Webアプリ脆弱性の代表格「クロスサイトスクリプティング」の攻撃事例と対策

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クロスサイトスクリプティング(XSS:Cross Site Scripting)とは、サイバー攻撃に悪用される脆弱性のひとつです。

この脆弱性を悪用した攻撃の多くが、Webサイトを横断(Cross Site)して行われたためこの名称がつけられました。現在では攻撃類型が増えたことから、必ずしもサイト横断的な攻撃でなくても、クロスサイトスクリプティングと呼ばれることがあります。

今回は、クロスサイトスクリプティングを悪用したサイバー攻撃の事例やその対策について説明します。

クロスサイトスクリプティングの種類

クロスサイトスクリプティングとは、動的にHTMLを生成するWebアプリケーションで、ユーザの操作を介して不正なスクリプトを実行させる(できる)事象を指します。

クロスサイトスクリプティングの脆弱性には、大きく分けて下記の3種類があります。

1.反射型
攻撃者がリクエストに混入させたスクリプトなどが、Webサーバからのレスポンスに含まれる形で実行されるもの

2.蓄積型
攻撃者がWebサーバ上に何らかの方法でスクリプトを格納したうえで、被害者がアクセスすることでスクリプトが実行されるもの

3.DOMベース
Webサーバ側がスクリプトで動的にHTMLを生成する場合にスクリプトタグを生成してしまうことに起因し、ブラウザ側での処理の際に不正なスクリプトが実行されるもの

クロスサイトスクリプティング脆弱性が悪用された事件による騒動

クロスサイトスクリプティングの脆弱性が悪用された被害が多数報告されています。なかでも有名なのは、過去に二つの大手ITサービスで発生した事件です。

2010年、YouTubeとTwitterで、クロスサイトスクリプティングの脆弱性を悪用した攻撃が相次いで発生、虚偽情報を知らせるポップアップが表示されたり、ユーザが意図しない投稿が繰り返されたりするなど、世界中で騒動となりました。

Twitterへの攻撃は、ユーザが意図しない投稿を行うもので、見つけた脆弱性がどう動くのか実験したいというちょっとした出来心が攻撃意図に含まれていたと言われています。YouTubeについてはフェイクニュースをポップアップで表示するなどのいたずらに近い内容でした。いずれも被害は軽微で、すぐに気づくことができた点は幸運だったといえるでしょう。

クロスサイトスクリプティングを悪用した攻撃の本当の危険性と恐ろしさ

クロスサイトスクリプティング攻撃の危険性

一方、上記のようないたずら目的ではない攻撃では、正規サイトと全く見分けがつかないフィッシングサイト等へ誘導されたり、ログイン状態の維持のために利用しているCookieなどのセッション情報を盗まれたり、入力した情報(例えばパスワードやクレジットカードの番号やセキュリティコード)が盗まれるといったことが行われます。この結果、アカウントへの不正アクセス、クレジットカード情報・個人情報の漏えい、あるいはクレジットカードの不正利用などが行われることがあります。またスクリプトの実行による任意コードの実行やマルウェア感染といった問題も存在します。このようにクロスサイトスクリプティング脆弱性は悪用された場合に甚大な被害が発生する可能性が高いという点に危険性があるといえます。

ユーザに被害が出てから発覚することのリスク

Webアプリケーションを利用するユーザの側では、身に覚えのないクレジットカードへの課金など、具体的な被害が発生するまで攻撃を受けたことにすら気づかないこともあるでしょう。一方のWebアプリケーション開発側・運用側でも、実際にユーザやクレジットカード会社から被害発生を知らされるまで気づかないというケースもあります。

ユーザ側の視点でみると、「自分が被害に遭ったのに、サイトの運営者が気付いていないなんて」と憤る可能性もありますし、「こんな不完全なサイトを運営するなんて」と不信感を抱く可能性もあるでしょう。クロスサイトスクリプティング脆弱性のあるサイトを運用することはともすればユーザの信頼を損なう結果に結びつく可能性があるのです。

クロスサイトスクリプティングの発見報告状況

SQAT.jp を運営する株式会社ブロードバンドセキュリティが行ったWebアプリケーション脆弱性診断の2020年上半期の統計によれば、クロスサイトスクリプティングは、検出される全脆弱性の約5%を占めています。

冒頭で「Webアプリ脆弱性の代表格」と述べている割にあまり比率が多くない、と感じるかもしれませんが、むしろ古くから警鐘が鳴らされ、対策も公表されているにもかかわらず、新たに作られたWebサービスにも(ステージング環境の診断を含むとはいえ)一定割合存在する点に注目すべきでしょう。

クロスサイトスクリプティングは入出力制御に関する問題です。したがって金融・保険業界、情報通信産業やECサイト関連等の、「オンラインでの商取引を厳格に行う必要がある業界」「個人情報や決済情報を厳密に扱う必要がある業界」では、クロスサイトスクリプティングを含む入出力制御に関する問題への対策が厳格に行われています。これらの業界では開発段階でのソースコード診断やステージング環境での脆弱性診断などを行って必要な修正を施したうえで本番環境へ移行しているケースが多いのです。

このように、シフトレフトの考えに基づいて開発中にソースコード診断を行う、開発の最終段階やWebサイトの改修などの都度こまめに脆弱性診断を行うことで、クロスサイトスクリプティングの脆弱性をより早い段階で解消する効果は見逃せないものではないでしょうか。

クロスサイトスクリプティングの脆弱性を発見し対処する必要性

以前の記事で紹介した裁判事例では、WebアプリケーションにSQLインジェクション脆弱性を発生させた開発会社に対して、実際に損害を被った企業向けに約2,200万円の損害賠償支払いを命じる判決が2014年に下されています。

また、2020年6月に公布された改正個人情報保護法においては、サイバー攻撃によって個人情報漏えいが発生した場合でも、被害者個人(本人)と個人情報保護委員会への通知が義務付けられました。違反には最高で1億円の罰金が科され、悪質な場合は社名も公表されます。2022年の施行に先立ち、具体的な運用方法について年内に政令や規則がまとめられる見通しですが、今後、Webサイトを運営する企業の義務と万が一の場合の責任は重くなることが予想されます。

先にみたように、クロスサイトスクリプティングの脆弱性に気づかず放置することで、フィッシングに悪用されるケースや、不正アクセス、情報漏えいなどさまざまな被害が生じる可能性があります。

本稿執筆時点の2020年、クレジットカード情報をWebサイト上で盗むためにクロスサイトスクリプティングの脆弱性を悪用する攻撃が問題となっており、現在もクロスサイトスクリプティングが脆弱性の代表格であることに変わりはありません。

クロスサイトスクリプティングの対策方法

クロスサイトスクリプティングの脆弱性を生み出さないための対策としては、以下の方法が挙げられます。

1.JavaScript実行のために埋め込まれる特殊文字を変換して処理(エスケープ処理)することや入力文字種を制限して特殊文字を許容しないといった対策を行う

2.正規のスクリプトが悪用されないようにするため、処理中に文字列が意図しないスクリプトとして解釈されないようにホワイトリストなどによる検証を行う

3.DOMベースXSS対策として、DOM操作用のメソッドやプロパティを使用する

4.Webアプリケーション開発にあたって信頼性の高いライブラリを利用する

また、Webアプリケーションへの入力値のチェックなどを行うWAF(Webアプリケーションファイアウォール)を用いた防御なども考えられるでしょう。ただしWAFを使った防御では、そもそもの脆弱性を解消するという本質的問題解決をはかることができない点に注意が必要です。

クロスサイトスクリプティングを脆弱性診断で発見し、適切に対応して利用者の安全を守り、組織の顔であるWebサイトやWebアプリケーションの健全性を維持することは、WebサイトやWebアプリケーションを運営する企業や組織にとって必ず行わなければならない義務といえるかもしれません。

まとめ

・クロスサイトスクリプティングはサイバー攻撃に悪用されるWebアプリケーション等の脆弱性のひとつです。
・蓄積型や反射型、DOMベースなどの種類があります。
・Webサイト等に悪意のあるスクリプトを混入させることで攻撃を行い、ユーザの情報を盗み出すなどの被害が発生します。
・「特殊文字の変換処理」「入力文字種の制限」などの対策実施によって防ぐことができます。
・クロスサイトスクリプティングに限らずWebアプリケーションの脆弱性を積極的に発見し対処することは運営者の社会的義務です。


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