IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる
― 注目が高まる犯罪のビジネス化 ―

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瓦版vol.20アイキャッチ画像(犯罪ビジネスとハッカーのイメージ写真)

近年、サイバー犯罪はビジネス化が危惧されています。これまで高度な技術をもつ人だけが実行できていたサイバー攻撃も、攻撃のための情報がサービスとして公開されていたり、ツールを活用したりすることで、誰でも容易に実行することが可能となっています。犯罪のビジネス化が進む世の中で我々が対抗できる手段はあるのでしょうか。本記事では、注目される犯罪のビジネス化としてRaaSやDDoS攻撃などのビジネスモデルをご紹介しつつ、サイバー攻撃に備えるにはどのような手段をとればいいのか、という点について解説いたします。

「犯罪のビジネス化」が「情報セキュリティ10 大脅威」に5年ぶりのランクイン

2023年1月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威 2023」(組織・個人)を発表しました。組織編の脅威に2018年を最後に圏外となっていた「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が再びランクインしました。

アンダーグラウンドサービスとは、サイバー攻撃を目的としたツールやサービスを売買しているアンダーグラウンド市場で取引が成立し、経済が成り立つサービスのことです。これらのツールやサービスを悪用することで、攻撃者が高度な知識を有していなくとも、容易にサイバー攻撃を行うことが可能となります。そのため、ランサムウェアやフィッシング攻撃といったサイバー攻撃がますます誘発され、脅威となるのです。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2023」(2023年3月29日)組織向け脅威

ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware-as-a-Service)

勢いを増しているサイバー犯罪のビジネスモデルとしてRaaS(Ransomware-as-a-Service)があります。RaaSとはランサムウェアが主にダークウェブ上でサービスとして提供されている形態のことで、RaaSを利用した攻撃者は、得た身代金の何割かを開発者に取り分として渡す仕組みになっていて、そうやって利益を得ていることなどがあります。

ランサムウェアが増加している理由についてはSQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
ランサムウェア攻撃に効果的な対策‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

図1:Raasビジネスを利用した攻撃の一例

Raasビジネスを利用した攻撃の一例画像

昨今のランサムウェア攻撃の特徴として、ランサムウェア攻撃により行われる脅迫は暗号化したデータを復旧するための身代金の要求に加えて、支払わなければ奪取したデータを外部に公開するといった二重の脅迫から、さらに支払うまでDDoS攻撃(※)を行うといった三重の脅迫から、さらにはそれでも支払いを拒否された場合には、盗んだ情報をオークションで売られてしまうといった事態に発展するなど、より被害が拡大しています。
※DDoS攻撃・・・多数の発信元から大量のデータを送り付けることでサーバを停止させる攻撃のこと。

図2:データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫

データの暗号化+データの公開+DDos攻撃による三重脅迫画像

また、従来のランサムウェアの攻撃の手口は不特定多数に対して無差別に行うばらまき型と呼ばれる手法でしたが、近年では攻撃手法が多様化しています。以下の表は攻撃手法と事例です。

年月攻撃手法事例
2020/6標的型ランサムウェア攻撃 国内自動車メーカーの社内システムが、EKANSの攻撃を受け、日本を含む各国拠点で一時生産停止に陥るなど大きな被害を受ける。
2022/1USBデバイスを使用した
ランサムウェア攻撃
米国で攻撃者が官公庁や有名販売サイトを装い、パソコンに接続することでランサムウェアを感染させる細工を施したUSBデバイスを送付。2021年8月には運輸および保険業界の企業、11月には防衛産業企業に送られており、FBIが注意喚起を行う*1
2022/10サプライチェーン攻撃に
よるランサムウェア感染
2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道があった。

取り上げた事例の詳細について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
2022年6月の事例:「ランサムウェア最新動向2021 ―2020年振り返りとともに―
2022年10月の事例「拡大するランサムウェア攻撃!―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

このように、被害者が身代金の要求により応じやすくなるような脅迫に変化し、また攻撃手法も多様化することにより、攻撃の巧妙化によって高い収益をあげられることから、今後もランサムウェア攻撃は続くことでしょう。その背景には攻撃の実行ハードルを下げるRaaSの存在があることが考えられます。

フィッシング攻撃やDDoS攻撃もサービス化へ

フィッシング攻撃とは、有名企業等になりすますなどして偽装したメールやSMSにより、本物そっくりの偽サイトに誘導したり、悪意ある添付ファイルを実行させようとしたりするサイバー攻撃です。このフィッシング攻撃により、マルウェアを使った重要情報の奪取や、ランサムウェアの感染拡大などを行う事例*2も確認されています。

2022年11月から感染が再拡大しているマルウェア「Emotet」も、この手口を利用することで拡大しました。Emotetに感染し、メール送信に悪用される可能性がある.jpメールアドレスの数は、Emotetの感染が大幅に拡大した2020年に迫る勢いとなっています。

図3:Emotetの攻撃例イメージ図

Emotetの攻撃例イメージ図画像

フィッシング攻撃もサービス化が進んでいます。2022年9月、米国のResecurity社はダークウェブにおいて二要素認証を回避する新たなPhaaS(Phishing-as-a-Service)が登場したと発表しました。このPhaaSは「EvilProxy」と命名され、二要素認証による保護を回避する手段として、「リバースプロキシ」と「クッキーインジェクション」を使用し、被害者のセッションをプロキシング(代理接続)するというものです。このような複雑な仕組みの攻撃がサービス化されたことにより、今後フィッシング攻撃がますます活発化することが考えられます。

そのほかにも、直近では米国で定額料金を支払うことで代行してDDoS攻撃を行うサービス「DDoS攻撃代行サブスクリプションサービス」を提供するサイトの運営者が逮捕される事件*3がありました。DDoS攻撃を行う目的は「金銭目的」「嫌がらせ」「抗議の手段」「営利目的」など攻撃者の背景によって異なります。逮捕に至ったこのサービスでは2000人以上の顧客を抱えており、これまでに20万件以上のDDoS攻撃を実行したと報道がありました。ここからみえてくるのは、様々な事情を抱えた攻撃者にとって、「求められているサービス」であったということです。

犯罪ビジネスサービス利用者の標的にならないために

ここまでランサムウェアやフィッシング等のサイバー攻撃がビジネス化されている例をみてきました。このように犯罪に使用するためのサービスは、アンダーグラウンド市場で取引され、これらを悪用したサイバー攻撃が行われるというビジネスモデルが存在しているのです。サービスを利用するだけで、高度な知識をもたない攻撃者であっても、容易にサイバー攻撃を行えることから、犯罪のビジネス化は今後さらに進み、特にランサムウェア攻撃やフィッシング攻撃は活発化することが考えられます。

これらの犯罪ビジネスサービス化の拡大により増えることが想定されるランサムウェア攻撃とフィッシング攻撃に対して、攻撃を行う機会を与えないために以下のような基本的な対策が有効でしょう。

ランサムウェア対策

■定期的なバックアップの実施と安全な保管
 (物理的・ネットワーク的に離れた場所での保管を推奨)
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は、バックアップ時のみパソコンと接続
 ⇒バックアップに使用する装置・媒体は複数用意する
 ⇒バックアップから復旧(リストア)可能であることの定期的な確認
■OSおよびソフトウェアを最新の状態に保つ
■セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ
■認証情報の適切な管理(多要素認証の設定を有効にするなど) など

フィッシング対策

■ソフトウェアを最新にするなどパソコンやモバイル端末を安全に保つ
■従業員教育を行う
 ⇒不審なメールやSMSに注意する
 ⇒メールやSMS内に記載されたURLを安易にクリックしない
 ⇒メールやSMSに添付されたファイルを安全である確信がない限り開かない
■標的型攻撃メール訓練の実施 など

なお、セキュリティ対策は一度実施したらそれで終わりというものではありません。サイバー攻撃の手口は常に巧妙化し、攻撃手法も進化し続けているためです。脆弱性診断を定期的に行うなど、継続してサイバー攻撃に備えていくことが必要です。また、セキュリティ対策を実施した後も、侵入される可能性はないのか、万が一感染した場合はその影響範囲はどの程度かといった現状把握を行い、実装したセキュリティ対策の有効性を確認することが大切です。

BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

<侵入前・侵入後の対策の有効性確認>

BBSecでは、第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を実現する、「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

※外部サイトにリンクします。

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ランサムウェア攻撃に効果的な対策
‐セキュリティ対策の点検はできていますか?‐

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パソコンのキーボードと南京錠とチェーンロック

これまでSQAT.jpの記事においても何度か取り上げている「ランサムウェア」ですが、攻撃パターンが変化し、なお進化を続け、その被害は国内外ともに2020年よりも増加傾向にあります。いまや完全に防ぐことが難しいランサムウェア攻撃に有効な対策としておすすめしたいのが、「攻撃・侵入される前提の取り組み」です。本記事では、ランサムウェア攻撃の拡大理由を探りながら、企業・組織が行うべき「ランサムウェア対策の有効性検証」について解説します。

現在のランサムウェア事情

海外レポートにおけるランサムウェア事情

2021年10月、米財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は2021年1月~6月におけるランサムウェア攻撃についてのレポートを発行しました。サイバー犯罪は政府全体で優先的に取り組むべき課題であるとしている中で、特にランサムウェアに関しては懸念される深刻なサイバー犯罪であると強調されています。

FinCENがランサムウェアをそのように注視している背景として、各金融機関から報告された2021年上半期のランサムウェアに関する不審な取引報告数が、2020年の1年間の合計件数よりもすでに多い状態であることや、ランサムウェア攻撃関連の取引総額も2020年の合計額よりもすでに多いことをレポートに挙げています。

出典:Financial Crimes Enforcement Network
Financial Trend Analysis – Ransomware Trends in Bank Secrecy Act Data Between January 2021 and June 2021」(2021/10/15)

これまでのバックナンバーでも触れてきましたように、ランサムウェアは変遷が激しく、日々新種や亜種が生まれ、大きな勢力を持っていたものですら、すぐに入れ替わってしまいます。

2020年以降のランサムウェアの変貌について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。
こちらもあわせてご覧ください。
変貌するランサムウェア、いま何が脅威か―2020年最新動向―
ランサムウェア最新動向2021―2020年振り返りとともに―
APT攻撃・ランサムウェア―2021年のサイバー脅威に備えを―

このようにランサムウェアがRaaSとしてビジネス化している中で、依然として攻撃件数や被害総額は増えており、ランサムウェアの種類の移り変わりの激しさを見ても、活発な市場であることがわかります。

国内レポートにおけるランサムウェア事情

次は日本国内における最近のランサムウェア攻撃事情もみていきましょう。2021年9月に警察庁が公開した 「令和3年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェア攻撃による被害が多発している中で、昨今のランサムウェアは下記のような特徴があるとしています。

二重恐喝
(ダブルエクストーション)
データの暗号化だけでなく、窃取したデータを使って
「対価を支払わなければデータを公開する」などと二重に金銭を要求する手口
標的型ランサムウェア攻撃特定の個人や企業・団体を狙って、事前にターゲットの情報を収集し、より確度の高い攻撃手法で実行する攻撃
暗号資産による金銭の要求身代金の支払いを暗号資産で要求する
VPN機器からの侵入従来は不特定多数を狙って電子メールを送る手口が一般的だったが、現在はVPN機器からの侵入が増えている
出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R03_kami_cyber_jousei.pdfより弊社作成

同報告書によると、2021年上半期に都道府県警察から報告があった企業・団体等のランサムウェアの被害件数は61件であり、前年下半期の21件と比べると大幅に増加しました。被害を受けた企業・団体等は、大企業・中小企業といった規模や業界業種は問わずに被害が報告されている状況です。表でご紹介した昨今のランサムウェアの特徴である二重恐喝は、手口を確認できた被害企業のうち77%で実施され、また暗号資産による支払い請求は90%にもおよびました。

さらにランサムウェアの感染経路に関してもVPN機器からの侵入が55%で最も多く、次いでリモートデスクトップからの侵入が23%となっており、リモートワークが浸透してきた昨今の時勢からみると、まだセキュリティ対応の追いついていない穴をつく攻撃が多いことがわかります。

警察庁が被害を受けた企業・団体等に向けて実施したアンケートによると、被害後、復旧に要した期間は「即時~1週間」が最も多く全体の43%にあたります。次いで多いのは「1週間~1ヶ月」であることから、多くの企業は早々に復旧できているようです。

しかしながら、被害後の調査および復旧時の費用総額を見てみると、最も多いのは「1,000万円以上5,000万円未満」で全体の36%となっています。復旧の期間だけで見ればそれほど被害を大きく感じないところではありますが、調査および復旧時の費用総額を考えると、かなりのコストがかかってしまっているのが実情です。


注:図中の割合は小数点第1位以下を四捨五入しているため、総計が必ずしも100にならない

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R03_kami_cyber_jousei.pdf

またそういったコスト以外にも、ランサムウェアによる被害が業務に与えた影響について、「一部の業務に影響あり」と90%が回答しているものの、被害を受けた企業のうち2件は「すべての業務が停止」したため、もしランサムウェアの被害にあった場合はインシデント対応以外にも業務に支障が出てしまうことも忘れてはいけません。

なぜランサムウェア攻撃が増加していくの

ここまでみてきたとおり、国内外問わず依然として活発となっているランサムウェア攻撃ですが、なぜ拡大していく一方なのでしょうか。その理由として大きくは、下記のことが考えられます。

● RaaSビジネスとして儲かる市場ができている*4
● ランサムウェア攻撃をしても捕まりにくく、ローリスクハイリターンの状態である

既述の国外のランサムウェア事情でも触れましたように、ランサムウェアの市場は“稼げるビジネス”として活発であり、ビジネスとして儲けやすい状態にあります。

さらに攻撃者を捕まえるためにはこのように国際協力が必要不可欠であり、最近ようやく法整備などが整いつつある状況ではありますが、未だランサムウェア攻撃者が逮捕されにくいのが現状です。そういった状況からランサムウェア市場は今後も衰えることなく拡大していくことが想定されます。被害にあわないためにも、ランサムウェアを一時的な流行りの攻撃としてとらえるのではなく、今後も存在し続ける脅威だということを念頭において対策を行うことを推奨します。

進化し続けるランサムウェア

先に述べましたようにRaaSビジネス市場の活発さやランサムウェアの特徴の変化など、ランサムウェアは日々目まぐるしいスピードで進化し続けています。それに伴い、実際に被害件数や身代金の被害総額などが増加しているのも見てきたとおりです。また、テレワークやクラウドサービスの利用を緊急で対応した企業が多い中で、昨今のランサムウェアの特徴の一つである「VPN機器からの侵入」がメインの手法となっている今、そこが弱点となり得る企業が多く存在しています。

ランサムウェアの脅威は一時的なものではなく、来年、ないしはその先でも攻撃の手が伸びてくる可能性があることを忘れてはなりません。引き続きテレワーク・クラウド環境のセキュリティの見直しを行うことはもちろん、そういった働き方の変化に伴って増加している標的型攻撃メールやフィッシング攻撃についても警戒が必要です。

企業が行うべきランサムウェア対策の実効性評価

しかしながら、いくら警戒を強めて対策を行っていても、ランサムウェア攻撃を完全に防ぐことは難しいのが現実です。そこでBBsecが提案しているのは、完全に防ぐのではなく、攻撃への抵抗力を高めるという考え方です。そのために重要となってくるのは「攻撃・侵入される前提の取り組み」です。第一段階に侵入を防ぐ対策を行い、第二段階にもし侵入されてしまった場合に被害を最小化する対策を行うことで、多層防御を行うというものです。詳しくは「APT攻撃・ランサムウェア―2021年のサイバー脅威に備えを―」をご確認ください。

また、なかには思い浮かぶ限りの基本的な対策はすでに実施済みという方もいらっしゃるでしょう。そういった方々へ次のステップとしておすすめしているのは、「対策の有効性を検証する」という工程です。

BBsecでは多層防御実現のために「ランサムウェア対策総点検+ペネトレーションテスト」の組み合わせを推奨しています。

ランサムウェア対策総点検

「ランサムウェア対策総点検」では現状のリスクの棚卸を行うことが可能です。システム環境の確認や、環境内で検知された危険度(リスクレベル)を判定いたします。

ランサムウェア対策総点検サービス概要図
BBSecランサムウェア総点検サービスへのバナー
ランサムウェア感染リスク可視化サービス デモ動画

また弊社では、11月に「リスクを可視化するランサムウェア対策総点検」と題したウェビナーで、サービスのデモンストレーションとご紹介をしております。こちらも併せてご覧ください。

ペネトレーションテスト

「ペネトレーションテスト」では実際に攻撃者が侵入できるかどうかの確認を行うことが可能です。「ランサムウェア総点検」で発見したリスクをもとに、実際に悪用可能かどうかを確認いたします。

ペネトレーションテストサービス概要図

【例】

ペネトレーションテストシナリオ例

このように実際に対策の有効性を検証したうえで、企業・組織ごとに、環境にあった対策を行い、万が一サイバー攻撃を受けてしまった場合でも、被害を最小限にとどめられるような環境づくりを目指して、社員一人一人がセキュリティ意識を高めていくことが重要です。

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変貌するランサムウェア、いま何が脅威か
―2020年最新動向―

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データ等を不正に暗号化し、「身代金(Ransom)」を支払うよう個人や企業を脅迫・恐喝するランサムウェア。近年世界各地で猛威を振るい、日本国内での被害も複数報じられています。本記事では、そのランサムウェアをめぐる最新情報をご紹介します。なお、ランサムウェアに関する基本的情報については、「ランサムウェア その被害と対応策、もし感染したら企業経営者はどう向き合うべきか」をご参考ください。

ランサムウェア特集2021年版を公開しました!
2021年の最新動向については、「ランサムウェア最新動向2021
―2020年振り返りとともに―」をご覧ください。

ランサムウェアの現状

現在のランサムウェアは、「Ransomware-as-a-Service」(通称「RaaS」)と呼ばれる形態、すなわち、ランサムウェアそのものを提供するのではなく、サービスとして犯罪行為を提供する形態が主流となっています。また、従来のメールのばらまきやワームによる拡散のように機械的にランサムウェアをばらまく方式に加えて、攻撃者が手動で侵入し、ネットワーク内で慎重に被害範囲を拡大させて攻撃の影響を最大化する「人手によるランサムウェア攻撃(human operated ransomware attacks/campaigns)」が増えています。人手によるランサムウェア攻撃の手法には、APT(Advanced Persistent Threat:持続的標的型攻撃)との類似点が多く、APTへの対策がそのままランサムウェア攻撃への対策となりつつあるという現状があります。

また、単に身代金の支払いを要求するだけではなく、身代金を支払わなかったらデータの暴露を行うと脅すタイプのランサムウェア(とその犯行グループ)もあり、身代金を支払ったにもかかわらずデータが暴露されてしまったケースも出ています(なお、こうした犯行では、データを暴露するサイトがダークウェブに開設されています)。さらに、一部のランサムウェアはデータ破壊の機能も備えているため、以前にもましてオフラインバックアップの重要性が増しているともいえます。

身代金の額も年々上昇しており、ENISA(欧州ネットワーク情報セキュリティ庁)の2020年版年次レポートによると、2019年に支払われたと推計される身代金は100億ユーロ(約1.2兆円)を超えました。その他、各種調査機関の四半期レポートでも、2020年はさらに身代金の支払い額が増えていることが報告されています。

このような状況下においては、サイバー保険が一層重要性を増し、多くの企業ではランサムウェア等の被害からの復旧を前提として契約を行っていると考えられます。しかし、スイスの保険会社の米法人がランサムウェア攻撃をサイバー保険の免責事項にあたる戦争に該当するとして支払いを拒否したことから、現在係争中となっているケースがあり、「サイバー保険を掛けていれば大丈夫」と言い切れない点に注意が必要です。

各種ランサムウェアの概要

現在、活況を呈しているともいえるランサムウェア。2020年の時点でどのようなランサムウェアが確認されているのでしょう。主なものを以下に紹介していきます(類似の特徴を持つランサムウェアは、ランサムウェアファミリーとして、まとめて解説しています)。

REVil/Sodinokibi

<概要>
REVil、またの名をSodinokibi(またはSodin)。当初はアジア圏を中心に、現在は地域を問わず多くの被害が確認されているRaaSです。アフィリエイトプログラムも盛んで、支払われた身代金の30%~40%をアフィリエイトに支払っているとも言われ、組織的な犯行であることが知られています。2019年に活動停止を宣言したランサムウェアGandCrabのコードとの類似性が高いこと、身代金の支払いを行わなかった場合にデータの暴露を行う脅迫を行うことでも知られています。このランサムウェアファミリーの初期アクセス活動は、標的型フィッシングメールによるもののほか、リモートデスクトップサービス(RDP)やVPNゲートウェイなどの脆弱性を悪用したケースもあります。

<被害事例>
2020年1月に英・外貨両替商が被害を受け、230万米ドル(約2億5千万円)の身代金が支払われました。この事例では、脆弱性が修正されていないVPNサーバ「Pulse Connect Secure」が攻撃の足掛かりにされたことが知られています。

Nephilim/Nefilim

<概要>
このランサムウェアは、身代金の支払いと、身代金の支払いを行わなかった場合のデータ暴露という二重の脅迫を行うことで知られています。2020年6月にニュージーランドのCERTが公開した注意喚起によると、Cirtix ADCなどの脆弱性(CVE-2019-19781、2020年1月に修正プログラム公開済み)を悪用したり脆弱な認証機構を突破したりすることにより不正アクセスを行った後、Mimikatz、psexec、Cobalt Strikeなどのツールを利用して権限昇格や横展開を行って永続性を確保し、その後、このランサムウェアによるファイルの暗号化と身代金の要求が行われます。

<被害事例>
日本企業の豪子会社で2020年1月と5月の二度にわたってランサムウェアの被害が発生しましたが、そのうち5月に発生した被害がNefilimによるものであるとされています。なお1月のランサムウェア被害は、次に紹介するNetWalkerによるものでした。

NetWalker/Mailto

<概要>
主に欧米諸国とオーストラリアの企業をターゲットとしたランサムウェアで、他のランサムウェア同様に、身代金の支払いと、身代金の支払いを行わなかった場合のデータ暴露という二重の脅迫を行います。初期アクセスはRDP、標的型フィッシングメール、古いバージョンのApache TomcatやOracle WebLogic Serverへの攻撃により行われます。一方、侵入後の権限昇格にはSMBv3の脆弱性(CVE-2020-0796)などの脆弱性が用いられます。

<被害事例>
直近の事例では2020年10月にイタリアのエネルギー会社が被害を受け、1400万米ドル(約1億5千万円)の身代金を要求されたという報道*2があります。5TBほどのデータが暗号化されたうえ、持ち出された可能性があり、身代金を支払わない場合にはデータを暴露するという脅迫も受けています。

Ryuk/Conti

<概要>
Ryukは2019年に猛威を振るったランサムウェア、Contiは2020年に登場したランサムウェアで、類似性が指摘されています。いずれも北米での被害、それも公的機関や医療機関での被害が多い点に特徴があり、他のマルウェア(Trickbotなど)を介して侵入したのちデータの暗号化と持ち出し、身代金の要求を行います。Contiについては、身代金の支払いを拒否した組織のデータの暴露を行っており、EDRのフッキングをバイパスすることも報告されています。

<被害事例>
Contiについては2020年10月に米マサチューセッツ州とジョージア州の医療機関で被害があり、データの暴露が行われたことが確認されています。Ryukに関しては、米CISAが、医療機関での被害を受け、Trickbotおよびバックドア マルウェアであるBazarLoader/BazarBackdoorと合わせての注意喚起を行っています。

ChaCha/Maze/Sekhmet/Egregor

<概要>
ChaChaにルーツを持つランサムウェアがMazeで、SekhmetやEgregorはその亜種として位置づけられています。REVil/Sodinokibi同様にアフィリエイトモデルを採用している点に特徴があり、複数のグループが連動して動いているとされています。2020年11月、国内大手企業の被害により日本でも名を知られるようになったRagnar Lockerも、過去にアフィリエイトとして協力関係にあったといわれています。身代金の要求に加えて、支払いを拒否した場合のデータ暴露の脅迫を行う点もREVil/Sodinokibiと共通する点です。被害が発生しているのは特定の地域に限らず、世界規模と言っていいでしょう。Mazeでは、多様なエクスプロイトツールやマルウェアとの組み合わせで初期アクセスや横展開などが行われています。

<被害事例>
スイスのサイバー保険大手が2020年3月に被害を受けた事例や、2020年4月の米国の航空機メンテナンス会社の事例などが挙げられます。後者については、Mazeによるデータの窃取と公開を行ったうえで、攻撃後もターゲットのネットワーク内に潜伏し、データを摂取し続けていたことが判明しています。

その他のランサムウェア

  • Avaddon:botnetによりフィッシングメールが送信される点に特徴があるランサムウェア。RaaS。身代金要求に加えてデータ暴露の脅迫も行う。
  • CL0P:オランダの大学などが被害に遭ったランサムウェア。データ暴露のためのサイトを持っている。なおオランダの大学では身代金を支払ったことで復号鍵を入手し、データを復号化できた。
  • Dharma:侵入経路がRDPというオーソドックスなRaaS。MimikatzやLaZagneなどの追加のツールを使い、横展開する。
  • DopplePaymer:ランサムウェア「BitPaymer」をルーツに持つ。新型コロナウイルス(COVID-19)に関連したフィッシングメールを用いること、botnetやマルウェア感染させたインストーラなど多様な初期アクセスが確認されている点などが特徴。
  • Ragnar Locker:2020年11月に国内大手企業が被害を受けたランサムウェア。他のランサムウェアオペレータと協力して攻撃が行われる点に特徴がある。
  • WastedLocker:2020年7月、ウェアラブルデバイスやGPSの測位システムを提供する米企業への攻撃に用いられたランサムウェア。ロシアのサイバー犯罪組織・Evil Corpとの関連が指摘されている。

今後求められるランサムウェア対策とは

冒頭でも触れたとおり、今やランサムウェア攻撃はAPT(持続的標的型攻撃)と同様の戦術を用いるものとなっています。ランサムウェア攻撃とAPTの違いはもはや、攻撃者の最終的な目標が身代金をはじめとする金銭か、そうでないのか、という1点にしか過ぎないといえます。

「APTは国レベルのサイバー攻撃だから自分たちには関係ない」と思っていたとしたら、その認識を改める必要があります。今はランサムウェア攻撃でAPTと同じ手法が使われ、長期にわたる準備期間を経てデータを人質に取られ、身代金を要求される可能性がある―そんな時代になってしまったのです。

人手によるランサムウェア攻撃やAPTに対する対策は非常に複雑です。「今後いつ攻撃を受けることになるかわからない」という前提で、まずは自組織のシステムが攻撃者から見てどのような状態にあるか、現状を知ることが必要になります。セキュリティコンサルタントによるリスクアセスメントやペネトレーションテストによるリスクの洗い出しを行って、攻撃を受けた場合にどのような影響が起こりうるかを把握することを推奨します。

リスクアセスメントやペネトレーションテストなど今すぐには難しい、という場合は、初期アクセスに最も頻繁に用いられる標的型攻撃メールの訓練、公開Webアプリケーションの脆弱性診断、侵入された後の対策として重要なマルウェアによる横展開リスクの診断など、できることから少しずつでも手を付けていくアプローチをぜひ検討してください。

参考情報:
https://www.ipa.go.jp/archive/security/security-alert/2020/ransom.html
https://www.enisa.europa.eu/publications/ransomware
https://www.ipa.go.jp/archive/files/000084974.pdf


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