BBSec脆弱性診断結果からみる
― 脆弱性を悪用したサイバー攻撃への備えとは ―

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Webサイトは、重要なデータの宝庫であり、サイバー攻撃者にとっては宝の山です。攻撃者はWebアプリケーションやシステムに存在する脆弱性を突いた攻撃を仕掛けます。では、自組織のシステムに脆弱性が存在した場合、攻撃者に悪用されづらくするためには何ができるでしょうか。本記事では、多くの企業・組織への診断実績がある弊社の視点で、サイバー攻撃への備えの一つとして、脆弱性診断を活用した予防的措置をご紹介いたします。

脆弱性を悪用したサイバー攻撃

事業活動に欠かせないIT環境では、様々な個人情報や機密情報等が保管・やりとりされており、サイバー攻撃者にとってそれらは宝の山です。そのため、今この瞬間もあらゆる企業・組織がサイバー攻撃の脅威にさらされています。

そして残念ながら、多くのWebアプリケーションやシステムには脆弱性が存在している可能性があります。宝の山に、宝を盗める抜け穴、つまり脆弱性があるとなれば、悪意ある者に狙われてしまうのは当然といえます。

脆弱性を悪用したサイバー攻撃の画像

サイバー攻撃者はどのような脆弱性を狙うのか

では、サイバー攻撃者が狙う脆弱性とは、どのような脆弱性でしょうか。
それは攻撃者にとって「悪用がしやすい」、そして「うまみがある」脆弱性です。そのような脆弱性があるWebアプリケーションやシステムは、攻撃対象になりやすく、攻撃者にとって魅力的な標的です。

そして、攻撃者にとって「悪用がしやすい」「うまみがある」脆弱性とは、簡単に攻撃ツールやエクスプロイトコードが入手できる「蔓延度」、どれだけ甚大な被害をもたらすことができるのかという「危険度」、そしてどれだけ他の機能やシステム、あるいは世間にインパクトを与えることができるのかという「影響度」の3つを軸にして捉えることができます。

また、そうした攻撃者にとって魅力的な脆弱性が多数ある場合、一度の攻撃のみならず、何度も複数の脆弱性を突いて攻撃を行われる可能性があります。

自販機の前で脆弱性を列挙する攻撃者のイメージ画像
自販機の前で脆弱性を選定する攻撃者のイメージ画像
選定した脆弱性を突いた攻撃を実行する攻撃者のイメージ画像
脆弱性を突いた攻撃が成功した攻撃者のイメージ画像(自販機から飲み物が出てくる=攻撃成功)

別の側面から見れば、攻撃者にとって魅力的な脆弱性がないWebアプリケーション・システムであれば、標的にされる可能性が少なくなるということです。

自販機に魅力的な脆弱性(攻撃してもうまみがない脆弱性)がないのをみて攻撃をあきらめる攻撃者のイメージ画像

サイバー攻撃者にとって攻撃対象にしづらいシステムとは?

ここまでみてきたように、攻撃者は「蔓延度」「危険度」「影響度」を軸に魅力的な脆弱性を判断することがあります。つまり裏を返せば、Webアプリケーションやシステムの脆弱性の「蔓延を防ぐ」「危険度を下げる」「影響度を下げる」ことで、攻撃者に脆弱性を悪用されにくくすることができます。そのためには各組織で脆弱性対策を行うことが必須となります。システムの欠陥をつぶし、脆弱性をなくすことが最も重要です。

古くから「無知は罪なり」という言葉もあります。情報セキュリティにおいては“まず知ること”が必要不可欠となります。脆弱性に対処するためには、「自組織のセキュリティ状況を見直し、リスク状況を把握して攻撃に備える」ことが重要です。

脆弱性の放置はサイバー攻撃を誘発し、事業活動に甚大な影響を及ぼしかねません。サイバー攻撃によるインシデントは、組織にビジネスの機会の喪失、信用の失墜といった損失につながる可能性があるため、脆弱性の放置はそういった損失の潜在的な原因となります。

システムに存在する脆弱性の有無を確認するために有効な手段の一つが、脆弱性診断です。脆弱性診断により、日々変化する脅威に対する自組織のシステムのセキュリティ状態を確認できるため、適時・適切の対策が可能です。

BBSecの脆弱性診断サービス

BBSecのシステム脆弱性診断は、独自開発ツールによる効率的な自動診断と、セキュリティエンジニアによる高精度の手動診断を組み合わせて実施しています。検出された脆弱性に対するリスク評価は5段階にレベル付けしてご報告しており、リスクレベルによって脆弱性対策の優先順位を判断しやすいものとなっています(右表参照)。

2022年下半期診断結果(多く検出された脆弱性ワースト10)

2022年下半期、BBSecでは12業種延べ510企業・団体、3,964システムに対して、脆弱性診断を行いました。結果として、なんらかの脆弱性が検出されたシステムのうち、5件に1件ほどはリスクレベル「高」以上の脆弱性が含まれているのが現状です。そのリスクレベル「高」以上の脆弱性を検出数順に10項目挙げると、下表のとおりになります。

2022年下半期診断結果(多く検出された脆弱性ワースト10)画像

2022年下半期におけるWebアプリ編ワースト10の上位3項目は、上半期同様、攻撃者にとって悪用しやすくうまみのあるインジェクション系の脆弱性がランクインしています。いずれもよく知られた脆弱性ばかりなため、悪用された場合、世間に基本的なセキュリティ対策を怠っている組織と認識され、信用失墜につながります。

また、アプリケーション等のバージョンアップを行わず、古い脆弱なバージョンを使用し続けているWebアプリケーションも多く存在し、ワースト10のうちの4項目がそういった脆弱性でランクインしています。すでに他組織で悪用された実績のある脆弱性を放置した状態となっている等、攻撃者にとっては同様の攻撃を複数の組織に対して行うだけで成果が出るので、こちらも悪用しやすくうまみのある脆弱性といえます。

ネットワーク編のワースト10でも過去と同じような脆弱性がランクインしていますが、9位の「SNMPにおけるデフォルトのコミュニティ名の検出」は初のランクインとなりました。SNMPは、システム内部のステータスや使用ソフトウェア等の各種情報取得に利用されるプロトコルで、管理するネットワークの範囲をグルーピングして「コミュニティ」としています。コミュニティ名には、ネットワーク機器のメーカーごとに「public」等のデフォルト値がありますが、SNMPにおけるコミュニティ名はパスワードのようなものであるため、デフォルトのままだと、これを利用して攻撃者に接続され、攻撃に有用なネットワークの内部情報を取得される恐れがあります。

脆弱性診断を活用した予防措置

ここまでお伝えしたように、攻撃者はより悪用しやすくうまみのある脆弱性を狙ってくる中で、自組織のWebアプリケーション・システムに脆弱性が存在するのか、また存在した場合どういったリスクのある脆弱性なのかを知り、脆弱性対策を行うことは組織として重要なことです。

脆弱性を悪用したサイバー攻撃への備えとして、BBSecとしては、脆弱性診断を推奨します。下図の攻撃方法は一例となりますが、影響範囲として機会損失から業務停止まで引き起こされる可能性がある、という実態はどの攻撃方法でも同じです。脆弱性を悪用された場合、どの攻撃方法であってもそういった被害が出る可能性があるため、悪用されやすい脆弱性は早急に対応しなければなりません。

脆弱性診断を活用した予防措置画像

早急に対応するポイントは「自組織のシステム状態を知り、優先順位をつけながら必要な対策をする」こととなるのですが、自組織におけるセキュリティ対策の有効性確認には、専門家の目線をいれることをおすすめしています。

脆弱性を悪用したサイバー攻撃に対して、予防的にコントロールするといった観点も含め、よりシステムを堅牢化していくために脆弱性診断の実施をぜひご検討ください。


半期(6か月)毎にBBsec脆弱性診断の結果を集計・分析。その傾向を探るとともに、セキュリティに関する国内外の動向を分かりやすくお伝えしています。
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SQAT脆弱性診断サービス

Webアプリケーション脆弱性診断-SQAT® for Web-

Webサイトを攻撃するハッカーの手法を用いて、外部から動的に脆弱性を診断することで、攻撃の入口となる可能性のある箇所を検出します。診断は最新のセキュリティ情報に基づき実施されますので、開発時やリリース前ばかりでなく、既存システムに対する定期的な実施といった、現状の脆弱性対策の有効性を確認するために活用することをおすすめしています。
以下より、サービス内容が記載されている資料のダウンロードもいただけます。

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ネットワーク脆弱性診断-SQAT® for Network

悪意ある第三者の視点で、ネットワークをインターネット経由またはオンサイトにて診断し、攻撃の入口となる可能性のある箇所を検出します。ネットワークを標的とした攻撃のリスクを低減するため、脆弱性を徹底的に洗い出し、システムの堅牢化をご支援します。システムの導入・変更・アップグレード時のほか、運用中のシステムに対する定期チェックにご活用いただけます。
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IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる
― 注目が高まる犯罪のビジネス化 ―

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瓦版vol.20アイキャッチ画像(犯罪ビジネスとハッカーのイメージ写真)

近年、サイバー犯罪はビジネス化が危惧されています。これまで高度な技術をもつ人だけが実行できていたサイバー攻撃も、攻撃のための情報がサービスとして公開されていたり、ツールを活用したりすることで、誰でも容易に実行することが可能となっています。犯罪のビジネス化が進む世の中で我々が対抗できる手段はあるのでしょうか。本記事では、注目される犯罪のビジネス化としてRaaSやDDoS攻撃などのビジネスモデルをご紹介しつつ、サイバー攻撃に備えるにはどのような手段をとればいいのか、という点について解説いたします。

「犯罪のビジネス化」が「情報セキュリティ10 大脅威」に5年ぶりのランクイン

2023年1月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2023」(組織・個人)を発表しました。組織編の脅威に2018年を最後に圏外となっていた「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が再びランクインしました。

アンダーグラウンドサービスとは、サイバー攻撃を目的としたツールやサービスを売買しているアンダーグラウンド市場で取引が成立し、経済が成り立つサービスのことです。これらのツールやサービスを悪用することで、攻撃者が高度な知識を有していなくとも、容易にサイバー攻撃を行うことが可能となります。そのため、ランサムウェアやフィッシング攻撃といったサイバー攻撃がますます誘発され、脅威となるのです。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2023」(2023年3月29日)組織向け脅威

ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware-as-a-Service)

勢いを増しているサイバー犯罪のビジネスモデルとしてRaaS(Ransomware-as-a-Service)があります。RaaSとはランサムウェアが主にダークウェブ上でサービスとして提供されている形態のことで、RaaSを利用した攻撃者は、得た身代金の何割かを開発者に取り分として渡す仕組みになっていて、そうやって利益を得ていることなどがあります。

ランサムウェアが増加している理由についてはSQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
ランサムウェア攻撃に効果的な対策‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

図1:Raasビジネスを利用した攻撃の一例

Raasビジネスを利用した攻撃の一例画像

昨今のランサムウェア攻撃の特徴として、ランサムウェア攻撃により行われる脅迫は暗号化したデータを復旧するための身代金の要求に加えて、支払わなければ奪取したデータを外部に公開するといった二重の脅迫から、さらに支払うまでDDoS攻撃(※)を行うといった三重の脅迫から、さらにはそれでも支払いを拒否された場合には、盗んだ情報をオークションで売られてしまうといった事態に発展するなど、より被害が拡大しています。
※DDoS攻撃・・・多数の発信元から大量のデータを送り付けることでサーバを停止させる攻撃のこと。

図2:データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫

データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫画像

また、従来のランサムウェアの攻撃の手口は不特定多数に対して無差別に行うばらまき型と呼ばれる手法でしたが、近年では攻撃手法が多様化しています。以下の表は攻撃手法と事例です。

年月攻撃手法事例
2020/6標的型ランサムウェア攻撃 国内自動車メーカーの社内システムが、EKANSの攻撃を受け、日本を含む各国拠点で一時生産停止に陥るなど大きな被害を受ける。
2022/1USBデバイスを使用した
ランサムウェア攻撃
米国で攻撃者が官公庁や有名販売サイトを装い、パソコンに接続することでランサムウェアを感染させる細工を施したUSBデバイスを送付。2021年8月には運輸および保険業界の企業、11月には防衛産業企業に送られており、FBIが注意喚起を行う*1
2022/10サプライチェーン攻撃に
よるランサムウェア感染
2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道があった。

取り上げた事例の詳細について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
2022年6月の事例:「ランサムウェア最新動向2021 ―2020年振り返りとともに―
2022年10月の事例「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

このように、被害者が身代金の要求により応じやすくなるような脅迫に変化し、また攻撃手法も多様化することにより、攻撃の巧妙化によって高い収益をあげられることから、今後もランサムウェア攻撃は続くことでしょう。その背景には攻撃の実行ハードルを下げるRaaSの存在があることが考えられます。

フィッシング攻撃やDDoS攻撃もサービス化へ

フィッシング攻撃とは、有名企業等になりすますなどして偽装したメールやSMSにより、本物そっくりの偽サイトに誘導したり、悪意ある添付ファイルを実行させようとしたりするサイバー攻撃です。このフィッシング攻撃により、マルウェアを使った重要情報の奪取や、ランサムウェアの感染拡大などを行う事例*2も確認されています。

2022年11月から感染が再拡大しているマルウェア「Emotet」も、この手口を利用することで拡大しました。Emotetに感染し、メール送信に悪用される可能性がある.jpメールアドレスの数は、Emotetの感染が大幅に拡大した2020年に迫る勢いとなっています。

図3:Emotetの攻撃例イメージ図

Emotetの攻撃例イメージ図画像

フィッシング攻撃もサービス化が進んでいます。2022年9月、米国のResecurity社はダークウェブにおいて二要素認証を回避する新たなPhaaS(Phishing-as-a-Service)が登場したと発表しました。このPhaaSは「EvilProxy」と命名され、二要素認証による保護を回避する手段として、「リバースプロキシ」と「クッキーインジェクション」を使用し、被害者のセッションをプロキシング(代理接続)するというものです。このような複雑な仕組みの攻撃がサービス化されたことにより、今後フィッシング攻撃がますます活発化することが考えられます。

「EvilProxy Phishing-As-A-Service With MFA Bypass Emerged In Dark Web」図
出典:Resecurity「EvilProxy Phishing-As-A-Service With MFA Bypass Emerged In Dark Web」より弊社和訳

そのほかにも、直近では米国で定額料金を支払うことで代行してDDoS攻撃を行うサービス「DDoS攻撃代行サブスクリプションサービス」を提供するサイトの運営者が逮捕される事件*3がありました。DDoS攻撃を行う目的は「金銭目的」「嫌がらせ」「抗議の手段」「営利目的」など攻撃者の背景によって異なります。逮捕に至ったこのサービスでは2000人以上の顧客を抱えており、これまでに20万件以上のDDoS攻撃を実行したと報道がありました。ここからみえてくるのは、様々な事情を抱えた攻撃者にとって、「求められているサービス」であったということです。

犯罪ビジネスサービス利用者の標的にならないために

ここまでランサムウェアやフィッシング等のサイバー攻撃がビジネス化されている例をみてきました。このように犯罪に使用するためのサービスは、アンダーグラウンド市場で取引され、これらを悪用したサイバー攻撃が行われるというビジネスモデルが存在しているのです。サービスを利用するだけで、高度な知識をもたない攻撃者であっても、容易にサイバー攻撃を行えることから、犯罪のビジネス化は今後さらに進み、特にランサムウェア攻撃やフィッシング攻撃は活発化することが考えられます。

これらの犯罪ビジネスサービス化の拡大により増えることが想定されるランサムウェア攻撃とフィッシング攻撃に対して、攻撃を行う機会を与えないために以下のような基本的な対策が有効でしょう。

ランサムウェア対策

■定期的なバックアップの実施と安全な保管
 (物理的・ネットワーク的に離れた場所での保管を推奨)
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は、バックアップ時のみパソコンと接続
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は複数用意する
 ⇒バックアップから復旧(リストア)可能であることの定期的な確認
■OSおよびソフトウェアを最新の状態に保つ
■セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ
■認証情報の適切な管理(多要素認証の設定を有効にするなど) など

フィッシング対策

■ソフトウェアを最新にするなどパソコンやモバイル端末を安全に保つ
■従業員教育を行う
 ⇒不審なメールやSMSに注意する
 ⇒メールやSMS内に記載されたURLを安易にクリックしない
 ⇒メールやSMSに添付されたファイルを安全である確信がない限り開かない
■標的型攻撃メール訓練の実施 など

なお、セキュリティ対策は一度実施したらそれで終わりというものではありません。サイバー攻撃の手口は常に巧妙化し、攻撃手法も進化し続けているためです。脆弱性診断を定期的に行うなど、継続してサイバー攻撃に備えていくことが必要です。また、セキュリティ対策を実施した後も、侵入される可能性はないのか、万が一感染した場合はその影響範囲はどの程度かといった現状把握を行い、実装したセキュリティ対策の有効性を確認することが大切です。

BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

<侵入前・侵入後の対策の有効性確認>

BBSecでは、第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を実現する、「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

※外部サイトにリンクします。

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定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!
-放置された脆弱性のリスクと対処方法-

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瓦版vol.19アイキャッチ画像(聴診器のイメージ)

脆弱性、放置されてませんか? 近年、放置されたままの脆弱性が悪用されるサイバー攻撃が増加しています。システムの脆弱性を対策しないままでいると、不正アクセスやマルウェア感染などの様々なリスクがあります。本記事では、脆弱性のリスクや実際に悪用された事例を紹介しつつ、脆弱性対策の重要性について解説いたします。

脆弱性の放置が命取りに~「Nデイ脆弱性」が狙われる

脆弱性が発見されると、対応として対象製品のベンダーより修正プログラムがリリースされます。ユーザはその修正プログラムを適用することで、当該脆弱性に対応することができます。

しかし、実際には様々な理由で修正プログラムが適用されず、脆弱性が放置されてしまうことがあります。修正プログラムのリリース後から、実際に適用されるまでの期間に存在する脆弱性は「Nデイ脆弱性」と呼ばれ、それを悪用するサイバー攻撃が増加しています。

図:2020年の脆弱性を利用した攻撃の割合(月ごとの開示年別)
出典:Check Point Software Technologies Ltd.「CYBER SECURITY REPORT 2021」

上のグラフは、Check Pointが公開したレポートに記載されたもので、2020年のそれぞれの月に、いつ発見された脆弱性がどのくらい使われていたか、その割合を示すグラフで、横軸は2020年のいつのデータであるのかを、縦軸は使用された脆弱性の発見された年を示しています。グラフからは、前の年である2019年以前に登録された脆弱性が、年間を通じて攻撃者に悪用され続けたことや、観測された攻撃の約80%が、2017年以前に報告・登録された脆弱性を悪用したものであったとのことがわかります。また、上記レポートでは複数の脆弱性を組み合わせて攻撃する手法「エクスプロイトチェーン」に、新しい脆弱性が組み込まれているとも指摘しています。

Nデイ脆弱性を狙う攻撃では、修正プログラムが適用されるより前に攻撃が仕掛けられるため、ソフトウェア管理が不適切な企業が標的として狙われやすくなっています。さらには近年では脆弱性対策情報が公開された後に攻撃コード(PoC)が流通し、攻撃が本格化されるまでの時間が短くなっています*4

こういった背景から脆弱性を放置したままにすることは深刻な被害につながる可能性があります。

放置した脆弱性の持つ様々なリスク(不正アクセス・マルウェア感染・ホームページの改ざん・サーバの
ボットネット化)についてのイメージ図

既存の脆弱性を狙った事例

以下は2022年に既知の脆弱性が狙われた事例についてまとめたものです。

年月製品事例
2022/1SonicWall SMA100シリーズ*2
(VPN製品)
2021年12月に公開された既知の脆弱性が概念実証コード(PoC)を含む詳細な情報が公開されたことにより、攻撃が活発化。
2022/2eコマースプラットフォームMagento 1*3
(ECプラットフォーム)
Magento 1に存在するQuickViewプラグインの既知の脆弱性を悪用した大規模な攻撃を検知。いまだ数千ものeコマースが、2020年6月30日にサポートが終了しているMagento 1で稼働している背景を利用したと考えられる。
2022/3リモートキーレスシステム*4
(自動車)
既に「CVE-2019-20626」「CVE-2021-46145」で指摘されているが、一部の古い車種(日本車)において引き続きこのリモートキーレスシステムが利用されていたことに起因する。
2022/4Apache Struts 2*5
(Webサーバ)
2020年12月に公開された脆弱性「CVE-2020-17530」の修正が不十分であったことに起因する。
2022/5VMware製品*6
(仮想化ツール)
2022年4月に複数の脆弱性の対策版がリリースされているが、リリースから48時間とたたず、「CVE-2022-22954」「CVE-2022-22960」の悪用が確認される。
2022/9Python*7
(プログラム言語)
2007年に存在が判明していたものの修正されずにいた脆弱性「CVE-2007-4559」が、15年越しに世界中で悪用されていることが報告される。
2022/12FortiOS*8
(VPN製品)
SSL-VPN製品における深刻な脆弱性は過去にも攻撃で悪用されている。リモートワークの拡大により今後も広まることが懸念される。

ベンダーや企業が公開している脆弱性をもつソフトウェアなどの情報や修正プログラムを解析することで、脆弱性を悪用するヒントを容易に得ることができます。さらに、当該脆弱性を攻撃するためのツールがダークウェブなどで売買されるケースもあります。こうしたことから、修正プログラムが公開される前に行われるゼロデイ攻撃(※)と比べると、攻撃者自ら脆弱性を調査する必要がないため、攻撃の難易度が低いといえます。

ゼロデイ攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
IPA情報セキュリティ10大脅威にみるセキュリティリスク ―内在する脆弱性を悪用したゼロデイ攻撃とは―

Webサイトは最大の攻撃ベクター

エシカルハッカー(※)へのアンケート調査によるとエシカルハッカーの95%はWebサイトが最大の攻撃ベクターだと考えているとの回答でしたと報告されています。

エシカルハッカー・・・倫理観を持ち、高度なハッキング技術や高い知識を善良な目的のために活用するハッカーのこと。ホワイトハッカーとも呼ばれている。

また、弊社で提供しているSQAT脆弱性診断サービスにて、2019年上半期~2022年上半期に診断を実施した延べ3,762社28,179システムのうち、脆弱性が検出されたシステムはWebシステムにおいて毎年8割以上、ネットワークシステム(プラットフォーム)において5割を占めています。

BBSecシステム脆弱性診断 脆弱性検出率(Web/NW)
図:診断結果にみる情報セキュリティの現状~2022年上半期 診断結果分析~
 (SQAT® Security Report 2022-2023年 秋冬号)

脆弱性が存在するOS・アプリケーションを使用しているといったバージョン管理に関する脆弱性が高い割合で検出されているほか、クロスサイトスクリプディングやSQLインジェクションのようなインジェクション攻撃を受ける恐れのあるリスクレベルの高い脆弱性も多くみられます。

Webサイトは狙われやすい傾向にあるだけではなく、実際に様々な危険に晒されています。攻撃手法の進化や、経年によって攻撃のための製品解析が進んでしまうといった事情により、日々新たな脆弱性が検出され続けています。そういった脆弱性に対しての備えとして、適時・適切な対応を継続して行う必要があります。

定期的な診断実施を可能にする脆弱性診断ツールの活用

JPCERT/CCが発表している「Webサイトへのサイバー攻撃に備えて」によると、Webアプリケーションのセキュリティ診断に関しては、機能追加などの変更が行われたときはもちろんのこと、それ以外でも「1年に1回程度」実施することが推奨されています。

しかし、自組織内でセキュリティ対策を行うには、設備投資や人材育成に工数やコストがかかるといった不安を抱える企業も少なくありません。そこで定期的な診断の実施を後押しするものとして脆弱性診断ツールの活用をオススメします。脆弱性診断ツール活用のメリットには以下のようなものがあります。

1. 商用またはセキュリティベンダーの自社開発した診断ツールを活用するため、
  ソフトウェアインストールなどの新規設備投資が不要
2. 開発段階から診断をすることにより、後工程における手戻り発生を防ぎ、
  セキュリティコストの削減が可能
3. 手動診断と比較すると安価なため、定期的に簡易診断が可能
4. 診断結果を定点観測することで、即時に適切な対応をすることが可能

ただし、脆弱性の詳細やリスク判定に関してはセキュリティ専門家の知見が必要不可欠です。自組織に専門家がいるか、セキュリティ専門企業のサポートを受けられるか、といった点はツール選定の際に注意が必要です。

継続的なセキュリティ対策を実現するために

脆弱性診断は一度実施したらそれで終わりというものではありません。脆弱性は日々増加し続けるため、診断実施後に適切なセキュリティ対策を行っていたとしても形を変えて自組織のシステムにサイバー攻撃を行う可能性は十分にあります。顧客が安心してサービスを利用し続けられるためにも定期的な診断を実施し、洗い出されたセキュリティ上の問題に優先順位をつけて、ひとつひとつ対処することが重要です。診断ツールの検討に関しては自組織の環境やシステム特性に合わせたものを選定し、継続的なセキュリティ対策に有効活用できるようにしましょう。

BBSecでは

当社では様々なご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

<SQAT診断サービスの特長>

SQAT診断サービスの特長

<デイリー自動脆弱性診断 -Cracker Probing-Eyes®->

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拡大するランサムウェア攻撃!
―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

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瓦版アイキャッチ画像(PCを感染させる攻撃者のイメージ)

国内の医療機関をターゲットにしたランサムウェア攻撃がいま、拡大しています。最近報告された医療機関の事例では、ランサムウェアに感染させる手段としてサプライチェーン攻撃を行ったという例もありました。ますます巧妙になっていくランサムウェア攻撃を完全に防ぐということはできません。しかし、いざ被害にあってしまうとビジネスの停止など大規模な損害がもたらされる恐れもあります。本記事では、拡大するランサムウェア攻撃に対してリスクを整理したうえで、どのような対策をとればよいのか、その手段についてBBSecの視点から解説いたします。

拡大するランサムウェア、国内の医療機関がターゲットに

近年、国内の医療機関を狙ったランサムウェアによるサイバー攻撃が相次いで報告されています。令和4年上期に都道府県警察から警視庁に報告があった被害報告のうち、「医療、福祉」は全体の一割近くとなっており、今後拡大していくことが懸念されています。

【ランサムウェア被害企業・団体等の業種別報告件数】

【ランサムウェア被害企業・団体等の業種別報告件数】
注:図中の割合は小数第1位以下を四捨五入しているため、統計が必ずしも100にならない
出典:警察庁(令和4年9月15日)「令和4年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

直近で起こった国内の医療機関を狙ったランサムウェアによる具体的な被害事例は以下の通りです。

【医療機関を狙ったランサムウェアによる被害事例】
年月地域被害概要
2021/5大阪府医療用画像参照システムがダウンし、CTやMRIなどの画像データが閲覧できない障害が発生*9
2021/10徳島県電子カルテを含む病院内のデータが使用(閲覧)不能となった*2
2022/1愛知県電子カルテが使用(閲覧)できなくなり、バックアップデータも使用不能な状態となった*3
2022/4大阪府院内の電子カルテが一時的に使用(閲覧)不能となった
2022/5岐阜県電子カルテが一時的に停止したほか、最大11万件以上の個人情報流出の可能性が確認された*4
2022/6徳島県電子カルテおよび院内LANシステムが使用不能となった*5
2022/10静岡県電子カルテシステムが使用不能となった*6
2022/10大阪府電子カルテシステムに障害が発生し、ネットワークが停止。電子カルテが使用(閲覧)不能となった*7

このように病院の電子カルテなどを扱う医療情報システムが狙われてしまった場合、業務の根幹を揺るがす大きな問題となり、最悪の場合は、長期間にわたるシステムの停止を余儀なくされてしまう可能性があります。そのため、医療機関にとって、サイバー攻撃のターゲットとなってしまうことは非常に大きなリスクと考えられます。

医療業界が狙われる理由は、医療情報はブラックマーケットにおいて高額で売買されているため、攻撃者にとって「カネになるビジネス」になるからです。「事業の停止が直接生命に関わる」という点でも、身代金要求に応じさせるうえでの強力な要因になります。

医療業界が狙われる理由について、SQAT.jpでは以下の記事でもご紹介しています。
こちらもあわせてご覧ください。
狙われる医療業界―「医療を止めない」ために、巧妙化するランサムウェアに万全の備えを

業種問わず狙われる―サプライチェーン攻撃によるランサムウェアの被害

前述した2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、その後、11月に同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道がありました。これはランサムウェアを感染させるためにサプライチェーン攻撃を行ったということになります。

こうしたサプライチェーンの脆弱性を利用したランサムウェアの被害は、医療業界だけの話ではありません。特定の業種に限らず、標的となる企業を攻撃するために、国内外の関連会社や取引先などのセキュリティ上の弱点を突く攻撃は珍しくないように見受けられます。

【サプライチェーンを狙ったランサム攻撃による被害事例】
年月被害概要
2021/4光学機器・ガラスメーカーの米国子会社がランサムウェアの被害により、顧客情報など300GBのデータを窃取されたことを攻撃グループのリークサイトに掲載される*8
2022/4情報通信機器等の製造を行う企業と同社の子会社がランサムウェアの被害を受け、従業員の個人情報のデータを暗号化され、復号不可能になった*9
2022/3自動車部品メーカーの米州のグループ会社がランサムウェアによる不正アクセスを受け、北米及び南米地域の生産や販売などの事業活動に一時支障が起きた*10
2022/3国内大手自動車メーカーの部品仕入先企業が狙われ、自動車メーカーの業務停止につながった*11

業務委託元企業がしっかりとセキュリティ意識をもって対策を行っていても、関連する業務委託先のさらに再委託先などのセキュリティの対策に必要なリソースの確保が難しい企業の脆弱性が狙われるため、一か所でもほころびがあるとサプライチェーンに含まれる全企業・組織に危険が及ぶ恐れがあります。

ランサムウェア被害にあってしまった場合のリスク

ランサムウェアによる影響範囲と具体例は以下の通りです。

国内でランサムウェア被害にあった企業・団体等について、警視庁のアンケート調査によると、2割以上が復旧までに1ヶ月以上かかり、5割以上が調査・復旧費用に1000万円以上の費用を要したという調査結果を報告しました。

【復旧に要した期間と調査・復旧費用の総額】

【復旧に要した期間と調査・復旧費用の総額】
注:図中の割合は小数第1位以下を四捨五入しているため、統計が必ずしも100にならない
出典:警察庁(令和4年9月15日)「令和4年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

米国での調査においてもランサムウェア攻撃によるデータ侵害の平均コストは454万米ドルでこれはデータ侵害全体での平均総コストを上回っていることに加えて、原因の特定に237日、封じ込めるまでに89日と合計ライフサイクルは326日となっており、全体の平均より大幅に長くかかっていると報告しました。

【ランサムウェア攻撃のデータ侵害の平均コストと特定し封じ込めるまでの平均時間】

(単位:100万米ドル)
出典:IBM「データ侵害のコストに関する調査

ランサムウェアによる感染を防ぐため対策の見直しを

企業・団体等においてランサムウェアの感染経路には様々なケースがあります。そのため、以下の対策を多重的に行い、被害を最小限に抑えていく必要があります。

1. データやファイル、システムの定期的なバックアップの実施
2. 企業・組織のネットワークへの侵入対策
  ファイアウォールやメールフィルタ設定により不審な通信をブロック
  不要なサービスの無効化、使用しているサービスのアクセス制限
3. 攻撃・侵入されることを前提とした多層防御
4. OSやアプリケーション・ソフトウエア、セキュリティソフトの定義ファイルを常に最新の状態にアップデートする
5. 強固なパスワードのみを許容するなど適切なパスワードの設定と管理を行う

3.攻撃・侵入されることを前提とした多層防御について、SQAT.jpでは以下の記事でもご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
APT攻撃・ランサムウェア―2021年のサイバー脅威に備えを―

また、各業界向けに発行されているセキュリティ対策ガイドラインなどを参考にし、自組織の対策の見直しをすることも重要です。

【参考情報:各業界のセキュリティ関連ガイドライン等】


■(重要インフラ14分野向け)
NISC「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針
■(医療業界向け)
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
経済産業省・総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン
■(金融業向け)
FISC「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書等
■(交通関連企業向け)
国土交通省「国土交通省所管重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係るガイドライン等
■(教育業界向け)
文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン等

他人事ではない、ランサムウェア攻撃のリスク

冒頭で述べたランサムウェア攻撃をはじめ、特に重要インフラ14分野※においては人命や財産などに深刻な被害をもたらす恐れがあります。たとえ自社が該当しない業種であっても、同じサプライチェーン上のどこかに重要インフラ事業者がいるのではないでしょうか。つまり、ランサムウェア攻撃というものは常にその被害に遭う可能性があるものと認識する必要があります。

※重要インフラ14分野…重要インフラとは、他に代替することが著しく困難なサービスのこと。その機能が停止、低下又は利用不可能な状態に陥った場合に、わが国の国民生活又は社会経済活動に多大なる影響を及ぼすおそれが生じるもののことを指す。内閣府サイバーセキュリティ戦略本部「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る行動計画」では、「重要インフラ分野」として、「情報通信」、「金融」、「航空」、 「空港」、「鉄道」、「電力」、「ガス」、「政府・行政サービス(地方公共団体を含む)」、 「医療」、「水道」、「物流」、「化学」、「クレジット」及び「石油」の14分野を特定している。

ランサムウェア攻撃への備えとして、前述のような様々な対策を講じるにあたって、まずは現状のセキュリティ対策状況を把握するための一つの手段として、セキュリティ診断などを実施することをおすすめします。

BBSecでは

当社では以下のようなご支援が可能です。

<企業・組織のネットワークへの侵入対策>

<攻撃・侵入されることを前提とした多層防御>

※外部サイトにリンクします。

<セキュリティ教育>

標的型攻撃メール訓練

※外部サイトにリンクします。

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<インタビュー>門林 雄基 氏 / 奈良先端科学技術大学院大学 サイバーレジリエンス構成学研究室 教授【後編】

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国内外問わずセキュリティイベントに多くご登壇し、弊社で毎月1回開催している社内研修で、最新動向をレクチャーいただいている奈良先端科学技術大学院大学の門林教授。そんな門林教授に2022年のセキュリティニュースを振り返っていただき、今後の動向や予測について語っていただきました。前・後編の2回のうち、後編をお届けします。

(聞き手:BBSec SQAT.jp編集部)


サイバー攻撃の多様性

新たな攻撃の予想

━━今年はこれまでもすでに発見されていたが放置されてきた脆弱性が再発見されたり、新たに発見されたりした脆弱性を悪用したサイバー攻撃が話題になりました。それを踏まえ、今後新たな流行として予想される攻撃や今の時点で考えられる攻撃がありましたらどんなものがありますでしょうか?

門林:色々起きてますが、犯罪教唆にならない範囲で考えますと、クラウドとかでしょうか。クラウドはかなり巨大になってきていますので、問題は起きるかなとは思いますね。やはり色んな方がクラウドを使っていますよね。

━━そうですね。最近はテレワークの導入率も6割程度という調査結果も出ているという風に聞きます。

門林: 結局そのクラウドの方がちゃんとやっているから安全というように事業者の方はよくおっしゃるんですが、中小から大企業までみんながクラウドを使っているということは、当然反社もハッカー集団もクラウドを使っているわけです。だから隣のテナントは反社かもしれないという状況で、企業も何万社とあって、クラウド事業者側でもみえてないです。

門林先生インタビュー写真3

見通しが明るくない話ばかりになりますが、クラウドはほんとに色んな問題を抱えて走っています。もちろんその問題を抱えたうえでリスクを潰しながらオペレーションできればいいんですが。これもやはり10年ほどやってきている話で、進展も激しいですし、色々積み重なっています。結局古い問題がなくならないので、我々専門家も日々話題にする脆弱性で、これ10年前にも同じ話あったよねというのがもう頻繁に出てくるわけです。ですのでクラウドに関しても、おそらく5年前とか10年前にあった脆弱性のぶり返しと新しい攻撃キャンペーンが組み合わさるとなんか起こるだろうなと思います。

今できる共通の対策

━━今後もありとあらゆる攻撃が予想されるということがお話伺っていてわかりました。それぞれの攻撃に対しては、対策をとっていく、防御していくことが重要になってくることかと思いますが、今できる共通の対策として、まず何をすべきでしょうか?

門林:基本に忠実にやるということしかないです。新しいトピックだけ追いかける人が多いですが、サイバーセキュリティという領域が生まれてもう30年です。脆弱性データベースの整備も始まって30年くらいたっていると思います。で、そのなかに10年選手、5年選手あるいは15年選手の脆弱性があるわけです。マルウェアもわざわざ古いマルウェアを使うという攻撃もあるんです。古いマルウェアだと最近のアンチウィルスソフトでは検知しないからあえて使うなどという色々な話があって、結局新しいことだけに注目してニュースを追って新しい製品を買ってというようにやっていると、5年前とか10年前の脆弱性に足をすくわれると思うんです。ですのでここはもう基本に忠実にやるしかないわけです。

セキュリティ全般の話ですが、やはり30年分の蓄積があるので、それを検証できるだけのスキルを持っていなければいけないですし、なんなら製品ベンダーさんの方が基本的な話を知らなかったりしますからね。

どんな対策が有効?

━━リスク管理の原則という話も少し出ましたが、企業においては情報資産の棚卸しというところも重要になってくると思います。弊社では脆弱性診断サービスを提供していますが、こういったサイバー攻撃への対策として、脆弱性診断サービスは有効に働くでしょうか?

門林:この業界はぽっと出だと私は危ないと思っています。セキュリティ診断会社が裏で反社と繋がっていて脆弱性診断を結果流していたという話もあり得ない話ではないので、ちゃんとした会社に依頼するということが私は大事だなと思ってます。

BBSecさんはもう22年くらいやっているとのことですが、やっぱりそれくらいやってる会社じゃないとかなり重要なシステムの脆弱性診断とか任せられないんじゃないかなと思いますし、それだけやってらっしゃる会社さんだからこそ、昔の脆弱性や最近の脆弱性、あるいは5年10年前の脆弱性というところも経験があって、ある意味チェック漏れといいますか、抜け漏れみたいなのもないと思うんです。やはり脆弱性診断みたいな、セキュリティの話で”水を漏らさず”みたいなところに尽きると思うんです。水を漏らさずどういう風に検査するかというともう経験値が全てだと思うんです。色々なシステムを検査してきた経験値というのが今にいきていると思いますし、そういうの無しに最近できた会社なんですよといって診断されても、そこの製品、俺だったら簡単に迂回できるなと思ってしまいますね。

終わりに…

これからセキュリティ業界に携わりたい方に向けて

━━ありがとうございました。では最後に、これまでのトピックスを振り返りつつ、これからセキュリティ業界に携わって働いていきたいという方やすでにもう業界で経験がある方でこれからもっとステップアップしていきたいというSQAT.jp読者に対して、門林先生からのメッセージをいただければと思います。

門林:サイバーセキュリティというと、プログラミングとかそういうのに詳しい人だけと思われがちなんですが、そうではないんだということです。もう今は総力戦になってますので、プログラミングやセンサーに詳しい人も歓迎ですし、あるいは人間の心理とか社会学とかのスキルとかそういうのに詳しい人も歓迎ですし。結局人間の脆弱性、ソフトウェア・ハードウェアの脆弱性など色々なものがあるなかで、それらすべてに相対していかなければならないわけです。プログラミングやマルウェア解析がすごいという人だけではなくて、いろんな人に来ていただきたいなと思いますね。

あともう一つ大事なのは、やはり優しさです。パソコンに詳しい、俺はプログラミングがすごいだけではなくて、実際サイバー攻撃にやられてしまった現場に行っても、「大丈夫ですか?」とできる人、例えば、「ランサムウェアの現場大変ですね、何とか復号しましょう」、というように。きれいじゃない現場というのがたくさんあるように、これから人間の失敗の顛末みたいな所も目にすると思います。各社・各業界の事情もありつつ、失敗の形跡もありつつ、そういう所で火消しをする、手続きの話をするというかたちになるので、結局その現場に入る人、セキュリティの業界に入る人はやっぱり弱者の側に立たないといけないんです。

CTFとかそういうものをやってると優秀な人こそ勝つという感じの発想の人もいると思うんですが、私は、そういうゲーム的な「俺はサッカーが上手いからすごいんだ」という人が来てくれるよりは、むしろ消防あるいは看護婦・お医者さんのような弱者・敗者に寄り添うセンス、かつプログラミング・技術もできる、法律もハードウェアもできるといった、そういう人間としてのキャパシティーをもった人に来ていただきたいなと思います。「俺はこのツールが使えるんだすごいだろ」という感じの人はたくさんいる気がするので、そうではない側の人、人としての優しさを備えてかつテクノロジー・法律といった様々なスキルを研鑽していこうと思える人にきてほしいですね。

━━弊社は脆弱性診断診断サービス以外にもインシデント対応やコンサルティングの提供もしているので、そういう意味でも、技術力だけじゃなく、人間性みたいなところも比較的重要になってくるのかなと個人的にも思います。本日はありがとうございました。

ーENDー
前編はこちら


門林 雄基 氏
奈良先端科学技術大学院大学 サイバーレジリエンス構成学研究室 教授
国内外でサイバーセキュリティの標準化に取り組む。日欧国際共同研究NECOMAプロジェクトの日本研究代表、WIDEプロジェクトボードメンバーなどを歴任。


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セキュリティ診断の必要性とは?

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「セキュリティ診断」とは何か?セキュリティ診断には脆弱性診断、ソースコード診断、ペネトレーションテストなどの方法があります。今回は、企業にセキュリティ診断が不可欠な背景を説明します。また、診断以外のセキュリティ対策にも触れます。

セキュリティ診断の必要性とはのサムネ

サイバー攻撃や組織における管理またはシステムの設定不備・不足等が原因となり、機密情報等の漏洩事故および事件が相次いで発生しています。東京商工リサーチの調べによれば、上場企業とその子会社で起きた個人情報漏洩または紛失事故・事件件数は2021年で137件となり過去最多を更新しました。*12実際に企業がデータ侵害などの被害を受けてしまい、機密情報等の漏洩が発生してしまうと、システムの復旧作業に莫大なコストがかかるほか、データ侵害によるインシデントが信用失墜につながることで、 深刻なビジネス上の被害を引き起こします。被害を最小限に抑えるために、適切な事故予防、攻撃対策をとっていくことは、企業の重要な業務のひとつとなっています。

セキュリティ対策やセキュリティ診断は、企業にとっていまや基幹業務に不可欠であり、社会的責任でもあります。この記事ではセキュリティ診断の内容と必要性などを解説します。

セキュリティ診断とは? その必要性

セキュリティ診断とは、システムのセキュリティ上の問題点を洗い出す検査のことを指します。脆弱性診断、脆弱性検知、など呼び方もさまざまで、また対象によってソースコード診断、システム診断、Webアプリケーション診断、ペネトレーションテストなどに分類されます。

なお、複数の診断方法のうち、同様の診断をセキュリティベンダーや診断ツール提供者がそれぞれ微妙に異なる名称で呼んでいるケースもあります。

「セキュリティ診断」という用語は、単に「脆弱性診断」を指すこともあれば、セキュリティに関するさまざまな診断や評価全体を包括して「セキュリティ診断」と呼ぶ広義の使い方もあります。

「セキュリティ」には、情報セキュリティだけではなく、デジタル社会へのリスク対応全般が含まれる場合もありますが、「セキュリティ診断」という用語は、企業など組織の事業における(情報)セキュリティリスクの低減を主な目的とした検査のことをいいます。

資産である情報の「機密性」「完全性」「可用性」を守るため、セキュリティ診断を行うことで、情報セキュリティの観点からみた構造上の欠陥や、組織体制、あるいは運用上の弱点を見つけることができます。発見された問題に対し優先順位をつけて対策を実施することで、より堅牢なシステム・環境・体制を構築することができます。

企業に求められる情報セキュリティ対策の例

企業が実施するセキュリティ対策のうち、よく話題にあがるものをいくつかピックアップして説明します。

不正アクセス対策

不正アクセス対策のサムネ

不正アクセスとは、本来アクセス権限を持たない者が、何らかの手段を用いて第三者の情報にアクセスすることをいいます。なりすまし不正侵入といった形が一般的です。不正アクセスによって、個人情報や知的財産が奪われる、サーバやシステムが停止するなど、企業活動に影響するリスクが生じます。不正アクセスに対しては、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」によって、アクセス管理者にも次の管理策を行う義務が課されています(ただし、罰則はありません)。
・識別符号の適切な管理
・アクセス制御の強化
・その他不正アクセス行為から防御するために必要な措置
セキュリティ診断を通じてシステムに存在する弱点を洗い出し、発生箇所を特定することで、こうした不正侵入などへの対策を立てやすくする効果があります。

脆弱性対策

脆弱性とは、一つ以上の脅威によって付け込まれる可能性のある資産または管理策の弱点をいいます。脅威とは、「システム又は組織に損害を与える可能性がある、望ましくないインシデントの潜在的な原因」で、いわばシステムにおけるバグのようなものです。それらの脆弱性は、「危険度を下げる」「蔓延を防ぐ」「影響度を下げる」ことで、悪用されにくくすることができます。

脆弱性対策とは、これらの角度からシステムの欠陥をつぶしていく行為ともいえます。利用しているソフトウェアの既知の脆弱性をアップデートやパッチの適用で常に最新版に保ったりすることや、システム開発の場面でそもそも脆弱性を作りこまないように開発することなどが、その典型例です。

標的型攻撃対策

近年、「高度標的型攻撃(APT)」と呼ばれる、新しいタイプの攻撃が警戒されるようになりました。もともと、標的型攻撃とは、特定の企業や組織に狙いを定めてウイルスメールを送るなどの攻撃を仕掛けるものでしたが、高度標的型攻撃は、特定のターゲットに対して長期間の調査と準備を行い、ときには社内のネットワーク構成図や会社組織図、キーパーソンの休暇の取得状況まで調べ上げたうえで、サイバー攻撃を仕掛けてきます。

標的型攻撃対策のサムネ

従来、標的型攻撃の対策としてはセキュリティ意識を高める訓練が主でしたが、今では「侵入されること」を前提に、セキュリティ機器を使った多層防御システムを構築することの大切さが、広く認識されるようになってきました。高度標的型攻撃に特化したセキュリティ診断を受けることで、攻撃被害スコープを可視化したり、脅威リスクのシミュレーションを行うことができます。

運用を含むリスクアセスメント

システムが技術的に強固に守られていても、アクセス用のIDとパスワードを付箋紙に書いてモニターに貼り付けていたら、安全は保たれるべくもありません。

システムなど技術的側面からだけでなく、作業手順や業務フロー、作業環境、組織のルールなどの運用面も含めてリスク評価を行うことを「リスクアセスメント」と呼びます。リスクアセスメントを通じて、リスクの棚卸による現状把握ができ、優先順位をつけて改善策を講じていくことが可能になります。

セキュリティ診断の方法と種類

セキュリティ診断の分類はいくつかあります。
<診断対象による分類>
 ・Webアプリケーション脆弱性診断
 ・ネットワーク脆弱性診断
 ・ソースコード診断
 ・スマホアプリ脆弱性診断
 ・ペネトレーションテスト
 ・クラウドセキュリティ設定診断
 ・IoT診断

<ソースコードや設計書の開示の有無による分類>
 ・ホワイトボックステスト
 ・ブラックボックステスト

<診断実施時にプログラムを動かすかどうかによる分類>
 ・動的解析
 ・静的解析

ホワイトボックステスト/ブラックボックステスト、動的解析/静的解析については、SQAT.jpの以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
「脆弱性診断の必要性とは?ツールなど調査手法と進め方」

Webアプリケーションセキュリティ診断

Webアプリケーションに対して行う診断です。事業活動に欠かせないWebサイトはデータの宝庫です。ハッキング対象の約7割がWebサイトであるともいわれています。ひとたびデータ侵害が起こると、事業継続に影響を与えかねないインシデントを引き起こすリスクがあります。

ネットワークセキュリティ診断

サーバ、データベース、ネットワーク機器を対象として脆弱性診断やテスト、評価を行います。搭載されているOS、ファームウェア、ミドルウェアなどのソフトウェアについて、最新版か、脆弱性がないか、設定に不備がないかなどを確認します。ネットワークの脆弱性対策をすることで、サーバの堅牢化を図る、不正アクセスを防止するなどの効果を得られます。

ソースコードセキュリティ診断

WEBアプリケーションは、プログラムの集合体であり、脆弱性はプログラム処理におけるバグであるといえます。入力チェックやロジック制御に、バグ(考慮不足)があるから、想定しない不具合が発生すると考え、プログラムコード(ソースコード)を調べていくのがソースコード診断です。ソースコード診断はプログラムに対するセキュリティ観点でのチェックであるとともに、開発工程の早い段階で、脆弱性を検出することが可能になります。

セキュリティ診断で未然に事故を防ごう

セキュリティ診断で未然に事故を防ごうのサムネ

セキュリティ診断のひとつとして挙げた脆弱性診断には、さまざまな診断ツールが存在しており、無料で入手できるものもあります。しかしツールの選定や習熟には一定の経験や知見が求められ、そもそも技術面だけでは企業のセキュリティを確保することはままなりません。セキュリティの専門会社の支援を受けて、客観的な評価やアドバイスを受けるのも有効な手段です。

セキュリティ専門会社による脆弱性診断を実施することで、日々変化する脅威に対する自システムのセキュリティ状態を確認できるため、適時・適切の対策が可能です。予防的コントロールにより自組織のシステムの堅牢化を図ることが事業活動継続のためには必須です。

まとめ

  • Webアプリケーションセキュリティ診断、ネットワークセキュリティ診断、ソースコード診断、セキュリティに関するさまざまな診断やテストが存在する
  • 不正アクセスなどの攻撃を防ぐためシステムの脆弱性を見つけて対策することが必須
  • 技術的対策だけでセキュリティを担保することは難しい
  • 人間の脆弱性や業務運用までを含む包括的な視点で組織にひそむリスクを洗い出すことも重要
セキュリティ診断サービスのサムネ

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今、危険な脆弱性とその対策
―2021年上半期の診断データや攻撃事例より―

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キーボードと虫眼鏡

私たちの生活を支えるWebサイトは、攻撃者からみると、個人情報や機密情報などデータの宝庫であり、魅力的なターゲットになってしまっています。その理由は、Webサイトの多くに脆弱性が存在していることがあるためです。

本記事では、診断会社として多くの企業・組織への診断実績がある弊社の視点で、2021年上半期の診断結果、また攻撃事例などを振り返り、脆弱性対策に有効な手段を考えます。

Webサイトはなぜ狙われる?
―そこに脆弱性があるから

ハッカーがターゲットにしている対象のグラフデータ(The 2021 Hacker Reportより)

サイバー攻撃の対象は、Webサイトが最も高く、ハッカーのほとんどがWebサイトを攻撃しているといっても過言ではありません。

私たちの生活は公私共に、Webシステムに支えられており、Webサイトは個人情報や機密情報の宝庫です。そして、残念ながらWebサイトの多くには脆弱性が存在していることがあります。宝の山に脆弱性があるとなれば、悪意ある者に狙われてしまうのは当然といえます。

2021年上半期Webアプリケーション脆弱性診断結果

弊社では、様々な脆弱性診断メニューをご提供しております。その中で最もニーズの高いWebアプリケーション脆弱性診断について、2021年上半期(2021年1~6月)の結果をご紹介いたします。この半年間で14業種のべ610社、3,688システムに対して診断を行いました。

業種やシステムの大小にかかわらず、多くのWebアプリケーションになんらかの脆弱性が存在しています。検出された脆弱性をカテゴリ分けした内訳は円グラフのとおりです。

上半期診断結果脆弱カテゴリ別の円グラフ

このうち、例として、4割近くを占める「システム情報・ポリシーに関する問題」と、1割強程度ではあるものの、危険度の高い脆弱性が目立つ「入出力制御に関する問題」に分類される脆弱性の検出数をご覧ください(下記、棒グラフ参照)。

既知の脆弱性が検出されている、あるいはすでにベンダサポートが終了しているバージョンのOSやアプリケーションソフトの使用が数多く見られます。また、Webアプリケーションにおける脆弱性の代表格ともいえる「クロスサイトスクリプティング」や「SQLインジェクション」は、いまだ検出され続けているのが現状です。こうした脆弱性を放置しておくとどうなるか、実際に発生したインシデントの例を見てみましょう。

脆弱性を悪用した攻撃事例1:
既知の脆弱性が存在するWordPress

脆弱性のあるWordPressの悪用例

Webサイトの構築を便利にするCMS(Contents Management System)のうち、WordPressは世界でダントツのシェア40%以上を誇っています(CMS不使用は約35%、その他のCMSはすべて一桁パーセント以下のシェアです)*2。CMSの代名詞といえるWordPressですが、その分サイバー攻撃者の注目度も高く、脆弱性の発見とこれに対応したアップグレードを常に繰り返しています。

2021年に入ってからも10件以上の脆弱性が報告*2されているほか、国内でもWordPressを最新バージョンにアップデートしていなかったことで不正アクセスを受けたとの報告*3が上がっています。

脆弱性を悪用した攻撃事例2:SQLインジェクション

その対策が広く知れ渡っている今でも、「SQLインジェクション」は診断結果の中に比較的検出される項目です。

出典:IPA「安全なウェブサイトの作り方 – 1.1 SQLインジェクション
SQLインジェクション攻撃による国内情報流出事例

2021年も、実際にSQLインジェクション攻撃を受けたという報告*4が複数上がっています。

「SQLインジェクション」や「クロスサイトスクリプティング」のような、比較的知られている脆弱性に起因するインシデント事例は、企業のセキュリティ対策姿勢が疑われる結果につながり、インシデントによる直接的な被害だけでは済まない、信用の失墜やブランドイメージの低下といった大きな痛手を受ける恐れがあります。

最も危険な脆弱性ランキング

最も悪用された脆弱性ワースト30

脆弱性対策は世界的な問題です。2021年7月、アメリカ、イギリス、オーストラリア各国のセキュリティ機関が、共同で「Top Routinely Exploited Vulnerabilities(最も悪用されている脆弱性)」の30件を発表しました。

出典:https://us-cert.cisa.gov/ncas/alerts/aa21-209aより弊社作成

2021年にかけてサイバー攻撃グループが悪用していることが示唆されているものが多く含まれており、いまだ世界中の多くの企業や組織では、前述の脆弱性に対して未対応であることがうかがえます。

上記一覧からおわかりのとおり、ほとんどが、業務利用されているおなじみの製品群です。リモートワークの促進やクラウドシフトといったIT環境の変化が、既知の脆弱性に悪用する価値を与えているのです。各セキュリティ機関は、特にVPN製品に関する脆弱性に警鐘を鳴らしています。

思い当たる製品がある場合は、まずは侵害の痕跡(IoC:Indicator of Compromise)があるか確認し、必要に応じて対処する必要があります。そして可能な限り早急にパッチを適用する必要があります。いずれの製品にもセキュリティパッチがリリースされています。

最も危険なソフトウェアエラー 「CWE TOP25」2021年版

危険な脆弱性に関する情報として、米MITRE社より、「2021 CWE Top 25 Most Dangerous Software Weaknesses(最も危険なソフトウェアエラーTop25 2021年版)」も発表されています。CWE(Common Weakness Enumeration)は、ソフトウェアにおける共通脆弱性分類です。脆弱性項目ごとに一意のIDが決められ、そのタイプごとに体系化されています。

出典:https://cwe.mitre.org/top25/archive/2021/2021_cwe_top25.html より弊社翻訳

前年度と比較して順位を上げている項目については、特に脅威が高まっていると言えます。自組織のセキュリティの弱点と関係しているかといった分析や優先的に対策すべき項目の検討などに役立つ情報です。

脆弱性の対策に有効な手段とは?

多くのWebサイトに脆弱性が存在していることについて述べてまいりました。脆弱性の放置は、サイバー攻撃を誘発し、事業活動に甚大な影響を及ぼしかねません。たとえサイバー攻撃をすべて防ぎきることはできないにしても、セキュリティ対策をどのように講じてきたかという姿勢が問われる時代です。基本的なセキュリティ対策を怠っていたばかりに、大きく信頼を損ねる結果とならないようにしたいものです。

Webサイトにおける脆弱性の有無を確認するには、脆弱性診断が最も有効な手段です。自組織のセキュリティ状態を把握して、リスクを可視化することが、セキュリティ対策の第一歩となります。脆弱性診断を効果的に行うコツは、「システムライフサイクルに応じて」「定期的に」です。脆弱性の状況は、新規リリース時や改修時ばかりでなく、時宜に応じて変化することに注意が必要です。

変化という意味では、脆弱性情報のトレンドを把握するのも重要です。この点、様々なセキュリティ機関やセキュリティベンダなどが情報配信を行っていますので、最新状況のキャッチアップにご活用ください。

弊社では昨年8月に「テレワーク時代のセキュリティ情報の集め方」と題したウェビナーで、情報収集の仕方やソースリストのご紹介をしておりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。

リスク評価、セキュリティ対策検討の初動である、脆弱性診断および脆弱性情報の収集が、健全な事業活動継続の実現に寄与します。

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中小企業がサイバー攻撃の標的に!
Webサイトのセキュリティ対策の重要性
―個人情報保護法改正のポイント―

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PCのイラストとプロテクトマーク

2022年(令和4年)4月1日に改正個人情報保護法(令和2年改正法)の全面施行が予定されています。いま、攻撃者にとって格好のターゲットとなるWebサイトを狙ったサイバー攻撃は、大企業のみならず中小企業も狙われており、サイバーセキュリティに対する意識が低いなどセキュリティ課題が明らかになっています。本記事では、個人情報保護法改正の全面施行に向け、改正点を解説し、最新のサイバー攻撃の種類と手口、セキュリティ対策を改めて整理します。

サイバー攻撃や組織における管理またはシステムの設定不備・不足等が原因となり、個人情報を含む機密情報の漏洩事故および事件が相次いで発生しています。東京商工リサーチの調べ*5によれば、2020年に上場企業とその子会社で個人情報漏洩または紛失事故・事件を公表したのは88社、漏洩した個人情報は約2,515万人分とされています。個人情報の漏洩または紛失事故・事件は年々増加の傾向にあり、同社の調査結果を見ても2020年は社数では最多、事故・事件の件数は2013年に次いで過去2番目に多い水準となっています。

出典:東京商工リサーチ「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査(2020年)

改正個人情報保護法への対応

個人情報の保護においては、2022年(令和4年)4月1日に改正個人情報保護法(令和2年改正法)の全面施行が予定されています。また海外でも法の整備が進んでおり、日本企業と関連性の深いところでは、例えば8月にブラジル個人情報保護法(LGPD)、2022年6月頃にタイ個人情報保護法(PDPA)の施行があります。多くの組織にとって、自組織やサプライチェーン内の関係組織かを問わず、国内外における個人情報保護体制の整備・見直しが必要であり、改正個人情報保護法への対応は重要課題の一つといえるでしょう。

個人情報保護法改正のポイント

個人情報保護法の主な改正点は以下のとおりです。

また、これら以外ではデータの利活用が促進されることもポイントです。この観点からは「仮名加工情報」について事業者の義務が緩和されることと、情報の提供先で個人情報となることが想定される場合の確認が義務化されることが定められました。企業のWebサイトでは利用者の閲覧履歴を記録する仕組みとしてCookieを使用し、デジタルマーケティング等に活用しているところも多いでしょう。Cookieにより取得されるデータは他の情報と照合するなどして個人の特定につながり得るため、保護を強化する声が高まっていたこともあり、改正個人情報保護法では取り扱いに慎重を期するよう求めています。

中小企業を狙ったサイバー攻撃

Cookieのみならず、Webサイトでは個人情報や決済情報など、様々な機密扱いの重要情報を取り扱っていることがあります。それらが漏洩する事故・事件が発生した場合、組織は金銭的損失や信用失墜に陥るだけでなく、個人情報の所有者(本人)から利用停止・消去請求があった場合には「情報資産」も失う可能性があります。

サイバー攻撃においてWebサイトが格好のターゲットであることはご存知のことでしょう。また、攻撃者に狙われるのは大企業ばかりではありません。経済産業省からの報告資料*2によれば、全国の中小企業もサイバー攻撃を受けていることが明らかになっています。というのも、中小企業の多くは大企業に比べてサイバーセキュリティに対する意識が低く、被害者になると考えていないことから攻撃を受けていること自体に気付いていなかったり、セキュリティに対する知識や対策に必要な資源が不十分であるために原因の特定や対策の実施が困難だったりするためです。

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が2021年3月に公開した「小規模ウェブサイト運営者の脆弱性対策に関する調査報告書」では、小規模Webサイトの運営およびセキュリティ対策、さらには脆弱性対策の実態を調査したアンケート結果とそれに対する見解が述べられています。

IPAが調査の中で、サイバー攻撃の対象となり得る、脆弱性を作りこむ可能性があるWebサイトの機能・画面を選定し、それらが実装されているかを確認したところ、「ユーザによるフォームの入力(問合せ、掲示板等を含む)」が56.5%、「サイト内の検索と結果表示」が36.9%、「ユーザへのメール自動送信」が36.9%、「入力された情報の確認のための表示」が34.6%で上位を占めました。なお、これらはWebサイトの規模の大小にかかわらず多くのWebサイトに共通して実装されている機能・画面であり、当社の脆弱性診断でも検査の対象となっているものです。

Webサイトのセキュリティ対策において、脆弱性を可能な限り作りこまない設計となっているか、脆弱性を発見するための情報収集や検査は実施しているか、対応するための体制や仕組みはあるか、といった事柄はとても重要になります。

中小企業がより危険視されているのは、こうした事柄を実現するための「人員が足りない」「予算が確保できない」といった課題(下図参照)があり、さらにセキュリティ対策に関する知識不足や、意識の甘さがあることからサイバー攻撃のターゲットになりやすいことが理由に挙げられます。また、脆弱性に関する知識についても、情報漏洩につながる危険性のある「SQLインジェクション」や「OSコマンドインジェクション」等について具体的な内容を知らないという回答が約50%~60%に上りました。

出典:IPA「小規模ウェブサイト運営者の脆弱性対策に関する調査報告書

サイバー攻撃の種類と手口

サイバー攻撃は多種多様なものが存在しますが、最近では特に次のような攻撃が大きな問題となっています。

① 分散型サービス運用妨害(DDoS)攻撃
  攻撃対象に対して複数のシステムから大量の通信を行い、
  意図的に過剰な負荷を与える攻撃
② ランサムウェア攻撃
  データを暗号化したり機能を制限したりすることで使用不能な状態にした後、
  元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求するマルウェアによる攻撃
③ ビジネスメール詐欺
  従業員や取引先などになりすまして業務用とみられる不正なメールを送ることで
  受信者を欺き、金銭や情報を奪取する攻撃
④ Webサービスからの個人情報窃取
  Webサービス(自社開発のアプリケーションや一般的に使用されているフレームワーク、
  ミドルウェア等)の脆弱性を突いて、個人情報を窃取する攻撃
  ※前段で触れた、情報漏洩につながる危険性がある
  「SQLインジェクション」や「OSコマンドインジェクション」もこれに分類されます。

それぞれの攻撃の目的および手口や対策の例を以下にまとめました。金銭的利益は攻撃目的の大半を占めますが、それ以外を目的とした攻撃も多数確認されています。その他代表的な攻撃や目的については、「サイバー攻撃を行う5つの主体と5つの目的」で参照いただけます。

Webサイトの脆弱性対策

改正個人情報保護法の全面施行に向けて、組織は個人情報をさらに厳格に管理する必要があります。前述のとおり、6か月以内に消去する短期保存データも「保有個人データ」に含まれるようになるため、例えば、期間限定のキャンペーン応募サイトなども今後は適用範囲内となります。公開期間は短くとも、事前にしっかりとセキュリティ対策の有効性を確認しておく必要があるでしょう。

情報の安全な管理を怠り流出させた場合、それが個人情報であれば罰則が適用される可能性があり、取引先情報なら損害賠償を要求されることが想定されます。また、ひとたびセキュリティ事故が起これば、企業の信用問題にも陥りかねません。

2021年3月にIPAが公開した「企業ウェブサイトのための脆弱性対応ガイド」では、脆弱性対策として最低限実施しておくべき項目として以下7つのポイントを挙げています。

(1) 実施しているセキュリティ対策を把握する
(2) 脆弱性への対処をより詳しく検討する
(3) Webサイトの構築時にセキュリティに配慮する
(4) セキュリティ対策を外部に任せる
(5) セキュリティの担当者と作業を決めておく
(6) 脆弱性の報告やトラブルには適切に対処する
(7) 難しければ専門家に支援を頼む

脆弱性対策を行うためには、まずWebサイトに脆弱性が存在しているかを確認することから始めましょう。脆弱性診断を行い、Webサイトのセキュリティ状態をきちんと把握することで内包するリスクが可視化され、適切な対応を講じることが可能となります。また、Webサイトの安全性を維持するには、定期的な診断の実施が推奨されます。定期的な診断は、新たな脆弱性の発見のみならず、最新の攻撃手法に対する耐性の確認やリスク管理にも有効です。

セキュリティ対策を外部の専門業者に依頼する場合に、「技術の習得や情報の入手・選別が難しい」といった課題もあります。弊社では昨年8月に「テレワーク時代のセキュリティ情報の集め方」と題したウェビナーで、情報収集の仕方やソースリストのご紹介をしておりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。

Webサイトは、いまや企業がビジネスを行う上で不可欠なツールの一つとなっている一方で、安全に運用されていない場合、大きな弱点となり得ます。脆弱性対策を行い、セキュリティ事故を未然に防ぐ、そして万が一攻撃を受けた際にも耐え得る堅牢なWebサイトを目指しましょう。

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高まるAPT攻撃の脅威

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SQAT® 情報セキュリティ瓦版 2020年1月号

あらためて、「侵入前提」の備えを

「攻撃のターゲットに定めた組織に対し、高度かつ複雑な手法を用いて長期間にわたり執拗な攻撃を行う」―「APT」と呼ばれるタイプの攻撃の矛先が、今、日本にも向けられるようになっています。従来、APTには侵入を前提とした多層防御が有効とされてきましたが、国際的に注目度の高いイベントであるオリンピック・パラリンピックが目前に迫り、日本を対象とした攻撃がこれまでになく増えると予想される中、あらためて自組織の状況を点検し、セキュリティの強化を図る必要があります。


APT28とは

「APT」とは「Advanced Persistent Threat」(直訳すると「高度で持続的な脅威」)の略語で、日本では主に「高度標的型攻撃」という呼称が使われています。「標的型攻撃」は、文字どおり、特定の組織をターゲットにした攻撃を指します(図1参照)。この中でも高度な手法を用いた長期にわたるものが「APT」とみなされます。狙いを定めた相手に適合した方法・手段を用いて侵入・潜伏を図り、攻撃に必要な情報を入手するための予備調査も含め、執拗に活動を継続するのが特徴です。なお、セキュリティ機関や調査会社では、こうした攻撃が確認されると、攻撃の実行主体(APTグループ)を特定し、活動の分析に取り組みます。グループを追跡する際は、組織が自ら名乗る名称に加え、多くの場合、「APT+数字の連番」(例:「APT 1」「APT 2」)がグループ名として使用されています。

図1:標的型攻撃の主な手口

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R01_kami_cyber_jousei.pdf

広範かつ大規模な攻撃活動

これまでに特定されたAPTグループの数は、上記連番方式により同定されているグループだけでも約40に上ります。国家レベルの組織による支持や支援を受けているとみられるものも多く存在し、その攻撃は高度であるだけでなく、広範かつ大規模です。直近では2019年10月に、ロシアの支援を受けているとみられる「APT28」(自称「Fancy Bear」)による脅迫メールが世界的な注目を集めました。

脅迫の手口は、「攻撃対象の組織のWebサイト、外部から接続可能なサーバ・インフラに対するDDoS攻撃を予告し、それを回避するための費用として仮想通貨を期日内に支払うよう要求する」というもので、危機感を煽るため実際にDDoS攻撃を行ったケースもありました。ペイメント、エンターテインメント、小売といった業種の複数組織を対象に同グループによる脅迫メールが送付されていることを、ドイツのセキュリティベンダが特定し、その後、JPCERT/CCにより日本国内においても複数の組織が同様のメールを受け取っていることが確認され、注意喚起が出されています。なお、同グループは、2016年の米大統領選挙のほか、政治団体やスポーツ団体などをターゲットにした攻撃への関与も疑われています。

 

地域・文化を超えるサイバー攻撃

従来、APT攻撃は主に欧米の組織を標的にしており、日本語という言語の特殊性などがハードルとなり日本企業は狙われにくいとの認識がありました。しかし、近年は、巧みな日本語を使用した、明らかに日本企業を標的とする攻撃が増加傾向にあります。

たとえば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に報告されたサイバー攻撃に関する情報(不審メール、不正通信、インシデント等)の2019年の集計結果では、9月末時点で寄せられた攻撃情報、計897件のうち235件が標的型とみなされており、直近の7月~9月でその比率が顕著に上昇しています(表1参照)。当該データ113件のほぼ9割がプラント関連事業に対する攻撃で、実在すると思われる開発プロジェクト名や事業者名を詐称し、プラントに使用する資機材の提案や見積もり等を依頼する内容の偽メールが送信されています。IPAは、「現時点では、攻撃者の目的が知財の窃取にある(産業スパイ活動)のか、あるいはビジネスメール詐欺(BEC)のような詐欺行為の準備段階のものかは不明」としつつも、特定の組織へ執拗に攻撃が繰り返されていることから、これらをAPT攻撃の可能性がある標的型メールの一種に位置づけたと説明しています。

出典:サイバー情報共有イニシアティブ(J-CSIP)運用状況[2019年1月~3月]、[2019年4月~6月]、[2019年7月~9月]より当社作成

同様の傾向は、他国のセキュリティ機関の分析からも伺えます。タイのCSIRT組織ThaiCERTによるレポート『THREAT GROUP CARDS: A THREAT ACTOR ENCYCLOPEDIA』(2019年6月公開)を見ると、日本をターゲットに含めた攻撃は、もはや少ないとは言えません。たとえば、「Blackgear」と呼ばれる攻撃グループは日本を明白なターゲットにしており、C&Cの拠点を日本に置き、日本語の文書を使って攻撃を仕掛けます。また、2018年に確認された東南アジアの自動車関連企業をターゲットとした攻撃では、タイミングを同じくして特定の日本企業への攻撃が複数回観測されています。さらに、ターゲットとされる業種や狙われる情報の種類が多様であることも目を引きます。かつては、銀行のデータや個人情報がまず標的になりましたが、ここ数年、ターゲットの業界が航空宇宙・自動車・医療・製薬へとシフトし、ブラックマーケットでの高額取引が期待できる、各業界に固有の技術情報や特許出願前情報の奪取へと、攻撃目標が変化しています(表2参照)。

出典:『THREAT GROUP CARDS: A THREAT ACTOR ENCYCLOPEDIA』より当社作成

個人情報が流出した場合の損害賠償や事態収拾のための費用などを含めた事後対策費は平均6億3,760万円 1) と言われていますが、技術情報が流出した場合の想定被害額はその数十倍、数百倍に及ぶ可能性があります。技術情報のみならず、いわゆる「営業秘密」とされる知的財産の流出は、事業活動の根幹を揺るがす事態に発展しかねない規模の損失を招く恐れがあります。近年各社により提供されるようになっているサイバーセキュリティ保険等で損害補償対策を検討するのも一案ですが、国家の関与が疑われるAPTグループの攻撃被害については保険金が支払われない可能性もあります。より甚大な被害をもたらす攻撃を行うグループが、今、日本企業を新たな標的に定めつつあるという事実は、国内のあらゆる事業者が共有すべき攻撃の傾向となっています。

 

より強靭な「多層防御」でAPT攻撃の影響を最小限に抑える

APT攻撃への対策としては、従来、侵入を前提とした多層防御が有効とされてきましたが、足元でAPTグループによる日本への攻撃が増加傾向にある中、あらためて、多層防御の状況を点検し、攻撃耐性を高めていくことが求められています。防御策としてまず思い浮かぶのは、出入口を守るファイアウォールやUTM(統合脅威管理)、既知の脆弱性への対応などですが、それだけでは十分とは言えません。

APT攻撃での代表的な手口は、ターゲットにした組織への侵入を試みる目的で使用される標的型メールです。この入口対策を考えると、疑似的な攻撃メールを用いて開封率などを可視化して「ヒト」に対する教育訓練を施す「標的型メール訓練」は検討に値する対策の1つです。留意したいのは、開封率の低減を最重要視するのではなく、「開封されても仕方なし」というスタンスで取り組むことです。訓練の目標を「開封された後の対応策の見直しと初動訓練」に設定し、定められた対応フロー通りに報告が行われるか、報告を受けて対策に着手するまでにどれくらいの時間を要するかを可視化して、インシデント時の対応フローおよびポリシーやガイドラインの有効性を評価することをお勧めします。また、従業員のセキュリティ意識を向上させるために、教育および訓練と演習を実施するのが望ましいでしょう。

また、「多層防御」対策を立てる前提として、情報資産の棚卸しも重要です。日本企業は、他国に比較して、知的財産の重要性に対する認識が低く、情報の所在や管理が徹底されていないという指摘があります 3) 。組織内に存在する情報に関し、機密とするもの、公知であってよいものを分類し、それらがどこに格納されて、どのように利用されているかを可視化した上で、防御の対応をする機器・人・組織といったリソースを適切に振り分けて防御する仕組みを構築することが求められます。こうした仕組みは、侵入の早期発見にも繋がり、事業活動の継続を左右する重要情報へのアクセスを遮断することで、万一侵入を許しても被害を最小限に抑えられます。さらに感染経路・奪取可能な情報を洗い出し、感染範囲・重要情報へのアクセス状況・流出経路などを可視化できれば、システム内部へ拡散するリスクを把握することもできます。この「標的型攻撃のリスク可視化」により、「出口」対策へ効果的にリソースを有効活用することで、実効性をさらに効果的にリスク評価することが可能になります。

2020年、オリンピック・パラリンピックがいよいよ目前に迫り、日本への攻撃がさらに激しさを増していくと予想されます。同イベントには膨大な数の事業者が関与するため、セキュリティ的に脆弱な組織がAPT攻撃を受け、サプライチェーンやIoTを通じて被害が歯止めなく広がるリスクが大いに懸念されています。既存のセキュリティ体制をあらためて点検し、強靭化を図ることで被害を最小限に食い止めましょう。


注:
1)JNSA:2018年情報セキュリティインシデントに関する調査結果より
2) 同一のグループに対し、セキュリティ機関による命名、攻撃グループによる自称などを列挙
3) コンサルティング会社PwCが2017年に実施した調査より
(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2018/assets/pdf/economic-crime-survey.pdf)日本における「組織がサイバー攻撃の狙いとなった不正行為」の種類を問う質問で「知的財産の盗難」と回答した比率は25%で、世界平均の12%と比べて顕著に多い数字となった。

参考情報: *1 https://www.thaicert.or.th/downloads/files/A_Threat_Actor_Encyclopedia.pdf

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