脆弱性診断の基礎と実践!手動診断とツール診断の違いを徹底解説第3回:手動診断とツール診断、どちらを選ぶべきか?最適な診断方法の選び方

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手動診断とツール診断、どちらが自社に最適なのか?本記事では、「脆弱性診断の基礎と実践」をテーマに全3回のシリーズのうちの最終回として、手動診断とツール診断の両者の特性や違いを比較し、診断方法を選ぶポイントを解説します。最適な診断方法を見極め、継続的なセキュリティ対策を実現しましょう。

手動診断とツール診断の違い

脆弱性診断には「手動診断」と「ツール診断」の2つの手法があり、それぞれに検出できる脆弱性の範囲、診断の精度、コストや時間といった違いがあります。適切な診断方法を選ぶためには、それぞれの特性を理解することが重要です。

検出可能な脆弱性の範囲

診断手法検出可能な脆弱性の範囲
ツール診断CVE、OWASP Top 10などに基づき脆弱性を自動検出。ただし、システム固有の処理に関連する脆弱性の検出や複雑な攻撃手法には対応が難しい。
手動診断ツール診断では発見が難しいカスタムアプリの脆弱性や認証回避の脆弱性も検出可能。

ツール診断はパターンマッチングに基づく脆弱性スキャンが主であり、定型的なセキュリティホールの発見に優れています。一方、手動診断はシステムごとの特性を考慮した診断が可能で、セキュリティエンジニアによる最新の攻撃手法に基づいたシナリオでの診断にも対応できます。

診断の精度

診断手法精度
ツール診断短時間で広範囲の診断が可能だが、誤検知(False Positive)や見落とし(False Negative)が発生することがある。
手動診断セキュリティエンジニアが攻撃者視点で分析するため、より正確な脆弱性の特定が可能。誤検出を減らし、実際のリスクを精密に評価できる。

ツール診断は効率的に多くのシステムをスキャンできるメリットがありますが、誤検出や見落としのリスクがあるため、結果を精査する必要があります。手動診断は攻撃手法を考慮したテストを実施できるため、リスクの深刻度を正確に判断しやすいのが特長です。

コストと時間の違い

診断手法コスト時間
ツール診断比較的低コストである。短時間で診断可能(数時間~1日程度)。規模が小さいシステムであれば、数時間程度で診断が完了するため、定期的なスキャンが容易。場合によっては24時間いつでも診断が可能
手動診断専門のエンジニアが対応するためコストが高い。診断の範囲や内容によって費用が変動時間がかかる(数日~数か月)。対象システムの複雑さにより診断期間が変動

ツール診断は、コストを抑えて素早く診断ができる点が魅力ですが、ツールの設定や診断結果の解釈には専門知識が必要です。手動診断はコストや時間がかかるものの、外部のセキュリティ専門企業などに委託することによって、より精密な脆弱性評価が可能です。特に重要なシステムや高度なセキュリティ対策が求められる場面では有効です。

診断方法を選ぶ際のポイント

以下のポイントを考慮し、適切な診断方法を選ぶことが重要です。

組織の規模やセキュリティ方針に合わせた選択

組織の特徴推奨される診断方法
スタートアップ・中小企業(コストを抑え、効率的に診断したい場合)コストを抑えつつ効率的な診断を行いたい場合は、ツール診断が適している。自動化により定期的なチェックが可能。
大企業・金融・医療・官公庁高度なセキュリティ対策が求められるため、手動診断+ツール診断の組み合わせが効果的。特に重要システムには手動診断を推奨。
クラウド環境を利用する組織クラウド環境特有のリスクに対応するため、クラウドセキュリティに特化したツール診断と、必要に応じた手動診断の併用が理想的。

どのような診断が必要か

診断対象推奨される診断方法
WEBアプリケーションツール診断で基本的な脆弱性をチェックし、重要な部分に手動診断を実施。特に、認証機能や決済機能の診断には手動診断が有効
ネットワークセキュリティネットワークスキャンツール(例:Nmap、Nessus)を活用し、必要に応じて手動で詳細な分析を実施。ファイアウォールの設定やアクセス制御の確認が重要
クラウド環境(AWS、AZURE、GCPなど)クラウド専用の脆弱性診断ツールを活用し、アクセス制御や設定ミスをチェック。特に、IAM(Identity and Access Management)の監査が必要な場合は手動診断も推奨

ポイント:

  • Webアプリケーションの診断では、ツール診断でOWASP Top 10の脆弱性をスキャンし、カスタムアプリの診断には手動診断を追加するのが理想的
  • ネットワーク脆弱性診断では、ツール診断でポートスキャンを行い、不審な通信や設定の誤りを手動診断で確認する方法が有効
  • クラウド環境は設定ミスが原因の脆弱性が多いため、ツール診断を活用して広範囲をスキャンし、リスクの高い設定には手動診断を組み合わせることが推奨される

手動診断とツール診断の組み合わせ

手動診断とツール診断にはそれぞれメリットと限界があり、両者を適切に組み合わせることで、より高精度なセキュリティ対策が可能になります。ツール単独での診断では見落とされるリスクを補完し、組織のセキュリティレベルを向上させる戦略的なアプローチが求められます。

両者を組み合わせることで得られるメリット

スキャンの自動化と専門家による精査が両立

  • ツール診断で迅速に広範囲をスキャンし、重大なリスクが懸念される部分のみ手動診断を実施
  • 手動診断でツールの誤検出を精査し、実際のリスクを正確に判断

費用対効果の向上

  • 低コストでツール診断を定期的に実施し、大きな問題が発覚した場合のみ手動診断を適用することで、予算を最適化

診断結果の精度向上

  • ツール診断のスキャン結果を専門家が分析し、追加の手動診断を行うことで、より正確な脆弱性評価が可能

効果的なセキュリティ診断戦略の構築

手動診断とツール診断を組み合わせることで、組織ごとのセキュリティ要件に応じた診断戦略を構築できます。

(1) 定期的なスキャン+詳細なリスク分析

  • ツール診断を月次・四半期ごとに実施し、継続的にセキュリティ状況を監視
  • 重大なリスクが検出された場合のみ、対象システムの手動診断を実施して詳細分析

(2) システムの重要度に応じた診断手法の選択

  • 基幹システム・決済システムなどの重要システム
    手動診断を優先し、高精度な診断を実施
  • 一般的なWebアプリ・社内システム
    ツール診断で定期的にチェックし、基本的なリスクを管理

(3) インシデント対応と診断の連携

  • 過去のセキュリティインシデントの発生状況を分析し、手動診断で重点的にチェックすべき領域を特定
  • ツール診断のログを蓄積し、将来の診断方針に反映

適切な脆弱性診断サービスの選び方

診断会社を選ぶ際のポイント

脆弱性診断を外部に委託する場合、診断会社の選定は重要な要素となります。まず、診断の実績を確認し、自社の業界やシステムに適した経験があるかをチェックしましょう。特に、金融・医療・ECなどの高いセキュリティが求められる分野では、業界特有のリスクを理解している診断会社が望ましいでしょう。次に、対応範囲を確認し、Webアプリ、ネットワーク、クラウド環境など、自社のシステム構成に適した診断を提供できるかを見極めます。また、診断後のサポート体制も重要なポイントです。診断結果のレポート提供だけでなく、脆弱性修正のアドバイスや再診断が可能かどうかも確認し、長期的なセキュリティ強化に役立つパートナーを選びましょう。

費用対効果を考慮した最適な診断プランの検討

脆弱性診断のコストは組織にとって大きな課題ですが、単純に安価なサービスを選ぶのではなく、費用対効果を考慮した診断プランの選定が重要です。まず、診断の頻度と範囲を明確にし、必要最低限のコストで最大の効果を得られるプランを検討します。たとえば、定期的な診断が必要な場合はツール診断を活用し、重大なシステムについては手動診断を実施する組み合わせが有効です。また、診断会社ごとに料金体系や提供サービスが異なるため、複数社のプランを比較し、自社に最適なものを選択することが求められます。さらに、初回診断の割引や無料トライアルなどを活用することで、コストを抑えつつ診断の質を確認する方法も有効です。

まとめ:企業にとって最適な診断方法を選択する

脆弱性診断を効果的に活用するためには、自社のシステムやセキュリティ方針に適した診断方法を見極めることが重要です。コストを抑えながら広範囲をスキャンできるツール診断、高度な攻撃手法にも対応可能な手動診断、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが求められます。また、企業の業種やシステムの重要度によって、手動診断とツール診断の組み合わせを検討することが望ましいです。

さらに、脆弱性診断は一度実施すれば終わりではなく、継続的なセキュリティ対策が必要です。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、新たな脆弱性が発見される可能性があるため、定期的な診断と適切なセキュリティ対策の実施が欠かせません。企業のセキュリティレベルを維持・向上させるために、継続的な診断計画を立て、適切な対策を講じることが重要です。

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―第1回「手動診断のメリットとは?」はこちら―
―第2回「ツール診断のメリットとは?」はこちら―


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