DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは?仕組み・被害・対策を比較解説

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DoS攻撃とDDoS攻撃は、Webサイトやサーバーに大量の通信を送り付け、サービスを利用しにくくしたり、停止させたりするサイバー攻撃です。

どちらもサービス妨害を目的とする攻撃ですが、攻撃元の数や規模、検知・防御の難しさには大きな違いがあります。特にDDoS攻撃は、多数の端末から同時に通信が送られるため、正規のアクセスとの見分けが難しく、企業のWebサービスや業務システムに大きな影響を及ぼすおそれがあります。

本記事では、DoS攻撃とDDoS攻撃の仕組みや違い、企業に及ぼす被害、対策のポイントについて比較しながら解説します。

DDoS攻撃の基本的な仕組みや種類について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。「DDoS攻撃とは?仕組み・種類・被害・対策を企業向けに解説

DoS攻撃とは

DoS攻撃とは、「Denial of Service attack」の略称で、サーバーやネットワーク機器に過剰な負荷をかけ、サービスを利用できない状態にするサイバー攻撃です。

攻撃者は、特定のWebサイトやサーバに対して大量のリクエストやデータを送り付けます。処理能力や通信容量を超える負荷が発生すると、システムの応答が遅くなったり、サービスが停止したりする可能性があります。

一方で、単純に大量の通信を送るだけでなく、Webアプリケーションやネットワーク機器の脆弱性、設定不備を悪用して、少ない通信でシステムを停止させる攻撃もあります。

例えば、次のような問題がDoS攻撃に悪用される可能性があります。

  • 極端に長い文字列を処理してしまう
  • アップロードできるファイル容量に上限がない
  • 短時間に送信されるリクエスト数を制限していない
  • ネットワーク機器やソフトウェアに脆弱性が残っている
  • 不要なサービスやポートが外部に公開されている

このような脆弱性や設定不備に起因するDoS攻撃については、システムの修正や設定の見直しによって、発生リスクを抑えることが可能です。

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃とは、「Distributed Denial of Service attack」の略称で、複数の端末から一斉にDoS攻撃を行う手法です。

Distributedは”分散された”という意味であり、攻撃者は多数の端末を利用して、対象となるWebサイトやサーバーに大量の通信を送り付けます。

DDoS攻撃では、マルウェアに感染したパソコンやサーバー、ルーター、ネットワークカメラ、IoT機器などが攻撃に利用されることがあります。攻撃者の指示によって遠隔操作される端末の集まりは、ボットネットと呼ばれます。

端末の所有者が、自分の機器が攻撃に利用されていることに気づいていないケースも少なくありません。攻撃者は、こうした多数の端末から同時に通信を発生させることで、大規模な攻撃を実行します。

DDoS攻撃では、攻撃元となるIPアドレスが多数存在するため、特定の通信だけを遮断することが困難です。また、一般の利用者による正規のアクセスと攻撃通信が混在することもあり、単純なアクセス制限では対応できない場合があります。

そのため、DDoS攻撃への対応には、通信量の監視やアクセス制御だけでなく、CDN、WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)、DDoS対策サービス、クラウド側の防御機能などを組み合わせた対策が必要です。

DoS攻撃とDDoS攻撃の違い

Dos攻撃/DDos攻撃とはのサムネ
DoS攻撃/DDoS攻撃の概要図

DoS攻撃とDDoS攻撃は、どちらもサービスの停止や遅延を引き起こす攻撃です。大きな違いは、攻撃元の数と攻撃規模にあります。

DoS攻撃では、攻撃元が限られている場合、特定のIPアドレスを遮断することで対応できる可能性があります。

一方、DDoS攻撃では、数多くの端末から通信が送られるため、攻撃元を一括して遮断することが難しくなります。正常な利用者の通信まで遮断してしまうと、自らサービスを停止させる結果にもなりかねません。

また、DDoS攻撃は、大量の通信を送り付けるだけでなく、Webサーバーやアプリケーションに負荷の高い処理を繰り返させる形で実行されることもあります。

そのため、通信量だけを監視するのではなく、アクセスパターンやリクエスト内容、処理負荷なども含めて異常を検知する必要があります。

なぜDDoS攻撃が脅威なのか

DDoS攻撃が企業にとって大きな脅威となる理由は、攻撃規模が大きいことだけではありません。攻撃元が分散しており、正規のアクセスとの見分けが難しい点にあります。

多数の端末から同時に攻撃される

DDoS攻撃では、ボットネットに組み込まれた多数の端末が利用されます。

攻撃元が世界中に分散している場合、個別のIPアドレスを遮断しても、別の端末から攻撃が続く可能性があります。

また、攻撃元となる端末の多くは、一般の企業や個人が利用しているパソコン、サーバー、IoT機器などです。そのため、単純に特定の国や地域からの通信を遮断するだけでは、攻撃を防げないことがあります。

正規のアクセスと区別しにくい

DDoS攻撃には、ネットワーク回線を大量の通信で埋め尽くす攻撃だけでなく、通常のWebアクセスとよく似たリクエストを繰り返す攻撃もあります。

例えば、検索機能やログイン画面、商品一覧、APIなど、サーバー側で比較的大きな処理が必要となる機能にアクセスを集中させる手法です。

通信そのものは通常のアクセスと似ているため、攻撃だけを正確に遮断することが難しくなります。

短時間でも大きな損失につながる

Webサイトやオンラインサービスが停止すると、企業にはさまざまな影響が生じます。

  • 商品やサービスの販売機会を失う
  • 顧客がサービスを利用できなくなる
  • コールセンターや問い合わせ窓口への連絡が増える
  • 復旧対応や原因調査に人的コストがかかる
  • 顧客や取引先からの信用が低下する
  • SLA違反や契約上の問題が発生する

ECサイトや予約サービス、金融サービス、オンラインゲーム、SaaSなど、インターネット上でサービスを提供する企業では、短時間の停止でも売上や顧客満足度に大きな影響を与える可能性があります。

別の攻撃と同時に行われることがある

DDoS攻撃は、単独で実行されるとは限りません。

大量のアラートや障害対応によって企業の担当者を混乱させ、その間に別のシステムへの不正アクセスを試みるなど、陽動目的で利用される可能性もあります。

DDoS攻撃が発生した場合には、サービス復旧だけに集中するのではなく、不審なログインや設定変更、マルウェア感染、情報漏えいなど、別の異常が発生していないかも確認することが重要です。

企業が取るべき対策

DoS攻撃やDDoS攻撃を完全に防ぐことは容易ではありません。特に大規模なDDoS攻撃では、自社のサーバーやネットワーク機器だけで防御することは難しく、通信が自社環境に到達する前の段階で対処する必要があります。重要なのは、単一の製品や設定だけに依存せず、複数の対策を組み合わせることです。

  1. 必要のないサービス・プロセス・ポートは停止する
  2. OSや機器、ソフトウェアを更新する
  3. リクエスト数やデータ容量を制限する
  4. CDNやDDoS対策サービスを利用する
  5. 脆弱性対策が施されたパッチを適用する
  6. WAFを導入する
  7. システムを冗長化する
  8. 通信状況を監視する
  9. 脆弱性診断を実施する
  10. DoS攻撃/DDoS攻撃の端緒になりうる各種の不備を見つけて直す

自組織のセキュリティ状況を見直し、リスク状況を把握することにより、攻撃に備えることが大切です。どの対策のほうがより効果があるということではなく、それぞれ防御するレイヤーが異なるので複数組み合わせていく、「多層防御」がより効果的です。

WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール

WAFでは大量に不正に送信される大量のパケットのブロックや、一時的にアクセスが集中した際にはサーバが停止する前にアクセスの制限をかけるなどができます。また、適切なシグネチャ(Webアプリケーションへのアクセスパターンの定義ファイル)を設定しておくことで、攻撃コードの送信を検知して攻撃コードがアプリケーションに届く前に不正なコードの送信としてWAFで止めることが可能になります。

Webアプリケーション脆弱性診断

脆弱性診断を行うことで予め管理しているWebアプリケーションの脆弱性状況を把握し、脆弱性の修正を行うことによってスキャンされた際に脆弱性情報としてハッカーの目に留まることを防げます。脆弱性を悪用した攻撃についても同様でそもそも悪用できそうな脆弱性がない、という状態を維持することができます。

Webアプリケーション脆弱性診断のサービスバナー

脆弱性や設定不備に起因するDoS攻撃は予防できる

DoS攻撃/DDoS攻撃は攻撃の発生に気づくのが難しいという話を記事内で述べましたが、一方で、防ぐことができるタイプの攻撃も存在します。

一部のWebサイトでは、「長大な文字列を受け入れてしまう」「ファイルの容量を制限しない」など、DoS攻撃につけ込まれてしまう問題が存在することがあります。また、ネットワーク関連の設定の不備によってDoS攻撃を受ける可能性も存在します。しかし、こうした脆弱性は、修正による回避が可能です。

また、あなたの企業が直接DoS攻撃の攻撃対象とならなくても、上述のような脆弱性を放置しておくとDDoS攻撃の踏み台にされることもあります。その対策としては、各種機器・OS・ソフトウェアの脆弱性管理を適切に行うことや、脆弱性診断等のセキュリティ診断を定期的に実施して未知のリスクを把握し、対処することが重要です。


ここで余談ではありますが、診断実施に伴う「あるある」エピソードを。
セキュリティ診断を行う際には、必ず、実施の年月日や時間帯を関連する部署に周知しなくてはなりません。実は、診断実施に伴って事業部門等が「DoS攻撃が発生した!」と勘違いすることが、しばしばあるのです。もちろん、一般にインターネット上に公開しているシステムの場合には業務に差し支えるような検査の仕方をしないというのが大前提ですが、それでも、大量の問合せ等が発生すると何も知らされていない担当部署はサイバー攻撃と勘違いすることがあります。ついでにこの際に抜き打ちで社内のサイバー訓練を・・・と目論みたい気持ちが出たとしても、それを実行に移すのは大変危険です。訓練は訓練させる側にきちんとした検証シナリオがあってこそ効果を発揮します。まずは関係各所との連携を徹底するところから始めましょう。


DDoS攻撃では、サービス復旧だけでなく、不正アクセスや情報漏えいの有無も確認することが重要です。初動対応の流れや確認すべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
DDoS攻撃を受けたらどうする?―初動対応から復旧までの流れを解説―

まとめ

DoS攻撃とDDoS攻撃は、どちらもサーバーやネットワークに負荷をかけ、サービスの遅延や停止を引き起こす攻撃です。

DoS攻撃は1台または少数の端末から行われることが多いのに対し、DDoS攻撃は多数の端末から同時に実行されます。

DDoS攻撃は、攻撃元が分散しているため特定や遮断が難しく、正規のアクセスと攻撃通信を見分けにくい点が特徴です。

企業は、CDNやWAF、DDoS対策サービス、システムの冗長化、通信監視などを組み合わせて、被害を抑える必要があります。

また、脆弱性や設定不備を悪用するDoS攻撃については、OSやソフトウェアの更新、不要なサービスの停止、アクセス制御の見直し、脆弱性診断などによってリスクを低減できます。

攻撃を完全に防ぐことだけを目指すのではなく、異常を早期に検知し、サービスへの影響を最小限に抑え、迅速に復旧できる体制を整えておくことが重要です。

公開日:2022年8月3日
更新日:2026年8月5日

編集責任:木下


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DDoS攻撃とは?仕組み・種類・被害・対策を企業向けに解説

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DDoS攻撃とは?仕組み・種類・被害・対策を企業向けに解説アイキャッチ画像

DDoS攻撃は、大量の通信を送り付けて、Webサイトやサーバーを利用しにくくするサイバー攻撃です。サービス停止や業務の停滞を招くおそれがあるため、企業は仕組みと対策を理解しておく必要があります。本記事では、DDoS攻撃の種類や被害、基本的な対策を解説します。

DoS攻撃との違いを詳しく知りたい方、実際にDDoS攻撃を受けた場合の初動対応や復旧の流れについて知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは
DDoS攻撃を受けたらどうする?

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、Webサイトやサーバー、ネットワーク機器などに大量の通信やリクエストを送り付け、正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃です。攻撃を受けると、Webサイトの表示遅延やサービス停止、ネットワークの応答遅延などが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

DDoS攻撃の特徴は、攻撃者が多数の端末やネットワークを利用する点にあります。攻撃者は、マルウェアなどに感染した機器で構成される「ボットネット」を悪用します。

世界中の端末から一斉に通信を送るため、単一の送信元を遮断するだけでは防ぎにくい攻撃です。近年では、ECサイトや金融機関、自治体、医療機関など、幅広い組織が標的となっています。企業規模を問わず対策が求められています。

また、DDoS攻撃は、サービス停止だけを目的とするものではありません。攻撃による混乱に乗じて、不正アクセスや情報窃取など、別の攻撃を試みる「陽動」として利用されるケースもあります。

DDoS攻撃を理解するためには、まずDoS攻撃との違いや、どのような目的で実行されるのかを知ることが重要です。

DoS攻撃との違い

DoS攻撃は、単一または少数の端末からサービスを妨害する攻撃です。DDoS攻撃は、多数の端末から分散して通信を送るため、攻撃元の特定や遮断が難しくなります。

DoS攻撃とDDoS攻撃の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。「DoS攻撃とDDoS攻撃の違いとは

なぜDDoS攻撃が行われるのか

DDoS攻撃の目的は、単にWebサイトやサービスを停止させることだけではありません。企業活動を妨害したり、金銭を要求したり、別のサイバー攻撃を成功させるための陽動として利用されたりするなど、さまざまな目的で実行されます。

例えば、ECサイトや予約システムを停止させることで売上機会の損失を狙うケースや、競合他社への業務妨害を目的とした攻撃が報告されています。

また、サービス停止による混乱の中で、不正アクセスや情報窃取を試みることもあります。このような「陽動攻撃」として、DDoS攻撃が利用されるケースもあります。

近年では、IoT機器の普及やボットネットの大規模化が進んでいます。その結果、専門的な知識がなくても、攻撃サービスを利用して大規模なDDoS攻撃を実行できる環境が問題視されています。

こうしたサービスは、DDoS-for-Hire、すなわちDDoS請負サービスなどと呼ばれます。そのため、企業規模を問わず、DDoS攻撃を想定した備えが重要になっています。

DDoS攻撃の仕組み

DDoS攻撃は、多数の端末やサーバから、標的へ一斉に大量の通信を送る攻撃です。サーバやネットワーク機器に過剰な負荷をかけ、正常なサービス提供を妨げます。

攻撃対象は、Webサイトだけではありません。DNSサーバやVPN、API、クラウドサービスなど、多岐にわたります。

攻撃者は、自ら大量の通信を送るのではありません。マルウェアに感染したIoT機器やパソコン、サーバーなどを遠隔操作します。そして、ボットネットを構築して攻撃を実行するのが一般的です。

また、DDoS攻撃は、大量の通信によって回線帯域を圧迫するものだけではありません。ネットワーク機器に負荷をかける攻撃や、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送る攻撃など、複数の手法があります。

そのため、自社サービスを守るためには、攻撃の仕組みを理解し、それぞれの手法に応じた対策を講じることが重要です。

ボットネットによる分散攻撃

DDoS攻撃では、多くの場合「ボットネット(Botnet)」と呼ばれるネットワークが悪用されます。ボットネットとは、マルウェアに感染したパソコンやサーバ、IoT機器などが攻撃者の遠隔操作下に置かれた状態のネットワークです。攻撃者はこれらの端末へ一斉に指示を送り、標的に大量の通信を発生させます。

近年では、監視カメラやルーター、ネットワーク機器など、十分なセキュリティ対策が施されていないIoT機器がボットネットに組み込まれる事例も確認されています。機器の所有者が気付かないまま攻撃に加担しているケースも少なくありません。

ボットネットを利用したDDoS攻撃では、世界中に分散した多数の端末から同時に通信が送られるため、単一の送信元を遮断するだけでは十分な対策が難しくなります。

攻撃の流れ

DDoS攻撃は、一般的に次のような流れで実行されます。

  1. ボットネットの構築
    攻撃者は、マルウェアに感染したパソコンやサーバー、IoT機器などを遠隔操作できる状態にし、ボットネットを構築します。
  2. 攻撃対象の選定
    WebサイトやECサイト、VPN、DNSサーバー、APIなど、攻撃対象となるシステムを選定します。
  3. 攻撃命令の送信
    攻撃者がボットネットへ攻撃命令を送ると、多数の端末が一斉に標的へ通信やリクエストを送信します。
  4. サービスへの影響
    大量の通信によってネットワーク回線やサーバー、ネットワーク機器、Webアプリケーションに負荷がかかり、応答遅延やサービス停止などが発生します。

攻撃の種類によっては、ネットワーク帯域を圧迫するだけでなく、ファイアウォールやロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかけるものや、Webアプリケーションへ大量のリクエストを送るものもあります。そのため、攻撃の種類に応じた対策を講じることが重要です。

DDoS攻撃の主な種類

DDoS攻撃にはさまざまな手法がありますが、大きく分けると「ボリューム攻撃」「プロトコル攻撃」「アプリケーション層攻撃」の3種類に分類できます。

攻撃対象や攻撃方法が異なるため、サービスへの影響や有効な対策もそれぞれ異なります。攻撃の種類を理解することは、自社サービスがどのようなリスクにさらされているのかを把握し、適切な対策を講じるための第一歩です。

ここでは、代表的な3つの攻撃手法について解説します。

ボリューム攻撃

ボリューム攻撃は、大量の通信を送り付けてネットワーク回線の帯域を圧迫し、正規の利用者がサービスへアクセスできない状態にする攻撃です。DDoS攻撃の中でも代表的な手法であり、回線容量を超える通信が発生すると、サーバーが正常に稼働していてもサービスを利用できなくなることがあります。

代表的な手法として、UDP FloodDNS Amplification(DNSリフレクション攻撃)NTP Amplificationなどがあります。特にDNSやNTPなどの公開サーバーを悪用する反射・増幅型攻撃では、小さなリクエストを利用して何倍もの通信量を発生させるため、攻撃者は比較的少ない通信量でも大きな負荷を与えることができます。

プロトコル攻撃

プロトコル攻撃は、TCP/IPなどの通信プロトコルの仕組みを悪用し、サーバーやファイアウォール、ロードバランサーなどのネットワーク機器に負荷をかける攻撃です。通信回線そのものを埋め尽くすボリューム攻撃とは異なり、ネットワーク機器やサーバーの処理能力を消費させることで、正常な通信を妨害します。

代表的な手法としては、SYN Floodがあります。TCP通信の接続要求(SYNパケット)を大量に送り付けることで、サーバは接続待ちの状態を維持し続けることになり、新たな正規ユーザからの接続を受け付けられなくなる場合があります。このほか、Ping FloodSmurf攻撃などもプロトコル攻撃の一種として知られています。

アプリケーション層攻撃

アプリケーション層攻撃は、WebサイトやWebアプリケーション、APIなどを標的とするDDoS攻撃です。利用者が直接アクセスするサービスが狙われます。

通信量そのものはそれほど多くなくても、サーバーが処理に時間を要するリクエストを大量に送ることで、CPUやメモリなどのリソースを消費させ、サービスの応答遅延や停止を引き起こします。

代表的な手法としてHTTP Floodがあります。通常のWeb閲覧と同じHTTPリクエストを大量に送信するため、正規のアクセスと見分けにくく、単純な通信量の監視だけでは検知が難しい場合があります。また、検索機能やログイン画面、APIなど、サーバー負荷の高い処理を集中的に狙う攻撃も確認されています。

DDoS攻撃による被害

DDoS攻撃による影響は、単にWebサイトが一時的に閲覧できなくなるだけではありません。サービス停止による売上機会の損失や業務の停滞、顧客対応の負荷増加など、企業活動全体へ影響が及ぶ可能性があります。

また、長時間にわたってサービスが利用できない状態が続くと、企業の信頼低下やブランドイメージの毀損につながるおそれもあります。

近年では、DDoS攻撃を単独で行うだけでなく、その混乱に乗じて不正アクセスや情報窃取など別の攻撃を試みるケースも報告されています。そのため、DDoS攻撃は単なる通信障害ではなく、企業の事業継続に関わるセキュリティリスクとして捉えることが重要です。

ここでは、企業が受ける代表的な被害について解説します。

サービス停止

DDoS攻撃による代表的な被害は、Webサイトやオンラインサービスの停止です。

大量の通信やリクエストが送られると、サーバーやネットワーク機器に過剰な負荷がかかります。その結果、Webページの表示遅延やタイムアウト、エラーが発生し、正規の利用者がサービスを利用できなくなることがあります。

特に、ECサイトや予約システム、会員向けサービス、決済サービスなど、インターネットを通じて提供されるサービスでは、短時間の停止であっても売上機会の損失や顧客満足度の低下につながる可能性があります。

さらに、DDoS攻撃ではサーバー自体に障害が発生していなくても、回線帯域の逼迫やネットワーク機器への負荷によってサービスが利用できなくなる場合があります。そのため、システムが正常に稼働しているように見えても、利用者からは「サービスが停止している」と認識されるケースも少なくありません。

業務への影響

DDoS攻撃の影響は、Webサイトの停止だけにとどまりません。公開サービスと社内システムが同じネットワークや認証基盤を利用している場合には、VPNや業務システム、クラウドサービスなどへ影響が及び、日常業務に支障をきたすことがあります。

また、サービス停止に伴い、顧客や取引先からの問い合わせが急増し、カスタマーサポートや営業部門の対応負荷が高まることもあります。

ECサイトでは注文処理や決済が滞り、BtoBサービスでは取引先の業務に影響を与えるなど、事業継続にも大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、障害対応のために情報システム部門やセキュリティ担当者が長時間の対応を余儀なくされ、本来予定していた業務が停滞するケースも少なくありません。

企業の信頼低下

DDoS攻撃によるサービス停止が長時間続いたり、繰り返し発生したりすると、企業に対する信頼の低下につながるおそれがあります。利用者は「サービスが安定して利用できない企業」という印象を持つ可能性があり、顧客離れや新規顧客の獲得機会の損失につながることもあります。

さらに、DDoS攻撃をきっかけに、自社のセキュリティ対策やインシデント対応体制が十分であるかを取引先や顧客から問われることもあります。そのため、平時から適切な対策を講じるとともに、攻撃発生時には迅速かつ適切な対応を行うことが、企業の信頼維持につながります。

企業が実施すべきDDoS攻撃対策

DDoS攻撃は、完全に防ぐことが難しいサイバー攻撃の一つです。そのため、攻撃を受けることを前提に、被害を最小限に抑えるための対策を講じることが重要です。ここでは、企業が押さえておきたい代表的なDDoS攻撃対策を紹介します。

通信の監視と異常検知

DDoS攻撃による被害を最小限に抑えるためには、通信状況を継続的に監視し、通常とは異なるアクセスを早期に検知できる体制を整えることが重要です。

アクセス数や通信量、リクエスト数などの推移を日頃から把握しておくことで、異常な増加が発生した際に迅速な対応につなげることができます。

近年では、SIEM(Security Information and Event Management)やネットワーク監視ツールを活用し、異常な通信を自動で検知・通知する仕組みを導入する企業も増えています。

DDoS攻撃は短時間で通信量が急増するケースが多いため、異常を検知してから対応を開始するまでの時間が重要です。

CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用

DDoS攻撃は、攻撃元が世界中の多数の端末に分散しているため、自社設備だけで防ぎきることは難しく、外部サービスとの連携が対策の基本方針になります。特に、大量の通信が発生するボリューム攻撃では、自社ネットワークに到達する前に不要な通信を分散・遮断する仕組みが重要になります。

  • CDN(Content Delivery Network):コンテンツを複数のサーバーに分散して配信することで、通信負荷を分散し、サービスの継続性向上に役立ちます。
  • WAF(Web Application Firewall):Webアプリケーションへの不正なアクセスや不審なリクエストを検知・制御する機能を備えており、特にアプリケーション層を狙った攻撃への対策として有効です。
  • DDoS対策サービス:専用の設備で攻撃トラフィックを検知・吸収・フィルタリングし、正常な通信のみを自社環境へ転送する仕組みを提供しています。

攻撃の規模やサービスの重要度に応じて、ISPやクラウド事業者が提供する対策サービスも含め、自社に適した構成を検討するとよいでしょう。

自社の対策状況に不安がある場合

「どのサービスを、どこまで導入すべきか」の判断が難しい場合は、専門会社によるDDoS耐性評価・セキュリティ診断を活用するのも一つの方法です。現状のリスクを可視化したうえで、優先度をつけて対策を進めることができます。

インシデント対応体制の整備

DDoS攻撃は、技術的な対策だけで完全に防ぐことは困難です。そのため、攻撃を受けた際に迅速かつ適切に対応できる体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。

具体的には、攻撃発生時の連絡体制や対応手順を文書化し、情報システム部門だけでなく、経営層や広報部門、カスタマーサポート部門など、関係者の役割を明確にしておくことが求められます。

また、ISPやクラウド事業者、セキュリティベンダーなどの連絡先や支援体制を事前に確認しておくことで、緊急時の対応を円滑に進められます。

まとめ

DDoS攻撃は、大量の通信によってWebサイトやネットワークサービスを利用できない状態にするサイバー攻撃です。攻撃手法にはボリューム攻撃、プロトコル攻撃、アプリケーション層攻撃などがあり、それぞれ特徴や有効な対策が異なります。

企業は、通信の監視や異常検知、CDN・WAF・DDoS対策サービスの活用に加え、インシデント対応体制の整備など、多層的な対策を講じることが重要です。また、攻撃を完全に防ぐことは難しいため、被害を最小限に抑えるための備えも欠かせません。

攻撃発生時の具体的な対応手順や、復旧までの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
DDoS攻撃を受けたらどうする?初動対応から復旧までの流れを解説

【関連記事】

DDos攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。

【参考情報】


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DDoS攻撃への備えには、ネットワークやWebアプリケーションのリスクを把握することが重要です。BBSecでは、脆弱性診断をはじめ、お客様の環境に応じたセキュリティ評価をご提供しています。

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アクセス急増の原因が複雑で判断が難しい場合や、継続的な運用に不安がある場合は、第三者の視点を取り入れることも有効です。定期的なセキュリティ診断や評価を通じて、自社では気づきにくいリスクを把握することができます。


公開日:2021年6月23日
更新日:2026年7月29日

編集責任:木下


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【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴 第3回:今後のトレンドと企業が取るべき対策

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ランサムウェアギャング大図鑑:第3回 今後のトレンドと企業が取るべき対策アイキャッチ画像

急速に変化を続けるランサムウェアの脅威についてシリーズ第3回では、2025年以降に予測される攻撃トレンドと、防御の要となる企業の対策ポイントを解説します。AIを活用した攻撃の自動化、地域・業種特化型の攻撃、そして“多重恐喝”の常態化など、脅威はさらに高度化しています。被害を防ぐために企業がとるべき対策や実践的な技術的対策から組織的な備えまで、最新の防御戦略をわかりやすく紹介します。

はじめに:2025年のランサムウェア攻撃と企業への脅威

これまでの2回にわたり、ランサムウェアの進化と市場の変動、そして主要なランサムウェアギャングの勢力図の変化を見てきました。第1回では、ランサムウェア攻撃がどのように進化してきたかを、技術的な進歩や新たな攻撃手法を中心に解説しました。第2回では、ランサムウェアギャングの台頭とその戦略の変化に焦点を当て、特に「RaaS(Ransomware-as-a-Service)」の普及による攻撃の多様化を説明しました。

そして「ランサムウェアギャング大図鑑」シリーズ最終回の第3回では、これらの現状を踏まえて予測される2025年以降のランサムウェア攻撃のトレンドと、企業が今後取るべき対策をご紹介します。攻撃者の進化と企業の防御策がかみ合わないと、被害は拡大する一方です。したがって、最新の脅威動向をしっかりと把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。

今後のランサムウェア攻撃のトレンド

ランサムウェア攻撃は年々進化を続けており、攻撃者の手法はますます高度化しています。以下のトレンドが、2025年以降のランサムウェア攻撃を特徴づけると予測されます。

AIおよび機械学習を悪用した攻撃の高度化

ランサムウェア攻撃者は、攻撃をより手軽に仕掛けるため、AIや機械学習を活用し始めています。今後、生成AIの技術は、以下のような形で攻撃に悪用されると予測されています。

攻撃のターゲティング精度の向上

AIを活用することで、攻撃者はターゲットをより詳細に分析し、最も脆弱な部分を狙った攻撃が可能になります。過去の攻撃パターンやデータを学習させることで、企業にとって最も致命的な脆弱性を見つけ出すことができます。

攻撃プロセスの自動化

攻撃の自動化により、従来よりも高頻度かつ広範囲にわたる攻撃が実施される可能性が高まります。AIを利用することで、攻撃者は迅速に脆弱性を見つけ出し、効率よく攻撃を仕掛けることができるようになります。

フィッシング攻撃の進化

AIを駆使して、よりリアルで説得力のあるフィッシングメールが生成され、従業員が引っかかりやすくなります。

サプライチェーン攻撃の増加

サプライチェーン攻撃は2025年以降、さらに拡大することが予測されています。攻撃者は、特に信頼性の高い企業の取引先やパートナーを標的にし、その脆弱性を悪用して間接的に大手企業のネットワークへアクセスする手法を取ります。サプライチェーンでは多くの企業がネットワークを共有しているため、一度攻撃者の侵入を許してしまうと、その後広範囲に影響が及びます。

ランサムウェア(RaaS)モデルの深刻化

今後、RaaSのサービスプロバイダがさらに多様化し、攻撃者が手軽にランサムウェアを利用できる環境が整っていくでしょう。これにより、より多くの犯罪者がランサムウェア攻撃に参入し、その結果として攻撃が広範囲に及ぶことが予測されます。

ゼロデイ攻撃の増加

ゼロデイ攻撃は、未公開の脆弱性を突いた攻撃です。攻撃者は、パッチが公開される前に脆弱性を悪用し、感染拡大を狙います。これからのランサムウェア攻撃において引き続き重要な手段として使用されるでしょう。

ゼロデイ攻撃についてSQAT.jpでは以下の関連記事を公開中です。こちらもあわせてぜひご覧ください。
世界で多発するゼロデイ攻撃とは?Apple・Google・Ciscoを襲った脆弱性の実態と対策
https://www.sqat.jp/tamatebako/39750/

企業がとるべきセキュリティ対策

今後、ランサムウェア攻撃はさらに巧妙化し、企業に対する脅威が増大すると予測されます。企業は以下のような対策を講じることにより、リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

多層防御策の強化

ランサムウェア攻撃を防ぐためには、単一の防御策では不十分です。多層防御を導入し、複数のセキュリティ対策を重ねることで攻撃のリスクを大幅に低減できます。具体的には以下のセキュリティ対策例が挙げられます。

エンドポイントセキュリティ(EDR)の強化

EDR(Endpoint Detection and Response)を導入し、攻撃を早期に発見できる体制を整えます。これにより、サイバー攻撃の初期兆候をいち早く検出することが重要です。

ゼロトラストモデルの導入

ゼロトラスト(Zero Trust)アーキテクチャの導入により、企業はすべてのアクセスの信頼性を常に検証し、最小限のアクセス権を付与することが求められます。

サプライチェーンリスク管理

企業は自組織のサプライチェーンの脆弱性をしっかりと把握し、取引先やパートナー企業に対するセキュリティ評価を強化する必要があります。

バックアップと復旧体制の整備

ランサムウェア攻撃を受けた場合、迅速な復旧ができる体制を整えておくことが重要です。具体的には以下のような例が挙げられます。

  • オフラインバックアップの実施
    ランサムウェアはオンラインバックアップも暗号化する可能性があるため、オフラインでバックアップを保持することが必要です
  • 復旧計画のテスト
    定期的にバックアップと復旧手順をテストし、実際の攻撃時に速やかに復旧できるよう準備します

インシデント対応計画の策定

ランサムウェア攻撃を受けた場合、迅速な対応が求められます。企業はインシデント対応計画を策定し、発生時の対応マニュアルや手順を明確にした上で、組織内での訓練を定期的に行うことが重要です。インシデント対応チームの迅速な対応が企業の存続に直結します。

まとめ:2025年のランサムウェア脅威への最適な防御策

ランサムウェア攻撃はますます巧妙化し、企業にとってその脅威は深刻化しています。しかし、適切な対策を講じることで、企業はリスクを最小化することができます。進化する攻撃トレンドに対応するために、企業は多層防御、ゼロトラスト、サプライチェーンリスク管理、バックアップ体制の強化、インシデント対応の準備を万全に整えることが求められます。今後もランサムウェア攻撃は進化し続けるため、自組織の環境に応じた適切なセキュリティ対策を実施し、組織内のセキュリティ意識を高めていくことが求められるでしょう。


―連載一覧―

第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造
第2回:2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴 第2回:2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析

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    2025年注目のランサムウェアギャング徹底分析アイキャッチ画像

    世界では100を超えるランサムウェアギャングが活動しており、勢力図は日々変化しています。シリーズ第2回では、LockBitやQilin、Cl0p、Akiraなど、2025年現在も活発に活動している主要なランサムウェアギャングを中心に、その手口・特徴・攻撃傾向を徹底分析します。また、BlackCatやRansomHubなど衰退したグループの動向にも触れ、再編を繰り返すランサムウェア市場の「現在地」を整理し、企業が注視すべき最新の脅威を明らかにします。

    2025年の勢力図 ― ランサムウェア市場の再編

    2025年現在、ランサムウェアの勢力図は大きく塗り替えられています。かつて世界中で猛威を振るったContiやREvil、そしてRansomHubが姿を消した一方で、LockBit、BlackCat(ALPHV)、Play、Cactus、8Base、Medusa、Akiraなどが急速に台頭し、攻撃の主導権を握っています。特にLockBitは依然として最も活発なグループの一つであり、世界各国の企業・自治体・医療機関を標的に、短期間で多層的な攻撃を展開しています。

    また、2024年以降は「RaaS(Ransomware-as-a-Service)」モデルの成熟が進み、開発者と実行者(アフィリエイト)が分業化されることで、攻撃のスピードと規模がかつてないほど拡大しました。いまや、技術力の低い犯罪者でも高度なランサムウェア攻撃を実行できる環境が整いつつあります。一方で、法執行機関による摘発や暗号資産取引の監視強化により、いくつかの有力組織は活動停止になりました。代表例がRansomHubであり、2024年に急速に勢力を拡大したものの、2025年4月にはオンラインインフラがダークウェブ上で停止し、現在は「再編中」または「後継グループへ移行中」とみられています。

    現在も活発な主要なランサムウェアギャング(2025年時点)

    2025年時点で活動が顕著な代表的グループを一覧で紹介します。

    グループ名主な特徴最近の動向
    Qilin(キリン)製造業への攻撃を中心に活動、日本でも被害多数2025年700件超の攻撃を確認。被害最多
    LockBit(ロックビット)三重恐喝モデルの先駆者、RaaS最大手摘発から数か月後、再登場。その際、「LockBit 5.0」を提供
    BlackSuit(ブラックスーツ)BlackCatの後継とされる。カスタム暗号化ツール、情報漏洩の脅迫2024年に本格的な活動を開始。以前のBlackCatの戦術を引き継ぎつつ、新たな攻撃手法を採用
    Play(プレイ)シンプルな脅迫文と独自の暗号化方式を使用。正規ツール悪用が特徴教育・行政・製造業を標的に拡大。再現性の高い攻撃手法で模倣も多い
    Cactus(カクタス)VPN機器の脆弱性を悪用。暗号化前に自身をパスワードで保護欧州企業を中心に感染が拡大中。RaaS化も進行
    Medusa(メデューサ)攻撃的な恐喝と高額な身代金要求医療・教育機関を中心に攻撃継続。複数の新アフィリエイトを獲得
    Akira(アキラ)VPN経由での侵入とActive Directory攻撃に長ける北米・アジア企業への侵入増加。身代金の要求額は比較的低め*1

    LockBit・BlackSuitが象徴する「持続型」攻撃モデル

    LockBitは2021年以降、継続的なバージョンアップを重ね、現在の「LockBit 5.0」では暗号化速度の向上や複数OS対応を実現しています。また、被害者データを公開する「リークサイト」の運用を巧妙化し、支払い圧力を高める戦略を維持しています。一方で、米司法省などの国際捜査により一時的に活動が停止する局面も見られましたが、数週間で再建されるなど、組織の分散性と復元力が注目されています。同様に、BlackSuitは、2023年に登場したBlackCat(ALPHV)の後継とされ、依然としてRust言語を使用したカスタマイズ暗号化を得意とするグループです。BlackSuitの特徴的な点は、以前のBlackCatが行っていた情報漏洩の脅迫に加えて、さらに新たな攻撃手法を採用している点です。特に、金融機関や医療機関をターゲットにした攻撃が増加しており、その手法の精緻化が進んでいます。2024年には本格的に活動を開始し、これまでのBlackCatの後を継いで攻撃を継続中です。業界を超えて、感染経路や攻撃対象を広げると同時に、その特異な手法で注目を集めています

    両者に共通するのは、「迅速な再編」と「収益性の最大化」を重視する点であり、捜査・報復措置を受けても体制を再構築し、ブランドを維持する巧妙な経営的戦略をとっています。

    新興勢力:Qilin、Play、Cactus、8Base、Medusaの特徴

    Qilinは2025年に最も多くの攻撃を仕掛けたランサムウェアグループの一つで、製造業をターゲットにしたカスタマイズ攻撃が特徴です。2025年に入ってから、短期間で700件以上の攻撃を記録し、特に日本企業を多く標的にしています。特徴的なのは、被害者の業界や規模に合わせた細かな調整を行い、効率的に侵入する手法です。2025年9月には、アサヒグループホールディングスに対する攻撃が大きな注目を浴びました。Qilinは、LockBitやDragonForceと連携して攻撃を行うことがあり、今後のランサムウェア市場において、さらなる影響力を持つと予測されています。

    その他に急速に台頭した新興勢力の一つがPlayです。Playは2022年に登場した比較的新しいグループながら、独自の暗号化方式とシンプルな脅迫メッセージで知られています。標的選定の傾向は特定の業界に偏らず、政府機関・教育機関・中堅企業まで幅広い範囲に及びます。また、侵入後の横展開において、既知の脆弱性よりも「正規ツールの悪用」を多用する点が特徴的です

    さらに、Cactus8Baseも注目すべき新興勢力です。CactusはVPNやCitrixなどの正規アクセス経路を悪用して侵入し、通信を暗号化する独自の戦術を採用することで検知を困難にしています。被害は欧州を中心に広がり、暗号化ツールをRaaSとして提供する動きも見られます。8Baseは中小企業を中心に攻撃を展開し、データ窃取を重視する「二重脅迫型」戦略を強化しています。LockBit系列の派生とされ、独自の強い脅迫文や被害者情報の大量公開で知られます。2024年中頃をピークに報告数は減少していますが、依然として活動を続けています。また、Medusaは、支払い期限をカウントダウン表示する公開サイトを運用するなど、恐怖心を煽る戦略を取るグループとしても知られています。教育・医療機関を標的とする傾向が強く、倫理的・社会的インパクトの大きさからも注目されています

    勢力構造の変化が示す今後の方向性

    これらの動向から、2025年以降のランサムウェア市場には次のような変化が予測されます。

    短命化するグループと再編の加速

    RansomHubのように短期間で急成長し、消滅するケースが増えています。これは法執行機関の摘発強化や、内部リークによる情報流出が影響しているとみられます。

    RaaSの分散化と匿名化の進行

    大規模組織の崩壊後、開発者が小規模な派生RaaSを乱立させる傾向が見られます。結果として、検知・追跡がより困難になると予測されます。

    生成AIや自動化の活用

    脅迫文や交渉メッセージの自動生成、被害者選定の最適化など、AI技術の導入が進みつつあります。今後は攻撃プロセス全体の自動化が一層進む可能性があります。

    まとめ:常に変動する「勢力の地図」

    ランサムウェアの世界では、勢力の興亡が常態化しています。LockBitのような巨大グループでさえ摘発の影響を免れず、次々と新たな派生組織が生まれています。企業としては、「どのグループが脅威か」を追うだけでなく、「どのような攻撃パターンが再利用されているか」を分析することが重要です。攻撃者の名前が変わっても、手口は進化しながら再利用されるため、継続的な脅威インテリジェンスの収集と脆弱性管理が不可欠です。


    ―第3回へ続く―

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴
    第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造

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    【2025年版】ランサムウェアギャング大図鑑:脅威マップと攻撃の特徴第1回:ランサムウェアの進化と2025年の市場構造アイキャッチ画像

    2025年、ランサムウェアは依然として世界中で深刻な脅威となっています。二重恐喝型から、データ漏洩やDDoSを組み合わせた多重恐喝型へと進化し、被害は企業規模を問わず拡大中です。本シリーズでは、最新のランサムウェア勢力図を全3回で徹底分析します。第1回では、RaaS(Ransomware as a Service)の登場によって急成長したランサムウェア市場の構造と、勢力図がどのように変化してきたのかを詳しく解説します。

    ランサムウェア攻撃の現状と被害拡大

    2025年、ランサムウェアは依然として世界で最も深刻なサイバー脅威の一つとして位置づけられています。近年は暗号化による業務停止だけでなく、窃取したデータを公開・販売する「二重恐喝」や、DDoS攻撃を加えた「多重恐喝」など、攻撃の多様化が進んでいます。BlackFogの分析によると、2025年初頭のランサムウェア攻撃件数は前年同月比で20〜35%増加しており、増加傾向が続いています*2。特に製造、医療、自治体など、社会インフラに関わる業種への攻撃が目立ちます。日本国内でも被害は増加傾向にあり、企業規模を問わず中堅・中小企業への侵入事例が相次いでいます。攻撃者は直接的な金銭目的だけでなく、他国のサプライチェーンを狙った地政学的背景を持つケースもあり、もはや”無関係な企業は存在しない”状況です。

    RaaSモデルがもたらした犯罪の分業化

    ランサムウェアがここまで拡大した最大の要因が、「RaaS」と呼ばれるサービス型犯罪モデルの普及です。RaaSは、開発者が作成したランサムウェアを他の攻撃者(アフィリエイト)に貸し出し、得た身代金を分配する仕組みです。技術力を持たない犯罪者でも容易に攻撃を実行できるようになったことで、ランサムウェア攻撃の“裾野”が急拡大しました。

    「LockBit」、「Cl0p」、「BlackCat」といった代表的なランサムウェアギャングは、このRaaSモデルを最も普及させたグループです。各アフィリエイトは攻撃対象の選定や侵入手口を独自に開発し、成功報酬を得るビジネス形態を採用しています。まるで企業のような組織構造を持ち、専用のリークサイト運営、広報担当、カスタマーサポートまで存在します。攻撃が商業化・効率化されることで、ランサムウェアはもはや“闇市場の産業”といえる規模に達しています。

    勢力図の変化:旧勢力の衰退と新興ギャングの台頭

    2024年後半から2025年にかけて、ランサムウェアの勢力図は大きく変化しました。かつて世界を席巻した「Conti」や「Hive」、「Revil」、「BlackCat(ALPHV)」といった主要なランサムウェアギャングは、国際捜査機関の摘発や内部対立により次々と崩壊しました。しかし、その空白を埋めるように新たな勢力が台頭しています。特に注目されるのが、「Qilin(旧Agenda)」「Lynx」「Fog」などの新興グループです。これらは高度な暗号化技術と迅速な展開能力を持ち、企業や自治体を標的にデータ漏洩を伴う攻撃を展開しています。Qilinは日本国内の製造業や医療機関を狙う傾向が強く、すでに複数の被害が確認されています。また、LockBitも摘発を受けながらも「LockBit 5.0」として再始動するなど、ブランドの使い捨て・再構築が常態化しています。2025年のランサムウェア市場は、以前から存在するギャングの復活と新興勢力の台頭が交錯する“過渡期”にあると言えます。

    ランサムウェア市場を支える犯罪エコシステム

    現在のランサムウェア攻撃は、単独の攻撃者だけでは成り立ちません。その背景には「地下経済圏」とも呼ばれる広大な犯罪エコシステムが存在します。ここでは、侵入経路を提供するアクセスブローカー、情報窃取ツールの開発者、暗号通貨を用いたマネーロンダリング業者など、多様な役割が分業的に連携しています。たとえばアクセスブローカーは、企業ネットワークへの侵入権をオークション形式で販売し、ランサムウェアギャングがそれを購入して攻撃を開始します。また、盗み出したデータを販売する「データリークサイト」は、恐喝手段としても活用され、被害企業名を公開して支払いを促します。

    さらに近年は、SNSやダークウェブ掲示板上での広報・採用活動も活発化しており、RaaS提供者が「報酬50%保証」「高成功率ツール」といった広告を出すなど、まるでスタートアップ市場のような競争が繰り広げられています。こうした分業と再利用の仕組みにより、ランサムウェア市場は摘発を受けてもすぐに再生する自己修復的な構造を持ち、世界的な脅威として根強く残り続けています。

    まとめ:進化する脅威にどう向き合うか

    ランサムウェアはもはや“単なるマルウェア”ではなく、「経済的インセンティブを軸に発展する犯罪ビジネスモデル」へと進化しました。RaaSによる分業体制と匿名性の高い暗号資産の普及が、攻撃の拡大を後押ししています。2025年の時点で確認されている主要なランサムウェアギャングの多くは、過去に摘発・崩壊を経験しながらも、ブランドを変えて再登場しており、摘発による根絶は困難です。今後はAIを利用した自動化攻撃、ゼロデイ脆弱性の悪用、地域特化型の標的選定など、さらに巧妙な戦術が主流になると予想されます。企業に求められるのは、「攻撃を防ぐ」だけでなく、「被害を最小化し、迅速に復旧できる体制」を整えることです。第2回では、2025年時点で活動が確認されている主要なランサムウェアギャングの特徴と手口を詳しく分析し、勢力ごとの違いと警戒すべき動向を解説します。


    ―第2回へ続く―

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    APIとは何か(2)~APIの脅威とリスク~

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    APIセキュリティは、現代のビジネスにおいて不可欠な課題です。シリーズ第2回の今回は、APIを悪用した攻撃手法や、OWASP(Open Web Application Security Project)よりリリースされている「OWASP API Security Top 10」で取り上げられるリスクの詳細を解説します。インジェクション攻撃やDDoS攻撃、APIキーの悪用、アクセス制御に関する脆弱性など、主要な脅威を紹介しながら、APIが悪用された場合の影響について解説します。

    前回記事(シリーズ第1回)「APIとは何か~基本概念とセキュリティの重要性~」はこちら。

    APIとは~前回からの振り返り

    日頃からインターネットなどのネットワークを使用することが多い今日、現代における多くの企業はAPIに大きく依存しており、今やAPIは不可欠なものとなっています。Akamai社のレポート「The API Security Disconnect」によると、調査対象となった企業の約8割以上が2023年に行った調査において、「過去12か月以内にAPIセキュリティをより重視した」と回答しています。しかし、2022年~2024年で調査した回答者のうち、半数以上が、APIのセキュリティインシデントの影響により顧客の信頼を失い、さらにそこからほぼ半数は生産性の低下や従業員の信頼の低下にもつながったといいます。

    また、SNS事業者が提供するAndroid版アプリに存在した脆弱性が悪用された結果、膨大な量のアカウント情報が漏洩した事例*2も報告されています。これは攻撃者が大量の偽アカウントを使用し、様々な場所から大量のリクエストを送信し、個人情報(ユーザ名・電話番号)を照合するというものでした。

    APIが悪用されるとどうなるか

    APIが悪用された場合、多岐にわたる深刻な影響が生じます。特に、認証や認可の不備は深刻なセキュリティホールとなり得ます。攻撃者はこれらの脆弱性を悪用して不正アクセスを行い、機密データや個人情報を盗み出す恐れがあります。また、認可が適切に設定されていないと、本来は外部からアクセスできないはずのデータにまで侵入され、第三者からデータの改ざんや不正操作が可能となってしまいます。さらに、APIを標的にしたDDoS攻撃によりサービスがダウンし、正規ユーザが利用できなくなることで、企業の信用失墜や業務の中断といったダメージを引き起こします。これらの影響は、経済的損失だけでなく、法的問題やブランドイメージの毀損など、長期的な悪影響をもたらすため、APIのセキュリティ強化が不可欠です。

    APIを悪用した攻撃の事例はいくつか報告されていますが、いずれの攻撃も、「OWASP API Security Top 10」で挙げられている問題と関連性があります。

    OWASP API Security Top 10

    APIセキュリティについて、Webアプリケーションセキュリティに関する国際的コミュニティであるOWASPが、2023年6月に「OWASP API Security Top 10 2023」をリリースしています。APIセキュリティにおける10大リスクをピックアップして解説したものです。

    「OWASP API Security Top 10」上位のリスク

    特に上位5つの項目については、以下のような重大なリスクにつながるため、リリース前に十分な対策が施されていることを確認すべきです。

    • 不正アクセス
    • なりすまし
    • 情報漏洩
    • サービス運用妨害(DoS)

    主なセキュリティ脅威

    インジェクション攻撃

    インジェクション攻撃は、悪意のあるコードをAPIに挿入し、不正な操作を行う攻撃です。APIの入力データを検証せずに処理している場合、攻撃者にデータベースへのアクセスを許すリスクが生じます。特にSQLインジェクションやコマンドインジェクション攻撃が多く、攻撃を受けてしまった場合、データベースの情報漏洩やシステムの制御不備などの被害があります。

    認証およびセッション管理の不備の脆弱性を悪用

    APIの認証とセッション管理の不備を悪用することで、攻撃者は不正アクセスやなりすましを行います。パスワード強度が不十分な場合やトークンの管理が適切に行われていない場合、セッションハイジャックや不正に重要な情報を閲覧されることによってデータの漏洩が発生するリスクがあります。適切な認証管理およびセッション管理を行うことが重要です。

    DDoS攻撃

    DDoS攻撃は、複数のPCからアクセスされることによる膨大な量のリクエストをAPIに一斉に送り込むことで、システムのリソースを枯渇させ、サービスの提供を妨害する攻撃です。APIの特性上、処理を高速に行うために外部からのリクエストを許容する必要がありますが、その柔軟性が悪用されます。攻撃者はボットネットを利用し、大量のトラフィックを発生させてサーバのリソースを消費させます。これにより、顧客はサービスが利用できず、自組織においても業務に多大な影響を及ぼします。APIを保護するためには、トラフィックの監視やレート制限、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)などのセキュリティ対策が重要です。

    APIキーの悪用

    APIキーは、APIへのアクセスを制御するために利用されますが、攻撃者に奪われると不正利用のリスクが生じます。盗まれたAPIキーは無制限のアクセスやサービスの悪用に使われる恐れがあります。安全な管理や無制限にアクセスができないように適切なアクセス制御を実施すること等が重要です。

    アクセス制御の不備による影響

    APIのアクセス制御の不備の脆弱性を悪用することで、攻撃者は許可されていないデータや機能にアクセスできます。適切な権限設定がされていない場合、データの漏洩や不正な操作の実行のリスクがあります。権限の設定など適切なアクセス制御が求められます。

    思わぬデータの公開や改ざん

    APIの設計や実装の不備により、データが意図せず公開・改ざんされるリスクがあります。適切な認証・認可がないと、攻撃者が内部の機密情報にアクセスすることが可能になります。例えば、本来ならシステム管理者のみがアクセスできる設定画面または顧客情報やシステムに関する情報などの重要情報が格納されている場所に攻撃者がアクセスできてしまった場合、システムの設定を変更されたり重要情報が奪取されたりする恐れがあります。また、過剰に情報を提供するAPIレスポンスや暗号化されていないデータ転送も、情報漏洩や改ざんの危険性を高めます。データ保護には、適切なアクセス制御と暗号化の実装が不可欠です。

    アカウント乗っ取り

    不正アクセスによってユーザアカウントが乗っ取られ、APIを悪用される可能性があります。一度アカウントが乗っ取られると、攻撃者は個人情報の閲覧や不正操作、さらには他のシステムへの攻撃拡大を図る可能性があります。多要素認証(MFA)の導入やAPIキーの適切な管理、ログイン試行の監視など、セキュリティ対策の強化が必要です。

    まとめ

    現代の企業にとってAPIによるアプリケーション連携は不可欠ですが、その悪用によるセキュリティリスクも増加しています。APIを悪用した攻撃の事例は、「OWASP API Security Top 10」に関連しています。主なセキュリティ脅威には、インジェクション攻撃、認証やセッション管理の不備、DDoS攻撃、APIキーの悪用、アクセス制御の脆弱性、不適切なデータ公開や改ざん、アカウント乗っ取りなどがあります。これらは重大なリスクを孕んでいるため不正アクセス、なりすまし、機密データの盗難を含む情報漏洩、データ改ざん、サービスのダウンによるサービス低下や業務への影響、ひいては企業の信用失墜といった深刻な結果を招きます。こうした被害を防ぐため、APIの設計段階から適切なセキュリティ対策を行い、監視やアクセス制御の強化が不可欠です。

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    長期休暇中のセキュリティ対策
    ―休暇を狙って猛威をふるうランサムウェアやフィッシング攻撃:増加傾向と対策―

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    「長期休暇休暇中のセキュリティ対策」アイキャッチ画像

    長期休暇(前・中・後)に企業や個人がサイバー攻撃の標的になりやすくなる理由は、多岐にわたります。本記事では、長期休暇に増加する主なサイバー攻撃のタイプを紹介し、地域別および産業別の影響について触れ、企業や個人がサイバー攻撃に備えるための対策方法について解説します。これにより、読者がより安心して長期休暇を過ごせるために役立つ情報提供となれば幸いです。

    長期休暇中にサイバー攻撃が増えやすい理由

    長期休暇、特に年末年始やゴールデンウィーク、お盆休み、シルバーウイークなど、大型連休中にはサイバー攻撃が増加する傾向にあります*2。これは以下の理由によるものです。

    • 企業のセキュリティ体制が手薄になる
    • 個人ユーザによるオンラインショッピング利用やSNS投稿が増える
    • 攻撃者が休暇中のユーザの油断を狙う

    主なサイバー攻撃タイプ

    長期休暇中に増加する主なサイバー攻撃には以下のようなものがあります。

    • フィッシング攻撃
      個人を狙って特別セールやイベントを装った偽のメールやウェブサイトが増えます。
    • ランサムウェア攻撃
      企業のセキュリティ体制が弱まる時期を狙って、データを人質に取る攻撃が行われます。
    • DDoS攻撃
      オンラインサービスの需要が高まる時期に、サービスを妨害する攻撃が増加します。

    参考:解説動画 アナリストが語る「今月のセキュリティトピック」2024年7月版
    攻撃・インシデント関連(再生時間:13:23)
    「国内大手出版グループに大規模サイバー攻撃」

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    地域別の傾向

    サイバー攻撃は世界中で発生しますが、特定の地域では休暇期間中に攻撃が顕著に増加することがあります。

    北米やヨーロッパ:クリスマスシーズンに攻撃が増加
    アジア:旧正月期間中に攻撃が増加
    日本:ゴールデンウィーク、お盆休み、シルバーウィーク、年末年始

    産業別の影響

    長期休暇中のサイバー攻撃は、特定の産業により大きな影響を与えることがあります。

    小売業:オンラインショッピングの増加に伴い、顧客データを狙った攻撃が増加
    金融サービス:年末の取引増加期に狙われやすい
    旅行・観光業:休暇予約情報を狙った攻撃が増加

    長期休暇(前・中・後)の対策

    長期休暇前

    • 緊急連絡体制の確認をする
      委託先企業を含めた緊急連絡体制や対応手順を確認します。
    • 機器接続ルールを確認する
      社内ネットワークへの機器接続ルールを確認し、遵守します。
    • 使用しない機器の電源OFFにする
      長期休暇中に使用しないサーバ等の機器は電源をオフにします。
    • データのバックアップをとる
       重要データのバックアップを行い、ランサムウェア攻撃に備えます。
    • セキュリティソフトを更新する
      セキュリティソフトの定義ファイルを最新の状態に更新します。

    長期休暇中

    • 持ち出した機器やデータの管理
      自宅等に持ち出したパソコン等の機器やデータを厳重に管理します。
    • SNS投稿の定期的に確認する
      行楽等の外出前や外出先でのSNS投稿に注意し、不在を知られないようにします。
    • 偽のセキュリティ警告の表示の確認
      ウェブサイトの閲覧中に表示される偽の警告に注意し、操作しないようにします。
    • 不審なメールやURLが届いていないかどうか確認する
      メールやショートメッセージ(SMS)、SNSでの不審なファイルやURLに注意します。

    長期休暇明け

    • 修正プログラムを適用する
      長期休暇中に公開された修正プログラムを適用します。
    • 定義ファイルを最新の状態に更新する
      セキュリティソフトの定義ファイルを最新の状態に更新します。
    • ウイルスチェックを実施する
      持ち出していた機器等のウイルスチェックを行います。
    • 不審なメールが届いていないかどうか確認する
      長期休暇明けはメールがたまっています。不審なメールには特に注意が必要です。

    企業のリスク管理

    企業が長期休暇中にリスク管理を徹底するためには以下のような対策が必要です。

    • 緊急連絡体制の確認
      委託先企業を含めた緊急連絡体制や対応手順を確認します。
    • サーバやネットワーク機器の脆弱性対策
      自組織のシステムに内在する脆弱性を可視化し、リスク状況を把握したうえで、セキュリティ対策を講じます。
    • アカウント管理
      アカウントのアクセス権限を確認し、不要なアカウントを削除します。
    • 従業員への周知
      パスワードの強化、管理の徹底を従業員に周知徹底します。

    個人の注意点

    個人が長期休暇中に注意すべき点は以下の通りです。

    • SNS投稿
      行楽等の外出前や外出先でのSNS投稿に注意し、不在を知られないようにします。
    • 偽のセキュリティ警告
      ウェブサイトの閲覧中に表示される偽の警告に注意し、操作しないようにします。
    • パソコンの初期化
      ウイルスに感染した疑いがある場合はパソコンの初期化を検討します。
    • フィッシングサイト対策
      フィッシングサイトで情報を入力してしまった場合は、パスワードの変更、カード会社への連絡等を行います。

    長期休暇中のサイバー攻撃に備えるために

    長期休暇中は、サイバー攻撃のリスクが高まるため、事前の対策が重要です。緊急連絡体制の確認や使用しない機器の電源オフ、データのバックアップなどを徹底することで、リスクを最小限に抑えることができます。休暇中も持ち出した機器やデータを厳重に管理し、SNS投稿に注意するなどの対策を講じることで、サイバー攻撃から自分を守ることができます。休暇明けには、修正プログラムの適用やウイルスチェックを行い、最新のセキュリティ状態を維持することが大切です。この企業も個人も、適切な対策を講じて安全な長期休暇を過ごしましょう。

    関連リンク

    独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「長期休暇における情報セキュリティ対策

    ランサムウェア感染リスク可視化サービス デモ動画

    またサービスのデモンストレーション動画を公開中です。こちらも併せてご覧ください。

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    IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる
    ― 注目が高まる犯罪のビジネス化 ―

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    瓦版vol.20アイキャッチ画像(犯罪ビジネスとハッカーのイメージ写真)

    近年、サイバー犯罪はビジネス化が危惧されています。これまで高度な技術をもつ人だけが実行できていたサイバー攻撃も、攻撃のための情報がサービスとして公開されていたり、ツールを活用したりすることで、誰でも容易に実行することが可能となっています。犯罪のビジネス化が進む世の中で我々が対抗できる手段はあるのでしょうか。本記事では、注目される犯罪のビジネス化としてRaaSやDDoS攻撃などのビジネスモデルをご紹介しつつ、サイバー攻撃に備えるにはどのような手段をとればいいのか、という点について解説いたします。

    「犯罪のビジネス化」が「情報セキュリティ10 大脅威」に5年ぶりのランクイン

    2023年1月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2023」(組織・個人)を発表しました。組織編の脅威に2018年を最後に圏外となっていた「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が再びランクインしました。

    アンダーグラウンドサービスとは、サイバー攻撃を目的としたツールやサービスを売買しているアンダーグラウンド市場で取引が成立し、経済が成り立つサービスのことです。これらのツールやサービスを悪用することで、攻撃者が高度な知識を有していなくとも、容易にサイバー攻撃を行うことが可能となります。そのため、ランサムウェアやフィッシング攻撃といったサイバー攻撃がますます誘発され、脅威となるのです。

    出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2023」(2023年3月29日)組織向け脅威

    ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware-as-a-Service)

    勢いを増しているサイバー犯罪のビジネスモデルとしてRaaS(Ransomware-as-a-Service)があります。RaaSとはランサムウェアが主にダークウェブ上でサービスとして提供されている形態のことで、RaaSを利用した攻撃者は、得た身代金の何割かを開発者に取り分として渡す仕組みになっていて、そうやって利益を得ていることなどがあります。

    ランサムウェアが増加している理由についてはSQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    ランサムウェア攻撃に効果的な対策‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

    図1:Raasビジネスを利用した攻撃の一例

    Raasビジネスを利用した攻撃の一例画像

    昨今のランサムウェア攻撃の特徴として、ランサムウェア攻撃により行われる脅迫は暗号化したデータを復旧するための身代金の要求に加えて、支払わなければ奪取したデータを外部に公開するといった二重の脅迫から、さらに支払うまでDDoS攻撃(※)を行うといった三重の脅迫から、さらにはそれでも支払いを拒否された場合には、盗んだ情報をオークションで売られてしまうといった事態に発展するなど、より被害が拡大しています。
    ※DDoS攻撃・・・多数の発信元から大量のデータを送り付けることでサーバを停止させる攻撃のこと。

    図2:データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫

    データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫画像

    また、従来のランサムウェアの攻撃の手口は不特定多数に対して無差別に行うばらまき型と呼ばれる手法でしたが、近年では攻撃手法が多様化しています。以下の表は攻撃手法と事例です。

    年月攻撃手法事例
    2020/6標的型ランサムウェア攻撃 国内自動車メーカーの社内システムが、EKANSの攻撃を受け、日本を含む各国拠点で一時生産停止に陥るなど大きな被害を受ける。
    2022/1USBデバイスを使用した
    ランサムウェア攻撃
    米国で攻撃者が官公庁や有名販売サイトを装い、パソコンに接続することでランサムウェアを感染させる細工を施したUSBデバイスを送付。2021年8月には運輸および保険業界の企業、11月には防衛産業企業に送られており、FBIが注意喚起を行う*2
    2022/10サプライチェーン攻撃に
    よるランサムウェア感染
    2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道があった。

    取り上げた事例の詳細について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    2022年6月の事例:「ランサムウェア最新動向2021 ―2020年振り返りとともに―
    2022年10月の事例「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

    このように、被害者が身代金の要求により応じやすくなるような脅迫に変化し、また攻撃手法も多様化することにより、攻撃の巧妙化によって高い収益をあげられることから、今後もランサムウェア攻撃は続くことでしょう。その背景には攻撃の実行ハードルを下げるRaaSの存在があることが考えられます。

    フィッシング攻撃やDDoS攻撃もサービス化へ

    フィッシング攻撃とは、有名企業等になりすますなどして偽装したメールやSMSにより、本物そっくりの偽サイトに誘導したり、悪意ある添付ファイルを実行させようとしたりするサイバー攻撃です。このフィッシング攻撃により、マルウェアを使った重要情報の奪取や、ランサムウェアの感染拡大などを行う事例*2も確認されています。

    2022年11月から感染が再拡大しているマルウェア「Emotet」も、この手口を利用することで拡大しました。Emotetに感染し、メール送信に悪用される可能性がある.jpメールアドレスの数は、Emotetの感染が大幅に拡大した2020年に迫る勢いとなっています。

    図3:Emotetの攻撃例イメージ図

    Emotetの攻撃例イメージ図画像

    フィッシング攻撃もサービス化が進んでいます。2022年9月、米国のResecurity社はダークウェブにおいて二要素認証を回避する新たなPhaaS(Phishing-as-a-Service)が登場したと発表しました。このPhaaSは「EvilProxy」と命名され、二要素認証による保護を回避する手段として、「リバースプロキシ」と「クッキーインジェクション」を使用し、被害者のセッションをプロキシング(代理接続)するというものです。このような複雑な仕組みの攻撃がサービス化されたことにより、今後フィッシング攻撃がますます活発化することが考えられます。

    「EvilProxy Phishing-As-A-Service With MFA Bypass Emerged In Dark Web」図
    出典:Resecurity「EvilProxy Phishing-As-A-Service With MFA Bypass Emerged In Dark Web」より弊社和訳

    そのほかにも、直近では米国で定額料金を支払うことで代行してDDoS攻撃を行うサービス「DDoS攻撃代行サブスクリプションサービス」を提供するサイトの運営者が逮捕される事件*3がありました。DDoS攻撃を行う目的は「金銭目的」「嫌がらせ」「抗議の手段」「営利目的」など攻撃者の背景によって異なります。逮捕に至ったこのサービスでは2000人以上の顧客を抱えており、これまでに20万件以上のDDoS攻撃を実行したと報道がありました。ここからみえてくるのは、様々な事情を抱えた攻撃者にとって、「求められているサービス」であったということです。

    犯罪ビジネスサービス利用者の標的にならないために

    ここまでランサムウェアやフィッシング等のサイバー攻撃がビジネス化されている例をみてきました。このように犯罪に使用するためのサービスは、アンダーグラウンド市場で取引され、これらを悪用したサイバー攻撃が行われるというビジネスモデルが存在しているのです。サービスを利用するだけで、高度な知識をもたない攻撃者であっても、容易にサイバー攻撃を行えることから、犯罪のビジネス化は今後さらに進み、特にランサムウェア攻撃やフィッシング攻撃は活発化することが考えられます。

    これらの犯罪ビジネスサービス化の拡大により増えることが想定されるランサムウェア攻撃とフィッシング攻撃に対して、攻撃を行う機会を与えないために以下のような基本的な対策が有効でしょう。

    ランサムウェア対策

    ■定期的なバックアップの実施と安全な保管
     (物理的・ネットワーク的に離れた場所での保管を推奨)
     ⇒バックアップに使用する装置・媒体は、バックアップ時のみパソコンと接続
     ⇒バックアップに使用する装置・媒体は複数用意する
     ⇒バックアップから復旧(リストア)可能であることの定期的な確認
    ■OSおよびソフトウェアを最新の状態に保つ
    ■セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ
    ■認証情報の適切な管理(多要素認証の設定を有効にするなど) など

    フィッシング対策

    ■ソフトウェアを最新にするなどパソコンやモバイル端末を安全に保つ
    ■従業員教育を行う
     ⇒不審なメールやSMSに注意する
     ⇒メールやSMS内に記載されたURLを安易にクリックしない
     ⇒メールやSMSに添付されたファイルを安全である確信がない限り開かない
    ■標的型攻撃メール訓練の実施 など

    なお、セキュリティ対策は一度実施したらそれで終わりというものではありません。サイバー攻撃の手口は常に巧妙化し、攻撃手法も進化し続けているためです。脆弱性診断を定期的に行うなど、継続してサイバー攻撃に備えていくことが必要です。また、セキュリティ対策を実施した後も、侵入される可能性はないのか、万が一感染した場合はその影響範囲はどの程度かといった現状把握を行い、実装したセキュリティ対策の有効性を確認することが大切です。

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

    <侵入前・侵入後の対策の有効性確認>

    BBSecでは、第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を実現する、「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

    ※外部サイトにリンクします。

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    Botの脅威!
    IoT機器を踏み台にする新たなボットネットも登場

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    いろいろな場面で「ボット(Bot)」という言葉を耳にします。今回の記事では、仕事や暮らしを便利にする「良いボット」ではなく、感染端末によるネットワークを形成し、サイバー攻撃のインフラとして悪用される「悪いボット」について、その感染経路や、攻撃活動の種類、感染予防の対策などを解説します。また、近年問題になっているIoT機器に感染するボットの被害事例を紹介し、IoT機器のメーカーやユーザが実施すべき対策について考えます。

    ボット(Bot)とは

    「ボット」とは「ロボット」に由来する言葉で、特定の作業を自動で行うプログラムやアプリケーション、機器のことです。iPhoneに搭載されたSiriなどのチャットボットが身近な例として挙げられます。いずれのボットも、プログラムに従ってアルゴリズムやAIで判断を行い、定められたタスクを実行します。

    人間の手間を減らし生活を便利にするのが本来のボットの役割ですが、サイバーセキュリティの世界には、コンピュータやネットワークに脅威を与える「悪いボット」がたくさん存在します。ひょっとしたら、この記事を読んでいるあなたのPCの中にも「悪いボット」が隠れているかもしれません。

    マルウェア、ウイルスとボットの違い

    ボットはマルウェア、ウイルスの一種です。「『マルウェア』とは何か?」の記事で説明したトロイの木馬と同様に、感染したPCにバックドアを作り、PCを外部から遠隔操作可能な状態にします。PCのユーザは感染に気づかないことが多く、ボットオーナーの意のままにPCが操られます。

    感染端末への外部からの遠隔操作は、C&C(シー・アンド・シー)またはC2(シー・ツー)などと呼ばれるサーバを通じて行います(C&C、C2とは「Command and Control:指示と制御」の略です)。

    ボットウイルスに感染した端末を「ゾンビPC」と呼ぶこともあります。たとえばDDoS攻撃などに悪用されるボット化した大量のPCのイメージが、ホラー映画に登場するゾンビの群れに似ていることから名付けられたと言われています。

    ボットの予防対策と感染経路、検知、駆除

    ボットの感染対象は、近年PCだけでなく、スマホやIoT機器にまで及んでいます。感染経路は通常のマルウェアと変わりません。PCやスマホの場合はメールの添付ファイル、URLのクリック、Webサイトの閲覧で感染することもあります。

    ボット感染の予防対策は、PCやスマホについてはOSやソフトを最新の状態にアップデートしたり、アンチウイルスソフトを最新の状態にすることが求められます。これも通常のマルウェア対策と変わりません。アンチウイルスにパターンファイルが存在するボットであるなら、検知して駆除することができます。また、「ランサムウェア」の記事で説明したEDRを使うことで、ボットによって実行される攻撃活動を検知できる場合もあります。

    しかし、どんなに対策をとっていたとしても、亜種が次々と開発され、攻撃手法も変化し、常にすべてを防げるとは限らない点も通常のマルウェアと一緒です。

    スパム送信やDDoS攻撃、ボットの活動の種類

    ボットは、宿主であるPCなどの機器のインターネット接続とCPU資源を用いて、スパムメール送信やDDoS攻撃など、コンピュータとインターネットにおけるさまざまな反社会的活動を行います。近年は、スマホアプリの中で動作し、不正や詐欺などを行うボットも存在します。

    ボット化した端末が大量に集められ、制御下におかれた状態を「ボットネット」「ボットネットワーク」と呼びます。ボットネットは、スパムメール送信やDDoS攻撃など、規模がものを言うサイバー攻撃のインフラとして悪用されます。単なるトロイの木馬とボットとの違いは、このボットネットを形成するかどうかという点にあります。

    近年、IoT機器に感染を広げ形成される、大規模なボットネットが問題となっています。

    なぜボットはPCだけではなくIoT機器を狙うようになったのか

    2016年、当時セキュリティの歴史上最大と言われたDDoS攻撃を行ったのが、「Mirai」と呼ばれるマルウェアによって形成されたボットネットでした。Miraiの特徴は、ネットワークカメラやルータなど、家庭内のIoT機器を主要ターゲットとしていたことです。なぜ家庭内のIoT機器が狙われたのでしょう。

    それは、IoT機器がPCなどと比較して、1)工場出荷時のままで使用されることが多い、2)PCより圧倒的に台数が多い、3)外部からの接続を許容することが多い、という3条件がそろっていることが背景にあります。これらの条件がそろうと、犯罪者は単一の手法で一気に大量の機器を感染させることが可能となり、大規模なDDoS攻撃などを成立させることができるのです。

    IoTボットの感染経路:Miraiの場合

    悪名高いMiraiマルウェアの場合、Telnetに割り当てられるTCPの23番ポートが開いていないか探索したり、管理画面に辞書攻撃(「ブルートフォース攻撃」の記事を参照)などを行って不正にログインするなどして、ボットがインストールされました。

    しかし、これらの感染経路や攻撃の特徴も、日々アップデートされ変化していきます。さすがに、本稿執筆時の2020年時点で、TCP23番ポートの開放は少なくなっており、かわりにUniversal Plug and Play(UPnP)が利用するポートを狙う攻撃などが観測されています。

    メーカー/ユーザ別、IoT機器のボット感染対策

    IoTボット感染対策としてIoT機器メーカーは、「パスワードをデフォルトで使えないようにする」「telnetが利用する23番ポートやUPnPが利用するポートなど、悪用される可能性があるポートに外部からアクセスできないようにしておく」などの対策を行うことが求められます。また、販売後のサポート体制の一環としてセキュリティパッチを継続して一定期間提供し続けることや、セキュリティパッチの自動適用の機能を搭載するといったことも必要でしょう。

    一方、ユーザ側は、まずは「パスワードをデフォルトで使わない」「パスワードを長くする」「メーカーのセキュリティパッチが出たらすぐに当てる」など基本対策が大事です。しかし、セキュリティパッチの適用は一般のご家庭ではなかなか実行が難しいところではないでしょうか。また、TCP23番ポートのインターネットへの開放など、攻撃に悪用される可能性のある設定の修正も推奨されますが、これもまた一般のご家庭での対応は難しいところではないかと思います。

    自分でセキュリティパッチが当てられない、設定の変更は難しいといった状況でIoT機器を購入される際は、セキュリティパッチの自動適用機能の有無や、セキュリティ上の懸案事項が出た場合のメーカーの対応などもチェックするとよいでしょう。また、古いネットワークカメラやルータなどのIoT機器については、サポート期限が切れている場合や、セキュリティパッチ自体の提供ができない・終わっているといったものがあります。こういった機器については(特にテレワークで在宅勤務をされている場合には)早急に買い替える必要があります。

    IoTボットに狙われる脆弱性の検知事例

    SQAT.jpを運営する株式会社ブロードバンドセキュリティは、脆弱性診断ペネトレーションテストをはじめとして、APIIoT機器まで、さまざまなセキュリティ診断サービスを提供しています。

    診断対象のTCP23番ポートが外部に向けて開いていたというのは、脆弱性診断で数年前であればたびたび指摘される項目でした。最近ではTCP23番ポートの開放が指摘されるケースはまれですが、代わりにIoT機器がDoS攻撃等の脆弱性がある古いバージョンのファームウェアを使っていたことを指摘するといったケースが出ています。社内で利用するPCやIoT機器に、ボットの侵入や悪用を許す弱点がないかを判断するためには、日頃の基本対策だけでなく、第三者による脆弱性診断やペネトレーションテストが役に立ちます。

    まとめ

    • ボットとは、特定の作業を自動で行うプログラムやアプリのことです。チャットボットに代表される「良いボット」とサイバーセキュリティ上の脅威となる「悪いボット」があります。
    • 「悪いボット」はウイルスやマルウェアの一種で、ボットネットと呼ばれる感染端末によるネットワークを形成し、サイバー攻撃のインフラとして悪用されます。
    • ボットネットは、スパムメール送信やDDoS攻撃など、大規模なサイバー攻撃に悪用されます。
    • 攻撃の容易さや台数が多いことから、PCだけでなくIoT機器を狙うボットが増えています。
    • ボットの感染予防として、他のマルウェア同様、OSのアップデートやソフトウェアを最新に保ち、不要なポートを閉じるなど基本対策が有効です。

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