APIのセキュリティ
―Webアプリでもスマホアプリでも安全なAPI活用を―

Share

APIはAI、IoT、モバイル、クラウド利用において今や必要不可欠です。利便性があり、利用者も増える一方で、APIを狙ったサイバー攻撃の数も増加傾向にあります。本記事では、APIとは?API連携の仕組みやスマホアプリとの関連、活用のメリットについて触れつつ、APIのセキュリティ対策の一つとして、脆弱性対応の方法ついて解説します。

APIとは

APIとは「Application Programming Interface」の略です。プログラムの機能をその他のプログラムでも利用できるようにするための仕組みです。

ソフトウェアやアプリ、プログラム同士を、APIを介して機能連携させるのが「API連携」です。あるソフトウェアに他のソフトウェアの機能を埋め込むイメージです。API連携によってソフトウェア同士が相互にデータと機能を共有できるようになります。

APIとはの概要図

【APIの活用例】

社内業務システム : チャットAPIを活用してコミュニケーション
会員サービスサイト : SNSアカウント認証APIでログイン
ネットショップ : クレジットカード・認証APIで決済
飲食店サイト : 地図情報APIで店舗位置情報表示 × 予約受付APIで予約対応

API活用のメリット

APIには、以下のようなメリットが考えられます。

API活用のメリットの概要図

Web API

「Web API」は、HTTPやHTTPSといったWeb技術により実現される、インターネットを介して情報をやりとりするAPIです。連携するAPI同士が異なるプログラミング言語で構築されていても通信でき、Webブラウザ上でも稼働するWeb APIは汎用性が高く、最も多く活用されているAPIです。

複数のWeb APIを組み合わせて新しいサービスを生み出す”マッシュアップ”が多く行われており、多くの人々が、日々その恩恵を受けていると言えるでしょう。インターネット上には膨大な数のWeb APIが公開されており、今後もマッシュアップは続くものと考えられます。

スマホアプリとAPI

Web APIは、Webアプリケーションばかりでなく、スマートフォンアプリ(スマホアプリ)でも多く活用されています。

例えば、経路案内アプリでは交通機関・運賃・時刻等の情報を的確に検索してくれるAPIが、家計簿アプリでは電子マネーによる決済やクレジットカード決済などの情報を取得して計算してくれるAPIが使用されています。

スマホアプリは、外部との通信をせずにスマホ端末単体で動作するものよりも、インターネットに接続しながら使用するものが圧倒的に多く、ユーザが利用している画面の裏でインターネットを介してサーバとのやりとりが行われており、そこでWeb APIが稼働しているのです。

スマホアプリとAPIの概要図

スマホアプリのセキュリティについて、SQAT.jpでは以下の記事で解説しています。こちらもあわせてご覧ください。
SQATⓇ 情報セキュリティ瓦版「攻撃者が狙う重要情報の宝庫! ―スマホアプリのセキュリティ―

増え続けるAPI活用

国をあげてDXの取り組みが推進されている昨今、AI、IoT、モバイル、クラウド利用において、APIの積極的な活用は不可欠です。

クラウド環境上で動作するアプリ、クラウドネイティブアプリケーションを例にとると、APIを使用している割合は高く、今後さらに増大することが予想されるとの調査結果があります(下図)。

APIに対するセキュリティ脅威

利便性が高いAPIですが、利用が増えれば、そこに存在する様々なデータを攻撃者が狙ってきます。APIに対するセキュリティ脅威の例は以下のとおりです。

APIに対するセキュリティ脅威の概要図

APIによって機能や取り扱う情報はそれぞれですが、金融情報のような資産に紐づくデータ、医療情報のような機微情報に関するデータなど、流出して悪用されると深刻な被害につながりかねません。APIを開発・利用する上で、セキュリティは必ず考慮する必要があるということです。

APIのセキュリティ脅威について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。こちらもあわせてご覧ください。
SQATⓇ 情報セキュリティ玉手箱「APIのセキュリティ脅威とは

APIを狙ったサイバー攻撃の増加

APIに対する攻撃は増加傾向にあるとの観測結果が報告されています(下グラフ)。

APIを狙ったサイバー攻撃の増加の概要図

なお、このグラフで多くの割合を占めている「ローカルファイルインクルージョン」は、攻撃者が対象システムのローカル上のファイルを読み込ませることで、領域外のファイルやディレクトリにアクセスできるようにしてしまう脆弱性です。情報漏洩、任意のコード実行、認証回避、DoS(サービス運用妨害)などの被害につながる恐れがあります。攻撃されたAPIサーバを「踏み台」とした内部/外部ネットワークへのさらなる攻撃やマルウェア感染などが想定されるため、危険度の高い脆弱性と言えます。

また、100ヶ国を対象にしたアンケート調査では、API攻撃による情報漏洩を経験している組織が90%以上にのぼるとの結果も報告されています(下グラフ)。

APIを狙ったサイバー攻撃の増加の概要図(アンケート調査)

OWASP API Security Top 10

APIセキュリティについて、Webアプリケーションセキュリティに関する国際的コミュニティであるOWASP(Open Web Application Security Project)が、2023年6月に「OWASP API Security Top 10 2023」をリリースしています。APIセキュリティにおける10大リスクをピックアップして解説したもので、今回は2019年の初版リリースから4年ぶりの第二版となります。

OWASP API Security Top 10の概要図

APIのセキュリティ対策

ここまで見てきたAPIセキュリティ脅威を踏まえると、以下のようなポイントにおいて脆弱でないことが重要と考えられます。

APIのセキュリティ対策のポイント図

開発中、リリース後、更新時といったいかなる状況においても、適切な脆弱性管理・対応ができているかどうかが、鍵となります。

APIのセキュリティ対策の概要図

APIの開発にあたっては、DevSecOpsを適用して脆弱性を作り込まないようにすること、APIリリース後も、新たな脆弱性が生まれていないか、APIセキュリティ診断などを通じて確認を継続することが重要です。

また前段の「スマホアプリとAPI」でも述べたように、APIはスマホアプリでも多く活用されています。誰もがスマートフォンを利用している今、攻撃の被害が多くの人々に影響を及ぼす可能性があるからこそ、スマホアプリにおいて次の攻撃につながる情報が漏洩したり、スマホアプリの改竄が行われたりする可能性を摘んでおくことが、スマホアプリを提供するうえで重要となります。スマホアプリのセキュリティ対策の一つとしては、信頼できる第三者機関による脆弱性診断の実施があげられます。第三者の専門家からの診断を受けることで、網羅的な確認ができるため、早急に効率よく対策を実施するのに役立つでしょう。

BBSecでは

スマホアプリ脆弱性診断

悪意ある第三者の視点で、対象アプリに影響を及ぼす恐れのある脅威と関連リスクをあぶり出します。実機を使った動的解析とAPK(Android)・IPA(iOS)ファイルの静的解析を実施します。

スマホアプリ脆弱性診断バナー

Webアプリケーション脆弱性診断

また、APIを含むWebアプリケーションに対する脆弱性診断サービスを利用して、第三者視点から、自組織のシステムで使用されているAPIのセキュリティを定期的に評価することもお勧めします。弊社診断エンジニアによる、より広範囲で網羅的な診断を検討している方は、手動で診断する、「Webアプリケーション脆弱性診断」がおすすめです。

Webアプリケーション脆弱性診断バナー

ウェビナー開催のお知らせ

もし不正アクセスされたら?すぐにとるべき対処法

Share

不正アクセスとは、アクセス制御機能を持つWebサービスやサーバ等に、正当なアクセス権限を持たない者が侵入する行為、およびそうした侵入を助長する行為を指します。あなたの会社で不正アクセスが生じた場合、その対応を誤ったり、対処が遅れたりすることで、事業への損害、評判の低下といった重大な事態につながる恐れがあります。本稿では、不正アクセスの主な手口を紹介し、被害を防ぐための対策、実際に被害にあってしまった場合の対処方法を解説します。

「不正アクセス」とは

「不正アクセス」と聞くと、本来その権限を持たない者が、サーバや情報システムの内部へ侵入を行う行為をイメージしますが、厳密にどのような行為を指すのかは、1999年に公布(最新改正は2013年)された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」で規定されています。同法では、アクセス制御機能を持つWebサービスやサーバ等に、正当なアクセス権限を持たない者が侵入する行為、およびそうした侵入を助長する行為を指します。

不正アクセス禁止法では、単に他人のIDやパスワード(「識別符号」と呼ばれる)を無許可で使用する行為だけでなく、他の情報を利用してWebサービスやサーバなどのシステム(「特定電子計算機」と定義されている)を操作する行為も「不正」と定義されています。この点には特に留意する必要があります。

また、不正アクセスを助長する行為としてID・パスワードの不正取得が禁じられているほか、
ID・パスワードの不正な保管行為も同法に抵触します。違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が処せられます。

「不正アクセス禁止法」の定義とリスク

なお、不正アクセス禁止法の定義に関しては、アクセスが事前の「承諾」を得ていなければ、
その行為は不正とみなされる点にも注意が必要です。例えば、システムのセキュリティ診断において、株式会社ブロードバンドセキュリティが運営するSQAT.jpは、Webアプリケーションや社内ネットワークの脆弱性診断やペネトレーションテストを行う際、システムを管理する企業からアクセスに対する承諾をいただいたうえで実施しています。

脆弱性診断やペネトレーションテストを行うツールは多数存在しており、だれでも無料で利用すること可能です。しかし、これらのツールの使用には慎重になる必要があります。もしもセキュリティ診断ツールを事前承諾なしに他社のシステムに使用した場合、たとえそれが善意に基づくものであったとしても、不正アクセス禁止法に抵触する可能性があり、刑事罰の対象となることがあります。

万が一あなたの会社の技術者が、運用管理や保守、攻撃耐性の確認等の目的で他社のシステムを対象に、セキュリティ診断ツールを使用している場合には、適切な手続きを踏む必要があることを理解することが重要です。

不正アクセスの手口と被害例

では、そもそも悪意を持った、攻撃者による不正アクセスの手口にはどのようなものがあるのでしょう。典型的なのは、「盗んだIDとパスワード、あるいは推測したパスワードを使って、システムに不正にログインする」というものです。ID・パスワードの組み合わせを総当り的に試してログインを図る「ブルートフォース攻撃」、辞書にある語句を利用する「辞書攻撃」、不正に入手したログイン情報を利用する「パスワードリスト攻撃」などが知られています。

中でも近年特に話題を集めているのは「パスワードリスト攻撃」です。背景には、数十万~数億件規模のID・パスワードがセットで売買されていたり、インターネット上に公開されていたりする事態があちこちで確認されており、攻撃者が不正アクセスのための情報を容易に手に入れやすくなっている状況があります。また、もし複数のシステムに対して同じID・パスワードが使いまわされている場合、1件の情報を入手することで複数のシステムへのログインが可能になるという点も、攻撃者を引き付けています。

この2020年8月には、日本企業約40社において、VPN(Virtual Private Network)のID・パスワードが盗まれ、インターネットに公開されるという事件が発生しました。VPNは、本来、セキュリティを確保したうえで企業ネットワークへアクセスするために使われる「安全性の高い入口」です。そこにログインするためのID・パスワードが盗まれることが極めて大きな被害につながり得ること、裏を返せば、攻撃者にとって極めて大きな利得につながり得ることは、論をまたないでしょう。

もちろん、不正アクセスのための攻撃は、ID・パスワードを狙ったものだけではありません。ID・パスワードの入手につながる脆弱性も格好の標的になります。例えば、Webアプリケーションや公開Webサーバの脆弱性はその最たるものです。攻撃者はしばしばSQLインジェクションの脆弱性クロスサイトスクリプティングの脆弱性などを悪用して個人情報を不正に入手し、ID・パスワードを特定してシステムへの侵入を試みます。

ID・パスワードの保護に加え、結果としてID・パスワードの特定につながる脆弱性を放置しないことが、不正アクセスを防ぐためには最重要といえるでしょう。

不正アクセスされたかどうか調べる方法 警告とサイン

「あなたの会社が不正アクセスされています」などの警告は、突然きます。

実際に不正アクセスが行われた場合でも、自社内では気づくことは少なく、外部からの警告によって初めて認識する場合が多いです。例えば、クレジットカード情報が盗まれた場合、カード会社から直接情報漏えいや不正利用の兆候がある等の連絡がきます。また、サイバー犯罪の捜査過程で、あなたの会社に不正アクセスが行われていることが発覚した場合、さらには、それが他の会社での被害につながっていることが発覚した場合には、警察やセキュリティ事故発生時の調整を行う機関など(一般社団法人 JPCERT コーディネーションセンター等)から連絡がくることもあります。

なお、サイバー攻撃が起こることを想定した組織体制がない場合、やってきた連絡が正当なものであるかの判断自体がつかない場合もあるかもしれません。実在する機関を装い、虚偽の不正アクセス事案を連絡する犯罪が発生する可能性も想定し、連絡の真偽は必ず確認するようにしましょう。

不正アクセスされたらすぐにとるべき対応

以前の記事「情報漏えいの原因と予防するための対策」では、「情報漏えい事故の報告書と収束までの流れ」として、事故発生時の報告書作成の注意点について解説しました。今回は、不正アクセスされた直後の対応や、真相究明を行う社内の組織体制構築でのポイントをご紹介します。

不正アクセス事故対応のチーム作り

セキュリティ事故対応を行う専門部署であるCSIRTが社内にない場合は、事故対応チームを速やかに組織しなければなりません。どのような編成を想定すべきか、参考として、モデル的な図解を下記に示します。

https://www.nca.gr.jp/activity/imgs/recruit-hr20170313.pdf より当社作成

もちろん、セキュリティ専門企業でない限り、ほとんどの組織にとってはここまでの編成をとることは合理的とはいえません。既存の組織・人員の状況に応じて、下記のような事項をポイントにチームを編成し、自組織の業種業態、慣習、人材、文化等を踏まえながら継続的にチームの発展・強化に取り組むことをお勧めします。

  • CSIRTがインシデント発生時における最終判断(システム停止も含む)までを担う場合は、責任を担う経営陣を参画させる。
  • 現体制におけるキーマンを特定し、そのキーマンを必ずメンバーに加える。
  • 現体制で実施できている役割がないか確認する(「実施できている役割は踏襲する」という判断も重要)。
  • 技術的な知識、経験、人材を持たない場合は、最低限CSIRTに必要な機能(=有事の報告、伝達を的確に行い、意思決定者へ早期伝達すること)を有する、「コーディネーション機能に重点を置いたCSIRT」を目指す。

取引先、関係者、個人情報保護委員会への連絡

あなたの会社のステークホルダーに対して、現時点で判明している事故の事実関係を連絡します。規制業種の場合は所轄官庁への報告義務があります。なお、個人情報保護法では、個人情報漏えい等の場合、本人通知や監督官庁への報告を努力義務としていますが、2022年に施行予定の改正個人情報保護法では一定範囲においてこれが義務化されるため注意が必要です。

不正アクセスの原因究明

続いて取り組むべきは、原因究明です。不正アクセスを受けた場合、侵入経路の特定や証拠保全などは自社でどこまで可能なのでしょう。監視やSOC(セキュリティオペレーションセンター)サービスの契約などによって保存してあるログを解析可能な場合、「不正アクセスの発端と展開過程がわかるから、自経路の解析や被害範囲の特定もできる」と考えてしまうかもしれません。しかし、火事場のように混乱する事故発生直後は、日頃から備えをしていた企業ですら、一刻を争う状況下で解析すべき情報の膨大さに圧倒されるものです。また、刑事事件として告発を行う場合や損害賠償請求を行う場合には証拠保全が必要となりますが、混乱し、慣れない状況下で証拠保全を念頭に調査や対応を行うのは大きな負荷となります。

さらに、「サイバー攻撃を行う5つの主体と5つの目的」で解説した「APT攻撃」が行われるケースも想定しておく必要があります。APTでは、侵入の痕跡を消されることが少なくなく、そのような場合、侵入経路の特定や証拠保存は難しくなります。しかし、日々ログの収集を行っていたとしたら、その痕跡からデジタルフォレンジックを実施することが可能です。

不正アクセス防止のための日常的なセキュリティ対策

日頃からWebサービスやサーバのセキュリティ強化に取り組むことで、不正アクセスの発生を抑え、万が一不正アクセスが発生した場合にも早期あるいは即時に把握することが可能になります。

例えば、サーバに対するアクセスログを収集・保存し、同一IPからの複数回ログインに対するアラートをルール化する等の設定をしておくことで、誰かが不正ログインを行っていることを早期に知り、ブロックするなどの対処を行えるようになります。

不正アクセス対策としてのセキュリティ企業との連携

不正アクセス事故に備えるためには、日常的なアクセスログの収集や分析、SOCサービスの契約、さらにはCSIRT組織の設置など、日頃からの備えが重要です。不正アクセスを未然に防ぐと同時に、万一発生した場合の対応力を高める役割を果たします。

そして、もう一つ有効な取り組みは、信頼できるセキュリティ企業との関係構築です。「かかりつけ医」のセキュリティ企業を持つことは、事故発生時に迅速かつ効果的に対応できる可能性があります。それまで取引が一度もなかったセキュリティ企業に、事故が発生した際に初めて調査や対応を依頼したとしたらどうでしょう。社内のネットワーク構成、稼働するサービス、重要情報がどこにどれだけあるのか、関係会社や取引先の情報などを一から説明する必要が生じ、対応に時間がかかってしまいます。わずかな時間も惜しまれるインシデント対応の現場では大きなリスクとなります。

脆弱性診断やインシデント対応などのセキュリティサービスを提供する企業に依頼をする際には、その企業が単に技術力があるかどうかだけでなく、信頼できる企業かどうか、いざというときにサポートしてくれるかどうかを慎重に考慮して選ぶことが重要です。提供サービス体制も幅広く調べたうえで、長期的な観点から利用を検討することをおすすめします。

サイバーインシデント緊急対応

突然の大規模攻撃や情報漏えいの懸念等、緊急事態もしくはその可能性が発生した場合は、BBSecにご相談ください。セキュリティのスペシャリストが、御社システムの状況把握、防御、そして事後対策をトータルにサポートさせていただきます。

サイバーセキュリティ緊急対応電話受付ボタン

まとめ

  • 不正アクセスとは、アクセス制御機能を持つWebサービスやサーバ等に、正当なアクセス権限を持たない者が侵入する行為、およびそうした侵入を助長する行為を指します。不正アクセス禁止法の違反者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
  • たとえ悪意がなくても、セキュリティ診断ツールなどを使用することで不正アクセス禁止法に抵触することがあります。
  • ID・パスワードの管理だけでなくWebアプリケーションやサーバの脆弱性管理も重要です。
  • 不正アクセスが実際に起こってしまったら、早急に対応チームを組織し、ステークホルダーへの連絡や原因究明を行います。
  • いざ不正アクセス事故が起きたときの対応力を高めるには、日頃からのアクセスログ収集や分析、SOCサービスの契約、CSIRT組織の設置、「かかりつけ」セキュリティ企業との関係構築などが有効です。

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

ペネトレーションテストとは?

Share

サイバー攻撃の数は年々増加し続けており、その手口は高度化・巧妙化しています。自組織がサイバー攻撃の被害に遭わないためにも、特に企業の経営者においては、システムのセキュリティリスクの状態を把握や適切なセキュリティ対策の実施などが重要課題となっています。ペネトレーションテストでは、システムに存在するリスクが実際に悪用可能か確認することが可能です。本記事では、ペネトレーションテストの基本とその重要性、脆弱性診断との違い、ペネトレーションテスト会社の選び方について解説します。

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテストとは、主に企業ネットワークや、Webアプリケーションなどに不正に侵入することができるかどうかをテストすることです。英語の「 penetration 」には「貫通」、「 penetrate 」には「貫く」「見抜く」などの意味があります。「ペンテスト」と略されたり、「侵入テスト」と呼ばれることもあります。

サイバー攻撃者はまず不正侵入し、その後、情報を盗んだり、バックドアを仕掛けたり、あるいは破壊工作などを行います。それらすべての端緒となる不正侵入を許すかどうかを調べるのが、ペネトレーションテストの役割です。

ペネトレーションテストは、システムやネットワークに対する不正侵入や攻撃が可能かどうかを確認するためのテスト手法です。このテストは、単に脆弱性を見つけるだけではなく、それらが実際に悪用される可能性があるかどうかを判断することに重点を置いています。これにより、システムのセキュリティ状態の把握や実装されているセキュリティ対策の有効性を検証することができます。

ペネトレーションテストが必要な業界と業種

ペネトレーションテストは、特にセキュリティが重要視される業界や業種で必要とされます。
金融、医療、政府機関、ITサービスなど、機密情報を扱うすべての業界で、ペネトレーションテストの実施は必要不可欠です。これらの業界では、データ漏洩やシステム障害が重大な結果を招く可能性があるため、定期的なテストが推奨されます。

ペネトレーションテストが必要な3つの業種

脆弱性診断の結果見つかった脆弱性を悪用して、攻撃が本当に成功するのかを検証するために、ペネトレーションテストが実施されることがあります。あくまで一般論ですが、ペネトレーションテストが必要な業種や事業として、以下の3つが挙げられます。

1.生命・生活に直接影響を与える事業やサービス
第一に、生命や生活に影響を及ぼす業種が挙げられます。具体的には、水道・電気・ガス・道路・交通等の社会インフラや、病院、ビル管理、工場のシステムなどです。

2.資産に影響を与える個人情報を扱うサービス
個人情報を保有する事業やサービスにも、ペネトレーションテストが必要な場合が多いでしょう。とりわけ銀行や証券会社、クレジットカード、仮想通貨取引所などの金融、大規模なWebサービスやECサイト、住民データを扱う自治体や官公庁などが挙げられます。

3.事業継続に影響を与える機密情報を扱うシステム
重要な営業機密や知的財産を保有する企業もペネトレーションテストの実施が望ましいといえるでしょう。

特に、クローズモデルの知財戦略に基づいて特許を取得しない方針の企業が、サイバー攻撃によって機密情報を盗まれ、他の企業に国内外で特許申請・取得された場合、事業継続に関わる重大な影響が懸念されます。

また、データ自体に価値はあるが、特許法や不正競争防止法では保護対象とならないようなデータについては、セキュリティ対策によって保護を図る必要があります。

脆弱性診断との違い

ペネトレーションテストは、脆弱性診断とは異なるアプローチを取ります。

脆弱性診断はシステムの脆弱性を特定することに焦点を当てていますが、ペネトレーションテストはその脆弱性を利用して実際に攻撃を試み、システムのセキュリティを実際に検証します。この違いは、単にリスクを特定するのではなく、そのリスクが実際にどのように悪用され得るかを理解することにあります。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いと使い分け

ペネトレーションテストと脆弱性診断には共通する部分があるため、違いがよく理解されていません。特によく見られる勘違いは、「ペネトレーションテストをやりたい」という要望だったものの、ヒアリングしてみると、実際にはペネトレーションテストでなく脆弱性診断が必要であった、というケースです。

以下に「対象」「目的」「範囲」、必要な「期間」の4つの観点から、ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いを示します。

ペネトレーションテスト脆弱性診断
対象脆弱性診断同様、ネットワークやWebアプリケーションを対象にしますが、ときに警備員をあざむいて建物に侵入できるかどうか等の物理的侵入テストが行われることもあります。ネットワークやWebアプリケーションが対象となります。
目的脆弱性診断は脆弱性を発見して報告することが主な業務ですが、ペネトレーションテストは脆弱性をもとに不正アクセスし、ネットワーク等に侵入することが目的となります。 脆弱性を検知・検出すること。
範囲広い範囲の網羅性を重視する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストは侵入することが目的であるため、脆弱性診断とは反対に、狭く深く、ときに針の穴のような侵入できる一点を探します。 広く網羅的に脆弱性の有無を探します。
期間ペネトレーションテストは、とにかく侵入が成功するまでトライし続ける作業であるため、脆弱性診断よりも長い期間を要する場合が少なくありません。ただし、一般論として、優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間で侵入が成功します。 探すものが事前に決まっているためペネトレーションテストよりも通常は短い期間で完了します。

ペネトレーションテストの手順

ペネトレーションテストサービスは提供する企業によってそれぞれ個性がありますが、大きく分けると下記の手順で実施されます。

Step1.ヒアリング

目的に応じ、たとえば「顧客データベース」など、ペネトレーションテストを行う対象を決定します。そして「顧客データベース」が外部から攻撃されるのか、あるいは内部犯行なのか、想定する攻撃シナリオを作成し、最後に、ペネトレーションテストを行う期間を決定します。

Step2.実施

対象によってさまざまな実施方法があります。公開されているWebアプリケーションであればリモートから実施することができます。内部犯行の危険性をテストする場合ならオフィス内から実施することもあるでしょう。

Step3.完了

「侵入に成功したとき」あるいは反対に、「侵入に成功できないまま期間が終了したとき」のいずれかをもってペネトレーションテストは完了します。どちらの結果にも意味があります。侵入に成功した場合は、その報告を受けて防御力を高める必要性を認識することになり、侵入に失敗した場合は、一定の防御力を保持できている目安となります。

Step4.報告

ペネトレーションテスト事業者からの報告書提出や報告会が行われます。具体的にどういうプロセスで、どういう技術を用いて侵入し、重要なデータがどこまで閲覧可能だったのか、どんなことができてしまう危険性があったのか、など管理者の気にかかることが詳細に報告されます。


ペネトレーションテスト 日本と海外の違い

海外では本番環境で稼働するシステムに対して、直接攻撃を行うような荒っぽいペネトレーションテストが行われることもありますが、日本国内ではそういったケースは多くありません。日本では業務やサービスの運用への影響を回避しつつ、安全に配慮しながら設計・実施されるのが主流です。

ペネトレーションテストを実施する際の会社の選び方

ペネトレーションテストを実施する際には、専門知識と経験を持つ信頼できる会社を選ぶことが重要です。セキュリティテストの専門家であること、業界の最新の脅威に精通していること、そして過去の成功事例を持つことが、良いサービスプロバイダーの特徴です。また、テストの範囲、方法、報告の詳細さなど、サービスの質にも注意を払う必要があります。

ペネトレーションテストは経験とセンスが求められる仕事であるため、優良事業者選びはとても重要です。前述したとおり「優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間でテストが終了(=侵入に成功)」します。ペネトレーションテストの見積額はエンジニアの拘束時間とも相関しますので、予算にもかかわってきます。大きく以下の3つのポイントを、いいペネトレーションテスト会社選びの参考にしてください。

1.丁寧なヒアリングにもとづいてシナリオを考えてくれるか

システム構成や業務手順、ときには組織構成など、実際のサイバー攻撃を行う際に参照するとされる、さまざまな情報をもとにして、実施するサービスの適用範囲、留意事項、制限などを聞き、顧客の目的や要望、要件に沿ったペネトレーションテストの攻撃シナリオを考えてくれる会社を選びましょう。

2.技術者の経験と勘、クリエイティビティ

ペネトレーションテストはときに針の穴を通すような隙間を見つけ出して侵入を成功させる業務です。技術者のこれまでの経験、保有資格などを確かめ、技術者の層が厚い会社を選びましょう。

3.診断実績

過去のペネトレーションテストの実施社数や件数、リピート社数なども、いいペネトレーションテスト会社選びの参考になります。

ペネトレーションテストのツール

ここまで述べてきたとおりペネトレーションテストとは、丁寧なヒアリングのもとで作成した攻撃シナリオに基づいて、経験豊かな技術者が実施するクリエイティブな手作業です。ペネトレーションテストをすべて自動で行うツールは存在しません。

ただし、ペネトレーションテストを行う技術者が、いわば「工具」「道具箱」のように用いるツールは数多くあります。代表的なものとして、オープンソースプロジェクトである Metasploit が提供する、さまざまなツール群が挙げられます。

セキュリティ企業に依頼せずに、自分でMetasploit が提供するツールを用いて、公開されている脆弱性などを用いて攻撃を実行することは可能です。しかし、その結果を読み解いたり、優先順位をつけたりするノウハウには経験と知見が必要とされます。

また、自宅に置いたサーバに研究目的でツールを走らせるような場合でも、不用意にこうしたツールを使用したり、不適切な方法で攻撃用のエクスプロイトを取得・保管したりすると「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「不正指令電磁的記録に関する罪(刑法刑法168条の2及び168条の3)」等にも触れる犯罪となる危険性もあることを忘れてはいけません。

ペネトレーションテストの料金相場

ペネトレーションテストの料金は、対象とする範囲や、攻撃シナリオによって変動します。あくまで一般的な相場として「脆弱性診断の1.5倍から2倍」程度、金額として数十万円から数千万円の開きがあります。

まとめ

・ペネトレーションテストとは、システム・ネットワークへの不正侵入や攻撃が成立するか確
 認するテスト手法の一つ
・特にセキュリティが重要視される業界や業種、金融、医療、政府機関、ITサービス業界など

 で、ペネトレーションテストの実施が必要不可欠
・脆弱性の有無を判定する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストでは脆弱性自体を見

 つけることよりも不正侵入や攻撃が成立するかどうかの判断を優先する
・事前ヒアリングが丁寧で、優秀な技術者が在籍する、診断実績の多い会社を探す

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

ASM(Attack Surface Management)と脆弱性診断
― セキュリティ対策への活用法 ―

Share

今、インターネット上に公開されるIT資産がサイバー攻撃者に狙われ、被害が拡大しています。サイバー攻撃者は事前に偵察行為をし、攻撃の的を探し、特定します。特に、脆弱性が存在しているWebシステムやネットワーク機器などは攻撃者にとっても悪用しやすく、侵入するための入口となってしまいます。では、自組織が狙われないようにするために、私たちはどのような対策をとればよいのでしょうか?本記事では、ASM(Attack Surface Management)と脆弱性診断を併用した、それぞれの実施の活用方法について解説いたします。

アタックサーフェス(攻撃対象領域)とは

サイバー攻撃に対する防御について語られる際に出てくる言葉の1つに、「アタックサーフェス」があります。

アタックサーフェスは、直訳すると”攻撃面”となりますが、サイバーセキュリティの文脈では、「攻撃対象領域」といった意味合いで使用され、サイバー攻撃の対象となり得る様々なIT資産、攻撃のポイントや経路等を指します。

組織が事業活動を行う上で使用するIT資産には、ハードウェアもソフトウェアも含まれます。IT資産にサイバー攻撃の足掛かりとなる攻撃ポイント・経路が存在すると、サイバー攻撃者は容赦なくそこを狙ってきます。

【アサックサーフェスの例】

攻撃事例とアタックサーフェス

実際のサイバー攻撃やインシデントの事例とそのアタックサーフェスを確認してみましょう。

事 例アタックサーフェス
2020年国内上場企業のドメイン名を含むサブドメインテイクオーバー(使用が終了したドメイン名の乗っ取り)の被害事例が2020年7月までに100件以上発生*1ドメイン管理の不備
2023年2022年5月以降、特定のセキュア・アクセス・ゲートウェイ製品の脆弱性を狙ったものと見られる標的型サイバー攻撃が断続的に発生*2ネットワーク機器の
既知の脆弱性
2023年国内自動車メーカーの関連会社で保有する顧客約215万人分の車両等の情報が10年近く公開状態になっていたことが判明*3クラウド設定の不備

拡大するアタックサーフェス

クラウド利用、DXの推進、テレワークの一般化……ITインフラ環境の柔軟性は高まる一方です。これに伴い、Webシステムやネットワーク機器といった外部との境界にあるアタックサーフェスは、拡大し続けています。つまり、外部にいるサイバー攻撃者が組織のシステムを侵害するチャンスが広がっていると考えられます。

サイバー攻撃者によるアタックサーフェスへのアプローチ

サイバー攻撃者が攻撃のため、最初に行う活動の典型が、「偵察」です。攻撃に利用可能な様々な情報を探索し、どの組織を標的とするか、どのような攻撃手法をとるか、といったことを定めるのに役立てます。

偵察活動で駆使される技術として、合法的に入手可能な公開情報を収集して調査・分析する手法—OSINT(「オシント」Open Source Intelligence:オープンソースインテリジェンス)が注目されています。

サイバー空間における脆弱性探索行為

前述のサイバー攻撃者による偵察活動が行われていることの裏付けとして、日本の各機関からも以下のような観測が定期的に報告されています。

【観測報告の例】

発表元観測内容
国⽴研究開発法⼈
情報通信研究機構(NICT)
2022年1~12月調査⽬的と判定されるスキャンの数は12,752のIPアドレスから約2,871億パケットあり、これにサイバー攻撃のための偵察活動が含まれていると考えられる*4
JPCERT/CC2022年10月~2023年6月IoT機器を主な標的とするマルウェアMirai型パケットについて、海外および日本からの探索活動が継続して報告されている。探索元IPアドレスの一部について、動作している機種の特定に成功したことも*5
 2023年4~6月Laravel(Webアプリケーションフレームワーク)の設定情報窃取を試みる通信を確認*6
警察庁2023年1~6月脆弱性のあるIoT機器の探索を目的としたものと見られるアクセスの増加を確認
 2023年1~6月脆弱性のあるVPN機器の探索を目的としたものと見られるアクセスを断続的に確認

ASM(アタックサーフェスマネジメント)で自組織を守る

サイバー攻撃者の偵察行為で、自組織が攻撃対象として選定されないようにするにはどうすればよいでしょうか。

サイバー攻撃から⾃組織を守るために、インターネット上で意図せず公開してしまっているアタックサーフェスとなり得るIT資産を特定し、セキュリティ対策に活用する手法が、「ASM(Attack Surface Management:アタックサーフェスマネジメント)」です。

ASM導入ガイダンス

経済産業省は、ASMを「組織の外部(インターネット)からアクセス可能なIT資産を発見し、それらに存在する脆弱性などのリスクを継続的に検出・評価する一連のプロセス」と定義しており、2023年5月29日に「ASM(Attack Surface Management)導入ガイダンス~外部から把握出来る情報を用いて自組織のIT資産を発見し管理する~」を発行しています。

企業のセキュリティ担当者や情報セキュリティを管掌する経営層(CIO、CISO等)に向けて、企業・組織に対してサイバー攻撃の起点となり得るIT資産を適切な方法で管理できるよう促すため、ASMの解説、ASMを実施するためのツールや必要なスキル、体制、留意点等がまとめられています。また、国内企業のASM取り組み事例も掲載されています。

ASMにより得られる効果

ASMにより以下のようなことが確認できます。

ASMのプロセス

ASMで具体的にどのようなことを実施するかというと、前述の経済産業省によるガイダンスでは、次のようなプロセスが紹介されています。「攻撃面」とは、「アタックサーフェス」のことです。

プロセス(1) 攻撃面の発見:

インターネットからアクセス可能なIT資産として、IPアドレスやホスト名を発見。

・組織名(法人名等)より、オフィシャルWebサイトや検索プロトコルであるWHOISを利用して当該組織のドメイン名を特定・ドメイン名を特定したら、DNS検索や専用ツールの使用によりIPアドレス・ホスト名の一覧を取得

プロセス(2) 攻撃面の情報収集:

前プロセスの結果より通常のインターネットアクセスで取得可能な方法でOS、ソフトウェア、ソフトウェアのバージョン、開放されているポート番号といったIT資産の情報を収集。

プロセス(3) 攻撃面のリスク評価

前プロセスで収集した情報を既知の脆弱性情報と突合せするなどして、脆弱性が存在する可能性を識別。

ASMのプロセスとしてはここまでですが、セキュリティ対策としては、ASMを実施して自組織のセキュリティリスクを把握した後の工程として、リスクの深刻度に応じた対応要否や優先度、具体的な対応内容等を決め、セキュリティリスクの低減に努める必要があります。

ASMと脆弱性診断の違い

さて、「IT資産の脆弱性検出やリスク評価を行う」となると、脆弱性診断と重なるイメージがあるのではないでしょうか。

ASMと脆弱性診断の関係性を表す、次のような図があります。脆弱性管理において、それぞれに役割があることが伺えます。

ASMと脆弱性診断の違い画像
出典:経済産業省「 ASM(Attack Surface Management)導入ガイダンス~外部から把握出来る情報を用いて自組織のIT資産を発見し管理する~」(令和5年5⽉29⽇)P.11 図 2-2 ASM と脆弱性診断の違い

両者の違いをまとめると以下のようになります。いずれもセキュリティ対策における取り組みですが、非常にざっくりと、ASMは“管理対象でないものも含めて広く浅く”、脆弱性診断は“特定した対象に対して深く詳細に”という印象で捉えられるのではないでしょうか。

ASMと脆弱性診断の併用・使い分けを

脆弱性管理において、ASMと脆弱性診断のどちらかを行っていればOK、ということではありません。脆弱性診断では、自組織が特定したシステムや機器に対して脆弱性を洗い出しますが、脆弱性診断の対象となるということは、組織自身が当該IT資産を管理下にあるものと認識していることになります。一方、ASMでは、そもそも管理外であるにもかかわらず当該組織のIT資産としてインターネット上に公開されてしまっているもの、つまり気づかぬまま管理から漏れてしまっているものを発見することができます。

そのため、両者の特長を理解した上でその目的に応じて、例えば、ASMによって脆弱性が存在する可能性があると発見したら、対象となる機器やシステムに対して脆弱性診断を実施して脆弱性の特定を行う、といった両者の併用・使い分けが推奨されます。

ASM・脆弱性診断ともに有効な実施方法の検討を

ASMも脆弱性診断も、ただ実施すればよいというものではなく、効果的に、かつ継続して行うことが重要です。そのためにはノウハウやスキルが必要となります。

ASMや脆弱性診断を自組織で実施しようとなると、以下のような注意点が挙げられます。

例えば、自組織ではASMや脆弱性診断をどう活用したいか検討することの方に労力を割き、ASMや脆弱性診断の実施や結果の分析については、その活用目的に合致した対応が望める外部のセキュリティサービスを探して依頼するなど、定期的に見直しをすることが重要です。

日々進化していくITインフラ環境において便利になる反面、攻撃者にもそのチャンスが広がっています。攻撃者から自組織を守るためにも、ASMと脆弱性診断の実施を組み合わせることは有効な選択肢の1つといえるでしょう。

BBSecでは

BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

アタックサーフェス調査サービス

インターネット上で「攻撃者にとって対象組織はどう見えているか」調査・報告するサービスです。攻撃者と同じ観点に立ち、企業ドメイン情報をはじめとする、公開情報(OSINT)を利用して攻撃可能なポイントの有無を、弊社セキュリティエンジニアが調査いたします。

詳細・お見積りについてのご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちら。後ほど、担当者よりご連絡いたします。

SQAT脆弱性診断サービス

システムに存在する脆弱性は、時として深刻な被害につながる看過できない脅威で、事業継続性に影響を与えかねません。BBSecの脆弱性診断は、精度の高い手動診断と独自開発による自動診断を組み合わせ、悪意ある攻撃を受ける前にリスクを発見し、防御するための問題を特定します。

ウェビナー開催のお知らせ

最新情報はこちら

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

ウェビナー抜粋動画

Share

サービス紹介デモ動画

BBSecで提供しているサービスをご紹介するデモ動画を公開しています。



デイリー自動脆弱性診断サムネ

デイリー自動脆弱性診断-Cracker Probing-Eyes®-
再生時間:02:58
関連情報:デイリー自動脆弱性診断-Cracker Probing-Eyes®

【資料ダウンロード】


ランサムウェア感染リスク可視化サービスサムネ

ランサムウェア感染リスク可視化サービス
再生時間:05:41
関連情報:ランサムウェア対策総点検

過去ウェビナー抜粋動画

過去ご好評いただいたウェビナーの抜粋動画を無料で公開しています。



自動車産業・製造業におけるセキュリティ対策のポイント-サプライチェーン攻撃の手口と対策方法-サムネ

自動車産業・製造業におけるセキュリティ対策のポイント
-サプライチェーン攻撃の手口と対策方法-

再生時間:04:56


DevSecOpsを実現!-ソースコード診断によるセキュリティ対策のすすめサムネ

DevSecOpsを実現!
-ソースコード診断によるセキュリティ対策のすすめ-

再生時間:05:29


Webアプリケーションの脆弱性対策-攻撃者はどのように攻撃するのか-サムネ

Webアプリケーションの脆弱性対策
-攻撃者はどのように攻撃するのか-

再生時間:05:42


今さら聞けない!ペネトレーションテストあれこれサムネ

今さら聞けない!ペネトレーションテストあれこれ
再生時間:05:20


予防で差がつく!脆弱性診断の話サムネ

予防で差がつく!脆弱性診断の話
再生時間:04:57


今さら聞けない!PCI DSSで求められる脆弱性診断あれこれサムネ

今さら聞けない!PCI DSSで求められる脆弱性診断あれこれ
再生時間:05:00


知っておきたいIPA『情報セキュリティ10大脅威 2023』サムネ

知っておきたいIPA『情報セキュリティ10大脅威 2023』
~セキュリティ診断による予防的コントロール~

再生時間:05:00


今さら聞けない!ソースコード診断あれこれサムネ

今さら聞けない!ソースコード診断あれこれ
再生時間:05:00


今さら聞けない!クラウドセキュリティあれこれサムネ

今さら聞けない!クラウドセキュリティあれこれ
再生時間:05:00


リスクを可視化するランサムウェア対策総点検サムネ

リスクを可視化するランサムウェア対策総点検
再生時間:02:04
※2021年度ウェビナー資料

【資料ダウンロード】


“他山の石”の拾い方 -セキュリティのトレンドをキャッチアップ-サムネ

“他山の石”の拾い方 -セキュリティのトレンドをキャッチアップ-
再生時間:06:26
※2019年度セミナー資料

【資料ダウンロード】


クラウド環境におけるセキュリティの重要性サムネ

クラウド環境におけるセキュリティの重要性
再生時間:05:00
※2019年度セミナー資料

【資料ダウンロード】

TOP-更新情報に戻る


年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

クラウドセキュリティとは
-セキュリティ対策の責任範囲と施策-

Share
クラウド(雲)とネットワークのイメージ

クラウドセキュリティ、当事者はだれか?

セキュリティ対策をクラウド事業者任せにしてはいませんか?クラウドサービス利用でも、セキュリティ対策はオンプレミス同様、重要な課題です。本記事では、クラウドセキュリティの責任範囲と対策実施の施策について解説いたします。

クラウドサービスの利用状況

総務省が公開する「令和4年通信利用動向調査の結果」(令和5年5月29日公表)によれば、クラウドサービスを全社および一部でも利用している企業の割合は2022年時点で72.2%にのぼるとされています。このことから、現代では組織のクラウド活用は一般的なものとなっており、様々な業種・業態での利用が広がっていることが読み取れます。こうして普及しているクラウドですが、セキュリティには適切な注意が払われているでしょうか。クラウドサービス利用でも、セキュリティ対策はオンプレミス環境と同様かそれ以上に、重要な課題です。

クラウドセキュリティとその責任範囲

クラウドセキュリティとは、クラウド環境におけるデータやシステムを保護するためのセキュリティ対策のことを指します。クラウドサービスを提供する事業者は、セキュリティに配慮した安全な環境を提供することに注力していますが、責任共有という考えにもとづいて、クラウドで実行されるアプリケーションやデータを保護する責任は、クラウドの利用者にあるとされているのが一般的です。つまり、クラウドセキュリティにおいては、クラウドサービス事業者とクラウドサービスユーザ、双方に責任があるということになります。そしてクラウドサービス事業者の責任範囲とユーザの責任の範囲はクラウドサービスの提供形態によって変化します。詳細は以下の表のとおりです。

クラウドサービスを利用して業務を行う場合は、自組織が責任を負う設定や管理の範囲がどこまでかをよく確認し、適切にクラウドサービス事業者が提供するセキュリティサービスを設定して、利用者自身が必要なセキュリティ対策を講じる必要があります。

クラウド環境のセキュリティリスク

クラウドを利用することは、「コストの削減」「納期・システム開発期間短縮」「拡張性・柔軟性」「オンデマンドセルフサービス」「利便性や機能向上」「事業継続性」といった、多数の魅力的なメリットが存在しますが、一方で、注意するべきリスクも存在します。

リスクとして挙げられるのが、悪意ある第三者に侵入され、機密データやシステムにアクセスされる「不正アクセス」、サービス終了後に物理的アプローチによる完全なデータ消去が難しいことに起因する「情報漏洩リスク」、クラウドサービスの機能変更によって設定が変更されるなどして、低いセキュリティレベルで運用されてしまい、その結果インシデントが発生してしまう「設定ミスによるインシデント」、インシデントが発生した際に、クラウド事業者から十分な対応が受けられない「インシデント対応の不十分性」といったリスクです。こうしたリスクはクラウド固有のものではなく、オンプレミスと同様に、セキュリティに関連するリスクであり、サービスユーザが適切なセキュリティ対策を施したり、サービス提供事業者と連携したりすることで、リスク緩和を図ることが可能です。

国内のクラウドセキュリティ設定ミスによるセキュリティインシデント事例

近年、クラウドサービスのセキュリティに関する設定が十分でなかったために、意図せず、クラウドサービスで管理している機密情報を無認証状態で外部に公開してしまい、機密情報を漏洩させてしまった事例が相次いで報告されています。このように、クラウドサービスの設定ミスでセキュリティインシデントが多発している原因の一つとして考えられるのが、クラウドサービス利用を利用している企業や組織が対応すべき情報セキュリティ対策が曖昧になっていることです。前述しましたとおり、クラウドセキュリティでは、クラウドサービス事業者とクラウドサービスユーザはお互いにクラウドサービスに対する責任を共有する「責任共有モデル」を多くの場合採用しています。しかし、実際にはクラウドサービスユーザ側で、セキュリティ実施者としての当事者意識が低いというケースが散見され、そのために設定ミスによるインシデントが多発していると考えられます。

日本国内のクラウドセキュリティインシデントの報告事例(2020年12月~2023年5月)

時期事業者概要
2020年12月ECサイト運営会社セキュリティ設定不備により、不正アクセスが発生し、148万件を超える個人情報が流出した可能性あり*7
2021年1月ホビーメーカーセキュリティ設定不備により、不正アクセスが発生し、約150名の顧客情報が流出した可能性あり*2
2021年2月ソフトウェアベンダ権限設定不備により、個人情報を含む2,800件超えの情報が第三者によってアクセス可能に*3
2021年8月医療機関グループの公開設定不備により、業務メールや非公開情報が外部から閲覧可能に*4
2021年11月教育サービス会社自治体より委託された事業の申込フォームの設定不備により、他の申込者の個人情報が閲覧可能に*5
2022年5月ITサービスベンダアクセス設定不備により、採用に関する個人情報が6年間にわたり外部から閲覧可能に*6
2023年5月自動車
ITサービスベンダ
セキュリティ設定不備により、車台番号、車両の位置情報が外部から閲覧可能に*7

クラウドセキュリティの対策例

では、セキュリティ対策として、どのような対策を実施すればよいのでしょうか。まず、クラウドのセキュリティではオンプレミスと同様の「基本的なセキュリティ対策」とクラウドに応じた「クラウド環境のセキュリティ対策」に分かれます。

前者の基本的なセキュリティ対策の具体的内容は、以下の図のとおりです。

前提として押さえておくべきポイントは、「クラウドサービスというものは、組織外部での利用が前提であり、環境によって管理する内容も異なるため、従来のオンプレミス環境でのセキュリティ対策に加え、クラウド環境特有のセキュリティ対策が必要となる」という点です。これを踏まえて、基本的なセキュリティ対策をおろそかにしないことが重要です。

そして、クラウド環境のセキュリティ対策については、以下の図のとおりです。

クラウドのセキュリティ対策の方法としては、クラウドサービスの設定に関わるベストプラクティス集を利用する方法があることも補足しておきます。これは各クラウドベンダから公開されているもので、日本語版も用意されています。また、CISベンチマークという第三者機関が開発したセキュリティに関するガイドラインも存在しています。ただし、これらは網羅性が高く、項目も多いため、必要な項目を探すには労力が必要となる可能性があります。

国内クラウドセキュリティガイドラインの紹介

自組織の環境の安全性をより高めていく上で、ツールやガイドラインの活用も有効です。

■クラウドサービス提供者向け
総務省
クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)
■クラウドサービス利用者・提供者向け
IPA
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」付録6:中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き
総務省
クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン
経済産業省
クラウドセキュリティガイドライン 活用ガイドブック

クラウドセキュリティの対策実施のまとめ

最後に、繰り返しとなりますが、クラウドサービスを利用する際には、クラウド事業者とクラウドユーザの双方がセキュリティ対策に取り組む必要があります。セキュリティは単なるクラウド事業者の課題ではなく、クラウドユーザ自身の重要な責務であることを認識し、適切な対策を講じることが重要です。

クラウドサービスのセキュリティ対策は、基本的な対策では従来のオンプレミス環境での対策と同様の方法です。ただし、環境によって管理する内容も異なるため、クラウド環境特有のセキュリティ対策も必要となる点に注意が必要です。クラウドセキュリティの対策のポイントとしては、ベストプラクティスにもとづいた設定の見直しと、第三者機関による定期的なセキュリティチェックを受けることです。自組織において適切な対策を実施し、セキュリティリスクを最小限に抑えましょう。

● 関連記事リンク
 「押さえておきたいクラウドセキュリティ考慮事項―クラウドへ舵を切る組織のために―

BBSecでは

BBSecでは以下のようなご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

クラウドセキュリティ設定診断サービス

CISベンチマークテストのほか、主要クラウド環境におけるベストプラクティスにもとづく評価や、クラウド環境上でお客様が用意されているプラットフォームの診断(オプション)も可能です。ワンストップで幅広いサービスをご利用いただけます。

クラウドセキュリティ設定診断のサムネ

<次回ウェビナー開催のお知らせ>

・2023年9月27日(木)14:00~15:00
知っておきたいIPA『情報セキュリティ10大脅威 2023』
~セキュリティ診断による予防的コントロール~

最新情報はこちら

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

ChatGPTとセキュリティ
-サイバーセキュリティの観点からみた生成AIの活用と課題-

Share
chatGPTのイメージ画像

2022年11月にOpenAIによって公開された生成AI「ChatGPT」の利用者は、リリース後わずか2か月で1億人を突破しました。2023年になってからもその勢いは止まらず、連日のようにニュースで取り上げられ、人々の注目を集め続けています。ChatGPTを含めた生成AIは、今後のビジネスにおいて重要な役割を果たし、企業の競争力にも関わってくると考えられます。本記事では改めてChatGPTとはいったい何なのか?そしてサイバーセキュリティの観点からみたインパクトとリスクについて解説します。

ChatGPTとは?

ChatGPTとは、端的に言えば「人間が作った質問に自然な文章で回答を返してくれる、OpenAIが開発した人工知能システム」のことです。ChatGPTの主要機能は「人間同士の対話を模範すること」であり、その得意とするところは、「人間が自然と感じる回答の生成」です。

応答してくれる言語については、主要なものに対応しており、日本語で問いかけた場合は日本語で回答が返ってきます。

ChatGPTの返答イメージ

ChatGPTとは?の画像

なぜそのようなことが可能かというと、人間の脳の神経回路の構造を模倣した「ニューラルネットワーク」を利用*8しており、大量のウェブページ、ニュース記事、書籍、社交メディアの投稿など、多様なテキストを学習しているからです。つまり膨大なデータで学習し、人間の脳を模倣した処理によって、人間が使う自然な言葉で、入力した言葉に対して回答を返してくれるのです。

多種多様な生成AI

生成AI(ジェネレーティブAI)とは
生成AIとは、学習したデータをもとに、画像・文章・音楽・デザイン、プログラムコード、構造化データなどを作成することができる人工知能(AI)の総称です。近年は様々な組織から多種多様な生成AIが開発、リリースされており、日進月歩の進歩を遂げています。なお、ChatGPTの「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」を意味しており、Gは生成を意味するGenerativeです。

ChatGPTは2023年6月現在、2つのバージョンが存在しています。2022年の11月に公開された無料で利用できるChatGPT3.5というバージョンと、2023年3月に公開された有償での利用が可能なChatGPT4というバージョンです。ChatGPT4は3.5に比べて事実にもとづく回答の精度が40%向上しているとされている他、いくつかの機能が追加されています。

また、人工知能チャットボットとしてはChatGPTの他にも「Google Bard」、「Microsoft Bing AI」「Baidu ERNIE」その他様々なモデルが登場しています。他にも文章や画像から生成する画像生成AIとして「Midjourney」や「Stable Diffusion」、音声から文字起こしを行うChatGPTと同じOpenAIの「Whisper」といったものもあります。 最近では、MicrosoftがWindows11へ「Windows Copilot for Windows 11」というChatGPTを利用した対話型のアシスタンスの導入を発表しています。

こうした生成AIにはカスタマーサービスでの利用、ソフトウェアの作成やメール文章の作成から、ちょっとした日常生活の疑問の解決、様々なビジネス上のシナリオ作成からテストまで、幅広い活用の幅があります。

種類提供元サービス名URL
文章生成AIOpenAIChatGPT https://openai.com/blog/chatgpt
文章生成AIGoogleBardhttps://bard.google.com/
文章生成AIMicrosoftBing AIhttps://www.microsoft.com/ja-jp/bing?form=MA13FJ
文章生成AIBaiduERNIEhttps://yiyan.baidu.com/welcome
画像生成AIMidjourneyMidjourneyhttps://www.midjourney.com/home/?callbackUrl=%2Fapp%2F
画像生成AIStability AIStable Diffusionhttps://ja.stability.ai/stable-diffusion
画像生成AIOpenAIDALL·Ehttps://openai.com/dall-e-2
文章生成AI
(文字起こし)
OpenAIWhisperhttps://openai.com/research/whisper
音声生成AIElevenLabsPrime Voice AIhttps://beta.elevenlabs.io/
無数に存在するAIの画像
無数に存在するAI
出典:Harnessing the Power of LLMs in Practice: A Survey on ChatGPT and Beyondより引用

ChatGPTとサイバー攻撃

このような幅広い活用を期待されているChatGPTですが、一方でサイバー攻撃においても悪用が注目されてしまっているという側面もあります。

ChatGPTのサイバー攻撃での悪用を考えるときに、まず考えられるのはフィッシング攻撃における悪用です。ある調査では「見慣れたブランドであれば安全なメールだと思っている」という人が44%いると報告されています。そのような人が被害にあいやすい、「もっともらしく見える、文面に不自然なところのない一見して信ぴょう性の高い文面」を、攻撃者はChatGPTを利用して簡単に作り出すことができます。加えて、攻撃者が標的の普段利用している言語を解さず、そこに言語の壁が存在したとしても、これもやはりChatGPTを利用することで容易に乗り越えることが可能となります。このような精巧なフィッシングメールを、攻撃者はこれまで以上に少ない労力で大量に生成可能となります。

また、ChatGPTにマルウェアで利用できるような悪意のあるコードを生成させようと検証する動きがあり、ダークウェブ上では前述のフィッシングでの悪用を含めて、活発な調査、研究が進められているという報告もあります。このような言語的、技術的なハードルの低下は、ノウハウのない人間でも攻撃の動機さえあれば、ChatGPTを利用することで簡単にサイバー攻撃が実行できてしまうという脅威につながります。

ChatGPTの活用におけるその他のセキュリティ課題

ChatGPTに対するセキュリティの観点からの懸念点は、他にもあります。

情報漏洩リスク

業務上知りえた機密情報や、個人情報をChatGPTに入力してしまうリスクです。ChatGPTに送信された情報は、OpenAIの開発者に見られてしまったり、学習データとして使われたりして、情報漏洩につながってしまう可能性があります。2023年3月末には、海外の電子機器製造企業において、ソースコードのデバッグや最適化のためにChatGPTにソースコードを送信してしまったり、議事録を作ろうとして会議の録音データを送信してしまったりという、情報漏洩が報道*2されています。

正しくない情報の拡散リスク

ChatGPTは過去に学習した情報を利用して回答しているため、間違った情報や意図的に歪められた汚染情報、セキュアではない情報にもとづいた返答をしてしまう可能性があります。また、蓄積情報についても大部分が2021年までの情報とされており、回答が最新情報とは限らない点にも注意が必要です。例えば最新の脆弱性情報について質問しても、間違っていたり、古い情報で回答をしてしまったりする可能性もあります。

ChatGPTのセキュリティ課題

ChatGPTのセキュリティ課題の画像

ChatGPTのセキュリティでの活用

ここまでセキュリティの観点からChatGPTのリスクに注目してきましたが、ChatGPTは応答学習型のセキュリティ教育や、セキュリティの疑問に答えてくれるセキュリティボットの開発、インシデント発生時のセキュリティアシストや、脅威動向の把握など、セキュアな社会構築への貢献も期待されています。また、OpenAIからもAIを活用したセキュリティに関する「OpenAI cybersecurity grant program」という最大100万ドルの助成金プログラムを開始すると発表がされています。このことからも、AIを用いたサイバーセキュリティの強化や議論促進が今後進展していくものと考えられます。

基本的な対策こそが重要

AIとサイバー攻撃について述べてきましたが、気を付けないといけないのは、ChatGPTがなくても、攻撃者もマルウェアも既に存在しており、脆弱性があればそこを突いて攻撃が行われるのだということです。ChatGPTはあくまでサイバー攻撃の補助として悪用されているだけであり、ChatGPT自体が脅威なのではありません。危険なのはChatGPTではなく、サイバー攻撃を行う者や、脆弱性を放置するなど対策を怠ることです。

今後、ハードルが下がったことで、技術力の低い攻撃者が参入しやすくなり、攻撃の数は増えるかもしれませんが、過去からある基本的なセキュリティ対策を講じていれば、多くの攻撃は未然に防げることに変わりはありません。個人情報の漏洩や正しくない情報の拡散といったリスクについても、セキュリティポリシーの遵守や、きちんと情報の裏付けを取る(ファクトチェック)といった基本的な行動規範がリスクを緩和してくれます。基本的なセキュリティ対策こそが効果的であるという前提に立って、今一度自組織のセキュリティを見直すことが重要です。いたずらに怖がるのではなく、基本的なセキュリティ対策を踏まえたうえで、上手にAIと付き合っていくことが必要ではないでしょうか。

基本的な対策こそが重要の画像
脆弱性診断バナー画像

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

定期的な脆弱性診断でシステムを守ろう!
-放置された脆弱性のリスクと対処方法-

Share
瓦版vol.19アイキャッチ画像(聴診器のイメージ)

脆弱性、放置されてませんか? 近年、放置されたままの脆弱性が悪用されるサイバー攻撃が増加しています。システムの脆弱性を対策しないままでいると、不正アクセスやマルウェア感染などの様々なリスクがあります。本記事では、脆弱性のリスクや実際に悪用された事例を紹介しつつ、脆弱性対策の重要性について解説いたします。

脆弱性の放置が命取りに~「Nデイ脆弱性」が狙われる

脆弱性が発見されると、対応として対象製品のベンダーより修正プログラムがリリースされます。ユーザはその修正プログラムを適用することで、当該脆弱性に対応することができます。

しかし、実際には様々な理由で修正プログラムが適用されず、脆弱性が放置されてしまうことがあります。修正プログラムのリリース後から、実際に適用されるまでの期間に存在する脆弱性は「Nデイ脆弱性」と呼ばれ、それを悪用するサイバー攻撃が増加しています。

図:2020年の脆弱性を利用した攻撃の割合(月ごとの開示年別)
出典:Check Point Software Technologies Ltd.「CYBER SECURITY REPORT 2021」

上のグラフは、Check Pointが公開したレポートに記載されたもので、2020年のそれぞれの月に、いつ発見された脆弱性がどのくらい使われていたか、その割合を示すグラフで、横軸は2020年のいつのデータであるのかを、縦軸は使用された脆弱性の発見された年を示しています。グラフからは、前の年である2019年以前に登録された脆弱性が、年間を通じて攻撃者に悪用され続けたことや、観測された攻撃の約80%が、2017年以前に報告・登録された脆弱性を悪用したものであったとのことがわかります。また、上記レポートでは複数の脆弱性を組み合わせて攻撃する手法「エクスプロイトチェーン」に、新しい脆弱性が組み込まれているとも指摘しています。

Nデイ脆弱性を狙う攻撃では、修正プログラムが適用されるより前に攻撃が仕掛けられるため、ソフトウェア管理が不適切な企業が標的として狙われやすくなっています。さらには近年では脆弱性対策情報が公開された後に攻撃コード(PoC)が流通し、攻撃が本格化されるまでの時間が短くなっています*3

こういった背景から脆弱性を放置したままにすることは深刻な被害につながる可能性があります。

放置した脆弱性の持つ様々なリスク(不正アクセス・マルウェア感染・ホームページの改ざん・サーバの
ボットネット化)についてのイメージ図

既存の脆弱性を狙った事例

以下は2022年に既知の脆弱性が狙われた事例についてまとめたものです。

年月製品事例
2022/1SonicWall SMA100シリーズ*2
(VPN製品)
2021年12月に公開された既知の脆弱性が概念実証コード(PoC)を含む詳細な情報が公開されたことにより、攻撃が活発化。
2022/2eコマースプラットフォームMagento 1*3
(ECプラットフォーム)
Magento 1に存在するQuickViewプラグインの既知の脆弱性を悪用した大規模な攻撃を検知。いまだ数千ものeコマースが、2020年6月30日にサポートが終了しているMagento 1で稼働している背景を利用したと考えられる。
2022/3リモートキーレスシステム*4
(自動車)
既に「CVE-2019-20626」「CVE-2021-46145」で指摘されているが、一部の古い車種(日本車)において引き続きこのリモートキーレスシステムが利用されていたことに起因する。
2022/4Apache Struts 2*5
(Webサーバ)
2020年12月に公開された脆弱性「CVE-2020-17530」の修正が不十分であったことに起因する。
2022/5VMware製品*6
(仮想化ツール)
2022年4月に複数の脆弱性の対策版がリリースされているが、リリースから48時間とたたず、「CVE-2022-22954」「CVE-2022-22960」の悪用が確認される。
2022/9Python*7
(プログラム言語)
2007年に存在が判明していたものの修正されずにいた脆弱性「CVE-2007-4559」が、15年越しに世界中で悪用されていることが報告される。
2022/12FortiOS*8
(VPN製品)
SSL-VPN製品における深刻な脆弱性は過去にも攻撃で悪用されている。リモートワークの拡大により今後も広まることが懸念される。

ベンダーや企業が公開している脆弱性をもつソフトウェアなどの情報や修正プログラムを解析することで、脆弱性を悪用するヒントを容易に得ることができます。さらに、当該脆弱性を攻撃するためのツールがダークウェブなどで売買されるケースもあります。こうしたことから、修正プログラムが公開される前に行われるゼロデイ攻撃(※)と比べると、攻撃者自ら脆弱性を調査する必要がないため、攻撃の難易度が低いといえます。

ゼロデイ攻撃について、SQAT.jpでは以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
IPA情報セキュリティ10大脅威にみるセキュリティリスク ―内在する脆弱性を悪用したゼロデイ攻撃とは―

Webサイトは最大の攻撃ベクター

エシカルハッカー(※)へのアンケート調査によるとエシカルハッカーの95%はWebサイトが最大の攻撃ベクターだと考えているとの回答でしたと報告されています。

エシカルハッカー・・・倫理観を持ち、高度なハッキング技術や高い知識を善良な目的のために活用するハッカーのこと。ホワイトハッカーとも呼ばれている。

また、弊社で提供しているSQAT脆弱性診断サービスにて、2019年上半期~2022年上半期に診断を実施した延べ3,762社28,179システムのうち、脆弱性が検出されたシステムはWebシステムにおいて毎年8割以上、ネットワークシステム(プラットフォーム)において5割を占めています。

BBSecシステム脆弱性診断 脆弱性検出率(Web/NW)
図:診断結果にみる情報セキュリティの現状~2022年上半期 診断結果分析~
 (SQAT® Security Report 2022-2023年 秋冬号)

脆弱性が存在するOS・アプリケーションを使用しているといったバージョン管理に関する脆弱性が高い割合で検出されているほか、クロスサイトスクリプディングやSQLインジェクションのようなインジェクション攻撃を受ける恐れのあるリスクレベルの高い脆弱性も多くみられます。

Webサイトは狙われやすい傾向にあるだけではなく、実際に様々な危険に晒されています。攻撃手法の進化や、経年によって攻撃のための製品解析が進んでしまうといった事情により、日々新たな脆弱性が検出され続けています。そういった脆弱性に対しての備えとして、適時・適切な対応を継続して行う必要があります。

定期的な診断実施を可能にする脆弱性診断ツールの活用

JPCERT/CCが発表している「Webサイトへのサイバー攻撃に備えて」によると、Webアプリケーションのセキュリティ診断に関しては、機能追加などの変更が行われたときはもちろんのこと、それ以外でも「1年に1回程度」実施することが推奨されています。

しかし、自組織内でセキュリティ対策を行うには、設備投資や人材育成に工数やコストがかかるといった不安を抱える企業も少なくありません。そこで定期的な診断の実施を後押しするものとして脆弱性診断ツールの活用をオススメします。脆弱性診断ツール活用のメリットには以下のようなものがあります。

1. 商用またはセキュリティベンダーの自社開発した診断ツールを活用するため、
  ソフトウェアインストールなどの新規設備投資が不要
2. 開発段階から診断をすることにより、後工程における手戻り発生を防ぎ、
  セキュリティコストの削減が可能
3. 手動診断と比較すると安価なため、定期的に簡易診断が可能
4. 診断結果を定点観測することで、即時に適切な対応をすることが可能

ただし、脆弱性の詳細やリスク判定に関してはセキュリティ専門家の知見が必要不可欠です。自組織に専門家がいるか、セキュリティ専門企業のサポートを受けられるか、といった点はツール選定の際に注意が必要です。

継続的なセキュリティ対策を実現するために

脆弱性診断は一度実施したらそれで終わりというものではありません。脆弱性は日々増加し続けるため、診断実施後に適切なセキュリティ対策を行っていたとしても形を変えて自組織のシステムにサイバー攻撃を行う可能性は十分にあります。顧客が安心してサービスを利用し続けられるためにも定期的な診断を実施し、洗い出されたセキュリティ上の問題に優先順位をつけて、ひとつひとつ対処することが重要です。診断ツールの検討に関しては自組織の環境やシステム特性に合わせたものを選定し、継続的なセキュリティ対策に有効活用できるようにしましょう。

BBSecでは

当社では様々なご支援が可能です。 お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。

<SQAT診断サービスの特長>

SQAT診断サービスの特長

<デイリー自動脆弱性診断 -Cracker Probing-Eyes®->

CPEサービスリンクバナー

sqat.jpのお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。後日営業担当者よりご連絡させていただきます。

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

拡大するランサムウェア攻撃!
―ビジネスの停止を防ぐために備えを―

Share
瓦版アイキャッチ画像(PCを感染させる攻撃者のイメージ)

国内の医療機関をターゲットにしたランサムウェア攻撃がいま、拡大しています。最近報告された医療機関の事例では、ランサムウェアに感染させる手段としてサプライチェーン攻撃を行ったという例もありました。ますます巧妙になっていくランサムウェア攻撃を完全に防ぐということはできません。しかし、いざ被害にあってしまうとビジネスの停止など大規模な損害がもたらされる恐れもあります。本記事では、拡大するランサムウェア攻撃に対してリスクを整理したうえで、どのような対策をとればよいのか、その手段についてBBSecの視点から解説いたします。

拡大するランサムウェア、国内の医療機関がターゲットに

近年、国内の医療機関を狙ったランサムウェアによるサイバー攻撃が相次いで報告されています。令和4年上期に都道府県警察から警視庁に報告があった被害報告のうち、「医療、福祉」は全体の一割近くとなっており、今後拡大していくことが懸念されています。

【ランサムウェア被害企業・団体等の業種別報告件数】

【ランサムウェア被害企業・団体等の業種別報告件数】
注:図中の割合は小数第1位以下を四捨五入しているため、統計が必ずしも100にならない
出典:警察庁(令和4年9月15日)「令和4年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

直近で起こった国内の医療機関を狙ったランサムウェアによる具体的な被害事例は以下の通りです。

【医療機関を狙ったランサムウェアによる被害事例】
年月地域被害概要
2021/5大阪府医療用画像参照システムがダウンし、CTやMRIなどの画像データが閲覧できない障害が発生*9
2021/10徳島県電子カルテを含む病院内のデータが使用(閲覧)不能となった*2
2022/1愛知県電子カルテが使用(閲覧)できなくなり、バックアップデータも使用不能な状態となった*3
2022/4大阪府院内の電子カルテが一時的に使用(閲覧)不能となった
2022/5岐阜県電子カルテが一時的に停止したほか、最大11万件以上の個人情報流出の可能性が確認された*4
2022/6徳島県電子カルテおよび院内LANシステムが使用不能となった*5
2022/10静岡県電子カルテシステムが使用不能となった*6
2022/10大阪府電子カルテシステムに障害が発生し、ネットワークが停止。電子カルテが使用(閲覧)不能となった*7

このように病院の電子カルテなどを扱う医療情報システムが狙われてしまった場合、業務の根幹を揺るがす大きな問題となり、最悪の場合は、長期間にわたるシステムの停止を余儀なくされてしまう可能性があります。そのため、医療機関にとって、サイバー攻撃のターゲットとなってしまうことは非常に大きなリスクと考えられます。

医療業界が狙われる理由は、医療情報はブラックマーケットにおいて高額で売買されているため、攻撃者にとって「カネになるビジネス」になるからです。「事業の停止が直接生命に関わる」という点でも、身代金要求に応じさせるうえでの強力な要因になります。

医療業界が狙われる理由について、SQAT.jpでは以下の記事でもご紹介しています。
こちらもあわせてご覧ください。
狙われる医療業界―「医療を止めない」ために、巧妙化するランサムウェアに万全の備えを

業種問わず狙われる―サプライチェーン攻撃によるランサムウェアの被害

前述した2022年10月の大阪府の病院を狙った事例では、その後、11月に同病院へ給食を提供している委託事業者のサービスを通じて、ネットワークに侵入された可能性が高いと報道がありました。これはランサムウェアを感染させるためにサプライチェーン攻撃を行ったということになります。

こうしたサプライチェーンの脆弱性を利用したランサムウェアの被害は、医療業界だけの話ではありません。特定の業種に限らず、標的となる企業を攻撃するために、国内外の関連会社や取引先などのセキュリティ上の弱点を突く攻撃は珍しくないように見受けられます。

【サプライチェーンを狙ったランサム攻撃による被害事例】
年月被害概要
2021/4光学機器・ガラスメーカーの米国子会社がランサムウェアの被害により、顧客情報など300GBのデータを窃取されたことを攻撃グループのリークサイトに掲載される*8
2022/4情報通信機器等の製造を行う企業と同社の子会社がランサムウェアの被害を受け、従業員の個人情報のデータを暗号化され、復号不可能になった*9
2022/3自動車部品メーカーの米州のグループ会社がランサムウェアによる不正アクセスを受け、北米及び南米地域の生産や販売などの事業活動に一時支障が起きた*10
2022/3国内大手自動車メーカーの部品仕入先企業が狙われ、自動車メーカーの業務停止につながった*11

業務委託元企業がしっかりとセキュリティ意識をもって対策を行っていても、関連する業務委託先のさらに再委託先などのセキュリティの対策に必要なリソースの確保が難しい企業の脆弱性が狙われるため、一か所でもほころびがあるとサプライチェーンに含まれる全企業・組織に危険が及ぶ恐れがあります。

ランサムウェア被害にあってしまった場合のリスク

ランサムウェアによる影響範囲と具体例は以下の通りです。

国内でランサムウェア被害にあった企業・団体等について、警視庁のアンケート調査によると、2割以上が復旧までに1ヶ月以上かかり、5割以上が調査・復旧費用に1000万円以上の費用を要したという調査結果を報告しました。

【復旧に要した期間と調査・復旧費用の総額】

【復旧に要した期間と調査・復旧費用の総額】
注:図中の割合は小数第1位以下を四捨五入しているため、統計が必ずしも100にならない
出典:警察庁(令和4年9月15日)「令和4年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

米国での調査においてもランサムウェア攻撃によるデータ侵害の平均コストは454万米ドルでこれはデータ侵害全体での平均総コストを上回っていることに加えて、原因の特定に237日、封じ込めるまでに89日と合計ライフサイクルは326日となっており、全体の平均より大幅に長くかかっていると報告しました。

【ランサムウェア攻撃のデータ侵害の平均コストと特定し封じ込めるまでの平均時間】

(単位:100万米ドル)
出典:IBM「データ侵害のコストに関する調査

ランサムウェアによる感染を防ぐため対策の見直しを

企業・団体等においてランサムウェアの感染経路には様々なケースがあります。そのため、以下の対策を多重的に行い、被害を最小限に抑えていく必要があります。

1. データやファイル、システムの定期的なバックアップの実施
2. 企業・組織のネットワークへの侵入対策
  ファイアウォールやメールフィルタ設定により不審な通信をブロック
  不要なサービスの無効化、使用しているサービスのアクセス制限
3. 攻撃・侵入されることを前提とした多層防御
4. OSやアプリケーション・ソフトウエア、セキュリティソフトの定義ファイルを常に最新の状態にアップデートする
5. 強固なパスワードのみを許容するなど適切なパスワードの設定と管理を行う

3.攻撃・侵入されることを前提とした多層防御について、SQAT.jpでは以下の記事でもご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
APT攻撃・ランサムウェア―2021年のサイバー脅威に備えを―

また、各業界向けに発行されているセキュリティ対策ガイドラインなどを参考にし、自組織の対策の見直しをすることも重要です。

【参考情報:各業界のセキュリティ関連ガイドライン等】


■(重要インフラ14分野向け)
NISC「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針
■(医療業界向け)
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
経済産業省・総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン
■(金融業向け)
FISC「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書等
■(交通関連企業向け)
国土交通省「国土交通省所管重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係るガイドライン等
■(教育業界向け)
文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン等

他人事ではない、ランサムウェア攻撃のリスク

冒頭で述べたランサムウェア攻撃をはじめ、特に重要インフラ14分野※においては人命や財産などに深刻な被害をもたらす恐れがあります。たとえ自社が該当しない業種であっても、同じサプライチェーン上のどこかに重要インフラ事業者がいるのではないでしょうか。つまり、ランサムウェア攻撃というものは常にその被害に遭う可能性があるものと認識する必要があります。

※重要インフラ14分野…重要インフラとは、他に代替することが著しく困難なサービスのこと。その機能が停止、低下又は利用不可能な状態に陥った場合に、わが国の国民生活又は社会経済活動に多大なる影響を及ぼすおそれが生じるもののことを指す。内閣府サイバーセキュリティ戦略本部「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る行動計画」では、「重要インフラ分野」として、「情報通信」、「金融」、「航空」、 「空港」、「鉄道」、「電力」、「ガス」、「政府・行政サービス(地方公共団体を含む)」、 「医療」、「水道」、「物流」、「化学」、「クレジット」及び「石油」の14分野を特定している。

ランサムウェア攻撃への備えとして、前述のような様々な対策を講じるにあたって、まずは現状のセキュリティ対策状況を把握するための一つの手段として、セキュリティ診断などを実施することをおすすめします。

BBSecでは

当社では以下のようなご支援が可能です。

<企業・組織のネットワークへの侵入対策>

<攻撃・侵入されることを前提とした多層防御>

※外部サイトにリンクします。

<セキュリティ教育>

標的型攻撃メール訓練

※外部サイトにリンクします。

Security Report TOPに戻る
TOP-更新情報に戻る


資料ダウンロードボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
お問い合わせボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

Security Serviceへのリンクバナー画像
BBsecコーポレートサイトへのリンクバナー画像
セキュリティ緊急対応のバナー画像
セキュリティトピックス動画申し込みページリンクへのバナー画像

<インタビュー>門林 雄基 氏 / 奈良先端科学技術大学院大学 サイバーレジリエンス構成学研究室 教授【後編】

Share

国内外問わずセキュリティイベントに多くご登壇し、弊社で毎月1回開催している社内研修で、最新動向をレクチャーいただいている奈良先端科学技術大学院大学の門林教授。そんな門林教授に2022年のセキュリティニュースを振り返っていただき、今後の動向や予測について語っていただきました。前・後編の2回のうち、後編をお届けします。

(聞き手:BBSec SQAT.jp編集部)


サイバー攻撃の多様性

新たな攻撃の予想

━━今年はこれまでもすでに発見されていたが放置されてきた脆弱性が再発見されたり、新たに発見されたりした脆弱性を悪用したサイバー攻撃が話題になりました。それを踏まえ、今後新たな流行として予想される攻撃や今の時点で考えられる攻撃がありましたらどんなものがありますでしょうか?

門林:色々起きてますが、犯罪教唆にならない範囲で考えますと、クラウドとかでしょうか。クラウドはかなり巨大になってきていますので、問題は起きるかなとは思いますね。やはり色んな方がクラウドを使っていますよね。

━━そうですね。最近はテレワークの導入率も6割程度という調査結果も出ているという風に聞きます。

門林: 結局そのクラウドの方がちゃんとやっているから安全というように事業者の方はよくおっしゃるんですが、中小から大企業までみんながクラウドを使っているということは、当然反社もハッカー集団もクラウドを使っているわけです。だから隣のテナントは反社かもしれないという状況で、企業も何万社とあって、クラウド事業者側でもみえてないです。

門林先生インタビュー写真3

見通しが明るくない話ばかりになりますが、クラウドはほんとに色んな問題を抱えて走っています。もちろんその問題を抱えたうえでリスクを潰しながらオペレーションできればいいんですが。これもやはり10年ほどやってきている話で、進展も激しいですし、色々積み重なっています。結局古い問題がなくならないので、我々専門家も日々話題にする脆弱性で、これ10年前にも同じ話あったよねというのがもう頻繁に出てくるわけです。ですのでクラウドに関しても、おそらく5年前とか10年前にあった脆弱性のぶり返しと新しい攻撃キャンペーンが組み合わさるとなんか起こるだろうなと思います。

今できる共通の対策

━━今後もありとあらゆる攻撃が予想されるということがお話伺っていてわかりました。それぞれの攻撃に対しては、対策をとっていく、防御していくことが重要になってくることかと思いますが、今できる共通の対策として、まず何をすべきでしょうか?

門林:基本に忠実にやるということしかないです。新しいトピックだけ追いかける人が多いですが、サイバーセキュリティという領域が生まれてもう30年です。脆弱性データベースの整備も始まって30年くらいたっていると思います。で、そのなかに10年選手、5年選手あるいは15年選手の脆弱性があるわけです。マルウェアもわざわざ古いマルウェアを使うという攻撃もあるんです。古いマルウェアだと最近のアンチウィルスソフトでは検知しないからあえて使うなどという色々な話があって、結局新しいことだけに注目してニュースを追って新しい製品を買ってというようにやっていると、5年前とか10年前の脆弱性に足をすくわれると思うんです。ですのでここはもう基本に忠実にやるしかないわけです。

セキュリティ全般の話ですが、やはり30年分の蓄積があるので、それを検証できるだけのスキルを持っていなければいけないですし、なんなら製品ベンダーさんの方が基本的な話を知らなかったりしますからね。

どんな対策が有効?

━━リスク管理の原則という話も少し出ましたが、企業においては情報資産の棚卸しというところも重要になってくると思います。弊社では脆弱性診断サービスを提供していますが、こういったサイバー攻撃への対策として、脆弱性診断サービスは有効に働くでしょうか?

門林:この業界はぽっと出だと私は危ないと思っています。セキュリティ診断会社が裏で反社と繋がっていて脆弱性診断を結果流していたという話もあり得ない話ではないので、ちゃんとした会社に依頼するということが私は大事だなと思ってます。

BBSecさんはもう22年くらいやっているとのことですが、やっぱりそれくらいやってる会社じゃないとかなり重要なシステムの脆弱性診断とか任せられないんじゃないかなと思いますし、それだけやってらっしゃる会社さんだからこそ、昔の脆弱性や最近の脆弱性、あるいは5年10年前の脆弱性というところも経験があって、ある意味チェック漏れといいますか、抜け漏れみたいなのもないと思うんです。やはり脆弱性診断みたいな、セキュリティの話で”水を漏らさず”みたいなところに尽きると思うんです。水を漏らさずどういう風に検査するかというともう経験値が全てだと思うんです。色々なシステムを検査してきた経験値というのが今にいきていると思いますし、そういうの無しに最近できた会社なんですよといって診断されても、そこの製品、俺だったら簡単に迂回できるなと思ってしまいますね。

終わりに…

これからセキュリティ業界に携わりたい方に向けて

━━ありがとうございました。では最後に、これまでのトピックスを振り返りつつ、これからセキュリティ業界に携わって働いていきたいという方やすでにもう業界で経験がある方でこれからもっとステップアップしていきたいというSQAT.jp読者に対して、門林先生からのメッセージをいただければと思います。

門林:サイバーセキュリティというと、プログラミングとかそういうのに詳しい人だけと思われがちなんですが、そうではないんだということです。もう今は総力戦になってますので、プログラミングやセンサーに詳しい人も歓迎ですし、あるいは人間の心理とか社会学とかのスキルとかそういうのに詳しい人も歓迎ですし。結局人間の脆弱性、ソフトウェア・ハードウェアの脆弱性など色々なものがあるなかで、それらすべてに相対していかなければならないわけです。プログラミングやマルウェア解析がすごいという人だけではなくて、いろんな人に来ていただきたいなと思いますね。

あともう一つ大事なのは、やはり優しさです。パソコンに詳しい、俺はプログラミングがすごいだけではなくて、実際サイバー攻撃にやられてしまった現場に行っても、「大丈夫ですか?」とできる人、例えば、「ランサムウェアの現場大変ですね、何とか復号しましょう」、というように。きれいじゃない現場というのがたくさんあるように、これから人間の失敗の顛末みたいな所も目にすると思います。各社・各業界の事情もありつつ、失敗の形跡もありつつ、そういう所で火消しをする、手続きの話をするというかたちになるので、結局その現場に入る人、セキュリティの業界に入る人はやっぱり弱者の側に立たないといけないんです。

CTFとかそういうものをやってると優秀な人こそ勝つという感じの発想の人もいると思うんですが、私は、そういうゲーム的な「俺はサッカーが上手いからすごいんだ」という人が来てくれるよりは、むしろ消防あるいは看護婦・お医者さんのような弱者・敗者に寄り添うセンス、かつプログラミング・技術もできる、法律もハードウェアもできるといった、そういう人間としてのキャパシティーをもった人に来ていただきたいなと思います。「俺はこのツールが使えるんだすごいだろ」という感じの人はたくさんいる気がするので、そうではない側の人、人としての優しさを備えてかつテクノロジー・法律といった様々なスキルを研鑽していこうと思える人にきてほしいですね。

━━弊社は脆弱性診断診断サービス以外にもインシデント対応やコンサルティングの提供もしているので、そういう意味でも、技術力だけじゃなく、人間性みたいなところも比較的重要になってくるのかなと個人的にも思います。本日はありがとうございました。

ーENDー
前編はこちら


門林 雄基 氏
奈良先端科学技術大学院大学 サイバーレジリエンス構成学研究室 教授
国内外でサイバーセキュリティの標準化に取り組む。日欧国際共同研究NECOMAプロジェクトの日本研究代表、WIDEプロジェクトボードメンバーなどを歴任。


「資料ダウンロードはこちら」ボタン
年二回発行されるセキュリティトレンドの詳細レポート。BBSecで行われた診断の統計データも掲載。
「お問い合わせはこちら」ボタン
サービスに関する疑問や質問はこちらからお気軽にお問合せください。

SQATセキュリティ診断サービスの告知画像
BBSecロゴ
リクルートページtop画像
セキュリティトピックス告知画像