脆弱性診断の基礎と実践!
手動診断とツール診断の違いを徹底解説 
第1回:手動診断のメリットとは?

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脆弱性診断とは、システムやアプリケーション、ネットワークなどに潜むセキュリティ上の弱点(脆弱性)を特定する検査手法です。本記事は「脆弱性診断の基礎と実践」をテーマに全3回のシリーズのうちの第1回として、脆弱性診断の手法の一つである「手動診断」のメリットや適用すべきケースを解説します。

第2回「ツール診断のメリットとは?」はこちら

脆弱性診断とは?

脆弱性診断とは、システムやアプリケーション、ネットワークなどに潜むセキュリティ上の弱点(脆弱性)を特定する検査手法です。サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えるために、企業が実施するべきセキュリティ対策の一つとされています。

セキュリティ対策としての脆弱性診断の重要性

近年、サイバー攻撃は巧妙化・多様化しており、企業のシステムやWebサービスが標的になるケースが増えています。攻撃者は、脆弱性を悪用して不正アクセスを試みたり、情報を窃取したりするため、事前に脆弱性を発見し、適切な対策を行うことが重要です。特に、以下の理由から脆弱性診断の実施が推奨されています。

  • データ漏えいの防止:個人情報や機密データの流出を防ぐ
  • サービスの継続性を確保:システム停止や改ざんを未然に防ぐ
  • 法令・ガイドラインの遵守:情報セキュリティに関する規制対応(ISMS、NIST、PCI DSS など)
  • 企業の信頼性向上:セキュリティ対策の強化によるブランド価値の維持

脆弱性診断の一般的な手法

脆弱性診断には、主に以下の2つの手法があります。

1.ツール診断(自動診断)

  • 脆弱性診断ツールを使用し、自動でシステムのセキュリティをチェック
  • 短時間で広範囲を診断でき、コストを抑えやすい
  • ただし、誤検出や一部検査できない項目もある

2.手動診断(セキュリティエンジニアによる診断)

  • 専門家がシステムの動作やコードを解析し、精密な診断を行う
  • 網羅的な範囲での診断ができる
  • 高精度な診断が可能だが、コストと時間がかかる

このように、脆弱性診断は企業のセキュリティ対策の基盤となる重要な取り組みであり、ツール診断と手動診断を適切に組み合わせることで、より効果的な対策が実現できます。

手動診断とは?

手動診断とはセキュリティエンジニアがツールを活用し、システムやアプリケーションの脆弱性を調査・分析する診断手法です。一般的な診断ツールでは検出しにくい複雑な脆弱性や攻撃手法にも対応できるため、より高精度な診断が可能になります。

手動診断の一般的な実施プロセス

手動診断の一般的な実施プロセスは以下のとおりです。

1.事前調査・ヒアリング

  • 対象システムの構成や使用技術、セキュリティ要件を確認
  • 想定される脅威シナリオの洗い出し

2.情報収集

  • システムの公開情報や利用可能なエントリポイントの特定
  • OSやミドルウェア、アプリケーションのバージョン情報を分析

3.手動テスト・脆弱性の特定

  • システム固有の処理に基づく攻撃シナリオの検証
  • ツールでは検出が難しい脆弱性(例:権限昇格、認証回避、APIの悪用)の発見

4.診断結果の分析とレポート作成

  • 発見された脆弱性のリスク評価(重大度の分類)
  • 具体的な対策案を含めたレポート作成

5.フィードバックと改善提案

  • お客様に診断結果を共有し、改善策を提案。必要に応じて再診断を実施

手動診断のメリット

手動診断を実施するメリットは、特に以下の3つの点があります。

1.高精度な診断が可能(ツール診断では見落としがちな脆弱性も発見できる)

自動ツールでは検出が難しい複雑な脆弱性やシステム固有のセキュリティリスクを特定できるのが、手動診断の大きな強みです。ツール診断はパターンマッチングやシグネチャベースでの診断が主ですが、手動診断では環境に応じた柔軟なテストが可能です。例えば、認証バイパスや権限昇格などの一部の脆弱性は、手動診断でないと見つけにくいケースが多くあります。

2.システム固有の処理を考慮した診断が可能(攻撃者視点でのリスク分析)

攻撃者がどのような手法でシステムを侵害できるかを想定し、システム固有の脆弱性を考慮した診断が可能です。例えば、Eコマースサイトでは、カート機能を悪用した決済の不正操作、ログイン処理の回避、注文金額の改ざんなどのシステム固有の処理に存在する脆弱性が狙われます。このような攻撃パターンは、ツールでは自動検出が困難です。企業のシステムに対する実際の攻撃手法を再現し、攻撃者視点でリスクを洗い出すことで、より実践的な対策が可能になります。

3.診断結果の詳細なレポートと具体的な改善策の提示

手動診断では、単に脆弱性の有無を報告するだけでなく、診断結果の詳細な分析と、具体的な改善策の提案が可能です。

  • 脆弱性のリスク評価
    発見された脆弱性に対して、攻撃が実際に実行された場合の影響度を評価し、対応の優先度を明確にします。これにより、企業がどの対策を優先すべきか判断しやすくなります。
  • システムに適した改善策の提案
    対象システムの構造や運用に最適な対応策を提示できます。
  • 組織のセキュリティレベル向上に貢献
    診断後のレポートを活用することで、企業の開発・運用チームがセキュリティ意識を高め、今後のリスク管理をすることに役立ちます。

セキュリティエンジニアによる分析の重要性

手動診断が有効な理由は、セキュリティエンジニアの専門知識と攻撃者視点の分析が加わることで、より実践的な脆弱性の発見が可能になるためです。コストや時間がかかるものの、企業の重要なシステムや高度なセキュリティ対策が求められる環境では、不可欠な診断手法といえます。

手動診断が適しているケース

手動診断は特に以下のケースで実施が推奨されます。

1.Webアプリケーションやシステムの重要な部分を診断したい場合

企業の基幹システムやWebアプリケーションは、ビジネスに直結する重要な資産であり、セキュリティの脆弱性が重大な被害につながる可能性があります。手動診断を行うことで、攻撃者の視点から脆弱性を洗い出し、リスクを最小限に抑えることができます。ミッションクリティカルなシステム(決済システム、顧客管理システム(CRM)、医療情報システム)など、情報漏えいや不正アクセスの影響が大きいシステムにも最適です。

2.ツール診断では対応できない複雑な脆弱性を特定したい場合

ツール診断は一般的な脆弱性をスキャンするのに適していますが、攻撃者が巧妙に悪用するような複雑な脆弱性の検出には限界があります。手動診断では、ツールでは見つけられない高度な攻撃パターンを想定して診断を行うことができます。

  • ツール診断では発見しにくい脆弱性の例
    ・システム固有の処理の不備(例:注文金額の改ざん、認証バイパス、不正送金)
    ・認証・認可の欠陥(例:権限昇格、APIの不正利用、セッション管理の不備)
    ・ゼロデイ攻撃のリスク評価(ツールでは未知の脆弱性を検出できない)
  • 手動診断が有効なケース
    ・ツール診断の結果に基づき、より詳細な調査が必要な場合
    ・重大な脆弱性が懸念されるシステムで、ツールの誤検出や見落としが心配な場合

3.企業独自のシステムに合わせたセキュリティ診断が必要な場合

標準化された診断ツールは、広く一般的な脆弱性を検出するのに適していますが、企業が開発した独自システムの仕様に依存する一部の脆弱性の検出はできません。手動診断では、個々の企業システムに合わせた診断も可能です。

  • 特定の業界や業務フローに依存するシステム
    ・金融機関のオンラインバンキングシステム
    ・ECサイトのカート・決済フロー
    ・医療機関の電子カルテシステム
  • 企業のポリシーに基づいたカスタム診断
    ・企業独自のセキュリティ要件に基づいた診断が可能
    ・企業の内部プロセスを考慮したセキュリティ評価ができる

手動診断を実施する際の注意点

手動診断を実施する際にはいくつかの注意点があります。特に、コストや診断期間の確保について事前に理解しておくことが重要です。

1.コストが高くなる傾向がある

手動診断は専門のセキュリティエンジニアが個別に対応するため、ツール診断と比較してコストが高くなりやすいという特徴があります。なぜコストが高くなるのでしょうか。

  • エンジニアの専門知識と経験が必要
    ・セキュリティの専門家がシステムの構造や処理を分析し、最適な攻撃シナリオを考慮するため、人件費がかかる。
  • 診断範囲に応じた工数が発生
    ・大規模なシステムや複数のアプリケーションを対象にする場合、診断工数が増え、それに伴いコストも上昇。
  • カスタム診断が必要な場合は追加費用が発生
    ・企業独自のシステムや特殊な環境(IoT、クラウド環境、APIなど)の診断には、標準的な診断手法ではカバーできないケースがあり、追加費用が必要になることも。

2.診断に時間がかかる(スケジュールの確保が必要)

手動診断は、対象システムの規模や複雑さに応じて診断期間が長くなる傾向があります。企業の規模によっては数週間~数か月程度かかる場合もあるため、診断を実施する際は、事前に十分なスケジュールを確保することが重要です。

まとめ

手動診断はセキュリティエンジニアがツールを活用し、システムやアプリケーションの脆弱性を調査・分析する診断手法です。診断結果はレポートとして具体的な改善策を提示し提供されるため、企業のセキュリティレベル向上に貢献します。ただし、コストが高く、診断には時間がかかるため、ツール診断と組み合わせることで、効率的かつ精度の高いセキュリティ対策が可能になります。企業のシステムやWebアプリの重要な部分を守るためには、ツール診断と手動診断を上手く組み合わせて実施することが有効です。

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―第2回「ツール診断のメリットとは?」はこちら―
―第3回「手動診断とツール診断、どちらを選ぶべきか?最適な診断方法の選び方」はこちら―


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APIとは何か(1)~基本概念とセキュリティの重要性~

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APIは、システム間のデータや機能のやり取りを円滑にするために欠かせない技術です。しかし、その利便性の反面、APIのセキュリティリスクも増大しています。本シリーズでは数回にわけて、APIの本質的な役割から、セキュリティリスクとその対策までを解説していきます。シリーズ第1回目の今回は、APIの基本的な定義から、その仕組みや連携方法、そしてセキュリティ上の課題について学びます。

APIとは

API(Application Programming Interface:アプリケーション・プログラミング・インターフェース)とは、ソフトウェアの機能を他のプログラムでも利用できるようにするための仕組みです。APIは、アプリケーションやサービスが外部のプログラムと情報や機能を共有する際の「インターフェース」として働き、異なるプログラム同士の連携を可能にします。例えば、地図情報を提供するアプリがAPIを利用して他のアプリに地図データを提供することで、ユーザは別のアプリ内でもその機能を活用できるようになります。

APIの仕組み -API連携とは-

ソフトウェアやアプリ、プログラム同士を、APIを介して機能連携させるのが「API連携」です。あるソフトウェアに他のソフトウェアの機能を埋め込むイメージです。API連携によってソフトウェア同士が相互にデータと機能を共有できるようになります。

【APIの活用例】

社内業務システム : チャットAPIを活用してコミュニケーション
会員サービスサイト : SNSアカウント認証APIでログイン
ネットショップ : クレジットカード・認証APIで決済
飲食店サイト : 地図情報APIで店舗位置情報表示 × 予約受付APIで予約対応

APIのセキュリティ

APIは異なるソフトウェア間の通信を可能にしますが、同時に攻撃者にとっての格好の標的にもなり得ます。そのため、APIを利用する企業やアプリケーション開発者にとってAPIのセキュリティ対策は重要な課題です。セキュリティリスクは他のプログラムやサービスと機能やデータを共有しているAPI特有の仕組みから生じます。APIが不適切に設計・管理されていると、未認証のアクセス、データ漏洩、機密情報の不正取得といったリスクが高まります。以下は、APIセキュリティに関する主なリスクの例です。

  • データ漏洩: APIを通じて個人情報や機密情報が漏洩するリスク
  • 不十分な認証:認証要素が不十分なことによる不正アクセスのリスク
  • サイバー攻撃:標的型攻撃、インジェクション攻撃やDoS攻撃などのサイバー攻撃を受けてしまうリスク
  • APIキーの窃取: APIキーが盗まれることによる不正利用のリスク

APIのセキュリティはなぜ重要なのか

スマートフォンやIoT端末の普及に伴い、様々なAPIが利用されるようになりました。SNS事業者が提供するAPIサービスやスマートフォン向けのAPIサービスがあるほか、複数のSaaSのAPIを連携させるサービスも登場しており、私たちを取り巻くあらゆるサービスで幅広く提供されています。このため、APIをターゲットにした攻撃も増加しています。
(※APIを悪用した攻撃についてはシリーズ第2回目で解説します。)

APIセキュリティが重要視される理由は、現代社会においてAPIがデータや機能の共有に不可欠な役割を果たしているためです。APIを通じてやり取りされるデータや機能は、悪意のある攻撃者に狙われる可能性があり、適切なセキュリティ対策がなければ、情報漏洩やシステム侵入のリスクが増大します。特に、認証や認可の不備、暗号化の欠如が原因で、機密データが外部に漏れるケースが多く見られます。また、APIは外部に公開されることが多いため、DDoS攻撃やボットによる過負荷のリスクも存在します。したがって、APIの設計段階からセキュリティを考慮し、定期的な監視や脅威の検知を行うことが、システム全体の安全性を保つために不可欠です。

また、企業やアプリケーション開発者にとっては、信頼性と顧客データ保護に直結する重要な要素でもあります。適切なセキュリティ対策を講じることで、データの改ざんや不正アクセスを防ぎ、システムの安全性を確保することができます。

まとめ

(Application Programming Interface:アプリケーション・プログラミング・インターフェース)とは、ソフトウェア間で機能や情報を共有するための仕組みであり、異なるプログラム同士を連携させます。APIは、地図情報の提供やSNSアカウントの認証など、さまざまな用途で活用されており、現代のデジタルサービスには欠かせない存在です。しかし、APIはその便利さの反面、攻撃の標的にもなりやすく、セキュリティの観点から注意が必要です。APIの不適切な設計や管理は、データ漏洩、不正アクセス、サイバー攻撃のリスクを高めます。特に、認証や認可の欠如、適切に暗号化がされていないことなどにより機密情報が漏れる恐れがあります。また、外部に公開されるAPIはDDoS攻撃やボットのターゲットになることもあります。そのため、企業のセキュリティ担当者やアプリケーション開発者はAPIのセキュリティ対策を講じ、定期的な監視や脅威の検知を行うことが不可欠です。これにより、信頼性を維持し、顧客データの保護が可能となります。

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ペネトレーションテストとは?

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サイバー攻撃の数は年々増加し続けており、その手口は高度化・巧妙化しています。特に金融、医療、政府機関、ITサービス業界の企業の経営者においては、システムのセキュリティリスクの状態を把握や適切なセキュリティ対策の実施などが重要課題となっています。ペネトレーションテストでは、システムに存在するリスクが実際に悪用可能か確認することが可能です。本記事では、ペネトレーションテストとは何か、なぜ重要なのか、そして脆弱性診断との違いについて解説します。

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテストとは、主に企業ネットワークや、Webアプリケーションなどに不正に侵入することができるかどうかをテストすることです。英語の「 penetration 」には「貫通」、「 penetrate 」には「貫く」「見抜く」などの意味があります。「ペンテスト」と略されたり、「侵入テスト」と呼ばれることもあります。

サイバー攻撃者はまず不正侵入し、その後、情報を盗んだり、バックドアを仕掛けたり、あるいは破壊工作などを行います。それらすべての端緒となる不正侵入を許すかどうかを調べるのが、ペネトレーションテストの役割です。

ペネトレーションテストは、システムやネットワークに対する不正侵入や攻撃が可能かどうかを確認するためのテスト手法です。このテストは、単に脆弱性を見つけるだけではなく、それらが実際に悪用される可能性があるかどうかを判断することに重点を置いています。これにより、システムのセキュリティ状態の把握や実装されているセキュリティ対策の有効性を検証することができます。

ペネトレーションテストが必要な業界と業種

ペネトレーションテストは、特にセキュリティが重要視される業界や業種で必要とされます。
金融、医療、政府機関、ITサービスなど、機密情報を扱うすべての業界で、ペネトレーションテストの実施は必要不可欠です。これらの業界では、データ漏洩やシステム障害が重大な結果を招く可能性があるため、定期的なテストが推奨されます。

ペネトレーションテストが必要な3つの業種

脆弱性診断の結果見つかった脆弱性を悪用して、攻撃が本当に成功するのかを検証するために、ペネトレーションテストが実施されることがあります。あくまで一般論ですが、ペネトレーションテストが必要な業種や事業として、以下の3つが挙げられます。

1.生命・生活に直接影響を与える事業やサービス
第一に、生命や生活に影響を及ぼす業種が挙げられます。具体的には、水道・電気・ガス・道路・交通等の社会インフラや、病院、ビル管理、工場のシステムなどです。

2.資産に影響を与える個人情報を扱うサービス
個人情報を保有する事業やサービスにも、ペネトレーションテストが必要な場合が多いでしょう。とりわけ銀行や証券会社、クレジットカード、仮想通貨取引所などの金融、大規模なWebサービスやECサイト、住民データを扱う自治体や官公庁などが挙げられます。

3.事業継続に影響を与える機密情報を扱うシステム
重要な営業機密や知的財産を保有する企業もペネトレーションテストの実施が望ましいといえるでしょう。

特に、クローズモデルの知財戦略に基づいて特許を取得しない方針の企業が、サイバー攻撃によって機密情報を盗まれ、他の企業に国内外で特許申請・取得された場合、事業継続に関わる重大な影響が懸念されます。

また、データ自体に価値はあるが、特許法や不正競争防止法では保護対象とならないようなデータについては、セキュリティ対策によって保護を図る必要があります。

ペネトレーションテストの重要性

主に以下のような理由により、企業・組織において、ペネトレーションテストを実施することは重要です。

  • 実際の攻撃シナリオの検証
  • セキュリティ対策の有効性評価
  • コンプライアンス要件の遵守
  • ビジネスリスクの低減

脆弱性診断とは異なり、ペネトレーションテストは単に脆弱性を発見するだけでなく、それらが実際に悪用される可能性があるかどうかを重視します。これにより、システムのセキュリティ状態を詳細に把握し、実装されているセキュリティ対策の有効性を検証することができます。

特に金融、医療、政府機関、ITサービス業界など、高度なセキュリティが要求される分野では、セキュリティ対策の一環としてペネトレーションテストが法令やガイドラインで義務付けられている場合があります。

脆弱性診断との違い

ペネトレーションテストは、脆弱性診断とは異なるアプローチを取ります。

脆弱性診断はシステムの脆弱性を特定することに焦点を当てていますが、ペネトレーションテストはその脆弱性を利用して実際に攻撃を試み、システムのセキュリティを実際に検証します。この違いは、単にリスクを特定するのではなく、そのリスクが実際にどのように悪用され得るかを理解することにあります。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いと使い分け

ペネトレーションテストと脆弱性診断には共通する部分があるため、違いがよく理解されていません。特によく見られる勘違いは、「ペネトレーションテストをやりたい」という要望だったものの、ヒアリングしてみると、実際にはペネトレーションテストでなく脆弱性診断が必要であった、というケースです。

以下に「対象」「目的」「範囲」、必要な「期間」の4つの観点から、ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いを示します。

ペネトレーションテスト脆弱性診断
対象脆弱性診断同様、ネットワークやWebアプリケーションを対象にしますが、ときに警備員をあざむいて建物に侵入できるかどうか等の物理的侵入テストが行われることもあります。ネットワークやWebアプリケーションが対象となります。
目的脆弱性診断は脆弱性を発見して報告することが主な業務ですが、ペネトレーションテストは脆弱性をもとに不正アクセスし、ネットワーク等に侵入することが目的となります。 脆弱性を検知・検出すること。
範囲広い範囲の網羅性を重視する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストは侵入することが目的であるため、脆弱性診断とは反対に、狭く深く、ときに針の穴のような侵入できる一点を探します。 広く網羅的に脆弱性の有無を探します。
期間ペネトレーションテストは、とにかく侵入が成功するまでトライし続ける作業であるため、脆弱性診断よりも長い期間を要する場合が少なくありません。ただし、一般論として、優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間で侵入が成功します。 探すものが事前に決まっているためペネトレーションテストよりも通常は短い期間で完了します。

ペネトレーションテスト実施のステップ

ペネトレーションテストサービスは提供する企業によってそれぞれ個性がありますが、大きく分けると下記の手順で実施されます。

Step1.ヒアリング

目的に応じ、たとえば「顧客データベース」など、ペネトレーションテストを行う対象を決定します。そして「顧客データベース」が外部から攻撃されるのか、あるいは内部犯行なのか、想定する攻撃シナリオを作成し、最後に、ペネトレーションテストを行う期間を決定します。

Step2.実施

対象によってさまざまな実施方法があります。公開されているWebアプリケーションであればリモートから実施することができます。内部犯行の危険性をテストする場合ならオフィス内から実施することもあるでしょう。

Step3.完了

「侵入に成功したとき」あるいは反対に、「侵入に成功できないまま期間が終了したとき」のいずれかをもってペネトレーションテストは完了します。どちらの結果にも意味があります。侵入に成功した場合は、その報告を受けて防御力を高める必要性を認識することになり、侵入に失敗した場合は、一定の防御力を保持できている目安となります。

Step4.報告

ペネトレーションテスト事業者からの報告書提出や報告会が行われます。具体的にどういうプロセスで、どういう技術を用いて侵入し、重要なデータがどこまで閲覧可能だったのか、どんなことができてしまう危険性があったのか、など管理者の気にかかることが詳細に報告されます。


ペネトレーションテスト 日本と海外の違い

海外では本番環境で稼働するシステムに対して、直接攻撃を行うような荒っぽいペネトレーションテストが行われることもありますが、日本国内ではそういったケースは多くありません。日本では業務やサービスの運用への影響を回避しつつ、安全に配慮しながら設計・実施されるのが主流です。

ペネトレーションテストを実施する会社の適切な選び方

ペネトレーションテストを実施する際には、専門知識と経験を持つ信頼できる会社を選ぶことが重要です。セキュリティテストの専門家であること、業界の最新の脅威に精通していること、そして過去の成功事例を持つことが、良いサービスプロバイダーの特徴です。また、テストの範囲、方法、報告の詳細さなど、サービスの質にも注意を払う必要があります。

ペネトレーションテストは経験とセンスが求められる仕事であるため、優良事業者選びはとても重要です。前述したとおり「優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間でテストが終了(=侵入に成功)」します。ペネトレーションテストの見積額はエンジニアの拘束時間とも相関しますので、予算にもかかわってきます。大きく以下の3つのポイントを、いいペネトレーションテスト会社選びの参考にしてください。

1.丁寧なヒアリングにもとづいてシナリオを考えてくれるか

システム構成や業務手順、ときには組織構成など、実際のサイバー攻撃を行う際に参照するとされる、さまざまな情報をもとにして、実施するサービスの適用範囲、留意事項、制限などを聞き、顧客の目的や要望、要件に沿ったペネトレーションテストの攻撃シナリオを考えてくれる会社を選びましょう。

2.技術者の経験と勘、クリエイティビティ

ペネトレーションテストはときに針の穴を通すような隙間を見つけ出して侵入を成功させる業務です。技術者のこれまでの経験、保有資格などを確かめ、技術者の層が厚い会社を選びましょう。

3.診断実績

過去のペネトレーションテストの実施社数や件数、リピート社数なども、いいペネトレーションテスト会社選びの参考になります。

ペネトレーションテストのツール

ここまで述べてきたとおりペネトレーションテストとは、丁寧なヒアリングのもとで作成した攻撃シナリオに基づいて、経験豊かな技術者が実施するクリエイティブな手作業です。ペネトレーションテストをすべて自動で行うツールは存在しません。

ただし、ペネトレーションテストを行う技術者が、いわば「工具」「道具箱」のように用いるツールは数多くあります。代表的なものとして、オープンソースプロジェクトである Metasploit が提供する、さまざまなツール群が挙げられます。

セキュリティ企業に依頼せずに、自分でMetasploit が提供するツールを用いて、公開されている脆弱性などを用いて攻撃を実行することは可能です。しかし、その結果を読み解いたり、優先順位をつけたりするノウハウには経験と知見が必要とされます。

また、自宅に置いたサーバに研究目的でツールを走らせるような場合でも、不用意にこうしたツールを使用したり、不適切な方法で攻撃用のエクスプロイトを取得・保管したりすると「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「不正指令電磁的記録に関する罪(刑法刑法168条の2及び168条の3)」等にも触れる犯罪となる危険性もあることを忘れてはいけません。

ペネトレーションテストの料金相場

ペネトレーションテストの料金は、対象とする範囲や、攻撃シナリオによって変動します。あくまで一般的な相場として「脆弱性診断の1.5倍から2倍」程度、金額として数十万円から数千万円の開きがあります。

まとめ

・ペネトレーションテストとは、システム・ネットワークへの不正侵入や攻撃が成立するか確
 認するテスト手法の一つ
・特にセキュリティが重要視される業界や業種、金融、医療、政府機関、ITサービス業界など

 で、ペネトレーションテストの実施が必要不可欠
・脆弱性の有無を判定する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストでは脆弱性自体を見

 つけることよりも不正侵入や攻撃が成立するかどうかの判断を優先する
・事前ヒアリングが丁寧で、優秀な技術者が在籍する、診断実績の多い会社を探す

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