【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2026 -脅威と対策を解説-

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2026年1月29日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織編)を公表しました。各脅威が自身や自組織にどう影響するかを確認することで、様々な脅威と対策を網羅的に把握できます。多岐にわたる脅威に対しての対策については基本的なセキュリティの考え方が重要です。本記事では、脅威の項目別に攻撃手口や対策例をまとめ、最後に組織がセキュリティ対策へ取り組むための考え方について解説します。

「情報セキュリティ10大脅威 2025」の解説はこちら。ぜひあわせてご覧ください。
【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2025 -脅威と対策を解説-

情報セキュリティ10大脅威 2026概要

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
「情報セキュリティ10大脅威 2026」(https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20260129.html)(2026年1月29日)組織向け脅威

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2026」を発表しました。「組織」向けの脅威では、1位に「ランサム攻撃による被害」、2位「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が前年と同じ順位を維持。3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出にして上位にランクインし、AIの利活用におけるリスクが無視できないものであることを示しています。また、6位の「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」には「情報戦を含む」と追記され、偽情報などの影響工作も含む脅威と明示化されました。昨年では10位にランクインしていた「不注意による情報漏えい等」が圏外となりました。

2025年度版との比較

昨年との比較でまず注目したいのは、「AIの利用におけるサイバーリスク」が初選出にして3位という上位にランクインしたことです。生成AI(LLM:大規模言語モデル)の急速な普及に伴い、「AIを利用した際の情報漏えいや権利侵害」、「AIが生成した誤情報を鵜呑みにすることで生じる問題」、そして「AIの悪用におけるサイバー攻撃の容易化・高度化」と多岐にわたるリスクが現実的な脅威となっています。

新規項目のランクインに伴い、「不注意による情報漏えい等」が圏外となりましたが、不注意による情報漏えいは引き続き発生しており、対策が必要な脅威です。その他の項目については大きな変化はなく、「ランサム攻撃による被害」と「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」は、例年通り不動の1位2位となっています。

日本の大手企業も被害にあった「ランサム攻撃による被害」「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」

2025年版に続き、「ランサムウェアによる被害」と「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が1位・2位を占めました。これは2023年以降4年連続となっており、情報処理推進機構(IPA)によると、2025年もランサムウェア被害が多発し、取引先を含むサプライチェーン全体へ深刻な影響が及んだ事実が、この順位の不動ぶりを表しているとのことです。

ランサムウェア攻撃は、データを暗号化して復旧と引き換えに身代金を要求する手口に加え、窃取情報の公開をちらつかせる「二重脅迫」が主流です。2025年の象徴的な事例として、アサヒグループホールディングスへのランサムウェア攻撃がありました。これにより、受注・出荷システムに障害が発生し、一部商品の品薄など消費者にも影響が波及しました。また国内飲料事業では、昨年10月の暫定売上が前年同月比で約6割に落ち込むなど、事業面に大きな爪痕を残しています。*1

アサヒグループホールディングスへのランサムウェア攻撃をはじめとした、国内のランサムウェア被害の事例については、以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
【速報】アサヒグループホールディングス社長会見、犯行は「Qilin」―サイバー攻撃の全貌とセキュリティの盲点https://www.sqat.jp/kawaraban/40295/
アサヒグループを襲ったランサムウェア攻撃https://www.sqat.jp/kawaraban/39292/
・アサヒグループも被害に ―製造業を揺るがすランサムウェア攻撃https://www.sqat.jp/kawaraban/39672/
・【2025年最新】日本国内で急増するランサムウェア被害-無印良品・アスクル・アサヒグループの企業の被害事例まとめ-https://www.sqat.jp/kawaraban/39635/

ランサムウェア攻撃は有名企業に限らず、体制が手薄な中小企業も広く標的とします。ひとたびシステムが完全に暗号化されると、復旧には多大な時間とコストを要します。そのため、侵入を防ぐ観点では、外部公開されたVPN機器等の棚卸しによる不要な経路の閉鎖、必要な経路への多要素認証の徹底、そして機器の脆弱性管理を継続することが重要です。あわせて、侵入されても業務を止めないために、ネットワークから切り離したバックアップの確保や復元訓練、ログ監視、初動手順の整備を行い、平時から「短期間で業務を戻せる設計」を作っておくことが求められます。

一方、サプライチェーン攻撃は、標的企業への直接侵入が難しい場合に、セキュリティ対策が手薄な取引先や委託先を足がかりに侵入する点が特徴です。多くの企業がクラウドサービスや外部ベンダーに依存する現在、攻撃者はその隙を狙っています。2025年の事例として、アスクル株式会社のシステムへのランサムウェア攻撃がありました。例外的に多要素認証を適用していなかった業務委託先の管理者アカウントが侵入経路になったとされています。*2 その結果、出荷業務の停止に追い込まれ、約52億円を特別損失に計上する事態へと発展しました。*3

サプライチェーン攻撃は自社の努力だけでは防ぎきれず、委託先を含む全体での統制が必要です。契約時にセキュリティ要件を明確にし、例外運用を恒常化させない仕組み作りが不可欠です。加えて、ゼロトラストアーキテクチャを採用し、すべてのアクセスを検証する仕組みを構築することも有効な対策となります。

急速な普及と共に顕在化している「AIの利用をめぐるサイバーリスク」

「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、新たに「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が3位にランクインしました。ここでのリスクとは、AIへの理解不足に起因する情報漏えいや権利侵害、誤情報の鵜呑みによる判断ミス、さらにAI悪用によるサイバー攻撃の容易化・巧妙化など多岐にわたります。例えば、英国企業ArupではAI技術(ディープフェイク)で生成された偽のCFOや従業員とのビデオ会議により、2,500万ドルの詐欺被害に遭ったと発表されました。「映像や音声で会話ができるなら本人に間違いない」という心理的な隙を突いた攻撃手法です。*4また、「KawaiiGPT」のような攻撃用にカスタマイズされた悪性AIの登場により、経験の浅い攻撃者でも、従来は数時間〜数日かかっていた攻撃サイクルをわずか数分で実行できる環境が整備されつつあります。また、「KawaiiGPT」のような攻撃用にカスタマイズされた悪性AIの登場により、経験の浅い攻撃者でも、従来は数時間〜数日かかっていた攻撃サイクルをわずか数分で実行できる環境が整備されつつあります。*5

攻撃を受けるリスクだけでなく、AIの「利用者側」のリスクも無視できません。米国企業Teslaは、発表イベントで使用したAI生成画像が既存映画の場面に酷似しているとして、制作会社から提訴されました。*6自社生成した画像であっても、意図せず既存作品に似てしまい法的リスクを招く一例です。また、生成AIが捏造した判例や引用を、弁護士が検証不足のまま提出して懲戒処分などに発展した事例も複数報じられています。*7これは法務だけの問題ではなく、AIによる「もっともらしい誤情報」が人の判断ミスを誘発するという重要な示唆を含んでいます。基本的なセキュリティ対策の徹底はもちろんですが、不十分な理解のままAIを利用するリスクを認識し、教育を通じてAIリテラシーを強化することも重要となっています。

情報戦への拡大「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)」

「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」とは、国際情勢の緊張や対立が、直接的にサイバー空間の脅威へと波及するリスクを指します。今回、項目名に「情報戦を含む」と明示されたように、国家が支援するサイバー攻撃は、システムの破壊や金銭の窃取に留まりません。偽情報の流布や情報操作を通じて、選挙への介入や社会の混乱を狙うケースが増加しています。英国では、現職議員が「離党を宣言する」かのようなAI生成の偽動画(ディープフェイク)が拡散され、本人が警察に通報する事態が報じられました。*8これは、AIによって「本物に見える偽情報」の作成コストが劇的に低下し、政治家を標的とした情報工作が、選挙制度や民主主義にとって深刻な脅威となりつつあることを示しています。

このように、地政学的リスクに伴うサイバー攻撃において、情報戦や影響工作のリスクが今後も高まると予測されることが、今回あえて「情報戦を含む」と明記された背景にあると考えられます。

その他の脅威

ここからは、これまでに述べた4つ以外の脅威について説明します。

4位「システムの脆弱性を悪用した攻撃」

ソフトウェアやシステムの脆弱性が発見されると、攻撃者は修正プログラムが提供される前に攻撃を仕掛ける「ゼロデイ攻撃」を行うことがあります。また、修正プログラム公開後であっても、適用の遅れている企業や組織を狙い、既知の脆弱性を悪用するケースも後を絶ちません。2025年に報告されたNext.jsの脆弱性「React2Shell」の事例(※ページ下部に参考情報記載)では、公表からわずか二日後に実際の攻撃が確認され、一週間以内に観測された攻撃試行回数は約140万回にも及んだとされています。*9このように攻撃者は脆弱性公開から直ちに悪用を開始するため、最新情報を常に追跡し、迅速に対応することが求められます。

対策: 最新のセキュリティパッチを迅速に適用することが不可欠です。また、どこにどのソフトウェアが使われているかを把握するため、SBOM(ソフトウェア部品表)の導入など、脆弱性管理体制の強化が有効です。

5位「機密情報を狙った標的型攻撃」

標的型攻撃とは、明確な意思と目的を持った攻撃者が、特定の企業・組織・業界を狙い撃ちにするサイバー攻撃です。不特定多数への無差別な攻撃とは異なり、機密情報の窃取やシステムの破壊・停止といったゴールを定め、執拗に実行される点が特徴です。攻撃は長期間継続することが多く、ターゲットのネットワーク内部に数年間にわたり潜伏して活動する事例も確認されています。

対策: 従業員への標的型攻撃メール訓練、メールセキュリティの強化、多要素認証の実施などが基本的です。加えて、侵入を前提とした「ゼロトラストモデル」の導入やネットワーク監視、アプリケーション許可リストの活用により、侵入の防止だけでなく早期発見と対処を可能にする体制づくりが有効です。

7位「内部不正による情報漏えい等」

組織の従業員や元従業員など、内部関係者による機密情報の持ち出しや削除といった不正行為を指します。これには、組織への不満や金銭目的による「悪意ある犯行」だけでなく、ルールに違反して持ち出したデータの紛失・誤操作といった、第三者への漏えいにつながる「過失」も含まれます。発生すれば、社会的信用の失墜、損害賠償、顧客離れや取引停止に加え、技術情報の流出による競争力低下など、組織に甚大な損害をもたらす恐れがあります。

対策: アクセス権限の最小化、ログ監視の強化、定期的な従業員教育、退職者のアカウント管理徹底、そして機密情報の持ち出しルールの策定などが有効です。これらを組み合わせ、不正行為の「抑止」と「早期発見」を図ることが重要です。

内部不正による情報漏えいついては以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。「内部不正による情報漏えい-組織全体で再確認を!-

8位「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」

新型コロナウイルス対策を契機にテレワークが急速に普及し、社外からVPN経由でシステムへアクセスしたり、オンライン会議を行ったりする機会が定着しました。その結果、セキュリティ対策が不十分な自宅ネットワークや私物PCの業務利用に加え、従来は出張時や緊急時のみの使用を想定していたVPN機器等が、恒常的に使われるようになりました。こうしたテレワーク環境に脆弱性が残っていると、社内システムへの不正アクセスやマルウェア感染、Web会議の盗聴といった深刻なリスクにつながります。トレンドマイクロによれば、過去2年間に行ったランサムウェア被害に対するインシデント対応支援の中でも、およそ7割がVPN経由の事例とのことであり、VPN機器の徹底した管理が求められます。*10

対策: ゼロトラストセキュリティの導入、VPN装置等のネットワーク機器に対するセキュリティ強化とパッチ適用、多要素認証の徹底、そして従業員へのセキュリティ教育の実施などが有効です。

9位「DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)」

攻撃者が乗っ取った複数の機器(ボットネット)から、特定のサーバやネットワークに対して大量の通信を送り付け、サービスを停止に追い込む攻撃です。近年は、セキュリティ対策が手薄なIoT機器が悪用され、攻撃規模が巨大化しています。また、単なる愉快犯的な妨害だけでなく、攻撃停止と引き換えに金銭を要求する「ランサムDDoS」が増加傾向にあります。これにより、ECサイトの長時間のダウンによる金銭や顧客の離脱などの機会損失や、クラウドサービスの従量課金制を悪用し、数千万円規模の過大請求を発生させる(EDoS攻撃)等、事業継続に直結する深刻な被害が発生しています。

対策:自社設備だけでの防御は困難なため、CDN(Contents Delivery Network)やWAF(Web Application Firewall)などの対策サービスを導入し、負荷分散と遮断を行うことが基本です。あわせて、攻撃の影響を受けない非常用回線の確保やシステムの冗長化、停止時の代替サーバや告知手段を事前に整備することが重要です。

DoS攻撃/DDoS攻撃については以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。「DoS攻撃のリスクと対策:アクセス急増の原因と見分け方、サービス停止を防ぐ初動対応

10位「ビジネスメール詐欺」

ビジネスメール詐欺(BEC:Business Email Compromise)は、業務連絡を装った巧妙な偽メールを組織・企業に送り付け、従業員を騙して資金を詐取するサイバー攻撃です。攻撃者は準備段階として、企業内の情報を狙ったり、ウイルスを使用して業務メールを盗み見たりすることで、本物そっくりの文面やタイミングを作り上げます。

対策: 送信ドメイン認証(DMARC・SPF・DKIM)の導入やセキュリティソフトによるフィルタリング強化といった技術的対策に加え、不審な送金依頼に対する複数人確認ルールの徹底、従業員への訓練を行い、被害の防止と早期発見を図ることが有効です。

ビジネスメール詐欺については以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。 「ビジネスメール詐欺(BEC)の脅威と企業に求められる対策

【参考情報】

BBSecでは

当社では様々なご支援が可能です。お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。当当サイトSQAT® jpのお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。後日営業担当者よりご連絡させていただきます。

SQAT® 脆弱性診断

BBSecの脆弱性診断は、精度の高い手動診断と独自開発による自動診断を組み合わせ、悪意ある攻撃を受ける前にリスクを発見し、防御するための問題を特定します。Webアプリケーション、ネットワークはもちろんのこと、ソースコード診断やクラウドの設定に関する診断など、診断対象やご事情に応じて様々なメニューをご用意しております。

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SQAT® ペネトレーションテスト

「ペネトレーションテスト」では実際に攻撃者が侵入できるかどうかの確認を行うことが可能です。脆弱性診断で発見したリスクをもとに、実際に悪用可能かどうかを確認いたします。

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    テレワーク環境に求められるセキュリティ強化

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    テレワークセキュリティ2.26更新版サムネイル

    テレワークの普及に伴い、セキュリティ対策の重要性が一層高まっています。特に、在宅勤務やモバイルワークなど、多様な働き方が浸透する中で、情報漏えいや不正アクセスといったリスクへの対応が求められます。本記事では、最新のガイドラインや具体的な対策を踏まえ、テレワーク環境におけるセキュリティ強化のポイントを解説します。

    テレワークの現状とセキュリティの重要性

    総務省によれば、テレワークは「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。

    テレワークを推進する総務省が刊行する「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」では、テレワークの形態を自宅を勤務場所とする「在宅勤務」、出先や移動中に作業する「モバイル勤務」、本社から離れた営業所やシェアオフィスなどを利用する「サテライトオフィス勤務」の3つに分類しています。

    これらの働き方は柔軟性を提供する一方で、情報セキュリティの観点から新たな課題も浮上しています。特に、家庭内ネットワークの脆弱性や公共のWi-Fiを利用する際のリスクなど、従来のオフィス環境とは異なる脅威が存在します。

    テレワークのセキュリティの基本的考え方

    ガイドラインでは、クラウドサービスの活用やゼロトラストセキュリティの概念など、最新のセキュリティ動向を踏まえた対策が示されています。また、中小企業向けには「テレワークセキュリティに関する手引き(チェックリスト)」が提供されており、具体的な対策項目が整理されています。

    図:テレワークにおける脅威と脆弱性について

    (画像出典:総務省:「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」より一部抜粋)

    テレワークにおけるセキュリティ対策の基本方針

    テレワーク環境のセキュリティ対策は、「ルール」「人」「技術」の3つの要素のバランスが重要です。総務省のガイドラインでは、以下のポイントが強調されています。

    • ルールの整備:情報セキュリティポリシーの策定や、テレワーク時のデバイス使用に関する規定を明確にする
    • 人への教育:従業員に対する定期的なセキュリティ教育や訓練を実施し、フィッシング詐欺やマルウェアへの対処方法を周知する
    • 技術的対策:VPNの導入や多要素認証の活用、最新のセキュリティパッチの適用など、技術的な防御策を講じる

    テレワーク環境下の人を狙ったサイバー攻撃

    総務省ガイドラインが示す「ルール」「人」「技術」の中でも、特に忘れてはならない重要ポイントは人の問題です。令和元年度の情報通信白書においても、「ソーシャルエンジニアリング」が再び攻撃の中心になるという予測を紹介しています。

    ソーシャルエンジニアリング対策としては、警視庁が「そのテレワーク、犯罪者が狙ってる!」と題する動画や、短編アニメ「テレワーク勤務時のセキュリティ基本篇」、啓発チラシ「ちょっと待って! そのテレワーク、セキュリティは大丈夫?」などを公開配布しています。

    オフィスでみんなが席を並べて仕事していたら、いつもと違うメールが着信しても「こんなメールが届いた」と、隣席の同僚や情報システム部門に気軽に相談することができます。しかしテレワークではそれが簡単ではなくなります。人間心理の隙間を衝くような標的型攻撃メールなどに今まで以上に警戒が必要です。

    また、政府のセキュリティ機関である内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は2020年4月、「テレワークを実施する際にセキュリティ上留意すべき点について」と題したテレワークに関する注意喚起を行っています。

    NISCの注意喚起では、「政府機関」「重要インフラ事業者」「国民一般」の3つのカテゴリー毎に、セキュリティポリシーやルール整備、ICT環境の準備、安全な接続方法であるVPNやリモートデスクトップなどの技術活用にあたっての留意事項、遠隔会議システムの安全な利活用、機器のアップデートやパスワードの複雑化など、必要なセキュリティ対策がリストアップされています。

    さらに、ノートPCの支給が間に合わずに個人端末の使用を許す場合もあり、これまでのような情報システム・IT部門による一括管理は難しくなりました。情報システム部門が個人端末に対してどこまで管理できるかの法的な問題もあります。また、一般社員に向けて、テレワークのセキュリティの留意点を告知したとしても、すべての社員がその内容を理解できているとは限りません。従業員向けの通達の意味が分からない場合、そのまま放置される可能性はどの程度あるでしょうか。それがリスクにつながるのであれば、通達の方法を変更するべきです。全従業員による確実な実施を徹底するため、情報システム部門からの通達内容において、使用されているIT用語は読み手のスキルレベルに対して適切か、耳慣れないと想定される言葉やプロセスは図を使用するなどして誰にでも等しくわかるような説明がなされているか、といった観点の校閲を設けるくらいの心構えが必要です。

    テレワーク環境下でのセキュリティ対策

    テレワーク環境の安全性を確保するためには、以下のようなポイントでセキュリティ対策を実施することを推奨いたします。

    • デバイスの管理:業務用デバイスと私用デバイスを明確に区別し、業務データの漏えいを防止する
    • ネットワークの安全性確保:自宅のWi-Fiには強固なパスワードを設定し、公共のWi-Fi利用は避ける
    • データの暗号化:重要なデータは暗号化し、万が一の情報漏えいに備える
    • アクセス権限の管理:必要最小限のアクセス権限を設定し、不正アクセスを防ぐ
    • 定期的なセキュリティ診断:専門機関によるセキュリティ診断やペネトレーションテストを実施し、システムの安全性を確認する

    技術的な対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識の向上や定期的なルールの見直しを行い、組織全体で継続的にセキュリティ対策を強化していくことが重要です。

    セキュリティ診断もリモートで実施可能

    情報システム部門が安全のためにできることがもうひとつあります。それは、リモートワーク環境を構成するVPN機器や認証サーバ、クラウド環境の接続拠点といったアクセスの出入り口における設定不備や、不正アクセスの原因となりうるセキュリティ上の欠陥の有無について、ハードやソフト面のセキュリティ診断を行うことです。

    Webアプリケーションの脆弱性診断や、脆弱性が悪用された場合のインパクトを事前に調べるペネトレーションテストといったセキュリティ診断の多くは、インターネットを介して行うことができます。新型コロナ感染症対策でテレワークを経験した企業では、今後もテレワークを希望する人が少なくありません。今後もこうした働き方を継続するのであれば、一度は脆弱性の有無を確認し、安全な環境で業務を行えるよう環境を整備することをお勧めします。

    まとめ

    ・新型コロナウイルス感染対策にともない、多くの組織が拙速にテレワークに移行したためセキュリティの課題がある。
    ・まずは警視庁や内閣サイバーセキュリティセンターの注意喚起を参照。
    ・総務省の出している詳しいガイドラインに沿って「ルール」「人」「技術」を見直そう。
    ・VPN機器やクラウド環境などテレワーク環境全体のセキュリティ診断を受けよう。

    【関連情報】

    ●<インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長

    ●<コラム>「ゼロトラストアーキテクチャ」とは?

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    パブリッククラウド利用システムにおける
    セキュリティ診断

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    SQAT® Security Report 2019年9月号

    雲とネットワークのイメージ図

    ※本記事は、SQAT®Security Report 2019年 9月号の記事、
    「パブリッククラウド利用システムにおけるセキュリティ診断」の一部抜粋になります。

    増えるパブリッククラウド利用とセキュリティ事情

    クラウドサービスは、自社でサーバを抱える必要がないことから、導入および運用コストが大幅に削減できるため、今や企業ネットワーク環境構築における選択肢の1つとなっており、オンプレミスからクラウドに移行する企業は増えている(下グラフ参照)。その際、スケジュール等の事情によりシステムを見直す余裕がなく、そのままの状態で移行せざるを得ないケースもあるのが実情だろう。しかしながら、開発や改修後のリリース前にシステムの脆弱性診断を実施すべきであるのは、クラウドへの移行時も例外ではない。

    クラウドサービスの利用状況

    出典:総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」(令和元年5月31日公開)

    自組織が業務用のパブリッククラウド(AWS、Microsoft Azure等)を利用している場合、ハードウェアまではクラウド事業者が管理しているが、OSおよびそれより上の層については利用企業側に責任があることを忘れてはならない。パブリッククラウド上のWebアプリケーションやECツール等で使用しているOS、ミドルウェア、アプリケーションといった各コンポーネントは、経年により脆弱性が発見される宿命だ。セキュリティ対策として、定期的にそれらを更新する必要がある。

    オンプレミスと同様、パブリッククラウド上にシステムを構築している場合も、自組織のシステムが情報漏洩や改竄、DoS攻撃等の被害に遭う危険性があるかどうか、適宜把握しておく責任がある。このため、パブリッククラウド上のシステムにおいても、定期的に脆弱性診断を実施するのが望ましい。

    パブリッククラウド向け脆弱性診断の必要性

    パブリッククラウド向けでない一般的なリモート診断では、ファイアウォール越しで実施するため、ファイアウォールでアクセスを許可しているポートに対してしか診断できない。これに対し、パブリッククラウド向け診断では、直接アクセスできるセグメントに対して実施するため、管理用ポート等、ファイアウォールでアクセス制限されていることの多いポートに対しても診断可能だ。

    インシデントのリスクは、外部に公開されたシステムにとどまらないことを忘れてはならない。例えば、AWSを社内インフラとして使用している企業があるとする。そういったシステムは (…続き)


    本記事はここまでになります。

    この記事の続きでは、テレワークの隙を狙った攻撃の脅威をご紹介し、それに対して企業がどのように脆弱性対策に取り組むべきかということについて解説しています。ぜひご一読ください。

    ※参考(続き)
    contents
    3.CISベンチマークを利用したセキュリティチェックの必要性
    4.診断を受けるにあたっての注意点

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    ニューノーマルに求められる脆弱性対策

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    SQAT® Security Report 2021年春夏号

    テレワークをする女性(アイキャッチ画像)

    ※本記事は、2021年3月公開SQAT®Security Report 2021年 春夏号の記事、
    「巻頭企画:ニューノーマルに求められる脆弱性対策」の一部抜粋になります。

    株式会社ブロードバンドセキュリティ
    高度情報セキュリティサービス本部 本部長 大沼 千秋

    去る2020年は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のまさに世界規模なパンデミックにより、我々の生活ばかりでなくビジネスをも大きく変革させた一年だった。中でもテレワーク、リモートワークといった遠隔による勤務形態の整備は、従来様々な理由から普及が伸び悩んでいたが、ここ一年ほどの間で加速度的に普及しつつある。また、ビジネスにおけるIT環境も、クラウドシフトが一気に進行している。

    従来のオンプレミス型からクラウド型へのシステム構築・運用環境の移行は、様々な企業のIT戦略において、優先度の高い課題といえるだろう。そして、テレワーク、クラウドシフトが進んでいく中で、新たなセキュリティ上の問題が顕在化してきていることも事実だ。特に、急ピッチでこれらの環境を整備し、運用開始しているケースでは、以前よりもサイバーセキュリティ脅威および危険性は増大しているといっても過言ではない。本稿では、アフターコロナにおけるニューノーマルを見据えた企業における脆弱性対策に焦点を当て、どういったことを推進していくことが必要か解説していきたい。

    テレワークとクラウドシフトに伴う脅威

    企業のネットワークやOAシステムといったITインフラには、既に様々なセキュリティ対策が講じられているものと思われる。このセキュリティ対策の大原則は、インターネットとの境界を防御するという考え方に基づいており、ファイアウォールによるアクセス制御、攻撃検知のための侵入検知・防御システム(IDS・IPS)、DMZ(DeMilitarized Zone:非武装地帯)を用いた公開システムの区分、安全なWeb閲覧のためのWebプロキシ、マルウェア対策ツール、EDR(Endpointo Detection and Response)による監視、といった対策を組み合わせることによるセキュリティの確保を意味する。

    ところが、昨今のテレワーク、クラウドシフト(左下・右下グラフ参照)で在宅による業務環境の提供が不可欠となったことにより、社内の環境は一定のセキュリティが確保されているので安全である、という前提が崩れてきている。本来であればインターネットから接続できない各種業務システムへのアクセス許可や、業務における各種情報を共有するためのクラウドストレージサービスの利用、営業活動における情報管理のためのCRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)の導入や、グループウェア等に代表されるSaaS型クラウドサービスの活用等といった具合に、業務システムが様々な領域へと進出し、多様化してきていることから(下イメージ)、セキュリティ対策としては一箇所だけを守っていれば安全である、という常識は既に覆っていると考えて間違いない。

    例えば、テレワーク導入を急ピッチで進めている中で、 (…続き)


    本記事はここまでになります。

    この記事の続きでは、テレワークの隙を狙った攻撃の脅威をご紹介し、それに対して企業がどのように脆弱性対策に取り組むべきかということについて解説しています。ぜひご一読ください。

    ※参考(続き)
    contents
    2.ゼロトラストによるセキュリティの確保
    3.セキュリティ状態の可視化と有効性評価
    4.ニューノーマルに伴うセキュリティのあり方

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    <インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長【後編】

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    脆弱性診断に携わる傍ら、セキュリティ人材の育成や情報配信、提言活動の中心的な役割を果たされてきたScanNetSecurity編集長 上野宣氏に、昨今セキュリティ事情を率直に語っていただいたインタビュー。後編をお届けする。

    (聞き手:田澤 千絵/BBSec SS本部 セキュリティ情報サービス部 部長)

    前編→


    実はそこにあるリスク

    ━━ネットワーク脆弱性診断の場合は、暗号化周りの脆弱性が割と多く検出されます。攻撃で実際に狙われる可能性はどのくらいでしょうか。

    上野:脆弱性の中では比較的対応に余裕が持てるタイプと言えます。しかし、長い目で見ると、暗号アルゴリズムの問題によって解読されるとか、中間者(Man-in-the-Middle)攻撃をされるといった危険は否めません。リプレイス等のタイミングで、アルゴリズムの見直しや最新プロトコルへの対応をタスクに入れた方がいいです。

    ━━例えば金融系の企業ですと、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカード業界のセキュリティ基準)に準拠しなければなりませんが、一般的にはコンプライアンス面で準拠必須な規定がありません。

    上野:強制力があるものはないですね。OWASPもASVS(Application Security Verification Standard:アプリケーションセキュリティ検証標準)を出してはいるのですが。

    ━━GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)も今はあまり話題に出ませんね。

    上野:結局、国内でビジネスしている企業にはあまり関係ないとか、せいぜいサードパーティCookieの扱いに注意するくらいだということで。一時期より騒がれなくなりましたね。

    ━━日本で強制力がある法律と言ったら個人情報保護法くらいでしょうか。

    上野:攻撃されたことに対して開発会社が訴えられたことがありましたね。2014年だと思いますが、開発会社がちゃんとセキュリティを担保しなかったという理由で負けて、損害賠償金を支払うことになった。

    開発会社は、きちんとした倫理観を持って自分たちが良いと認めるものを納めることが必要です。自転車だったらちゃんと規格があるのに。国際団体がWebアプリケーションの品質保証みたいなものを決めてくれたらいいのですが。

    ━━Webアプリケーション開発を依頼する際、開発会社にセキュリティを担保してもらうにはどうしたらいいでしょう。

    上野:お勧めは、私などが作ってOWASPのセキュリティ要件定義書ワーキンググループで出している 要件定義書です。

    依頼側は、内容がわからなくてもいいから、これをそのまま持って行って、「これを作れますか」「これが大事だと言われたが、説明してもらえますか」という問いに対して話ができる開発会社を選ぶ。そうでない開発会社はやめたほうがいい。依頼企業がこのドキュメントを使ってくれるようになるといいなと僕は思いますね。

    「これを守ると高くなりますよ」っていいように言われるんですけどね。「高くなる」って誰が言い始めたんですかね。セキュアに作るか、作らないかであって、高い部品が要るわけでもないのに。

    ━━対応できる技術者が高いんですかね。

    上野:高くはなるでしょうね。でも、そこぐらいでしょ。安い人にお願いした結果ハリボテが出てきたら、それはユーザが騙されていることになる。

    ━━実際にセキュリティ要件に即した開発になっているかの見極めはどうしたらいいでしょう。

    上野:受け入れテストで脆弱性診断を実施するといいでしょう。欠陥住宅の事件があった時、住宅を鑑定する資格を持った人がクローズアップされましたよね。部材が入っているか、接着剤がどうか等を専門的に見てくれる人。受け入れテストはそういった観点で重要なんじゃないかと。普通にアプリケーションを何回も見たって、機能がちゃんと動いているくらいしか確認できないですよね。キッチンにコンロが三つあります、火がつきますくらいしか分からないのと一緒です。だから、ちゃんとプロの目で見極める必要があると思います。

    ━━ネットワークの場合はいかがですか。特に、オンプレミスでネットワーク環境を構築する際に社内ネットワークの診断をやる企業は……

    上野:社内LANのリソースに対して実施する企業は、ほぼ皆無だと思います。で、サポートが切れたWindowsサーバがまだ動いていたりします。「イントラネットだから別にいいですよね」とよく言われます。それが脅威だと思われていないのが脅威かなと思います。

    リスクの算出方法として、「脅威の大きさそのもの」ばかりでなく、「発生する確率」という要素もあるため、例えば、同じ脅威でもインターネット上より、内部ネットワークの方が発生確率は低い、ということになります。しかし、もう一つ別の要素として、機密性や可用性との兼ね合いである「資産の価値」を考えてみます。例えば、インターネットにある僕個人のブログと社内LANにある機密情報入りのサーバを比べたら、今度は当然、後者が守られるべきとなるでしょう。掛け算していくと、最終的に逆転することがあるはずです。

    ━━当社もよくお客様に、「うちのWebサイトは個人情報扱ってないから診断は必要ない」と言われます。

    上野:重要な情報があるか否かという判断軸になりがちですが、実は攻撃者が欲しいものとして、そのサーバ自体の信頼度がある。そこを踏み台にすると便利、という観点。私も侵入するときに踏み台をよく使います。乗っ取られた結果、次に乗っ取られる先、次に攻撃される先が出てきます。自分たちのオフィスの中に攻撃者を招き入れた結果、自分たちが加害者となって攻撃が行われる。それは駄目ですよね。

    ━━絶対に守らなければならないものと、リスクを多少許容してもかまわないものの切り分けができていないケースが多いように思います。

    上野:リスクアセスメントが必要ですね。まず、何の資産があるかを知ることじゃないでしょうか。物理的、電子的、無形物、色々あると思う。何を守らなきゃいけないかをまず洗い出す必要がある。

    ━━業務におけるセキュリティというのはどうでしょう。棚卸をするにしても、セキュリティを考慮しながら業務する企業は実際には少ないと思っています。重要情報をそれと認識していなかったり。

    上野:そこは、教育をしなきゃいけないと思います。上場企業だと全社員が受けるインサイダー情報のトレーニングがありますね。何を言っちゃいけなくて、何を漏らしちゃいけないのか。「これ重要だよね」という感覚は人によって全然違うので、それは企業が見解として示さなくてはいけない。

    ━━従業員のセキュリティ教育はどれぐらいの頻度で十分だと思いますか。

    上野:最初は結構頻繁にやるべきだと思います。というのは、セキュリティにいちいち気をつけていたらしんどいので、企業の文化として根付くまで浸透させなくてはいけないからです。それ以降は、年に1度とか、追加教育を思い出したようにやるとか。人はどんどん忘れていきますので。

    どうなるリモートワークセキュリティ元年

    ━━セキュリティは自然災害によっても変わりますし、流行り廃りもあります。今後1~2年はどういったことが予想されるでしょう。

    上野:やはりリモートワーク絡みのセキュリティ問題が噴出するんじゃないでしょうか。自分のPCから漏れる、会社に侵入される、リモートワークのツールがフィッシングに悪用される、とか。今年は「リモートワークセキュリティ元年」かもしれないですね。

    ━━リモートワークセキュリティ元年!いいですね、それ。APTはどうでしょう。これからも減ることはないのではないかと。

    上野:信用しやすくなるという観点だと、個人のPCに侵入する手口として、その人と仲良くなった後、オンラインミーティング系のツールだと偽ってインストールさせるのがますます増えるでしょうね。例えば相手に、「うちの会社、このツールじゃなきゃ駄目なんだよ。今日これから会議だから、すぐ入れてくれない?」って言われたら、絶対インストールするでしょ。しかもユーザは気づいてないかもしれない。僕もペネトレーションテストで使う手です。

    ━━あと、今まで注目されていなかったシステムや環境が注目されるとか。例えば、Zoomは爆発的にユーザが増えましたよね。脆弱性がこれまで一切出てこなかったツールで、今後はうじゃうじゃ出てくる、というような。

    上野:今まで誰も調べていなかったのに、急に流行ったツールの宿命だと思います。Zoomはニュースにも取り上げられましたが、逆にすごくセキュリティに前向きな会社という印象を抱いてます。バグバウンティのプログラムも始めた。相当自信がないとできないことです。Zoomはこの3ヶ月~半年ですごくセキュアになると思います。

    ━━SNSはどうですか。システム自体というより、攻撃の入り口として利用されるとか。

    上野:こんな中、LinkedIn等を利用して転職を考える人もいると思います。SNS経由でどこかを装って送られてくるっていうのは、非常に多そうですね。僕にもよく「パスワード漏れましたよ」って来ています。「あなたのSNSを半年前から見ています」というようなのです(笑)。

    ━━従業員がバラバラな場所で仕事をしている今、企業としてどのようなサポートをするのが、セキュリティの維持につながるでしょうか。

    上野:リモートワークでも何でも、必要な環境を企業が提供することが大事です。ユーザ任せではいつか破綻します。特にPCと、中に入っているソフトも管理できる状態にするのが大切。自宅のルータやネットワークの問題は、そこまで大きな脅威ではない。やはりコンピュータ自体が安全であることが一番だと思います。繰り返しになりますが、リモートワークは今後増えることはあっても絶対なくならないので、従業員分の予算をちゃんと確保していただきたいです。

    ーENDー 前編はこちら


    上野 宣 氏
    株式会社トライコーダ代表取締役
    ペネトレーションテストやサイバーセキュリティトレーニングなどを提供。OWASP Japan 代表、情報処理安全確保支援士集合講習講師、一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会GM、ScanNetSecurtity編集長などを務め、人材育成および啓蒙に尽力。『Webセキュリティ担当者のための脆弱性診断スタートガイド ? 上野宣が教える情報漏えいを防ぐ技術』、『HTTPの教科書』ほか著書多数。

    田澤 千絵
    株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)
    セキュリティサービス本部 セキュリティ情報サービス部 部長
    黎明期といわれる頃から20年以上にわたり情報セキュリティに従事。
    大手企業向けセキュリティポリシー策定、セキュリティコンサルを経て、現在は脆弱性診断結果のレポーティングにおける品質管理を統括。
    メジャーなセキュリティスキャンツールやガイドライン、スタンダード、マニュアル等のローカライズ実績も多数。


    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
    サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

    <インタビュー>上野 宣 氏 / ScanNetSecurity 編集長【前編】

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    長年、脆弱性診断に携わり、セキュリティ人材の育成や情報配信、提言活動における中心的な役割を果たされてきた上野宣氏。ScanNetSecurity編集長として様々な取材もされてきた同氏に、この度、弊社よりセキュリティ事情について気になるあれこれをざっくばらんにお聞きする機会を得た。

    (聞き手:田澤 千絵/BBSec SS本部 セキュリティ情報サービス部 部長)

    後編→


    リモートワーク環境のセキュリティ対策よもやま

    ━━新型コロナウイルス対策のため、様々な企業が急に追い詰められ、全然準備もできてないままリモートワークに踏み切ったところも多いと思います。セキュリティ上の問題噴出や、実際に侵害されたというニュースも目にしますね。

    上野:私がコンサルしている会社で、比較的すんなりリモートワークに移行できた会社があります。元々は一切リモートワークを許可しておらず、VPNもなかったにもかかわらず、です 。そこは、いわゆるゼロトラスト*11 を体現していて、開発も含めビジネスを全てクラウド上で行っています。そういう環境を2年くらいかけて作りました。結果、PCを自宅に持ち帰ってもVPNなしでそのまま仕事ができる感じです。ゼロトラスト的なネットワークがちゃんと作れれば全然問題なく移行できることが、今回はっきりしたと思いました。

    でも、ほとんどの会社はそういうわけにいかず、おそらく全て会社のイントラネット上にある。例えばActive Directoryやファイルサーバ。デスクトップに色々なファイルや開発ツールがあったり。

    ━━では、ゼロトラストでなく従来型のネットワークの場合は、どうすれば安全にリモートワーク環境に移行できるでしょうか。

    上野:やはりVPNでしょう。ただし、VPNサーバがだいぶ前に設定されたままだったり、プロトコルが古かったり、IDとパスワードを共有していて誰が接続したかわからなかったり、といった問題に注意しなければならない。それに、全社員が接続できるVPNサーバとなると、急には対応できない会社が多いと思います。

    なので、AWS、Google等のクラウドを利用してVPNサーバを立て、そこを回線として接続するのがいいでしょう。結構安く、早くできると思います。

    ━━AWS利用の場合、責任分界点と言いますか、クラウドサービスベンダが担保してくれる部分と、ユーザが行わなくてはならないセキュリティ対策がありますよね。どう注意したらいいでしょうか。

    上野:CISなど、公開されているベストプラクティスを参照していただくのがいいでしょう。ちまたに溢れている個人のブログを漁って調べるという手もありますが、ちゃんと知識を持ったセキュリティベンダにサポートしてもらうのが一番です。わからないのを自分たちで何とかするのではなく、会社の資産を守る大事なところですので、補正予算を組み会社をあげて緊急でやるべきです。

    ━━コロナウイルス対策で生産性が落ちている会社もある中、追加でセキュリティ費用を捻出するのは難しいと想像しますが……

    上野:経営者がどう捉えるかですね。逆に、「オフィスいらないな」と考える経営者もいるわけで、その分リモートワーク環境に投資することもあると思うんです。今まで手間かけて机と椅子を用意していたのは何だったの、みたいな。このままコロナの問題がゼロになることはないでしょうから、いかに早く環境を整えるかが、ビジネスで勝つために重要ではないでしょうか。

    ━━先ほど上野さんがおっしゃったゼロトラストネットワークを実装する場合は、アクセス制御辺りが肝になりますか。

    上野:ID管理をしっかりしなくてはいけません。ゼロトラストを体現するためにIDaaS(アイディーアース:Identity as a Service。ID管理をクラウドで実施するサービス)を導入することで、アカウント管理をユーザ任せにせず、組織が管理する。海外だと、CISOのような感じでIDを管理する専門の役職もあると聞いたことがあります。

    ━━従業員に対しては、どのような注意をしておけばいいでしょうか。

    上野:パソコンは共有のものを使わない。ルータも最新のものを使う。人目につく公共の場では作業を行わない。あと、OSとアプリケーションのアップデート。昔から言われていることと同じです。 IPAが出している注意喚起は、割と簡潔で分かりやすいですね。

    ━━自宅環境でのリモートワークにあたり、環境を全て用意できない会社もあります。会社支給のPCでなく、自宅のPCを使用する場合の注意点は?

    上野:まず脅威として考えられるのは、マルウェア感染とか、攻撃者による遠隔操作とかですね。会社の重要情報をPCに置いてしまうと、盗まれる可能性が出てくる。さらに、会社にVPN接続するとか、会社の何らかのサービスにアクセスするとなると、そのIDやパスワードも盗られて中に侵入される危険性もある。

    もちろん、会社支給のPCならそういった事態が起きないというわけではありませんが、可能性は低い。資産管理ツールが入っていて余計なアプリケーションがインストールできないといった、ある程度の対策できるはずですから。

    ━━あと、懸念されるのはフィッシング系でしょうか。コロナウイルスに便乗したメール詐欺が増えています。

    上野:東日本大震災の時もそうでしたが、緊急事態があると、広く人々に関係のある事象が増える。例えば、コロナ対策で政府からの給付金をもらうために手続きがオンラインでできます、となると、「俺、関係あるな」となる。攻撃者は騙しやすいポイントをすかさず利用してきます。

    対策としては、許可されていないアプリケーションをインストールしないようにするとか、すべて疑ってかかるよう教育するとか、でしょうね。

    脆弱性診断ホンネトーク

    ━━上野さんご自身も、普段ペネトレーションテストや脆弱性診断を実施されていますが、当社のシステム脆弱性診断では、高リスク(当社基準)以上の脆弱性の検出が全診断件数の3割ほどにのぼります。この現状をどう思われますか。

    上野:脆弱性診断には相当長いこと関わっていますが、「全く世の中改善しないな」と思っています。僕らのアプローチが間違っているんじゃないかと思うぐらい。毎回、同じような脆弱性が出るし。

    ここ何年か、「興味がない人に、いかにセキュリティを届けるか」という僕のテーマがあるんですが、非常に難しい。だから、そういう人たちが意識しなくてもできるようにしなければいけない。例えば、Webアプリケーションでクロスサイトスクリプティングを直すのはプログラマではなく、フレームワークとかAPIを使うことで誰が作っても安全なものになるような環境にしていく。もちろん、セキュアコーディングというものが消えるわけじゃないが、たとえそれを知らなくても安全なものを作れる仕組みのほうが、僕は必要だと思っています。

    あとはWAF(Web Application Firewall)も含めて、全方位で担保できるもの。どんなひどいプログラムを書いても大丈夫なように、プラットフォームとかフレームワークとかWAFとか、各レイヤでなんとかできるようにするのがいい。

    ━━1つの対策だけじゃ守りきれないですから、多層防御は重要ですね。怖いのはゼロデイの脆弱性が見つかった時じゃないですか?

    上野:ゼロデイ攻撃がわかってからパッチが適用されるまでの間は、Webの場合はWAFで防御できる可能性もあります。セキュアコーディングでは対応できないかもしれないし、フレームワークのアップデートを待っていたら攻撃される恐れもあるので。

    フレームワークやライブラリのバージョン管理も大切です。そのためのOWASP Dependency Checkというツールなどがあります。

    ━━バージョン管理が徹底されていない会社はとても多いです。環境によってはアップデートできないというお客様もいらっしゃり、そうなると多層防御で、WAFやIPS/IDS入れてください、となると思います。

    上野:我々診断業界も変わらなきゃいけないかもしれないです。診断の結果、クロスサイトスクリプティングが出たことだけ言うのでなく、出ないようにするには業務をこう変えなくちゃいけないですよ、と。我々もクロスサイトスクリプティングを見つけるの、飽きたじゃないですか(笑)。

    そもそも最低限クリアしてしかるべきセキュリティレベルがあって、その上で脆弱性診断を受けてほしい。他の業界でもそうじゃないですか。安全な車を作った上で衝突テストをやるからいいのであって、適当に作った車で衝突テストしたってバラバラになるに決まってるじゃないですか。安全基準どおりのフレームワークで作った上で、「絶対安全なはずだけど念のためテストしてほしい」となるのが、脆弱性診断の本来あるべき姿だと思います。

    ━━同じ組織内でポリシーが定まっていない場合もあります。例えば、グループ企業同士を診断したら、A社はセキュリティの堅牢なシステムなのに、同じグループ傘下のB社は穴だらけだった、というような。

    上野:そもそも共通のルールやフレームワークがない組織が多い。でも、今後作るものについてだけでも対応していけば、5年後には良くなっているかもしれない。たとえ現状を変えるのは難しくても未来は変えられると思うので、そこは考えていただきたいですね。これを機に、リモートワークを適切に推進して、セキュリティ対策を「コストではなく投資だ」と言える会社が生き残っていくのではないでしょうか。

    ー後編へ続くー


    話し手 / 上野 宣 氏
    株式会社トライコーダ代表取締役
    ペネトレーションテストやサイバーセキュリティトレーニングなどを提供。OWASP Japan 代表、情報処理安全確保支援士集合講習講師、一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会GM、ScanNetSecurity編集長などを務め、人材育成および啓蒙に尽力。『Webセキュリティ担当者のための脆弱性診断スタートガイド - 上野宣が教える情報漏えいを防ぐ技術』、『HTTPの教科書』ほか著書多数。

    聞き手 / 田澤 千絵
    株式会社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)
    セキュリティサービス本部 セキュリティ情報サービス部 部長
    黎明期といわれる頃から20年以上にわたり情報セキュリティに従事。
    大手企業向けセキュリティポリシー策定、セキュリティコンサルを経て、現在は脆弱性診断結果のレポーティングにおける品質管理を統括。
    メジャーなセキュリティスキャンツールやガイドライン、スタンダード、マニュアル等のローカライズ実績も多数。


    年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
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