感染から暗号化までの動きを解説
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近年のランサムウェア攻撃は、単なるウイルス感染ではありません。VPN機器やリモートデスクトップを悪用して企業ネットワークへ侵入し、内部で横展開を行いながら、サーバや業務システム全体を停止させるケースが増えています。さらに最近では、データを暗号化するだけでなく、情報を窃取して公開を脅迫する二重脅迫型も主流となっています。本記事では、ランサムウェア攻撃の仕組みや代表的な攻撃手法、サプライチェーン攻撃や標的型攻撃との関係、近年増加している「RaaS(Ransomware as a Service)」の実態について解説します。
ランサムウェアの基本的な仕組みや全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
「ランサムウェアとは何か ―企業が知るべき被害・仕組み・対策の基本」
ランサムウェア攻撃はどのように進化してきたのか
ランサムウェア攻撃は、時間とともに大きく進化し、より複雑かつ高度になっています。初期のランサムウェアは、不特定多数へフィッシングメールを送信する「ばらまき型」が中心でした。攻撃者は大量のメールを配信し、その一部が感染することを狙う比較的単純な手法を用いていました。しかし現在では、特定の企業や組織を狙う「標的型攻撃」が主流になっています。攻撃者は事前に企業のネットワーク構成や脆弱性を調査し、侵入後は内部ネットワークを移動しながら重要なサーバや業務システムを狙います。その結果、単一端末だけでなく、企業全体の業務停止へ発展するケースが増えています。
さらに近年は、「サプライチェーン攻撃」を経由したランサムウェア感染も増えています。
サプライチェーン攻撃とランサムウェア被害
サプライチェーン攻撃とは、標的企業を直接攻撃するのではなく、取引先や委託先、関連企業などセキュリティが比較的弱い組織を踏み台にして侵入する攻撃手法です。企業が利用している外部サービスや委託先が侵害されることで、本来の標的企業へ不正アクセスが行われます。
2022年には、トヨタ自動車が取引先企業(小島プレス工業)へのサイバー攻撃の影響を受け、国内全工場の稼働停止を発表しました*1。この事例は、サプライチェーン全体を狙う攻撃のリスクを象徴するケースとして広く知られています。現在では、自社だけでなく、サプライチェーン全体を前提としたセキュリティ対策が求められています。
サプライチェーン攻撃については、以下の記事で詳しく解説しています。
「サプライチェーン攻撃とは ―委託先・外注先リスクから情報漏えいを防ぐ全体像―」
関連リンク:「拡大するランサムウェア攻撃! ―ビジネスの停止を防ぐために備えを―」
標的型ランサムウェア攻撃とは
現在のランサムウェア攻撃の多くは、特定の企業や組織を狙った標的型攻撃です。攻撃者は、標的型メール攻撃やVPN機器の脆弱性悪用、リモートデスクトップ接続(RDP)の悪用、認証情報の窃取、水飲み場攻撃など、複数の手法を組み合わせながら侵入を試みます。特に近年は、VPN機器やリモートデスクトップ経由で侵入し、内部ネットワークへ横展開するケースが多く確認されています。また、攻撃者は事前に企業の財務状況や業務特性を調査し、支払い能力が高い企業を狙う傾向があります。
関連リンク:「標的型攻撃とは?事例や見分け方、対策をわかりやすく解説」
なぜ企業全体が停止するのか
近年のランサムウェア攻撃では、個人端末だけでなく、企業のサーバや業務システム全体が標的になるケースが増えています。その背景には、企業活動全体を停止させることで、攻撃者がより高額な身代金を要求しやすくなるという事情があります。

攻撃者はまず、VPN機器やリモートデスクトップ接続(RDP)の脆弱性、あるいは窃取した認証情報を悪用して企業ネットワークへ侵入します。その後、管理者権限を取得し、内部ネットワーク内を横展開しながら、ファイルサーバやバックアップサーバなど重要システムを探索します。さらに近年では、暗号化を行う前にデータを窃取し、情報公開を脅迫材料として利用するケースも増えています。最終的には、業務システムやサーバ全体が暗号化され、企業活動そのものが停止する事態へ発展します。この結果、企業では業務停止や顧客対応の中断だけでなく、情報漏えいや生産ライン停止、医療機関における診療システム停止など、事業継続に深刻な影響が発生することがあります。
ランサムウェアによる被害や経営リスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「サイバー攻撃被害コストの真実―ランサムウェア被害は平均2億円?サイバー攻撃のリスク評価で“事業停止損害”を可視化」
二重脅迫・多重脅迫の脅威
警察庁の調査「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によれば、令和4年上半期以降、国内ではランサムウェアによるサイバー攻撃の被害が高い水準で推移しています。近年主流となっているのが、「二重脅迫型」のランサムウェアです。これは、単にデータを暗号化するだけではなく、事前に情報を窃取し、「データの暴露(公開)をされたくなければ身代金を支払え」と脅迫する手法です。さらに最近では、DDoS(分散型サービス拒否)攻撃を組み合わせたり(三重脅迫)、顧客や取引先へ直接通知したり(四重脅迫)、SNS等で情報公開を示唆したりする「多重脅迫」も確認されています。また、データを暗号化せず、情報窃取だけで脅迫する「ノーウェアランサム」と呼ばれる手法も登場しています。
Ransomware as a Service(RaaS)とは

近年、ランサムウェア攻撃が急速に拡大している背景の一つに、「RaaS(Ransomware as a Service)」と呼ばれる仕組みがあります。これは、ランサムウェアを開発するグループが攻撃ツールを“サービス”として提供し、別の攻撃者(アフィリエイト)が実際の攻撃を行うという分業型のビジネスモデルです。
従来は、高度な技術力を持つ攻撃者しかランサムウェア攻撃を実行できませんでした。しかしRaaSの登場によって、専門的な開発能力を持たない攻撃者でも、提供されたツールを利用して攻撃を行えるようになりました。その結果、攻撃者の数が増加し、攻撃の分業化や組織化も進んでいます。
現在では、ランサムウェア開発者、侵入を担当する攻撃者、情報窃取や脅迫を行うグループなどが役割を分担しながら活動しており、ランサムウェア攻撃そのものが“犯罪ビジネス”として拡大しています。これにより、攻撃件数だけでなく、攻撃手法そのものも急速に高度化・複雑化しています。
なぜ“侵入前提”で考える必要があるのか
近年のランサムウェア攻撃は、VPN機器やリモートデスクトップ接続の脆弱性、認証情報の窃取など、複数の経路を組み合わせながら侵入するケースが増えています。また、侵入後も内部ネットワークを横展開し、サーバやバックアップ環境まで攻撃対象を広げるなど、従来より高度で組織的な攻撃が主流になっています。そのため現在では、「完全に侵入を防ぐ」ことだけを前提とするのではなく、侵入される可能性を想定したうえで、被害を最小限に抑える考え方が重要になっています。特に、早期検知や初動対応、アクセス権限管理、バックアップ運用など、侵入後の被害拡大を防ぐための体制整備が、企業に求められるようになっています。
まとめ
現在のランサムウェア攻撃は、単なるマルウェア感染ではなく、企業活動全体を停止させる深刻な経営リスクへと変化しています。近年は、サプライチェーン攻撃や標的型攻撃、情報公開を伴う二重脅迫、RaaS(Ransomware as a Service)による攻撃の分業化などによって、攻撃そのものが高度化・組織化しています。
そのため、従来のように「ウイルス対策ソフトを導入していれば安心」という時代ではなくなっています。企業には、侵入経路や攻撃の流れ、被害発生の仕組みを正しく理解したうえで、平時から備える姿勢が求められています。特に、侵入を完全に防ぐことだけではなく、侵入後の被害拡大を抑える視点を持つことが、これからのランサムウェア対策では重要になります。
ランサムウェア攻撃がどのような経路で侵入するのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「ランサムウェアの感染経路とは ―企業が見落としがちなVPN・RDP侵入リスクを解説」
公開日:2024年2月15日
更新日:2026年5月27日
編集責任:木下
































