AIコーディング入門
第3回:AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは

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AIコーディング3アイキャッチ(AIエージェント時代のコーディング)

生成AIを活用したコーディングの現場で、いま最も注目されているトピックのひとつが「AIエージェント」です。エージェントは人間の最小限の指示をもとに計画・推論・実行を繰り返す自律的な仕組みであり、シングルエージェントからマルチエージェントまで多様なアーキテクチャが登場しています。さらに通信の標準化を担うMCP(Model Context Protocol)A2A(Agent-to-Agent)といったプロトコルの整備が進み、エコシステム全体に大きな影響を与えています。本記事では、AIエージェントの基本構造、利点とリスク、新しい標準プロトコルの動向について解説します。

※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

AIエージェントとは何か

生成AIを使用したコーディングのなかでも昨今注目を浴びているのがAIエージェント(Agentic AI)を用いたAgenticコーディングです。Agenticコーディングの前にまずはAIエージェントの動きを見てみましょう。AIエージェントは人間による最低限の指示や監督をもとに計画・推論・実行を繰り返す、自律的処理を行うAIです。

シングルエージェントの仕組み

まずはわかりやすい、単一のエージェントのみが動くシングルエージェントのアーキテクチャを見てみましょう。下図はシングルエージェントのアーキテクチャを示したものです。

図1:シングルエージェントのアーキテクチャ

シングルエージェントのアーキテクチャの図
参考:OWASP LLM Applications & Generative AI Top 10(https://genai.owasp.org/resource/owasp-top-10-for-llm-applications-2025/), p.8より弊社翻訳

シングルエージェントモデルではアプリケーションからの入出力(人間による指示)をもとに単一のエージェントが自律的にルーチンを実行し、LLMモデルや関連サービスとの間の連携を図り、出力を行います。人による監督はHuman in the loop(HITL)という形で行われます。この図の中でいうAIアプリケーション(及びエージェント)が各種サービスやデータベースなどと通信する際、昨今ではMCP (Model Context Protocol)を用いた標準化された通信プロトコルが用いられていることが増えています。MCPについては後程解説します。

マルチエージェントの仕組み

一方マルチエージェントのアーキテクチャは下図のとおりです。

図2:マルチエージェントのアーキテクチャ

マルチエージェントのアーキテクチャの図
参考:OWASP LLM Applications & Generative AI Top 10(https://genai.owasp.org/resource/owasp-top-10-for-llm-applications-2025/), p.10より弊社翻訳

マルチエージェントの場合はAIアプリケーション(及びエージェント)と各種サービス、DBなどとのMCPでの通信に加えて、エージェント間の通信(図中のマルチエージェント通信)が必要となります。エージェント間の通信を標準化したものがA2A(Agent2Agent)プロトコルになります。こちらも後程解説します。

AIエージェントの利点とリスク

AIエージェントを利用する場合、人間の監督・指示が最低限で済む一方で、以下のような利点と課題・リスクが存在します。

図3:AIエージェントの利点と課題・リスク

AIエージェントの利点・課題・リスク

上記に挙げたAIエージェントのリスクのうち、「誤行動・報酬設計の欠陥」と「倫理・説明責任」を取り上げて解説します。

誤行動・報酬設計の欠陥

報酬のミススペックによりエージェントが意図しない行動をとることを指します*1。 最近の報告ではエージェントが自身の地位を脅かされる場合や、目標の対立が発生した場合に内通者のような不正行動を低率ながら遂行する可能性が指摘されています*2

倫理・説明責任

AIエージェントの自律判断の責任を負うのは誰かという問題。倫理的な問題に加えて著作権に代表されるような法的な問題に加えて、信頼性・公平性といった問題についての課題も指摘されています*3

新しい標準プロトコル:MCPとA2A

ここ最近、「MCP」や「A2A」といったキーワードを目にする機会が増えているのではないでしょうか。ここでは簡単にMCPとA2Aについてご紹介します。

MCP(Model Context Protocol)とは

MCPとはAIアプリケーションがLLMにコンテキストを提供する方法を標準化するプロトコルで、Anthropicによって仕様が策定され、現在はオープンソース化されています。現在C#、Java、Kotlin、Python、Ruby、Swift、TypeScript向けのSDKが提供されており、幅広い言語環境で利用できること、AIアプリケーションのUSB-Cポートとして標準化されていること、そして認証認可にOAuth2.1を用いることが必須要件となっている点など、順次仕様が変更されており、新しいプロトコルとして注目を浴びています。またオープンソースであることやそのコンセプトから多くの実装例がすでに存在しています。一方でセキュリティ上の問題点も指摘されています。

図4:MCP関連の主なセキュリティ課題

MCP関連のセキュリティ課題(仕様レベル・実装上の問題、AI・MCA独特の脆弱性、一般的な問題)

A2A(Agent-to-Agent)とは

A2AはGoogleが立ち上げたエージェント間の通信プロトコルで、2025年6月にLinux財団に寄付され、Linux財団を中心に開発が進められています。こちらはGoogleのVertexなどを皮切りに実装が始まっています。A2Aプロトコルはマルチエージェントでの処理のニーズの増大、クラウドでのベンダーロックイン問題の影響でベンダーロックインの回避への強い要求があったことや、AIエージェントに対するコンプライアンスやガバナンス要求(EUのAI法など)の高まりといったところにうまくマッチしたものとも言えます。

AIエージェントは今後の開発を大きく変える存在ですが、その基盤を支えるのがMCPやA2Aといった標準プロトコルです。次回第4回では、これらの仕組みをより詳しく掘り下げ、エンジニアが知っておくべき活用ポイントを解説します。


―第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」へ続く―

【参考情報】

【連載一覧】

―第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」―
―第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」―
―第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」―
第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装
第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望

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    AIコーディング入門
    第2回:プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法

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    AIコーディング2アイキャッチ(AIコーディングの効率化の手法と課題)

    生成AIを使ったコーディングでは、プロンプトエンジニアリングが効率化の王道として知られています。しかし実際には、RAG(検索拡張生成)やファインチューニングといった手法を組み合わせることで、さらに精度や体験を向上させることが可能です。本記事では、これらの技術の概要とAIコーディングにおける活用例、そして共通して立ちはだかる品質・性能・セキュリティの課題とその解決の方向性を解説します。

    ※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

    プロンプトエンジニアリング以外の効率化手法

    プロンプトエンジニアリングは、手軽に(安価に)試せる生成AIの体験の改善や効率化の手法として位置づけられています。そして、プロンプトエンジニアリング以外でも生成AIの効率化や体験の改善、特定の目的のための調整などができる手法としてファインチューニングRAG(Retrieval-Augmented Generation)があります。以下の図はそれぞれの手法を簡単にまとめたものです。

    図 1 プロンプトエンジニアリング、RAG、ファインチューニングの概要

    AIを使ったコーディング(以下AIコーディング)でもこの3つの手法は生成コードの改善や生成プロセスの効率化のために用いられます。また、企業や組織でのコーディングに際しては、個人レベルでの作業でのプロンプトエンジニアリング、内部レポジトリやAPIドキュメントとの結合による効率化を行うRAG、コーディング規約やスタイルなどの品質管理などを目的としたファインチューニングというように、目的別に同時並行で使うことができます。

    AIコーディング全般に共通する課題

    AIコーディング自体は一般的といえる領域に入りつつあります注 1) が、一方でAIコーディング全般に共通する課題として、大きく分けて以下の3つの課題が挙げられます注 2)

    ロジックの不整合

    • 小さなコードであれば問題にならないことも多いですが、大きなコードになればなるほど、コード内のロジックで不整合が発生することが増えます
    • プロンプトで与えられているビジネス上の目的を正しく解釈できない場合、期待されない出力をする可能性もあります

    メモリなどのボトルネックに対する配慮の欠如

    実行環境に関する配慮がないため、メモリを予想以上に使用するコードや、処理パフォーマンスに配慮しない出力が出てくることが往々にしてあります

    セキュリティへの配慮の欠如

    • セキュリティに対して前出のような配慮事項を指示しない限りは配慮が欠如していることが多くあります
    • 仮に配慮事項の指示を行っても不正確・セキュアでない出力が出される確率も一定程度残存します

    品質とセキュリティを守るプロセス設計

    AIコーディングが進化してもなお、人の手にゆだねられているものがあります。それは「何のためにコーディングするのか」「コードを使ってどんな業務をして、その結果として何を得るのか」といったビジネス上の目的を設定することと、コードが正確に動作することやセキュリティ上問題がないことを確認するプロセスを設けることです。コードの品質やセキュリティに関するプロセスは通常、ソースコード診断でセキュリティの確認を行うことが一般的です。

    最近ではDevSecOpsの一環として、コード開発中にSAST(Static Application Security Testing)ツールをCI/CDパイプラインに統合するケースも増えてきています。また、完成品に対するテストとしてDAST(Dynamic Application Security Testing)を実行することも必要でしょう。これはWebサイトであればWebアプリケーション診断が該当します。


    ―第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」へ続く―

    注:
    1)2024年5月に実施されたプログラマー・エンジニアを中心としたコミュニティであるStackOverflowによる調査では開発にAIを利用すると回答したプロフェッショナルの開発者は63.2%でした。
    2)CSET “Cybersecurity Risks of AI Generated Code” (Jessica Ji, Jenny Jun, Maggie Wu, Rebecca Gelles, November 2024)

    【参考情報】

    【連載一覧】

    ―第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」―
    ―第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」―
    ―第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは」 ―
    ―第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装」―
    第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
    第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望


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    狙われる医療業界2025 医療機関を標的とするサイバー攻撃

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    医療機関のサイバーセキュリティ(アイキャッチ画像)

    前回の記事の公開から約5年が経ちましたが、医療機関を標的とするサイバー攻撃の脅威はむしろ増加しています。特にランサムウェアによる被害は国内外問わず深刻化し、患者の命が危険に晒されてしまう可能性も出てきています。いまやインシデントを“他人事”とせず、「命を守るもの」という認識で組織一丸となってセキュリティ対策の見直しをすることが重要です。本記事では医療機関へのサイバー攻撃の脅威とセキュリティ対策の見直しのためのポイントをご紹介します。

    2020年12月公開の記事「狙われる医療業界―「医療を止めない」ために、巧妙化するランサムウェアに万全の備えを」をまだご覧になっていない方はぜひ、この機会にご一読ください。

    世界的に高まる医療分野へのサイバー攻撃

    ランサムウェアによる被害は世界中で後を絶たず、いまや医療分野は重要な標的の一つとされています。米国のセキュリティ監視サイトRansomware.liveの統計によれば、2025年時点でランサムウェア被害を受けた業種の中で、医療・ヘルスケア関連は第3位に位置しています。医療業界が金融や行政に並ぶほどの標的となっている現実は、決して無視できません。

    Ransomware.live統計円グラフ(ランサムウェア被害を受けた業界)
    出典:Ransomware.liveRansomware Statistics for 2025」(https://www.ransomware.live/stats

    国内でも相次ぐ深刻な被害事例

    日本国内でも、深刻な被害事例が相次いで報告されています。たとえば2024年3月、鹿児島県の国分生協病院では、ランサムウェアによるサイバー攻撃により、電子カルテをはじめとする複数のシステムが使用できなくなり、患者の診療に支障が出るという被害が発生*4しました。また、同年の5月に起きた岡山県精神科医療センターでは、外来診療の一部を中止せざるを得ない事態に追い込まれました*2。このように、サイバー攻撃は単に業務の一時停止を招くだけでなく、医療提供そのものに影響を与え、患者の命を危険に晒す恐れがあるという点で、他業種におけるサイバー被害とはその意味において一線を画します。

    サイバー攻撃は“日常の医療”を止めうる

    Silobreaker社がまとめた医療業界に関する分析レポートでも、ヘルスケア分野に対するサイバー脅威の増加は顕著であり、医療情報の価値の高さとシステムの脆弱性が攻撃を呼び込んでいると指摘されています。国内外でのこうした事例は、「サイバー攻撃が日常の医療を止め得る存在である」という現実を強く物語っています。特に日本では、「まさかうちが」という意識が依然として根強く残っているのが現状ですが、医療機関はすでに、攻撃者にとって“おいしいターゲット”であることを自覚すべき時期に来ています。

    攻撃者はなぜ医療機関を狙うのか

    攻撃側の論理①わきの甘さ=「機会要因」の存在

    医療機関がサイバー攻撃の標的になる。―これはもはや偶発的なものではなく、確かな傾向として定着しつつあります。過去の記事でも言及しましたが、2025年現在ではその背景にある“攻撃側の論理”がより鮮明になってきています。

    多くの人が誤解しがちなのは、「医療機関は狙われている」という表現があたかも特定の施設に対して意図的な攻撃が行われている、という印象を与えてしまう点です。確かに、一部には病院のネットワークやデータに照準を合わせた標的型攻撃も存在します。しかし実態としては、多くの場合、攻撃者は最初から「病院を狙って」いるわけではありません。攻撃者は、不特定多数の組織や端末に対して無差別にスキャンをかけ、リモートアクセスサービスやVPN機器、ファイル共有サーバといった、公開された情報から侵入経路を探しています。そしてその中で、意図せず医療機関が引っかかるのです。つまり、標的にされたのではなく、“侵入可能だったから侵入された”というのが現実なのです。

    医療機関では古いシステムが更新されずに残っている、または、ネットワークの分離が不完全なまま稼働していることがあります。また、パスワードの使い回し、脆弱性が放置されたソフトウェア、機器の寿命サイクルの見落としなど、基本的なセキュリティ対策に隙があることが少なくありません。そして、攻撃者にとっては、それこそが格好の「入り口」になるのです。

    攻撃側の論理②「動機」金になる標的としての医療機関

    ランサムウェア攻撃を実行するサイバー攻撃者の目的は、金銭的な利益です。医療機関には、個人情報(診療記録、保険情報、連絡先など)や経営上の内部資料、研究データといった売買可能な資産が豊富にあります。また、医療機関は儲かっているように思われており、そのうえで業務の中断が患者の生命に直結するため、身代金の支払いに応じやすいに違いない、と見られているわけです。つまり、医療機関が狙われるのは、「わきが甘いから侵入しやすい」+「金銭的利益を得やすい重要なデータの宝庫である」=“コストパフォーマンスに優れた良い標的”と見なされているからと考えられます。

    2020年以降医療サイバーセキュリティはどう変わったのか

    制度とガイドラインの整備が進む

    前回の記事からの5年間で、医療分野のサイバーセキュリティを取り巻く制度やガイドラインも着実に充実してきています。例えば2025年5月に、厚生労働省から「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和7年5月版)」が公開され、以前に比べて具体的かつ実践的な内容になっています。クラウド環境やBCP(事業継続計画)への配慮、IoT・BYODといった新たなリスクへの言及も盛り込まれています。

    また、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を設けたり、EDR(Endpoint Detection and Response)などの対策製品を導入したりする医療機関も増えてきました。CSIRTを中心とした地域単位の訓練や、院内外のネットワーク構成の共有と点検を含む取り組みが、学術会議や業界団体の枠組みとして増加しています*3。サイバー攻撃に備える土台作りは、着実に進みつつあるといえるでしょう。

    2025年いまだ残る基本的な課題

    一方で、5年前と変わらぬ問題を目にする場面も少なくありません。その一つが、「パスワード管理」です。初期設定のまま放置されたアカウント、業務上の利便性から生まれる使い回し。こうしたわきの甘さが、攻撃者の入り口になることは以前から分かっていたはずですが、2024年の岡山県精神科医療センターの事例などを見ると、なおも同様の傾向が残っていることがうかがえます。また、電子カルテやシステムのクラウド化に対しても、依然として現場では極端な見方が交錯しているように思えます。「クラウドだから安全」と根拠のない安心感を持つ一方で、「クラウドだから怖い」「電子カルテという形式そのものが危ない」といった漠然とした不安も根強く見受けられます。

    どちらにしても共通するのは、仕組みやリスクを正しく理解しないまま思い込んでいるケースが少なくないということです。実際には、クラウドの活用は有効な手段のひとつでありつつも、アクセス制御や端末管理、ネットワーク構成など、設定次第でその安全性は大きく変化します。こういった基本的な理解の重要性や注意点は、5年前から現在も変わらずに示され続けてきたものですが、いまだに“本質的な理解”が広がり切っていないように見受けられます。

    基本的な課題の根底には、インシデントを“自分事”として捉えづらい空気があるのかもしれません。実際に深刻な被害を受けた他機関の事例を目にしても、「うちには関係ない」とどこかで思ってしまう感覚。それは、ごく自然な反応である一方で、取り返しのつかないインシデントに繋がりかねません。

    自組織のセキュリティ対策の見直しを

    医療機関向けチェックリストやガイドラインの活用

    ここまで見てきたように、医療機関に対するサイバー攻撃は後を絶たず、その影響は診療の継続性や患者の安全、そして組織の信頼性にまで及びます。「自分たちは大丈夫だろう。」「人命最優先で、他を考えている余裕はない。」―そのように考えがちですが、日々の業務に追われている医療現場こそ、今一度立ち止まって、対策の棚卸しを行うことが求められています。対策の見直しにあたっては、厚生労働省が公開している「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和7年5月版)」の活用が効果的です。

    厚生労働省「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和7年5月https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001253950.pdf

    本チェックリストは、技術的な対策だけでなく、組織体制や訓練、業者選定の観点まで網羅されており、現場レベルでも活用しやすい実践的な内容となっています。また、業界全体で参照される基準として、次のようなガイドラインも押さえておくとよいでしょう。

    これらの資料には、医療の特殊性を踏まえた対応策が具体的に記載されており、ベンダや関係業者との連携の際にも参考となります。

    現場の声と経営的視点をつなげる「可視化」

    セキュリティ対策は単なる技術的作業にとどまらず、組織全体で「守るべきもの」を共通認識することが大切です。そのためにも、経営層が積極的に関与し、現場の声を聴きながら継続的な投資と改善を進めていくことが求められます。医療機関にとって、セキュリティはコストではなく、患者の信頼と組織の生命線であることを改めて認識すべきです。その助けになるのが、リスクの「可視化」です。

    仮に端末のひとつがマルウェアに感染したとき、その端末が院内のどの機器と通信しているのか、そこから電子カルテや予約システムにアクセスされたりしないか、バックアップはきちんと機能するかなどなど…。こうした攻撃時の経路や起きうる事象をあらかじめ可視化し、把握しておくことは、被害拡大の防止やインシデント対応の迅速化に大きな効果をもたらすのみならず、経営層の理解を得ることにもつながります。可視化によって得られる「想定していなかった侵入経路」「明らかになる不十分なセキュリティ対策」「攻撃発生時に起きうる具体的な被害」といった情報が、経営層や多くの医療従事者に理解してもらい、組織全体で防御力を高めるための重要な意思決定のための正しい判断材料となりえるでしょう。

    BBSecでは

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。詳細・お見積りについてのご相談は、以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

    アタックサーフェス調査サービス

    インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

    また費用の問題から十分な初動対応ができないといった問題が発生しかねない状況を憂え、SQAT® 脆弱性診断サービスのすべてに、サイバー保険を付帯させていただいています。

    サイバー保険付帯の脆弱性診断サービス

    BBSecのSQAT® 脆弱性診断サービスすべてが対象となります。また、複数回脆弱性診断を実施した場合、最新の診断結果の報告日から1年間有効となります。詳細はこちら。
    https://www.bbsec.co.jp/service/vulnerability-diagnosis/cyberinsurance.html
    ※外部サイトにリンクします。

    エンドポイントセキュリティ

    組織の端末を24時間365日体制で監視し、インシデント発生時には初動対応を実施します。
    https://www.bbsec.co.jp/service/mss/edr-mss.html
    ※外部サイトにリンクします。

    インシデント初動対応準備支援

    体制整備や初動フロー策定を支援します。
    https://www.bbsec.co.jp/service/evaluation_consulting/incident_initial_response.html
    ※外部サイトにリンクします。

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    2025年2Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
    -KEVカタログで振り返る2025年上半期の脆弱性動向-

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    米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)から公開されている「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」は、実際に攻撃に悪用された脆弱性の権威あるリストとして、組織のセキュリティ対策の優先順位付けに不可欠なツールとなっています。本レポートでは、KEVカタログに2025年4月1日~6月30日に登録・公開された脆弱性をはじめとし、2025年上半期を振り返り、件数の推移や影響を受けたベンダー、脆弱性の種類や深刻度などを分析します。

    本記事は2025年第1四半期~第4四半期の統計分析レポートです。以下の記事もぜひあわせてご覧ください。
    2025年1Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
    2025年3Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析
    2025年4Q KEVカタログ掲載CVEの統計と分析

    記事の目的と対象範囲

    本記事の目的は、KEVカタログに登録された脆弱性の傾向を把握し、組織が優先すべきセキュリティ対策の方向性を明確にすることです。対象期間は2025年4月1日から6月30日までの3か月間で、この期間に新たに登録された全59件の脆弱性を分析対象としています。

    KEVカタログとは何か、1Q分析レポートとの関係

    KEVカタログは、既知で悪用が確認された脆弱性をリスト化したものであり、攻撃者が現実に利用している脆弱性のみが掲載されます。1Q記事では、2025年1〜3月の動向を分析し、MicrosoftやAppleをはじめとする主要ベンダー製品のリスクの高さを指摘しました。今回の2Q分析では、その傾向が継続しているか、新たな特徴が現れたかを確認します。

    2025年上半期(1月~6月)の登録件数推移

    2025年2Qに新規登録された脆弱性は以下の通りです。

    • 4月:15件
    • 5月:24件
    • 6月:20件

    2025年1月から6月までの登録件数推移を見ると、1Qは計65件、2Qは計59件とやや減少しました。しかし5月には前月比約60%増加しており、特定ベンダーの脆弱性修正公開が影響していると考えられます。過去の傾向を見ると、四半期内でも特定月に集中して登録されるケースが多く、特に月例アップデートや大規模製品改修の直後に件数が急増する傾向があります。

    ベンダー別 登録件数ランキング

    2Qで登録件数が多かったベンダーは以下のとおりです。

    1. Microsoft – 74件
    2. Apple – 27件
    3. Adobe – 26件
    4. Google – 21件
    5. Linux – 10件
    6. Oracle / D-Link / Cisco – 各9件
    7. Samsung / QNAP – 各8件

    特にMicrosoftは依然として突出しており、全体の過半数近くを占めています。またApple、Adobe、Googleも上位常連であり、いずれもエンドユーザー利用率が高く、攻撃者にとって魅力的な標的であることがわかります。利用者はこれらベンダーのセキュリティ情報公開を継続的に監視する必要があります。一方で、D-LinkやQNAPなどネットワーク機器・NASベンダーの存在も目立ち、SOHOや中小企業にとっては「社内ネットワークの出入り口」への対策強化が求められます。

    脆弱性タイプ別(CWE)分析

    登録された脆弱性をCWE(Common Weakness Enumeration)で分類すると、次の傾向が確認されました。

    • CWE-416(解放済みメモリの使用) – 26件
    • CWE-119(メモリバッファ境界内での不適切な処理制限 / CWE-787(範囲外の書き込み) – 各24件
    • CWE-78(OSコマンドインジェクション) – 18件
    • CWE-20(不適切な入力検証) – 17件
    • CWE-264(権限・アクセス制御の不備) – 14件

    特に「解放済みメモリの使用」や「範囲外の書き込み」といったメモリ安全性の欠如は、任意コード実行や権限昇格など重大な影響を引き起こす可能性が高く、依然として頻出しています。また、OSコマンドインジェクションや入力検証不備といった脆弱性も継続して悪用されており、過去に修正されたはずの問題が繰り返し登場していることがわかります。

    CVSSスコア基本値分布

    • Critical(9.0〜):約55%
    • High(7.0〜8.9):約40%

    攻撃者はCriticalスコアだけでなく、Highスコアの脆弱性も積極的に悪用しています。

    既存の脆弱性の悪用傾向

    2QのKEVデータには、直近発見の脆弱性だけでなく、数年前に公表された古い脆弱性も多く含まれています。これらはパッチ未適用や製品サポート終了に伴う放置が原因であり、攻撃者は既知の脆弱性を効率よく悪用しています。特に2010年代半ば〜後半の脆弱性が今もリストに登場しており、古いから安全という認識は極めて危険です。資産棚卸しとパッチ適用の徹底が欠かせません。

    影響を受けた製品の例

    今回の四半期では、以下のような広く利用される製品がKEVカタログに登録されました。

    • Microsoft Windows、Office製品群
    • Apple iOS / macOS
    • Adobe Acrobat / Reader
    • Google Chrome / Android
    • D-Linkルーター製品
    • QNAP NASシリーズ

    これらはいずれも多くの組織で利用されており、脆弱性の悪用が確認された場合、組織規模を問わず被害に直結します。

    企業が取るべき対応

    2025年2Qの傾向から、企業や組織は以下の対応を優先すべきです。

    1. 主要ベンダーのセキュリティ情報監視 – 特にMicrosoft、Apple、Adobe、Googleは月次更新を追跡
    2. メモリ安全性対策 – CWE-416やCWE-119に該当する脆弱性のパッチを最優先で適用
    3. 古い脆弱性の棚卸し – 製品のサポート終了日とパッチ適用状況を定期確認
    4. ネットワーク機器の更新 – D-LinkやQNAPなどのファームウェア更新を怠らない
    5. 社内啓発と運用強化 – OSコマンドインジェクションなどの脆弱性対策を強化

    まとめ

    2025年2QのKEVカタログは、依然として主要ベンダー製品の脆弱性が大きな割合を占め、メモリ安全性の欠如や古典的なインジェクション攻撃が引き続き悪用されていることを示しています。さらに、過去の古い脆弱性が現役で攻撃対象になっている現実は、資産管理とパッチ適用の遅れが依然として大きな課題であることを物語っています。次四半期に向けては、セキュリティ更新の優先順位付けと計画的な運用の強化が求められるでしょう。

    BBSecでは

    BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

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    AIコーディング入門
    第1回:Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎

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    AIコーディング入門(1)アイキャッチ画像(AIと人のイメージ)

    AIの進化によって、ソフトウェア開発の現場では「コードを書く」という行為そのものが変わり始めています。本シリーズ「AIコーディング入門」では、生成AIを活用した新しい開発スタイルを多角的に解説します。第1回では、注目のキーワードである「Vibeコーディング」と「プロンプトエンジニアリング」について、その意味や実際の活用方法、そして潜む課題についてご紹介します。

    ※本稿は2025年7月上旬に執筆しているものです。ご覧いただく時期によっては古い情報となっている場合もありますので、ご承知おきください。

    Vibeコーディングとは何か?

    「Vibeコーディング」という言葉をご存じでしょうか。この言葉はOpenAI社の創設メンバーの一人であるアンドレイ・カーパシー(Andrej Karpathy)が2025年2月にXに投稿したポスト注 1)で使った言葉で、以降、生成AIを利用したコーディングの中でも雰囲気、ノリ、感覚注 2)を軸にしたコーディングを表す言葉で、2025年上半期のAIコーディング関連の流行語といっても過言ではないでしょう。

    言葉の由来と流行の背景

    Vibeコーディングが指すコーディングはコードそのものを書くことよりも、大まかな目標や感覚に基づいてAIをアシスタントとして活用しながらコードを作っていく行為を指しています。この言葉は流行語ならではの賛否両論を巻き起こしていますが、そもそも言い出した本人も「雰囲気(vibe)」で使った言葉でしょうから、確固たる定義があるわけでもないのが実情で、真面目に語るほどでもないのかもしれません。実際に生成AIを使用してちょっとしたコーディングをすると、(特に最近のモデルを使う場合は)人間が目標や要件を定義してしまえば、ある程度の規模のコードまでは自動的に生成してくれるようになってきています。一度でもコーディングに使ったことがある人であれば、Vibeコーディングが指すものは何となくわかる、そんな流行語なのでしょう。

    Vibeコーディングの最大の問題

    一方でVibeコーディングの最大の問題として挙げられるのが、プログラミングの概念が理解できない人でもコードを生成できるという点です。SNSなどをみると、Vibeコーディング、要するに生成AIによる自然言語のプロンプトによってコードの生成数が上がっても品質が低いため、かえって確認に手間取るという指摘をよく見かけます。また、手動でプログラミングを進める機会・経験が減ることでコードのテストやデバッグといったプロセスを知るエンジニアが逓減ていげんしていき、結果として誰もコードの品質の確保できる人がいないのではないかという指摘も多くみられます。また、そもそも生成AIの生成するコード自体の信頼性は低いという指摘もあります。

    セキュリティ指示の有無がコード生成に与える影響

    2025年に公開された論文とその後の研究結果を公開しているWebサイト注 3)では、セキュリティに関する指示をプロンプト内で与えない場合と一般的なセキュリティに関する指示を与えた場合、そして非現実的かつ厳格なセキュリティに関する指示を与えた場合とで生成AIのコードの正確性やセキュアさについての各モデルの比較がされています。一般的な指示はベストプラクティスに従うことと脆弱性を作らないことだけを指示するもので、さらに厳格な指示では一般的な指示に加えて特に指定した脆弱性注 4)に対してコードが安全であることを確認することを指示するものとなっています。指示が全くない場合に比べて、一般的な指示だけでも不正確またはセキュアでないコードの割合を抑制する傾向にあること、厳格な指示であれば正確かつセキュアなコードの割合を押し上げる効果があることが全体としてみて取れます。注 5)少なくとも、という話にはなりますが、AIでコードを生成する際にはセキュリティに対して配慮した内容をプロンプトに少し含めるかどうかだけでも多少の差が出るというのは意識する価値がありそうです。ただしプロンプトを配慮しても完璧は目指せない点にも注意が必要です。

    プロンプトエンジニアリング

    Vibeコーディングという言葉が世に放たれた頃、ちょうど生成AI各社がプロンプトエンジニアリングガイドを公開しました。下表は生成AIサービス各社が提供するプロンプトエンジニアリングガイドの一覧です。いずれも利用者が生成AIに対して適切かつ効率的なプロンプトを入力することで、生成AIが利用者の意図を理解し、期待される回答を出力するためのガイドになっています。

    表 1 主要なプロンプトエンジニアリングガイド一覧

    会社名生成AIサービスプロンプトエンジニアリングガイド
    AnthropicClaudehttps://docs.anthropic.com/ja/docs/build-with-claude/prompt-engineering/overview
    GoogleGemini, Vertexhttps://cloud.google.com/discover/what-is-prompt-engineering?hl=ja
    OpenAIChatGPT, Sorahttps://help.openai.com/en/articles/6654000-best-practices-for-prompt-engineering-with-the-openai-api

    曖昧な指示が生むAIの誤解

    AIコーディングにおける課題の一つは、利用者が生成AIにプロンプトとして与えるコンテキストに一貫性がない、生成AIが処理するには非常に曖昧である、という点にあります。この課題の回避方法の一つとして提示されているものがプロンプトエンジニアリングガイドとなります。一番コストがかからず、人の手で微調整ができる手法として、まずは確認されることをおすすめします。あわせて前項で述べたように、非常に基本的な指示からでもセキュリティに関する指示を含めることもおすすめします。


    ―第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法」へ続く―

    注:
    1)https://x.com/karpathy/status/1886192184808149383
    2)日本語でも若年層を中心に使われている「バイブス」という言葉と同じような意味合いになります
    3)なおLLMのコーディングベンチマークフレームワークも提供しています。https://github.com/logic-star-ai/baxbench
    4)次のCWE(Common Weakness Enemuration、共通脆弱性タイプ)をプロンプト内で指定しています: CWE-20(不適切な入力確認)、CWE-22(パストラバーサル)、CWE-78(OSインジェクション)、CWE-79(クロスサイトスクリプティング)、CWE-89(SQLインジェクション)、CWE-94(コードインジェクション)、CWE-117(ログ出力の不適切な無効化)、CWE-284(不適切なアクセス制御)、CWE-400(無制限のリソースの枯渇)、CWE-434(危険なタイプのファイルの無制限アップロード)、CWE-522(認証情報の不十分な保護)、CWE-703(例外的な状況に対する不適切なチェックまたは処理)、CWE-863(不正な認証)
    5)ただし推論モデルに関しては指示の出し方によって正確・セキュアなコードの出力が得られる確率がセキュリティに関する指示がない場合に比べて悪化する場合もあります。これは推論モデル自体の問題であると考えられます。なお、推論モデルの問題については次の2論文で問題点がそれぞれ指摘されています。https://arxiv.org/pdf/2307.02477
    https://machinelearning.apple.com/research/illusion-of-thinking

    【連載一覧】

    第1回「Vibeコーディングとプロンプトエンジニアリングの基礎」
    第2回「プロンプト以外で効率化!開発体験の改善手法
    第3回「AIエージェント時代のコーディング:MCPとA2Aとは
    第4回「MCPの脆弱性とA2A脅威分析から学ぶセキュリティ実装
    第5回「AIとセキュリティ:Non‑Human Identity とAIエージェントの課題
    第6回「AIエージェントのセキュリティ対策と今後の展望


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    緊急パッチ必須:SharePoint「TOOLSHELL」攻撃を招くCVE-2025-53770/53771の実態

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    Microsoft SharePointを運用する企業が見過ごせない脆弱性が今月、相次いで公開されました。7月14日に累積パッチで修正されたCVE-2025-53770とCVE-2025-53771は、ViewStateキー生成処理の競合状態を突いて、認証なしのリモートコード実行(RCE)をするクリティカルな脆弱性です。さらに、6月に報告済みのASPXテンプレート挿入系脆弱性CVE-2025-49704/49706を組み合わせた「TOOLSHELL」攻撃チェーンが現実化し、Unit 42とEye Securityは侵入後にPowerShell WebShellが配置される事例を確認しています。本稿では影響範囲と優先すべき対策を解説します。

    お問い合わせ

    お問い合わせはこちらからお願いします。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

    なぜCVE-2025-53770が危険なのか

    問題の本質は、SharePointが__VIEWSTATEを検証する際に用いるValidationKeyの競合状態にあります。攻撃者は未認証のまま細工したViewStateを送信し、LosFormatterのデシリアライズ処理を経由して任意コードを実行できます。Microsoftは「7月パッチ以前の修正は十分ではなく、今回の累積更新で初めて完全な防御が可能になる」と明言しました。

    「TOOLSHELL」攻撃チェーンが示す実戦的リスク

    Eye Securityが命名した「TOOLSHELL」攻撃では、まずCVE-2025-49706がRefererヘッダーを悪用してToolPane.aspxへ非認証アクセスを可能にし、続いてCVE-2025-49704がデシリアライズ経路を開きます。ここにCVE-2025-53770とCVE-2025-53771が結合すると、防御側が認証やCSRFトークンに依存していた場合でもRCEが成立します。侵入後はPowerShellでWebShell(spinstall0.aspxなど)が配置され、MachineKeyを窃取して永続化を図る点が確認されています。

    CISAの緊急指令と企業が取るべきステップ

    米国CISAは53770をKnown Exploited Vulnerabilitiesカタログに追加し、7月31日までのパッチ適用を連邦機関に義務付けました。官民問わず、以下のようなステップで対策を進めましょう。

    • SharePoint Server 2016/2019/Subscription Editionで最新の7月累積パッチを適用
    • 適用後にMachineKey(ValidationKey/DecryptionKey)を再生成し、漏えい済みの署名を無効化
    • Microsoft Defender AntivirusとのAMSI統合と「ViewState暗号キー管理」機能を有効化し、未署名ViewStateの読み込みを防ぐ
    • 管理ポートや/_layouts/配下を外部公開している場合は即時閉鎖し、Web Application FirewallやHIPSでUploadFilterを強制

    残る課題―公開PoCと横展開

    GitHub上には既に53770の概念実証コードが複数公開されており、Rapid7も実環境での悪用を観測したと報告しました。パッチを当ててもMachineKeyのローテーションを怠れば、攻撃者は署名済みの__VIEWSTATEを再利用して“再侵入”できます。特にTeamsやOneDriveと連携したハイブリッド環境では、SharePointから取得した認証トークンが横展開に利用されかねません。

    まとめ

    サイト運営者は最新パッチ情報を迅速に発信しつつ、自社環境の防御態勢を見直す必要があります。累積更新プログラムの適用とキー再生成を完了して初めて、SharePointは安全な状態に戻ります。多くの組織が抱えるオンプレミスSharePointは依然として攻撃者にとって魅力的な標的であり、今回の一連のゼロデイは“パッチ管理とキー運用の両立”という運用課題を改めて突きつけたといえるでしょう。

    【参考情報】

  • https://msrc.microsoft.com/update-guide/vulnerability/CVE-2025-53770
  • https://msrc.microsoft.com/update-guide/vulnerability/CVE-2025-53771
  • https://msrc.microsoft.com/update-guide/vulnerability/CVE-2025-49706
  • https://msrc.microsoft.com/update-guide/vulnerability/CVE-2025-49704
  • https://msrc.microsoft.com/blog/2025/07/customer-guidance-for-sharepoint-vulnerability-cve-2025-53770/
  • https://support.microsoft.com/en-us/topic/description-of-the-security-update-for-sharepoint-server-2019-july-8-2025-kb5002741-d860f51b-fcdf-41e4-89de-9ce487c06548
  • https://research.eye.security/sharepoint-under-siege/
  • https://github.com/PaloAltoNetworks/Unit42-timely-threat-intel/blob/main/2025-07-19-Microsoft-SharePoint-vulnerabilities-CVE-2025-49704-and-49706.txt
  • https://www.cisa.gov/news-events/alerts/2025/07/20/cisa-adds-one-known-exploited-vulnerability-cve-2025-53770-toolshell-catalog
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    AIを悪用するフィッシング攻撃の脅威

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    AI技術の急速な進化により、フィッシング攻撃がかつてない脅威へと変貌しています。自然な文章生成や高度なカスタマイズにより、巧妙な詐欺メールが急増。PhaaS(Phishing as a Service)などの攻撃手法も拡大し、被害は企業・個人問わず深刻化しています。本記事では、AIを悪用したフィッシングの最新動向と、その対策について解説します。

    第一章:進化するフィッシング攻撃の現実

    AIによって進化するフィッシングの特徴

    大規模言語モデル(LLM:Large language Models)などの生成AIの登場により、フィッシング攻撃は新たな局面に突入しています。かつては不自然な日本語や文法ミスから容易に見抜くことができた詐欺メールが、AIによって劇的に変貌を遂げているのです。攻撃者はAIを活用することで、非常に自然な文体で説得力のあるメッセージを短時間かつ大量に作成できるようになり、より省コストで、大規模に個人や組織に向けて一斉に攻撃を仕掛けることが可能となりました。このことが被害の急増につながっています。また、攻撃者が受信者の業種や役職、使用しているサービスなどに合わせた「カスタマイズされた」フィッシングメールを自動生成することができるようになっている点、過去の成果を上げたフィッシングメールをAIに学習させることで、より洗練された文章を生成できるようになっている点も注目に値します。

    従来、こうしたフィッシングメールへの防御策は、スパムフィルターやブラックリストベースの検出に依存していましたが、生成AIによって生み出されるフィッシングメールは、これらの検出を回避する表現力と柔軟性を備えており、組織にとって新たな脅威となっています。

    AIによるフィッシング攻撃は成功率が高い

    生成AIによって作成されたフィッシングメールの危険性は、目を見張るものがあります。実際の調査では、AIが生成したフィッシングメール内にあるリンクのクリック率が50%を超えるケースも報告されています。これは従来のフィッシングメールと比較して、極めて高い成功率です。AIによって自然な文章が生成されることで、受信者は「本物らしさ」を信じてしまい、疑いなくリンクをクリックしてしまいます。攻撃者にとっては、より多くの被害者を効率よく騙す手段として、AIの活用は極めて有効かつ妥当であり、今後もこの傾向はますます拡大すると予想されます。

    フィッシング対策協議会「フィッシングレポート2025」

    フィッシング対策協議会が発行した「フィッシングレポート2025」によると、国内の2024年のフィッシングURL数は前年比で約10万件増加し、報告件数は依然として高水準のままで推移しています。この増加傾向の背景には、生成AIの台頭やPhaaS(Phishing as a Service)といったサービス型攻撃の拡大があるとされており、単に件数の増加に着目するだけでなく、攻撃の質も高度化していることを理解する必要があります。そのため、企業や組織は、AI時代に対応した新しい視点での対策が求められているのです。

    図 1-1 国内のフィッシング情報の届け出件数
    出典:フィッシング対策協議会「フィッシングレポート2025

    第二章:AI時代にアップデートされるフィッシングの脅威

    フィッシングとは

    フィッシングとは、本物に見せかけたメールやWebページを使って、ユーザから機密情報を不正に取得する詐欺手法です。標的となるのは、クレジットカード番号やログインID・パスワード、社内システムの重要情報といった、機密性の高いデータです。この種の攻撃は、単に「個人の問題」にとどまらず、企業全体に深刻な影響を与える可能性があります。従業員がフィッシングメールに騙されてアカウント情報を入力してしまえば、攻撃者は企業ネットワークに侵入する足がかりを得てしまいます。これにより、内部情報の漏えい、金銭的損失、業務の停止、ブランド価値の毀損といったリスクに繋がる危険性があります。特に、クラウドサービスの利用が進んだ昨今では、従業員の判断ミスひとつが甚大な被害に直結するケースが増えており、改めて「フィッシングとは何か」を経営層も含めて正しく理解し、組織として備える必要があります。

    AIで生成したフィッシングメールの実例

    AI技術の導入により、フィッシングメールの文面は劇的に洗練されつつあります。以下に紹介する実例は、生成AIを用いて作成されたとみられるもので、見た目・構成ともに極めて完成度が高く、詐欺であることを文面から見破るのは非常に困難です。

    「●●証券」から送信されたとされる二要素認証の案内メールは、緊急性と不安を巧みに演出し、受け取った人にクリックを促す構成になっています。しかも、文法的な破綻や不自然な日本語表現は一切見られず、いかにも“それらしく”見える表現で構成されています。

    さらにこのメールをソーシャル・エンジニアリング的目線で見ると、ソーシャル・エンジニアリングフレームワークの権威であるクリストファー・ハドナジー氏が提唱するところの心理誘導テクニック──「権威」「言質と一貫性」「希少性」など──が緻密に盛り込まれており、クリックさせることに特化した設計が施されていることがわかります。生成AIは、こうした心理的トリガーを大量に組み合わせた文章を容易に生み出し、単なる誤認ではなく“心理的にクリックしてしまいやすい”状況を作り出すのです。

    Phishing-as-a-Service(PhaaS)とは

    フィッシング攻撃が増加傾向にある状況を生み出している要因の一つが、「Phishing-as-a-Service(PhaaS)」です。PhaaSとは、フィッシング攻撃を「サービス」として提供するビジネスモデルです。PhaaSを利用すれば、攻撃者自身が高度な技術や知識を持っていなくても、容易に本格的なフィッシング攻撃を実行できるようになります。

    たとえば、近年注目を集めているのが、「Darcula Suite」と呼ばれるAI搭載型のフィッシング支援ツールです。Darcula Suiteは、Telegram上で操作可能なPhaaS型のツールで、生成AIを活用することで、フィッシングページの自動生成や、複数ブランドの模倣、さらには複数チャネルへの同時展開が可能になっています。特筆すべきは、こうしたPhaaSが、生成AIを利用して自然な文章を瞬時に作成する機能を有しており、言語面の完成度を飛躍的に高めている点です。これにより、フィッシング攻撃の“敷居”が著しく低下すると同時に、フィッシングがより広範に、効率的に、高品質に展開されることにつながっています。

    第三章:フィッシング攻撃への対策

    組織側の基本対策

    AIを悪用したフィッシング攻撃の脅威に対抗するためには、組織としての技術的・運用的な備えが欠かせません。ここでは、フィッシング対策協議会のガイドラインや、最近のフィッシング攻撃の傾向にもとづき、企業が取るべき具体的な対策を整理します。

    多要素認証(MFA)の導入

    IDとパスワードだけに依存せず、物理的なデバイスや生体認証などを組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。特に、FIDO2やWebAuthnに対応したパスワードレス認証方式の採用は、フィッシング耐性の高い選択肢として注目されています。

    送信ドメイン認証技術(SPF、DKIM、DMARC)の導入と運用

    これらは、メールの正当性を検証し、なりすましメールを排除するための基本的な仕組みです。たとえば、DMARCはSPFやDKIMの結果にもとづき、認証に失敗したメールを破棄・隔離するポリシーを設定できます。大手企業では導入率が8割を超えていますが、ポリシー設定が「none(監視のみ)」のままであるケースも少なくありません。今後は、段階的に「quarantine(隔離)」や「reject(拒否)」への移行を進める必要があります。

    URLフィルタリングやブランド偽装への対策も

    自社ブランドが悪用されるリスクを下げるため、使用していないドメイン・サブドメインの維持管理や、廃止予定ドメインの防衛的保有などを検討すべきです。ドロップキャッチ(廃止ドメインの悪用)によるなりすましを防ぐためには、ブランドドメインを「資産」として捉え、組織的に管理する視点が求められます。

    受信チャネルごとの監視とログ分析の体制整備

    メールやWebだけでなく、SMSやメッセンジャー、SNSといった多様なチャネルに対応したセキュリティ監視が不可欠となっています。

    AIを用いたフィッシング攻撃は、単に「文面が巧妙」というだけでなく、規模・速度・多様性という点で従来型攻撃を凌駕しています。組織が対抗するには、技術・体制の両面から「AI時代の防御モデル」へのアップデートが求められているのです。

    フィッシング対策ガイドライン重要5項目

    フィッシング対策協議会のガイドラインには重要5項目が掲げられています。

    重要項目[1] 利用者に送信するメールでは送信者を確認できるような送信ドメイン認証技術等を利用すること
    重要項目[2] 利用者に送信する SMS においては、国内の携帯キャリアに直接接続される送信サービスを利用し、事前に発信者番号等を Web サイトなどで告知すること
    重要項目[3] 多要素認証を要求すること
    重要項目[4] ドメイン名は自己ブランドと認識して管理し、利用者に周知すること
    重要項目[5] フィッシングについて利用者に注意喚起すること

    利用者側の基本対策

    フィッシング被害を防ぐうえでは、システム的な対策と並行して、従業員一人ひとりの行動変容も不可欠です。以下に、利用者が日常業務で実践すべき基本的な対策を紹介します。

    セキュリティ対策製品(メールフィルタ、ウイルス対策ソフト、URLチェック機能付きブラウザ等)の導入・活用

    「見覚えのないメールのリンクを直接クリックしない」といったような、基本姿勢の徹底が重要です。正規のログインページをブックマークし、メール内のリンクを使わずにアクセスする習慣を身につけるだけでも、多くの被害を未然に防ぐことができます。

    社員へのセキュリティ教育・定期的な訓練

    実際のフィッシングメールを模した「模擬訓練(フィッシングシミュレーション)」を通じて、従業員が経験を得ることは非常に効果的です。こうした訓練を定期的に実施することで、判断力が鍛えられ、攻撃への耐性が強化されます。

    フィッシング攻撃は巧妙化し続けており、「注意していれば引っかからない」という従来の感覚はすでに通用しません。企業は、利用者のリテラシー強化も含めて、組織全体で「守る力」を底上げしていく必要があります。

    最後に

    生成AIの進化により、国内のフィッシング被害は急増していますが、その背景には「言語の壁が崩れたこと」と、「危険に対する認識のアップデート不足」があると感じます。運営側も利用者側も、古い知識や信頼性の低い情報に頼らず、まずはフィッシング対策協議会が示すガイドラインに正しく向き合うことが重要です。ネット上のよくわからない情報やSNSの“有識者”の意見を鵜呑みにせず、信頼できる情報源にもとづいて、地に足のついた対策を進めていきましょう。

    BBSecでは

    標的型攻撃メール訓練サービス

    https://www.bbsec.co.jp/service/training_information/mail-practice.html
    ※外部サイトへリンクします。

    ペネトレーションテストサービス

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    ソーシャルエンジニアリング最前線
    【第4回】企業が実践すべきフィッシング対策とは?

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    本シリーズでは、「ソーシャルエンジニアリング最前線」として、2025年6月現在のフィッシングに代表されるソーシャルエンジニアリングに関する動向と企業・個人が取れる対策をまとめます。第4回は企業が行うべきフィッシング対策をまとめます。

    フィッシング対策協議会が示す企業向けガイドライン 重要5項目

    フィッシング対策協議会のガイドラインには重要5項目が掲げられています。

    重要項目[1] 利用者に送信するメールでは送信者を確認できるような送信ドメイン認証技術等を利用すること
    重要項目[2] 利用者に送信する SMS においては、国内の携帯キャリアに直接接続される送信サービスを利用し、事前に発信者番号等を Web サイトなどで告知すること
    重要項目[3] 多要素認証を要求すること
    重要項目[4] ドメイン名は自己ブランドと認識して管理し、利用者に周知すること
    重要項目[5] フィッシングについて利用者に注意喚起すること

    以下に特に重要な技術的要素を解説します。

    フィッシング対策に重要なメール認証技術とは?SPF・DKIM・DMARCの導入ポイント

    SPF・DKIM・DMARCの違いと仕組み

    SPF DKIM DMARC BIMI
    正規のサーバー(IP アドレス)から送信されたかを検証 電子署名でメールを検証。メールヘッダー情報やメール本文も署名対象にできる SPFとDKIMの検証結果を使って検証。認証に失敗したメールの挙動を定められる 正規メールであることをユーザが視認できる。適切に認証されたメッセージの横にブランド固有のインジケーターを表示するための規格
    表: 送信ドメイン認証技術(出典:フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン2025 年度版」p.15,図 3-1より抜粋)

    • DKIM,SPFはいずれかの検証結果をDMARCの検証に使用するため、いずれかまたは両方の設定が必要となります。
    • DMARCはDKIMまたはSPFいずれかまたは両方の検証結果がPASSであったうえで、送信元としてヘッダにあるドメインと実際の送信元ドメインが合致する場合にのみPASSする仕組みとなっています。
    • DMARCの検証結果がFAILの場合の挙動は送信元としてヘッダに記載されているドメインがDMARCポリシーレベルとして指定することができます。
    • BIMIはVMC/GMC/CMCという証明書を発行する規格で、発行された場合には一部のメールプラットフォームで自社のロゴなどを送信者情報に自社・組織アイコンを表示できます。DMARC等との相関性はありませんが、フィッシング対策およびブランディングの一つの方法として利用が始まっています。

    本年1月に公開された情報では日本国内のDMARC導入済みの大企業はNikkei225企業で83%となっている一方、DMARCポリシーレベルは過半数が”none”(FAILした場合に監視)となっています注 1)。導入後、段階的にポリシーレベルを厳格化することが推奨されていることから、今後は少しずつ、quarantine(隔離)やreject(拒否)への移行が進むものと考えられます。

    一方、大企業に限らず、DMARCの導入は日本全体としてどうなっているでしょうか。令和6年版情報通信白書では次の図の通りjpドメインに関しては20%程度の導入にとどまっているとされています。

    送信ドメイン認証技術のJPドメイン導入状況
    出典:総務省「令和6年版情報通信白書 第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題 第10節 サイバーセキュリティの動向 (4)送信ドメイン認証技術の導入状況」【関連データ】送信ドメイン認証技術のJPドメイン導入状況より

    令和6年版の情報通信白書に掲載されているデータは2年ほど前のデータとなります。

    Nikkei225企業の過去の導入率が2023年1月公開のデータで31%注 2)、2024年1月公開のデータで60%注 3)、2025年1月公開のデータで83%と、2024年を境に大きく改善していることを考えると、2025年現在では全体としてDMARCの導入は進んでいる可能性が高いと考えられます。この2024年の大きな改善の契機となったのが2024年2月からのGmailでのDMARC運用厳格化です。この時はフィッシング対策のため大量にメールを送信するケースに対してDMARC運用が段階的に厳格化されました。これを機に大企業ではDMARCの導入が進んだと考えられます。中小企業や他の組織についても、自社ブランドのドメイン保護のため、DMARCおよびDKIM、SPFの導入、またDMARCのポリシーレベルの段階的な厳格化を進めることが必要となっています。

    一方、受信側のメールサーバの設定はDMARC未設定の送信者への配慮を含めた過剰なフィルタリングによるメールの未配送を防ぐためにDMARC以外の要素も含めたフィルタリングを行っていることが多いため、フィッシングメールを誤配送するケースがあります。Gmailでも段階的に受信/配信ポリシーの厳格化を行ったことから、受信側のメールサーバの設定や運用も徐々に今後厳格化する必要が出てくるでしょう。

    なりすましメールを防ぐためのドメイン管理とサブドメイン維持の重要性

    さて、DKIMやSPFといった検証方法は、真の送信元のドメインがヘッダに書かれているメールアドレスのドメインと異なる場合、DMARCの検証ではFAILになります。現状、多くの場合のフィッシングメールはなりすましている送信元とは全く関係のないドメインから送信されるため、DMARCがFAILになります。しかし、仮にドメインやサブドメインが乗っ取られる、または廃止ドメインが悪用されるといった場合は、真の送信元ドメインとヘッダのドメインが合致するために DMARCがPASSし、最も厳格にDMARCを運用しているGmailなどのサービスでもメールを受信することが可能となります。

    ドメインやサブドメインの乗っ取り(ドメイン/サブドメインテイクオーバー)や廃止ドメイン/サブドメインの悪用はWebサーバのドメインも有効性や信頼度にも影響します。ドメインやサブドメインはいったん更新を行わないと一定期間登録ができない状態に置かれた後に洗顔による登録が可能となります。この瞬間に悪意のある第三者がドメイン・サブドメインを横取りすることをドロップキャッチと呼びます。過去に使用されていたドメイン・サブドメインは検索エンジンからの流入や他サイトのリンクからの流入などからソーシャルエンジニアリングの舞台として利用しやすい点を理解する必要があります。

    ドメイン・サブドメインは自社のブランドを示す一つの資産であるということや、ドロップキャッチのような手法があることを理解する必要があります。そのうえで、登録されたドメインは可能な限り長期間にわたって維持できるよう、場合によっては運用停止後も保持を行うなどの対策も検討する必要があります。

    サービス別に選ぶフィッシング対策に強い認証方式の選定ポイント

    フィッシング協議会のガイドラインにもありますが、サービスの内容に応じた認証機構の選択が必要となります。特に第2回で触れたようにAiTMを用いたセッション情報の窃取により不正アクセスの手段を攻撃者が入手できるため、SMSやAuthenticatorアプリを使用した多要素認証が防御策となりえないケースが増えています。特に昨今話題の証券口座不正アクセス・取引事件のように、資産(ポイントを含みます)の移動をサービスとして提供する場合には耐フィッシング性の高い認証機構の導入を検討する必要も出てきています。

    FIDO2・WebAuthnによるパスワードレス認証のメリット

    多要素認証の中でも耐フィッシング性の高い技術とされているものがFIDO2、WebAuthn対応のパスワードレス認証となります。代表的な様式は以下の2つです。

    1. FIDO2対応の認証器
    2. FIDO2/WebAuthn対応のパスキー

    いずれもパスワードは不要で、セッションによる認証のコントロールも行いません。認証サーバやWebサイトに対して紐づく公開鍵と、デバイス単位で保存する秘密鍵を生体認証経由で取り出して送信、公開鍵と照合してログインの承認を行う仕組みとなります。

    まとめ:進化するソーシャルエンジニアリング攻撃と企業が取るべき対策

    SQAT.jpでは過去もフィッシング対策に関する記事を公開しています。
    フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策

    現在もフィッシングに限らず多様なソーシャルエンジニアリング攻撃が私たちの身の回りに増えてきています。1年前であれば多要素認証で充分であった認証機構も、今やAiTM攻撃のために耐フィッシング性を考慮する必要があります。1年前はその名前に言及すればよかったVishing(ビッシング)は今、自動音声通話詐欺の形で身近なものになっています。ClickFixや偽CAPTCHAのような手口もここ最近増加しています。マルバタイジングによる被害も目にすることが増えてきました。生成AIを悪用するケースも今後増えていくでしょう。生成AIサービスのガードレールの不備による悪用も増えることが想定されます。

    本連載記事はわずか1年ほどの期間に起きた変化を読者の皆さんにお知らせする目的で公開しています。こうしている間にも、ソーシャルエンジニアリング攻撃の新しい手口が出てきているかもしれません。ソーシャルエンジニアリング攻撃は定量的な防御策の評価が難しいため、実際の被害が身近なところで発生しない限り、なかなか経営レベルでの問題として取り上げられづらい傾向にあります。とはいえ、企業や組織を動かすのは「人」です。第1回の記事にも書いた通り、人には人特有の脆弱性があります。攻撃者は人の脆弱性を悪用することに特化してソーシャルエンジニアリング攻撃を実行しています。対する我々は、人の脆弱性を知り、脆弱性を補うために何をすればよいかを検討しながら組織的に対応していくことが重要でしょう。

    ソーシャルエンジニアリング対策としてのペネトレーションテスト活用法とは

    ここ1年ほどの間に弊社ブロードバンドセキュリティ(BBSec)では、ペネトレーションテスト的なアプローチを用いたソーシャルエンジニアリング攻撃への防御策の評価を何度か実施しています。AiTMへの防御、フィッシング耐性、SSO環境の堅牢性といった従来の脆弱性診断では取り扱わない領域についても、お客様のスコープとシナリオなどに応じて検証のご提案をしております。

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    【連載一覧】

    ―第1回「ソーシャルエンジニアリングの定義と人という脆弱性」―
    ―第2回「実例で解説!フィッシングメールの手口と対策」―
    ―第3回「フィッシングメールの最新トレンドとソーシャルエンジニアリング攻撃の手口」―

    【関連記事】
    【重要】楽天証券・SBI 証券をかたるフィッシングメールにご注意!
    IPA 情報セキュリティ10大脅威からみる―注目が高まる犯罪のビジネス化―
    フィッシングとは?巧妙化する手口とその対策
    「情報セキュリティ 10 大脅威」3 年連続ベスト 3 入り、ビジネスメール詐欺を防ぐ手立ては?

    【参考情報】

  • フィッシング対策協議会「フィッシングレポート2025
  • フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン 2025年度版
  • フィッシング対策協議会「利用者向け フィッシング詐欺対策ガイドライン2025年度版
  • 注:
    1)フィッシング対策協議会「送信ドメイン認証技術「DMARC」の導入状況と必要性について
    2)https://www.proofpoint.com/jp/newsroom/press-releases/nikkei225-dmarc-implementation-rathio-2023
    3)https://www.proofpoint.com/jp/blog/email-and-cloud-threats/Global-DMARC-Adoption-Rate-Survey-2023

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  • 2025年7月23日(水)14:00~15:00
    急増するフィッシング攻撃の実態と対策〜企業を守る多層防御とは〜
  • 2025年7月30日(水)13:00~13:50
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    ドメイン名偽装で検知を回避するWordPressマルウェアの脅威と対策

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    瓦版号外(ドメイン名偽装で検知を回避するWordPressマルウェアの脅威と対策)

    2025年7月、セキュリティ企業SucuriがWordPressを狙う新たなマルウェア攻撃を発見・公表しました。今回公表された「SEOスパム型WordPressプラグイン」による攻撃は従来の攻撃と比較して手口が巧妙化しており、世界中のWebサイト管理者にとって深刻な脅威となっています。本記事では、攻撃の手口と被害の特徴、そして有効な対策について解説します。

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    攻撃手法

    ドメイン偽装によるマルウェア検知回避

    今回発見されたマルウェアは、感染したWordPressサイトのドメイン名をそのままプラグイン名やフォルダ名に偽装して設置されます。これにより、管理者や一般ユーザーがファイル一覧を確認しても、正規のプラグインと見分けがつきにくい構造になっています。この偽プラグインは高度に難読化されたコードで構成されており、セキュリティ対策ソフトによる検知も困難です。

    検索エンジン限定のSEOスパム注入

    SEOスパムの注入は、Googleなどの検索エンジンのクローラを検知した場合のみ実行されます。通常の訪問者には正規のページが表示されるため、管理者も異常に気付きにくく、発見が遅れる原因となります。検索エンジンのみにスパムコンテンツを返すことで、検索順位の操作や不正なトラフィック誘導が行われます。

    C2サーバとの通信と外部指令の受信

    この偽プラグインの内部には、base64で難読化されたC2(コマンド&コントロール)サーバ※ のドメイン情報が隠されています。偽プラグインは定期的にC2サーバへ外部リクエストを送り、攻撃者からの指示を受け取ります。これにより、スパム内容の動的な更新や追加のマルウェア配布など、攻撃の手口が柔軟に変化する仕組みが実装されています。

    ※C2(コマンド&コントロール)サーバ…サイバー攻撃者が外部から侵害システムと通信を行い、命令と制御を行う目的で用いられる。

    マルウェアによる被害と影響

    この種のマルウェアは、通常の利用者やサイト管理者が直接アクセスした場合には一切異常を示さないため、発見が遅れがちです。Googleなどの検索エンジン経由でのみスパムが表示されるため、被害に気付いたときにはすでに検索結果にスパムページが表示されていたり、検索順位が大幅に下落しているケースも多く、ブランドイメージや集客に深刻な影響を与えたりするおそれがあります。また今回の例は、WordPressのプラグインエコシステムを悪用したサプライチェーン攻撃の一例とも言えます。公式リポジトリを介さず、外部から導入されたプラグインやテーマを通じて感染が広がるため、信頼できる配布元からのみソフトウェアを導入することが重要です。

    有効な対策と管理者が取るべき予防措置

    Webサイト管理は特に以下のような対策を取り、異常が見られた場合は速やかに専門家へ相談することをおすすめします。

    • WordPressのプラグインやテーマは必ず公式リポジトリや信頼できるベンダーからのみ入手する
    • 不審なファイルや見覚えのないプラグインが存在しないか、定期的にサーバ内を確認する
    • セキュリティプラグインやWebアプリケーションファイアウォール(WAF)、管理画面への多要素認証を導入する
    • Google Search Console等で検索結果の異常を監視する

    まとめ

    SEOスパム型の偽装WordPressプラグインは、検索エンジンのクローラを標的にしてスパムコンテンツを注入し、通常の訪問者には正規ページを返すという極めて巧妙な手口です。攻撃者は感染サイトのドメイン名をそのままプラグイン名やフォルダ名に偽装し、管理者の目を欺きます。さらに、コード内部にはbase64で難読化されたC2サーバ情報が隠され、外部からの指令に応じて動的にスパム内容を更新できる仕組みも組み込まれています。

    このような手法は、発見が遅れやすく、検索順位の下落やサイトの信頼性低下など、経営や運営に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。特に、公式リポジトリを介さないプラグインやテーマの導入が感染経路となるケースが多いため、日常的なセキュリティ意識と運用管理の徹底が不可欠です。

    被害を最小限に抑えるためには、信頼できる配布元からのみソフトウェアを導入する、サーバ内の不審なファイルやプラグインを定期的に点検する、Google Search Consoleなどで検索結果の異常を監視するなど、複数の対策を組み合わせることが重要です。

    BBSecでは:セキュリティソリューションの活用

    高度なサプライチェーン攻撃や難読化マルウェアに対抗するため、ブロードバンドセキュリティでは多層防御の観点から次のようなソリューションを強くおすすめします。

    エージェント型Webサイトコンテンツ改ざん検知サービス

    WordPressサイトのファイルやディレクトリの改ざんをリアルタイムで監視し、異常があれば即座にアラートを発します。正規のプラグイン名を偽装した不審なファイルの追加や書き換えも検知しやすく、被害の早期発見に役立ちます。

    https://www.bbsec.co.jp/service/vd-maintenance/manipulation.html
    ※外部サイトにリンクします。

    脆弱性診断サービス

    WordPress本体やプラグイン、テーマの設定や実装に潜む既知の脆弱性を定期的に洗い出すサービスです。悪用されやすい箇所を事前に把握し、攻撃の入り口を減らします。診断結果に基づき、不要なプラグインの削除や設定の見直しを行うことで、リスク低減につながります。

    ペネトレーションテスト

    実際の攻撃者の視点でお客様のシステムに実装済みのセキュリティを検証するサービスです。自動化された攻撃だけでなく、手動による高度な手法も用いるため、通常の診断では見つけにくいサプライチェーンリスクや運用上の盲点も洗い出すことが可能です。

    これらのサービスを組み合わせて導入することで、巧妙化するマルウェア攻撃などへの対応力を大幅に高めることができます。BBSecとしては、エージェント型改ざん検知、脆弱性診断、ペネトレーションテストをパッケージ化した多層防御ソリューションを強くご提案いたします。これにより、WordPressサイト運営者の方が安心してビジネスを継続できる環境づくりをサポートいたします。ご希望の方には、無料相談や初回診断も承っております。お気軽にご相談ください。

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    【参考情報】

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  • 2025年7月16日(水)14:00~15:00
    進化するランサムウェア攻撃-国内最新事例から学ぶ!被害を防ぐ実践ポイント10項目を解説-
  • 2025年7月23日(水)14:00~15:00
    急増するフィッシング攻撃の実態と対策〜企業を守る多層防御とは〜
  • 2025年7月30日(水)13:00~13:50
    Webサイトの脆弱性はこう狙われる!OWASP Top 10で読み解く攻撃と対策
  • 2025年8月5日(火)14:00~15:00
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    【2025年7月最新】主要ITベンダーのセキュリティパッチ速報

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    2025年7月第2週は、Microsoft、AMD、Cisco、Fortinet、Android(Google)、Ivanti、SAPといった主要ITベンダーが相次いで月例・臨時のセキュリティパッチを公開しました。サイバー攻撃の脅威が高まる中、これらのセキュリティパッチは被害防止の第一歩です。本記事では、各社が公開している脆弱性による影響と、脆弱性を解消するアップデートの内容について簡潔にご紹介します。

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    Microsoft:ゼロデイ2件を含む大規模パッチ公開

    Microsoftは2025年7月の月例パッチ(Patch Tuesday)で、CVE-2025-49719を含むゼロデイ2件を含め、合計73件の脆弱性を修正しました。修正対象にはWindows OS、Microsoft Officeなど幅広い製品が含まれ、リモートコード実行(RCE)や権限昇格といった深刻な問題も含まれています。特にSPNEGO Extended Negotiation(NEGOEX)におけるRCEの脆弱性CVE-2025-4798は、ユーザー操作なしで攻撃が成立し、ワーム化のリスクも指摘されています。Microsoft Defender Vulnerability Managementのゼロデイ一覧も更新されており、速やかなパッチ適用が推奨されます。

    AMD,投機実行による情報漏えい「Transient Scheduler Attacks」

    AMDは、CPUの投機実行に起因する新たな情報漏えい攻撃「Transient Scheduler Attacks」(SB-7029)への緩和策を発表しました。今回の対策パッチは、主に最新世代のEPYCサーバー向けであり、古いZen 2/3世代のデスクトップCPUは対象外となっています。この脆弱性は、SEV-SNP(Secure Encrypted Virtualization – Secure Nested Paging)環境での機密性を損なう恐れがあり、BIOSおよびファームウェアのアップデートが必要です。OEM(Original Equipment Manufacturing)各社から配布される更新プログラムの適用と、再起動による有効化が求められます。

    Cisco,Fortinet:高リスクレベルのRCE脆弱性を告知

    CiscoとFortinetは、それぞれのPSIRT(Product Security Incident Response Team)で、複数の高リスクレベルのRCE脆弱性を公表しました。Ciscoは、PSIRTの情報公開体制を強化し、重大度(SIR)を明示したアドバイザリを発行しています。Fortinetも、月例PSIRTアドバイザリで高深刻度の脆弱性を公表し、セキュリティファブリック全体の保護強化を図っています。両社とも、公開された脆弱性情報をもとに、早急なパッチ適用を推奨しています。

    Google: Security Bulletinで36件修正

    Googleは2025年7月1日付でAndroid Security Bulletinを公開し、Pixel端末向けに36件の脆弱性を修正しました。内容には、QualcommやMediaTekのチップセットに関するサードパーティ由来の脆弱性も含まれています。特に、QualcommのGPSコンポーネントにおけるCVE-2025-21450(CVSSスコア9.1)は深刻度が高く、Android端末利用者はアップデートの有無を必ず確認しましょう。

    Ivanti,SAP:業務システムの脆弱性へのパッチ

    Ivantiは7月8日にConnect SecureおよびPolicy Secure向けに複数の脆弱性修正パッチをリリースしました。主な内容は、認証バイパスやバッファオーバーフローなどで、管理者権限を持つ攻撃者によるサービス妨害や設定改ざんのリスクが指摘されています。SAPも7月9日に月例セキュリティノートを公開し、27件の新規パッチ3件の既存ノート更新を実施。中でもCVE-2025-30009ほか、CVSSスコア最大10.0のクリティカルなRCEおよびデシリアライゼーションの脆弱性が複数修正されています。ERPやS/4HANAなど基幹業務システム利用者は、速やかな適用が必須です。

    2025年7月のセキュリティ対策まとめ

    2025年7月第2週は、主要ITベンダーから多岐にわたるセキュリティアップデートが公開され、企業・個人問わず対策の重要性が再認識される週となりました。最後に、今月の動向と実践すべきセキュリティ対策をご紹介します。

    脆弱性・攻撃動向

    • ゼロデイ脆弱性の増加
      MicrosoftやAndroidなど複数のプラットフォームで、攻撃に悪用されたゼロデイ脆弱性が報告されています。これらは攻撃者にとって格好の標的となりやすく、公開直後から実際の攻撃が観測されるケースも増えています。
    • リモートコード実行(RCE)脆弱性の深刻化
      CiscoやFortinetのネットワーク機器、SAPの基幹システムなどで、リモートから悪用可能な高深刻度RCE脆弱性が相次いで修正されています。これらの脆弱性は、ネットワーク経由で攻撃を受けるリスクが高く、企業インフラ全体の安全性に直結します。
    • サプライチェーンや業務システムへの波及
      IvantiやSAPなど、業務システムや管理ツールにも重要な脆弱性が報告されており、サプライチェーン全体のセキュリティ確保が不可欠です。

    被害を防ぐために企業・個人が取るべき実践的対策

    • 定期的なパッチ適用の徹底
      OSやアプリケーション、ネットワーク機器、業務システムなど、利用中の全てのソフトウェアについて、最新のセキュリティアップデートを速やかに適用してください。パッチ適用の遅れは、被害拡大のリスクを大きく高めます。
    • 脆弱性情報の継続的な収集と確認
      Microsoft、AMD、Cisco、Fortinet、Google(Android)、Ivanti、SAPなど、主要ベンダーの公式アドバイザリやセキュリティノートを定期的にチェックし、脆弱性情報に敏感になりましょう。
    • バックアップとインシデント対応体制の強化
      万が一の被害に備え、重要データの定期バックアップや、インシデント発生時の対応手順(CSIRT体制など)を整備しておくことも重要です。
    • ゼロトラストや多層防御の導入検討
      攻撃の高度化に備え、ゼロトラストや多層防御(Defense in Depth)など、従来型の境界防御に依存しないセキュリティ対策の導入も推奨されます。

    さいごに:2025年7月のアップデートを受け

    2025年7月は、WindowsやOffice、Androidに加え、ネットワーク機器や業務システムといった幅広い分野で深刻な脆弱性が多数公開されました。中にはゼロデイ脆弱性やリモートコード実行(RCE)など、攻撃リスクの極めて高い問題も含まれており、早期対応が求められます。これらのリスクに対処するためには、パッチの速やかな適用、最新の脆弱性情報の収集、そしてインシデント対応体制の強化という3本柱で、継続的なセキュリティ対策を講じ、被害防止に努めることが不可欠です。今後も各ベンダーから公開される最新情報を継続的にチェックし、早期の対策と体制強化を心がけてください。

    【参考情報】

  • Microsoft Defender Vulnerability Management ゼロデイ一覧
    https://learn.microsoft.com/en-us/defender-vulnerability-management/tvm-zero-day-vulnerabilities
  • Microsoft 月例パッチ詳細(例:CVE-2025-49719 など)
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49719
  • AMD セキュリティ情報(SB-7029およびSEV-SNP緩和)
    https://www.amd.com/en/resources/product-security/bulletin/amd-sb-7029.html
  • Cisco PSIRT アドバイザリ一覧
    https://sec.cloudapps.cisco.com/security/center/publicationListing.x
  • Fortinet PSIRT アドバイザリ一覧
    https://www.fortiguard.com/psirt
  • Android Security Bulletin(2025年7月)
    https://source.android.com/docs/security/bulletin/2025-07-01
  • Ivanti 2025年7月セキュリティアップデート
    https://www.ivanti.com/blog/july-security-update-2025
  • SAP Security Notes(2025年7月)
    https://support.sap.com/en/my-support/knowledge-base/security-notes-news/july-2025.html
  • 【2025年7月に解消された脆弱性一覧】

    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49719
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49704
    https://www.amd.com/en/resources/product-security/bulletin/amd-sb-7029.html
    https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/enter-exit-page-fault-leak-testing-isolation-boundaries-for-microarchitectural-leaks/
    https://sec.cloudapps.cisco.com/security/center/publicationListing.x
    https://www.fortiguard.com/psirt
    https://source.android.com/docs/security/bulletin/2025-06-01
    https://source.android.com/docs/security/bulletin/2025-07-01
    https://www.ivanti.com/blog/july-security-update-2025
    https://support.sap.com/en/my-support/knowledge-base/security-notes-news/july-2025.html
    https://www.cve.org/CVERecord?id=CVE-2025-30012
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-36357
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-36350
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-47988
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49690
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-48816
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49675
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49677
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49694
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49693
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-47178
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49732
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49742
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49744
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49687
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-47991
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-47972
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-48806
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-48805
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-47994
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49697
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49695
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49696
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49699
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-49702
    https://msrc.microsoft.com/update-guide/en-US/advisory/CVE-2025-48812
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