
生成AIの業務利用が広がる一方、会社が把握・承認していないAIサービスを従業員が利用する「シャドーAI」は、情報漏洩につながるリスクの一つです。本記事では、RIZAPが公表した事案をもとに、生成AIへ情報を送信する際の注意点と、企業が見直すべきシャドーAI対策について解説します。
※本記事は2026年9月14日時点で公表されている情報に基づき作成しています。
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RIZAPの生成AIへの誤送信で何が起きたのか
2026年9月3日、RIZAPは、社員が私用の外部生成AIサービスに顧客情報を誤ってアップロードしたと公表しました。[1]今回の事案は、RIZAPの社員が特定保健指導管理システムのデータを集計する際、顧客情報を外部の生成AIサービスに誤ってアップロードしたものです。対象は、同システムに2026年1月1日から8月19日までに登録された対象者データの一部で、氏名や保険証記号番号のほか、疾患情報などの要配慮個人情報も含まれます。同社の発表では、対象者数および利用された生成AIサービスの名称は公表されていません。またAI事業者以外の第三者による閲覧と学習利用の可能性はないと説明する一方、事業者の役職員等が閲覧可能だったかは確認中としています。外部生成AIへの情報送信では、閲覧の可能性と学習への利用は別の論点です。
図1:RIZAPの公表内容
※「学習されない」という説明だけで、外部送信の適否は判断できません。

「学習されない」だけで生成AIへの入力を判断しない
外部の生成AIサービスにファイルをアップロードすると、まず、そのサービスへ情報を送信することになります。その後にどのように保存・処理され、誰がアクセスでき、学習に利用されるかは、契約や設定、サービスの仕様によって確認する論点です。一つの設定を見ただけで、情報の取り扱い全体を判断することはできません。
個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を含むプロンプトを入力する際、特定した利用目的の達成に必要な範囲かを確認するよう注意喚起しています。また、本人の同意なく入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合には、法に違反する可能性があるとして、機械学習に利用しないこと等の十分な確認を求めています。[2]企業が確認すべきなのは、「学習をオフにしたか」に加えて、「この業務に、この情報を外部へ送る必要があるか」です。たとえば、集計式を知りたいだけなら実在する顧客のデータを渡さず、架空のサンプルで処理方法を相談できる場合があります。また、実データの処理が必要な場合は事前に承認された環境と手順で取り扱う業務プロセスを設計します。
シャドーAIとは? 私用アカウントと業務利用の境界
本記事で述べている「シャドーAI」とは、会社が把握・承認していないAIサービスを、従業員が業務に利用することです。たとえば、会社が承認していない個人アカウントで、会社の資料を要約したり、業務ファイルを分析したりする利用が該当します。同じサービス名でも、会社が契約・管理する環境と、従業員の私用アカウントでは、管理できる範囲や適用される条件が同じとは限りません。そのため、社内ガイドラインに「生成AIの利用可」とだけ記載しても、判断基準としては不足します。対象のサービスと契約プラン、使用するアカウント、許可する業務、入力できる情報を一緒に示す必要があります。「会社で使えるAI」と「自分が普段使っているAI」を現場が取り違えないよう、利用ルールや利用環境を整えることが大切です。
RIZAPでは再発防止策として、社内で許諾されていない生成AIの業務利用禁止の再周知、教育、アクセス権限や利用環境の点検・見直しを挙げています。企業が生成AIの利用を見直す際は利用ルールだけでなく、アクセス制限などの利用環境もあわせて確認する必要があります。
生成AIの情報漏洩を防ぐために企業が見直すべきこと
社内ルールは、現場の作業に沿った形で示すと使いやすくなります。以下は、企業が自社の契約や情報分類に合わせて具体化するための判断例です。
図2:生成AIへファイルを送る前の判断例

※図は企業向けの一般的な判断例であり、法令上の適否を判定するものではありません。また、RIZAP社内の実際の運用を示すものではありません。
ファイル単位ではなく、中に含まれる情報まで確認する
表計算ファイルには、集計対象の列だけでなく、別のシートや自由記述欄に情報が残っている場合があります。そこで、アップロード用のデータを別に作成し、必要な項目だけを含める手順を設けます。氏名を削除しただけで安全と判断せず、番号や属性の組合せなど、個人を識別できる情報が残っていないかも確認します。
禁止事項と、迷ったときの相談先をセットにする
教育では「個人情報を入力しない」という説明に加え、集計表、議事録、顧客から届いた資料など、実際の業務を題材に判断を練習します。許可された使い方と相談窓口も示し、判断できないファイルは送信を止めて確認する運用にします。アクセス制限やデータ送信の制御を導入する場合も、対象のサービスや通信経路でどこまで制御できるかを確認したうえで、ルールを補完する仕組みとして位置付けます。
生成AIへ誤って情報を送信した場合の対応
生成AIへの誤送信に気付いたら、追加の送信を止め、社内の情報セキュリティ・個人情報管理の担当窓口へ速やかに報告します。サービス名、アカウント、送信日時、ファイルの内容、実施した操作を整理し、削除依頼や事業者への照会を進めます。必要な記録の保全と拡散防止は担当者の指揮で行い、記録用に機微な情報を別の外部サービスへコピーしないようにします。 確認したいのは、保存先と保持期間、閲覧の可能性、学習等への利用、削除の対象と完了状況です。画面上の履歴削除と、事業者側にあるデータの削除がどのような関係にあるかも確認します。行政機関への報告や本人への通知については、把握した事実に基づき、個人情報保護委員会の案内に沿って要否を判断します。[3]
生成AIの安全な業務利用に向けたBBSecの支援
生成AIの利用を始めていても、承認手順や教育が追い付いていない企業は、まずルールと実際の使い方の差を整理することが出発点になります。BBSecの「AIサービス提供者・利用者向けサイバーセキュリティ対策支援」では、AI利用者向けのセキュリティガイドライン雛形の提供と、事業に合わせたカスタマイズによる整備支援を用意しています。さらに、AI利用時の脅威・リスク・適切な利用方法・対策を扱う教育コンテンツの提供や、講師によるオンライン研修にも対応しています。既存の社内規程との整合性を見直したい場合は、「情報セキュリティ文書整備支援」により、文書体系の提案や既存文書の統廃合・改訂について支援を受けることもできます。生成AIを安全に業務利用するためには、ルールを定めるだけでなく、従業員が実際の業務で判断できるよう、教育とあわせて運用していくことが重要です。自社のAI利用ルールや教育体制を見直したい場合は、BBSecにご相談ください。
よくある疑問
▼ 個人情報を削除すれば、自由に使えますか?【参考情報】
- RIZAP株式会社「当社における外部生成AIサービスへのお客様情報の誤ったアップロードに関するお詫びとお知らせ」(2026年9月3日)(https://business.rizap.jp/news/2492)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/)
- 個人情報保護委員会:漏えい等の対応とお役立ち資料(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/)
編集責任:木下
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