
GitLabは2026年10月12日、重大な脆弱性を修正する更新を公開しました。認証なしで遠隔から任意のコードを実行できるRCE(Remote Code Execution:リモートコード実行)の脆弱性「CVE-2026-97229」に加え、AIエージェントに関する別の問題も対象です。自社でGitLabを運用する企業は、利用形態とバージョンを確認して更新を優先し、認証情報や権限の管理も点検する必要があります。
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CVE-2026-97229の対象と修正版を確認する
今回GitLabが修正した2つの脆弱性は、影響を受けるエディションやバージョン、攻撃に必要な認証の有無が異なります。自己管理型の運用担当者は、該当する系統の修正版を確認してください。対象バージョンと修正版は下図のとおりです。
図:GitLabで修正された2つの脆弱性と影響を受けるバージョン

※2つは別の脆弱性であり、攻撃の連鎖を示すものではありません。
まず、自社の利用形態を確認する必要があります。「GitLabを使っている」という情報だけでは、更新の担当者を決められません。自己管理型であれば、管理対象のインスタンスとバージョンを運用担当者が照合します。社内の複数部門が別々に運用している場合は、主要な開発環境だけで確認を終えず、管理対象全体を洗い出す必要があります。公式発表は攻撃が成立し得る条件と修正を説明したものであり、本記事で参照した発表から実際の被害発生は確認できません。深刻度の数値と、自社環境で侵害が起きたかどうかの判断は区別してください。更新後も、必要に応じてログや変更履歴を確認します。
開発基盤を守る理由は ソースコードだけではない
CI/CDは、ソースコードの変更からビルド、テスト、配布などを継続的に実行する仕組みです。開発作業を自動化するため、実行環境にはリポジトリや配布先へアクセスする権限が必要になります。OWASPも、CI/CDでは高い権限を持つ識別情報が利用されることがあり、実行基盤の保護、資産・バージョン管理、最小権限が重要だと説明しています*1。
したがって、管理対象はGitLab本体のバージョンにとどまりません。自社のCI/CDが何を読み出し、どの環境へ書き込み、どの認証情報を使用するのかを把握しておく必要があります。これは今回、ソースコードの改ざんや認証情報の窃取が確認されたという意味ではなく、開発基盤を運用する際の確認範囲を示したものです。GitLabの公式文書では、悪意あるCI/CDスクリプトが変数の値を取得し、外部へ送信する危険性も説明されています。変数をログ上で伏せる「マスク」は、悪意ある処理から秘密情報を守る保証にはなりません。パイプライン設定を変更するレビューで、外部通信や秘密情報の参照が加わっていないかを確認することが大切です。
GitLab Duoの問題は 別の脆弱性として扱う
CVE-2026-96893は、AIへの指示に細工した内容を混入させるプロンプトインジェクションの問題です。上図で示したとおり、AIエージェントに処理を任せる際の指示と、実行される操作の権限が論点になります。未認証RCEとAIエージェントの問題では、認証の要否や影響を受けるバージョンが異なります。両者を一つの攻撃経路として描いたり、「AIを使わなければ今回の更新は不要」と判断したりしないよう注意が必要です。プロンプトインジェクションへの一般的な対策では、AIが受け取る内容の検査に加え、実際に呼び出すツールの権限を制限することが重要です。OWASPは、ツール呼び出しを利用者の権限やセッションと照合し、APIの操作範囲を絞ることを勧めています。AIへの指示文だけに安全性を委ねず、重要な操作には人による承認を組み込む設計が必要です。
更新とあわせて 認証情報と操作履歴を点検する
運用を見直す際は、変更内容を追跡できるかを確かめます。たとえば、管理権限を持つアカウントの変更、パイプライン設定の更新、想定外のジョブ実行を、申請やレビューの記録と照合できる状態にします。すべての操作を無制限に記録するのではなく、調査に必要な情報を取得し、機密情報がログへ入り込まないように設計します。OWASPもCI/CD全体の可視性とログ分析の重要性を示しています。認証情報の扱いにも手順が必要です。漏えいや不正利用が疑われるトークンなどは、関係するシステムと影響を把握したうえで失効・再発行します。OWASPのシークレット管理指針は、不要になった情報や侵害の可能性がある情報の失効、必要最小限の権限、有効期限の管理を重視しています。単に新しい値を作るだけでなく、古い値が使えなくなったことと、正規の処理が新しい値で動くことまで確認する運用が求められます。
緊急アップデートに対応できる体制を平時からつくる
今回の対応を一度の更新で終わらせず、今後の脆弱性公表にも対応できる運用体制を整えることが重要です。開発部門が製品を管理し、情報システム部門がサーバーを管理しているなら、脆弱性情報の受信、影響判定、更新の承認、実施後の確認を誰が担当するのかを明確にします。更新が必要だと分かっても、停止の承認者や確認手順が不明では作業を進められません。資産の一覧と担当者、利用バージョン、重要な連携先を同じ単位で把握し、対応結果を残すことが、情報を実際の修正へ結び付ける土台になります。
脆弱性への継続的な対応とAIの安全な活用を支援
ブロードバンドセキュリティ(BBSec)が提供している「脆弱性情報提供」は、登録したシステム情報に応じて必要な脆弱性情報を絞り込み、通知するサービスです。情報収集が担当者個人に依存している場合や、対応状況の管理に課題がある場合の支援策として活用できます。通知を受けた後の影響判定や更新の責任分担も含め、自社に適した運用を検討することが重要です。またAIエージェントの利用ルールを整える場合には、「AIサービス提供者・利用者向けサイバーセキュリティ対策支援サービス」もご活用いただけます。ガイドラインの整備や教育を通じて、AIをどの業務で、どの権限で利用するかを組織として整理する取り組みを支援します。修正版の適用と、継続的な情報収集・運用ルールの整備を組み合わせ、開発基盤の安全性を保っていきましょう。
セキュリティ対策について相談する
脆弱性情報の継続的な収集や、AIの安全な利用に向けたセキュリティ対策について、お困りのことがございましたら、BBSecまでお気軽にご相談ください。

【参考情報】
- GitLab「GitLab Critical Patch Release: 19.4.2, 19.3.5, 19.2.8」(2026年10月12日)(https://docs.gitlab.com/releases/patches/patch-release-gitlab-19-4-2-released/)
- OWASP「CI/CD Security Cheat Sheet」(https://cheatsheetseries.owasp.org/cheatsheets/CI_CD_Security_Cheat_Sheet.html)
- GitLab「CI/CD variables」(https://docs.gitlab.com/ci/variables/)
- OWASP「LLM Prompt Injection Prevention Cheat Sheet」(https://cheatsheetseries.owasp.org/cheatsheets/LLM_Prompt_Injection_Prevention_Cheat_Sheet.html)
- OWASP「Secrets Management Cheat Sheet」(https://cheatsheetseries.owasp.org/cheatsheets/Secrets_Management_Cheat_Sheet.html)
編集責任:木下
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