【警告】CVE-2025-22457 脆弱性悪用事例と対策
–サイバー脅威の全貌–

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本記事は、Google Cloud Blogで2025年4月3日に公開された「Suspected China-Nexus Threat Actor Actively Exploiting Critical Ivanti Connect Secure Vulnerability(CVE-2025-22457)」の情報をもとに、脆弱性の概要、攻撃手法、最新の悪用事例、そして推奨対策について解説します。

瓦版号外記事(CVE-2025-22457悪用事例)サムネイル

はじめに

昨今、エッジデバイスやVPNシステムを狙ったサイバー攻撃が急増しています。その中でも、Ivanti Connect Secure(ICS)における脆弱性「CVE-2025-22457」が、2025年4月3日にIvantiによって公開され、実際に悪用されていることが確認されました。MandiantとIvantiの共同調査により、ライフサイクルが終了したICS 9.Xや、ICS 22.7R2.5以前のバージョンが標的となっています。

脆弱性の概要とその影響

CVE-2025-22457は、バッファオーバーフローに起因する重大な脆弱性です。攻撃者がこの脆弱性を悪用すると、リモートから任意のコードが実行可能となり、企業のVPNシステムに対して深刻なセキュリティリスクが生じます。対象は、ICS 22.7R2.5以前のバージョンおよび旧バージョン(ICS 9.X)で、攻撃成功時には不正アクセス、情報漏洩、システムの乗っ取りなどが懸念されます。

悪用事例と新たなマルウェアの動向

調査によると、初期の悪用は2025年3月中旬に確認されています。攻撃が成功すると、以下のような新たなマルウェアファミリーが展開されることが判明しました。

  • TRAILBLAZE
    シェルスクリプト形式のインメモリオンリードロッパー。システム内の特定プロセスに不正コードを注入する足がかりとなります。
  • BRUSHFIRE
    SSL_readのフックを利用するパッシブバックドアで、不正な通信を密かに行います。
  • SPAWNエコシステム
    SPAWNSLOTH、SPAWNSNARE、SPAWNWAVE など、連携してシステム内の不正操作やログ改ざんを実施するツール群です。

これらのマルウェアは、シェルスクリプトドロッパーを起点に、ターゲットプロセス内へ段階的に展開される仕組みとなっており、システム再起動後にも再展開される可能性があるため、持続的な監視と迅速な対策が求められます。

技術的な攻撃手法の解説

攻撃の初期段階では、シェルスクリプトが以下のような手順で実行されます。

  1. プロセスの特定
    ターゲットとなる/home/bin/webプロセス(特に、子プロセスとして実行中のもの)を検出
  2. 一時ファイルの生成
    /tmpディレクトリに、対象プロセスのPIDやメモリマップ、バイナリのベースアドレス、さらにマルウェア本体が格納された一連のファイルが作成される
  3. マルウェアの注入
    生成された一時ファイルを利用し、TRAILBLAZEドロッパーが実行。これにより、BRUSHFIRE パッシブバックドアが対象プロセス内へ注入される
  4. クリーンアップ
    一時ファイルや不要なプロセスは削除され、攻撃自体は非永続的な形で行われる

この攻撃手法は非常に巧妙であり、既存のパッチ対策や監視体制を回避するために設計されています。

脅威アクターとその背景

調査機関GTIG(Google Threat Intelligence Group)の報告によると、今回の攻撃は、中国関連の疑いがある諜報グループ「UNC5221」によるものと見られています。UNC5221は、過去にもゼロデイ攻撃やエッジデバイスへの不正侵入を実施しており、今回の攻撃でも従来の脆弱性を細かく解析した上で悪用していると評価されています。

推奨対策と今後の対応

MandiantとIvantiは、以下の対策を強く推奨しています。

  • 迅速なパッチ適用
    2025年2月11日にICS 22.7R2.6で公開されたパッチを、対象システムに速やかに適用すること
  • 監視体制の強化
    不審なコアダンプや、Integrity Checker Tool(ICT)の異常な動作が確認された場合、即座に対応する体制を整えること
  • セキュリティツールの活用
    内部および外部の監視ツールを併用し、システムの健全性を定期的にチェックすること

これらの対策により、攻撃によるリスクを最小限に抑え、企業全体のセキュリティレベルの向上が期待されます。

まとめ

CVE-2025-22457 の悪用事例は、エッジデバイスを狙った攻撃が日々進化している現状を示しています。企業や組織は、最新パッチの適用と継続的な監視を徹底し、サイバー攻撃に対する防御策を強化する必要があります。今後も最新のセキュリティ情報に注意を払い、信頼性の高い情報源からのアドバイスを参考にすることが重要です。

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    【緊急】Apache Tomcatの脆弱性 CVE-2025-24813-PoC公開&攻撃実例、迅速な対応を!-

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    お問い合わせ

    お問い合わせはこちらからお願いします。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

    はじめに

    Apache Tomcatは、多くのWebアプリケーションで利用されている人気のサーブレットコンテナですが、最新の脆弱性CVE-2025-24813が重大なリスクとして報告されています。既にPoC(Proof of Concept)が公開され、実際に攻撃に悪用されている事例も確認されています。これにより、リモートコード実行(RCE)や情報漏洩といった深刻な被害が発生する可能性が高まっています。

    脆弱性の詳細

    CVE-2025-24813の概要

    ・概要

    Apache Tomcatに存在する脆弱性で、ファイルパスの正規化の不備を突くことで、攻撃者が悪意のあるファイルをアップロードし、シリアライズ済みセッションのデシリアライズ処理時に任意のコード実行が可能となります。

    ・攻撃シナリオ

    攻撃者は、PUTリクエストを利用して、悪意のあるシリアライズ済みJavaセッションファイル(PoCとして公開済み)をTomcatのセッションストレージにアップロードします。その後、GETリクエストでJSESSIONIDを指定することで、Tomcatがこの不正なセッションファイルをデシリアライズし、悪意のあるコードが実行されます。

    ・リスク

    認証不要でリモートからコード実行が可能なため、攻撃者によってシステム全体が乗っ取られるリスクが高いです。さらに、アップロードされたファイルは、従来のセキュリティ対策(WAF等)で検知されにくいという特徴があります。

    • CVSSベーススコア

    ※現状の具体的な数値は各セキュリティ情報サイト等をご確認ください。(本記事ページ下部【参考情報】ご参照)

    推奨対策

    1. パッチ適用とアップグレード
      • アップグレードの実施
      脆弱性が修正された最新バージョンへのアップグレードを速やかに実施してください。Apache Tomcat のバージョンアップにより、脆弱性を根本的に解消できます。
    2. 設定変更による一時的な対策
      • デフォルト設定の見直し
      Webアプリケーションの設定ファイル(例:web.xml)で、デフォルトの書き込み機能を無効化するなど、一時的なセキュリティ強化策を講じることも有効です。
    3. セキュリティ管理の強化
      • 脆弱性管理プログラムの導入
      定期的な脆弱性診断と評価を行い、システムに内在する脆弱性を早期に検出し修正してください。
      • 管理者アクセスの制御
      管理者アカウントには多要素認証などの追加対策を実施し、アクセス権限を最小限に絞ることが重要です。

    緊急対応窓口のご案内

    万が一、CVE-2025-24813に関連する攻撃や不審な活動が自社内で確認された場合は、直ちに弊社緊急対応窓口までご連絡ください。迅速な対応と調査を通じて、被害の拡大を防ぐお手伝いをいたします。

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    まとめ

    Apache Tomcatの脆弱性CVE-2025-24813は、既にPoCが公開され攻撃に悪用されている深刻な問題です。お使いのTomcat環境が影響を受けている場合、速やかに最新パッチの適用やアップグレード、必要な設定変更を実施してください。また、万一の攻撃が確認された際には、弊社緊急対応窓口までお知らせいただくことで、迅速な支援を受けることが可能です。

    【参考情報】

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    脆弱性診断の基礎と実践!手動診断とツール診断の違いを徹底解説第3回:手動診断とツール診断、どちらを選ぶべきか?最適な診断方法の選び方

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    手動診断とツール診断、どちらが自社に最適なのか?本記事では、「脆弱性診断の基礎と実践」をテーマに全3回のシリーズのうちの最終回として、手動診断とツール診断の両者の特性や違いを比較し、診断方法を選ぶポイントを解説します。最適な診断方法を見極め、継続的なセキュリティ対策を実現しましょう。

    手動診断とツール診断の違い

    脆弱性診断には「手動診断」と「ツール診断」の2つの手法があり、それぞれに検出できる脆弱性の範囲、診断の精度、コストや時間といった違いがあります。適切な診断方法を選ぶためには、それぞれの特性を理解することが重要です。

    検出可能な脆弱性の範囲

    診断手法 検出可能な脆弱性の範囲
    ツール診断 CVE、OWASP Top 10などに基づき脆弱性を自動検出。ただし、システム固有の処理に関連する脆弱性の検出や複雑な攻撃手法には対応が難しい。
    手動診断 ツール診断では発見が難しいカスタムアプリの脆弱性や認証回避の脆弱性も検出可能。

    ツール診断はパターンマッチングに基づく脆弱性スキャンが主であり、定型的なセキュリティホールの発見に優れています。一方、手動診断はシステムごとの特性を考慮した診断が可能で、セキュリティエンジニアによる最新の攻撃手法に基づいたシナリオでの診断にも対応できます。

    診断の精度

    診断手法 精度
    ツール診断 短時間で広範囲の診断が可能だが、誤検知(False Positive)や見落とし(False Negative)が発生することがある。
    手動診断 セキュリティエンジニアが攻撃者視点で分析するため、より正確な脆弱性の特定が可能。誤検出を減らし、実際のリスクを精密に評価できる。

    ツール診断は効率的に多くのシステムをスキャンできるメリットがありますが、誤検出や見落としのリスクがあるため、結果を精査する必要があります。手動診断は攻撃手法を考慮したテストを実施できるため、リスクの深刻度を正確に判断しやすいのが特長です。

    コストと時間の違い

    診断手法 コスト 時間
    ツール診断 比較的低コストである。 短時間で診断可能(数時間~1日程度)。規模が小さいシステムであれば、数時間程度で診断が完了するため、定期的なスキャンが容易。場合によっては24時間いつでも診断が可能
    手動診断 専門のエンジニアが対応するためコストが高い。診断の範囲や内容によって費用が変動 時間がかかる(数日~数か月)。対象システムの複雑さにより診断期間が変動

    ツール診断は、コストを抑えて素早く診断ができる点が魅力ですが、ツールの設定や診断結果の解釈には専門知識が必要です。手動診断はコストや時間がかかるものの、外部のセキュリティ専門企業などに委託することによって、より精密な脆弱性評価が可能です。特に重要なシステムや高度なセキュリティ対策が求められる場面では有効です。

    診断方法を選ぶ際のポイント

    以下のポイントを考慮し、適切な診断方法を選ぶことが重要です。

    組織の規模やセキュリティ方針に合わせた選択

    組織の特徴 推奨される診断方法
    スタートアップ・中小企業(コストを抑え、効率的に診断したい場合) コストを抑えつつ効率的な診断を行いたい場合は、ツール診断が適している。自動化により定期的なチェックが可能。
    大企業・金融・医療・官公庁 高度なセキュリティ対策が求められるため、手動診断+ツール診断の組み合わせが効果的。特に重要システムには手動診断を推奨。
    クラウド環境を利用する組織 クラウド環境特有のリスクに対応するため、クラウドセキュリティに特化したツール診断と、必要に応じた手動診断の併用が理想的。

    どのような診断が必要か

    診断対象 推奨される診断方法
    WEBアプリケーション ツール診断で基本的な脆弱性をチェックし、重要な部分に手動診断を実施。特に、認証機能や決済機能の診断には手動診断が有効
    ネットワークセキュリティ ネットワークスキャンツール(例:Nmap、Nessus)を活用し、必要に応じて手動で詳細な分析を実施。ファイアウォールの設定やアクセス制御の確認が重要
    クラウド環境(AWS、AZURE、GCPなど) クラウド専用の脆弱性診断ツールを活用し、アクセス制御や設定ミスをチェック。特に、IAM(Identity and Access Management)の監査が必要な場合は手動診断も推奨

    ポイント:

    • Webアプリケーションの診断では、ツール診断でOWASP Top 10の脆弱性をスキャンし、カスタムアプリの診断には手動診断を追加するのが理想的
    • ネットワーク脆弱性診断では、ツール診断でポートスキャンを行い、不審な通信や設定の誤りを手動診断で確認する方法が有効
    • クラウド環境は設定ミスが原因の脆弱性が多いため、ツール診断を活用して広範囲をスキャンし、リスクの高い設定には手動診断を組み合わせることが推奨される

    手動診断とツール診断の組み合わせ

    手動診断とツール診断にはそれぞれメリットと限界があり、両者を適切に組み合わせることで、より高精度なセキュリティ対策が可能になります。ツール単独での診断では見落とされるリスクを補完し、組織のセキュリティレベルを向上させる戦略的なアプローチが求められます。

    両者を組み合わせることで得られるメリット

    スキャンの自動化と専門家による精査が両立

    • ツール診断で迅速に広範囲をスキャンし、重大なリスクが懸念される部分のみ手動診断を実施
    • 手動診断でツールの誤検出を精査し、実際のリスクを正確に判断

    費用対効果の向上

    • 低コストでツール診断を定期的に実施し、大きな問題が発覚した場合のみ手動診断を適用することで、予算を最適化

    診断結果の精度向上

    • ツール診断のスキャン結果を専門家が分析し、追加の手動診断を行うことで、より正確な脆弱性評価が可能

    効果的なセキュリティ診断戦略の構築

    手動診断とツール診断を組み合わせることで、組織ごとのセキュリティ要件に応じた診断戦略を構築できます。

    (1) 定期的なスキャン+詳細なリスク分析

    • ツール診断を月次・四半期ごとに実施し、継続的にセキュリティ状況を監視
    • 重大なリスクが検出された場合のみ、対象システムの手動診断を実施して詳細分析

    (2) システムの重要度に応じた診断手法の選択

    • 基幹システム・決済システムなどの重要システム
      手動診断を優先し、高精度な診断を実施
    • 一般的なWebアプリ・社内システム
      ツール診断で定期的にチェックし、基本的なリスクを管理

    (3) インシデント対応と診断の連携

    • 過去のセキュリティインシデントの発生状況を分析し、手動診断で重点的にチェックすべき領域を特定
    • ツール診断のログを蓄積し、将来の診断方針に反映

    適切な脆弱性診断サービスの選び方

    診断会社を選ぶ際のポイント

    脆弱性診断を外部に委託する場合、診断会社の選定は重要な要素となります。まず、診断の実績を確認し、自社の業界やシステムに適した経験があるかをチェックしましょう。特に、金融・医療・ECなどの高いセキュリティが求められる分野では、業界特有のリスクを理解している診断会社が望ましいでしょう。次に、対応範囲を確認し、Webアプリ、ネットワーク、クラウド環境など、自社のシステム構成に適した診断を提供できるかを見極めます。また、診断後のサポート体制も重要なポイントです。診断結果のレポート提供だけでなく、脆弱性修正のアドバイスや再診断が可能かどうかも確認し、長期的なセキュリティ強化に役立つパートナーを選びましょう。

    費用対効果を考慮した最適な診断プランの検討

    脆弱性診断のコストは組織にとって大きな課題ですが、単純に安価なサービスを選ぶのではなく、費用対効果を考慮した診断プランの選定が重要です。まず、診断の頻度と範囲を明確にし、必要最低限のコストで最大の効果を得られるプランを検討します。たとえば、定期的な診断が必要な場合はツール診断を活用し、重大なシステムについては手動診断を実施する組み合わせが有効です。また、診断会社ごとに料金体系や提供サービスが異なるため、複数社のプランを比較し、自社に最適なものを選択することが求められます。さらに、初回診断の割引や無料トライアルなどを活用することで、コストを抑えつつ診断の質を確認する方法も有効です。

    まとめ:企業にとって最適な診断方法を選択する

    脆弱性診断を効果的に活用するためには、自社のシステムやセキュリティ方針に適した診断方法を見極めることが重要です。コストを抑えながら広範囲をスキャンできるツール診断、高度な攻撃手法にも対応可能な手動診断、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが求められます。また、企業の業種やシステムの重要度によって、手動診断とツール診断の組み合わせを検討することが望ましいです。

    さらに、脆弱性診断は一度実施すれば終わりではなく、継続的なセキュリティ対策が必要です。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、新たな脆弱性が発見される可能性があるため、定期的な診断と適切なセキュリティ対策の実施が欠かせません。企業のセキュリティレベルを維持・向上させるために、継続的な診断計画を立て、適切な対策を講じることが重要です。

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    ―第1回「手動診断のメリットとは?」はこちら―
    ―第2回「ツール診断のメリットとは?」はこちら―


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    【セキュリティガイドライン6.0】実践!脆弱性診断で守るクレジットカード決済セキュリティ対策ガイド

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    お問い合わせはこちらからお願いします。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

    はじめに

    昨今、キャッシュレス化の推進とともにクレジットカード決済の利用が急増しています。日本では2025年6月までにキャッシュレス決済比率40%を目指す施策が進行中ですが、依然としてクレジットカード決済はキャッシュレス決済全体の約83.5%を占め、消費者や加盟店にとって非常に重要な決済手段です。しかし、その一方で情報漏えいや不正利用、特にECサイトなど非対面取引における不正利用被害は深刻な問題となっています。本記事では、「クレジットカード・セキュリティガイドライン【6.0版】」に基づく対策のうち、特に「脆弱性診断」の視点に着目し、決済システムやWebサイトにおけるリスクの検出とその対策の必要性、具体的な診断手法についてご紹介します。

    【関連ウェビナー開催情報】
    弊社では4月2日(水)13:00より、「今さら聞けない!PCI DSSで求められる脆弱性診断-いよいよ未来日付要件が有効に!PCI DSSv4.0での脆弱性診断実施におけるポイントとは-」と題したウェビナーを開催予定です。PCI DSSv4.0で求められる脆弱性診断・ペネトレーションテストについて今さら聞けない!?内容を徹底解説いたします。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。詳細はこちら

    クレジットカード決済の現状とセキュリティリスク

    利用環境の変化とリスクの多様化

    政府のキャッシュレス化推進施策により、決済手段が多様化する中、クレジットカードは依然として主要な決済手段です。一方、EC加盟店やMO・TO取扱加盟店では、Webサイトの設定不備や既知の脆弱性を悪用した第三者による不正アクセス、フィッシング攻撃によってカード情報が窃取される事例が相次いでいます。このような背景から、決済システムやWebサイトの脆弱性診断が不可欠となっており、早期にリスクを把握し対策を講じる必要があります。

    ガイドラインの役割

    クレジットカード・セキュリティガイドライン【6.0版】」は2025年3月、クレジット取引セキュリティ対策協議会によって公開されたガイドラインで、PCI DSSをはじめ、割賦販売法などの法令に基づく実務上の指針や各種技術・運用対策をまとめたものです。その中では、EC加盟店のシステムおよびWebサイトに対して「脆弱性対策」を講じることが強調されており、脆弱性診断やペネトレーションテストの実施が推奨されています。

    脆弱性診断の視点から見るセキュリティ対策の現状

    脆弱性診断の目的

    脆弱性診断は、以下の点でセキュリティ対策の強化に貢献します。

    • 設定ミスや構成不備の検出
      システム管理画面のアクセス制限やデータディレクトリの設定不備、ログイン試行回数制限の設定など、運用上の細かな不備を早期に発見。
    • ソフトウェアやプラグインの脆弱性の把握
      SQLインジェクションやクロスサイト・スクリプティングなど、Webアプリケーションの脆弱性診断を通じて、最新の攻撃手口に対応した対策が必要かどうかを判断。
    • 実際の攻撃リスクの定量評価
      ペネトレーションテストによって、実際に悪意ある攻撃者が侵入可能なポイントを実証し、リスクの深刻度を数値化することで、対応の優先順位を明確にします。

    ガイドラインに基づく対策と脆弱性診断の連携

    ガイドラインでは、EC加盟店に対して「脆弱性対策」の実施が求められています。具体的な対策例としては以下のようなものが挙げられます。

    • システム管理画面のアクセス制限と多要素認証の導入
    • データディレクトリの露見防止
    • 定期的な脆弱性診断とペネトレーションテストの実施
    • ウイルス対策ソフトの運用とシグネチャーの更新

    これらの対策は、診断結果をもとに、PCI DSS 準拠のための必要な修正や改善措置として実施されます。さらに、ガイドライン内では、不正利用対策としてEMV 3-D セキュアの導入や、リスクベース認証(RBA)の精度向上など、動的な対応策も推奨されています。脆弱性診断の結果を踏まえた上で、システムの安全性を確保するための重要な要素となります。

    具体的な脆弱性診断の手法と検査ポイント

    システム管理とアクセス制御の検査

    脆弱性診断で確認可能なポイント:管理画面ソフトウェアの既知脆弱性(例:古いバージョンの使用)や、デフォルトのパスワードが残っていないかなど、一般的なセキュリティ設定のチェックは脆弱性診断で検出できます。

    Webアプリケーションの脆弱性診断

    脆弱性診断で確認可能なポイント:SQLインジェクションやクロスサイト・スクリプティング(XSS)など、一般的なWebアプリケーション脆弱性は最新の診断ツールで検出可能です。ファイルアップロード機能における拡張子やファイルサイズの制限が設定されているかも、検証できます。

    補足:Webサーバーやアプリケーション全体の構成評価は、脆弱性診断だけでなく、運用監査も併用することが望ましいです。

    データディレクトリとサーバー設定の検査

    脆弱性診断で確認可能なポイント:公開ディレクトリに重要なファイルが誤って配置されていないかをチェックできます。重要ファイルの配置状況や非公開設定の適切性は、詳細な設定レビューや管理者へのインタビューを通じての評価もしくはペネトレーションテストが必要な場合があります。

    ウイルス対策とマルウェア検知の検査

    脆弱性診断で確認可能なポイント:ウイルス対策ソフトのシグネチャー更新状況や、定期的なフルスキャンが自動ログから確認できる場合があります。
    補足:実際の運用状況(更新頻度やスキャン実施の確実性)は、システム管理者への確認やログの監査が求められます。

    委託先管理と情報共有の確認:外部委託先のセキュリティ状況や、PCI DSS準拠、ガイドラインに基づく対策の実施状況は、脆弱性診断では検出できません。委託先との契約内容、セキュリティポリシーの文書、定期監査の結果などを通じて確認する必要があります。

    注 ) 上記の検査項目には、脆弱性診断で検出可能なものと、レビューや運用監査が必要なものが混在しています。脆弱性診断だけでは完全に評価できない項目については、管理者へのインタビューや設定ファイルのレビューなど、追加の確認が必要となります。

    脆弱性診断を実施するメリットと成功事例

    リスク低減と迅速な対応

    定期的な脆弱性診断により、システムの設定不備や新たに発見された脆弱性を早期に把握でき、対策の優先順位を明確にできます。実際に、あるEC加盟店では、脆弱性診断の結果を受けてWebサイトの設定見直しとパッチ適用を迅速に実施した結果、不正アクセスによる情報漏えい事故を未然に防いだ事例があります。また前述の通り、脆弱性診断だけでは検出できない項目もあります。あわせてコンサルティングサービスなどによる監査を利用することで、より堅牢なシステムを構築することができます。

    コンプライアンス遵守と信頼性向上

    ガイドラインに沿った対策を実施することで、PCI DSSや関連法令に準拠し、顧客や取引先からの信頼を得られます。その一環として、脆弱性診断および定期監査は第三者機関による評価や認証取得にもつながり、企業のセキュリティ体制の信頼性を向上させます。

    まとめ

    クレジットカード決済におけるセキュリティは、企業の信頼性や消費者の安全な利用環境に直結する重要な課題です。クレジットカード・セキュリティガイドライン【6.0版】に示されている対策の中でも、脆弱性診断はシステムの現状を正確に把握し、迅速な対策を講じるための基盤となります。

    定期的な脆弱性診断やペネトレーションテストを通じ、設定不備や最新の攻撃手法に対する脆弱性を検出し、必要な修正や改善措置を講じることで、不正利用被害のリスクを大幅に低減できるでしょう。また、診断結果をもとに、PCI DSSやガイドラインに沿った対策の実施が、企業のセキュリティレベル向上とコンプライアンス遵守に寄与するため、各企業や加盟店は今後も継続的に脆弱性診断を実施することが求められます。

    BBSecでは

    BBSecは、PCI SSC認定QSA(PCI DSS準拠の訪問審査を行う審査機関)です。準拠基準についての疑問や対応困難な状況があるといったような懸念・不安などは曖昧なままにせず、QSAにご相談いただくことをおすすめいたします。準拠に向けた適切な対応を検討するためのアドバイスや、事情に応じた柔軟な対応も可能です。

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    PCI DSS v4.0対応脆弱性診断サービス随時対応受付中!

    【※オプションサービス】脆弱性診断後対策支援サービス(VulCare)

    組織が直面するサイバー脅威やリスクに対して、迅速かつ効果的に対応するための助言型サービスです。最短で1ヶ月~年間の期間にわたってセキュリティの継続的な改善とリスク低減を実現するために、専門家による分析と提案を活用し、常に最新の脅威に対応するためにご活用ください。

    <サービス概要>

    診断結果をもとに、セキュリティの専門家が具体的な対策方法の助言を行い、最適な改善策を提供します。短期的な緊急対応から、長期的なセキュリティ強化まで、貴社のニーズに応じた柔軟なサポートを展開し、脆弱性から組織を守ります。
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    脆弱性診断の基礎と実践!
    手動診断とツール診断の違いを徹底解説
    第2回:ツール診断のメリットとは?

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    ツール診断は、短時間で広範囲をスキャンし、コストを抑えながら効率的にセキュリティ対策を実施できる手法です。本記事は「脆弱性診断の基礎と実践」をテーマに全3回のシリーズのうちの第2回として、脆弱性診断の手法の一つであるツール診断のメリットや適しているケースについて解説します。

    第1回「手動診断のメリットとは?」はこちら

    ツール診断とは?

    ツール診断とは、セキュリティベンダーが商用または自社開発した脆弱性診断ツールを使用し、システムやアプリケーションのセキュリティ上の脆弱性を自動的に検出する手法です。自動診断とも呼ばれ、比較的手軽に実施できるため、開発段階での利用や定期的な簡易診断としても活用されています。ただし、機械的な検査であるため、過検知や誤検知が含まれることが多く、その結果は技術者が補正することで正確な情報が得られます。ツール診断は、コストを低減しつつ最新のセキュリティ状態を保つ手段として有効です。

    ツール診断の一般的な実施プロセス

    ツール診断は、一般的に以下の流れで実施されます。

    1.スキャンの対象設定

    • 診断対象のIPアドレス、ドメイン、アプリケーションURLなどを指定
    • 必要に応じて認証情報を設定し、ログイン後の動作も診断

    2.脆弱性スキャンの実行

    • 診断ツールが自動で対象システムをスキャンし、脆弱性を検出
    • 既知の攻撃パターン(シグネチャ)を照合し、不正アクセスのリスクを評価

    3.診断結果の解析

    • スキャン結果をもとに、発見された脆弱性の種類や影響範囲を整理
    • 誤検知が含まれていないかチェック(必要に応じて手動で確認)

    4.結果レポートによる対策検討

    • 検出された脆弱性のリスクレベルを分類(例:高・中・低)し、結果を出力
    • 修正が必要な項目をリストアップし、対応策を検討

    ツール診断のメリット

    ツール診断を実施するメリットは、特に以下の3つの点があります。

    1.短時間での診断が可能(大量のシステムやWebサイトを効率的にチェック)

    ツール診断の最大の強みは、短時間で一括チェックが可能な点です。

    • 手動診断では膨大な時間がかかる大規模システムでも、診断対象を絞ることにより迅速にスキャンが可能。
    • 企業が運営する複数のWebサイトやサーバを一度に診断できる。

    2.コストを抑えやすい(手動診断より低コストで運用可能)

    ツール診断は自動化によって効率的になり、手動診断より低コストでの運用が可能です。

    • エンジニアの人的コストを削減
      ・手動診断は専門のセキュリティエンジニアが時間をかけて実施するため、コストが高くなりがち。
      ・ツール診断は自動で診断を行うため、人的リソースを節約できる。
    • 継続的な診断でも費用負担が少ない
      ・手動診断は1回ごとの費用が高く、頻繁に実施するのが難しい。
      ・ツール診断ならライセンス契約やサブスクリプション型などのツールを利用するため、低コストで定期的に診断することが可能。
    • 導入・運用の負担が少ない
      ・クラウド型の診断ツールも多く、専用機材の導入不要でスムーズに利用開始ができる。

    3.定期的な診断が容易(スケジュールを自動化できる)

    セキュリティ対策は一度行えば終わりではなく、継続的な監視と対策が不可欠です。ツール診断を活用すれば、コストを抑えつつ、定期的なスキャンを自動で実施し、最新の脆弱性を常にチェックできます。

    • スケジュール設定で定期スキャンが可能
      ・ツールを活用すれば、毎週・毎月・四半期ごとの定期スキャンを自動化できる。
      システムの更新後(パッチ適用後など)の検証にも活用できる。
    • 継続的なセキュリティ監視ができる
      ・手動診断では頻繁に実施するのが難しいが、ツールなら日常的なセキュリティ監視が可能。
      ・システム改修のたびに手動診断を依頼するより、ツールを活用して迅速に問題を検出できる。

    ツール診断が適しているケース

    ツール診断は特に以下のケースで実施が推奨されます。

    1.定期的にスキャンしてセキュリティリスクを管理したい企業

    ツール診断を導入することで、定期的なスキャンを自動化し、常に最新のセキュリティ状態を維持できます。

    • システムのアップデート後に迅速なリスクチェックが可能
      ・OS、アプリケーション、ミドルウェアのアップデート後に、脆弱性が新たに発生していないか即時に確認ができる。
      ・システム改修や機能追加時の影響を即座に確認できる。
    • 運用中のシステムに影響を与えない
      日常業務に影響を与えず、バックグラウンドで実施できる。

    2.コストを抑えながらセキュリティ対策を進めたい場合

    セキュリティ診断を実施したいものの、手動診断の高コストがネックとなる組織にとって、ツール診断は費用対効果の高い選択肢です。

    • 人件費が抑えられるため、低コストで運用可能
    • 大規模なシステムでもコストを抑えやすい
      特に、中小企業や予算が限られた組織にとって、手軽にセキュリティ対策を実施できる手法となる。
    • 社内での脆弱性診断の内製化が可能
      手動診断は外部のセキュリティ専門企業へ依頼するケースが多いが、ツール診断は自社で運用可能なため、外部委託のコストを抑えられる。

    3.基本的な脆弱性を素早く把握したい場合

    ツール診断なら、開発段階や運用中のシステムに対して、迅速にリスクを把握し、適切な対応が可能になります。

    • 即時スキャンで迅速な脆弱性検出
    • 開発段階での脆弱性検出に活用
      ・開発中のWebアプリやシステムに対して、リリース前に簡易スキャンを実施できる。
      ・これにより、本番環境でのリスクを最小限に抑えられる

    ツール診断の限界

    ツール診断はコストを抑えて効率的に運用できる点がメリットですが、場合によってツール診断だけでは限界があります。

    1.誤検出や見落としの可能性がある

    ツール診断は、自動でシステムの脆弱性をチェックする仕組みですが、その診断結果には誤検知(False Positive)や見落とし(False Negative)が含まれる可能性があります。

    • 誤検知(False Positive)
      ・実際には問題のないコードや設定を「脆弱性あり」と誤って検出するケース。
      ・例:「このページの入力欄にSQLインジェクションのリスクがある」とツールが指摘するものの、実際には適切なエスケープ処理が施されている場合。
    • 見落とし(False Negative)
      ・実際には脆弱性が存在するのに「問題なし」と判定してしまうケース。
      ・例:カスタム開発された認証フローに不備があっても、一般的な攻撃パターンにマッチしないため検出されない。
    • 誤検知や見落としの原因
      ツールの設定ミス:適切なスキャン設定を行わないと、正しい診断結果が得られない。
      検出ロジックの限界:ツールは既知の脆弱性パターンをもとに診断を行うため、未知の脆弱性やゼロデイ攻撃の検出には弱い。
      環境依存の問題:特定のアプリケーションやネットワーク環境では正しく診断できないことがある。

    2.システム固有の脆弱性や複雑な攻撃パターンには対応できない

    ツール診断は、主に既知の脆弱性をパターンマッチングによって検出するため、システム固有の処理に関わる脆弱性や、複雑な攻撃パターンには対応できません。

    • システム固有の処理に関連する脆弱性の例
      決済システムの不正操作:カートに入れた商品の価格を改ざんする攻撃。
      アクセス制御の不備:本来は管理者のみアクセス可能な機能を一般ユーザが利用できてしまう。
      認証バイパス:特定のリクエストを送ることで、パスワードなしでログインできてしまう。
    • 複雑な攻撃パターンの例
      API連携を悪用した攻撃:ツール診断ではAPI間の不正な連携による情報漏えいを検出しづらい。
      ・多段階の攻撃手法(チェーン攻撃):攻撃者が複数の脆弱性を組み合わせて攻撃する手法は、ツール単独では検出が難しい。

    ツール診断は、効率的でコストパフォーマンスに優れたセキュリティ診断の手法ですが、その限界も理解し、必要に応じて手作業による診断と組み合わせることで、より信頼性の高いセキュリティ対策が可能となります。

    まとめ

    ツール診断は、自動化された脆弱性診断ツールを活用し、短時間で広範囲をスキャンできる効率的なセキュリティ対策です。手動診断と比べてコストを抑えながら、定期的な診断が容易に実施できるため、継続的なセキュリティリスク管理に適しています。また、基本的な脆弱性を素早く把握できるため、初期段階のリスク検出や、手動診断の補助としても活用可能です。しかし、ツール診断には誤検知や見落としといったリスクのほか、ビジネスロジックの脆弱性や複雑な攻撃手法の検出が難しいというデメリットが存在するため、単独では限界があります。そのため、より高度なセキュリティ対策を実現するには、手動診断との組み合わせが重要となります。

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    ―第1回「手動診断のメリットとは?」はこちら―
    ―第3回「手動診断とツール診断、どちらを選ぶべきか?最適な診断方法の選び方」はこちら―


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    情報セキュリティ10大脅威 2025
    -「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」とは?-

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    国家間の対立が深まる中、サイバー攻撃は政治・外交の手段として活用されるケースが増えています。国家支援型ハッカーグループによる標的型攻撃や、ランサムウェアを用いた攻撃が確認されており、日本もその標的となっています。本記事では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2025」の第7位『地政学的リスクに起因するサイバー攻撃』について、国家間の緊張がもたらすサイバー攻撃の実態、日本への影響を解説します。

    IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」速報版の記事はこちらです。こちらもあわせてぜひご覧ください。『【速報版】情報セキュリティ10大脅威 2025 -脅威と対策を解説-
    https://www.sqat.jp/kawaraban/34353/

    【関連ウェビナー開催情報】
    弊社では4月16日(水)14:00より、「知っておきたいIPA『情報セキュリティ10大脅威 2025』~セキュリティ診断による予防的コントロール~」と題したウェビナーを開催予定です。10項目の脅威とその対策例について脆弱性診断による予防的コントロールの観点から講師が解説いたします。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。詳細はこちら

    新設された「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」

    「地政学注 1)的リスクに起因するサイバー攻撃」は2025年に初めて選定されたものです。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」はその年に注意すべき脅威を「10大脅威選考会」によって選定しており、通常は攻撃手法等に焦点が置かれていますが、この項は政治的・外交的理由や背景という、動機の部分に焦点が置かれたカテゴリとなります注 2)。対象となる脅威グループの中には、サブグループがランサムウェア攻撃を実行したケースも確認されており注 3)、本項とランサムウェア攻撃との関連性も指摘されています。さらに、サイバー攻撃は一方的に行われるものではなく、紛争当事国や関係国間、政治的・外交的要因で緊張関係にある国家間で実施されるため、被害側として名前が挙げられている国が、同時に加害側となっている場合も存在します。

    日本を対象にした事例

    地政学的リスクに起因するサイバー攻撃の脅威が新設された背景には、日本を標的としたサイバー攻撃が増加していることなどが挙げられます。例えば以下のような事例があります。

    MirrorFace(Earth Kasha)による攻撃キャンペーン

    概要

    • MirrorFaceは中国語を使用する APT (Advanced Persistent Threat) グループであり、日本を主なターゲットとしている組織です。多くの情報から、APT10の傘下組織の1つと考えられています*1
    • 攻撃キャンペーンの主な目的は、安全保障や先端技術に関する情報窃取とされています。

    主なキャンペーン

    特徴と補足:いずれのキャンペーンでもマルウェアの使用が確認されています。特に、スピアフィッシングキャンペーンではLiving off the land戦術を用いることで、通常の検出を回避する工夫が見られます。また、MirrorFaceはEU向けの攻撃も行っているとの指摘があります*5

    Living off the land 戦術(通称 LOTL)とは
    システムに元々存在するネイティブツール(Living off the Land バイナリ、LOLBins)を悪用します。これにより、通常のシステムアクティビティに紛れ込み、検出やブロックが難しくなるとともに、オンプレミス、クラウド、ハイブリッド環境(Windows、Linux、macOSなど)で効果的に運用され、カスタムツールの開発投資を回避できるという利点があります。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目

    • 3位:システムの脆弱性をついた攻撃
    • 5位:機密情報などを狙った標的型攻撃

    北朝鮮の動向

    北朝鮮は、国際連合安全保障理事会決議に基づく制裁措置を回避しながら外貨を獲得するため、さまざまな活動を展開しています。ここでは、人材の採用に関連する2つの事例に注目します。

    暗号資産の窃取を目的とした攻撃

    概要:昨年、暗号資産関連事業者から約482億円相当の暗号資産が窃取された事件が発生しました。公開されている事件の流れは以下のとおりです。注 4)

    • 暗号資産関連事業者にコールドウォレットソフトウェアを提供する企業(以下A社)の従業員Bに、ビジネス専用SNSから偽のリクルーターが接触。(Bは契約中のクラウドサービス上にあるKubernetesの本番環境にアクセスできる権限を持っていた。)
    • 偽のリクルーターは、採用プロセスの一環として、ソフトウェア開発プラットフォーム上から指定されたPythonスクリプトをBのレポジトリにコピーするよう指示。
    • コピー後、何らかの方法でBの業務用端末で当該Pythonスクリプトが実行され、本番環境へのアクセス認証情報が窃取される。
    • 不正アクセス時には、正規のトランザクションに不正なデータを追加する細工が施された。

    補足:暗号資産全体の窃取額は2022年がピークでしたが、北朝鮮による攻撃は昨年がピークとなっており、攻撃成功率も上昇している*6ため、2025年も引き続き警戒が必要です。

    偽IT労働者問題

    • 概要:2024年3月に、財務省、外務省、警察庁、経済産業省が発表。北朝鮮IT労働者に関する企業などに対する注意喚起により、身分を偽った北朝鮮IT労働者が海外企業で業務に従事している事例が存在することが明らかになりました。
    • 米国での事例:司法省が2025年1月23日付で訴追を公表した事例では、以下のような例が確認されています。被害企業が発送した業務用PCを協力者が受け取り、ラップトップファーム注 5)に設置
      ⇒被害企業のポリシーに反し、リモートデスクトップ接続用ソフトウェアがインストールされた。
      北朝鮮の偽IT労働者は、VPN経由で他国からアクセスして業務に従事
      ⇒一部企業ではマルウェアのインストールを試みた事例も報告されています*7
    • 日本国内の状況:日本では具体的な事例は報道されていませんが、2025年1月に発表されたアメリカ企業のレポートにより、日本企業でも偽IT労働者が雇用されている事実が明らかになりました。このレポートにある企業はスタートアップ企業が多く、中小企業における採用プロセスや業務委託プロセスでのチェック体制の確立が求められます。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目

    • 5位:機密情報などを狙った標的型攻撃
    • 6位:リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃

    SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてぜひご参照ください。
    標的型攻撃とは?事例や見分け方、対策をわかりやすく解説
    テレワーク環境に求められるセキュリティ強化

    諸外国を対象にした事例

    以下、各国・地域における地政学的リスクに起因するサイバー攻撃の事例を紹介します。

    台湾

    概要:台湾政府は、中国からのサイバー攻撃が2023年の約2倍に増加したと発表*8しています。多くの攻撃は検知・ブロックされるものの、Living off-the-landなどの手法により、検出や防御が回避されるケースが報告されています。また、フィッシングキャンペーン、DDoS攻撃、ランサムウェア攻撃など、幅広い攻撃が展開されています。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:

    • 1位:ランサムウェア攻撃による被害
    • 3位:システムの脆弱性をついた攻撃
    • 5位:機密情報などを狙った標的型攻撃
    • 8位:分散型サービス妨害攻撃(DDoS)

    シンガポール

    概要:2024年6月、シングテル(シンガポールテレコム)に対して、中国の脅威アクターVolt Typhoonによる攻撃が報じられました(2024年11月の報道*9)。シングテルおよびその親会社、さらにはシンガポール政府からの公式コメントは得られていませんが、アメリカの通信事業者への攻撃テストとして実施された可能性が指摘されています。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:詳細不明のため該当なし

    アメリカ

    アメリカに対するサイバー攻撃は、政治的・外交的背景に基づく複数の事例が報告されています。特にSalt Typhoon に関連する以下の事例を紹介します。

    通信事業者に対する攻撃

    米財務省に対する攻撃

    概要:2024年12月30日、中国の脅威アクターによる侵害行為について、上院へ財務省が通知を行いました*14。VPNを使用しないリモートアクセスツールの脆弱性を悪用した攻撃が、同年12月上旬に発覚し、イエレン長官(当時)など高官が侵害されたとの情報*15もあります。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:

    • 3位:システムの脆弱性を突いた攻撃
    • 5位:機密情報等を狙った標的型攻撃
    • 7位:リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃

    中国

    概要:中国も他国の脅威アクターからの侵害行為が報告されています。報道は少ないものの、ベトナム政府の支援を受けるとされるAPT32(別名 OceanLotus)が、GitHub上のオープンソースセキュリティツールプロジェクトからマルウェアを中国のサイバーセキュリティ研究者にダウンロードさせ、バックドアを形成した事例*16が確認されています。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:

    • 5位:機密情報等を狙った標的型攻撃

    北欧・バルト三国

    概要:北欧・バルト三国では、各国間をつなぐ通信用・電力用の海底ケーブルが、相次いで船舶によって破壊された事件*17が記憶に新しいでしょう。欧州委員会は12月25日に発生したケーブル破壊に関する共同声明で、ロシアの影響を指摘しています。

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:物理破壊によるため該当なし

    ポーランド

    概要:大統領選挙を控えるポーランドでは、ロシアによる国民の買収に対抗するため、「選挙の傘(Parasol Wyborczy)」と呼ばれる選挙保護プログラムを立ち上げました*18。また、2024年12月には、ルーマニアの大統領選挙の第1回投票が、ロシアによる工作を理由に無効とされ、2025年に再投票が決定しています*19

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:情報セキュリティ10大脅威 2025の「組織」向け脅威では該当なし

    イスラエルとその対抗勢力

    イスラエルのガザ地区侵攻に伴い、以下のようなサイバー攻撃と思われる事件が発生しています。

    イスラエル側の攻撃事例

    ただし、イスラエルは国内企業に対してスパイウェアの開発・運営を公認しているなど、サイバー空間における倫理観が日本とは大きく異なるため、注意が必要です。

    イスラエルへの攻撃事例

    関連の情報セキュリティ10大脅威項目:

    • 1位:ランサムウェア攻撃による被害
    • 5位:機密情報等を狙った標的型攻撃
    • 8位:分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)

    注:
    1) 本項では地政学をCritical geopolitics(批判的地政学)という地理学の一分野のうちの popular geopolitics に相当するものとして取り扱う。Popular geopoliticsについての定義は次のURLなどを参照。
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7315930/
    https://www.e-ir.info/2018/09/16/plotting-the-future-of-popular-geopolitics-an-introduction/
    2) IPA からのプレスリリース(https://digitalpr.jp/r/103159)を参照。
    3) Lazarus GroupのサブグループであるAndarielがランサムウェア「Maui」や「Play」、「Lockbit2.0」を使用した例や、イランのAPTがNoEscape、Ransomhouse、ALPHVなどのランサムウェアアフィリエイトと協業したケース、APT10との関連が疑われるDEV-0401がランサムウェア「Lockbit2.0」を実行したケース、本文にあるイラン政府をスポンサーとする脅威グループがランサムウェア攻撃を行ったケースなどが挙げられる。
    https://www.cisa.gov/news-events/cybersecurity-advisories/aa23-040a
    https://www.cisa.gov/news-events/cybersecurity-advisories/aa24-241a
    https://jsac.jpcert.or.jp/archive/2024/pdf/JSAC2024_2_6_hayato_sasaki_jp.pdf
    4) 警察庁の注意喚起、被害企業によるプレスリリースをもとに記載。
    https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/020241224_pa.pdf
    https://www.ginco.co.jp/news/20250128_pressrelease
    5) ラップトップファームは、被害企業が発送したPCをホストする設備を指す。2024年8月8日に訴追されたケースでは、自宅を協力者がラップトップファームとして提供していた。
    https://www.justice.gov/usao-mdtn/pr/department-disrupts-north-korean-remote-it-worker-fraud-schemes-through-charges-and


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  • 2025年3月12日(水)14:00~15:00
    サイバー攻撃に備えるために定期的な脆弱性診断の実施を!-ツール診断と手動診断の比較-
  • 2025年3月13日(木)11:00~12:00
    脆弱性診断、やりっぱなしになっていませんか?高精度診断と充実サポートでリスクを最小化〜サイバー保険で安心 診断から守るまでを徹底解説〜
  • 2025年3月19日(水)13:00~14:00
    ランサムウェア攻撃の脅威~感染リスクを可視化する防御策の実践を紹介~
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    2024年のサイバーセキュリティ振り返り
    -KEVカタログが示す脆弱性の実態-

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    米サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency、以下CISA)が2021年から公開しているKEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities Catalog)は、悪用が確認された既知の脆弱性情報をリスト化した、サイバーセキュリティの防御に重要なデータベースです。本記事ではこのKEVカタログをもとに、2024年に注目された脆弱性情報と悪用事例を振り返ります。

    ※本記事で扱うKEVカタログの情報は2024年12月10日(アメリカ現地時間付け)のものです。2024年12月10日までにKEVカタログに登録されたCVEは175件になります。(参考:2023年1月~12月…187件)

    KEVカタログに登録された脆弱性の概要

    KEVカタログに登録された脆弱性のうち、CVSSv3.0/3.1で算出された注 1)ベーススコアの平均値は8.37注 2)、中央値は8.6でした。CVSSv3.0/3.1のスコアレンジあたりのCVE数は以下の通りです。

    表1 CVSSの深刻度に対するKEVカタログに登録されたCVEの件数

    米国以外での悪用実態の反映

    2024年はJPCERT/CCから以前注意喚起が行われた、日本を主要ターゲットとする脆弱性の悪用実態がKEVカタログに反映されています。直近で登録された脆弱性は以下の2件です。

    • CVE-2023-28461:Array Networks AGおよびvxAG ArrayOSに認証なしでSSL VPNゲートウェイ上のファイルシステムを閲覧可能にする脆弱性
      KEVカタログ登録日:2024年11月25日
      JPCERT/CC注意喚起(2023年9月22日発行):https://www.jpcert.or.jp/at/2023/at230020.html

    SQAT.jpでは以下の記事でも紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。「緊急セキュリティ警告:ArrayOS AG における深刻な脆弱性 CVE-2023-28461

    • CVE-2023-45727:North Grid ProselfのXML外部エンティティ(XEE)参照の不適切な制限の脆弱性
      KEVカタログ登録日:2024年12月3日
      JPCERT/CC注意喚起(2023年10月26日発行):https://www.jpcert.or.jp/at/2023/at230022.html

    2024年11月にトレンドマイクロが公開したブログ*24では上記2件についてはAPT10の関連組織による悪用とされており、メインターゲットは日本、そのほかに台湾とインドとされています。ヨーロッパのみで悪用されているケースについても比較的早い時期に掲載されるようになっています。最近のものでは以下が該当します。

    なお、KEVカタログを提供するCISAはアメリカの政府機関となるため、アメリカ国内向けの情報が優先されます。一方でKEVカタログはCSV形式やjson形式でデータを公開しており、自動的な情報収集の一環に組み込みやすいという利点があります。JPCERT/CCや独BSIはそれぞれの国や地域の脅威情報をタイムリーに公開しており、KEVカタログと同時に利用することで情報の補完が図れるという利点があります。両者はHTMLファイルやPDFファイルなど、主に人が目で見ることを優先したデータの提供を各国言語で行っています。

    ベンダ別登録数

    2024年も、例年通りMicrosoftの登録数が圧倒的に多くなっています。

    図1 KEVカタログ ベンダ別登録数(一部)

    図1KEVカタログベンダ別登録数(一部)
    ※KEVカタログの2024年1月1日~12月10日および2023年1月1日~12月31日の登録情報をベンダごとに集計。2024年の当該期間の登録数上位10位(同率10位が2件)までを表示

    なぜMicrosoftの登録数が多いのか

    Microsoftの登録数が多い理由は、デスクトップ向けOSの大半をWindowsが占めているためです。直近の2024年11月の調査*2では全世界でのデスクトップ向けOSの市場占有率は72.94%となっています。企業向けのOSとしてWindows OSを選択するケースも多数に上ります。

    企業では社内リソースへのアクセス制御のためにアイデンティティ管理が必要になりますが、Windows PCが主流の社内ネットワークでアイデンティティ管理といえばActive Directoryが不可欠になります。MicrosoftのKEVカタログへの登録数が多いのはActive Directory侵害が攻撃側にとって大きなマイルストーンとなるからです。Active Directoryを侵害することによって攻撃者は特権昇格やユーザー資格の奪取、アクセス権限の制御などを行い、マルウェア(ランサムウェア含む)を配置し、自身の目的(金銭や情報の窃取など)を達成することができます。

    一方でActive Directoryは外部に公開されるものではなく、社内向けの閉じたサービスとして存在するものです。このため攻撃者は別の手段を用いて社内のネットワークに侵入し、Active Directory環境内に入り込み、横展開をしながらActive Directory本体の侵害を目指して侵害活動を行います。この横展開における侵害活動で用いられるのがWindows OSの各種機能の脆弱性(主にゼロデイ)となります。

    Active Directoryについて、過去のセキュリティトピックス解説動画では以下の内容で動画を公開中です。ぜひご覧ください。
    Active Directoryを侵害から守るためのガイド

    Windows OSの脆弱性:古いテクノロジーの残存

    Windows OSは最新版でも互換性の問題からWindows 95やNT時代の古いドライバや機能を維持しています。Internet Explorerへの互換性やKerberos認証でのRC4、NTLM、PPTPなどが該当するのではないでしょうか。この中でも2023年6月にInternet Explorerはデスクトップアプリとしての使命を終えていますが、Internet Explorerを構成していたドライバは互換性(EdgeにおけるIEモードのサポート)の維持の目的で最新のOSでも残存しています。

    事例:CVE-2024-43573:Windows MSHTMLの脆弱性

    MSHTMLはInternet Explorerのレンダリングエンジンで、互換性の維持を目的にWindows 10/11でも現存しているドライバです。この脆弱性はユーザーには存在しないはずのInternet Explorerの機能を呼び出し、Internet Explorerの脆弱な保護機能を悪用してマルウェアをダウンロードさせることを目的とした攻撃に悪用されました。悪用の概要は下図の通りです。

    図2 CVE-2024-43573:Windows MSHTMLの脆弱性

    その他登録数上位のベンダ

    2024年、特に増加が際立つのはIvanti、Android、D-Link、Palo Alto Networks、VMwareの5社になります。各ベンダについては以下をご参照ください。

    ベンダ名 説明
    Ivanti 旧LANDESKを中心とするインフラストラクチャ管理製品を提供する米国企業
    Android Android OSなどを提供する米国Google社内のAndroid Open Source Project
    D-Link 台湾のネットワーク機器メーカー。家庭用や中小企業向けの市場で強みをもつ。
    Palo Alto Networks ファイアウォールやVPN機器などの企業向けセキュリティネットワーク機器や関連製品を提供する米国企業。
    VMware ハイパーバイザなどの仮想化製品とその管理ツールを提供する米国Broadcom社傘下の企業。

    製品タイプ別登録数

    2024年にKEVカタログに登録されたCVEを製品タイプ別に分類したグラフでみると、Microsoftの登録数が多いことから、当然、OS/カーネルの登録が多くなっています(40件、23%)。また攻撃の初期アクセスに悪用されることが多いネットワーク機器も3位となっています(15件、9%)。そしてインフラストラクチャ管理製品が全体の10%(2位、18件)、エンドポイント管理製品が6%(4位、11件)を占めています。

    図3 製品タイプ別KEVカタログ登録数

    図3製品タイプ別KEVカタログ登録数
    弊社でKEVカタログに登録されたCVEを調査し、製品タイプ別に分けたものとなります。製品が複数の機能を含む場合は1.脆弱性が大きく影響を及ぼす機能、2.製品の主要な機能の順に振り分けを行っています。

    インフラストラクチャ管理製品の悪用

    インフラストラクチャ管理製品と大雑把にまとめましたが、ネットワーク機器の管理ツール、インベントリ管理ツールからサーバアセット管理ツールまで幅広いことから、以下の2タイプの脆弱性に絞って悪用実態をご紹介します。

    ネットワーク機器の管理インターフェース/管理機能の脆弱性悪用

    対象製品 CVE CWE 自動化
    FortiManager CVE-2024-47575*3 CWE-306
    重要な機能の使用に対する認証の欠如
    不可
    PAN-OSの管理インターフェース CVE-2024-0012*4 CWE-306
    重要な機能の使用に対する認証の欠如
    CVE-2024-9474*5 CWE-77
    OSコマンドインジェクション
    不可
    製品 製品概要 攻撃の概要注 3) 攻撃者
    FortiManager Fortinet製品の統合管理用のアプライアンス ・管理対象アプライアンスの詳細な設定情報、ユーザー・パスワードの取得
    ・脅威アクターのデバイスをFortiManagerに登録
    不明

    備考

    IOCなどはこちらを参照。
    https://cloud.google.com/blog/topics/threat-intelligence/fortimanager-zero-day-exploitation-cve-2024-47575?hl=en

    PAN-OSの管理
    インターフェース
    PAN-OSが搭載されている機器の管理インターフェース。今回はWebインターフェースが対象。 ・WebShell(難読化)を使用して管理者権限を奪取
    ・管理アクションの実行や設定改ざん、特権昇格など
    不明

    備考

    IOCなどはこちらを参照。
    https://unit42.paloaltonetworks.com/cve-2024-0012-cve-2024-9474/

    ITアセット統合管理ツールの脆弱性悪用

    対象製品 CVE CWE 自動化
    CyberPersons Cyber Panel CVE-2024-51378*6 CWE-276
    不適切なデフォルトパーミッション
    VMware vCenter Server CVE-2024-38812 CWE-122
    バッファオーバーフロー
    CVE-2024-38813 CWE-250
    不要な特権による実行
    不可
    CWE-273
    削除された特権に対する不適切なチェック
    不可
    製品 製品概要 攻撃の概要 攻撃者
    CyberPersons Cyber Panel オープンソースのWebホスティング管理ツール。バックアップやWordPressの管理がWebブラウザで実行できる ミドルウェアによる入力値の検証の欠如による管理者権限へのアクセス権獲得・機微情報の取得注 4)および任意のコマンド実行*7 Helldownランサムウェア*8
    VMware vCenter Server vSphereシリーズの大規模仮想化環境の運用管理支援ツール vCenter Server v7.0で導入されたPlatform Services Controller(PSC)によりバックエンドプロセスがDCERPCプロトコルに依存する形態となっているところに、認証ワークフローまたはSOAP APIのエンドポイントに対して細工されたリクエストを送ることで初期アクセスを達成し、その後特権昇格と永続化を行っていると予想されている*9 不明

    EOL製品への対応

    ここでEnd-of-Life(サポート終了期限)と脆弱性への対応についても触れておきます。以下は2024年にKEVカタログに登録されたD-Link製品の脆弱性に関する推奨対策の一覧です。登録された脆弱性6件中5件がEOL(End-of-Life、製品サポート終了)を迎えている製品の脆弱性でした。これらのEOLを迎えている製品についてD-Linkからは新たなパッチを提供せず、買い替えを推奨しています。

    表2 2024年にKEVカタログに登録されたD-Link製品と推奨対策

    対象製品 CVE KEVカタログ登録日 推奨対策
    DIR-820 CVE-2023-25280 2024年9月30日 買い替え
    DIR-600 CVE-2014-100005 2024年5月16日 買い替え
    DIR-605 CVE-2021-40655 2024年5月16日 買い替え
    複数のNAS製品注 5) CVE-2024-3272 2024年4月11日 買い替え
    CVE-2024-3273 2024年4月11日 買い替え
    DSL-2750B CVE-2016-20017 2024年1月8日 製品型番を確認の上、必要に応じてパッチ適用

    CWE別登録数

    2024年のCWE別登録数のトップ10は以下の通りです。

    表3 CWE別KEVカタログ登録件数

    ランク CWE 概要 件数 CWE top 25ランク 2023年登録数 2023年登録数
    ランク
    1位 CWE-502 信頼できないデータのデシリアライゼーション 11 16 8 7
    1位 CWE-78 OSコマンドインジェクション 11 7 11 3
    3位 CWE-416 開放済みメモリの使用 10 8 16 2
    4位 なし CWEに該当する項目がないもの 9 22 1
    5位 CWE-22 パストラバーサル 8 5 4 15
    6位 CWE-287注 6) 不適切な認証 8 14 5 12
    7位 CWE-787 境界外書き込み 7 2 9 5
    8位 CWE-843 型の取り違え 6 ランク外 4 15
    8位 CWE-94 コードインジェクション 6 11 9 5
    10位 CWE-284注 7) 不適切なアクセス制御 5 ランク外 6 8

    ※登録件数は同一CVEで複数のCWEに該当する場合、それぞれ1件としてカウントしています。

    2024年のCWE別登録数の傾向

    C言語起因の脆弱性の減少

    代表的なC言語に起因する脆弱性、メモリハンドリング関連の脆弱性は2023年の52個(全体の約28%)から2024年は33個(全体の約19%)へ減少しました。一因は2023年に本カテゴリでKEVに登録された多数の脆弱性のうち、スマートフォンやタブレット端末のベンダとしておなじみのAppleとSamsungの登録件数が減少していることにあります。

    • Apple登録件数…2023年21件→2024年7件
    • Samsung登録件数…2023年8件→2024年0件

    表4 C言語が関連するKEVに登録されたCVE一覧(2023年~2024年)

    C言語が主要な原因となるCWE 2024年にKEVに登録されたCVE 2023年にKEVに登録されたCVE
    CWE-119: バッファオーバーフロー CVE-2017-1000253, CVE-2023-6549 CVE-2017-6742, CVE-2022-22706, CVE-2023-4966
    CWE-120: クラシックバッファオーバーフロー CVE-2023-33009, CVE-2023-33010, CVE-2023-41064
    CWE-122: ヒープベースのバッファオーバーフロー CVE-2024-38812, CVE-2024-49138, CVE-2024-30051 CVE-2023-23376, CVE-2023-27997, CVE-2023-28252, CVE-2023-36036, CVE-2023-4911
    CWE-125: 範囲外メモリの読み取り CVE-2021-25487, CVE-2023-28204, CVE-2023-42916
    CWE-134: 制御されていないフォーマット文字列 CVE-2024-23113
    CWE-190: 整数オーバーフロー/アンダーフロー CVE-2022-0185, CVE-2024-38080 CVE-2023-2136, CVE-2023-21823, CVE-2023-32434, CVE-2023-33107, CVE-2023-6345
    CWE-401: メモリリーク CVE-2023-26083
    CWE-416:解放後使用(Use After Free) CVE-2024-9680, CVE-2024-4671, CVE-2012-4792, CVE-2024-43047, CVE-2024-38107, CVE-2024-38193, CVE-2024-36971, CVE-2024-1086, CVE-2024-4610, CVE-2022-2586 CVE-2016-9079, CVE-2019-8526, CVE-2021-25394, CVE-2021-29256, CVE-2022-22071, CVE-2022-3038, CVE-2022-38181, CVE-2023-0266, CVE-2023-21608, CVE-2023-21674, CVE-2023-28205, CVE-2023-29336, CVE-2023-32373, CVE-2023-33063, CVE-2023-36802, CVE-2023-4211
    CWE-787: 範囲外への書き込み CVE-2023-34048, CVE-2024-21762, CVE-2024-0519, CVE-2023-7024, CVE-2024-23225, CVE-2024-23296, CVE-2024-4761 CVE-2021-25372, CVE-2023-20109, CVE-2023-26369, CVE-2023-28206, CVE-2023-32435, CVE-2023-42917, CVE-2023-4863, CVE-2023-5217
    CWE-823: メモリ位置外へのポインタ参照 CVE-2021-25372

    これらの脆弱性は汎用OSやスマートフォンOS、ネットワーク機器やチップセットのファームウェアなどの脆弱性が中心です。KEVカタログに掲載される脆弱性は攻撃者にとって都合の良いOSやネットワーク機器の脆弱性が多いため、各ベンダのC言語系統での開発比重の変動にともない、逓減ていげんしていくと予想されます。

    登録件数上位のCWEと代表的な脆弱性

    表5 登録件数上位のCWEと代表的な2024年の脆弱性

    CWE CVE ベンダ・
    製品名
    脆弱性概要 攻撃者の情報 自動化
    CWE-78 CVE-2024-40711 Veeam Backup & Replication 非認証ユーザーによる任意コードの実行につながるデシリアライゼーションの脆弱性*10 ランサムウェア(Akira, Fog, Frag)*11
    CWE-78 CVE-2024-1212 Progress Kemp LoadMaster 非認証ユーザーによるOSコマンドインジェクション*12 不明
    CWE-22 CVE-2024-8963 Ivanti Cloud Services Appliance (CSA) 管理ユーザー認証の回避と任意のコマンドの実行につながるパストラバーサル。CVE-2024-8190のコマンドインジェクションの悪用につなげる目的で使用されたと推測される。 不明

    備考

    ただしIOCや悪用の詳細についてはFortinet社から公開されている。
    https://www.fortinet.com/blog/threat-research/burning-zero-days-suspected-nation-state-adversary-targets-ivanti-csa

    脆弱性悪用の自動化の可否

    2024年5月から米CISAはVulnrichmentという脆弱性情報の充実プログラムを公開し始めました。これはStakeholder-Specific Vulnerability Categorization(ステークホルダー固有の脆弱性の分類、略称SSVC)に必要な付加情報の提供などを目的に公開されているもので、SSVCによる脆弱性のトリアージに利用できる有効な情報源が加わったことで、脆弱性管理がしやすくなるというものです。SSVCのトリアージのうち、デプロイヤーモデル(アプリケーションや機器を実環境で使っている人が対象のモデル)では脆弱性に対するAutomatable(自動化の可否)の評価が必要となりますが、Vulnrichmentではこの評価も併せて公開されています。攻撃者にとっては脆弱性悪用をツール化することで流通させることが可能となる点や、ツールの利用で技術力が特に問われずに利用できる点などから、自動化の可否は悪用されやすさの一つの指標として注目すべきものがあります。

    SSVC(Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization)について、SQAT.jpでは以下の記事でも紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
    脆弱性診断は受けたけれど~脆弱性管理入門

    表6 2024年にKEVカタログに掲載された脆弱性の自動化可否

    自動化可否 件数
    可能 75
    不可 86
    データなし 14
    出典:https://github.com/cisagov/vulnrichmentよりデータを取得

    ランサムウェアグループの悪用が判明しているもの

    2024年もランサムウェアによる被害が後を絶たない一年となりました。KEVカタログではランサムウェアグループの悪用が特定されたかどうかについても情報が掲載されていますので、ぜひこの機会にご参考にされてみてはいかがでしょうか。

    表7 ランサムウェアグループによる悪用の判明

    ランサムウェアグループの悪用 件数
    判明している 22
    不明 153

    注:
    1) CVSS3.0及び3.1はベーススコア算出用のメトリクスに相違がないため、同一のスコアとして比較対象としています。なお、CVSS4.0はベーススコア算出用のメトリクスが異なるため、比較対象としていません。
    2) CVSSスコアはCISA Vulnrichmentから取得できたものを優先し、CISA Vulnrichmentに登録がないものはNVD検索を行っています。なお2024年12月12日時点でCISA Vulnrichmentに登録がない、2024年にKEVカタログに登録されたCVEは19件となっています。
    3) https://cloud.google.com/blog/topics/threat-intelligence/fortimanager-zero-day-exploitation-cve-2024-47575?hl=en
    およびhttps://unit42.paloaltonetworks.com/cve-2024-0012-cve-2024-9474/(2024年12月13日参照)
    4) PoCの詳細となるhttps://attacke.rs/posts/cyberpanel-command-injection-vulnerability/を参照
    5) 対象製品は次のリンク先を参照。https://supportannouncement.us.dlink.com/security/publication.aspx?name=SAP10383
    6) CWE-287は現実世界での脆弱性へのマッピングが非推奨となっているCWEです。詳細はMITREによるCWE-287の詳細ページのVulnerability Mapping Notesをご覧ください。なお、詳細ページでは代わりにCWE-1390またはCWE-309を使用するよう推奨されています。
    7) CWE-284は現実世界での脆弱性へのマッピングが非推奨となっているCWEです。詳細はMITREによるCWE-284の詳細ページのVulnerability Mapping Notesをご覧ください。詳細ページでは代わりにCWE-862、CWE-863、CWE-732、CWE-306、CWE-1390、CWE-923を使用するよう推奨されています。

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    【CWE TOP 25 2024年版】にみる新たなセキュリティ脅威と指針

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    最も危険なソフトウェアエラー 「CWE TOP 25」2024年版発表

    2024年11月22日、米MITREが運営するHSSEDIと米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は、「2024 CWE TOP 25 Most Dangerous Software Weaknesses(最も危険なソフトウェアエラーTOP25 2024年版)」を発表しました。

    CWE TOP 25は過去1年間に報告された3万件を超える脆弱性データを分析し、深刻度や影響範囲が大きい脆弱性タイプをランク付けしたものです。セキュリティ対策の優先順位を定め、効率的にリスクを軽減するための重要な指針として注目されています。

    順位 脆弱性名 昨年順位
    1 クロスサイトスクリプティング(CWE-79) 2
    2 範囲外の書き込み(CWE-787) 1
    3 SQLインジェクション(CWE-89) 3
    4 クロスサイトリクエストフォージェリ(CWE-352) 9
    5 パストラバーサル(CWE-22) 8
    6 範囲外の読み取り(CWE-125) 7
    7 OSコマンドインジェクション(CWE-78) 5
    8 解放したメモリの使用(CWE-416) 4
    9 認可の欠如(CWE-862) 11
    10 危険なタイプのファイルのアップロード許可(CWE-434) 10
    11 コードインジェクション(CWE-94) 23
    12 不適切な入力検証(CWE-20) 6
    13 コマンドインジェクション(CWE-77) 16
    14 不適切な認証(CWE-287) 13
    15 権限管理の不備(CWE-269) 22
    16 不適切なデータ逆シリアル化(CWE-502) 15
    17 権限を持たないユーザへの機密情報の漏洩(CWE-200) 30
    18 不適切な認可(CWE-863) 24
    19 サーバーサイドリクエストフォージェリ(CWE-918) 19
    20 メモリバッファ境界内での不適切な処理制限(CWE-119) 17
    21 NULLポインター逆参照(CWE-476) 12
    22 ハードコードされた資格情報の使用(CWE-798) 18
    23 整数のオーバーフローまたはラップアラウンド(CWE-190) 4
    24 制御されていないリソース消費(CWE-400) 37
    25 重要な機能の使用に対する認証の欠如(CWE-306) 20

    出典:https://cwe.mitre.org/top25/archive/2024/2024_cwe_top25.htmlより弊社翻訳

    CWEとは

    CWE(Common Weakness Enumeration)は、ソフトウェアにおける共通脆弱性分類です。脆弱性項目ごとに一意のIDが決められ、そのタイプごとに体系化されています。ソフトウェアやシステムに存在する脆弱性を体系的に分類・整理したデータベースであり、開発者やセキュリティ専門家が脆弱性の回避や修正を行うための知識を提供します。

    このデータベースを基に作成されたCWE TOP 25は、影響の深刻度や頻度を基準に順位付けされています。前年度と比較して順位を上げている項目については、特に脅威が高まっていると言えます。自組織のセキュリティの弱点と関係しているかといった分析や優先的に対策すべき項目の検討などに役立つ情報です。

    2024年度の全体的な傾向

    2024年版のTOP25では、クロスサイトスクリプティング(XSS)が最も危険な脆弱性として1位に返り咲きました。昨年は2位だったXSSが再びトップとなったことで、この脆弱性が依然として攻撃者にとって非常に有用であり、深刻なリスクをもたらしていることが浮き彫りとなっています。さらに、範囲外メモリへの書き込みやSQLインジェクションも上位にランクインしており、依然として攻撃手段に活用されている実態が明らかになりました。これらの脆弱性はシステムへの不正アクセスやデータ漏洩を引き起こす可能性があり、引き続き厳重な警戒と対策が求められます。

    まとめ

    CWE TOP 25は、ソフトウェアセキュリティにおける脆弱性を特定し、効果的な対策を講じるための指針として機能します。開発者にとっては、脆弱性を事前に予測し、修正作業を効率化するための実用的なツールであり、セキュリティ専門家にとっては、リスク評価や診断の基準を提供します。さらに企業にとっては、このリストを活用することで、セキュリティ戦略を再構築し、組織やシステムのセキュリティ体制を強化するための基盤となります。

    CWE TOP 25が提供する洞察は、企業や組織が脆弱性を未然に防ぎ、安全なソフトウェアやシステムを構築するための重要なステップとなります。特に、攻撃の高度化が進む現代では、このリストを活用してリスクの排除や対策の強化を図ることが、企業の存続と顧客信頼の維持に直結します。CWE TOP 25をもとに、最新のセキュリティ対策を実施することが今後さらに重要になるでしょう。


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    2023年に最も深刻な影響を与えた脆弱性Top15
    -Five Eyes共同調査分析レポート公開-

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    概要

    海外5か国(米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)で構成されたFive Eyesによる共同調査で、2023年、特に深刻な影響を与えた脆弱性15件が特定されました。本記事では、該当の脆弱性をカテゴリ別に分類して展開。効果的な脆弱性対策についてご説明します。

    脆弱性の分類と影響度

    ネットワークインフラストラクチャ関連

    Cisco IOS XE

    1.CVE-2023-20198
    2.CVE-2023-20273

    影響:特権昇格、リモートコード実行
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)

    Citrix NetScaler

    3.CVE-2023-3519
    4.CVE-2023-4966

    影響:認証バイパス、情報漏洩
    深刻度:Critical (CVSS: 9.1)

    VPNおよびリモートアクセス関連

    Fortinet FortiOS/FortiProxy SSL-VPN

    5.CVE-2023-27997

    影響:認証バイパス
    深刻度:Critical (CVSS: 9.3)

    データ管理システム

    MOVEit

    6.CVE-2023-34362

    影響:SQLインジェクション
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)

    Atlassian Confluence

    7.CVE-2023-22515

    影響:特権昇格
    深刻度:Critical (CVSS: 10.0)

    ロギング・監視システム

    8.CVE-2021-44228

    影響:リモートコード実行
    深刻度:Critical (CVSS: 10.0)
    特記:脆弱性「Log4Shell」として広く知られ、長期的な影響が継続

    セキュリティアプライアンス

    Barracuda ESG Appliance

    9.CVE-2023-2868

    影響:リモートコード実行
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)
    特記:バックドアの埋め込みリスクあり

    システム管理ツール

    Zoho ManageEngine

    10.CVE-2022-47966

    影響:認証なしリモートコード実行
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)
    特記:複数の製品に影響

    印刷管理システム

    PaperCut MF/NG

    11.CVE-2023-27350

    影響:リモートコード実行
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)
    特記:認証バイパスによる特権昇格の可能性

    Windows環境

    Microsoft Netlogon

    12.CVE-2020-1472

    影響:ドメイン特権の昇格
    深刻度:Critical (CVSS: 10.0)
    特記:Zerologon脆弱性として知られる

    継続的インテグレーション/デプロイメント

    JetBrains TeamCity

    13.CVE-2023-42793

    影響:認証バイパス
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)
    特記:ビルドシステムへの不正アクセスのリスク

    メールクライアント

    Microsoft Office Outlook

    14.CVE-2023-23397

    影響:特権昇格、NTLM資格情報の漏洩
    深刻度:Critical (CVSS: 9.8)
    特記:標的型攻撃で悪用される可能性が高い

    クラウドストレージ

    ownCloud graphapi

    15.CVE-2023-49103

    影響:認証バイパス
    深刻度:High (CVSS: 8.8)
    特記:データアクセス制御の迂回が可能

    脆弱性カテゴリ別の分布分析

    上記の脆弱性を分析すると、以下のような特徴がみられます。

    攻撃タイプの傾向

    • リモートコード実行: 38%
    • 認証バイパス: 31%
    • 特権昇格: 23%
    • その他: 8%

    影響を受けるシステム領域

    • ネットワークインフラ: 31%
    • アプリケーションサーバー: 23%
    • セキュリティ製品: 15%
    • エンドユーザーアプリケーション: 31%

    対策の優先度付けのポイント

    • クライアントアクセス性: 高い順
    • パッチ適用の容易さ: 考慮が必要
    • ビジネスインパクト: 重要度評価
    • 実現可能な緩和策の有無

    推奨される対策措置

    組織のセキュリティ責任者向け

    即時対応が必要な施策

    • 重要システムの脆弱性評価の実施
    • パッチ適用計画の策定と実行
    • セキュリティ監視の強化

    中期的な対策

    セキュリティツールの導入・更新

    • DR(エンドポイント検知・対応)システム
    • WAF(Webアプリケーションファイアウォール)
    • ネットワーク監視・分析ツール

    開発者・ベンダー向けガイドライン

    設計フェーズでの対策

    • SP 800-218に基づくSSDF(安全なソフトウェア開発フレームワーク)の導入
    • DevSecOpsの実践によるセキュリティシフトレフト

    実装フェーズでの対策

    • セキュアコーディング規約の徹底
    • 継続的なセキュリティテストの実施

    運用フェーズでの対策

    • 脆弱性開示プログラムの確立
    • インシデント対応体制の整備

    リスク軽減のためのベストプラクティス

    システム管理者向け

    • 定期的な脆弱性スキャンの実施
    • パッチ管理の自動化
    • セキュリティ設定の定期監査

    エンドユーザー向け

    • セキュリティ意識向上トレーニング
    • インシデント報告手順の周知
    • アクセス権限の定期見直し

    まとめ

    これらの脆弱性に対する効果的な対策には、組織全体での継続的な取り組みが不可欠です。本レポートで示した対策を確実に実施し、定期的な見直しと更新を行うことで、セキュリティリスクの最小化を図ることができます。

    注)本記事に記載されている脆弱性情報やPoCの取り扱いには十分な注意を払い、悪用防止に努めてください。


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    サイバー攻撃者は何を狙うのか?~サイバー攻撃の準備段階~
    第1回 侵入するための偵察活動

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    攻撃者はターゲットの目星を付けるためや、侵入を計画・実行するために情報を収集します。この情報収集活動が偵察活動です。サイバー攻撃などが発生したとき、たいてい注目されるのはどこから入られたのか、どういった痕跡が残されているのかといった侵害行為の初動(初期アクセス)の時点からですが、攻撃者は侵害行為を始める前に偵察活動と、侵害行為のための足掛かりづくりを行います。シリーズ第1回目の今回はこの偵察活動についてお伝えします。

    偵察活動の例

    ランサムウェア攻撃グループ「LockBit」

    2024年初頭に国際法執行機関による捜査の結果、一部関係者が逮捕されたランサムウェア「LockBit」ですが、LockBitも偵察活動の一環として他の脅威アクターからフィッシングや脆弱なアプリ、ブルートフォース攻撃で取得したRDPアカウントの情報をアフィリエイト経由で入手していたといわれています*13

    Cobalt Strikeを悪用するランサムウェアグループ

    本来は正規の攻撃再現ツールであるCobalt Strikeですが、その高い機能性からランサムウェアギャングなどによる悪用が行われているソフトウェアでもあります*2。過去に行われたCobalt Strikeを悪用したキャンペーンではフィッシング手法が使われていることも周知されています*3。また、Cobalt StrikeにはBeaconという機能*4があり、この機能はターゲットのスキャンとソフトウェアの種類とバージョンの特定を行うことができます。正しく使用すればアセット管理・インベントリ管理にも使えるのですが、残念なことにこの機能が悪用されたことがあります。この悪用はフィッシング後に実行されていますが、偵察活動の一環として使用された可能性があることからこちらの項でご紹介します。

    Volt Typhoon

    ランサムウェアギャングやマルウェア以外の中でも、我々にとって比較的身近な、国家支援型の脅威アクターの中で名前が挙げられるグループの一つが「Volt Typhoon」でしょう。JPCERT/CCから詳細なレポートも出ており、その活動の特徴から侵害の痕跡をもととした対策があまり効果的でない点について指摘されています。これはVolt Typhoonがターゲットとするものがアクティブディレクトリ(AD)に限定されること、偵察活動と実際の侵害行為を時系列的に完全に切り離して実行していることの2点によります。つまり、Volt Typhoonや類似のアクターに対しては偵察行為の時点で発見するということが重要となります。

    JPCERT/CCは豪州通信情報局豪州サイバーセキュリティセンター(ASD’s ACSC)主導のもと各国と協力の上、2024年8月にWindowsのイベントログと脅威検出についてのベストプラクティスを発表しています*5。これはシステム内規制戦術をとる脅威アクターをターゲットとした文書ですが、Volt Typhoonもケーススタディとして取り上げられています。Windows環境、特にAD環境を運用されている組織の方はぜひこの文書を参考にログの取得方法の見直しをすることをおすすめします。

    偵察活動の一覧

    最後にMITRE ATT&CKで偵察活動として挙げられているものの一覧を掲載します。

    弊社では11月20日(水)13:50より、「中小企業に迫るランサムウェア!サプライチェーン攻撃とは -サプライチェーン攻撃から企業を守るための取り組み-」と題し、ウェビナーを開催予定です。こちらでは以下でご紹介するMITRE ATT&CKで挙げられている偵察活動の例について、講師が解説いたします。ご関心がおありでしたらぜひお申込みください。詳細はこちら

    表の見方

    • MITRE ATT&CK ID: MITRE ATT&CKで活動に対して付与されているID
    • 名称:MITRE ATT&CKが活動に対して付与した名称
    • 備考:記載があるものはよく偵察活動で実行されているものについて弊社で記載したもの

    偵察活動の一覧

    MITRE ATT&CK ID 名称 備考
    T1595 アクティブスキャン
    0.001 IPブロック(パブリックIP)のスキャン
    0.002 脆弱性スキャン
    備考

    攻撃者は悪用できそうな脆弱性を見つけるために脆弱性スキャンを実行するケースが多い。公開アセットに対する脆弱性スキャン自体を防ぐことは困難であるため、不要なアセットを公開しないことや適切なアクセス制御を行うこと、公開アセットの脆弱性を最低限に抑えること、ネットワークトラフィックの中身やフローから脅威を発見する体制を整えることがポイントとなる。

    0.003 ワードリストスキャン 注 1)
    T1592 ターゲットのホスト情報の収集
    0.001 ハードウェア
    0.002 ソフトウェア
    備考

    攻撃者は複数の手段でホスト情報を収集する。侵害したWebサイトを経由した未来のターゲット情報(Webブラウザ関連の情報)の収集、フィッシングサイトの訪問者からのユーザーエージェント情報の取得、サプライチェーン攻撃のためのソフトウェアコードの情報や特定のソフトウェアを使用しているコンピューターリストの収集などがある。

    0.003 ファームウェア
    0.004 クライアント設定 注 2)
    T1592 ターゲットの認証・個人情報の収集 注 3)
    0.001 認証情報
    備考

    攻撃者はありとあらゆる手段を用いて認証情報を収集する。単純なログイン情報の取得だけでなく、ターゲット組織内のユーザーの個人用・ビジネス用両方のアカウント同じパスワードを使い回しているケースなどを狙って認証情報を取得する。また、過去に情報漏洩の被害に遭った企業をターゲットにブルートフォース攻撃を実行したり、特定の機器やソフトウェアの認証情報を収集したり、SMS経由でスピアフィッシングメッセージを送信し認証情報を窃取することもある。偵察行為の時点では防御や検知が困難なため、実際に悪用された時点での検知が重要となる。

    0.002 メールアドレス
    備考

    攻撃者は、ソーシャルメディア、公開Webサイトの情報の検索、Microsoft 365環境用のアドレスを公開APIなどの手段を利用して入手することができる。入手した情報はフィッシングやブルートフォース攻撃に利用される可能性がある。もともとメールアドレスは外部公開を前提とした情報であるため防御は困難だが、メールアドレスやユーザー名を探索しようとする目的のトラフィックを検知することで攻撃の予兆を把握することができる。

    0.003 従業員名
    備考

    攻撃者はフィッシングなどで相手を信用させるため、アカウント侵害の際に悪用するため、従業員情報を収集する。SNSやターゲットのWebサイトの検索などで容易に収集可能なため、偵察行為の時点では防御や検知は困難である。実際に悪用された時点での検出が重要となる。

    T1592 ターゲットのネットワーク情報の収集
    0.001 ドメインプロパティ 注 4)
    0.002 DNS
    0.003 ネットワークの信頼関係 注 5)
    0.004 ネットワークトポロジー
    0.005 IPアドレス
    0.006 ネットワークセキュリティアプライアンス
    T1591 ターゲットの組織情報の収集
    0.001 物理ロケーションの推定
    0.002 取引関係の推定
    備考

    攻撃者は、ターゲティングに利用できる取引関係の情報情報(ハードウェア・ソフトウェアのサプライチェーンやセカンドパーティー・サードパーティーの組織・ドメインの情報など)を収集する。収集した情報は他の偵察行為や攻撃の足掛かりづくり、初期アクセスに展開される可能性がある。防御や検知は困難で、この段階では不正確な判定につながる可能性が高いため、悪用された時点での検出が重要となる。

    0.003 ビジネスのテンポの推定 注 6)
    0.004 役職などの推定
    備考

    攻撃者は、ターゲット設定のために、組織内の主要な人員の情報やアクセスできるデータやリソースなどの情報を収集する。フィッシングなどによる情報収集から、最も効率的にデータにアクセスできるアカウントはどれか、自分が情報をそろえているアカウントがアクセスできるデータの範囲はどこかといった情報を確認し、侵害すべき対象を見極める。収集した情報は他の偵察行為や攻撃の足掛かりづくり、初期アクセスに展開される可能性がある。偵察行為の時点では防御や検知は困難なため、悪用された時点での検出が重要となる。

    T1598 情報収集のためのフィッシング
    0.001 スピアフィッシングサービス 注 7)
    0.002 悪意のあるコードなどを含む添付ファイルによるスピアフィッシング
    備考

    スピアフィッシングでは、攻撃者がソーシャルエンジニアリングの技法を用いて、ターゲット企業のユーザーに対して悪意あるコードなどを含む添付ファイルを含んだメールを送信し、その添付ファイルを開かせ、認証情報などの悪用可能な情報を収集する。防御方法としては、SPFやDKIM、DMARCといったメールサーバの基本設定を行うことや、フィルタリング、ユーザートレーニングが推奨されている。検知方法としてはメールのモニタリングやフィルタリング、ネットワークトラフィックの監視や分析が有効。

    0.003/td>

    リンクを悪用したスピアフィッシング
    備考

    スピアフィッシングのうち、メッセージ内にリンク挿入したものやトラッキング用のタグを含むもの。リンク先自体は正規のWebサイトの場合もあれば、リンク先は悪意のあるWebサイトの場合もあり、攻撃者はサイトへ誘導したうえで認証情報を窃取する。またトラッキング用のタグを使用し、ユーザーが対象のメールを開いたかどうかを確認する。この場合も防御方法としては、SPFやDKIM、DMARCといったメールサーバの基本設定を行うことや、フィルタリング、ユーザートレーニングが推奨される。検知方法も同様で、メールのモニタリングやフィルタリング、ネットワークトラフィックの監視や分析が有効。

    0.004 音声によるスピアフィッシング
    備考

    音声通信(電話)を用いたスピアフィッシング。攻撃者は取引先やテクニカルサポートスタッフなどの信頼できる相手を装い機密情報を聞き出そうとする。また、フィッシングメッセージから電話を掛けるように誘導するパターンや別の偵察活動で得た情報を利用し、ターゲットの信頼を得ようとすることもある。実例として、認証情報の窃取、サポートデスクに連絡して権限昇格を要求する、悪意のあるWebサイトへの誘導などがある。ほかのスピアフィッシングに比べると防御・検知の手段が限られており、防御はユーザーのセキュリティ教育、検知はコールログの監視などにとどまる。

    T1597 閉鎖的・限定的な情報源からの情報収集 注 8)
    0.001 脅威インテリンジェスベンダー 注 9)
    0.002 技術データの購入 注 10)
    T1596 公開技術データベースの検索 注 11)
    0.001 DNS/Passive DNS
    0.002 WHOIS
    0.003 デジタル証明書
    0.004 CDN
    0.005 公開スキャンデータベース
    T1593 公開Webサイト・ドメインの検索
    備考

    公開Webサイトやドメインといった組織の管理外の公開資産のため、防御・検知は困難なものが多い。

    0.001 ソーシャルメディア
    備考

    攻撃者はSNSを利用してターゲット個人を特定し、フィッシングメールを送信したり、なりすましをしたり、個人情報を収集したりする。収集した情報は他の形態の偵察や攻撃の足掛かりづくり、初期アクセスに展開される可能性がある。偵察行為の時点での防御・検知は困難なため、悪用された時点での検出が重要となる。

    0.002 検索エンジン
    0.003 コードレポジトリ
    備考

    攻撃者はGitHubなどの公開コードレポジトリを検索し、ターゲット組織の情報(認証情報・ソースコード)を収集する。収集した情報は他の形態の偵察や攻撃の足掛かりづくり、初期アクセスに展開される可能性がある。防御はアプリケーション開発者向けのガイドの頒布や監査の実施が有効とされている。ただし偵察行為の時点では検知は困難なため、悪用された時点での検出が重要となる。

    T1594 ターゲット所有のWebサイトの検索
    備考

    企業は事業活動の一環として会社情報の公開が不可避ですが、攻撃者はターゲット所有のWebサイトから様々な情報の収集を試みる。収集された情報は他の形態の偵察や攻撃の足掛かりづくり、初期アクセスに展開される可能性がある。実例として、コンタクトフォームを経由したフィッシングメールの送信、ターゲット企業の情報を計画に反映する、ターゲット個人の学術的関心事の調査などが挙げられる。

    出典:MITRE ATT&CK®https://attack.mitre.org/tactics/TA0043/)を元に弊社和訳、備考欄追記

    注:
    1) 一般的に使用されるファイル名、ファイル拡張子、特定のソフトウェア固有の用語をスキャンするもの。他の偵察技術から収集した情報をもとにカスタムしたワードリストを使う場合も。Webサイトのイースターエッグや古い脆弱性を含むページ、管理用の隠しページなどを掘り起こして悪用することを目的に総当たりでディレクトリとページの構造をスキャンすることも。
    2) Office 365のテナントからターゲットの環境情報を収集する例などがあります。
    3) 秘密の質問やMFA(多要素認証)の設定なども含まれる。
    4) ドメイン情報から読み取れる情報(氏名・電子メールアドレス・電話番号などの個人情報とネームサーバー情報やレジストラなどの情報)、クラウドプロバイダが関係する場合はその公開APIからのレスポンスなどで取得できる情報が該当する。
    5) ネットワーク間の相互信頼・依存関係などが対象。例えばAD間の相互信頼関係や、サプライチェーン内でのネットワークの相互信頼・依存関係が該当する。
    6) 営業時間、定休日、出荷サイクルなどの情報。
    7) サードパーティーのサービスを介してスピアフィッシングメッセージを送信し、機密情報(認証情報など攻撃への悪用ができる情報)を聞き出すことを指す。SNS、個人へのメール、企業が管理していない各種サービスからのメッセージなどありとあらゆる、企業よりもセキュリティポリシーが緩いサービス上で実行される。
    8) 評価の高い情報源や有料購読の情報源(有料の時点である程度の品質が期待される)、課金で情報を買うデータベースなどから情報を収集するケースが想定されている。代替手段としてダークウェブやサイバー犯罪のブラックマーケットからの情報購入も挙げられている。
    9) 脅威インテリンジェスベンダーの有償データを検索して標的設定用のデータを探すケース。通常こういったデータは社名などの機密情報を匿名化していることが大半だが、標的の業種、成功したTTP(Tactics, Techniques and Proceduresの略。戦略・技法・手順を指す)や対策などの侵害に関するトレンドが含まれているので、ターゲットに合致する情報が含まれている可能性がある。
    10) 評価の高い情報源や各種データベースからの情報の購入、代替手段としてのダークウェブやブラックマーケットからの情報購入が挙げられているが、代表例はダークウェブから認証情報が購入された事例となっている。
    11) 公開技術データベースの特性上、防御・検知が困難なものが多い。いずれも初期アクセスの時点での検知が重要となる。

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