AIコーディング入門 番外編:オープンソースソフトウェアのサプライチェーン攻撃とタイポの落とし穴

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AIコーディング入門番外編アイキャッチ画像(OSSのサプライチェーン攻撃)

AIを活用したコーディングが普及する一方で、オープンソースソフトウェア(OSS)を狙ったサプライチェーン攻撃が増加しています。特に、開発者のタイポを悪用する「Typosquatting」や、AIのハルシネーションに便乗する「Slopsquatting」といった手法は、身近で深刻な脅威です。本記事では、実例を交えながらその仕組みとリスクを解説し、安全なAIコーディングを実践するためのポイントを紹介します。

コードを書く人やインフラストラクチャの構築をする人ならば、人生で最低でも一度は経験しているであろうこと、それはタイプミス、いわゆるタイポ(typo)ではないでしょうか。タイポ、些細なミスで、日常的に発生するものなのですが、中には重大なものもあります。

タイプミスが招く落とし穴 ─ Typosquattingとは

皆さんは「タイポスクウォッティング」という言葉をご存じでしょうか。Web関連のお仕事をされている方であれば、URLのタイポスクウォッティング、つまり間違いやすい・紛らわしいURLでユーザーをおびき寄せる手法としてのタイポスクウォッティングをご存じの方も多いかと思います。この手法がオープンソースソフトウェアでも昨今使用されるようになっています。

例えばnpmの場合、

npm install package_name

と入力することでパッケージのインストールを実行できます。インストールしたパッケージは例えばjavascript(react)を利用している環境であれば

import {
コンポーネント名
} from “@/fullpath/to/package_name”;

の形でコードの先頭で利用するパッケージ名を宣言します。

世の中にはこのパッケージ名のよくあるタイプミス(typo)を狙って作られたマルウェアの一種が存在します。そんなマルウェア、何のためにあるのだろうという方も多いと思いますが、例えば暗号資産のウォレットを狙ったマルウェアや、システムへの侵害目的のマルウェアなどが最近では話題になっています。

npmやPythonなどOSSでの事例

暗号資産を狙うマルウェアの脅威

暗号資産を狙ったマルウェアについては偽の採用面接中に実行を求められるケースも報告されています。

Socket,[Another Wave: North Korean Contagious Interview Campaign Drops 35 New Malicious npm Packages]https://socket.dev/blog/north-korean-contagious-interview-campaign-drops-35-new-malicious-npm-packages

偽の採用プロセスとソーシャルエンジニアリング

採用面接に至るということは例えば採用条件面で魅力的である、採用プロセスに見せかけたフェーズで偽の採用者に対して高い信頼を持つよう誘導されている、著名な企業などに成りすますことで権威性・信憑性を信じさせられる、オンライン環境による信頼レベルを悪用される、といったソーシャルエンジニアリングの基本ともいえる「人」が抱える脆弱性をすでに悪用された状態です。

関連記事:
ソーシャルエンジニアリング最前線【第1回】ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」(https://www.sqat.jp/kawaraban/37089/

その状態で、面接というストレスのかかる、失敗が許されないと思ってしまう状況で紛らわしい名称の不正なコードや、不正なパッケージを含むコードを実行させられた場合、気づくことは容易ではありません。面接で突然コードを実行させられることに違和感を覚えてその場を退出することが最善かもしれませんが、Zoomのリモートコントロール機能を使ってマルウェアを実行するケースもあることから、特にすべてをオンラインで完了させるタイプの採用プロセスそのものに対して常に疑わしいかどうか疑問を持ち続けるしか対策はないかもしれません。

Zoomのリモートコントロール攻撃

参考情報:

The Trail of Bits Blog,[Mitigating ELUSIVE COMET Zoom remote control attacks](https://blog.trailofbits.com/2025/04/17/mitigating-elusive-comet-zoom-remote-control-attacks/

なお、昨年末に警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター・金融庁連名で偽の採用試験関連で注意喚起が出ています。今一度ご確認ください。

警察庁/内閣サイバーセキュリティセンター/金融庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ TraderTraitor によるサイバー攻撃について (注意喚起)」(令和6年12月24日)(https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/20241224_caution.pdf

タイポよりも怖い?生成AI時代の新たな罠 ─ Slopsquatting

生成AIやAIエージェントの普及でAIを使用したコーディングを行う人も増えていると思います。「typoもないし、いいじゃない?」と思う方も多いと思いますが、生成AIには「ハルシネーション」という最大の難点があります。人間のtypoぐらいの頻度で遭遇する現象の一つといっても言い過ぎではないかもしれません。そんなハルシネーションを狙って、偽のパッケージが用意されていたら?という内容のレポートが公開されました。

参考情報:

トレンドマイクロ株式会社「スロップスクワッティング:AIエージェントのハルシネーションにつけ込む攻撃手法」(https://www.trendmicro.com/ja_jp/research/25/g/slopsquatting-when-ai-agents-hallucinate-malicious-packages.html

生成AI単体には生成内容の検証メカニズムがありません。このため、AIエージェントを利用したコーディングの場合はエージェント側の機能として備わっている検証機能を利用することが必要です。具体的な手法はレポートにも記載がありますが、日進月歩で新たな機能が登場する現状では最新の情報も併せて探すことをお勧めします。 また、エージェントを用いない場合も含めて、以下のようなリスク回避策を基本とするのもよいかもしれません。

  • 参照するパッケージ・モジュールを限定して、typosquattingやslopsquattingなどのリスクを回避する
  • やむを得ず新しいパッケージ・モジュールをインストールする場合は人の手を介したチェックを行うことで、リスクを抑制する

実際に筆者もプロンプトで利用パッケージを限定していますが、特に利便性の阻害を感じたことはありません。また、周囲とのコミュニケーションでパッケージ・モジュールの情報の交換、推奨などの情報を得ることも多くあり、AI時代のコーディングとはいえコミュニケーションも併せて重要であることを実感しているところです。

プロンプトエンジニアリングと検証の重要性

前出のレポートで指摘されている原因の一つにはプロンプトの一貫性やあいまいさといった自然言語による指示ならではの問題があります。プロンプトエンジニアリングなどについては以下の記事でもご紹介しています。ただし、モデル側の実装状況などによりユーザー側の努力の反映には限界があるため、必ず生成結果に対する人のチェック(一種のHuman in the Loop)はプロセスとして欠かさないことが望まれます。

関連記事:
AIコーディング入門 第1回:Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」(https://www.sqat.jp/kawaraban/38067/

正規リポジトリの乗っ取りという最大の脅威

2025年7月、npmの開発者をターゲットにしたフィッシングが報告されました。この後、複数のパッケージの乗っ取りが報告されています。

npm開発者を狙ったフィッシング事例

オープンソースソフトウェア(OSS)経由のサプライチェーン攻撃

ここまででお気付きの方も多いと思いますが、今回取り上げた様々な攻撃手法はすべてオープンソースソフトウェア経由のサプライチェーン攻撃として、1つにまとめることができます。プログラミング言語の多く、そしてWebサイトの構築に用いられるJavaScriptのフレームワークの多くはオープンソースソフトウェアとして流通しています。プログラミング言語やJavaScriptのフレームワークは実際に利用するにあたって利便性を向上させる目的で多くのパッケージやモジュール、ライブラリなどがオープンソースとして開発・公開されています。これらのオープンソースソフトウェアは現在では多くが多数のコントリビューターとメンテナーによってGitHub上で公開され、開発が行われています。GitHubからnpmなどのパッケージ管理システムへの公開も一貫して行うことができるため、非常に利便性が高い反面、今までに挙げたような攻撃を仕掛けるための利便性も高くなっています。また、オープンソースソフトウェアは相互に依存性を持つことが多いことから、人気のあるモジュール・パッケージへの攻撃が多数のモジュール・パッケージやシステムへ影響を及ぼすことができます。これが、オープンソースソフトウェアへのサプライチェーン攻撃における最大の特徴ともいえるかもしれません。オープンソースソフトウェアを利用する以上、こういったリスクがあることは十分理解したうえで利用する必要があります。

オープンソースソフトウェアの利用の条件としてセキュリティ面でかなりハードルが高いのは事実ですが、一方で利便性・柔軟性・モダンなシステムの構築といった観点からオープンソースソフトウェアを全く利用しない(プロプライエタリソフトウェアだけで構築する)というのは難しいという現状に鑑みるとやむを得ない選択であるとも言えます。

開発者がとるべき対策

こういったケースに対応するには依存関係のチェックや追跡、SBOMによる管理が必要になります。依存関係のチェックや追跡にはGitHubを使用している場合ならばDependabotの利用、その他のコードレポジトリを対象とする場合は各種の依存関係トラックツールを使用する必要があります。SBOMで自身のコードのコンポーネントと依存関係の管理を合わせて行うことで、システム全体としての管理を行うことが求められます。

まとめ ― AI時代のオープンソースソフトウェア利用に求められる視点

タイプミスを悪用した Typosquatting、AIのハルシネーションに便乗する Slopsquatting、さらには正規リポジトリの乗っ取りといった攻撃は、いずれもオープンソースソフトウェアを媒介とするサプライチェーン攻撃として位置づけられます。これらは利便性と引き換えに大きなリスクを伴い、暗号資産の窃取やシステム侵害といった深刻な被害へとつながりかねません。OSSの依存関係は複雑で、人気パッケージが狙われることで広範囲に影響が及ぶことも少なくありません。そのため、参照パッケージを限定する運用、人による確認(Human in the Loop)、Dependabotなどの依存関係管理ツールの活用、SBOMによる包括的なコンポーネント管理 といった対策が不可欠です。AIを活用したコーディングが普及する中でも、「便利だから任せる」のではなく、常に検証と疑問を持ち続ける姿勢 が求められます。セキュリティと利便性の両立こそが、これからのOSS利用とAI開発における鍵といえるでしょう。


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    ChatGPTとセキュリティ
    -サイバーセキュリティの観点からみた生成AIの活用と課題-

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    chatGPTのイメージ画像

    2022年11月にOpenAIによって公開された生成AI「ChatGPT」の利用者は、リリース後わずか2か月で1億人を突破しました。2023年になってからもその勢いは止まらず、連日のようにニュースで取り上げられ、人々の注目を集め続けています。ChatGPTを含めた生成AIは、今後のビジネスにおいて重要な役割を果たし、企業の競争力にも関わってくると考えられます。本記事では改めてChatGPTとはいったい何なのか?そしてサイバーセキュリティの観点からみたインパクトとリスクについて解説します。

    ChatGPTとは?

    ChatGPTとは、端的に言えば「人間が作った質問に自然な文章で回答を返してくれる、OpenAIが開発した人工知能システム」のことです。ChatGPTの主要機能は「人間同士の対話を模範すること」であり、その得意とするところは、「人間が自然と感じる回答の生成」です。

    応答してくれる言語については、主要なものに対応しており、日本語で問いかけた場合は日本語で回答が返ってきます。

    ChatGPTの返答イメージ

    ChatGPTとは?の画像

    なぜそのようなことが可能かというと、人間の脳の神経回路の構造を模倣した「ニューラルネットワーク」を利用*1しており、大量のウェブページ、ニュース記事、書籍、社交メディアの投稿など、多様なテキストを学習しているからです。つまり膨大なデータで学習し、人間の脳を模倣した処理によって、人間が使う自然な言葉で、入力した言葉に対して回答を返してくれるのです。

    多種多様な生成AI

    生成AI(ジェネレーティブAI)とは
    生成AIとは、学習したデータをもとに、画像・文章・音楽・デザイン、プログラムコード、構造化データなどを作成することができる人工知能(AI)の総称です。近年は様々な組織から多種多様な生成AIが開発、リリースされており、日進月歩の進歩を遂げています。なお、ChatGPTの「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」を意味しており、Gは生成を意味するGenerativeです。

    ChatGPTは2023年6月現在、2つのバージョンが存在しています。2022年の11月に公開された無料で利用できるChatGPT3.5というバージョンと、2023年3月に公開された有償での利用が可能なChatGPT4というバージョンです。ChatGPT4は3.5に比べて事実にもとづく回答の精度が40%向上しているとされている他、いくつかの機能が追加されています。

    また、人工知能チャットボットとしてはChatGPTの他にも「Google Bard」、「Microsoft Bing AI」「Baidu ERNIE」その他様々なモデルが登場しています。他にも文章や画像から生成する画像生成AIとして「Midjourney」や「Stable Diffusion」、音声から文字起こしを行うChatGPTと同じOpenAIの「Whisper」といったものもあります。 最近では、MicrosoftがWindows11へ「Windows Copilot for Windows 11」というChatGPTを利用した対話型のアシスタンスの導入を発表しています。

    こうした生成AIにはカスタマーサービスでの利用、ソフトウェアの作成やメール文章の作成から、ちょっとした日常生活の疑問の解決、様々なビジネス上のシナリオ作成からテストまで、幅広い活用の幅があります。

    種類提供元サービス名URL
    文章生成AIOpenAIChatGPT https://openai.com/blog/chatgpt
    文章生成AIGoogleBardhttps://bard.google.com/
    文章生成AIMicrosoftBing AIhttps://www.microsoft.com/ja-jp/bing?form=MA13FJ
    文章生成AIBaiduERNIEhttps://yiyan.baidu.com/welcome
    画像生成AIMidjourneyMidjourneyhttps://www.midjourney.com/home/?callbackUrl=%2Fapp%2F
    画像生成AIStability AIStable Diffusionhttps://ja.stability.ai/stable-diffusion
    画像生成AIOpenAIDALL·Ehttps://openai.com/dall-e-2
    文章生成AI
    (文字起こし)
    OpenAIWhisperhttps://openai.com/research/whisper
    音声生成AIElevenLabsPrime Voice AIhttps://beta.elevenlabs.io/
    無数に存在するAIの画像
    無数に存在するAI
    出典:Harnessing the Power of LLMs in Practice: A Survey on ChatGPT and Beyondより引用

    ChatGPTとサイバー攻撃

    このような幅広い活用を期待されているChatGPTですが、一方でサイバー攻撃においても悪用が注目されてしまっているという側面もあります。

    ChatGPTのサイバー攻撃での悪用を考えるときに、まず考えられるのはフィッシング攻撃における悪用です。ある調査では「見慣れたブランドであれば安全なメールだと思っている」という人が44%いると報告されています。そのような人が被害にあいやすい、「もっともらしく見える、文面に不自然なところのない一見して信ぴょう性の高い文面」を、攻撃者はChatGPTを利用して簡単に作り出すことができます。加えて、攻撃者が標的の普段利用している言語を解さず、そこに言語の壁が存在したとしても、これもやはりChatGPTを利用することで容易に乗り越えることが可能となります。このような精巧なフィッシングメールを、攻撃者はこれまで以上に少ない労力で大量に生成可能となります。

    また、ChatGPTにマルウェアで利用できるような悪意のあるコードを生成させようと検証する動きがあり、ダークウェブ上では前述のフィッシングでの悪用を含めて、活発な調査、研究が進められているという報告もあります。このような言語的、技術的なハードルの低下は、ノウハウのない人間でも攻撃の動機さえあれば、ChatGPTを利用することで簡単にサイバー攻撃が実行できてしまうという脅威につながります。

    ChatGPTの活用におけるその他のセキュリティ課題

    ChatGPTに対するセキュリティの観点からの懸念点は、他にもあります。

    情報漏洩リスク

    業務上知りえた機密情報や、個人情報をChatGPTに入力してしまうリスクです。ChatGPTに送信された情報は、OpenAIの開発者に見られてしまったり、学習データとして使われたりして、情報漏洩につながってしまう可能性があります。2023年3月末には、海外の電子機器製造企業において、ソースコードのデバッグや最適化のためにChatGPTにソースコードを送信してしまったり、議事録を作ろうとして会議の録音データを送信してしまったりという、情報漏洩が報道*2されています。

    正しくない情報の拡散リスク

    ChatGPTは過去に学習した情報を利用して回答しているため、間違った情報や意図的に歪められた汚染情報、セキュアではない情報にもとづいた返答をしてしまう可能性があります。また、蓄積情報についても大部分が2021年までの情報とされており、回答が最新情報とは限らない点にも注意が必要です。例えば最新の脆弱性情報について質問しても、間違っていたり、古い情報で回答をしてしまったりする可能性もあります。

    ChatGPTのセキュリティ課題

    ChatGPTのセキュリティ課題の画像

    ChatGPTのセキュリティでの活用

    ここまでセキュリティの観点からChatGPTのリスクに注目してきましたが、ChatGPTは応答学習型のセキュリティ教育や、セキュリティの疑問に答えてくれるセキュリティボットの開発、インシデント発生時のセキュリティアシストや、脅威動向の把握など、セキュアな社会構築への貢献も期待されています。また、OpenAIからもAIを活用したセキュリティに関する「OpenAI cybersecurity grant program」という最大100万ドルの助成金プログラムを開始すると発表がされています。このことからも、AIを用いたサイバーセキュリティの強化や議論促進が今後進展していくものと考えられます。

    基本的な対策こそが重要

    AIとサイバー攻撃について述べてきましたが、気を付けないといけないのは、ChatGPTがなくても、攻撃者もマルウェアも既に存在しており、脆弱性があればそこを突いて攻撃が行われるのだということです。ChatGPTはあくまでサイバー攻撃の補助として悪用されているだけであり、ChatGPT自体が脅威なのではありません。危険なのはChatGPTではなく、サイバー攻撃を行う者や、脆弱性を放置するなど対策を怠ることです。

    今後、ハードルが下がったことで、技術力の低い攻撃者が参入しやすくなり、攻撃の数は増えるかもしれませんが、過去からある基本的なセキュリティ対策を講じていれば、多くの攻撃は未然に防げることに変わりはありません。個人情報の漏洩や正しくない情報の拡散といったリスクについても、セキュリティポリシーの遵守や、きちんと情報の裏付けを取る(ファクトチェック)といった基本的な行動規範がリスクを緩和してくれます。基本的なセキュリティ対策こそが効果的であるという前提に立って、今一度自組織のセキュリティを見直すことが重要です。いたずらに怖がるのではなく、基本的なセキュリティ対策を踏まえたうえで、上手にAIと付き合っていくことが必要ではないでしょうか。

    基本的な対策こそが重要の画像
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    IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる
    ― 注目が高まる犯罪のビジネス化 ―

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    瓦版vol.20アイキャッチ画像(犯罪ビジネスとハッカーのイメージ写真)

    近年、サイバー犯罪はビジネス化が危惧されています。これまで高度な技術をもつ人だけが実行できていたサイバー攻撃も、攻撃のための情報がサービスとして公開されていたり、ツールを活用したりすることで、誰でも容易に実行することが可能となっています。犯罪のビジネス化が進む世の中で我々が対抗できる手段はあるのでしょうか。本記事では、注目される犯罪のビジネス化としてRaaSやDDoS攻撃などのビジネスモデルをご紹介しつつ、サイバー攻撃に備えるにはどのような手段をとればいいのか、という点について解説いたします。

    「犯罪のビジネス化」が「情報セキュリティ10 大脅威」に5年ぶりのランクイン

    2023年1月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2023」(組織・個人)を発表しました。組織編の脅威に2018年を最後に圏外となっていた「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が再びランクインしました。

    アンダーグラウンドサービスとは、サイバー攻撃を目的としたツールやサービスを売買しているアンダーグラウンド市場で取引が成立し、経済が成り立つサービスのことです。これらのツールやサービスを悪用することで、攻撃者が高度な知識を有していなくとも、容易にサイバー攻撃を行うことが可能となります。そのため、ランサムウェアやフィッシング攻撃といったサイバー攻撃がますます誘発され、脅威となるのです。

    出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2023」(2023年3月29日)組織向け脅威

    ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware-as-a-Service)

    勢いを増しているサイバー犯罪のビジネスモデルとしてRaaS(Ransomware-as-a-Service)があります。RaaSとはランサムウェアが主にダークウェブ上でサービスとして提供されている形態のことで、RaaSを利用した攻撃者は、得た身代金の何割かを開発者に取り分として渡す仕組みになっていて、そうやって利益を得ていることなどがあります。

    ランサムウェアが増加している理由についてはSQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    ランサムウェア攻撃に効果的な対策‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

    図1:Raasビジネスを利用した攻撃の一例

    Raasビジネスを利用した攻撃の一例画像

    昨今のランサムウェア攻撃の特徴として、ランサムウェア攻撃により行われる脅迫は暗号化したデータを復旧するための身代金の要求に加えて、支払わなければ奪取したデータを外部に公開するといった二重の脅迫から、さらに支払うまでDDoS攻撃(※)を行うといった三重の脅迫から、さらにはそれでも支払いを拒否された場合には、盗んだ情報をオークションで売られてしまうといった事態に発展するなど、より被害が拡大しています。
    ※DDoS攻撃・・・多数の発信元から大量のデータを送り付けることでサーバを停止させる攻撃のこと。

    図2:データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫

    データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫画像

    また、従来のランサムウェアの攻撃の手口は不特定多数に対して無差別に行うばらまき型と呼ばれる手法でしたが、近年では攻撃手法が多様化しています。以下の表は攻撃手法と事例です。

    年月攻撃手法事例
    2020/6標的型ランサムウェア攻撃 国内自動車メーカーの社内システムが、EKANSの攻撃を受け、日本を含む各国拠点で一時生産停止に陥るなど大きな被害を受ける。
    2022/1USBデバイスを使用した
    ランサムウェア攻撃
    米国で攻撃者が官公庁や有名販売サイトを装い、パソコンに接続することでランサムウェアを感染させる細工を施したUSBデバイスを送付。2021年8月には運輸および保険業界の企業、11月には防衛産業企業に送られており、FBIが注意喚起を行う*3
    2022/10サプライチェーン攻撃に
    よるランサムウェア感染
    2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道があった。

    取り上げた事例の詳細について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    2022年6月の事例:「ランサムウェア最新動向2021 ―2020年振り返りとともに―
    2022年10月の事例「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

    このように、被害者が身代金の要求により応じやすくなるような脅迫に変化し、また攻撃手法も多様化することにより、攻撃の巧妙化によって高い収益をあげられることから、今後もランサムウェア攻撃は続くことでしょう。その背景には攻撃の実行ハードルを下げるRaaSの存在があることが考えられます。

    フィッシング攻撃やDDoS攻撃もサービス化へ

    フィッシング攻撃とは、有名企業等になりすますなどして偽装したメールやSMSにより、本物そっくりの偽サイトに誘導したり、悪意ある添付ファイルを実行させようとしたりするサイバー攻撃です。このフィッシング攻撃により、マルウェアを使った重要情報の奪取や、ランサムウェアの感染拡大などを行う事例*2も確認されています。

    2022年11月から感染が再拡大しているマルウェア「Emotet」も、この手口を利用することで拡大しました。Emotetに感染し、メール送信に悪用される可能性がある.jpメールアドレスの数は、Emotetの感染が大幅に拡大した2020年に迫る勢いとなっています。

    図3:Emotetの攻撃例イメージ図

    Emotetの攻撃例イメージ図画像

    フィッシング攻撃もサービス化が進んでいます。2022年9月、米国のResecurity社はダークウェブにおいて二要素認証を回避する新たなPhaaS(Phishing-as-a-Service)が登場したと発表しました。このPhaaSは「EvilProxy」と命名され、二要素認証による保護を回避する手段として、「リバースプロキシ」と「クッキーインジェクション」を使用し、被害者のセッションをプロキシング(代理接続)するというものです。このような複雑な仕組みの攻撃がサービス化されたことにより、今後フィッシング攻撃がますます活発化することが考えられます。

    そのほかにも、直近では米国で定額料金を支払うことで代行してDDoS攻撃を行うサービス「DDoS攻撃代行サブスクリプションサービス」を提供するサイトの運営者が逮捕される事件*3がありました。DDoS攻撃を行う目的は「金銭目的」「嫌がらせ」「抗議の手段」「営利目的」など攻撃者の背景によって異なります。逮捕に至ったこのサービスでは2000人以上の顧客を抱えており、これまでに20万件以上のDDoS攻撃を実行したと報道がありました。ここからみえてくるのは、様々な事情を抱えた攻撃者にとって、「求められているサービス」であったということです。

    犯罪ビジネスサービス利用者の標的にならないために

    ここまでランサムウェアやフィッシング等のサイバー攻撃がビジネス化されている例をみてきました。このように犯罪に使用するためのサービスは、アンダーグラウンド市場で取引され、これらを悪用したサイバー攻撃が行われるというビジネスモデルが存在しているのです。サービスを利用するだけで、高度な知識をもたない攻撃者であっても、容易にサイバー攻撃を行えることから、犯罪のビジネス化は今後さらに進み、特にランサムウェア攻撃やフィッシング攻撃は活発化することが考えられます。

    これらの犯罪ビジネスサービス化の拡大により増えることが想定されるランサムウェア攻撃とフィッシング攻撃に対して、攻撃を行う機会を与えないために以下のような基本的な対策が有効でしょう。

    ランサムウェア対策

    ■定期的なバックアップの実施と安全な保管
     (物理的・ネットワーク的に離れた場所での保管を推奨)
     ⇒バックアップに使用する装置・媒体は、バックアップ時のみパソコンと接続
     ⇒バックアップに使用する装置・媒体は複数用意する
     ⇒バックアップから復旧(リストア)可能であることの定期的な確認
    ■OSおよびソフトウェアを最新の状態に保つ
    ■セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ
    ■認証情報の適切な管理(多要素認証の設定を有効にするなど) など

    フィッシング対策

    ■ソフトウェアを最新にするなどパソコンやモバイル端末を安全に保つ
    ■従業員教育を行う
     ⇒不審なメールやSMSに注意する
     ⇒メールやSMS内に記載されたURLを安易にクリックしない
     ⇒メールやSMSに添付されたファイルを安全である確信がない限り開かない
    ■標的型攻撃メール訓練の実施 など

    なお、セキュリティ対策は一度実施したらそれで終わりというものではありません。サイバー攻撃の手口は常に巧妙化し、攻撃手法も進化し続けているためです。脆弱性診断を定期的に行うなど、継続してサイバー攻撃に備えていくことが必要です。また、セキュリティ対策を実施した後も、侵入される可能性はないのか、万が一感染した場合はその影響範囲はどの程度かといった現状把握を行い、実装したセキュリティ対策の有効性を確認することが大切です。

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

    <侵入前・侵入後の対策の有効性確認>

    BBSecでは、第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を実現する、「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

    ※外部サイトにリンクします。

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