代のビジネスにおいて不可欠な課題です。シリーズ第2回の今回は、APIを悪用した攻撃手法や、OWASP(Open Web Application Security Project)よりリリースされている「OWASP API Security Top 10」で取り上げられるリスクの詳細を解説します。インジェクション攻撃やDDoS攻撃、APIキーの悪用、アクセス制御に関する脆弱性など、主要な脅威を紹介しながら、APIが悪用された場合の影響について解説します。

    前回記事(シリーズ第1回)「APIとは何か~基本概念とセキュリティの重要性~」はこちら。

    APIとは~前回からの振り返り

    日頃からインターネットなどのネットワークを使用することが多い今日、現代における多くの企業はAPIに大きく依存しており、今やAPIは不可欠なものとなっています。Akamai社のレポート「The API Security Disconnect」によると、調査対象となった企業の約8割以上が2023年に行った調査において、「過去12か月以内にAPIセキュリティをより重視した」と回答しています。しかし、2022年~2024年で調査した回答者のうち、半数以上が、APIのセキュリティインシデントの影響により顧客の信頼を失い、さらにそこからほぼ半数は生産性の低下や従業員の信頼の低下にもつながったといいます。

    また、SNS事業者が提供するAndroid版アプリに存在した脆弱性が悪用された結果、膨大な量のアカウント情報が漏洩した事例*1も報告されています。これは攻撃者が大量の偽アカウントを使用し、様々な場所から大量のリクエストを送信し、個人情報(ユーザ名・電話番号)を照合するというものでした。

    APIが悪用されるとどうなるか

    APIが悪用された場合、多岐にわたる深刻な影響が生じます。特に、認証や認可の不備は深刻なセキュリティホールとなり得ます。攻撃者はこれらの脆弱性を悪用して不正アクセスを行い、機密データや個人情報を盗み出す恐れがあります。また、認可が適切に設定されていないと、本来は外部からアクセスできないはずのデータにまで侵入され、第三者からデータの改ざんや不正操作が可能となってしまいます。さらに、APIを標的にしたDDoS攻撃によりサービスがダウンし、正規ユーザが利用できなくなることで、企業の信用失墜や業務の中断といったダメージを引き起こします。これらの影響は、経済的損失だけでなく、法的問題やブランドイメージの毀損など、長期的な悪影響をもたらすため、APIのセキュリティ強化が不可欠です。

    APIを悪用した攻撃の事例はいくつか報告されていますが、いずれの攻撃も、「OWASP API Security Top 10」で挙げられている問題と関連性があります。

    OWASP API Security Top 10

    APIセキュリティについて、Webアプリケーションセキュリティに関する国際的コミュニティであるOWASPが、2023年6月に「OWASP API Security Top 10 2023」をリリースしています。APIセキュリティにおける10大リスクをピックアップして解説したものです。

    「OWASP API Security Top 10」上位のリスク

    特に上位5つの項目については、以下のような重大なリスクにつながるため、リリース前に十分な対策が施されていることを確認すべきです。

    • 不正アクセス
    • なりすまし
    • 情報漏洩
    • サービス運用妨害(DoS)

    主なセキュリティ脅威

    インジェクション攻撃

    インジェクション攻撃は、悪意のあるコードをAPIに挿入し、不正な操作を行う攻撃です。APIの入力データを検証せずに処理している場合、攻撃者にデータベースへのアクセスを許すリスクが生じます。特にSQLインジェクションやコマンドインジェクション攻撃が多く、攻撃を受けてしまった場合、データベースの情報漏洩やシステムの制御不備などの被害があります。

    認証およびセッション管理の不備の脆弱性を悪用

    APIの認証とセッション管理の不備を悪用することで、攻撃者は不正アクセスやなりすましを行います。パスワード強度が不十分な場合やトークンの管理が適切に行われていない場合、セッションハイジャックや不正に重要な情報を閲覧されることによってデータの漏洩が発生するリスクがあります。適切な認証管理およびセッション管理を行うことが重要です。

    DDoS攻撃

    DDoS攻撃は、複数のPCからアクセスされることによる膨大な量のリクエストをAPIに一斉に送り込むことで、システムのリソースを枯渇させ、サービスの提供を妨害する攻撃です。APIの特性上、処理を高速に行うために外部からのリクエストを許容する必要がありますが、その柔軟性が悪用されます。攻撃者はボットネットを利用し、大量のトラフィックを発生させてサーバのリソースを消費させます。これにより、顧客はサービスが利用できず、自組織においても業務に多大な影響を及ぼします。APIを保護するためには、トラフィックの監視やレート制限、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)などのセキュリティ対策が重要です。

    APIキーの悪用

    APIキーは、APIへのアクセスを制御するために利用されますが、攻撃者に奪われると不正利用のリスクが生じます。盗まれたAPIキーは無制限のアクセスやサービスの悪用に使われる恐れがあります。安全な管理や無制限にアクセスができないように適切なアクセス制御を実施すること等が重要です。

    アクセス制御の不備による影響

    APIのアクセス制御の不備の脆弱性を悪用することで、攻撃者は許可されていないデータや機能にアクセスできます。適切な権限設定がされていない場合、データの漏洩や不正な操作の実行のリスクがあります。権限の設定など適切なアクセス制御が求められます。

    思わぬデータの公開や改ざん

    APIの設計や実装の不備により、データが意図せず公開・改ざんされるリスクがあります。適切な認証・認可がないと、攻撃者が内部の機密情報にアクセスすることが可能になります。例えば、本来ならシステム管理者のみがアクセスできる設定画面または顧客情報やシステムに関する情報などの重要情報が格納されている場所に攻撃者がアクセスできてしまった場合、システムの設定を変更されたり重要情報が奪取されたりする恐れがあります。また、過剰に情報を提供するAPIレスポンスや暗号化されていないデータ転送も、情報漏洩や改ざんの危険性を高めます。データ保護には、適切なアクセス制御と暗号化の実装が不可欠です。

    アカウント乗っ取り

    不正アクセスによってユーザアカウントが乗っ取られ、APIを悪用される可能性があります。一度アカウントが乗っ取られると、攻撃者は個人情報の閲覧や不正操作、さらには他のシステムへの攻撃拡大を図る可能性があります。多要素認証(MFA)の導入やAPIキーの適切な管理、ログイン試行の監視など、セキュリティ対策の強化が必要です。

    まとめ

    現代の企業にとってAPIによるアプリケーション連携は不可欠ですが、その悪用によるセキュリティリスクも増加しています。APIを悪用した攻撃の事例は、「OWASP API Security Top 10」に関連しています。主なセキュリティ脅威には、インジェクション攻撃、認証やセッション管理の不備、DDoS攻撃、APIキーの悪用、アクセス制御の脆弱性、不適切なデータ公開や改ざん、アカウント乗っ取りなどがあります。これらは重大なリスクを孕んでいるため不正アクセス、なりすまし、機密データの盗難を含む情報漏洩、データ改ざん、サービスのダウンによるサービス低下や業務への影響、ひいては企業の信用失墜といった深刻な結果を招きます。こうした被害を防ぐため、APIの設計段階から適切なセキュリティ対策を行い、監視やアクセス制御の強化が不可欠です。

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    Webアプリケーションの脆弱性入門

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    人がアプリケーションを持っているイラスト

    Webアプリケーションは私たちの日常生活に欠かせない存在となっています。しかし、それらのWebアプリケーションが攻撃者からの脅威にさらされていることをご存知でしょうか?Webアプリケーションに脆弱性が存在すると、悪意のある第三者によって個人情報や企業の機密情報が漏洩するリスクが生じます。この記事では、Webアプリケーションの脆弱性の種類について解説します。

    脆弱性とは

    脆弱性とは(ポイントマークとその周りに人がいる)イメージ

    脆弱性とは、プログラムの不具合や設計上のミス等によるバグが原因となって発生したセキュリティ上の欠陥や弱点のことを指します。Webアプリケーションに脆弱性が存在する場合、攻撃者がシステムに侵入し、機密情報を盗み出したり、サービスを乗っ取ったりするリスクが生じます。企業はWebアプリケーションの脆弱性を理解し、それに対処するための適切な対策を講じる必要があります。

    脆弱性の種類

    脆弱性にはさまざまな種類があります。以下に代表的な例を挙げます。

    1. SQLインジェクション

    データベースを使って情報を処理するWebアプリケーションは、その多くがユーザからの入力値をもとにデータベースへの命令文を構成しています。SQLインジェクションは、攻撃者がWebフォームなどの入力欄に特定のコードを入れることで不正な命令文を構成し、データベースを不正利用できてしまう脆弱性です。これを悪用することで、例えば、データベースの情報を盗んだり、改ざんしたり、消去したりできる可能性があります。

    2. クロスサイトスクリプティング(XSS)

    クロスサイトスクリプティング(XSS)は、ネットバンキングや掲示板のように、ユーザから入力された値を処理して出力するWebページに攻撃者が悪意のあるスクリプトを埋め込むことで、Webページを閲覧したユーザのWebブラウザ上でスクリプトを実行させることができる脆弱性です。これを悪用されると、ユーザが意図しない情報の送信や表示ページの改ざんなどのリスクが発生します。

    3. クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

    クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、攻撃者が罠として用意した偽サイトを用いてリンクや画像をクリックさせることで、ユーザが意図していないリクエストを強制的に行わせることができる脆弱性です。例えば、SNSで「いいね!」をする、銀行の振込操作など、被害者がログインしているWebサービスの操作を攻撃者が悪用することが可能です。

    4. セッション管理の不備

    Webアプリケーションの中には、セッションID(ユーザを識別するための情報)を発行し、セッション管理を行うものがあります。このセッション管理に不備があることで、セッションIDを固定化できたり、有効なセッションIDが推測可能だったりすると、セッションハイジャックと呼ばれる攻撃が成立する危険性があります。これにより、攻撃者が本来のユーザになりすまして権利を行使することで、プライベートな情報の閲覧や、設定の変更などが行われる可能性があります。

    5. アクセス制御の不備

    Webアプリケーションにおいて、本来付与されている権限の範囲内でのみ動作するような制御が実装されていない問題を指します。例えば、一般ユーザとしてログインした際に管理者としての権利を行使できてしまう権限昇格、パラメータを操作することで、本来制限された領域外のファイルやディレクトリにアクセスすることが可能となるパストラバーサルなどです。不正アクセスや意図しない情報の公開をはじめとした、様々なリスクが生じます。

    脆弱性を悪用した攻撃による影響

    脆弱性が悪用されると、企業に深刻な影響が及ぶ恐れがあります。脆弱性が引き起こす可能性のある影響の例を、以下に示します。

    機密情報の漏洩

    攻撃者は、脆弱性を利用して機密情報を盗み出すことができます。クレジットカード情報や個人情報など、大切な情報が漏洩することで、企業の信頼性に係る問題や法的な問題が発生する可能性があります。

    データの改ざん

    脆弱なWebアプリケーションは、攻撃者によってデータの改ざんが行われる可能性があります。データの改ざんによって、Webアプリケーションの正確性が損なわれたり、信頼性が低下したりする可能性があります。

    サービスの停止または遅延

    脆弱性を悪用されると、サービスの停止、遅延、またはデータベースの消去といった、システム全体に影響が及ぶ被害を受ける恐れがあり、企業のビジネス活動に重大な影響が生じる可能性があります。

    金銭的な損失

    脆弱性のあるWebアプリケーションは、企業にとって金銭的な損失をもたらす可能性があります。攻撃者による不正アクセスでデータが盗難された結果、企業に損害賠償責任が生じる場合があります。

    企業の信頼喪失

    セキュリティに関する問題が公になると、企業の評判に悪影響を与える可能性があります。顧客やパートナーからの信頼を失うことは、企業にとって非常に重大な損失です。

    脆弱性対策の方法

    脆弱性の悪用を防ぐためには、以下のような対策が考えられます。

    正しい権限管理の実施

    ユーザには場面に応じた必要最小限の権限のみ付与することが推奨されます。また、不要な機能やリソースへのアクセスを制限することも脆弱性を軽減させるポイントとなります。

    定期的なセキュリティチェックの実施

    定期的なセキュリティチェックの実施(セキュリティとパソコンの周りに人)イメージ

    Webアプリケーションに対しては、機能追加などのシステム改修時はもちろんのこと、定期的なセキュリティチェックを行うことが重要です。脆弱性スキャンやペネトレーションテストなどの手法を活用し、問題を早期に発見して修正することが大切です。

    最新のセキュリティパッチの適用

    Webアプリケーションを開発・運用する際には、使用しているフレームワークやライブラリの最新のセキュリティパッチを適用することが必要です。これにより、既知の脆弱性やセキュリティ上の問題を解消することができます。

    まとめ

    脆弱性のあるWebアプリケーションは、攻撃の潜在的なターゲットになります。セキュリティ対策を徹底し、脆弱性の早期発見と修正を行うことが重要です。また、さまざまな対策手法やセキュリティツールを活用し、脆弱性を作り込まないセキュアな開発環境作りに取り組んでください。企業のデータや顧客の個人情報を守るためにも、脆弱性対策は欠かせません。今回の記事がお役に立てれば幸いです。

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    <インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長【後編】

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    脆弱性診断に携わる傍ら、セキュリティ人材の育成や情報配信、提言活動の中心的な役割を果たされてきたScanNetSecurity編集長 上野宣氏に、昨今セキュリティ事情を率直に語っていただいたインタビュー。後編をお届けする。

    (聞き手:田澤 千絵/BBSec SS本部 セキュリティ情報サービス部 部長)

    前編→


    実はそこにあるリスク

    ━━ネットワーク脆弱性診断の場合は、暗号化周りの脆弱性が割と多く検出されます。攻撃で実際に狙われる可能性はどのくらいでしょうか。

    上野:脆弱性の中では比較的対応に余裕が持てるタイプと言えます。しかし、長い目で見ると、暗号アルゴリズムの問題によって解読されるとか、中間者(Man-in-the-Middle)攻撃をされるといった危険は否めません。リプレイス等のタイミングで、アルゴリズムの見直しや最新プロトコルへの対応をタスクに入れた方がいいです。

    ━━例えば金融系の企業ですと、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカード業界のセキュリティ基準)に準拠しなければなりませんが、一般的にはコンプライアンス面で準拠必須な規定がありません。

    上野:強制力があるものはないですね。OWASPもASVS(Application Security Verification Standard:アプリケーションセキュリティ検証標準)を出してはいるのですが。

    ━━GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)も今はあまり話題に出ませんね。

    上野:結局、国内でビジネスしている企業にはあまり関係ないとか、せいぜいサードパーティCookieの扱いに注意するくらいだということで。一時期より騒がれなくなりましたね。

    ━━日本で強制力がある法律と言ったら個人情報保護法くらいでしょうか。

    上野:攻撃されたことに対して開発会社が訴えられたことがありましたね。2014年だと思いますが、開発会社がちゃんとセキュリティを担保しなかったという理由で負けて、損害賠償金を支払うことになった。

    開発会社は、きちんとした倫理観を持って自分たちが良いと認めるものを納めることが必要です。自転車だったらちゃんと規格があるのに。国際団体がWebアプリケーションの品質保証みたいなものを決めてくれたらいいのですが。

    ━━Webアプリケーション開発を依頼する際、開発会社にセキュリティを担保してもらうにはどうしたらいいでしょう。

    上野:お勧めは、私などが作ってOWASPのセキュリティ要件定義書ワーキンググループで出している 要件定義書です。

    依頼側は、内容がわからなくてもいいから、これをそのまま持って行って、「これを作れますか」「これが大事だと言われたが、説明してもらえますか」という問いに対して話ができる開発会社を選ぶ。そうでない開発会社はやめたほうがいい。依頼企業がこのドキュメントを使ってくれるようになるといいなと僕は思いますね。

    「これを守ると高くなりますよ」っていいように言われるんですけどね。「高くなる」って誰が言い始めたんですかね。セキュアに作るか、作らないかであって、高い部品が要るわけでもないのに。

    ━━対応できる技術者が高いんですかね。

    上野:高くはなるでしょうね。でも、そこぐらいでしょ。安い人にお願いした結果ハリボテが出てきたら、それはユーザが騙されていることになる。

    ━━実際にセキュリティ要件に即した開発になっているかの見極めはどうしたらいいでしょう。

    上野:受け入れテストで脆弱性診断を実施するといいでしょう。欠陥住宅の事件があった時、住宅を鑑定する資格を持った人がクローズアップされましたよね。部材が入っているか、接着剤がどうか等を専門的に見てくれる人。受け入れテストはそういった観点で重要なんじゃないかと。普通にアプリケーションを何回も見たって、機能がちゃんと動いているくらいしか確認できないですよね。キッチンにコンロが三つあります、火がつきますくらいしか分からないのと一緒です。だから、ちゃんとプロの目で見極める必要があると思います。

    ━━ネットワークの場合はいかがですか。特に、オンプレミスでネットワーク環境を構築する際に社内ネットワークの診断をやる企業は……

    上野:社内LANのリソースに対して実施する企業は、ほぼ皆無だと思います。で、サポートが切れたWindowsサーバがまだ動いていたりします。「イントラネットだから別にいいですよね」とよく言われます。それが脅威だと思われていないのが脅威かなと思います。

    リスクの算出方法として、「脅威の大きさそのもの」ばかりでなく、「発生する確率」という要素もあるため、例えば、同じ脅威でもインターネット上より、内部ネットワークの方が発生確率は低い、ということになります。しかし、もう一つ別の要素として、機密性や可用性との兼ね合いである「資産の価値」を考えてみます。例えば、インターネットにある僕個人のブログと社内LANにある機密情報入りのサーバを比べたら、今度は当然、後者が守られるべきとなるでしょう。掛け算していくと、最終的に逆転することがあるはずです。

    ━━当社もよくお客様に、「うちのWebサイトは個人情報扱ってないから診断は必要ない」と言われます。

    上野:重要な情報があるか否かという判断軸になりがちですが、実は攻撃者が欲しいものとして、そのサーバ自体の信頼度がある。そこを踏み台にすると便利、という観点。私も侵入するときに踏み台をよく使います。乗っ取られた結果、次に乗っ取られる先、次に攻撃される先が出てきます。自分たちのオフィスの中に攻撃者を招き入れた結果、自分たちが加害者となって攻撃が行われる。それは駄目ですよね。

    ━━絶対に守らなければならないものと、リスクを多少許容してもかまわないものの切り分けができていないケースが多いように思います。

    上野:リスクアセスメントが必要ですね。まず、何の資産があるかを知ることじゃないでしょうか。物理的、電子的、無形物、色々あると思う。何を守らなきゃいけないかをまず洗い出す必要がある。

    ━━業務におけるセキュリティというのはどうでしょう。棚卸をするにしても、セキュリティを考慮しながら業務する企業は実際には少ないと思っています。重要情報をそれと認識していなかったり。

    上野:そこは、教育をしなきゃいけないと思います。上場企業だと全社員が受けるインサイダー情報のトレーニングがありますね。何を言っちゃいけなくて、何を漏らしちゃいけないのか。「これ重要だよね」という感覚は人によって全然違うので、それは企業が見解として示さなくてはいけない。

    ━━従業員のセキュリティ教育はどれぐらいの頻度で十分だと思いますか。

    上野:最初は結構頻繁にやるべきだと思います。というのは、セキュリティにいちいち気をつけていたらしんどいので、企業の文化として根付くまで浸透させなくてはいけないからです。それ以降は、年に1度とか、追加教育を思い出したようにやるとか。人はどんどん忘れていきますので。

    どうなるリモートワークセキュリティ元年

    ━━セキュリティは自然災害によっても変わりますし、流行り廃りもあります。今後1~2年はどういったことが予想されるでしょう。

    上野:やはりリモートワーク絡みのセキュリティ問題が噴出するんじゃないでしょうか。自分のPCから漏れる、会社に侵入される、リモートワークのツールがフィッシングに悪用される、とか。今年は「リモートワークセキュリティ元年」かもしれないですね。

    ━━リモートワークセキュリティ元年!いいですね、それ。APTはどうでしょう。これからも減ることはないのではないかと。

    上野:信用しやすくなるという観点だと、個人のPCに侵入する手口として、その人と仲良くなった後、オンラインミーティング系のツールだと偽ってインストールさせるのがますます増えるでしょうね。例えば相手に、「うちの会社、このツールじゃなきゃ駄目なんだよ。今日これから会議だから、すぐ入れてくれない?」って言われたら、絶対インストールするでしょ。しかもユーザは気づいてないかもしれない。僕もペネトレーションテストで使う手です。

    ━━あと、今まで注目されていなかったシステムや環境が注目されるとか。例えば、Zoomは爆発的にユーザが増えましたよね。脆弱性がこれまで一切出てこなかったツールで、今後はうじゃうじゃ出てくる、というような。

    上野:今まで誰も調べていなかったのに、急に流行ったツールの宿命だと思います。Zoomはニュースにも取り上げられましたが、逆にすごくセキュリティに前向きな会社という印象を抱いてます。バグバウンティのプログラムも始めた。相当自信がないとできないことです。Zoomはこの3ヶ月~半年ですごくセキュアになると思います。

    ━━SNSはどうですか。システム自体というより、攻撃の入り口として利用されるとか。

    上野:こんな中、LinkedIn等を利用して転職を考える人もいると思います。SNS経由でどこかを装って送られてくるっていうのは、非常に多そうですね。僕にもよく「パスワード漏れましたよ」って来ています。「あなたのSNSを半年前から見ています」というようなのです(笑)。

    ━━従業員がバラバラな場所で仕事をしている今、企業としてどのようなサポートをするのが、セキュリティの維持につながるでしょうか。

    上野:リモートワークでも何でも、必要な環境を企業が提供することが大事です。ユーザ任せではいつか破綻します。特にPCと、中に入っているソフトも管理できる状態にするのが大切。自宅のルータやネットワークの問題は、そこまで大きな脅威ではない。やはりコンピュータ自体が安全であることが一番だと思います。繰り返しになりますが、リモートワークは今後増えることはあっても絶対なくならないので、従業員分の予算をちゃんと確保していただきたいです。

    ーENDー 前編はこちら


    上野 宣 氏
    株式会社トライコーダ代表取締役
    ペネトレーションテストやサイバーセキュリティトレーニングなどを提供。OWASP Japan 代表、情報処理安全確保支援士集合講習講師、一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会GM、ScanNetSecurtity編集長などを務め、人材育成および啓蒙に尽力。『Webセキュリティ担当者のための脆弱性診断スタートガイド ? 上野宣が教える情報漏えいを防ぐ技術』、『HTTPの教科書』ほか著書多数。

    田澤 千絵
    株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)
    セキュリティサービス本部 セキュリティ情報サービス部 部長
    黎明期といわれる頃から20年以上にわたり情報セキュリティに従事。
    大手企業向けセキュリティポリシー策定、セキュリティコンサルを経て、現在は脆弱性診断結果のレポーティングにおける品質管理を統括。
    メジャーなセキュリティスキャンツールやガイドライン、スタンダード、マニュアル等のローカライズ実績も多数。


    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    <インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長【前編】

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    長年、脆弱性診断に携わり、セキュリティ人材の育成や情報配信、提言活動における中心的な役割を果たされてきた上野宣氏。ScanNetSecurity編集長として様々な取材もされてきた同氏に、この度、弊社よりセキュリティ事情について気になるあれこれをざっくばらんにお聞きする機会を得た。

    (聞き手:田澤 千絵/BBSec SS本部 セキュリティ情報サービス部 部長)

    後編→


    リモートワーク環境のセキュリティ対策よもやま

    ━━新型コロナウイルス対策のため、様々な企業が急に追い詰められ、全然準備もできてないままリモートワークに踏み切ったところも多いと思います。セキュリティ上の問題噴出や、実際に侵害されたというニュースも目にしますね。

    上野:私がコンサルしている会社で、比較的すんなりリモートワークに移行できた会社があります。元々は一切リモートワークを許可しておらず、VPNもなかったにもかかわらず、です 。そこは、いわゆるゼロトラスト*2 を体現していて、開発も含めビジネスを全てクラウド上で行っています。そういう環境を2年くらいかけて作りました。結果、PCを自宅に持ち帰ってもVPNなしでそのまま仕事ができる感じです。ゼロトラスト的なネットワークがちゃんと作れれば全然問題なく移行できることが、今回はっきりしたと思いました。

    でも、ほとんどの会社はそういうわけにいかず、おそらく全て会社のイントラネット上にある。例えばActive Directoryやファイルサーバ。デスクトップに色々なファイルや開発ツールがあったり。

    ━━では、ゼロトラストでなく従来型のネットワークの場合は、どうすれば安全にリモートワーク環境に移行できるでしょうか。

    上野:やはりVPNでしょう。ただし、VPNサーバがだいぶ前に設定されたままだったり、プロトコルが古かったり、IDとパスワードを共有していて誰が接続したかわからなかったり、といった問題に注意しなければならない。それに、全社員が接続できるVPNサーバとなると、急には対応できない会社が多いと思います。

    なので、AWS、Google等のクラウドを利用してVPNサーバを立て、そこを回線として接続するのがいいでしょう。結構安く、早くできると思います。

    ━━AWS利用の場合、責任分界点と言いますか、クラウドサービスベンダが担保してくれる部分と、ユーザが行わなくてはならないセキュリティ対策がありますよね。どう注意したらいいでしょうか。

    上野:CISなど、公開されているベストプラクティスを参照していただくのがいいでしょう。ちまたに溢れている個人のブログを漁って調べるという手もありますが、ちゃんと知識を持ったセキュリティベンダにサポートしてもらうのが一番です。わからないのを自分たちで何とかするのではなく、会社の資産を守る大事なところですので、補正予算を組み会社をあげて緊急でやるべきです。

    ━━コロナウイルス対策で生産性が落ちている会社もある中、追加でセキュリティ費用を捻出するのは難しいと想像しますが……

    上野:経営者がどう捉えるかですね。逆に、「オフィスいらないな」と考える経営者もいるわけで、その分リモートワーク環境に投資することもあると思うんです。今まで手間かけて机と椅子を用意していたのは何だったの、みたいな。このままコロナの問題がゼロになることはないでしょうから、いかに早く環境を整えるかが、ビジネスで勝つために重要ではないでしょうか。

    ━━先ほど上野さんがおっしゃったゼロトラストネットワークを実装する場合は、アクセス制御辺りが肝になりますか。

    上野:ID管理をしっかりしなくてはいけません。ゼロトラストを体現するためにIDaaS(アイディーアース:Identity as a Service。ID管理をクラウドで実施するサービス)を導入することで、アカウント管理をユーザ任せにせず、組織が管理する。海外だと、CISOのような感じでIDを管理する専門の役職もあると聞いたことがあります。

    ━━従業員に対しては、どのような注意をしておけばいいでしょうか。

    上野:パソコンは共有のものを使わない。ルータも最新のものを使う。人目につく公共の場では作業を行わない。あと、OSとアプリケーションのアップデート。昔から言われていることと同じです。 IPAが出している注意喚起は、割と簡潔で分かりやすいですね。

    ━━自宅環境でのリモートワークにあたり、環境を全て用意できない会社もあります。会社支給のPCでなく、自宅のPCを使用する場合の注意点は?

    上野:まず脅威として考えられるのは、マルウェア感染とか、攻撃者による遠隔操作とかですね。会社の重要情報をPCに置いてしまうと、盗まれる可能性が出てくる。さらに、会社にVPN接続するとか、会社の何らかのサービスにアクセスするとなると、そのIDやパスワードも盗られて中に侵入される危険性もある。

    もちろん、会社支給のPCならそういった事態が起きないというわけではありませんが、可能性は低い。資産管理ツールが入っていて余計なアプリケーションがインストールできないといった、ある程度の対策できるはずですから。

    ━━あと、懸念されるのはフィッシング系でしょうか。コロナウイルスに便乗したメール詐欺が増えています。

    上野:東日本大震災の時もそうでしたが、緊急事態があると、広く人々に関係のある事象が増える。例えば、コロナ対策で政府からの給付金をもらうために手続きがオンラインでできます、となると、「俺、関係あるな」となる。攻撃者は騙しやすいポイントをすかさず利用してきます。

    対策としては、許可されていないアプリケーションをインストールしないようにするとか、すべて疑ってかかるよう教育するとか、でしょうね。

    脆弱性診断ホンネトーク

    ━━上野さんご自身も、普段ペネトレーションテストや脆弱性診断を実施されていますが、当社のシステム脆弱性診断では、高リスク(当社基準)以上の脆弱性の検出が全診断件数の3割ほどにのぼります。この現状をどう思われますか。

    上野:脆弱性診断には相当長いこと関わっていますが、「全く世の中改善しないな」と思っています。僕らのアプローチが間違っているんじゃないかと思うぐらい。毎回、同じような脆弱性が出るし。

    ここ何年か、「興味がない人に、いかにセキュリティを届けるか」という僕のテーマがあるんですが、非常に難しい。だから、そういう人たちが意識しなくてもできるようにしなければいけない。例えば、Webアプリケーションでクロスサイトスクリプティングを直すのはプログラマではなく、フレームワークとかAPIを使うことで誰が作っても安全なものになるような環境にしていく。もちろん、セキュアコーディングというものが消えるわけじゃないが、たとえそれを知らなくても安全なものを作れる仕組みのほうが、僕は必要だと思っています。

    あとはWAF(Web Application Firewall)も含めて、全方位で担保できるもの。どんなひどいプログラムを書いても大丈夫なように、プラットフォームとかフレームワークとかWAFとか、各レイヤでなんとかできるようにするのがいい。

    ━━1つの対策だけじゃ守りきれないですから、多層防御は重要ですね。怖いのはゼロデイの脆弱性が見つかった時じゃないですか?

    上野:ゼロデイ攻撃がわかってからパッチが適用されるまでの間は、Webの場合はWAFで防御できる可能性もあります。セキュアコーディングでは対応できないかもしれないし、フレームワークのアップデートを待っていたら攻撃される恐れもあるので。

    フレームワークやライブラリのバージョン管理も大切です。そのためのOWASP Dependency Checkというツールなどがあります。

    ━━バージョン管理が徹底されていない会社はとても多いです。環境によってはアップデートできないというお客様もいらっしゃり、そうなると多層防御で、WAFやIPS/IDS入れてください、となると思います。

    上野:我々診断業界も変わらなきゃいけないかもしれないです。診断の結果、クロスサイトスクリプティングが出たことだけ言うのでなく、出ないようにするには業務をこう変えなくちゃいけないですよ、と。我々もクロスサイトスクリプティングを見つけるの、飽きたじゃないですか(笑)。

    そもそも最低限クリアしてしかるべきセキュリティレベルがあって、その上で脆弱性診断を受けてほしい。他の業界でもそうじゃないですか。安全な車を作った上で衝突テストをやるからいいのであって、適当に作った車で衝突テストしたってバラバラになるに決まってるじゃないですか。安全基準どおりのフレームワークで作った上で、「絶対安全なはずだけど念のためテストしてほしい」となるのが、脆弱性診断の本来あるべき姿だと思います。

    ━━同じ組織内でポリシーが定まっていない場合もあります。例えば、グループ企業同士を診断したら、A社はセキュリティの堅牢なシステムなのに、同じグループ傘下のB社は穴だらけだった、というような。

    上野:そもそも共通のルールやフレームワークがない組織が多い。でも、今後作るものについてだけでも対応していけば、5年後には良くなっているかもしれない。たとえ現状を変えるのは難しくても未来は変えられると思うので、そこは考えていただきたいですね。これを機に、リモートワークを適切に推進して、セキュリティ対策を「コストではなく投資だ」と言える会社が生き残っていくのではないでしょうか。

    ー後編へ続くー


    話し手 / 上野 宣 氏
    株式会社トライコーダ代表取締役
    ペネトレーションテストやサイバーセキュリティトレーニングなどを提供。OWASP Japan 代表、情報処理安全確保支援士集合講習講師、一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会GM、ScanNetSecurity編集長などを務め、人材育成および啓蒙に尽力。『Webセキュリティ担当者のための脆弱性診断スタートガイド - 上野宣が教える情報漏えいを防ぐ技術』、『HTTPの教科書』ほか著書多数。

    聞き手 / 田澤 千絵
    株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)
    セキュリティサービス本部 セキュリティ情報サービス部 部長
    黎明期といわれる頃から20年以上にわたり情報セキュリティに従事。
    大手企業向けセキュリティポリシー策定、セキュリティコンサルを経て、現在は脆弱性診断結果のレポーティングにおける品質管理を統括。
    メジャーなセキュリティスキャンツールやガイドライン、スタンダード、マニュアル等のローカライズ実績も多数。


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