セキュリティインシデントの基礎から対応・再発防止まで
第1回:セキュリティインシデントとは何か?基礎知識と代表的な事例

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近年、企業や組織を取り巻くサイバー攻撃はますます巧妙化しており、「セキュリティインシデント」が発生した場合、情報漏洩や不正アクセスなどによって、金銭的損失だけでなく企業の信用失墜にも直結します。本記事では、セキュリティインシデントの定義や種類、実際に発生した事例を取り上げ、その影響とリスクを理解するための基礎知識を解説します。

セキュリティインシデントの定義

セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークにおいて、情報のセキュリティの3要素、「機密性」「完全性」「可用性」を脅かす事象の総称です。具体的には、不正アクセスや情報漏洩、マルウェア感染、サービス運用妨害(DoS)攻撃などが含まれます。近年はクラウドやリモートワークの普及により、攻撃対象や被害の範囲が広がり、セキュリティインシデントの発生リスクは増大しています。国内外で大規模な事件が相次いで報道されるなか、インシデントの発生はもはや大企業に限られた問題ではなく、中小企業や自治体、教育機関に至るまで幅広い組織が直面しています。そのため、経営層から現場担当者に至るまで、セキュリティインシデントへの理解と備えが求められているのです。

セキュリティインシデントの種類(例)

一口にセキュリティインシデントといっても、その内容は多岐にわたります。代表的なものとしては、まず「不正アクセス」が挙げられます。攻撃者が外部からシステムに侵入し、機密情報を窃取したり改竄したりするケースです。次に「マルウェア感染」があります。ウイルスやランサムウェアなどの悪意あるソフトウェアにより、データが暗号化され業務が停止する被害が増えています。また、従業員による「内部不正」も見逃せません。権限を持つ社員が意図的に情報を持ち出すケースや、誤操作による情報流出が問題化しています。さらに「情報漏洩」や「サービス停止(DoS/DDoS攻撃など)」も、企業活動を直撃する深刻なインシデントです。このようにセキュリティインシデントは外部攻撃だけでなく、内部要因やシステム障害など多面的に発生し得るため、幅広い視点での備えが不可欠です。

実際に発生した主なセキュリティインシデント事例

セキュリティインシデントは国内外で日々多発しています。この表は2025年8月から9月にかけて発生した主要な国内インシデント事例をまとめたものです。ランサムウェア攻撃や不正アクセスによる被害が多く、特に製造業や重要インフラへの影響が深刻化している傾向が見られます。

被害報告日被害企業概要主な原因影響範囲
2025年9月国内ガス・電力会社人為的ミスLPガス検針端末の紛失顧客情報6,303件の漏洩等のおそれ*1
2025年9月国内デジタルサービス運営委託事業者個人情報漏洩受講状況管理ツールへの登録作業ミスリスキリングプログラム受講者1名の個人情報が他の受講者1名に閲覧可能に*2
2025年9月国内食料品小売業個人情報漏洩サーバへの第三者からの不正アクセス企業情報及び個人情報が流出した可能性*3
2025年9月委託事業者操作・管理ミスオペレーターの利用者情報取り違い高齢者の見守り・安否確認が行われず*4
2025年9月国内オフィス機器販売会社個人情報漏洩第三者による不正アクセスカード支払い顧客の情報漏洩の可能性*5
2025年8月ハウステンボス株式会社システム障害第三者による不正アクセス一部サービスが利用できない状況に*6
2025年8月国内電力関連会社不正ログインリスト型攻撃(複数IPアドレスから大量ログイン試行)ポイント不正利用444件*7
2025年8月国内機器メーカー企業不正アクセス海外グループ会社を経由した第三者の不正アクセス一部サービス提供停止(8月16日復旧)*8
2025年8月医療用メーカー企業マルウェア感染システムのランサムウェア感染2日間出荷停止、その後再開*9
2025年8月国内建設事業者マルウェア感染システムのランサムウェア感染海外グループ会社の一部サーバが暗号化*10
2025年8月国内外郭団体乗っ取り第三者による一部メールアドレスの乗っ取り迷惑メール送信元として悪用*11
2025年8月暗号資産交換事業者クラウド設定ミス顧客データ移転作業中のクラウド設定ミス海外メディアの報道で発覚、アクセス制限不備*12
2025年8月国内銀行元従業員による情報の不正取得出向職員による電子計算機使用詐欺アコムから出向の元行員が逮捕・懲戒解雇*13
2025年8月国内病院個人情報不正利用委託職員が診療申込書から電話番号を不正入手LINEで患者に私的メッセージを送付*14
2024年12月国内総合印刷事業者マルウェア感染VPNからの不正アクセス(パスワード漏洩または脆弱性悪用)複数のサーバが暗号化される被害*15

これらの事例は「セキュリティインシデントは特定の大企業だけの問題ではない」という現実を示しており、規模や業種にかかわらず備えが不可欠であることを強調しています。

セキュリティインシデントが企業に与える影響

セキュリティインシデントが発生すると、企業は多方面に深刻な影響を受けます。最もわかりやすいのは、システム停止や情報漏洩に伴う金銭的損失です。業務が一時的に止まることで売上が減少し、復旧作業や調査にかかる費用も膨大になります。さらに、顧客情報や取引先情報が流出すれば、企業の信頼性が大きく揺らぎ、契約解除や取引停止に直結する可能性があります。また、個人情報保護法や業界ごとのセキュリティ基準に違反すれば、法的責任や行政処分を受けるリスクも高まります。株式市場に上場している企業であれば、セキュリティインシデントの公表によって株価が急落するケースも少なくありません。このように、単なるシステム障害にとどまらず、企業経営全体に打撃を与える点がセキュリティインシデントの恐ろしさといえます。

まとめ

本記事では、セキュリティインシデントの定義や種類、実際に発生した事例、そして企業に及ぼす影響について解説しました。改めて強調すべきは、セキュリティインシデントは大企業だけでなく、中小企業や自治体、教育機関などあらゆる組織にとって現実的な脅威であるという点です。しかも一度発生すると、金銭的損失だけでなく、顧客や取引先からの信頼低下、法的リスク、社会的信用の失墜といった連鎖的な被害を引き起こします。こうした背景から、セキュリティインシデントを「発生してから考える」姿勢ではなく、「発生する前提で備える」姿勢が求められています。次回は、実際にインシデントが発生した際にどのような対応が必要なのか、初動から復旧までの流れを詳しく解説します。

【参考情報】


―第2回へ続く―

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    不正ログインされたらどうする?すぐに取るべき対処&予防策

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    不正ログインとは、第三者が正規の利用者になりすましてアカウントに侵入する行為です。もし「不正ログインされたら」、個人情報の流出や不正送金、SNSの乗っ取りなど深刻な被害につながる恐れがあります。対応を誤ったり遅れたりすると、被害が拡大し、信用の失墜や事業への影響を招く可能性もあります。本記事では、不正ログインの主な原因と手口を解説し、実際に不正ログインされた場合の初動対応と、再発防止のための具体的な対策を紹介します。

    不正ログインとは?不正アクセスとの違い

    不正ログインとは、正当な利用者のIDやパスワードを盗み取り、本人になりすましてシステムやサービスに侵入する行為です。これに対し「不正アクセス」は、アクセス権限を持たない状態でサーバやネットワークに侵入する広い概念を指します。つまり、不正ログインは不正アクセスの一種であり、特にアカウント情報が狙われる点が特徴です。

    「不正アクセス」が厳密にどのような行為を指すのかは、1999年に公布(最新改正は2013年)された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」で規定されています。同法では、アクセス制御機能を持つWebサービスやサーバ等に、正当なアクセス権限を持たない者が侵入する行為、およびそうした侵入を助長する行為を指します。

    不正アクセス禁止法では、単に他人のIDやパスワード(「識別符号」と呼ばれる)を無許可で使用する行為だけでなく、他の情報を利用してWebサービスやサーバなどのシステム(「特定電子計算機」と定義されている)を操作する行為も「不正」と定義されています。この点には特に留意する必要があります。

    昨今はSNSアカウントやクラウドサービス、ECサイト、業務システムなどが標的となり、被害は個人だけでなく企業にも広がっています。

    不正ログインの主な原因と手口

    不正ログインは偶発的に発生するのではなく、多くの場合、攻撃者が狙いを定めて計画的に仕掛けます。では、そもそも悪意を持った、攻撃者による不正ログインの手口にはどのようなものがあるのでしょうか。典型的なのは、「盗んだIDとパスワード、あるいは推測したパスワードを使って、システムに不正にログインする」というものです。ID・パスワードの組み合わせを総当り的に試してログインを図る「ブルートフォース攻撃」、辞書にある語句を利用する「辞書攻撃」、不正に入手したログイン情報を利用する「パスワードリスト攻撃」などが知られています。

    中でも近年特に話題を集めているのは「パスワードリスト攻撃」です。背景には、数十万~数億件規模のID・パスワードがセットで売買されていたり、インターネット上に公開されていたりする事態があちこちで確認されており、攻撃者が不正アクセスのための情報を容易に手に入れやすくなっている状況があります。また、もし複数のシステムに対して同じID・パスワードが使いまわされている場合、1件の情報を入手することで複数のシステムへのログインが可能になるという点も、攻撃者を引き付けています。

    2020年8月には、日本企業約40社において、VPN(Virtual Private Network)のID・パスワードが盗まれ、インターネットに公開されるという事件が発生しました。VPNは、本来、セキュリティを確保したうえで企業ネットワークへアクセスするために使われる「安全性の高い入口」です。そこにログインするためのID・パスワードが盗まれることが極めて大きな被害につながり得ること、裏を返せば、攻撃者にとって極めて大きな利得につながり得ることは、論をまたないでしょう。

    もちろん、不正アクセスのための攻撃は、ID・パスワードを狙ったものだけではありません。ID・パスワードの入手につながる脆弱性も格好の標的になります。例えば、Webアプリケーションや公開Webサーバの脆弱性はその最たるものです。攻撃者はしばしばSQLインジェクションの脆弱性クロスサイトスクリプティングの脆弱性などを悪用して個人情報を不正に入手し、ID・パスワードを特定してシステムへの侵入を試みます。

    このように「不正ログインされたら」という状況は、ほとんどがこうした攻撃手法に起因しています。利用者側の意識やセキュリティ設定が不十分だと、攻撃者にとって格好の標的となってしまうのです。ID・パスワードの保護に加え、結果としてID・パスワードの特定につながる脆弱性を放置しないことが、不正ログインを防ぐためには最重要といえるでしょう。

    不正ログインされたらすぐに取るべき対応

    不正ログインされたら、被害の拡大を防ぐために迅速な対応が不可欠です。焦って誤った判断をしないよう、次の手順を順番に実行しましょう。

    • パスワードを即時変更する
      まずはログインが可能なうちにパスワードを強力なものへ変更します。推測されやすい単語や誕生日ではなく、英数字・記号を組み合わせた長いパスワードを設定することが重要です。
    • ログイン履歴・アクセス状況を確認する
      サービスによっては、過去のログイン日時やアクセス元IPを確認できます。不審な履歴があれば、被害範囲を把握する手がかりになります。
    • 関連するサービスのパスワードも見直す
      パスワードを使い回していた場合は、同じID・パスワードで利用している他のサービスも狙われている可能性があります。連携しているメール、クラウド、SNSなども必ず変更しましょう。
    • 二段階認証を設定する
      ログイン自体はできても、二段階認証を有効化しておけば不正利用を防げるケースがあります。まだ導入していない場合は、このタイミングで必ず設定してください。
    • サービス提供元に連絡する
      金融機関やECサイトなどで不正利用が疑われる場合は、サポート窓口に連絡し、アカウントの一時停止や不正取引の補償について確認しましょう。

    インシデントを防ぐための運用体制の構築

    過去記事「情報漏えいの原因と予防するための対策」では、「情報漏えい事故の報告書と収束までの流れ」として、事故発生時の報告書作成の注意点について解説しました。今回は、不正アクセスされた直後の対応や、真相究明を行う社内の組織体制構築でのポイントをご紹介します。

    不正アクセス事故対応のチーム作り

    セキュリティ事故対応を行う専門部署であるCSIRTが社内にない場合は、事故対応チームを速やかに組織しなければなりません。どのような編成を想定すべきか、参考として、モデル的な図解を下記に示します。

    https://www.nca.gr.jp/activity/imgs/recruit-hr20170313.pdf より当社作成

    もちろん、セキュリティ専門企業でない限り、ほとんどの組織にとってはここまでの編成をとることは合理的とはいえません。既存の組織・人員の状況に応じて、下記のような事項をポイントにチームを編成し、自組織の業種業態、慣習、人材、文化等を踏まえながら継続的にチームの発展・強化に取り組むことをお勧めします。

    • CSIRTがインシデント発生時における最終判断(システム停止も含む)までを担う場合は、責任を担う経営陣を参画させる。
    • 現体制におけるキーマンを特定し、そのキーマンを必ずメンバーに加える。
    • 現体制で実施できている役割がないか確認する(「実施できている役割は踏襲する」という判断も重要)。
    • 技術的な知識、経験、人材を持たない場合は、最低限CSIRTに必要な機能(=有事の報告、伝達を的確に行い、意思決定者へ早期伝達すること)を有する、「コーディネーション機能に重点を置いたCSIRT」を目指す。

    取引先、関係者、個人情報保護委員会への連絡

    あなたの会社のステークホルダーに対して、現時点で判明している事故の事実関係を連絡します。規制業種の場合は所轄官庁への報告義務があります。なお、個人情報保護法では、個人情報漏えい等の場合、本人通知や監督官庁への報告を努力義務としていますが、2022年に施行予定の改正個人情報保護法では一定範囲においてこれが義務化されるため注意が必要です。

    不正アクセスの原因究明

    続いて取り組むべきは、原因究明です。不正アクセスを受けた場合、侵入経路の特定や証拠保全などは自社でどこまで可能なのでしょう。監視やSOC(セキュリティオペレーションセンター)サービスの契約などによって保存してあるログを解析可能な場合、「不正アクセスの発端と展開過程がわかるから、自経路の解析や被害範囲の特定もできる」と考えてしまうかもしれません。しかし、火事場のように混乱する事故発生直後は、日頃から備えをしていた企業ですら、一刻を争う状況下で解析すべき情報の膨大さに圧倒されるものです。また、刑事事件として告発を行う場合や損害賠償請求を行う場合には証拠保全が必要となりますが、混乱し、慣れない状況下で証拠保全を念頭に調査や対応を行うのは大きな負荷となります。

    さらに、「サイバー攻撃を行う5つの主体と5つの目的」で解説した「APT攻撃」が行われるケースも想定しておく必要があります。APTでは、侵入の痕跡を消されることが少なくなく、そのような場合、侵入経路の特定や証拠保存は難しくなります。しかし、日々ログの収集を行っていたとしたら、その痕跡からデジタルフォレンジックを実施することが可能です。

    不正ログインを防ぐためのセキュリティ強化策

    不正ログインの被害を防ぐには、日頃からの予防策とシステム設定の強化が重要です。以下の方法を実践することで、アカウントの安全性を高められます。

    • 多要素認証(MFA)の導入
      パスワードだけでなく、SMSや認証アプリ、ハードウェアトークンなど複数の認証手段を組み合わせることで、不正ログインを大幅に防ぐことができます。
    • 強力なパスワードと管理ツールの活用
      推測されにくい長く複雑なパスワードを設定し、使い回しを避けることが基本です。パスワード管理ツールを活用すると、安全にパスワードを管理できます。
    • ログイン通知の有効化
      不審なログインがあった場合に通知される機能を有効にしておくと、早期に被害を発見できます。メールやアプリ通知で異常を検知したら、速やかに対応しましょう。例えば、サーバに対するアクセスログを収集・保存し、同一IPからの複数回ログインに対するアラートをルール化する等の設定をしておくことで、誰かが不正ログインを行っていることを早期に知り、ブロックするなどの対処を行えるようになります。
    • OS・アプリケーションの定期アップデート
      セキュリティ脆弱性を放置すると、マルウェア感染や不正ログインのリスクが高まります。常に最新バージョンを適用する習慣をつけましょう。
    • 不要アカウントやアクセス権限の整理
      使っていないサービスや不要な権限は削除・無効化し、アクセスできる範囲を最小化することで、攻撃対象を減らせます。

    これらの施策を組み合わせることで、不正ログインのリスクを大幅に低減し、万一の場合でも早期対応が可能になります。

    インシデント発生時に役立つ「かかりつけ」のセキュリティ企業を持つ重要性

    不正アクセス事故に備えるためには、日常的なアクセスログの収集や分析、SOCサービスの契約、さらにはCSIRT組織の設置など、日頃からの備えが重要です。不正アクセスを未然に防ぐと同時に、万一発生した場合の対応力を高める役割を果たします。

    そして、もう一つ有効な取り組みは、信頼できるセキュリティ企業との関係構築です。「かかりつけ医」のセキュリティ企業を持つことは、事故発生時に迅速かつ効果的に対応できる可能性があります。それまで取引が一度もなかったセキュリティ企業に、事故が発生した際に初めて調査や対応を依頼したとしたらどうでしょう。社内のネットワーク構成、稼働するサービス、重要情報がどこにどれだけあるのか、関係会社や取引先の情報などを一から説明する必要が生じ、対応に時間がかかってしまいます。わずかな時間も惜しまれるインシデント対応の現場では大きなリスクとなります。

    脆弱性診断やインシデント対応などのセキュリティサービスを提供する企業に依頼をする際には、その企業が単に技術力があるかどうかだけでなく、信頼できる企業かどうか、いざというときにサポートしてくれるかどうかを慎重に考慮して選ぶことが重要です。提供サービス体制も幅広く調べたうえで、長期的な観点から利用を検討することをおすすめします。

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    まとめ

    • 不正ログインは不正アクセスの一種であり、正当な利用者のIDやパスワードを盗み取り、本人になりすましてシステムやサービスに侵入する行為です。これに対し不正アクセスは、アクセス権限を持たない状態でサーバやネットワークに侵入する広い概念を指します
    • ID・パスワードの管理だけでなく、Webアプリケーションやサーバの脆弱性管理も欠かせません。セキュリティ対策は多層的に行うことが安全性向上につながります
    • 不正ログインをされたら、迅速に対応チームを組織し、ステークホルダーへの連絡、原因究明、被害の拡大防止を行います。
    • インシデントが起きたときの対応力を高めるには、日頃からのアクセスログ収集や分析、SOCサービスの契約、CSIRT組織の設置、「かかりつけ」セキュリティ企業との関係構築などが有効です

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    連載記事:企業の「攻め」と「守り」を支えるIoT活用とIoTセキュリティ
    第3回 企業が取り組むべきIoTセキュリティ対策とは?─実践例に学ぶ安全確保のポイント

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    IoT活用とIoTセキュリティアイキャッチ(IoTセキュリティ対策とは)

    IoTセキュリティは、もはや一部の技術課題ではなく企業全体の経営課題となっています。脆弱なIoT機器はサイバー攻撃の踏み台や情報漏洩の原因となり、業務停止やブランド毀損につながりかねません。本記事では、資産棚卸しから設計・運用における多層防御、さらに外部診断の活用まで、企業が取り組むべきIoTセキュリティ対策を具体事例とともに解説し、安全なIoT活用のための実践ポイントを整理します。

    「まずは現状把握」―資産棚卸しの重要性

    IoTセキュリティ対策の出発点は、社内にどのIoTデバイスが何台あり、ファームウェアのバージョンや通信先がどうなっているかを洗い出すことです。NECが公開した導入事例では、工場・支店・データセンターを含む23拠点で6,200台のIoT機器を自動スキャンし、未登録機器を310台発見しました。資産リストと脆弱性データベース(NVDやJVN iPedia)を突き合わせることで、更新が必要な機種を優先度順に並べ替え、限られた工数で最大効果を得られる計画が立案できたと報告されています。

    設計・実装フェーズで盛り込むべき技術的対策

    ハードウェアでは、Secure BootとTrustZone®などハードウェアルートオブトラストを採用し、改ざんファームが起動しない仕組みを導入します。通信経路はTLS1.3やDTLS1.3で暗号化し、MQTT over TLSやHTTPSを選択することで盗聴・改ざんリスクを最小化します。さらにデバイス固有の秘密鍵をTPM2.0に格納することで、鍵抽出攻撃を物理的に困難にします。NIST SP 800-213ではこのような多層防御を「IoT Reference Architecture」として例示しています。

    運用フェーズで欠かせない管理プロセス

    いかに堅牢な設計をしても、現場でのパスワード再利用やテスト用アカウント放置が残されると台無しになります。Palo Alto Networksの2024年調査では、IoTデバイス侵害の31%が「デフォルト認証情報の継続使用」が原因でした。運用部門は設定変更ログを SIEMに集約し、アラート閾値を“失敗ログイン3回”など具体的かつ実践的に定義します。加えてSBOM(Software Bill of Materials)を更新し、上流ライブラリに脆弱性が見つかった際は影響範囲を素早く把握できる体制を整えます。

    ケーススタディで学ぶ成功パターン

    ケースA

    国内自動車部品メーカーは、月次でしか実施していなかったファームウェア更新をOTA(Over-the-Air)方式に切り替え、異常が発覚した翌日にパッチ配布を完了できる体制を確立しました。その結果、取引先OEMからのセキュリティ監査に合格し、新規受注を獲得しています。

    ケースB

    大手小売企業は、POSとは別にIoT専用VLANを構築してネットワークを分離し、さらにクラウド監視サービスでトラフィックのベースラインを学習させました。導入6か月後に出力されたアノマリーアラートから不審なDNSクエリを発見し、マルウェア感染初期段階で遮断に成功しています。

    第三者によるセキュリティ診断を活用するメリット

    社内リソースで脆弱性検証を網羅するのは現実的に困難です。第三者による「IoT セキュリティ診断(SQAT for IoT)」では、ファームウェア静的解析、無線インターフェース侵入テスト、クラウド・API・構成レビューまでを一気通貫で実施し、重大度レベルと具体的な修正手順を報告書に整理します。日本電気株式会社(NEC)の調査では、第三者によるセキュリティ診断を受けた企業の72%が「投資対効果を定量化しやすくなった」と回答しており、経営判断の材料としても有効です。

    企業が今すぐ実施できる行動

    まず資産棚卸しツールでネットワークをスキャンし、IoT機器の一覧を作成してください。次に管理画面へログインし、初期パスワードが残っていないか、暗号化が有効かを確認しましょう。同時にクラウドプラットフォームのアクセスキーを見直し、最小権限原則に沿ってIAMポリシーを設定します。これら最低限の対策さえ済めば、専門家による脆弱性診断やペネトレーションテストを受ける際にも、対処漏れの洗い出しに集中できます。

    まとめ―「攻め」と「守り」を両立させるために

    IoTとは単なるバズワードではなく、リアルタイムデータを基盤に業務を変革する武器です。しかし武器は手入れを怠ると自社を傷つけます。本連載で取り上げたIoT例とIoT事例は、いずれもセキュリティ対策とセットで初めてビジネス価値を生み出しています。情報システム部門が主導してIoTセキュリティの体制を築き、経営層が適切に投資判断を下す。――この連携があってこそ、IoT機器は企業の競争力を押し上げる資産になります。自社の現状に一抹の不安があるなら、まずは第三者による「IoTセキュリティ診断」で弱点を可視化してみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】

    【連載一覧】

    ―第1回「今さら聞けないIoTとは?─IoTデバイスの仕組みと活用例で学ぶ基礎知識」―
    ―第2回「身近に潜むIoTセキュリティの脅威とは?─リスクと被害事例から学ぶ必要性」―
    ―第3回「企業が取り組むべき IoT セキュリティ対策とは?─実践例に学ぶ安全確保のポイント」―


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    連載記事:企業の「攻め」と「守り」を支えるIoT活用とIoTセキュリティ
    第2回 身近に潜むIoTセキュリティの脅威とは?─リスクと被害事例から学ぶ必要性

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    IoT活用とIoTセキュリティアイキャッチ画像(IoTセキュリティの脅威)

    IoTの普及は企業活動を大きく変革する一方で、新たなセキュリティリスクを急速に拡大させています。スマートカメラや複合機といった身近な機器が攻撃の標的となり、情報漏洩や業務停止といった深刻な被害につながる事例も増加中です。本記事では、IoTセキュリティ特有の脅威や実際の被害事例を取り上げ、そのリスクを正しく理解することで、経営層やIT担当者が取るべき対策の必要性を明らかにします。

    IoTセキュリティの特殊性

    PCやサーバであればOSベンダーが月例パッチを配布し、管理者もGUIで容易に適用できます。ところが、IoTデバイスは制御用の軽量OSを採用しており、そもそも自動更新機能が実装されていない機種が少なくありません。屋外や高所に長期設置される機器の場合、物理的にアクセスしてUSB経由でアップデートする手間が大きく、結果として脆弱性が放置される確率が跳ね上がります。NIST SP 800-213は「設置場所と更新手段の乖離がIoT固有のリスクを増幅させる」と分析しています。

    攻撃者がIoT機器を狙う3つの合理性

    まず第1に台数の多さです。SonicWall社が公開している「2023 SonicWall Cyber Threat Report」によると、「世界のマルウェア感染端末の40%以上がIoT由来である」と指摘されています。第2に防御の甘さが挙げられます。JPCERT/CCが2024年に国内8,000台を調査*16したところ、Telnetや SSHのデフォルト認証情報がそのままのIoTデバイスが12%存在しました。第3は“隠密性”です。プリンタや監視カメラがマルウェアのC&C通信に使われても、ユーザは映像も印刷も通常どおり動くため気づきにくいという状況があります。

    代表的な被害事例

    2016年のMiraiボットネットはコンシューマー向けルーターとネットワークカメラに感染し、最大620GbpsのDDoSトラフィックを発生させ、米DNSプロバイダーDynを一時機能停止に追い込みました。2021年3月に表面化した Verkada社のスマートカメラ大量侵入事件では、管理者アカウント情報がGitHubに誤って公開され、テスラ工場や病院を含む15万台超の映像が外部から閲覧可能となりました。直近ではRapid7が2024年12月に公表したBrother製複合機の脆弱性(CVE-2024-22475ほか)も、認証バイパスによる遠隔コード実行が可能だったため、印刷ジョブを改ざんできるリスクが指摘されました*2

    主要IoTセキュリティ事件年表(2016-2025年)

    事件概要影響・被害
    2016Miraiボットネットが家庭用ルーターやネットワークカメラを大量感染させ、620Gbps超のDDoS攻撃で米DNS大手Dynを一時停止*3 大規模サービス停止・インターネット障害
    2017国内外で小規模監視カメラへの不正ログインが相次ぎ、ライブ映像がストリーミングサイトに無断公開*4 プライバシー侵害・二次被害拡大
    2018スマート冷蔵庫を含む家電の脆弱性が複数報告され、メーカーが初のOTAアップデートを緊急配布*5 家電乗っ取りリスク・アップデート体制の課題顕在化
    2019スマートロックなど家庭IoT機器でデフォルト認証情報が放置され、遠隔でドア解錠される事例が報道*6 個人宅への侵入・安全確保への不安
    2020新型Mirai派生マルウェアが出現、IoT機器を踏み台にしたDDoS攻撃件数が前年比2倍に*7 ネットサービス障害・帯域逼迫
    2021Verkada社クラウド連携カメラの管理認証情報が流出し、15万台超の映像が外部閲覧可能に*8 大規模映像漏洩・企業ブランド毀損
    2022国内調査で初期パスワードのまま運用されるIoTデバイスが12%見つかり、ボット化被害が多発ネットワーク踏み台化・社内横展開
    2023複数メーカーのスマート照明とセンサーでAPI認証不備が発覚し、遠隔操作や情報流出の恐れ*9 遠隔操作リスク・業務影響
    2024Brother製複合機に遠隔コード実行脆弱性(CVE-2024-22475など)が公表、修正ファーム未適用機が残存*10 印刷ジョブ改ざん・情報漏えい
    2025ランサムウェアが産業用IoT機器を暗号化し、生産ラインを停止させる事例が欧州で初報告*11 業務停止・身代金要求

    ※上記事例ソースはすべて一次ソース/一次レポートへの直接リンクもしくは、当該数値・事件を初報として扱った公式発表・専門調査記事です。

    放置すると何が起こるのか

    攻撃によってネットワーク経由で制御を奪われた生産ラインは、最悪の場合でシャットダウンや誤動作を招きます。IPAの試算では、主要部品メーカーが72時間停止した際のサプライチェーン損失は300億円規模に及ぶとされています。さらに監視カメラ映像の流出は顧客や従業員のプライバシー侵害となり、個人情報保護法やGDPRの制裁金が発生する可能性も否定できません。攻撃が社会的信用の喪失に直結する点で、IoTセキュリティは経営課題と捉える必要があります。

    国際・国内動向が示す「対策の必然性」

    ETSI EN 303 645(欧州電気通信標準化機構)は「サイバーセキュリティを前提にIoTを設計せよ」という“セキュリティ・バイ・デザイン”指針を2020年に発効しました。日本でも総務省が2022年に『IoT セキュリティアクション』を改定し、企業規模を問わず「現状把握・リスク分析・対策実装・監視運用」というPDCAを回すことを推奨しています。こうした規制・ガイドラインは今後さらに強化されると見込まれ、早期に準拠体制を整えた企業ほど市場競争力を高める構図になりつつあります。


    ―第3回へ続く―

    【連載一覧】

    ―第1回「今さら聞けないIoTとは?─IoTデバイスの仕組みと活用例で学ぶ基礎知識」―
    ―第2回「身近に潜むIoTセキュリティの脅威とは?─リスクと被害事例から学ぶ必要性」―
    ―第3回「企業が取り組むべき IoT セキュリティ対策とは?─実践例に学ぶ安全確保のポイント」―


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    連載記事:企業の「攻め」と「守り」を支えるIoT活用とIoTセキュリティ
    第1回:今さら聞けないIoTとは?─IoTデバイスの仕組みと活用例で学ぶ基礎知識―

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    IoT活用とIoTセキュリティアイキャッチ画像(IoTデバイスの基本)

    はじめに:連載の背景

    新聞やビジネス誌を開くと「IoTとは」という見出しを見かける日も多くなりました。しかし、IT部門や経営層の会議で実際に自社では何をどう活用するのかと議論が始まると、抽象論のまま立ち往生してしまう例が多いのも事実です。本連載では「IoTデバイスの基本」「IoTセキュリティの脅威」「企業が実践すべき対策」を三回にわたって解説します。最後まで読むことで、読者の皆様が社内で議論を前に進めるための土台が整えられることを願っています。

    「Internet of Things」誕生の背景

    IoTという造語は 1999年、英 Auto-ID Center(現MIT Auto-ID Lab)でRFID研究に携わっていたケビン・アシュトン氏が提唱したのが始まりとされています。当時はネットワークに常時接続するセンサーは高価で、実用化は一部の製造ラインに限られていました。ところが2010年代に入り、3G/4G回線の広域整備とWi-Fiチップの低価格化が進んだことで導入コストが急速に低下し、クラウドが解析基盤を提供する現在の「IoT構造」が定着しました。総務省『情報通信白書令和5年版』によれば、世界のIoT機器(以降、本記事内ではIoTデバイスまたはIoT機器と表記します)の稼働台数は2022年時点で約147億台、2025年には270億台超へ倍増すると見込まれています。

    IoT機器の台数推移(2022-2025年)

    参考:IoT Analytics「IoT 2022: Connected Devices Growing 18% to 14.4 Billion Globally」,「State of IoT 2024: Number of connected IoT devices growing 13% to 18.8 billion globally」(PDF)

    IoTアーキテクチャの四層モデル

    多くの国際標準では「デバイス層・ネットワーク層・プラットフォーム層・アプリケーション層」という四つの階層で IoTシステムを整理します。デバイス層では温度や振動を“測る”センサーと、モーターやリレーを“動かす”アクチュエータが中心的な役割を担います。ネットワーク層ではWi-Fi、Bluetooth Low Energy、LoRaWAN、NB-IoT、5Gなど目的に応じた通信技術が選択され、プラットフォーム層ではAWS IoT CoreやMicrosoft Azure IoT Hub、NTT Communications Things Cloud®などがデータの収集・蓄積・分析をつかさどります。最上位のアプリケーション層が可視化ダッシュボードや制御アプリを提供し、ユーザ企業はそこから意思決定を行うという構造です。

    参考:NIST SP 800-213「IoT Device Cybersecurity Guidance for the Federal Governent: Establishing IoT Device Cybersecurity Requirements」,GeeksforGeek「Architecture of Internet of Things (IoT)」,Zipit Wireless Blog「4 Layers of IoT Architecture Explained

    身近に増えるIoTデバイスの実像

    今や一般家庭にも浸透するスマートスピーカーは、音声認識マイクと温湿度センサーを内蔵し、クラウド側で音声コマンドを解析してエアコンや照明を制御します。オフィス向けではネットワークカメラがクラウド映像分析サービスと連携し、不審者や深夜の残業者を自動検知します。製造現場で稼働する振動センサーは0.1秒単位でモーターの揺れを測定し、閾値しきいちを超える振幅を捉えると、PLC(Programmable Logic Controller)へ緊急停止信号を返します。農業分野では土壌水分センサーと気象APIを組み合わせ、最適な潅水量を算定してポンプを自動起動するスマート農業システムが普及し始めました。医療分野のウェアラブル端末は心拍・SpO₂・体温をクラウドに送信し、医師が専用アプリで異常を見逃さない仕組みを構築しています。

    IoT例から見えるビジネスインパクト

    製造業の典型的なIoT事例は予知保全です。独Bosch Rexroth社はラインに5,000個のセンサーを実装し、振動データと過去の故障ログをAIが突き合わせることでダウンタイムを25%削減したと発表しています。小売業では米WalmarがRFIDと重量センサーを併用してリアルタイム在庫を可視化し、欠品率を16%下げたことで年間10億ドル規模の機会損失を回避したと報告しました。日本国内でも関西電力がスマートメーター経由で収集した使用電力データを解析し、節電インセンティブのプログラムを顧客へ提示することでピークカットに成功した事例が公表されています。

    導入メリットの裏に潜む注意点

    リアルタイムデータに基づく迅速な意思決定、業務の自動化、新規サービス創出という恩恵は大きいものの、IoTセキュリティが後手に回るとその利点は一瞬で吹き飛びます。総務省『IoT セキュリティガイドライン ver 1.0』では、「初期パスワードのまま運用」「ファームウェアの自動更新機能が無効」といった“ありがちな設定”を放置すると、攻撃者にネットワークの踏み台として悪用される危険性が高いと明示しています。次回以降、脅威と対策を深掘りしますが、まずは“便利さとリスクは表裏一体”であると認識することが企業リーダーへの第一歩です。


    第2回へ続く―

    【連載一覧】

    ―第1回「今さら聞けないIoTとは?─IoTデバイスの仕組みと活用例で学ぶ基礎知識」―
    ―第2回「身近に潜むIoTセキュリティの脅威とは?─リスクと被害事例から学ぶ必要性」―
    ―第3回「企業が取り組むべき IoT セキュリティ対策とは?─実践例に学ぶ安全確保のポイント」―


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    【初心者向け】ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは?目的・方法・費用ガイド

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    ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、実際の攻撃者と同じ手法を用いてシステムやネットワークに侵入を試みることで、セキュリティ上の弱点を明らかにする検証手法です。脆弱性診断との違いや、実施の流れを理解することで、自社に最適なセキュリティ対策を選択できるようになります。本記事では、ペネトレーションテストの目的や手順、費用感、活用のメリットまでわかりやすく解説します。

    サービス紹介動画(ペネトレーションテスト)
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    ペネトレーションテストとは

    ペネトレーションテストとは、主に企業ネットワークや、Webアプリケーションなどに不正に侵入することができるかどうかをテストすることです。英語の「 penetration 」には「貫通」、「 penetrate 」には「貫く」「見抜く」などの意味があります。「ペンテスト」と略されたり、「侵入テスト」と呼ばれることもあります。

    サイバー攻撃者はまず不正侵入し、その後、情報を盗んだり、バックドアを仕掛けたり、あるいは破壊工作などを行います。それらすべての端緒となる不正侵入を許すかどうかを調べるのが、ペネトレーションテストの役割です。

    ペネトレーションテストは、システムやネットワークに対する不正侵入や攻撃が可能かどうかを確認するためのテスト手法です。このテストは、単に脆弱性を見つけるだけではなく、それらが実際に悪用される可能性があるかどうかを判断することに重点を置いています。これにより、システムのセキュリティ状態の把握や実装されているセキュリティ対策の有効性を検証することができます。

    ペネトレーションテストが必要な業界と業種

    ペネトレーションテストは、特にセキュリティが重要視される業界や業種で必要とされます。
    金融、医療、政府機関、ITサービスなど、機密情報を扱うすべての業界で、ペネトレーションテストの実施は必要不可欠です。これらの業界では、データ漏洩やシステム障害が重大な結果を招く可能性があるため、定期的なテストが推奨されます。

    ペネトレーションテストが必要な3つの業種

    脆弱性診断の結果見つかった脆弱性を悪用して、攻撃が本当に成功するのかを検証するために、ペネトレーションテストが実施されることがあります。あくまで一般論ですが、ペネトレーションテストが必要な業種や事業として、以下の3つが挙げられます。

    1.生命・生活に直接影響を与える事業やサービス
    第一に、生命や生活に影響を及ぼす業種が挙げられます。具体的には、水道・電気・ガス・道路・交通等の社会インフラや、病院、ビル管理、工場のシステムなどです。

    2.資産に影響を与える個人情報を扱うサービス
    個人情報を保有する事業やサービスにも、ペネトレーションテストが必要な場合が多いでしょう。とりわけ銀行や証券会社、クレジットカード、仮想通貨取引所などの金融、大規模なWebサービスやECサイト、住民データを扱う自治体や官公庁などが挙げられます。

    3.事業継続に影響を与える機密情報を扱うシステム
    重要な営業機密や知的財産を保有する企業もペネトレーションテストの実施が望ましいといえるでしょう。

    特に、クローズモデルの知財戦略に基づいて特許を取得しない方針の企業が、サイバー攻撃によって機密情報を盗まれ、他の企業に国内外で特許申請・取得された場合、事業継続に関わる重大な影響が懸念されます。

    また、データ自体に価値はあるが、特許法や不正競争防止法では保護対象とならないようなデータについては、セキュリティ対策によって保護を図る必要があります。

    ペネトレーションテストと脆弱性診断との違い

    ペネトレーションテストは、脆弱性診断とは異なるアプローチを取ります。

    脆弱性診断はシステムの脆弱性を特定することに焦点を当てていますが、ペネトレーションテストはその脆弱性を利用して実際に攻撃を試み、システムのセキュリティを実際に検証します。この違いは、単にリスクを特定するのではなく、そのリスクが実際にどのように悪用され得るかを理解することにあります。

    以下に「対象」「目的」「範囲」、必要な「期間」の4つの観点から、ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いを示します。

    ペネトレーションテスト脆弱性診断
    対象脆弱性診断同様、ネットワークやWebアプリケーションを対象にしますが、ときに警備員をあざむいて建物に侵入できるかどうか等の物理的侵入テストが行われることもあります。ネットワークやWebアプリケーションが対象となります。
    目的脆弱性診断は脆弱性を発見して報告することが主な業務ですが、ペネトレーションテストは脆弱性をもとに不正アクセスし、ネットワーク等に侵入することが目的となります。 脆弱性を検知・検出すること。
    範囲広い範囲の網羅性を重視する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストは侵入することが目的であるため、脆弱性診断とは反対に、狭く深く、ときに針の穴のような侵入できる一点を探します。 広く網羅的に脆弱性の有無を探します。
    期間ペネトレーションテストは、とにかく侵入が成功するまでトライし続ける作業であるため、脆弱性診断よりも長い期間を要する場合が少なくありません。ただし、一般論として、優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間で侵入が成功します。 探すものが事前に決まっているためペネトレーションテストよりも通常は短い期間で完了します。

    ペネトレーションテスト実施のステップ

    ペネトレーションテストサービスは提供する企業によってそれぞれ個性がありますが、大きく分けると下記の手順で実施されます。

    Step1.ヒアリング

    目的に応じ、たとえば「顧客データベース」など、ペネトレーションテストを行う対象を決定します。そして「顧客データベース」が外部から攻撃されるのか、あるいは内部犯行なのか、想定する攻撃シナリオを作成し、最後に、ペネトレーションテストを行う期間を決定します。

    Step2.実施

    対象によってさまざまな実施方法があります。公開されているWebアプリケーションであればリモートから実施することができます。内部犯行の危険性をテストする場合ならオフィス内から実施することもあるでしょう。

    Step3.完了

    「侵入に成功したとき」あるいは反対に、「侵入に成功できないまま期間が終了したとき」のいずれかをもってペネトレーションテストは完了します。どちらの結果にも意味があります。侵入に成功した場合は、その報告を受けて防御力を高める必要性を認識することになり、侵入に失敗した場合は、一定の防御力を保持できている目安となります。

    Step4.報告

    ペネトレーションテスト事業者からの報告書提出や報告会が行われます。具体的にどういうプロセスで、どういう技術を用いて侵入し、重要なデータがどこまで閲覧可能だったのか、どんなことができてしまう危険性があったのか、など管理者の気にかかることが詳細に報告されます。

    ペネトレーションテストのメリットとデメリット

    メリット

    • 攻撃者視点でリスクを把握できる
    • 発見された問題を経営層や現場に説得力をもって説明できる
    • 実際の被害想定を踏まえた改善が可能

    デメリット

    • 費用や工数が脆弱性診断よりも高い傾向にある
    • 診断範囲が限られることがある
    • 実施時の負荷に配慮が必要

    ペネトレーションテストの費用相場

    ペネトレーションテストの費用は、対象システムの規模や診断範囲によって異なります。一般的にはあくまで一般的な相場として「脆弱性診断の1.5倍から2倍」程度、数百万円程度が目安ですが、小規模のWebアプリケーションなら数十万円から実施可能な場合もあります。

    ペネトレーションテストの重要性

    主に以下のような理由により、企業・組織において、ペネトレーションテストを実施することは重要です。

    • 実際の攻撃シナリオの検証
    • セキュリティ対策の有効性評価
    • コンプライアンス要件の遵守
    • ビジネスリスクの低減

    脆弱性診断とは異なり、ペネトレーションテストは単に脆弱性を発見するだけでなく、それらが実際に悪用される可能性があるかどうかを重視します。これにより、システムのセキュリティ状態を詳細に把握し、実装されているセキュリティ対策の有効性を検証することができます。

    特に金融、医療、政府機関、ITサービス業界など、高度なセキュリティが要求される分野では、セキュリティ対策の一環としてペネトレーションテストが法令やガイドラインで義務付けられている場合があります。

    ペネトレーションテストを実施する会社の適切な選び方

    ペネトレーションテストを実施する際には、専門知識と経験を持つ信頼できる会社を選ぶことが重要です。セキュリティテストの専門家であること、業界の最新の脅威に精通していること、そして過去の成功事例を持つことが、良いサービスプロバイダーの特徴です。また、テストの範囲、方法、報告の詳細さなど、サービスの質にも注意を払う必要があります。

    ペネトレーションテストは経験とセンスが求められる仕事であるため、優良事業者選びはとても重要です。前述したとおり「優秀なペネトレーションテストサービスであればあるほど、短い期間でテストが終了(=侵入に成功)」します。ペネトレーションテストの見積額はエンジニアの拘束時間とも相関しますので、予算にもかかわってきます。大きく以下の3つのポイントを、いいペネトレーションテスト会社選びの参考にしてください。

    1.丁寧なヒアリングにもとづいてシナリオを考えてくれるか

    システム構成や業務手順、ときには組織構成など、実際のサイバー攻撃を行う際に参照するとされる、さまざまな情報をもとにして、実施するサービスの適用範囲、留意事項、制限などを聞き、顧客の目的や要望、要件に沿ったペネトレーションテストの攻撃シナリオを考えてくれる会社を選びましょう。

    2.技術者の経験と勘、クリエイティビティ

    ペネトレーションテストはときに針の穴を通すような隙間を見つけ出して侵入を成功させる業務です。技術者のこれまでの経験、保有資格などを確かめ、技術者の層が厚い会社を選びましょう。

    3.診断実績

    過去のペネトレーションテストの実施社数や件数、リピート社数なども、いいペネトレーションテスト会社選びの参考になります。

    ペネトレーションテストのツール

    ここまで述べてきたとおりペネトレーションテストとは、丁寧なヒアリングのもとで作成した攻撃シナリオに基づいて、経験豊かな技術者が実施するクリエイティブな手作業です。ペネトレーションテストをすべて自動で行うツールは存在しません。

    ただし、ペネトレーションテストを行う技術者が、いわば「工具」「道具箱」のように用いるツールは数多くあります。代表的なものとして、オープンソースプロジェクトである Metasploit が提供する、さまざまなツール群が挙げられます。

    セキュリティ企業に依頼せずに、自分でMetasploit が提供するツールを用いて、公開されている脆弱性などを用いて攻撃を実行することは可能です。しかし、その結果を読み解いたり、優先順位をつけたりするノウハウには経験と知見が必要とされます。

    また、自宅に置いたサーバに研究目的でツールを走らせるような場合でも、不用意にこうしたツールを使用したり、不適切な方法で攻撃用のエクスプロイトを取得・保管したりすると「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「不正指令電磁的記録に関する罪(刑法刑法168条の2及び168条の3)」等にも触れる犯罪となる危険性もあることを忘れてはいけません。

    まとめ

    ・ペネトレーションテストとは、システム・ネットワークへの不正侵入や攻撃が成立するか確
     認するテスト手法の一つ
    ・特にセキュリティが重要視される業界や業種、金融、医療、政府機関、ITサービス業界など

     で、ペネトレーションテストの実施が必要不可欠
    ・脆弱性の有無を判定する脆弱性診断と異なり、ペネトレーションテストでは脆弱性自体を見

     つけることよりも不正侵入や攻撃が成立するかどうかの判断を優先する
    ・事前ヒアリングが丁寧で、優秀な技術者が在籍する、診断実績の多い会社を探す

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    【第3回】Non-Human Identities Top 10とは?自動化時代に求められる新しいセキュリティ視点

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    近年、クラウドやSaaSの普及で、人の手を介さずに動作する「Non-Human Identity(NHI)」が存在感を増しています。このNHIに対するOWASPのTop10シリーズが2025年から公開されています。「OWASP Top 10」を中心に、基本的なセキュリティ知識を深め、企業での対策に活かすことを目的としたシリーズ第3回の今回は、NHIとは何か、悪用事例や企業が今取るべきセキュリティ対策の方向性を解説します。

    Non-Human Identity(NHI)とは

    NHIとは、マシン間のアクセスと認証に使用されるデジタル的なIdentity(ID注 1))の総称です。IDは機械的な処理や自動化の場面で使われます。NHIはクラウドサービスの普及やAPI化の進展とともに爆発的にその数を増やしています。その最大のメリットはAPIやマイクロサービス、アプリケーションごとに設定・運用が可能な点にあります。そして最大のデメリットがセキュリティ関連の問題です。

    NHIが用いられる代表例としてCI/CD注 2)環境があります。CI/CD環境では日常的にコードのコミットやレビュー、テスト、ビルド、バージョン管理、デプロイといったことがCI/CDパイプラインやクラウドサービスプロバイダとの統合を通じて行われています。ここでのNHIの利用状況を考えてみましょう。

    CI/CD環境とNHIのイメージ

    ユーザがIDEからプラグイン経由でワークフローにコードのプッシュ/プルなどの操作を行うことでCI/CDパイプラインのワークフローが動作し、ワークフローから様々なコンポーネントや外部APIへの通信にNHI(凡例①~③)が利用されます。

    CI/CDに限らず、私たちの周りにはNHIを必要とするサービス間・システム間の連携が多数存在しています。次の図は顧客管理システム(CRM)と営業支援システム(SFA)を中心とした、NHIを用いた典型的なサービス間の連携のイメージです。

    CI/CD環境も、この図に挙げた例でも、1人のユーザが1つのアプリケーションから複数の機能を動かすことができます。このため、組織内では人の10~50倍のNHIが存在するともいわれています注 3)。さらに、すべてのNHIが適切に管理されているとは限らず、サービス間・開発者間でのNHIの共有や認証情報のローテーションのないNHIの存在など、多くの問題があります。これらのセキュリティ上の問題をまとめたものが「OWASP NHI Top10」です。

    事例から見るNHIのセキュリティ課題

    tj-actionsサプライチェーン攻撃(2025年発生)

    GitHub Actions(GitHubによるCI/CDプラットフォーム)向けのサードパーティー製のアクション集であるtj-actionsが依存するライブラリへの侵害が原因となったサプライチェーン攻撃です。GitHub Actionsにはワークフローやその中の一部アクションの再利用という機能がありますが、tj-actionsはGitHub Actionsでは提供していないアクションを多数提供することでGitHub Actionsの補完目的で使用できるツールの一つです。図は時間的経過を含む本事案の推移をあらわしたものです。

    tj-actions侵害・サプライチェーン攻撃の概要

    GitHub独自のセキュリティに関連する補足説明

    PAT: ここでのPATはGitHubが提供するPersonal Access Tokenを指します。APIやCLIからのアクセス(たとえばgit cloneやpush, pullなど)を行う際の認証に用いられるものです。発行が人(GitHubユーザ)に対して行われるので属人性がありますが、実際にはNHIとして使用します。Settings>Developer SettingsからToken(Classic)またはFine Grained Tokenが選択できます。Fine Grained Tokenを選択した場合はトークンに関するパーミッションの詳細が設定できるようになっていますが、セキュリティの観点では非推奨の設定項目(例えば有効期限を設定しないなど)が有効になっている点や、設定項目が詳細かつ多岐にわたるためセキュリティ上の配慮のない設定をしているケースもありうる点に注意が必要です。
    pull_request_target: GitHub Actionsにはpull_requestとpull_request_targetの2つのpull requestトリガーがあります。pull_request_targetは使い方を理解していないと今回のようなケースで悪用されることがあります。参考資料を以下に記載しますので、ぜひご一読ください。
    https://blog.gitguardian.com/github-actions-security-cheat-sheet/
    https://blog.gitguardian.com/github-actions-security-cheat-sheet/https://runs-on.com/github-actions/pull-request-vs-pull-request-target/

    本件でOWASP NHI Top 10のうち該当する可能性がある項目は以下の通りです。

    No.名称今回何が該当するか
    NHI2Secret Leakage(シークレット漏洩)本件ではtj-actions経由でログにダンプされた秘密情報があった点、各PATの漏洩があった点の2点が該当
    NHI3Vulnerable Third-Party NHI(脆弱なサードパーティーNHI)spotbugsおよびreviewdog への侵害がtj-actionsへの侵害へ繋がった点が該当
    NHI7Long-Lived Secrets(長期間有効なシークレット)攻撃期間からspotbugsのメンテナーのPATの有効期限が長かった可能性がある

    OWASP NHI Top 10

    OWASP NHI Top 10 2025をここで簡単にご紹介します。

    NHI番号名称概要対策
    NHI1:2025Improper Offboarding(不適切なオフボーディング)サービスアカウントやアクセスキーなどの非人間的アイデンティティが不要になった際に、適切に無効化・削除されない問題。放置された認証情報が攻撃者に悪用され、機密システムへの不正アクセスに利用される可能性がある。NHIのライフサイクル管理を自動化し、使用されていないアイデンティティを定期的に検出・無効化する。継続的なスキャンとモニタリングでゾンビNHIを特定し、ガバナンス、ツール、ワークフローの観点から廃止プロセスを体系化する。
    NHI2:2025Secret Leakage(シークレット漏洩)APIキー、トークン、暗号化キー、証明書などの機密情報が、ソースコードへのハードコーディング、平文設定ファイル、公開チャットアプリケーションなど、認可されていないデータストアに漏洩する問題。ハードコードされた認証情報を排除し、適切なシークレット管理プラットフォーム(CyberArk Conjur、HashiCorp Vault等)を導入する。CI/CDパイプラインにシークレットスキャンを組み込み、リアルタイムで漏洩を検出・検証する。
    NHI3:2025Vulnerable Third-Party NHI(脆弱なサードパーティーNHI)開発ワークフローに統合されたサードパーティーの非人間的アイデンティティが、セキュリティ脆弱性や悪意のあるアップデートにより侵害され、認証情報の窃取や権限の悪用に利用される問題。サードパーティーサービスのセキュリティ実践を定期的に監査し、統合されたサービスの更新状況を追跡する。最小権限の原則に従い、サードパーティーに与える権限を最小限に制限し、定期的にアクセス権を見直す。
    NHI4:2025Insecure Authentication(安全でない認証)開発者が内部・外部サービスを統合する際に、非推奨で脆弱性のある認証方式や、古いセキュリティ慣行による弱い認証メカニズムを使用することで組織が重大なリスクにさらされる問題。非推奨の認証方式(SHA1等)を特定し、最新のセキュリティ標準に準拠した認証方式に移行する。すべての暗号化・認証方式を定期的に見直し、技術の進歩に合わせて更新する。長期間有効なAPIキーを短期間トークンに置き換える。
    NHI5:2025Overprivileged NHI(過度な権限を持つNHI)アプリケーション開発・保守時に、開発者や管理者が非人間的アイデンティティに必要以上の権限を付与し、侵害時に攻撃者がその過剰な権限を悪用して重大な被害を与える可能性がある問題。最小権限の原則を厳格に適用し、NHIの権限を定期的に見直す。権限のスコープを適切に設定し、シークレットローテーション時に権限の再評価を実施する。人間のアイデンティティと同様の自動化されたアクセス権見の直しプロセスを導入する。
    NHI6:2025Insecure Cloud Deployment Configurations(安全でないクラウドデプロイ設定)CI/CDアプリケーションがクラウドサービス認証で静的認証情報やOIDCを使用する際、設定ミスや検証不備により、攻撃者が本番環境への永続的で特権的なアクセスを獲得する可能性がある問題。静的認証情報の代わりにOIDCトークンベース認証を使用し、アイデンティティトークンの適切な検証を実装する。設定ファイルへのハードコード化を避け、適切なシークレット管理システムを使用する。CI/CDパイプラインでのシークレット露出を防ぐ。
    NHI7:2025Long-Lived Secrets(長期間有効なシークレット)APIキー、トークン、暗号化キー、証明書の有効期限が遠い将来に設定されているか無期限の場合、侵害されたシークレットが時間制約なく攻撃者に機密サービスへのアクセスを提供する問題。短期間で自動ローテーションされるシークレットを実装し、可能な限り実行時に生成される一時的なトークンを使用する。シークレットのライフサイクルを可視化し、作成・使用・ローテーション状況を追跡する。有効期限のないシークレットを特定し排除する。
    NHI8:2025Environment Isolation(環境分離)開発、テスト、ステージング、本番環境で同じ非人間的アイデンティティを再利用することで、特にテスト環境と本番環境間での使い回しが重大なセキュリティ脆弱性を引き起こす問題。開発、ステージング、本番環境で異なるNHIを使用し、環境間でのNHI共有を禁止する。各環境専用のNHIを設定し、環境固有のアクセス権限を適用する。NHIの使用状況を可視化し、環境分離ポリシーの遵守状況を監視する。
    NHI9:2025NHI Reuse(NHI再利用)異なるアプリケーション、サービス、コンポーネント間で同じ非人間的アイデンティティを再利用することで、一箇所での侵害が他の部分への不正アクセスに利用される重大なセキュリティリスクを生む問題。異なるアプリケーション間でのNHI共有を禁止し、1対1のNHI-アプリケーション使用ポリシーを確立する。NHIの使用コンテキストを詳細に把握し、複数システム間での再利用を防ぐ。侵害時の影響範囲を限定するため、専用NHIを各アプリケーションに割り当てる。
    NHI10:2025Human Use of NHI(人間によるNHIの使用)アプリケーション開発・保守時に、開発者や管理者が個人の人間的 アイデンティティで行うべき手動タスクに非人間的アイデンティティを悪用し、監査やアカウンタビリティの欠如などのリスクを引き起こす問題。手動タスクには適切な権限を持つ個人のアイデンティティを使用し、NHIの人間による使用を禁止する。NHIの異常使用を検出するモニタリングを実装し、承認されたアクセスパターンから逸脱した使用を特定する。監査とアカウンタビリティを確保するため、人間とNHIの活動を明確に区別する。
    出典:OWASP Non-Human Identities Top 10より弊社編集・和訳

    企業がとるべき対策

    NHI固有の対策(NHI10:2025人間によるNHIの使用)もありますが、例えば人の認証に関する対策と似たようなもの(オフボーディング対策、認証情報のハードコードの排除、最小権限の原則の徹底、認証方法のアップデート、環境分離やシステム間での再利用禁止)も多く含まれます。企業のIT環境は今後、AI統合やレガシーシステムの置き換え、人手不足を背景とした業務の自動化を中心に大きく変動していくことが予想されます。

    NHIはアプリケーション間、システム間といったマシン間の認証に用いられることから、AI統合や業務のデジタル化・自動化において利用される機会が増えていきます。新しい概念であり、新しいセキュリティ上のリスクでもあり、なかなか理解するのが難しい分野ではありますが、少なくとも、以下の点においてセキュリティ上重要であることをご理解いただければと思います。

    • NHIは企業のデジタル資産やシステム間の接続のために多数用いられており、攻撃者から見たときに非常に広い攻撃面となりうること
    • 特権が付与されるNHIも存在することから、攻撃者から見たときに有用な攻撃面であるが、最小権限の原則が適用されていない場合、防御側にとっては保護が難しいこと
    • 人間の認証と同じく、認証方法がセキュリティリスクの高いもの(単純なAPIキー)からセキュリティリスクが低いもの(OAuthと証明書の同時活用)まで非常に多様であり、選択を間違うと攻撃された際の被害が甚大であること

    セキュリティは「開発初期から」「全社横断で」

    3つのTop 10に共通しているのは、「問題の多くは設計段階・開発段階で防げる」という事実です。脆弱性や権限ミスは、開発中の選択や運用ポリシーによって生まれるため、セキュリティは“あとから付け足す”ものではなく、最初から組み込むべき設計要件であるという考え方がますます重要になっています。また、情報システム部門だけでなく、開発チーム・運用チーム・経営層を巻き込んだ全社的なセキュリティ体制の確立が求められます。

    OWASP Top 10を「読むだけ」で終わらせないために

    OWASPのTop10シリーズは、ただの知識リストではありません。それぞれのリスクが「なぜ問題なのか」「どう防げるのか」を考えることで、企業ごとのセキュリティ成熟度を高めることができます。自社システムに照らして「どこが該当するか」「どのリスクが潜在しているか」をチームで共有し、日々の開発・運用の判断にOWASPの知見を活用することが、最も効果的なセキュリティ強化への第一歩です。3回にわたる本シリーズが、皆さまのセキュリティ戦略の一助となれば幸いです。

    【参考情報】

    【連載一覧】

    ―第1回「OWASP Top 10とは?アプリケーションセキュリティの基本を押さえよう」―
    ―第2回「OWASP API Security Top 10とは?APIの脅威と対策を知ろう」―

    注:
    1)ここでは読者の皆さんに理解しやすいようにIDとしていますが、実態としてはデジタル的な構成要素(digital construct)であり、デジタル的な主体(digital entity)となります。
    2)Continuous Integration/ Continuous Delivery(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の略語
    3)https://cloudsecurityalliance.org/blog/2024/03/08/what-are-non-human-identities

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    ゼロトラスト導入ガイド|成功事例・メリット・失敗しない進め方とおすすめ診断サービス
    ゼロトラストとは?なぜ今、導入が必要なのか

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    サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進む中、「ゼロトラスト」は企業の情報資産を守る新たなセキュリティ戦略として注目を集めています。本記事では、ゼロトラストの基本概念から導入メリット、成功事例、よくある課題とその解決策、導入の進め方までをわかりやすく解説。さらに、導入効果を最大化するためのおすすめ診断サービスもご紹介します。失敗しないゼロトラスト導入を目指す方は必見です。

    はじめに

    従来の境界型セキュリティでは防ぎきれないサイバー攻撃が増加する中、企業の情報資産を守る新たなアプローチとして「ゼロトラスト」が注目されています。ゼロトラストは「守るべき情報資産に対するあらゆるアクセスを信頼せず、すべて検証する」という原則に基づき、すべてのアクセスを検証・制御し、最小限の権限だけを与えることで内部・外部の脅威から組織を守るセキュリティモデルです。

    ゼロトラスト導入のメリット

    ゼロトラストを導入することで得られる主なメリットは以下の通りです。

    • サイバー攻撃リスクの低減
      すべてのユーザーやデバイスを都度認証するため、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に減らせます。
    • クラウド・リモートワーク対応の強化
      社内外問わず安全なアクセス環境を構築でき、テレワークやクラウド活用が進む現代の働き方に最適です。
    • 適切なアクセス権限管理と運用
      最小権限の原則により、不要なアクセス権を排除し、万が一の被害範囲も最小限に抑えられます。
    • コンプライアンス対応の強化
      アクセス履歴や認証の記録が残るため、各種規制や監査にも対応しやすくなります。

    ゼロトラスト導入における課題と段階的な進め方

    ゼロトラストは単なる技術導入ではなく、企業のセキュリティパラダイムの転換を意味します。IPAの導入指南書では、まず現状評価と戦略策定から始め、資産の棚卸しやセキュリティギャップの特定、経営層の支持獲得を行うことが重要とされています。

    セキュリティギャップの例:

    • 古いOSのまま運用されている端末の存在
    • 重要な業務システムに対して多要素認証が導入されていない
    • 誰がどのシステムにアクセスできるかの管理が不十分

    こうしたギャップを洗い出すことで、優先的に対処すべき課題が明確になります。

    次に、ID管理基盤の構築として多要素認証やシングルサインオン、特権アクセス管理の強化を段階的に実施します。さらに、クラウド利用の増加に伴い、クラウド環境の適切なセキュリティ設定も欠かせません。クラウドサービスの利用率は70%を超えていますが、約3割の企業がクラウド起因のセキュリティインシデントを懸念しており、専門家による設定診断が求められています。

    導入成功事例:ゼロトラストで業務とセキュリティを両立

    事例1:大手製造業A社
    クラウドサービスの利用拡大とテレワーク推進により、従来のVPNだけではセキュリティリスクが高まっていました。A社はゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)を導入し、従業員の端末認証や多要素認証(MFA)を徹底。加えて、クラウド環境のセキュリティ設定診断も実施したことで、リモートアクセスの安全性を大幅に向上させました。

    導入のポイント:
    ・既存の社内システムと段階的に連携
    ・社内教育と啓発活動も並行して実施
    ・定期的な脆弱性診断でリスクを可視化

    事例2:医療系サービスB社
    個人情報を多く扱うB社では、ゼロトラストの導入により、アクセス権限の細分化とログ監視を強化。クラウドセキュリティ設定診断も活用し、外部からの不正アクセスや内部不正のリスクを大幅に低減しました。

    導入のポイント:
    ・多要素認証の全社導入
    ・クラウド環境の設定ミスを専門家が診断
    ・定期的な保守サービスでセキュリティレベルを維持

    失敗しないゼロトラスト導入の進め方

    ゼロトラストは一度にすべてを切り替えるのではなく、段階的に進めることが成功のカギです。

    STEP1:現状把握と目標設定
    まずは自社のIT資産・業務フローを棚卸しし、どこにリスクや課題があるかを洗い出します。経営層を巻き込んだ目標設定が重要です。

    STEP2:ID管理・認証基盤の強化
    多要素認証(MFA)やシングルサインオン(SSO)など、ID管理の強化から始めましょう。これがゼロトラストの基盤となります。

    STEP3:クラウド・ネットワーク環境のセキュリティ診断
    クラウドサービスやネットワーク機器の設定に脆弱性がないか、専門サービスで診断を受けることが推奨されます。

    STEP4:段階的な導入と運用改善
    重要度の高いシステムから順次ゼロトラスト化を進め、運用しながら改善していくことが成功への近道です。

    STEP5:継続的な教育と保守
    社員へのセキュリティ教育と、定期的な診断・保守サービスの活用で、最新の脅威にも対応できる体制を維持しましょう。

    おすすめの脆弱性診断サービス

    ゼロトラスト導入を成功させるには、専門家による診断サービスの活用が有効です。専門家の助言を受けることで、組織が保有するリスクへの具体的な対策を講じ、リスクを最小限に抑えることが可能となります。BBSecの「SQAT®脆弱性診断」は、システムやクラウド環境の脆弱性を高精度で診断し、具体的な改善策を提案します。さらに、脆弱性診断保守サービスやクラウドセキュリティ設定診断により、導入後の運用やクラウド環境の安全性維持にも役立ちます。

    サービス詳細

    SQAT® 脆弱性診断
    システムに潜む脆弱性は、重大な被害につながるリスク要因です。BBSecの「SQAT® 脆弱性診断」は、自動診断と手動診断を組み合わせ、高精度で脆弱性を発見します。診断結果はスピーディーに報告。対応優先度もご提示するため、お客様側での効率的な対策が可能です。また診断後3か月間の再診断やご相談も受け付けており、サイバー保険も付帯しています。

    脆弱性診断保守サービス
    定期的な診断と診断間のリスク検知を自動化。継続的なセキュリティレベル維持に最適です。

    クラウドセキュリティ設定診断
    AWS、Azure、GCPなど主要クラウドの設定を専門家が診断し、最適な対策を提案します。

    まとめ

    ゼロトラスト導入は、企業のセキュリティレベルを飛躍的に高める最良の選択肢です。成功事例のように段階的な導入と定期的な診断サービスの活用で、リスクを最小化しつつ柔軟な働き方やクラウド活用も実現できます。まずは現状の課題を可視化し、信頼できる診断サービスとともに、失敗しないゼロトラスト導入を進めてみてはいかがでしょうか。

    【参考情報】

  • 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ゼロトラスト導入指南書
  • Gartner Japan,ニュースルーム(2025年5月8日)「Gartner、ゼロトラストの最新トレンドを発表
  • Zscaler「ゼロトラストとSASE: 2025年の5つの予測
  • クラスメソッド株式会社,Zenn「2025年版-ゼロトラスト導入ガイド
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    【第2回】「OWASP API Security Top 10とは?APIの脅威と対策を知ろう」

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    デジタル化が進む現代において、Webサービスやスマートフォンアプリ、IoT機器まで、あらゆるシステムがAPIを通じて連携しています。しかし、その利便性の反面、APIを標的としたサイバー攻撃も急増しています。こうした背景の中、APIに特化したセキュリティリスクをまとめたのが「OWASP API Security Top 10」です。

    「OWASP Top 10」を中心に、基本的なセキュリティ知識を深め、企業での対策に活かすことを目的としたシリーズ第2回の今回は、API開発や管理に関わる企業の情報システム部門・開発担当者に向けて、OWASP API Security Top 10の概要と代表的なリスク、具体的な対策についてわかりやすく解説します。

    OWASP API Security Top 10とは

    OWASP API Security Top 10は、OWASP(Open Web Application Security Project)がAPIセキュリティに関する10大リスクを選定・解説したもので、Webアプリケーション版『OWASP Top 10』同様、攻撃シナリオや防御方法がTop10形式で詳しく記載されており、API固有の脆弱性やセキュリティリスクの把握と対策をするための判断材料のひとつとして捉え、活用することができます。

    「API」について、SQAT.jpでは以下の記事でも解説しています。
    あわせてぜひご覧ください。
    APIのセキュリティ脅威とは
    APIとは何か(2)~APIの脅威とリスク~

    APIセキュリティ

    APIは異なるソフトウェア間の通信を可能にしますが、同時に攻撃者にとっての格好の標的にもなり得ます。そのため、APIを利用する企業やアプリケーション開発者にとってAPIのセキュリティ対策は重要な課題です。セキュリティリスクは他のプログラムやサービスと機能などデータを共有しているAPI特有の仕組みから生じます。APIが不適切に設計・管理されていると、未認証のアクセス、データ漏洩、機密情報の不正取得といったリスクが高まります。以下は、APIセキュリティに関する主なリスクの例です。

    • データ漏洩:APIを通じて個人情報や機密情報が漏洩するリスク
    • 不十分な認証:認証要素が不十分なことによる不正アクセスのリスク
    • サイバー攻撃リスク:標的型攻撃インジェクション攻撃やサービス運用妨害(DoS)攻撃などのサイバー攻撃を受けてしまうリスク
    • APIキーの窃取:APIキーが盗まれることによる不正利用のリスク

    OWASP API Security Top 10:2023概要

    以下は、2023年に発表された最新版のOWASP API Security Top 10のリストです。

    項目番号リスク名概要
    API1:2023Broken Object Level Authorization
    (オブジェクトレベルでの認可の不備)
    オブジェクトレベルの認可が不適切で、他ユーザのIDを参照できてしまう問題。IDを任意に変更して不正取得される
    API2:2023Broken Authentication
    (認証の不備)
    認証トークンやセッション管理の不備により、なりすましや不正アクセスが可能となる状態
    API3:2023Broken Object Property Level Authorization
    (オブジェクトプロパティレベルの認可の不備)
    オブジェクト内の個別プロパティに対して、参照・更新権限チェックがない問題。内部値が漏洩・改ざんされる恐れがある
    API4:2023Unrestricted Resource Consumption
    (無制限のリソース消費)
    CPU、ネットワーク、メール送信等リソース制御がなく、DoS攻撃対策やコスト対策が不十分な状態
    API5:2023Broken Function Level Authorization
    (機能レベルの認可の不備)
    本来の権限を超えて管理機能が呼び出され、削除・変更など不正操作が可能になる
    API6:2023Unrestricted Access to Sensitive Business Flows
    (機密性の高いビジネスフローへの無制限のアクセス)
    購入や予約など、業務フローが制限なく自動化され悪用され得る状態。API側の防御が不十分な状態
    API7:2023Server Side Request Forgery
    (サーバサイドリクエストフォージェリ)
    外部から渡されたURLを検証せず内部リソースをリクエストし、不正アクセス・ポートスキャンを誘発する
    API8:2023Security Misconfiguration
    (不適切なセキュリティ設定)
    セキュリティ設定ミスにより、デバッグモードや不要エンドポイントが公開されたままになっている状態
    API9:2023Improper Inventory Management(不適切なインベントリ管理)バージョン管理や資産管理不備により、古いAPIやテスト系エンドポイントが放置された状態
    API10:2023Unsafe Consumption of APIs
    (APIの安全でない使用)
    APIクライアント側の不適切な利用により、API仕様外の動作等を招くケース
    出典:OWASP Top 10 API Security Risks – 2023より弊社和訳

    OWASP API Security Top 10:2023の代表的なリスクとその影響

    OWASP API Security Top 10では、APIに特化した攻撃手法や設計ミスを10項目に分類しています。ここでは特に影響の大きい代表的な5項目を取り上げ、それぞれの特徴と企業に与える影響を見ていきましょう。

    API1: Broken Object Level Authorization

    • 概要:他人のデータにアクセスできてしまう認可チェックの不備
    • 例:/users/12345を/users/12346に変更して別ユーザの情報を取得
    • 影響:個人情報漏洩、プライバシー侵害、法令違反リスク
    • 実例:T-Mobile(2020年)でAPI経由により契約者情報が漏洩*12

    API2: Broken Authentication

    API3: Broken Object Property Level Authorization

    API4: Unrestricted Resource Consumption

    • 概要:API利用時のリソース消費に対する制限がなく、過剰利用を許してしまう
    • 例:無制限にファイルをアップロード、高頻度でログイン試行
    • 影響:DoS攻撃によるサービスの停止、インフラコストの急増
    • 実例:なし

    API6: Unrestricted Access to Sensitive Business Flows

    これらのリスクは、API開発における「利便性と安全性のバランス」が崩れたときに生じやすいものです。次章では、こうしたリスクに対して開発・運用チームがどのように備えるべきか、具体的な対策を解説します。

    開発・運用チームがすべき対策

    OWASP API Security Top 10:2023に示されたリスクは、設計・開発・運用のあらゆる段階での対策が必要です。APIは公開範囲が広く、攻撃対象になりやすいため、企業の情報システム部門や開発チームは「守るべきポイント」を明確にし、セキュリティレベルを高めていく必要があります。以下に代表的な対策を整理します。

    認証・認可の適切な管理

    • アクセストークン(OAuthトークンなど)の署名検証や有効期限管理を適切に行う
    • 多要素認証(MFA)やOAuth 2.0/OpenID Connectなどの業界標準プロトコルを採用
    • ユーザIDやオブジェクトIDに基づいたアクセス制御(認可)の一貫性を保つ

    目的:適切なユーザにのみ権限を付与し、不正アクセスのリスクを軽減する

    入力データのバリデーションと制御

    • ユーザから受け取るリクエストパラメータ、JSON、ヘッダー情報などに対してサーバーサイドで厳格な検証を実施
    • 過剰なフィールドの受け入れを避け、明示的に許可されたパラメータだけを処理
    • 入力サイズ、データ型、構造の制限と、想定外の入力に対する例外処理を徹底

    目的:不正な値による処理改ざん(Mass Assignment、インジェクション)やサービス停止リスクを軽減

    脆弱性診断・ログ監視等の定期的な実施

    • APIエンドポイントに対するセキュリティ診断(ペネトレーションテスト、動的解析)を定期的に実施
    • SwaggerやOpenAPI仕様書をもとに、未公開API・テスト用APIが本番に露出していないか確認するため、棚卸しを実施
    • APIゲートウェイやWAF(Web Application Firewall)と連携したログの収集・監視も強化

    目的:潜在的な脆弱性や構成ミスを早期に発見し、攻撃の起点となる入口を閉じる

    レート制限と自動化対策

    • IPアドレスやユーザごとのレートリミットを設ける(例:1分間に○回まで)
    • CAPTCHAやボット対策(Device Fingerprint等)を導入して業務APIの濫用を防止
    • クラウド利用時はコスト制御のためのクォータ設定や自動アラートも重要

    目的:DoS攻撃や不正自動化による買い占め行為の防止

    セキュアなAPI設計の徹底

    • 最小権限の原則に基づいたロール設計、バージョン管理の明確化
    • 非公開APIは認証必須かつアクセス制限を設け、エラーメッセージは曖昧化
    • API仕様書の公開範囲と利用契約(利用規約・SLAs)にもセキュリティ要件を記載

    目的:開発段階からセキュリティを組み込む“Security by Design(セキュリティ・バイ・デザイン)”の実現

    企業におけるAPI活用が進む今、セキュリティ対策もまたアプリケーションとは別軸で強化が求められます。OWASP API Security Top 10はその出発点であり、ここで挙げた対策はすべての開発・運用現場で必須です。継続的な見直しと体制整備によって、APIの安全な運用を実現しましょう。

    第3回では、クラウドや自動化が進む今、ますます注目されている「Non-Human Identities(NHI)」に焦点を当てます。人ではないアカウントが引き起こす新たな課題とは何か、そして企業はどう備えるべきかを解説します。


    ―第3回「Non-Human Identities Top 10とは?自動化時代に求められる新しいセキュリティ視点」へ続く―

    【連載一覧】

    ―第1回「OWASP Top 10とは?アプリケーションセキュリティの基本を押さえよう」―
    ―第3回「Non-Human Identities Top 10とは?自動化時代に求められる新しいセキュリティ視点」―

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    【第1回】「OWASP Top 10とは?アプリケーションセキュリティの基本を押さえよう」

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    近年、Webアプリケーションを狙ったサイバー攻撃が急増しており、企業にとってWebアプリケーションのセキュリティ強化は欠かせない課題となっています。その中で、世界中のセキュリティ専門家が指標として活用しているのが「OWASP Top 10」です。

    今回は、Webアプリケーションの代表的な脆弱性をまとめた「OWASP Top 10」を通じて、基本的なセキュリティ知識を深め、企業での対策に活かすことを目的とし、背景から各脆弱性カテゴリの説明、実例、対策方法までを全3回のシリーズに分けて解説します。

    OWASPとは

    OWASP(Open Worldwide Application Security Project)は、ソフトウェアのセキュリティ向上を目的とした国際的な非営利団体です。開発者やセキュリティ専門家によって構成されており、セキュリティに関するツールやドキュメントなどを無償で提供しています。OWASPは中立かつオープンな立場から情報を発信しており、多くの企業や政府機関がそのガイドラインを信頼し、採用しています。

    OWASP Top 10とは

    OWASP Top 10は、Webアプリケーションにおける代表的なセキュリティリスクをランキング形式でまとめたもので、最も重要な10の脆弱性カテゴリを示しています。このリストはおよそ3年ごとに更新されており、業界の最新動向や実際の脅威傾向を反映しています。このTop 10は、アプリケーション開発やセキュリティ教育、脆弱性診断の指針として世界中で活用されており、情報システム部門にとってはセキュリティの共通言語ともいえる存在です。

    OWASP Top 10:2021概要

    OWASP Top 10:2021で挙げられているリスクとその概要について、SQAT.jpでは以下の記事でも取り上げています。あわせてぜひご覧ください。
    OWASP Top 10―世界が注目するWebアプリケーションの重大リスクを知る―

    以下は、2021年に発表された最新版のOWASP Top 10のリストです。

    項目番号リスク名概要
    A01Broken Access Control
    (アクセス制御の不備)
    アクセス制御の不備により、本来アクセスできない情報や機能へアクセスされるリスク
    A02Cryptographic Failures
    (暗号化の不備)
    暗号化の不備による機密情報の漏洩や改ざん
    A03Injection
    (インジェクション)
    SQLインジェクションなど、外部から不正なコードを注入されるリスク
    A04Insecure Design
    (セキュアでない設計)
    セキュリティを考慮しない設計により生じる構造的リスク
    A05Security Misconfiguration
    (セキュリティ設定のミス)
    設定ミスや不要な機能の有効化に起因する脆弱性
    A06Vulnerable and Outdated Components(脆弱かつ古いコンポーネントの使用)脆弱性を含む古いライブラリやフレームワークの使用
    A07Identification and Authentication Failures(識別と認証の不備)認証処理の不備により、なりすましや権限昇格が発生する
    A08Software and Data Integrity Failures(ソフトウェアとデータの整合性の不備)ソフトウェア更新やCI/CDの不備により改ざんを許すリスク
    A09Security Logging and Monitoring Failures(セキュリティログとモニタリングの不備)侵害の検知・追跡ができないログ監視体制の欠如
    A10Server-Side Request Forgery (SSRF)(サーバサイドリクエストフォージェリ)サーバが内部リソースにアクセスしてしまうリスク
    出典:OWASP Top 10:2021より弊社和訳

    各リスク項目の代表的な脅威事例

    項目番号実例企業・事例概要
    A01Facebook (2019)他人の公開プロフィールがIDの推測とAPI操作により取得可能だった*8
    A02Turkish Citizenship Leak(2016)暗号化されていなかったデータベースから約5,000万人の個人情報が流出*9
    A03Heartland Payment Systems (2008)SQLインジェクションにより1億件以上のクレジットカード情報が漏洩*10
    A04パスワードリセットの仕様不備(複数事例)多くの中小サイトで、トークンなしにメールアドレス入力のみでリセット可能な設計が確認されている
    A05Kubernetes Dashboard誤設定事件(Tesla 2018)管理用インターフェースが公開状態になっており、社内クラウドで仮想通貨マイニングに悪用された*11
    A06Equifax (2017)古いApache Strutsの脆弱性(CVE-2017-5638)を放置していたことで1.4億件以上の個人情報が漏洩*12
    A07GitHub (2012)認証処理の不備により、セッションを乗っ取られる脆弱性が悪用され、一時的にユーザが他人のリポジトリにアクセス可能に
    A08SolarWinds サプライチェーン攻撃(2020)正規のソフトウェアアップデートにマルウェアが仕込まれ、多数の政府機関や企業を含めた組織に影響を与えた
    A09Capital One (2019)AWS環境の不適切なログ監視により、Web Application Firewallの設定ミスから約1億600万人分の情報が流出*13
    A10Capital One (同上)SSRF攻撃によりAWSメタデータサービスへリクエストが可能となり、内部資格情報を窃取された*14

    企業はOWASP Top 10をどう活用すべきか

    OWASP Top 10は、単なる「参考資料」ではなく、企業が自社のセキュリティ対策を体系的に見直すための実践的な指針として活用できます。以下に、企業の情報システム部門担当者等が実際に取り入れるべき活用方法を紹介します。

    開発プロセスへの組み込み(セキュア開発)

    アプリケーション開発において、設計段階からOWASP Top 10を参考にすることで、設計段階から脆弱性を防ぐ「セキュア・バイ・デザイン(Secure by Design)」の思想を組み込むことが可能です。とくにA04「Insecure Design」などはアプリケーション開発の初期段階での対策が鍵となります。

    脆弱性診断の評価基準として

    外部のセキュリティ診断会社や自社診断の基準としてOWASP Top 10を採用することで、リスクの見落としを防ぎつつ、業界標準の診断を実現できます。

    セキュリティ教育・啓発資料として

    企業の社員のセキュリティリテラシーを高めるため、開発者・インフラ管理者・経営層を含めたセキュリティ教育プログラムにOWASP Top 10を取り入れることも有効です。定期的な研修やハンズオン形式での演習と組み合わせることで、具体的な攻撃手法や防御策を理解しやすいため、セキュリティ意識の向上につながります。

    OWASP Top 10はセキュリティ対策の出発点

    OWASP Top 10は、Webアプリケーションの開発やセキュリティ対策に取り組む企業にとって、最も基本かつ重要な指標です。サイバー攻撃の多くは、実はこうした「基本的な脆弱性」から発生しており、OWASP Top 10で挙げられているリスクを理解することがリスク低減の第一歩になります。特に情報システム部門や開発チームは、OWASP Top 10を設計・開発・テスト・運用の各フェーズに取り入れ、継続的なセキュリティ対策を行う必要があります。また、社員へのセキュリティ教育や脆弱性診断サービスの評価基準としても有効活用することで、より実効性の高いセキュリティ体制を構築できるでしょう。

    第2回では、API特有の脅威にフォーカスした「OWASP API Security Top 10」をご紹介します。APIを活用している企業にとって、見逃せない内容となっていますので、ぜひあわせてご覧ください。


    ―第2回「OWASP API Security Top 10とは?APIの脅威と対策を知ろう」へ続く―

    【連載一覧】

    ―第2回「OWASP API Security Top 10とは?APIの脅威と対策を知ろう」―
    ―第3回「Non-Human Identities Top 10とは?自動化時代に求められる新しいセキュリティ視点」―

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